JP7159510B1 - 樹脂複合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1) セルロース繊維および樹脂を含む樹脂複合体の製造方法であって、(A)パルプと、尿素と、水とを、パルプ固形分濃度が10~50質量%となるように混合し混合物を得て、前記パルプを前記尿素及び前記水からなる尿素水に浸漬する工程と、(B)前記工程(A)で得た浸漬後の前記混合物に相溶化樹脂を添加、混合し、乾燥することにより樹脂混合物を得る工程と、(C)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(B)で得た前記樹脂混合物を混練することによりマスターバッチを得る工程と、(D)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(C)で得た前記マスターバッチを、希釈用樹脂とともに混練することにより樹脂複合体を得る工程を含み、前記樹脂複合体に含まれる前記セルロース繊維は、平均繊維幅が1μm以下の割合が50体積%以上である、樹脂複合体の製造方法。
(2) 前記工程(A)における前記パルプを前記尿素水に浸漬する浸漬時間が10分~72時間である、(1)記載の樹脂複合体の製造方法。
(3) 前記工程(B)が、前記樹脂混合物の固形分濃度が50質量%以上となるまで乾燥することを特徴とする、(1)または(2)記載の樹脂複合体の製造方法。
(4) 前記工程(B)の乾燥は、一軸または多軸混練機を用いて行うことを特徴とする(1)~(3)の何れかに記載の樹脂複合体の製造方法。
(5) 前記工程(B)と前記工程(C)とを同一の一軸または多軸混練機を用いて連続的に行うことを特徴とする(4)記載の樹脂複合体の製造方法。
本発明において、セルロース繊維とは、繊維状のセルロースであり、繊維状のセルロース誘導体をさらに含んでもよい。本発明の製造方法で得られる樹脂複合体に含まれるセルロース繊維は、平均繊維幅が1μm以下の割合が、十分な強度の向上効果と伸びのバランスが得られるという観点から50体積%以上であり、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、65体積%以上がさらに好ましい。ここで、樹脂複合体に含まれるセルロース繊維の平均繊維幅は、X線コンピューティッドトモグラフィ(以下、X-CTと略することとがある。)により、測定することができる。
本発明に用いる樹脂としては、溶融温度が250℃以下の、以下の一般的な熱可塑性樹脂を挙げることができる。
本発明の工程(A)では、パルプと、尿素と、水とを、パルプ固形分濃度が10~50質量%、好ましくは12~44質量%、より好ましくは12~40質量%、さらに好ましくは15~35質量%となるように混合し混合物を得て、パルプを尿素及び水からなる尿素水に浸漬し、尿素水浸漬パルプを得る。本願においてパルプ固形分濃度とは、パルプと水の質量から以下の式で算出される。
パルプ固形分濃度(%)=パルプ固形分の質量/(水の質量+パルプ固形分の質量)×100
パルプ固形分濃度が高すぎると尿素のパルプへの浸漬にムラが生じやすくなり、低すぎると添加する尿素が多量に必要となるなど経済性で劣り、またその後の脱水時に微細繊維が系外に離脱しやすくなるなどの品質低下を起こしやすくなる。
本発明においては、セルロース原料としてパルプを用いるものであり、尿素がセルロースと均一に浸透し接触することが、最終的な強化樹脂として強度向上に繋がる観点から、尿素水に浸漬する前に、パルプに対して機械的処理を行うことが好ましい。
本発明において、セルロース原料とは、セルロースを主体とした様々な形態の材料をいい、リグノセルロース(NUKP)を含むものであり、パルプ(晒又は未晒木材パルプ、晒又は未晒非木材パルプ、精製リンター、ジュート、マニラ麻、ケナフ等の草本由来のパルプなど)、酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等の天然セルロース、セルロースを銅アンモニア溶液、モルホリン誘導体等の何らかの溶媒に溶解した後に再沈殿された再生セルロース、及び上記セルロース原料に加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル等の機械的処理等をすることによってセルロースを解重合した微細セルロース、アセチル化変性に影響を及ぼさない程度の各種セルロース誘導体などが例示される。
