JP2023050075A - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

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雄二郎 福田
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Abstract

【課題】 引張強度および曲げ強度に優れ、さらに、セルロース由来の繊維感が残ることによる外観不良が抑制された樹脂組成物を得ることができ、低コストな樹脂組成物の製造方法を提供する。【解決手段】 少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂と、尿素と、分散媒とを含む原料組成物を第一混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲で加熱し、前記分散媒を除去して混合物を得る第一の工程と、前記第一の工程で得られた前記混合物を前記第一混練機又は第二混練機で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程と、前記第二の工程で得られた前記マスターバッチと希釈用樹脂とを混練する第三の工程とを有する。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物の製造方法に関するものである。
植物繊維を細かく解すことで得られる微細繊維状セルロースは、ミクロフィブリルセルロース及びセルロースナノファイバーを包含するものであり、約1nm~数10μm程度の繊維径の微細繊維である。微細繊維状セルロースは、軽量で、且つ、高い強度および高い弾性率を有し、低い線熱膨張係数を有することから、樹脂組成物の補強材料として好適に使用されている。
しかし、微細繊維状セルロースが親水性であるのに対し、樹脂は疎水性であるため、微細繊維状セルロースを樹脂の補強材料として使用するには、当該微細繊維状セルロースの分散性に問題があった。
特許文献1では、セルロース原料と尿素とを加熱処理することにより、セルロースのヒドロキシ基の一部をカルバメート基で置換したセルロース原料を得て、これを機械的処理により微細化し、微細繊維状セルロースを得ている。この方法で得られた微細繊維状セルロースは従来の微細繊維状セルロースと比較して親水性が低く、極性の低い樹脂等との親和性が高いため、樹脂に均一性高く分散し、高い引張強度を有する樹脂組成物を与える。
しかし、特許文献1の製造方法は、例えば変性セルロース原料を得るために105℃での乾燥、140℃での加熱、洗浄等の工程が必要であり、工程数が多かった。製造方法全体でも、工程数が多くコスト高となっていた。また、コストを下げるために工程を単純に減らした場合は、得られた樹脂組成物において、セルロース由来の繊維感が残ることによる外観不良が問題となる場合があった。
特開2019-1876号公報
本発明は、引張強度および曲げ強度に優れ、さらに、セルロース由来の繊維感が残ることによる外観不良が抑制された樹脂組成物を得ることができ、低コストな樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下を提供する。
(1) 少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂と、尿素と、分散媒とを含む原料組成物を第一混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲で加熱し、前記分散媒を除去して混合物を得る第一の工程と、前記第一の工程で得られた前記混合物を前記第一混練機又は第二混練機で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程と、前記第二の工程で得られた前記マスターバッチと希釈用樹脂とを混練する第三の工程とを有する樹脂組成物の製造方法。
(2) 前記第一の熱可塑性樹脂が、親水性官能基で変性されている熱可塑性樹脂である、(1)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(3) 前記第二の工程の溶融混練温度が、少なくとも135℃以上、220℃以下の温度範囲を含む、(1)又は(2)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(4) 前記第一の工程で、前記第一混練機に投入する前記分散媒の量は、前記セルロース繊維の固形分濃度が10質量%~50質量%となる量である、(1)~(3)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
(5) 前記第一混練機及び前記第二混練機は、いずれもスクリューを構成するパーツを備えるものであって、前記第一の工程における前記第一混練機のスクリュー周速と、前記第二の工程における前記第一混練機又は前記第二混練機のスクリュー周速との関係が、以下の関係を満足する、(1)~(4)のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
第一の工程のスクリュー周速≧第二の工程のスクリュー周速
(6) 前記第一の工程において、前記原料組成物には、さらに親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂である第二の熱可塑性樹脂を含む、(2)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(7) 前記第二の工程において、さらに親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂である第二の熱可塑性樹脂を前記第一混練機又は前記第二混練機に投入し前記混合物とともに溶融混練する、(2)に記載の樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、引張強度および曲げ強度に優れ、さらに、セルロース由来の繊維感が残ることによる外観不良が抑制された樹脂組成物を得ることができ、低コストな樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
実施例及び比較例で、フィルムの外観評価結果がAとなる場合の例である。 実施例及び比較例で、フィルムの外観評価結果がBとなる場合の例である。 実施例及び比較例で、フィルムの外観評価結果がCとなる場合の例である。
以下、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明において「~」は端値を含む。すなわち「X~Y」はその両端の値XおよびYを含む。
(樹脂組成物の製造方法)
本発明の樹脂組成物の製造方法は、少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂と、尿素と、分散媒とを含む原料組成物を第一混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲で加熱し、前記分散媒を除去して混合物を得る第一の工程と、前記第一の工程で得られた前記混合物を前記第一混練機又は第二混練機で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程と、前記第二の工程で得られた前記マスターバッチと希釈用樹脂とを混練する第三の工程とを有する。
(第一の工程:乾燥混練工程)
第一の工程では、少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂と、尿素と、分散媒とを含む原料組成物を第一混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲で加熱し、前記分散媒を除去して混合物を得る。
