JPWO2019230719A1 - カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有マスターバッチおよびその製造方法 - Google Patents

カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有マスターバッチおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

ゴム成分とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチおよびその製造方法。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である。

Description

本発明は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー含有マスターバッチに関する。詳細には、特定範囲のカルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度を有し、水分散体とした際に高い透明度を呈するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチおよびその製造方法に関する。
ゴム成分とセルロース系繊維とを含むマスターバッチにより製造されたゴム組成物は、優れた機械強度を有することが知られている。例えば、特許文献1には、平均繊維径が0.5μm未満の短繊維を水中でフィブリル化させて得られる分散液とゴムラテックスとを混合し乾燥させることにより、短繊維をゴム中に均一に分散させたゴム/短繊維のマスターバッチが得られること、および、このマスターバッチからゴム補強性と耐疲労性のバランスに優れるゴム組成物を製造できることが記載されている。
特開2006−206864号公報
しかしながら、ゴム成分とセルロース系繊維を含む従来のゴム組成物を様々な分野に応用するには、ゴム組成物の更なる強度の向上が必要とされている。
そこで本発明は、強度が良好な、ゴム成分とセルロース系繊維とを含むマスターバッチにより製造されたゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的に対して鋭意検討を行った結果、セルロースのカルボキシメチル化において、マーセル化(セルロースのアルカリ処理)を、水を主とする溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化(エーテル化ともいう。)を水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより、従来の水媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を、水を溶媒として行う方法)や溶媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を、有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法)で得たカルボキシメチル化セルロースに比べて、解繊した際に、従来より透明度の高いセルロースナノファイバー分散体を、カルボキシメチル化剤の高い有効利用率で、経済的に製造することができることを見出した。また、このカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとゴム成分を含有するマスターバッチを用いて、強度が良好なゴム組成物が製造できることを見出した。
本発明としては、以下に限定されないが、次のものが挙げられる。
[1]マスターバッチの製造方法であって、
ゴム成分とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとを混合することを含み、
前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーが、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、上記製造方法。
[2]水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことによりカルボキシメチル化セルロースを製造すること、及び
得られたカルボキシメチル化セルロースを解繊することによりカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを製造すること
をさらに含む、[1]に記載の製造方法。
[3]前記水を主とする溶媒が、水を50質量%より多く含む溶媒である、[2]に記載の製造方法。
[4]前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーに含まれる異物量が20%以下である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法によりマスターバッチを製造すること、及び
得られたマスターバッチを用いてゴム組成物を製造すること
を含む、ゴム組成物の製造方法
[6]カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチであって、
前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、マスターバッチ。
[7]カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの異物量が20%以下である、[6]記載のマスターバッチ。
[8][6]または[7]に記載のマスターバッチを用いて製造されたゴム組成物。
[9]セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するゴム用充填剤。
本発明によれば、ゴム成分と変性セルロース繊維を含み、強度が良好なゴム組成物の製造方法を提供することが出来る。
<カルボキシメチル化セルロースのナノファイバー>
本発明は、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、かつ、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含むマスターバッチに関する。カルボキシメチル化セルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有するものである。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーとは、上記の構造を有するカルボキシメチル化セルロースをナノスケールの繊維径を有するナノファイバーへと変換したものをいう。カルボキシメチル化セルロースは、例えばカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩などの金属塩といった塩の形態をとる場合もあり、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーも塩の形態をとっていてもよい。
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものである。すなわち、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができるものである。また、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるものである。