本発明に用いることができるアセチル化変性されたパルプ(単に、「アセチル化パルプ」ということがある。)は、セルロース原料のセルロース表面に存在する水酸基の水素原子がアセチル基(CH3-CO-)で置換されているものである。アセチル基で置換されることにより疎水性が高まり、乾燥時の凝集が減少するため作業性が高まり、混練後の樹脂中で分散や解繊しやすくなる。また反応性の高い水酸基がアセチル基で置換されるためセルロースの熱分解が抑制され、混練時の耐熱性が向上する。アセチル化パルプのアセチル基置換度(DS)は、作業性およびセルロース繊維の結晶性維持の観点から、好ましくは0.4~1.3、より好ましくは0.6~1.1となるように調整する。
アセチル化反応は、セルロース原料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に原料を懸濁し、無水酢酸、アセチルクロリド等のハロゲン化アセチル等を使用して、塩基の存在下で行うと短時間で反応を行うことが可能となる。このアセチル化反応で用いる塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。また、無水酢酸などのアセチル化試薬を過剰に使用することで無水非プロトン性極性溶媒や塩基を使用しない条件で反応を行うことも可能である。
アセチル化反応により得られたアセチル化パルプは、アセチル化処理後に水置換などの洗浄処理を行うことが好ましい。
洗浄処理においては必要に応じて脱水を行ってもよい。脱水法としてはスクリュープレスを用いた加圧脱水法、揮発などによる減圧脱水法などで実施も可能だが、効率の点から遠心脱水法が好ましい。脱水は、溶媒中のパルプ固形分が10~60%程度になるまで行うことが好ましい。
本発明に用いることができるアセチル化パルプは、上記脱水工程の後、乾燥処理が施される。乾燥処理は、例えば、マイクロ波乾燥機、送風乾燥機や真空乾燥機を用いて行うことができるが、ドラム乾燥機、パドルドライヤー、ナウターミキサー、攪拌羽根のついた回分乾燥機など、攪拌しながら乾燥することができる乾燥機が好ましい。乾燥は、アセチル化パルプの含水率が1~40%程度になるまで行うことが好ましく、1~10%まで乾燥するがより好ましく、1~5%まで乾燥することがさらに好ましい。乾燥を施したパルプを使用することで、後述する混練工程において水によるパルプへの加水分解の影響を小さくすることが可能となる。
酸化は公知のとおりに実施できる。酸化処理により、予備解繊時のパルプ高濃度化の際のハンドリングが良好となる。例えばN-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中で原料パルプを酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
エーテル化及びエステル化としては、カルボキシメチル化や、リン酸エステル化、亜リン酸エステル、硫酸エステル化等、公知の方法で変性を行うことができる。
カルボキシメチル化は公知のとおりに実施できる。カルボキシメチル化処理により、予備解繊時のパルプ高濃度化の際のハンドリングが良好となる。カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g以上2.0g以下程度精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
ここで、パルプを尿素水に浸漬する浸漬時間としては、パルプへの浸透の観点から10分~72時間が好ましく、30分~48時間がより好ましく、60分~24時間が更に好ましい。
パルプを尿素水に浸漬することで、尿素がセルロースと均一に浸透し接触することが、最終的な強化樹脂として強度向上に繋がる。
本発明の工程(B)では、工程(A)で得た浸漬後の混合物に相溶化樹脂を添加、混合し、乾燥することにより、樹脂混合物を得る。
相溶化樹脂とは、セルロース繊維と希釈用樹脂との均一混合や密着性を高める目的で用いられるものである。本発明に用いる相溶化樹脂としては、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸などの酸無水物を形成することが可能な低分子量のジカルボン酸を、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン鎖上に有する高分子樹脂を挙げることができ、中でもマレイン酸を付加させた無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)や無水マレイン酸変性ポリエチレン(MAPE)を主成分とする樹脂を、それぞれ希釈用樹脂と共に用いることが好ましい。
本発明においては、後述する「マスターバッチ用樹脂」として、相溶化樹脂を用いる。