(セルロース繊維(A))
本発明で用いるセルロース繊維(A)は、パルプ原料をパルプ化することにより得ることができる。パルプ原料としては、木材及び非木材のいずれであってもよい。木材パルプを製造するために用いられる木材原料としては、針葉樹、広葉樹等が挙げられる。非木材パルプを製造するために用いられる非木材原料としては、綿、ヘンプ、サイザル麻、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフ等が挙げられる。パルプ原料(木材原料、非木材原料)は、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。
木材原料をパルプ化する方法は、特に限定されず、製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が例示される。木材パルプはパルプ化法により分類でき、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダー等の機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ(TMP);薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。
本発明で用いるセルロース繊維(A)は、そのカナダ標準濾水度については特に限定されない。濾水度が600mLを超える場合は、叩解の工程を省略できるためコスト削減に寄与する観点から好ましい。濾水度の上限値は特に限定されないが、現実的には800mL以下である。なお、セルロース繊維(A)のカナダ標準濾水度は、JIS P 8121-2:2012に従い測定することができる。
セルロース繊維(A)は、尿素がセルロース繊維中のセルロースに対して均一に浸透し接触することが、最終的な繊維強化樹脂としての強度向上に繋がる観点から、機械的処理を行ったものであってもよい。機械的処理を行うことによりパルプの比表面積が増加し尿素反応量が増加することが期待できる。
本発明において機械的処理とは、一般には水に代表される分散媒中の繊維を混合しさらに微細化またはフィブリル化することをいい、叩解、解繊、分散等を含む。微細化は繊維長、繊維径等が小さくなることいい、フィブリル化は繊維の毛羽立ちが多くなることをいう。
なお、本発明で用いるセルロース繊維(A)は、アセチル化、酸化、エステル化、エーテル化等の化学変性がされていても良いが、化学変性されていないセルロース繊維を用いる場合は、化学変性工程を省略できるため環境負荷低減やコスト削減に寄与する観点から好ましい。
(アセチル化変性)
本発明に用いることができるアセチル化変性されたパルプ(単に「アセチル化パルプ」ということがある。)は、パルプ原料のセルロース表面に存在する水酸基の水素原子がアセチル基(CH-CO-)で置換されているものである。アセチル基で置換されることにより疎水性が高まり、乾燥時の凝集が減少するため作業性が高まり、混練後の樹脂中で分散や解繊しやすくなる。また反応性の高い水酸基がアセチル基で置換されるためセルロースの熱分解が抑制され、混練時の耐熱性が向上する。アセチル化パルプのアセチル基置換度(DS)は、作業性およびセルロース繊維の結晶性維持の観点から、好ましくは0.4~1.3、より好ましくは0.6~1.1となるように調整する。
(アセチル化反応)
アセチル化反応は、セルロース原料を膨潤させることのできる無水非プロトン性極性溶媒、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に原料を懸濁し、無水酢酸、アセチルクロリド等のハロゲン化アセチル等を使用して、塩基の存在下で行うと短時間で反応を行うことが可能となる。このアセチル化反応で用いる塩基としては、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。また、無水酢酸などのアセチル化試薬を過剰に使用することで無水非プロトン性極性溶媒や塩基を使用しない条件で反応を行うことも可能である。
アセチル化反応は、例えば、室温~100℃で撹拌しながら行うことが好ましい。反応処理後はアセチル化試薬の除去のため減圧乾燥を行ってもよい。また目標のアセチル基置換度に到達していない場合、アセチル化反応とそれに続く減圧乾燥を任意の回数繰り返し行ってもよい。
(洗浄)
アセチル化反応により得られたアセチル化パルプは、アセチル化処理後に水置換などの洗浄処理を行うことが好ましい。
(脱水)
洗浄処理においては必要に応じて脱水を行ってもよい。脱水法としてはスクリュープレスを用いた加圧脱水法、揮発などによる減圧脱水法などで実施も可能だが、効率の点から遠心脱水法が好ましい。脱水は、溶媒中の固形分が10~60%程度になるまで行うことが好ましい。
(乾燥)
本発明に用いることができるアセチル化パルプは、上記脱水工程の後、乾燥処理を施してもよい。乾燥処理は、例えば、マイクロ波乾燥機、送風乾燥機や真空乾燥機を用いて行うことができるが、ドラム乾燥機、パドルドライヤー、ナウターミキサー、攪拌羽根のついた回分乾燥機など、攪拌しながら乾燥することができる乾燥機が好ましい。乾燥する場合は、アセチル化パルプの含水率が1~40%程度になるまで行うことが好ましく、1~10%まで乾燥するがより好ましく、1~5%まで乾燥することがさらに好ましい。
(酸化変性)
酸化は公知のとおりに実施できる。酸化処理により、機械的処理を行う際のパルプ高濃度化の際のハンドリングが良好となる。例えばN-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中で原料パルプを酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5質量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セルロース質量〔g〕
このようにして測定した酸化セルロース中のカルボキシル基の量は、絶乾質量に対して、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.3mmol/g以上、さらに好ましくは0.5mmol/g以上、よりさらに好ましくは0.8mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.1~3.0mmol/gが好ましく、0.3~2.5mmol/gがより好ましく、0.5~2.5mmol/gがさらに好ましく、0.8~2.0mmol/gがよりさらに好ましい。
(エーテル化及びエステル化)
エーテル化及びエステル化としては、カルボキシメチル化や、リン酸エステル化、亜リン酸エステル化、硫酸エステル化等、公知の方法で変性を行うことができる。
(カルボキシメチル化変性)
カルボキシメチル化は公知のとおりに実施できる。カルボキシメチル化処理により、機械的処理を行う際のパルプ高濃度化の際のハンドリングが良好となる。カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール(メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液)100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g以上2.0g以下程度精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのHSOで過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのHSO)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾質量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのHSOのファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