<セルロースI型の結晶化度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が60%以上であり、好ましくは65%以上である。セルロースI型の結晶化度が60%以上と高いと、溶媒中で溶解せずに結晶構造を維持するセルロースの割合が高いため、ゴムや樹脂に添加した場合に、その強度を向上できるという利点が得られる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるI型結晶の割合は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるものと、通常、同じである。
<カルボキシメチル置換度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50以下である。カルボキシメチル置換度が0.50を超えると水へ溶解し、繊維形状を維持できなくなると考えられる。操業性を考慮すると当該置換度は0.02〜0.50であることが好ましく、0.05〜0.50であることがさらに好ましく、0.10〜0.40であることがさらに好ましく、0.20〜0.40であることがさらに好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、ナノファイバーへと解繊することができるようになるが、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02より小さいと、解繊が不十分となり、透明性の高いセルロースナノファイバーが得られない場合がある。なお、従来の水媒法では、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲では、セルロースI型の結晶化度が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを得ることは困難であったが、本発明者らは、例えば後述する方法により、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを製造できることを見出した。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’−0.1N−H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−H2SO4のファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるカルボキシメチル置換度は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるカルボキシメチル置換度と、通常、同じである。
<水分散体における透明度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、高い透明度を呈するという特徴を有する。透明度の高いナノファイバーは、透明性が要求されるような用途の添加剤としても使用することができ、好ましい。また、透明度の高いナノファイバーは、未解繊のセルロース繊維が少ないと考えられるため、ゴムに含有させた場合に、ゴムの強度低下の原因となる亀裂の発生頻度を低下させることができると考えられる。本明細書において、透明度は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを固形分1%(w/v)の水分散体とした際の、波長660nmの光の透過率をいうものとする。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの透明度の測定方法は、以下の通りである:
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV−VIS分光光度計 UV−1800(島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率を測定する。
本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの透明度は、60%以上である。より好ましくは60〜100%であり、さらに好ましくは70〜100%であり、さらに好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。このようなセルロースナノファイバーは、透明性が要求されるような用途に最適に使用することができる。また、ゴムの亀裂発生頻度を低下させ、ゴムの強度向上にも寄与する。上述のセルロースI型の結晶化度とカルボキシメチル置換度を有し、このような透明度を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、例えば、後述する方法により製造することができる。
<繊維径、アスペクト比>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、ナノスケールの繊維径を有するものである。平均繊維径は、好ましくは1nm〜500nm、さらに好ましくは1nm〜150nm、さらに好ましくは1nm〜20nm、さらに好ましくは3nm〜10nm、さらに好ましくは3nm〜6nmである。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、特に限定されないが、350以下であることが好ましく、300以下であることがさらに好ましく、200以下であることがさらに好ましく、120以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が350以下であると、繊維が過度に長すぎず、繊維同士の絡まり合いが少なくなり、セルロースナノファイバーの塊(ダマ)の発生を低減することができ、添加剤として使用するのに適する。また、流動性が高いので、高濃度でも使用しやすくなり、高固形分が要求される用途においても使いやすくなるという利点が得られる。アスペクト比の下限は、特に限定されないが、好ましくは25以上であり、さらに好ましくは30以上である。アスペクト比が25以上であると、その繊維状の形状から、チキソ性の向上といった効果が得られる。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、カルボキシメチル化時の溶媒と水の混合比、薬品添加量、及びカルボキシメチル化の度合によって制御でき、また、例えば、後述する製法により製造することができる。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、径が20nm以下の場合は原子間力顕微鏡(AFM)、20nm以上の場合は電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析し、平均を算出することにより、測定することができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
<水分散体における粘度とチキソ性>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水を分散媒として分散体(水分散体)としたときに高いチキソ性を奏するものが好ましい。チキソ性(チキソトロピー)とは、剪断応力を受けることにより粘度が次第に低下し、静止すると粘度が次第に上昇する性質をいう。本願明細書では、チキソ性の指標として、低い剪断速度で測定した粘度を高い剪断速度で測定した粘度で除した値を用いる。具体的には、粘度及びチキソ性は以下の方法で測定する:
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、25℃で16時間放置した後、撹拌機を用いて3000rpmで1分間撹拌し、粘度測定用サンプルとする。得られた粘度測定用サンプルの一部について、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数6rpmで3分後の粘度を測定する。また、粘度測定用サンプルの別の一部(粘度をまだ測定していないもの)を用いて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数60rpmで3分後の粘度を測定する。粘度の測定時にはJIS−Z−8803の方法に準じる。得られた6rpmにおける粘度を60rpmにおける粘度で除した値を、チキソ性の指標として用いる。
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の25℃、6rpmにおける粘度を固形分1%(w/v)の水分散体とした際の25℃、60rpmにおける粘度で除した値(単に「6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値」とも呼ぶ)が、6.0以上であることが好ましい。この値が高いほど、剪断応力の差によって粘度の変化が大きいことを示しており、チキソ性が高いことを示している。チキソ性の高いセルロースナノファイバーは、保形性付与剤や粘度調整剤として使用するのに適している。6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値の上限は限定されないが、実際は15.0程度が上限となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの6rpmにおける粘度(固形分1%(w/v)の水分散体、25℃)は、15000mPa・s以上であることが好ましく、20000mPa・s以上であることがさらに好ましい。低い剪断速度(6rpm)における粘度が高いほど、チキソ性が高くなる可能性がある。6rpmにおける粘度の上限は特に限定されないが、現実的には50000mPa・s程度となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの60rpmにおける粘度(固形分1%(w/v)の水分散体、25℃)は、1500〜8400mPa・s程度であることが好ましく、2000〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましく、2500〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましく、3000〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましい。
<セルロースナノファイバー中の異物量の測定>
セルロースナノファイバー中には、異物として未解繊セルロース繊維が残留する場合がある。一般的にゴムの亀裂の発生と成長を抑制することで、ゴムの破断、摩耗、引き裂きなどに対する強度を向上することができると考えられている。数十μm以上の大きさの異物がゴム中に存在すると、亀裂発生の起点となり得るため、セルロースナノファイバー中の異物量は少ないほうが好ましい。
本発明において、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー中の異物量は、以下の方法を用いて測定する。この方法は、微細なセルロースナノファイバーは偏光板を通った光を阻害しないため、直交した2枚の偏光板を通して検出されないのに対し、未解繊繊維物などの異物は乱反射を起こすため、直交した2枚の偏光板を通して特異的に検出されるという性質を利用している:
セルロースナノファイバーを絶乾で0.5g含有する水性懸濁液に、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600)を1.0g加えて、スターラーを用いて2時間撹拌したあと、超音波洗浄機にて脱泡して、セルロースナノファイバー(CNF)分散液を調製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にゴム枠を載せてしっかりと固定し、純水を注ぎ込み、漏れないことを確認した後、内部の水を捨てた。これにより、上記PETフィルムに付着していた埃も除去した。乾燥させた上記PETフィルム上のゴム枠内に上記CNF分散液を泡立てないように注ぎ、40℃で一昼夜静置した。乾燥が十分であることを確認し、CNFフィルムを取り出した。得られた上記CNFフィルムの大きさは18cm×18cmであり、厚さは、0.1mmであった。
次いで、暗幕の中に、板状のLEDライトを設置し、エアダスターで埃を除去しながら、LEDライトの上に、検体である上記CNFフィルムを2枚の偏光板で挟んだ状態で設置した。これら2枚の偏光板はそれらの偏光軸方向が互いに直交するような状態に配置した。なお、上記CNFフィルムは、18cm×18cmの大きさとし、2枚の偏光板についてもCNFフィルム全体を覆うことができる大きさとした。
そして、下方のLEDライトから光を照射し、フィルム全体が視野に収まるように上方からデジタルカメラで透過画像を撮影した。
得られた撮影画像をもとに、上記CNF分散液中の異物の有無を確認するとともに、得られた撮影画像の画像解析により、異物の面積比率を算出し、異物量とした。画像解析は、WayneRasband社が提供している画像解析ソフトImageJを使用した。
本発明のセルロースナノファイバーの異物量は20%以下が好ましい。より好ましくは15%以下であり、さらにより好ましくは10%以下である。これにより機械強度に優れたゴム組成物が得られる。
このようなカルボキシメチル置換度、粘度及びチキソ性、ならびに異物量を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、例えば、後述する方法により製造することができる。
<疎水化>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、カルボキシメチル基由来のカルボキシル基(−COOH)を、適宜変性したものであってもよい。そのような変性としては、例えばアルキル基やアリール基、アラルキル基などを有するアミン系化合物やリン系化合物などをカルボキシル基に結合させて、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化することが挙げられる。
<カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの製造方法>
セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、これに限定されないが、以下の方法により製造したカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、製造することができる。
カルボキシメチル化セルロースは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。本発明の上記特徴を有するナノファイバーを形成することができるカルボキシメチル化セルロースは、マーセル化(セルロースのアルカリ処理)を水を主とする溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化(エーテル化ともいう。)を水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより、製造することができる。このようにして得たカルボキシメチル化セルロースは、従来の水媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を水を溶媒として行う方法)や溶媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法)で得たカルボキシメチル化セルロースに比べて、カルボキシメチル化剤の高い有効利用率を有しながら、解繊した際に、透明度の高いセルロースナノファイバー分散体へと変換することができる。