本発明の工程(C)では、工程(B)で得た、パルプ、尿素、相溶化樹脂、及び水を含む樹脂混合物を、一軸または多軸混練機を用いて混練することにより、マスターバッチを製造する。また、工程(C)において前記樹脂混合物を混練する際に、工程(B)で用いた相溶化樹脂とは異なる樹脂を、パルプ量を超えない範囲で添加して、混練してもよい。
本発明の工程(C)では、一軸または多軸混練機を用いる。パルプと相溶化樹脂とを溶融混練可能であることに加え、パルプのナノ化を促す強い混練力を有する観点から、二軸混練機、四軸混練機等の多軸混練機を、スクリューを構成するパーツにニーディングやローターなどを複数含む構成であることが望ましい。
本発明の工程(D)では、工程(C)で得たマスターバッチを、一軸または多軸混練機を用いて希釈用樹脂とともに混練することにより、樹脂複合体を得る。
本発明で用いる希釈用樹脂としては、上記した溶融温度が250℃以下の、一般的な熱可塑性樹脂を使用することができる。希釈用樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。
本発明の製造方法により製造される樹脂複合体に含まれるパルプ由来のセルロース繊維は、平均繊維幅が1μm以下の割合が50体積%以上であり、55体積%以上が好ましく、60体積%以上がより好ましく、65体積%以上がさらに好ましい。
本発明の樹脂複合体を用いて、成形材料及び成形体(成型材料及び成型体)を製造することができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、粉末状、立体構造など各種形状等の各種形状の成形体が挙げられる。成形方法として、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等を用いることができる。
実施例および比較例で得られた樹脂成形体150gを小型成形機(Xplore Instruments社製「MC15」)に投入し、加熱筒(シリンダー)の温度を200℃とし、金型温度は40℃の条件で、ダンベル型試験片(タイプA12、JIS K 7139)を成形した。得られた試験片について、精密万能試験機(島津製作所(株)製「オートグラフAG-Xplus」)を用いて、試験速度1mm/分、初期標線間距離は30mmで、引張強度(降伏点強度)及び引張伸び(破断までのひずみ、伸び)を測定した。測定値のうち希釈用樹脂であるPPの引張強度値を100としたときの各サンプルの測定値の比率を補強率とし、その結果を表1に示す。パルプ由来のセルロース繊維を使用し希釈用樹脂としてPPを用いる場合は、引張強度は110以上であると強度に優れていることを示す。引張伸びの値が大きいほど、伸びに優れていることを示す。
叩解処理を行ったパルプの繊維長分布は、Lorentzen & Wettre社製ファイバーテスターを用いて測定した。本発明において繊維長とは、ISO16065に基づく数平均繊維長の事を示す。具体的には、パルプ乾燥質量0.1gを300mLの水で撹拌・離解し、ファイバーテスターにて測定した。
(逆滴定方法によるDSの測定)
アセチル化セルロースパルプの試料を乾燥し、0.5g(A)を正確に秤量した。そこにエタノール75mL、0.5NのNaOH 50mL(0.025mol)(B)を加え、3~4時間撹拌した。これを濾過、水洗、乾燥し、濾紙上の試料のFT-IR測定を行い、エステル結合のカルボニルに基づく吸収ピークが消失していること、つまりエステル結合が加水分解されていることを確認した。
濾液を下記の逆滴定に用いた。
濾液には加水分解の結果生じた酢酸ナトリウム塩及び過剰に加えられたNaOHが存在する。このNaOHの中和滴定を1NのHClを用いて行った(指示薬にはフェノールフタレインを使用)。
=セルロースなどの水酸基にエステル結合していたアセチル基のモル数(C)
・(セルロース繰り返しユニット分子量162
×セルロース繰り返しユニットのモル数(未知(D))
+(アセチル基の分子量43×(C))
=秤量した試料0.5g(A)
上記式より、セルロースの繰り返しユニットのモル数(D)を算出した。
・DS=(C)/(D)
樹脂複合体中のセルロース繊維について、平均繊維幅が1μm以下の割合は、X線コンピューティッドトモグラフィ(以下X-CTと略する)(SKYSCAN1272(ブルカー社製):分解能0.5μm)により求めた。本装置は具体的には、作製したセルロース繊維を10%含有する樹脂複合体内部を1cm角で切り出し、これを上述の1ボクセル0.5μmの条件で測定した。これを3次元に再構成の後、200×200μm以上の平面を選択し、形状から繊維部と非繊維部を分離したのち、この画像を2値化し2ボクセル以下の繊維およびノイズを除去した。この平面画像をZ軸方向に対し200μmの範囲で10平面以上を使用して、繊維部(未解繊繊維量)の平均を求めた。上記操作により画像中に表示されている繊維は繊維幅が1μmより大きい繊維を意味する。この平均した未解繊繊維量の値を用いて以下の式で、平均繊維幅が1μm以下のセルロースの割合を求めた。