カルボキシメチル化セルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.35がさらに好ましい。
(第一の熱可塑性樹脂(B1))
本発明で用いる第一の熱可塑性樹脂(B1)は、一般的な熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、母材として用いる希釈用樹脂のセルロースとの親和性を考慮して、適宜、用いる熱可塑性樹脂の種類を選択することができる。例えば、希釈用樹脂として疎水性が高いポリオレフィンを使用する場合は、セルロースとの親和性が低いため、親水性官能基で変性、好ましくは酸変性されている熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。ここでいう親水性とは、水やセルロース表面との親和性が良好であることを意味する。親水性官能基としては、水酸基,カルボキシ基,カルボニル基,アミノ基,アミド基,スルホ基等が挙げられる。このような第一の熱可塑性樹脂(B1)として、例えば、塩基変性ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等が挙げられ、中でも、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)や無水マレイン酸変性ポリエチレン(MAPE)が挙げられる。また、例えば、希釈用樹脂として比較的疎水性が低いポリアミド樹脂を使用する場合は、セルロースとの親和性が高いため、希釈用樹脂と同じポリアミド樹脂を第一の熱可塑性樹脂(B1)として用いてもよい。
本発明で用いる第一の熱可塑性樹脂(B1)の融点は、易分散性の観点から、後述する希釈用樹脂(M)の融点以下であることが好ましい。ここで、例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)の融点は、150℃であり、無水マレイン酸変性ポリエチレン(MAPE)の融点は、120℃である。また、例えば、ポリアミド樹脂(PA6)の融点は、220℃である。また、第一の熱可塑性樹脂(B1)の融点は、第一の工程において溶融することによる乾燥効率およびパルプの解繊効率の低下を抑制する観点から、後述する尿素の熱分解温度(単に「分解温度」と略記することがある。)以上であることが好ましい。なお、尿素の熱分解温度は135℃である。
第一の熱可塑性樹脂(B1)として、親水性官能基で変性、好ましくは酸変性されている熱可塑性樹脂を用いる場合において、このような熱可塑性樹脂(B1)は、相溶化樹脂としての機能を有する。相溶化樹脂とは、疎水性の異なるセルロース繊維と、後述する希釈用樹脂(M)との均一混合や密着性を高める働きをするものである。相溶化樹脂としての特徴を決める要素として、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの場合は、ジカルボン酸の付加量と母材となるポリオレフィン樹脂の重量平均分子量があげられる。ジカルボン酸の付加量が多いポリオレフィン樹脂はセルロースのような親水性高分子との相溶性を高めるが、付加の過程で樹脂としての分子量が小さくなってしまい成形物の強度が低下する。最適なバランスとしてジカルボン酸の付加量は、20~100mgKOH/gであり、さらに好ましくは45~65mgKOH/gである。付加量が少ない場合、樹脂中でセルロースの水酸基や変性セルロースに含まれる水酸基や変性官能基との相互作用をする点が少なくなる。また付加量が多い場合、樹脂中のカルボキシル基同士の水素結合などによる自己凝集や、過大な付加反応による母材となるオレフィン樹脂の分子量の減少により強化樹脂としての強度が未達となる。ポリオレフィン樹脂の分子量としては35,000~250,000が好ましく、50,000~100,000がさらに好ましい。分子量がこの範囲から小さい場合は樹脂として強度が低下し、この範囲から大きい場合は溶融時の粘度上昇が大きく、混練時の作業性が低下するとともに成形不良の原因となる。
第一の熱可塑性樹脂(B1)の配合量は、特には限定されないが、リグニンを除いたセルロース繊維(A)の質量(100質量%)に対して、10~70質量%が好ましく、20~50質量%がさらに好ましい。添加量が70質量%を超えると、セルロースと樹脂の界面形成に必要な量を超えるため、複合体とした際に強度が低下すると考えられる。
また第一の熱可塑性樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合樹脂として用いてもよい。また1種または2種以上のポリマーとポリオレフィンとのグラフト体として使用の場合、グラフト体を構成するポリオレフィン樹脂は特に限定されないが、グラフト体を製造しやすいという観点で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等を使用することができる。
(尿素(C))
本発明においては、得られる樹脂組成物の強度が向上する観点から、一級アミンを付与する低分子量の助剤として、尿素(C)を用いる。
尿素は、熱分解温度が135℃であり、この135℃を超える状態でアンモニアとイソシアン酸に分解されるが、尿素をセルロース繊維と同時に混練することにより、混練によって新たにセルロース繊維内部から現れた未変性水酸基と発生したイソシアン酸とが反応しウレタン結合の生成を促すと考えられ、尿素処理を行わないセルロース繊維と比較して疎水性が高まることが推測される。さらに酸無水物を有する第一の熱可塑性樹脂(B1)と同時に溶融混練することで、セルロース繊維の表面に尿素処理によって新たに導入されたアミノ基と第一の熱可塑性樹脂(B1)が有するカルボン酸が親水性相互作用することで、より強固にセルロース繊維と第一の熱可塑性樹脂(B1)との複合体を形成することが可能となっていると考えられる。また尿素由来の化合物は繊維表面を被覆し、被覆前と比較して硬化することで弾性率向上に寄与する可能性も考えられる。
尿素の配合量は、特に限定されないが、尿素の配合量が多すぎるために繊維が凝集し、強度が低下することを抑制する観点から、リグニンを除いたセルロース繊維(A)の質量に対する尿素(C)の質量の割合が、0.8未満が好ましく、0.05以上0.75未満がより好ましく、0.1以上0.7未満がさらに好ましい。
(分散媒)
分散媒としては、水、有機溶媒が挙げられ、これらを混合したものであっても良い。パルプとの親和性および安全性の観点から水を用いることが好ましい。分散媒の量は、混練機に投入するセルロース繊維と分散媒の合計に対するセルロース繊維の量(以下セルロース繊維の固形分濃度と記載)が10~50質量%となる量が好ましく、20~40質量%となる量がより好ましい。混練開始時のセルロース繊維の固形分濃度が上記下限値より低すぎると、乾燥負荷が上がり、乾燥が不十分となる結果、第二の工程(マスターバッチ混練工程)で混練する混合物に分散媒が持ち込まれ、最終的に得られる樹脂組成物の強度が低下するおそれがある。混練開始時のセルロース繊維の固形分濃度が上記上限値より高すぎると、尿素を含む水等の分散媒のセルロース繊維への浸透が悪くなり、不均一となる。
第一の工程では、分散媒としての水を除去しつつ、セルロースの凝集を抑制する効果が期待される尿素の分解を抑制するため、水の沸点以上尿素の分解温度以下とする観点から、混練機のバレルの設定温度を、少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲、好ましくは110℃以上、130℃以下の温度範囲として、原料組成物を撹拌しながら加熱し、分散媒を除去して混合物を得る。第一の工程における加熱温度が高すぎると尿素が分解してしまい、後述の第二の工程(マスターバッチ混練工程)において、尿素の効果が低減し、うまく混練できない。また、セルロース間に入り込むことにより凝集を抑制する作用を発揮する尿素が分解すると、凝集塊が残りやすくなる。