<セルロース>
本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ−1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができるが、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおいて60%以上のセルロースI型の結晶化度を維持するためには、セルロースI型の結晶化度が高いセルロースを原料として用いることが好ましい。原料となるセルロースのセルロースI型の結晶化度は、好ましくは、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。セルロースI型の結晶化度の測定方法は、上述した通りである。
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹、麻、ジュート、ケナフ等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合せた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプ又は未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ(サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ)、ケミカルパルプ(針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)等の亜硫酸パルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等のクラフトパルプ)等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
<マーセル化>
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。本明細書に記載の方法にしたがって、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
溶媒に水を主として用いる(水を主とする溶媒)とは、水を50質量%より高い割合で含む溶媒をいう。水を主とする溶媒中の水は、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。特に好ましくは水を主とする溶媒は、水が100質量%(すなわち、水)である。マーセル化時の水の割合が多いほど、カルボキシメチル化セルロースを解繊して得られるセルロースナノファイバー分散体の透明度が高まる。水を主とする溶媒中の水以外の(水と混合して用いられる)溶媒としては、後段のカルボキシメチル化の際の溶媒として用いられる有機溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に50質量%未満の量で添加してマーセル化の際の溶媒として用いることができる。水を主とする溶媒中の有機溶媒は、好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
マーセル化剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらのうちいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。マーセル化剤は、これに限定されないが、これらのアルカリ金属水酸化物を、例えば、1〜60質量%、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは3〜25質量%の水溶液として反応器に添加することができる。
マーセル化剤の使用量は、カルボキシメチル化セルロースにおけるセルロースI型の結晶化度60%以上を維持できる量であり、一実施形態において、セルロース100g(絶乾)に対して0.1モル以上2.5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上2.0モル以下であることがより好ましく、0.4モル以上1.5モル以下であることがさらに好ましい。
マーセル化の際の水を主とする溶媒の量は、セルロース原料に対し、1.5〜20質量倍が好ましく、2〜10質量倍であることがより好ましい。このような量とすることにより、原料の撹拌混合が容易になり、原料に均一に反応を生じさせることができるようになる。
マーセル化処理は、発底原料(セルロース)と水を主とする溶媒とを混合し、反応器の温度を0〜70℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜40℃に調整して、マーセル化剤の水溶液を添加し、15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、より好ましくは30分〜3時間撹拌することにより行う。これによりマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を得る。
マーセル化の際のpHは、9以上が好ましく、これによりマーセル化反応を進めることができる。該pHは、より好ましくは11以上であり、更に好ましくは12以上であり、13以上でもよい。pHの上限は特に限定されない。
マーセル化は、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することができる反応機を用いて行うことができ、従来からマーセル化反応に用いられている各種の反応機を用いることができる。例えば、2本の軸が撹拌し、上記各成分を混合するようなバッチ型攪拌装置は、均一混合性と生産性の両観点から好ましい。
<カルボキシメチル化>
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化セルロースを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、またはモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
カルボキシメチル化剤の使用量は、セルロースI型の結晶化度60%以上を維持できる量であり、また、0.50以下のカルボキシメチル置換度となる量である。特に限定されないが、一実施形態において、セルロースの無水グルコース単位当たり、0.5〜1.5モルの範囲で添加することが好ましい。上記範囲の下限はより好ましくは0.6モル以上、さらに好ましくは0.7モル以上であり、上限はより好ましくは1.3モル以下、さらに好ましくは1.1モル以下である。カルボキシメチル化剤は、これに限定されないが、例えば、5〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の水溶液として反応器に添加することができるし、溶解せず、粉末状態で添加することもできる。
マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比(マーセル化剤/カルボキシメチル化剤)は、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムを使用する場合では、0.9〜2.45が一般的に採用される。その理由は、0.9未満であるとカルボキシメチル化反応が不十分となる可能性があり、未反応のモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムが残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムによる副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成する恐れがあるため、不経済となる可能性があることにある。
