JP2019206607A - カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物およびその製造方法 - Google Patents

カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶化度および透明度の高い水分散体を形成するカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの疎水物を提供する。【解決手段】セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化した、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物およびその製造方法。好ましくは、上記セルロースナノファイバーの疎水物は、水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことにより製造されたカルボキシメチル化セルロースを解繊し、疎水化したものである。【選択図】なし

Description

本発明は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物に関する。詳細には、特定範囲のカルボキシメチル置換度及びセルロースI型の結晶化度を有し、水分散体とした際に高い透明度を呈するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物およびその製造方法に関する。
カルボキシメチル化セルロースは、セルロースの誘導体であり、セルロースの骨格を構成するグルコース残基中の水酸基の一部に、カルボキシメチル基をエーテル結合させたものである。カルボキシメチル化したセルロースは、化粧品、医薬品、食品、各種工業製品等において、増粘剤、粘結剤、バインダー、吸水材、保水材、乳化安定剤などの各種添加剤として使用されている。カルボキシメチル化したセルロースは、天然セルロース由来であることから緩やかな生分解性を有するとともに焼却廃棄が可能である環境にやさしい素材であり、用途は今後拡大すると予測される。
カルボキシメチル化セルロースの製造方法としては、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、エーテル化剤(カルボキシメチル化剤ともいう。)で処理(カルボキシメチル化。エーテル化とも呼ぶ。)する方法が知られており、マーセル化とカルボキシメチル化の両方を、水を溶媒として行う方法と、マーセル化とカルボキシメチル化の両方を、有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法(特許文献1)が知られており、前者は「水媒法」、後者は「溶媒法」と呼ばれる。
カルボキシメチル化セルロースにおいて、カルボキシメチル基の量が増えると(すなわち、カルボキシメチル置換度が増加すると)、カルボキシメチル化セルロースは水に溶解するようになる。一方、カルボキシメチル置換度を適度な範囲に調整することにより、水中でもカルボキシメチル化セルロースの繊維状の形状を維持させることができるようになる。繊維状の形状を有するカルボキシメチル化したセルロースは、機械的に解繊することにより、ナノスケールの繊維径を有するナノファイバーへと変換することができる(特許文献2)。
特開2017−149901号公報 国際公開第2014/088072号
カルボキシメチル化セルロースは、ゴム、樹脂、塗料など、様々な分野において添加剤として使用されている。また、カルボキシメチル化セルロースをナノファイバー化したカルボキシメチル化セルロースナノファイバーについても、様々な分野の添加剤として使用されることで強度アップ等の効果が期待されている。
しかしながら、従来の溶媒法により得られるカルボキシメチル化セルロースの解繊により得られるセルロースナノファイバーは、水分散体としたときに透明性が低く、添加剤としての使用範囲が限られていた。また水媒法により得られるカルボキシメチル化セルロースの解繊により得られるセルロースナノファイバーは、透明性を高めるためにはマーセル化剤やカルボキシメチル化剤などの薬剤を多量に使用する必要があり、製造上及び経済上の課題が大きい物であった。
また、カルボキシメチル化セルロースは、水溶性であるため、ゴム、樹脂や有機溶媒との相溶性が悪く、そのまま混合した場合には、十分な強度アップの効果が得られなかった。
本発明は、結晶化度が高く、透明度の高い、水分散体を形成するカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの疎水物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的に対して鋭意検討を行った結果、セルロースのカルボキシメチル化において、マーセル化(セルロースのアルカリ処理)を、水を主とする溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化(エーテル化ともいう。)を水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより、従来の水媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を、水を溶媒として行う方法)や溶媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法)で得たカルボキシメチル化セルロースに比べて、解繊した際に、非常に透明度の高いセルロースナノファイバー分散体を、カルボキシメチル化剤の高い有効利用率で、経済的に製造することができることを見出した。また、このカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物は均質でゴム、樹脂、および有機溶剤への分散安定性に優れ、結晶化度および透明度が高いため、これらを含む様々な分野で好適に使用できることを見出した。
本発明としては、以下に限定されないが、次のものが挙げられる。
(1)セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化することを特徴とする、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物の製造方法。
(2)前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーが、水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことにより製造されたカルボキシメチル化セルロースを、解繊することにより得られたものである、(1)に記載の製造方法。
(3)前記水を主とする溶媒が、水を50質量%より多く含む溶媒である、(2)に記載の製造方法。
(4)カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物であって、前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であることを特徴とする、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物。
(5)前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物の平均繊維径が3nm〜500nmである、(4)に記載の疎水物。
(6)(4)または(5)の、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物を用いたゴム組成物。