第一の工程においては、得られる混合物の固形分濃度が90質量%以上100質量%以下となるまで分散媒の除去を行うことが好ましく、95質量%以上100質量%以下がより好ましい。分散媒の除去が進むにつれて、尿素水を含んだセルロース繊維に対して剪断力がかかり、最終的に得られる樹脂組成物は、強度にすぐれる。
なお、第一の工程における混練機のスクリュー周速は、スクリューとの接触回数を向上させる観点から、150mm/sec以上、1200mm/sec以下が好ましく、200mm/sec以上、1000mm/sec以下がより好ましい。スクリュー周速は、下記の式により算出することができる。
スクリュー周速=スクリュー公称径×スクリュー回転数×円周率÷60
第一の工程で、原料組成物を撹拌しながら所定温度で加熱する装置としては、一軸または多軸混練機(押出機)を挙げることができる。汎用性の観点から二軸混練機を用いることが好ましい。また、第一の工程で用いる混練機(押出機)は、スクリューを構成するパーツを備えるものであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法では、第一混練機に投入する原料組成物として、さらに第二の熱可塑性樹脂(B2)を含むものであってもよい。なお、本明細書においては、この第二の熱可塑性樹脂(B2)を「バインダー樹脂」と呼ぶことがある。
(第二の熱可塑性樹脂(B2))
第二の熱可塑性樹脂(B2)は、親水性官能基で変性されていないことが必要である。熱可塑性樹脂(B2)の融点は、易分散性の観点から、後述する希釈用樹脂(M)の融点以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、自動車や家電等の部材に使用することを考慮すると、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
第二の熱可塑性樹脂(B2)としては、例えば、ホモポリプロピレン(hPP、融点:165℃)、高密度ポリエチレン(HDPE、融点:132℃)、低密度ポリエチレン(LDPE、融点:95~135℃)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE、融点:124℃)等のポリオレフィン、ブロックポリプロピレン(bPP、融点:160~165℃)等のブロック共重合体が挙げられる。
第二の熱可塑性樹脂(B2)の配合量は、特に限定されないが、凝集抑制を行いつつも成形体の強度低下に寄与しないために、リグニンを除いたセルロース繊維(A)の質量(100質量%)に対して、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。また、第二の熱可塑性樹脂(B2)の配合量は、界面形成を阻害しないために、第一の熱可塑性樹脂(B1)の配合量以下であることが好ましい。また、第二の熱可塑性樹脂(B2)の配合量は、セルロースの変性を阻害しないために、尿素(C)の配合量以下であることが好ましい。
(第二の工程:マスターバッチ混練工程)
第二の工程では、第一の工程で得られた混合物を、第一の工程で使用した混練機と同一又は異なる混練機で溶融混練してマスターバッチを得る。
第二の工程で溶融混練を行う装置としては、一軸または多軸混練機(押出機)を用いることが好ましい。セルロース繊維(A)と第一の熱可塑性樹脂(B1)及び必要に応じて用いられる第二の熱可塑性樹脂(B2)とを溶融混練可能であることに加え、パルプのナノ化を促す強い混練力を有する観点から、二軸混練機(押出機)、四軸混練機(押出機)等の多軸混練機(押出機)を、スクリューを構成するパーツにニーディングやローターなどを複数含む構成であることが望ましい。
第二の工程でマスターバッチ混練を行う際の、混練機のバレルの設定温度は特に限定されないが、温度範囲の上限は、セルロース繊維(A)の分解温度以下とすることが好ましく、温度範囲の下限は第一の熱可塑性樹脂(B1)の溶融温度または、尿素の分解温度のうち低いものの温度以上とすることが好ましい。例えば、第一の熱可塑性樹脂(B1)として無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いる場合は、第二の工程の溶融混練温度は少なくとも135℃以上、220℃以下の温度範囲を含むことが好ましく、135℃以上、200℃以下の温度範囲を含むことがより好ましく、150℃以上、180℃以下の温度範囲を含むことがさらに好ましい。また、例えば、第一の熱可塑性樹脂(B1)としてポリアミド樹脂(PA6)を用いる場合は、第二の工程の溶融混練温度は少なくとも135℃以上、220℃以下の温度範囲を含むことが好ましく、150℃以上、210℃以下の温度範囲を含むことがより好ましい。
なお、第一の工程において分散媒が除去しきれていない場合は、この第二の工程でマスターバッチ混練を行う際に、尿素の熱分解生成物がセルロース水酸基ではなく、水等の分散媒と反応してしまい、尿素が無駄となる。
なお、第二の工程における混練機のスクリュー周速は、セルロースが分散した樹脂の溶融粘度の観点から、45mm/sec以上、1000mm/sec以下が好ましく、80mm/sec以上、800mm/sec以下がより好ましい。
また、第一の工程における混練機のスクリュー周速と第二の工程における混練機のスクリュー周速の関係としては、第一の工程において分散媒を乾燥させる時は接触回数を上げて、乾燥後の第二の工程においては混合物の粘度を上げて分散を高める観点から、以下の関係を満足することが好ましい。
第一の工程のスクリュー周速≧第二の工程のスクリュー周速
本発明の樹脂組成物の製造方法において、希釈用樹脂が比較的疎水性が高く、第一の熱可塑性樹脂(B1)として親水性官能基で変性、好ましくは酸変性されている熱可塑性樹脂を用いる場合は、最終的に得られる樹脂組成物における繊維状の凝集の発生を抑制する観点から、さらに親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂である第二の熱可塑性樹脂(B2)を用いることが好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法において、第二の熱可塑性樹脂(B2)(バインダー樹脂)を用いる場合は、上記の通り、第一の工程でバインダー樹脂を原料組成物に含めてもよいし、これに代えて、第二の工程でバインダー樹脂を混練機に投入し、第一の工程で得られた混合物とともに溶融混練してもよい。
なお、本発明の樹脂組成物の製造方法は、第二の工程の後に、マスターバッチを水で洗浄する工程を設けてもよい。洗浄に用いる水の温度は、好ましくは室温~100℃、より好ましくは50~100℃である。洗浄後は、母材として用いる希釈用樹脂(M)の分解防止、および混練時の乾燥負荷軽減の観点から、含水率が0.1~5%程度になるまで乾燥することが好ましい。
(第三の工程:希釈混練工程)
第三の工程では、第二の工程で得られたマスターバッチと希釈用樹脂とを混練する。
(希釈用樹脂(M))
本発明に用いる希釈用樹脂(M)としては、溶融温度が250℃以下の、以下の一般的な熱可塑性樹脂を挙げることができる。希釈用樹脂(M)は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を混合して使用してもよい。