カルボキシメチル化において、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、15%以上であることが好ましい。より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは30%以上である。カルボキシメチル化剤の有効利用率とは、カルボキシメチル化剤におけるカルボキシメチル基のうち、セルロースに導入されたカルボキシメチル基の割合を指す。マーセル化の際に水を主とする溶媒を用い、カルボキシメチル化の際に水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、高いカルボキシメチル化剤の有効利用率で(すなわち、カルボキシメチル化剤の使用量を大きく増やすことなく、経済的に)、解繊した際に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体を得ることができるカルボキシメチル化セルロースを製造することができる。カルボキシメチル化剤の有効利用率の上限は特に限定されないが、現実的には80%程度が上限となる。なお、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、AMと略すことがある。
カルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は以下の通りである:
AM = (DS × セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は上述の通り)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
カルボキシメチル化反応におけるセルロース原料の濃度は、特に限定されないが、カルボキシメチル化剤の有効利用率を高める観点から、1〜40%(w/v)であることが好ましい。
カルボキシメチル化剤を添加するのと同時に、あるいはカルボキシメチル化剤の添加の前または直後に、反応器に有機溶媒または有機溶媒の水溶液を適宜添加し、又は減圧などによりマーセル化処理時の水以外の有機溶媒等を適宜削減して、水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、この水と有機溶媒との混合溶媒下で、カルボキシメチル化反応を進行させる。有機溶媒の添加または削減のタイミングは、マーセル化反応の終了後からカルボキシメチル化剤を添加した直後までの間であればよく、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル化剤を添加する前後30分以内が好ましい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に添加してカルボキシメチル化の際の溶媒として用いることができる。これらのうち、水との相溶性が優れることから、炭素数1〜4の一価アルコールが好ましく、炭素数1〜3の一価アルコールがさらに好ましい。
カルボキシメチル化の際の混合溶媒中の有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との総和に対して有機溶媒が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。有機溶媒の割合が高いほど、セルロースナノファイバー分散体としたときの透明度が高くなるという利点が得られる。有機溶媒の割合の上限は限定されず、例えば、99質量%以下であってよい。添加する有機溶媒のコストを考慮すると、好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
カルボキシメチル化の際の反応媒(セルロースを含まない、水と有機溶媒等との混合溶媒)は、マーセル化の際の反応媒よりも、水の割合が少ない(言い換えれば、有機溶媒の割合が多い)ことが好ましい。本範囲を満たすことで、得られるカルボキシメチル化セルロースの結晶化度を維持しながらカルボキシメチル置換度を高くしやすくなり、解繊した際に透明度の高いセルロースナノファイバー分散体となるカルボキシメチル化セルロースを、より効率的に得ることができるようになる。また、カルボキシメチル化の際の反応媒が、マーセル化の際の反応媒よりも水の割合が少ない(有機溶媒の割合が多い)場合、マーセル化反応からカルボキシメチル化反応に移行する際に、マーセル化反応終了後の反応系に所望の量の有機溶媒を添加するという簡便な手段でカルボキシメチル化反応用の混合溶媒を形成させることができるという利点も得られる。
水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、マーセル化セルロースにカルボキシメチル化剤を投入した後、温度を好ましくは10〜40℃の範囲で一定に保ったまま15分〜4時間、好ましくは15分〜1時間程度撹拌する。マーセル化セルロースを含む液とカルボキシメチル化剤との混合は、反応混合物が高温になることを防止するために、複数回に分けて、または、滴下により行うことが好ましい。カルボキシメチル化剤を投入して一定時間撹拌した後、必要であれば昇温して、反応温度を30〜90℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃として、30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化(カルボキシメチル化)反応を行い、カルボキシメチル化セルロースを得る。
カルボキシメチル化の際には、マーセル化の際に用いた反応器をそのまま用いてもよく、あるいは、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することが可能な別の反応器を用いてもよい。
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和してもよい。また、必要に応じて、副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級してカルボキシメチル化セルロース又はその塩としてもよい。副生物除去のために洗浄する際は、予め酸型にして線状し、洗浄後に塩型に戻しても良い。乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等が例示される。湿式粉砕で用いる装置としてはホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の装置が例示される。
<ナノファイバーへの解繊>
上記の方法により得たカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、ナノスケールの繊維径を有するセルロースナノファイバーへと変換することができる。
解繊の際には、上記の方法で得られたカルボキシメチル化セルロースの分散体を準備する。分散媒は、取扱いの容易性から、水が好ましい。解繊時の分散体におけるカルボキシメチル化セルロースの濃度は、解繊、分散の効率を考慮すると、0.01〜10%(w/v)であることが好ましい。
カルボキシメチル化セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いることができる。解繊の際にはカルボキシメチル化セルロースの分散体に強力な剪断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力な剪断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて、前記分散体に予備処理をほどこしてもよい。
