JP7191548B2 - カルボキシメチル化セルロース - Google Patents
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(1)カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、
セルロースI型の結晶化度が50%以上であり、かつ、
水500gにカルボキシメチル化セルロースを投入し、400rpmで5秒間撹拌した後、20メッシュのフィルターを用いて自然濾過した際のフィルター上の濾過残渣の乾燥質量が、上記水に投入したカルボキシメチル化セルロースの乾燥質量に対して、0~30質量%である、カルボキシメチル化セルロース。
(2)セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部に、カルボキシメチル基がエーテル結合した構造を有する、(1)に記載のカルボキシメチル化セルロース。
本発明は、カルボキシメチル化セルロースに関する。カルボキシメチル化セルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有する。カルボキシメチル化セルロースは、塩の形態をとる場合もあり、本発明のカルボキシメチル化セルロースには、カルボキシメチル化セルロースの塩も含まれるものとする。カルボキシメチル化セルロースの塩としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム塩などの金属塩などが挙げられる。
本発明のカルボキシメチル化セルロースは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.50以下であり、好ましくは0.40以下である。当該置換度が0.50を超えると水への溶解が起こりやすくなり、水中で繊維形態を維持できなくなり、保形性付与等の効果が低減する可能性がある。カルボキシメチル化セルロースによる保形性や吸水性付与等の効果を得るためには、一定程度のカルボキシメチル置換度を有することは必要であり、例えば、カルボキシメチル置換度が0.02より小さいと、用途によっては、カルボキシメチル基を導入したことによる利点が得られない場合がある。したがって、カルボキシメチル置換度は、0.02以上であることが好ましく、0.05以上であることが更に好ましく、0.10以上であることが更に好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.20以上であることがさらに好ましく、0.25以上であることがさらに好ましい。なお、特に、カルボキシメチル置換度が0.20以上0.50以下の範囲では、後述するセルロースI型の結晶化度が50%以上であるカルボキシメチル化セルロースを得ること自体が特に従来の水媒法では困難であったが、本発明者らは、例えば後述する製法により、カルボキシメチル置換度0.20以上0.50以下であり、セルロースI型の結晶化度が50%以上であり、品質の安定したダマの形成されにくいカルボキシメチル化セルロースを製造できることを見出した。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースの塩(CMC)をH-CMC(水素型カルボキシメチル化セルロース)に変換する。その絶乾H-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1N-NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N-H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’-0.1N-H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H-CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1-0.058×A)
F’:0.1N-H2SO4のファクター
F:0.1N-NaOHのファクター。
本発明のカルボキシメチル化セルロース繊維におけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が50%以上であり、60%以上であることがより好ましい。結晶性を上記範囲に調整することにより、カルボキシメチル化セルロースによる保形性付与等の効果が高く得られるようになる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD-6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°~30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=セルロースのI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
本発明のカルボキシメチル化セルロースは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、ダマ(塊)の形成が少ない(すなわち、濾過残渣を形成する割合が少ない)という特徴を有する。具体的には、水500gにカルボキシメチル化セルロースを投入し、400rpmで5秒間撹拌した後、20メッシュのフィルターを用いて自然濾過した際のフィルター上の濾過残渣の乾燥質量が、水に投入したカルボキシメチル化セルロースの乾燥質量に対して、0~30質量%である(本明細書において、上記の方法で算出される水に投入したカルボキシメチル化セルロースの乾燥質量に対する自然濾過後の濾過残渣の乾燥質量の割合を、「濾過残渣の割合」と呼ぶ。)。本発明において、濾過残渣の割合の測定方法は、以下の通りである:
(1)濾過残渣の量の測定
1Lのビーカーに500gの水を採取する。カルボキシメチル化セルロース5gを分取し、質量を記録する(カルボキシメチル化セルロースの質量)。撹拌器(IKA(登録商標)EUROSTAR P CV S1(IKA社製))に撹拌羽をセットし、400rpmで水を撹拌しておく。質量を記録しておいたカルボキシメチル化セルロースを、撹拌している水中に一気に投入し、投入後5秒間撹拌する。撹拌終了後、撹拌器の電源を切る。撹拌終了後、迅速に、あらかじめ質量を測定しておいた20メッシュのフィルターを用いて自然濾過を行う。自然濾過後、フィルターとその上の残渣をともに、バット上で100℃で2時間乾燥させる。フィルターとその上の残渣の質量を測定し、フィルターの質量を差し引くことで残渣の絶乾質量(g)を計算する(絶乾残渣質量)。
(2)カルボキシメチル化セルロースの水分量の計算
秤量瓶を100℃で2時間加熱し、シリカゲルの入ったデシケーター内で冷却し、秤量瓶の絶乾質量を精秤する(絶乾秤量瓶質量)。カルボキシメチル化セルロースを秤量瓶中に約1.5g量り取り、精秤する(乾燥前CMC質量)。秤量瓶のふたを開け、105℃で2時間加熱乾燥する。秤量瓶のふたを閉め、シリカゲルの入ったデシケーター内で15分間冷却する。乾燥後の秤量瓶質量(乾燥後のカルボキシメチル化セルロースを含む)を精秤する(乾燥後CMC入り秤量瓶質量)。以下の式を用いて、カルボキシメチル化セルロースの水分量を計算する:
カルボキシメチル化セルロースの水分(%)=[{乾燥前CMC質量(g)-(乾燥後CMC入り秤量瓶質量(g)-絶乾秤量瓶質量(g))}/乾燥前CMC質量(g)]×100。
(3)濾過残渣の割合の計算
(1)で測定したカルボキシメチル化セルロースの質量(g)及び絶乾残渣質量(g)、ならびに(2)で計算したカルボキシメチル化セルロースの水分(%)を用いて、以下の式により、カルボキシメチル化セルロースの濾過残渣の割合を計算する:
カルボキシメチル化セルロースの濾過残渣の割合(%)=[絶乾残渣質量(g)/{カルボキシメチル化セルロースの質量(g)×(100-カルボキシメチル化セルロースの水分(%))/100}]×100。
カルボキシメチル化セルロースは、製造後に得られる分散体の状態であってもよいが、必要に応じて乾燥してもよく、また水に再分散してもよい。乾燥方法は何ら限定されないが、例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、ガラス板等に薄く伸展し乾燥する方法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、起熱ファン式減圧乾燥法などの既知の方法を使用できる。乾燥後に必要に応じて、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕しても良い。また、水への再分散の方法も特に限定されず、既知の分散装置を使用することができる。
カルボキシメチル化セルロースは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。
本発明においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ-1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができるが、カルボキシメチル化セルロースにおいて50%以上のセルロースI型の結晶化度を維持するためには、セルロースI型の結晶化度が高いセルロースを原料として用いることが好ましい。原料となるセルロースのセルロースI型の結晶化度は、好ましくは、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。セルロースI型の結晶化度の測定方法は、上述した通りである。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。本明細書に記載の方法にしたがって、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、水分散体としたときにダマの形成の少ない(すなわち、濾過残渣を生じる割合が少ない)カルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化セルロースを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、水分散体とした際にダマになりにくい(すなわち、濾過残渣を形成する割合が少ない)カルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
AM = (DS ×セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は後述する)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
回転数を100rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。30℃で90分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)100部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、30%である。反応終了後、酢酸でpH7程度になるよう中和し、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル置換度0.24、セルロースI型の結晶化度73%のカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル化剤の有効利用率は、29%であり、濾過残渣の割合は7%であった。なお、カルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度の測定方法、ならびにカルボキシメチル化剤の有効利用率及び濾過残渣の割合の算出方法は、上述の通りである。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を50%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は66%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は37%、濾過残渣の割合は2%であった。
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を65%とした以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.20、セルロースI型の結晶化度は74%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は25%、濾過残渣の割合は3%であった。
マーセル化反応時の溶媒を水10%、IPA90%とし、カルボキシメチル化反応時にも同じ組成の溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.29、セルロースI型の結晶化度は66%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は35%、濾過残渣の割合は48%であった。
マーセル化反応時の溶媒を水19%、IPA81%とし、カルボキシメチル化反応時にも同じ組成の溶媒を用いた以外は実施例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.60、セルロースI型の結晶化度は0%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は67%、濾過残渣の割合は91%であった。
Claims (2)
- カルボキシメチル置換度が0.40以下であり、
セルロースI型の結晶化度が50%以上であり、かつ、
水500gにカルボキシメチル化セルロース5gを投入し、400rpmで5秒間撹拌した後、20メッシュのフィルターを用いて自然濾過した際のフィルター上の濾過残渣の乾燥質量が、上記水に投入したカルボキシメチル化セルロースの乾燥質量に対して、0~30質量%である、カルボキシメチル化セルロース。 - セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部に、カルボキシメチル基がエーテル結合した構造を有する、請求項1に記載のカルボキシメチル化セルロース。
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