一般的な熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリ乳酸、乳酸とエステルとの共重合樹脂、ポリグリコール酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、ポリアセタール、ビニルエーテル樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチル化セルロース、ジアセチル化セルロースなど)等を使用することができる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン(以下「PP」とも記す)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどを使用することが可能である。
またポリアミド樹脂(PA)は、尿素の作用を受けていないセルロースの水酸基との相互作用も期待され、好適に使用することができる。PAとしては、ポリアミド6(ナイロン6、PA6)、ポリアミド11(ナイロン11、PA11)、ポリアミド12(ナイロン12、PA12)、ポリアミド66(ナイロン66、PA66)、ポリアミド46(ナイロン46、PA46)、ポリアミド610(ナイロン610、PA610)、ポリアミド612(ナイロン612、PA612))等の脂肪族PA、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンと塩化テレフタロイルや塩化イソフタロイル等の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体からなる芳香族PA等を挙げることができる。セルロース繊維、セルロースナノファイバーとの親和性が高い観点から、脂肪族PAを用いることが好ましく、PA6、PA11、PA12を用いることがより好ましく、PA6を用いることが特に好ましい。また、ポリアミド樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種以上のポリアミド樹脂を混合して使用してもよい。
上記で例示した樹脂は、ホモポリマーとしての使用の他に、各種公知の機能を有する樹脂を半量以下含むコポリマーとしたブロック共重合体として使用することも可能である。
希釈用樹脂(M)を加えて溶融混練する際には、マスターバッチと希釈用樹脂(M)とを室温下で加熱せずに混合してから溶融混練しても、加熱しながら混合して溶融混練しても良い。
希釈用樹脂(M)を加えて溶融混練を行う場合の装置としては、上記の第二の工程(マスターバッチ混練工程)で用いる装置と同様のものを使用することができる。また、溶融混練時の加熱設定温度は、希釈用樹脂(M)について熱可塑性樹脂供給業者が推奨する最低加工温度±10℃程度が好ましい。温度をこの温度範囲に設定することにより、パルプと樹脂を均一に混合することができる。
本発明の製造方法により製造される樹脂組成物は、更に、例えば、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;着色剤;可塑剤;香料;顔料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;帯電防止剤;紫外線吸収剤;紫外線分散剤;消臭剤、酸化防止剤等の添加剤を配合してもよい。任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されてもよい。
本発明によれば、引張強度および曲げ強度に優れ、さらに、セルロース由来の繊維感が残ることによる外観不良が抑制された樹脂組成物を得ることができ、低コストな樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
(用途)
本発明の製造方法により製造される樹脂組成物を用いて、成形材料及び成形体(成型材料及び成型体)を製造することができる。成形体の形状としては、フィルム状、シート状、板状、ペレット状、粉末状、立体構造など各種形状等の各種形状の成形体が挙げられる。成形方法として、金型成形、射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形等を用いることができる。
成形体(成型体)は、セルロース繊維を含むマトリックス成形物(成形物)が使用される繊維強化プラスチック分野に加え、熱可塑性及び機械強度(引張り強度等)が要求される分野にも使用できる。
自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器の内装材、外装材、構造材等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等の筺体、構造材、内部部品等;携帯電話等の移動通信機器等の筺体、構造材、内部部品等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等の筺体、構造材、内部部品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等として有効に使用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(カナダ標準濾水度(CSF)の測定)
実施例および比較例で用いたセルロース繊維のカナダ標準濾水度は、JIS P 8121-2:2012に従い測定した。
(リグニン含有量の測定)
実施例および比較例で用いたセルロース繊維のリグニン含有量は、定量法として通常用いられるクラーソン法に基づき測定した(クラーソンリグニン)。
(引張強度の測定)
実施例、比較例及び参考例で得られたペレット状の樹脂成型体150gを小型成形機(Xplore Instruments社製「MC15」)に投入し、加熱筒(シリンダー)の温度200℃、金型温度40℃の条件で、ダンベル型試験片(タイプA12、JIS K7139)を成形した。得られた試験片について、精密万能試験機(島津製作所(株)製「オートグラフAG-Xplus」)を用いて、試験速度1mm/分、初期標線間距離30mmで弾性率、最大応力(降伏点強度)及び破断変位(破断までのひずみ、伸び)を測定した。弾性率及び最大応力については、希釈用樹脂の弾性率及び最大応力の値をそれぞれ100としたときの各サンプルの測定値の比率を補強率とし、その結果を表1、表2及び表3に示す。破断変位については、測定値を表1、表2及び表3に示す。
(曲げ強度の測定)
実施例、比較例及び参考例で得られたペレット状の樹脂成型体150gを小型成形機(Xplore Instruments社製「MC15」)に投入し、加熱筒(シリンダー)の温度250℃、金型温度は40℃の条件で、バー試験片を成形した(厚さ4mm、並行部長さ80mm)。得られた試験片について、精密万能試験機(島津製作所(株)製「オートグラフAG-Xplus」を用いて、試験速度10mm/分、支点間距離は64mmで弾性率、最大応力、及び破断変位を測定した。弾性率及び最大応力については、希釈用樹脂の弾性率及び最大応力の値をそれぞれ100としたときの各サンプルの測定値の比率を補強率とし、その結果を表1、表2及び表3に示す。破断変位については、測定値を表1、表2及び表3に示す。
(密度の測定)
実施例、比較例及び参考例で得られたペレット状の樹脂成型体の密度は乾式自動密度計アキュピックII 1340-10CC(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
(フィルムの外観評価)
実施例、比較例及び参考例で得られたペレット状の樹脂成型体60mgを株式会社神藤金属工業所製の圧縮成型機を用いて200℃で2.5MPaとなるまでプレスすることにより、およそ直径35mm×厚さ0.1mmのフィルムを作製した。このフィルムを目視で確認し、繊維状の物質の有無、及び繊維状の物質が有る場合には、その状態について、以下の基準で評価した。結果を表2、及び表3に示す。
A:フィルム中に繊維状物質は視認できない(図1)
B:フィルム中に繊維感が残っていて視認可能であるが、樹脂マトリクスとの境界が曖昧(図2)