高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体に加圧(高圧)し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化、分散、解細、粉砕、及び超微細化を行う装置である。
上記の方法により、透明度が高いセルロースナノファイバーが得られる理由は明らかではないが、上記の方法によれば比較的高いセルロースI型の結晶化度を維持することができ、したがって、カルボキシメチル置換度を比較的高くしてもカルボキシメチル化セルロースの繊維状の形状を維持させることができることを本発明者らは確認している。繊維状の形状を維持しながらカルボキシメチル置換度を高くできる(すなわち、カルボキシメチル基を多く導入する)ことは、カルボキシメチル化セルロースの解繊性の向上につながると考えられ、これが、透明度が高いナノファイバー分散体が得られることの理由の1つであると推測される。しかし、これに限定されない。
<ゴム成分>
ゴム成分とはゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中で、NBR、NR、SBR、クロロプレンゴム、BRが好ましい。
ゴム成分は、1種単独のものをカルボキシメチル化セルロースナノファイバーと混合してもよいし、2種以上を組み合わせて混合してもよい。
<混合工程>
マスターバッチの製造方法は、ゴム成分とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとを混合することを含む。混合の際のゴム成分及びカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの形態は特に限定されない。例えば、セルロースナノファイバーの分散液、該分散液の乾燥固形物、又は当該分散液の湿潤固形物と、ゴム成分(固形物)又はその分散液とを混合する形態が挙げられる。これらのうち、セルロースナノファイバーの分散液とゴム成分の分散液とを混合する形態が好ましい。
ゴム成分とセルロースナノファイバーとの混合割合は特に限定されないが、好ましくは以下のとおりである。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限は、25質量部以下が好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。従って、0.5〜25質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、3〜15質量部がさらに好ましい。
本発明は、上述の特定のカルボキシメチル置換度と、セルロースI型の結晶化度と、透明度とを有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを、ゴム成分と混合してマスターバッチとすることにより、このマスターバッチから得られた加硫ゴム組成物が高い強度を有することを見出したものである。本発明に用いられる上述の特性を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、最終的に得られるゴム製品における充填剤(ゴム用充填剤)として有用である。
<凝固工程>
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーとゴム成分とを混合した後、凝固させてもよい。凝固工程においては、多価金属または酸を用いることが好ましい。また多価金属と酸を併用してもよい。酸は、有機酸または無機酸のいずれであってもよく、凝固を阻害しないものであればよい。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸などが挙げられ、無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、炭酸などが挙げられる。酸は、併用する多価金属にあわせて適宜選択すればよい。酸は、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
酸を使用する場合、酸の添加時期は特に限定されず、多価金属と同時に添加してもよいし、多価金属の添加前または後に添加してもよい。酸の使用量は、混合液中のpHが3.0〜6.0となる量が好ましく、pH3.5〜5.0となる量がより好ましい。
<固液分離工程(脱水工程)、水洗工程>
本発明の製造方法は、凝固工程の後、固液分離工程及び水洗工程からなる群より選ばれる少なくとも1つの工程を更に含むことが好ましく、両方の工程を更に含むことがより好ましい。これにより、ゴム組成物中の不純物の含有量を低下させることができ、ゴム組成物の強度を向上させることができる。固液分離工程と水洗工程の態様は、固液分離と水洗のセットを2回以上繰り返す態様が好ましい。
固液分離工程(脱水工程)は、凝固工程にて得られる凝固したゴム成分を含む混合液を固液分離する工程である。そのため、固液分離工程を行う時期は、通常は、凝固工程の後である。固液分離は、ろ材を用いて行うことが好ましい。ろ材としては、例えば、金属繊維、セルロース、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ガラス、コットン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイド等の素材からなるフィルター、メンブレン、ろ布、金属粉を焼結させてなるフィルター、またはスリット状フィルターが挙げられる。これらの中でも、ナイロンフィルターが好ましい。ろ材の好ましい平均孔径は、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜30μmである。
水洗工程は、固液分離工程で得られる固相を洗浄する工程である。
<乾燥工程>
本発明の製造方法は、ゴム成分とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとを混合した後に、乾燥工程を更に含んでもよい。これにより、水分量の少ないマスターバッチを得ることができる。乾燥工程は、凝固工程により得られる処理液、又は、その後必要に応じて行われる固液分離工程及び洗浄工程により得られる処理液を、加熱による乾燥に供する工程である。加熱温度、加熱時間等の条件は特に限定されない。加熱温度は、40℃以上が好ましい。上限は100℃未満が好ましい。加熱時間は、1時間以上が好ましい。上限は24時間以下が好ましい。加熱の条件を上記範囲とすることで、ゴム成分に対するダメージを抑えることができる。加熱は、オーブン等の乾燥機を用いて行えばよい。
<マスターバッチ>
上記の通り、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーとゴム成分とを混合し、所望により凝固工程、固液分離工程、水洗工程、及び乾燥工程の1以上を行うことにより、マスターバッチを得ることができる。本明細書では、未架橋状態のゴム成分を含み、架橋成分を含まない組成物のことを便宜上、「マスターバッチ」と呼ぶこととする。したがって、本発明のマスターバッチは、上述のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーと、未架橋のゴム成分に加えて、後述する<混練り工程>の欄に記載される架橋成分(架橋剤、加硫促進剤、及び加硫促進助剤)以外の成分を含んだ状態のものであってもよく、また、これらの成分を添加する前の状態であってもよい。本明細書では、マスターバッチに架橋成分を配合し、必要に応じて混練りしたものを、便宜上、「ゴム組成物」と呼ぶ。ゴム組成物のうち、加硫(架橋)されたものを加硫ゴム組成物、加硫されていないものを未加硫ゴム組成物と呼ぶ。また、成形し、加硫し、必要に応じて仕上げ処理を施したゴム組成物を、最終製品としての「ゴム」または「ゴム製品」と呼ぶことがある。
