JP6337225B1 - カルボキシメチル化セルロースナノファイバー - Google Patents
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Abstract
Description
(1)カルボキシメチル置換度が0.30より高く0.60以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
(2)平均繊維径が3nm〜500nmであり、アスペクト比が50以上である、(1)に記載のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
(3)セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部に、カルボキシメチル基がエーテル結合した構造を有する、(1)または(2)に記載のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
本発明は、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーに関する。カルボキシメチル化セルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有する。
本発明のカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.30より高く0.60以下である。好ましくは、0.30より高く0.50未満である。当該置換度が0.60を超えると水へ溶解し、繊維形状を維持できなくなる。操業性を考慮すると当該置換度は0.30より高く0.40以下であることが更に好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、ナノファイバーへと解繊することができるようになる。カルボキシメチル置換度が0.30より高いと、ナノファイバーへと解繊しやすくなり、分散性が向上し、透明性の高いセルロースナノファイバー分散体が得られるようになる。また、カルボキシメチル置換度が0.30より高いと、セルロースナノファイバーの極性が高くなり、例えば、これらに限定されないが、食品や化粧品などに添加して用いる場合に、他の極性の化合物との相溶性が高くなるという利点が得られる。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’−0.1N−H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が60%以上である。一般に、カルボキシメチル置換度を高くすると、繊維の溶解性が高くなり、結晶化度が下がることが知られているが、本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、0.3より高く0.6以下というカルボキシメチル置換度を有しながら、60%以上の結晶化度も維持している特徴を有する。このようなカルボキシメチル置換度とセルロースI型の結晶化度を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、後述する方法により製造することができる。また、セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
<水分散体における透明度>
本発明のカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、高い透明度を呈するという特徴を有する。本明細書において、透明度は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを固形分1%(w/v)の水分散体とした際の、波長660nmの光の透過率をいうものとする。本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの透明度は、60%以上である。より好ましくは60〜100%であり、更に好ましくは70〜100%であり、さらに好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。このようなセルロースナノファイバーは、透明性が要求されるような用途に最適に使用することができる。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、ナノスケールの繊維径を有するものである。好ましくは、平均繊維径が3nm〜500nm、アスペクト比が50以上である。平均繊維径は、さらに好ましくは3nm〜150nm、さらに好ましくは3nm〜20nm、さらに好ましくは5nm〜19nm、さらに好ましくは5nm〜15nmである。アスペクト比は、さらに好ましくは70以上である。アスペクト比の上限は特に限定されないが、500以下程度、好ましくは400未満である。アスペクト比が50以上であると、その繊維状の形状から、チキソ性の向上といった効果が得られる。また、400未満であると、繊維が過度に長すぎず、繊維同士の絡まり合いが少なくなり、セルロースナノファイバーの塊(ダマ)の発生を低減することができる。
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、製造後に得られる分散体の状態であってもよいが、必要に応じて乾燥してもよく、また水に再分散してもよい。乾燥方法は何ら限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕しても良い。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
カルボキシメチル置換度が0.20以上0.60以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、これに限定されないが、以下の方法により製造したカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、製造することができる。
本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ−1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができる。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。本明細書に記載の方法にしたがって、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化セルロースを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
AM = (DS ×セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は上述の通り)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
上記の方法により得たカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、ナノスケールの繊維径を有するセルロースナノファイバーへと変換することができる。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50%である。反応終了後、pH7になるまで酢酸で中和、含水メタノールで洗浄、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.31、セルロースI型の結晶化度67%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、37%であった。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法、ならびにカルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は、上述の通りである。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、1%(w/v)水分散体とした。これを、150MPaの高圧ホモジナイザーで3回処理し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。得られた分散体の透明度と粘度を以下の方法で測定した。
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)の透明度(660nm光の透過率)は、UV−VIS分光光度計 UV−1800(島津製作所社)を用いて測定した。
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を25℃で16時間放置した後、撹拌機を用いて3000rpmで1分間撹拌し、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数60rpmまたは6rpmで3分後の粘度を測定した。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を90%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.47、セルロースI型の結晶化度は63%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は56%であった。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム40部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸50部を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は60%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は36%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
カルボキシメチル化反応時の溶媒を水100%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.11、セルロースI型の結晶化度は72%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム45部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸ナトリウム150部を用いた以外は比較例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は45%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム50部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸ナトリウム160部を用いた以外は比較例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.30、セルロースI型の結晶化度は40%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時の溶媒を水10%、IPA90%とし、カルボキシメチル化反応時にも同じ組成の溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.27、セルロースI型の結晶化度は64%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は32%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
マーセル化反応時の溶媒を水5%、IPA95%とし、カルボキシメチル化反応時にも同じ組成の溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は61%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は37%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を実施例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
Claims (3)
- カルボキシメチル置換度が0.30より高く0.60以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
- 平均繊維径が3nm〜500nmである、請求項1に記載のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
- セルロースの水酸基の一部に、カルボキシメチル基がエーテル結合した構造を有する、請求項1または2に記載のカルボキシメチル化セルロースナノファイバー。
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