C:フィルム中に明瞭に繊維束を視認可能であり、樹脂マトリクスとの境界が明瞭(図3)
(マスターバッチ及び樹脂組成物の製造に使用した材料)
(A)セルロース繊維(分解温度:299℃)
(B1)第一の熱可塑性樹脂
・無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP):(東洋紡(株)製 トーヨータックPMA-H1000P:ジカルボン酸の付加量 57mgKOH/g、融点:150℃)(MAPPは、親水性官能基で変性されている熱可塑性樹脂である。)
・粉状ポリアミド樹脂(PA6):(ユニチカ製 粉状、A1020LP、融点:220℃)
(B2)第二の熱可塑性樹脂:親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂(「バインダー樹脂」ということがある。)
・高密度ポリエチレン(HDPE):(日本ポリエチレン(株)製 HJ580、融点:134℃)
(C)尿素:(粉末状:三井化学製)
(M)希釈用樹脂
・ホモポリプロピレン(hPP):(日本ポリプロ(株)製PP MA04A、融点:165℃)
・高密度ポリエチレン(HDPE):(日本ポリエチレン(株)製 HJ580、融点:134℃)
・ポリアミド樹脂(PA6):(宇部興産(株)製 1013B、融点:220℃)
(酸化防止剤)
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製 Irganox1010)
(実施例1)
(マスターバッチの製造)
セルロース繊維1として未叩解針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)(カナダ標準濾水度600mL超、リグニン含有量1質量%以上、30質量%以下)を固形分で26.4gと、MAPP7.2gと、尿素7.2gと、分散媒としてNUKPの固形分濃度が50質量%となる量の水を、二軸混練機を用いて100℃以上130℃以下、スクリュー周速212mm/secの条件で乾燥及び撹拌し(乾燥混練)、固形分濃度98.0質量%の混合物を得た。この混合物の全量とバインダー樹脂としてのHDPE7.2gを、二軸混練機を用いて温度180℃以下、スクリュー周速126mm/secの条件で混練し(マスターバッチ混練)、マスターバッチを得た。
(樹脂組成物の製造)
得られたマスターバッチ20gと希釈用樹脂(hPP)80gとを混合し、二軸混練機を用いて180℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(hPP)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例2)
マスターバッチの製造において、分散媒として用いた水の量をNUKPの固形分濃度が40質量%となる量に変更したこと以外は実施例1と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度97.6質量%の混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチおよびペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例3)
マスターバッチの製造において、分散媒として用いた水の量をNUKPの固形分濃度が30質量%となる量に変更したこと以外は実施例1と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度98.3質量%の混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチおよびペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例4)
マスターバッチの製造において、分散媒として用いた水の量をNUKPの固形分濃度が20質量%となる量に変更したこと以外は実施例1と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度97.8質量%の混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチおよびペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例5)
マスターバッチの製造において、分散媒として用いた水の量をNUKPの固形分濃度が10質量%となる量に変更したこと以外は実施例1と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度96.8質量%の混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてマスターバッチおよびペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例6)
実施例1と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度99.0質量%の混合物を得た。得られた混合物を用い、スクリュー周速157mm/secに変更したこと以外は実施例1と同様にマスターバッチ混練を行った。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例7)
実施例2と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度98.3質量%の混合物を得た。得られた混合物を用い、スクリュー周速157mm/secに変更したこと以外は実施例1と同様にマスターバッチ混練を行った。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例8)
実施例3と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度98.7質量%の混合物を得た。得られた混合物を用い、スクリュー周速157mm/secに変更したこと以外は実施例1と同様にマスターバッチ混練を行った。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例9)
実施例4と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度98.7質量%の混合物を得た。得られた混合物を用い、スクリュー周速157mm/secに変更したこと以外は実施例1と同様にマスターバッチ混練を行った。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例10)
(セルロース繊維2の製造)
固形分濃度18質量%の針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)をカナダ標準濾水度が233mLになるまでシングルディスクリファイナー(熊谷理機工業社製、プレートの刃幅:4mm、溝幅:5mm)を用い、クリアランス:0.25mmの条件で3回叩解処理を行い、含水率20%のセルロース繊維2を得た。セルロース繊維2のリグニン含有量は、7.9質量%であった。
(マスターバッチの製造)
含水率20%のセルロース繊維2を固形分で26.1gと、MAPP7.2gと、尿素7.2gとを、二軸混練機を用いて100℃以上130℃以下、スクリュー周速212mm/secの条件で乾燥及び撹拌し(乾燥混練)、固形分濃度98.5質量%の混合物を得た。この混合物の全量とHDPE7.2gを、二軸混練機を用いて温度180℃以下、スクリュー周速126mm/secの条件で混練し(マスターバッチ混練)、マスターバッチを得た。
(樹脂組成物の製造)