本発明における解繊性の評価は、上記式によって測定した平均繊維幅が1μm以下のセルロース繊維の割合が、50%以上を「優」、50%未満を「劣」として評価した。結果を表1に示す。
(a)叩解パルプ
(b)尿素:(粉末状:和光純薬工業製)
(c)相溶化樹脂(マスターバッチ用樹脂)
・無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP):(東洋紡(株)製 トーヨータックPMA-H1000P:ジカルボン酸の付加量 57mgKOH/g)
(d)希釈用樹脂
・ ポリプロピレン(PP):(日本ポリプロ(株)製PP MA04A)
(叩解パルプの製造)
固形分濃度20質量%の針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)を濾水度(CSF)が150mLになるまでシングルディスクリファイナー(熊谷理機工業社製、プレートの刃幅:4mm、溝幅:5mm)を用い、クリアランス:0.25mmの条件で3回叩解処理を行った。作製したパルプについて繊維長0.1mm以上0.5mm未満の割合が56%、繊維長1.5mm以上2.0mm未満の割合が5%であった。叩解処理後の含水パルプの重量は、叩解時の発熱によって固形分濃度が上昇し、16kg、固形分濃度は25質量%であった。
(アセチル化叩解パルプの製造)
上記で得られた叩解パルプ、すなわち叩解処理を行った含水針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)16.0kg(固形分4.0kg)を、撹拌機(日本コークス工業(株)製「FM150L」)に投入した後、撹拌を開始し、50℃で減圧脱水した。次いで、無水酢酸4.0kgを加え、80℃で2時間反応させた。反応後、パルプを十分に水洗・脱水・減圧乾燥をしてパルプ固形分濃度が98質量%のアセチル化叩解パルプを得た。アセチル化叩解パルプのアセチル基置換度(DS)は0.5であった。
(工程(A):パルプを尿素水に浸漬する工程)
粉末状の尿素をセルロース量に対して50%となるよう製造例1で得られた固形分濃度25質量%の叩解パルプ(絶対乾燥物として4kg、このうちセルロースとヘミセルロースを合わせたセルロース量は3.6kg、すなわち添加尿素量は乾燥重量として1.8kg)に添加し、18時間浸漬させた。
この工程(A)を経た尿素水浸漬パルプに対して、相溶化樹脂(MAPP:0.9kg)を加え、撹拌機(ヘンシェルミキサー:日本コークス工業(株)製「FM150L」)にて混合した。この全量(18.7kg)を、ヘンシェルミキサーの撹拌熱を利用して、15分×6回の処理で、パルプ、尿素、相溶化樹脂及び水を含む樹脂混合物の固形分濃度が90質量%となるまで乾燥させた。
上記乾燥後の樹脂混合物750gを二軸混練機((株)テクノベル製「MFU15TW-45HG-NH」)に付属するフィーダーを用いて二軸混練機に投入、加熱温度下で混練し、マスターバッチを製造した。混練は以下の条件で実施した。混練条件:スクリュー径:15mm、L/D:45、混練温度:180℃、処理速度:300g/時、スクリュー回転数:200rpm。マスターバッチについては、全量を90℃の温水10L中で20分×3回撹拌し、洗浄処理を施した。洗浄後、温度105℃の送風乾燥機にて18時間の乾燥処理を行った。
工程(C)で得たマスターバッチ30gと希釈用樹脂(PP)131gとを混合し、前記二軸混練機にて加熱温度下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース分10%を含むペレット状の樹脂複合体(成形体)を得た。
実施例1と同様に工程(A)を行い、その後の工程(B)において、ヘンシェルミキサーに代えて上記工程(C)で使用する二軸混練機を通すことで乾燥処理を行った。混練機の温度は110℃、スクリュー回転数を300rpmとし、混練後に、パルプ、尿素、相溶化樹脂及び水を含む樹脂混合物の固形分濃度が80質量%となるまで乾燥させたこと以外は実施例1と同様に樹脂複合体を得た。
(工程(A):パルプを尿素水に浸漬する工程)
粉末状の尿素をセルロース量に対して50%となるよう製造例2で得られたアセチル化叩解パルプ(絶対乾燥物として4kg、このうちセルロースとヘミセルロースを合わせたセルロース量は3.1kg、すなわち添加尿素量は乾燥重量として1.55kg)に添加し、これに水21kg添加してパルプを18時間浸漬した。