<素練り工程、混練り工程>
次いで、上述のマスターバッチをそのまま、又は必要に応じて任意成分を添加して、素練り及び/または混練りする。素練り及び混練りの際の温度は、常温程度(例えば、15〜30℃程度)でもよいが、ゴム成分が架橋反応しない程度に高温に加熱してもよい。例えば140℃以下、より好ましくは120℃以下である。また下限は40℃以上、好ましくは60℃以上である。従って加熱温度は、40〜140℃程度が好ましく、60〜120℃程度がより好ましい。
混練りの際に添加してもよい任意成分としては、例えば、補強剤(例えば、カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、架橋剤(硫黄、過酸化物等)、加硫促進剤、加硫促進助剤(酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤、素練り促進剤、軟化剤、可塑剤、硬化剤(例えば、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂等)、発泡剤、充填剤(カーボンブラック、シリカ等)、カップリング剤、粘着剤(例えば、マクロン樹脂、フェノール、テルペン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、ロジン誘導体等)、分散剤(例えば、脂肪酸等)、接着増進剤(例えば、有機コバルト塩等)、滑剤(例えば、パラフィン、炭化水素樹脂、脂肪酸、脂肪酸誘導体等)などゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。このうち硫黄、加硫促進剤が好ましい。加硫促進剤としては例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。任意成分を添加する場合は、1種を添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。
任意成分の添加時期は特に限定されない。硫黄及び加硫促進剤の添加時期は、他の任意成分の添加時期より後が好ましい。硫黄及び加硫促進剤を添加せずに、その他の任意成分を混合して混練りを開始し、その後に、硫黄及び加硫促進剤を追加してさらに混練りを行うことが好ましい。
硫黄の添加量は、ゴム成分に対し1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、1.7質量%以上がさらに好ましい。上限は、10質量%以下が好ましく、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
加硫促進剤の添加量は、ゴム成分に対し0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。上限は、5質量%以下が好ましく、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
素練り及び混練りの終了後に、必要に応じて成形を行ってもよい。成形装置としては、例えば、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等が挙げられ、最終製品の形状、用途、成形方法に応じて適宜選択すればよい。
<加硫及び架橋工程>
素練り及び混練りの終了後に、好ましくは成形後に、ゴム組成物を加熱する(加硫、架橋)ことが好ましい。これにより未加硫のゴム組成物を加硫ゴム組成物に変換して、ゴム組成物を効果的に補強できる。加熱温度は、150℃以上が好ましく、上限は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。従って、150〜200℃程度が好ましく、150〜180℃程度がより好ましい。加熱装置としては例えば、型加硫、缶加硫、連続加硫等の加硫装置が挙げられる。
加硫後、最終製品とする前に、必要に応じ仕上げ処理を行ってもよい。仕上げ処理としては例えば、研磨、表面処理、リップ仕上げ、リップ裁断、塩素処理などが挙げられ、これらの処理のうち1つのみを行ってもよいし2つ以上を組み合わせて行ってもよい。
<ゴム組成物>
本明細書において、「ゴム組成物」は、上述の通り、マスターバッチに架橋成分を配合し、必要に応じて混練りすることにより得られるものであり、架橋成分を含むが未架橋の状態のゴム組成物と、加硫後のゴム組成物の両方を含む。また、最終製品としてのゴムもゴム組成物に含まれるものとする。
ゴム組成物は、上述の用途等に応じて、1種または2種以上の任意成分を含んでいてもよい。任意成分は、<混練り工程>の欄に記載したものである。このうち加硫促進剤と加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸)が含まれていることが好ましい。任意成分の含有量は、任意成分の種類等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。例えば、硫黄及び加硫促進剤の含有量は、上述した通りである。
ゴム組成物中、ゴム成分および任意成分は、それぞれ独立して存在してもよく、また、少なくとも2成分の反応物など複合体として存在してもよい。
<用途>
本発明のゴム組成物を用いて得られたゴム製品の用途は、特に制限されず、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機、ベルトコンベア等の輸送機器等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等;携帯電話等の移動通信機器等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等が挙げられる。これら以外であっても、ゴムや柔軟なプラスチックが用いられている部材への適用が可能であり、産業用ベルトやタイヤへの適用が好適である。産業用ベルトとしては例えば、フラットベルト、コンベアベルト、コグドベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルトが挙げられる。また、タイヤとしては例えば、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用などの空気入りタイヤが挙げられる。
以下、本発明を実施例及び比較例をあげてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部および%は質量部および質量%を示す。
(製造例1)
回転数を150rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。35℃で80分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50%である。反応終了後、pH7になるまで酢酸で中和、含水メタノールで洗浄、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、固形分1%(w/v)水分散体とした。これを、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。得られた分散体の透明度と粘度、また、セルロースナノファイバーの平均繊維径、カルボキシメチル置換度、セルロースI型の結晶化度を、上述の方法で測定した。
(製造例2)