得られたマスターバッチ20gと希釈用樹脂(hPP)80gとを混合し、二軸混練機を用いて180℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース繊維2、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(hPP)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例11)
実施例10と同様に乾燥混練を行い、固形分濃度98.4質量%の混合物を得た。得られた混合物を用い、スクリュー周速157mm/secに変更したこと以外は実施例10と同様にマスターバッチ混練を行った。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例10と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
Figure 2023050075000001
表1からわかる通り、少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂として、親水性官能基で変性されている熱可塑性樹脂であるMAPPと、尿素と、分散媒としての水とを含む原料組成物を混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上130℃以下の温度範囲で加熱することにより乾燥及び撹拌し、分散媒を除去して混合物を得る第一の工程(乾燥混練工程)と、得られた混合物を混練機内で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程(マスターバッチ混練工程)と、得られたマスターバッチと希釈用樹脂としてのhPPとを混練する第三の工程(希釈混練工程)とを経て製造された実施例1~11の樹脂組成物は、いずれも希釈用樹脂(hPP)のみを用いて作製した試験片を用いた参考例1と比較して引張強度(弾性率、最大応力)および曲げ強度(弾性率、最大応力)に優れるものであった。
(実施例12)
(マスターバッチの製造)
酸化防止剤を添加したこと以外は,実施例3と同様にしてマスターバッチを得た。具体的には、セルロース繊維1として未叩解針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)(カナダ標準濾水度600mL超、リグニン含有量1質量%以上、30質量%以下)を固形分で26.4gと、MAPP7.2gと、尿素7.2gと、酸化防止剤を1.2g分散媒としてNUKPの固形分濃度が30質量%となる量の水を、二軸混練機を用いて100℃以上130℃以下、スクリュー周速212mm/secの条件で乾燥及び撹拌し(乾燥混練)、固形分濃度98.3質量%の混合物を得た。この混合物の全量とバインダー樹脂としてのHDPE7.2gを、二軸混練機を用いて温度180℃以下、スクリュー周速126mm/secの条件で混練し(マスターバッチ混練)、マスターバッチを得た。
(樹脂組成物の製造)
得られたマスターバッチ20.5gと希釈用樹脂(hPP)79.5gとを混合し、二軸混練機を用いて180℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(hPP)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例13)
バインダー樹脂としてのHDPEの添加タイミングを、マスターバッチ混練時から乾燥混練時に変更したこと以外は実施例12と同様にして、マスターバッチを得た。具体的には、乾燥混練時にセルロース繊維1と、MAPPと、尿素と、分散媒としての水に加えて、HDPEも合わせて二軸混練機を用いて実施例12と同様の条件で乾燥混練を行い、固形分濃度98.6質量%の混合物を得た。この混合物を、二軸混練機を用いて実施例12の条件と同様の条件でマスターバッチ混練を行い、マスターバッチを得た。得られたマスターバッチを用いたこと以外は実施例12と同様にしてペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例14)
樹脂組成物の製造において、希釈用樹脂としてhPPに代えてHDPEを用いたこと以外は実施例12と同様にして、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(HDPE)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(実施例15)
樹脂組成物の製造において、希釈用樹脂としてhPPに代えてHDPEを用いたこと以外は実施例13と同様にして、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(HDPE)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(比較例1)
(マスターバッチの製造)
バインダー樹脂としてのHDPEを添加せず、乾燥混練工程とマスターバッチ混練工程とを分けず、150℃で乾燥とマスターバッチ混練を同時に行ったこと以外は、実施例12と同様にしてマスターバッチを得た。なお、乾燥混練工程を行わなかったことにより、水が存在している状態でマスターバッチ混練が行われた結果、水と尿素が反応し、悪臭(アンモニア臭)が生じ、作業性に劣るものであった。
(樹脂組成物の製造)
得られたマスターバッチ20.5gと希釈用樹脂(hPP)79.5gとを混合し、二軸混練機を用いて180℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、希釈用樹脂(hPP)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(比較例2)
バインダー樹脂としてのHDPE7.2gを加えて混練を行ったこと以外は、比較例1と同様にして、固形分濃度99.1質量%のマスターバッチを得た。なお、乾燥混練工程を行わなかったことにより、水が存在している状態でマスターバッチ混練が行われた結果、水と尿素が反応し、悪臭(アンモニア臭)が生じ、作業性に劣るものであった。得られたマスターバッチを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(比較例3)
(乾燥混合物の製造)
セルロース繊維1として未叩解針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)(カナダ標準濾水度600mL超、リグニン含有量1質量%以上、30質量%以下)を固形分で26.4gと、MAPP7.2gと、尿素7.2gと、バインダー樹脂としてのHDPE7.2gと、酸化防止剤1.2gと,分散媒としてNUKPの固形分濃度が30質量%となる量の水を、二軸混練機を用いて温度105℃、スクリュー周速212mm/secの条件で乾燥及び撹拌し(乾燥混練)、固形分濃度98.5質量%の乾燥混合物を得た。得られた乾燥混合物は、マスターバッチ混練工程を行わず、次の工程に用いた。
(樹脂組成物の製造)
得られた乾燥混合物20.5gと希釈用樹脂(hPP)79.5gとを混合し、二軸混練機を用いて180℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、セルロース繊維1、MAPP、尿素由来化合物、HDPE、希釈用樹脂(hPP)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
Figure 2023050075000002