実施例1と同様に工程(A)を行い、その後の工程(B)において、ヘンシェルミキサーによる乾燥処理を15分×4回として、パルプ、尿素、相溶化樹脂及び水を含む樹脂混合物の固形分濃度が60質量%となるまで乾燥したこと以外は、工程(B)、工程(C)および工程(D)を実施例1と同様に実施し、樹脂複合体(成形体)を得た。
工程(A)の浸漬する時間を1時間としたこと、及び工程(B)において、ヘンシェルミキサーによる乾燥処理を15分×3回として、パルプ、尿素、相溶化樹脂及び水を含む樹脂混合物の固形分濃度が50質量%となるまで乾燥したこと以外は、工程(A)、工程(B)、工程(C)および工程(D)を実施例1と同様に実施し、樹脂複合体(成形体)を得た。
(工程(A):パルプを尿素水に浸漬する工程)
製造例1で得られた固形分濃度25質量%の叩解パルプをヘンシェルミキサーで撹拌しながら乾燥させて、固形分濃度43.3質量%の叩解パルプを得た。粉末状の尿素をセルロース量に対して50%となるように、この固形分濃度43.3質量%の叩解パルプに添加し、18時間浸漬させた。
製造例2で得られたアセチル化叩解パルプを乾燥重量で4kg準備し、工程(A)の尿素の添加を行わずに水を21kg添加してパルプを18時間浸漬したこと、及び、工程(C)の混練処理後の洗浄を行わなかったこと以外は工程(B)、工程(C)および工程(D)を実施例3と同様に実施し、樹脂複合体(成形体)を得た。
粉末状の尿素をセルロース量に対して50%となるよう、製造例2で得られたアセチル化叩解パルプ(絶対乾燥物として4kg、このうちセルロースとヘミセルロースを合わせたセルロース量は3.1kg、すなわち添加尿素量は乾燥重量として1.55kg)に添加した。次いで、相溶化樹脂0.9kgを添加して、上記の撹拌機にて1分間処理し、混合した。得られた混合物を用いたこと以外は、工程(C)および工程(D)を実施例3と同様に実施し、樹脂複合体(成形体)を得た。
Claims (6)
- セルロース繊維および樹脂を含む樹脂複合体の製造方法であって、
(A)含水パルプに、尿素を添加してパルプ固形分濃度が10~50質量%の尿素水浸漬パルプを得る工程と、
(B)前記工程(A)で得た前記尿素水浸漬パルプに相溶化樹脂を添加、混合し、乾燥することにより樹脂混合物を得る工程と、
(C)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(B)で得た前記樹脂混合物を混練することによりマスターバッチを得る工程と、
(D)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(C)で得た前記マスターバッチを、希釈用樹脂とともに混練することにより樹脂複合体を得る工程を含み、
前記樹脂複合体に含まれる前記セルロース繊維は、平均繊維幅が1μm以下の割合が50体積%以上である、樹脂複合体の製造方法。 - セルロース繊維および樹脂を含む樹脂複合体の製造方法であって、
(A)パルプに、尿素と、水とを添加してパルプ固形分濃度が10~50質量%の尿素水浸漬パルプを得る工程と、
(B)前記工程(A)で得た前記尿素水浸漬パルプに相溶化樹脂を添加、混合し、乾燥することにより樹脂混合物を得る工程と、
(C)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(B)で得た前記樹脂混合物を混練することによりマスターバッチを得る工程と、
(D)一軸または多軸混練機を用いて、前記工程(C)で得た前記マスターバッチを、希釈用樹脂とともに混練することにより樹脂複合体を得る工程を含み、
前記樹脂複合体に含まれる前記セルロース繊維は、平均繊維幅が1μm以下の割合が50体積%以上である、樹脂複合体の製造方法。 - 前記工程(A)における前記尿素水浸漬パルプを得るための浸漬時間が10分~72時間である、請求項1または2記載の樹脂複合体の製造方法。
- 前記工程(B)が、前記樹脂混合物の固形分濃度が50質量%以上となるまで乾燥することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂複合体の製造方法。
- 前記工程(B)の乾燥は、一軸または多軸混練機を用いて行うことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂複合体の製造方法。
- 前記工程(B)と前記工程(C)とを同一の一軸または多軸混練機を用いて連続的に行うことを特徴とする請求項5記載の樹脂複合体の製造方法。
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