150MPaの超高圧ホモジナイザー処理を5回とした以外は製造例1と同様の方法でカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
(製造例3)
150MPaの超高圧ホモジナイザー処理を1回とした以外は製造例1と同様の方法でカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
(製造例4)
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)を固形分1%(w/v)となるように水に分散し、TEMPO(Sigma Aldrich社)と臭化ナトリウムを絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol、1.0mmolとなるように加え、均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、次亜塩素酸ナトリウムが6.0mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水で洗浄することで酸化されたパルプ(カルボキシル化セルロース)を得た。この時のパルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。これを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、酸化(カルボキシル化)セルロースナノファイバー分散液を得た。
(実施例:マスターバッチ、ゴム組成物)
<実施例1>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%の水分散液325gと、天然ゴムラテックス(商品名:HAラテックス、レヂテックス社、固形分濃度65%)100gとを混合してゴム成分(天然ゴムラテックスの固形分)とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの固形分との質量比が100:5となるようにし、TKホモミキサー(8000rpm)で10分間攪拌した。その後得られた混合液を、70℃の加熱オーブン中で5時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
上記のマスターバッチを、オープンロール(関西ロール株式会社製)にて、30℃で10分間混練した。次に、硫黄2.3g(ゴム成分に対し3.5質量%)、加硫促進剤(BBS、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)0.5g(ゴム成分に対し0.5質量%)を加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、30℃で10分間混練して、未加硫のゴム組成物のシートを得た。
このシートを、金型にはさみ、150℃で10分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴム組成物のシートを得た。これを所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、補強性の一つである引張強度および伸び、50%伸長時の応力(M50)、100%伸長時の応力(M100)を測定した。各々の数値が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れることを示す。
<実施例2>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを、製造例2で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーに変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例1>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを、製造例3で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーに変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例2>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを、製造例4で得られた酸化セルロースナノファイバーに変更した以外は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例3>
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを配合しなかった以外は実施例1と同様の方法で行った。
Figure 2019230719
表1の結果より、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチを用いて得られた加硫ゴム組成物(実施例1及び2)は、比較例1〜3の加硫ゴム組成物に比べて、引張強度、伸び、50%伸長時の応力(M50)、及び100%伸長時の応力(M100)が大きいことがわかる。実施例1及び2のゴム組成物は良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れることがわかる。

Claims (9)

  1. マスターバッチの製造方法であって、
    ゴム成分とカルボキシメチル化セルロースナノファイバーとを混合することを含み、
    前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーが、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、上記製造方法。
  2. 水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことによりカルボキシメチル化セルロースを製造すること、及び
    得られたカルボキシメチル化セルロースを解繊することによりカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを製造すること
    をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記水を主とする溶媒が、水を50質量%より多く含む溶媒である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーに含まれる異物量が20%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によりマスターバッチを製造すること、及び
    得られたマスターバッチを用いてゴム組成物を製造すること
    を含む、ゴム組成物の製造方法
  6. カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するマスターバッチであって、
    前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、マスターバッチ。
  7. カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの異物量が20%以下である、請求項6記載のマスターバッチ。
  8. 請求項6または7に記載のマスターバッチを用いて製造されたゴム組成物。
  9. セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含有するゴム用充填剤。
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