表2からわかる通り、少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂として、親水性官能基で変性されている熱可塑性樹脂であるMAPPと、尿素と、分散媒としての水とを含む原料組成物を混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上130℃以下の温度範囲で加熱することにより乾燥及び撹拌し、分散媒を除去して混合物を得る第一の工程(乾燥混練工程)と、得られた混合物を混練機内で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程(マスターバッチ混練工程)と、得られたマスターバッチと希釈用樹脂としてのhPP又はHDPEとを混練する第三の工程(希釈混練工程)とを経て製造された実施例12~15の樹脂組成物は、いずれもセルロース繊維を含まない同種の希釈用樹脂のみを用いて作製して得られた試験片を用いた参考例1又は2と比較して引張強度(弾性率、最大応力)および曲げ強度(弾性率、最大応力)に優れるものであった。また、第一の工程(乾燥混練工程)と第二の工程(マスターバッチ混練工程)を分けなかった比較例1~3の樹脂組成物と比較して、フィルムの外観評価結果に優れるものであった。
(実施例16)
(アセチル化セルロース繊維3の製造)
(叩解処理)
固形分濃度18質量%の針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)をカナダ標準濾水度が200mLになるまでシングルディスクリファイナー(熊谷理機工業社製、プレートの刃幅:4mm、溝幅:5mm)を用い、クリアランス:0.25mmの条件で3回叩解処理を行い、固形分濃度20%のセルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維のリグニン含有量は、9質量%であった。
(アセチル化処理)
叩解処理を行った上記のセルロース繊維 150kg(固形分30kg)を、撹拌機(日本コークス工業(株)製「FM150L」)に投入した後、撹拌を開始し、80℃で減圧脱水した。次いで、無水酢酸20kgを加え、80℃で1時間反応させた。反応後、80℃で減圧乾燥したのち、水で洗浄しアセチル化セルロース繊維(アセチル化修飾NUKP)3を得た。次いでアセチル化セルロース繊維3を乾燥機に投入し、60~70℃で減圧乾燥した。得られたアセチル化セルロース繊維3の含水率を、赤外水分計で測定した。含水率は、2.3質量%であった。アセチル化セルロース繊維3のアセチル基置換度(DS)は0.7であった。
(マスターバッチの製造)
アセチル化セルロース繊維3を固形分で25gと、粉状ポリアミド樹脂7gと、尿素6gと、酸化防止剤を2gと、分散媒としてアセチル化セルロース繊維3の固形分濃度が30質量%となる量の水を、二軸混練機を用いて100℃以上130℃以下、スクリュー周速212mm/secの条件で乾燥及び撹拌し(乾燥混練)、固形分濃度98.5質量%の混合物を得た。この混合物の全量と希釈用のポリアミド樹脂と同じポリアミド樹脂を3:2の質量比で混合して、二軸混練機を用いて190℃以上220℃以下、スクリュー周速126mm/secの条件で混練し(マスターバッチ混練)、マスターバッチを得た。
(樹脂組成物の製造)
得られたマスターバッチ30gと希釈用樹脂(ポリアミド樹脂:PA6)60gとを混合し、二軸混練機を用いて220℃以下の加熱条件下で混練した。次いで溶融混練物を、ペレタイザーを用いてペレット化し、アセチル化セルロース繊維3、粉状ポリアミド樹脂、尿素由来化合物、希釈用樹脂(ポリアミド樹脂:PA6)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
(比較例4)
(マスターバッチの製造)
アセチル化セルロース繊維3を固形分で25gと、粉状ポリアミド樹脂39.6gと、酸化防止剤2gとを混合し、乾燥混練工程を行わず、二軸混練機を用いて220℃以下の温度でスクリュー周速126mm/secの条件で混練し(マスターバッチ混練)、固形分濃度99.1質量%のマスターバッチを得た。
得られたマスターバッチ30gと希釈用樹脂(ポリアミド樹脂:PA6)60gを用いたこと以外は実施例16と同様にして、アセチル化セルロース繊維3、粉状ポリアミド樹脂、希釈用樹脂(ポリアミド樹脂:PA6)を含むペレット状の樹脂組成物(成形体)を得た。
Figure 2023050075000003
表3からわかる通り、少なくともセルロース繊維としてのアセチル化セルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂としてのポリアミド樹脂(PA6)と、尿素と、分散媒としての水とを含む原料組成物を混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上130℃以下の温度範囲で加熱することにより乾燥及び撹拌し、分散媒を除去して混合物を得る第一の工程(乾燥混練工程)と、得られた混合物を混練機内で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程(マスターバッチ混練工程)と、得られたマスターバッチと希釈用樹脂としてのポリアミド樹脂(PA6)とを混練する第三の工程(希釈混練工程)とを経て製造された実施例16の樹脂組成物は、セルロース繊維を含まない同種の希釈用樹脂のみを用いて作製して得られた試験片を用いた参考例3と比較して引張強度(弾性率、最大応力)および曲げ強度(弾性率、最大応力)に優れるものであった。また、尿素を用いず、第一の工程(乾燥混練工程)を行わず、第二の工程(マスターバッチ混練工程)を行った比較例4の樹脂組成物と比較して、引張強度(弾性率)、曲げ強度(弾性率、最大応力)に優れるものであった。

Claims (7)

  1. 少なくともセルロース繊維と、第一の熱可塑性樹脂と、尿素と、分散媒とを含む原料組成物を第一混練機に投入し、撹拌しながら少なくとも100℃以上、130℃以下の温度範囲で加熱し、前記分散媒を除去して混合物を得る第一の工程と、
    前記第一の工程で得られた前記混合物を前記第一混練機又は第二混練機で溶融混練してマスターバッチを得る第二の工程と、
    前記第二の工程で得られた前記マスターバッチと希釈用樹脂とを混練する第三の工程とを有する樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記第一の熱可塑性樹脂が、親水性官能基で変性されている熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記第二の工程の溶融混練温度が、少なくとも135℃以上、220℃以下の温度範囲を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記第一の工程で、前記第一混練機に投入する前記分散媒の量は、前記セルロース繊維の固形分濃度が10質量%~50質量%となる量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記第一混練機及び前記第二混練機は、いずれもスクリューを構成するパーツを備えるものであって、
    前記第一の工程における前記第一混練機のスクリュー周速と、前記第二の工程における前記第一混練機又は前記第二混練機のスクリュー周速との関係が、以下の関係を満足する、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
    第一の工程のスクリュー周速≧第二の工程のスクリュー周速
  6. 前記第一の工程において、前記原料組成物には、さらに親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂である第二の熱可塑性樹脂を含む、請求項2に記載の樹脂組成物の製造方法。
  7. 前記第二の工程において、さらに親水性官能基で変性されていない熱可塑性樹脂である第二の熱可塑性樹脂を前記第一混練機又は前記第二混練機に投入し前記混合物とともに溶融混練する、請求項2に記載の樹脂組成物の製造方法。
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