本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物は、均質でゴム、樹脂、および有機溶剤への分散安定性に優れ、さらに結晶化度と透明度が高いため、これらを含む様々な分野で好適に使用できることができる。
<カルボキシメチル化セルロースのナノファイバー>
本発明は、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、かつ、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを含む添加剤に関する。カルボキシメチル化セルロースは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基の一部がカルボキシメチル基とエーテル結合した構造を有するものである。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーとは、上記の構造を有するカルボキシメチル化セルロースをナノスケールの繊維径を有するナノファイバーへと変換したものをいう。カルボキシメチル化セルロースは、例えばカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩などの金属塩といった塩の形態をとる場合もあり、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーも塩の形態をとっていてもよい。
本発明のカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水に分散した際にも繊維状の形状の少なくとも一部が維持されるものである。すなわち、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの水分散体を電子顕微鏡で観察すると、繊維状の物質を観察することができるものである。また、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーをX線回折で測定した際にセルロースI型結晶のピークを観測することができるものである。
<セルロースI型の結晶化度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおけるセルロースの結晶化度は、結晶I型が60%以上であり、好ましくは65%以上である。セルロースI型の結晶化度が60%以上と高いと、溶媒中で溶解せずに結晶構造を維持するセルロースの割合が高いため、ゴムや樹脂に添加した場合に、その強度アップを付与できるという利点が得られる。セルロースの結晶性は、マーセル化剤の濃度と処理時の温度、並びにカルボキシメチル化の度合によって制御できる。マーセル化及びカルボキシメチル化においては高濃度のアルカリが使用されるために、セルロースのI型結晶がII型に変換されやすいが、アルカリ(マーセル化剤)の使用量を調整するなどして変性の度合いを調整することによって、所望の結晶性を維持させることができる。セルロースI型の結晶化度の上限は特に限定されない。現実的には90%程度が上限となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度の測定方法は、以下の通りである:
試料をガラスセルに乗せ、X線回折測定装置(LabX XRD−6000、島津製作所製)を用いて測定する。結晶化度の算出はSegal等の手法を用いて行い、X線回折図の2θ=10°〜30°の回折強度をベースラインとして、2θ=22.6°の002面の回折強度と2θ=18.5°のアモルファス部分の回折強度から次式により算出する。
Xc=(I002c―Ia)/I002c×100
Xc=セルロースI型の結晶化度(%)
I002c:2θ=22.6°、002面の回折強度
Ia:2θ=18.5°、アモルファス部分の回折強度。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるI型結晶の割合は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるものと、通常、同じである。
<カルボキシメチル置換度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が、0.50以下である。カルボキシメチル置換度が0.50を超えると水へ溶解し、繊維形状を維持できなくなると考えられる。操業性を考慮すると当該置換度は0.02〜0.50であることが好ましく、0.05〜0.50であることがさらに好ましく、0.10〜0.40であることがさらに好ましく、0.20〜0.40であることがさらに好ましい。セルロースにカルボキシメチル基を導入することで、セルロース同士が電気的に反発するため、ナノファイバーへと解繊することができるようになるが、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度が0.02より小さいと、解繊が不十分となり、透明性の高いセルロースナノファイバーが得られない場合がある。なお、従来の水媒法では、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲では、セルロースI型の結晶化度が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを得ることは困難であったが、本発明者らは、例えば後述する方法により、カルボキシメチル置換度が0.20〜0.40の範囲であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーを製造できることを見出した。カルボキシメチル置換度は、反応させるカルボキシメチル化剤の添加量、マーセル化剤の量、水と有機溶媒の組成比率をコントロールすること等によって調整することができる。
本発明において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの塩(CMC)をH−CMC(水素型カルボキシメチル化セルロースナノファイバー)に変換する。その絶乾H−CMCを1.5〜2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH−CMCを湿潤し、0.1N−NaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N−HSOで過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’−0.1N−HSO(mL)×F)×0.1]/(H−CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1−0.058×A)
F’:0.1N−HSOのファクター
F:0.1N−NaOHのファクター。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーにおけるカルボキシメチル置換度は、ナノファイバーとする前のカルボキシメチル化セルロースにおけるカルボキシメチル置換度と、通常、同じである。
<水分散体における透明度>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水を分散媒として分散体としたときに(水分散体)、高い透明度を呈するという特徴を有する。透明度の高いナノファイバーは、透明性が要求されるような用途の添加剤としても使用することができ、好ましい。本明細書において、透明度は、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを固形分1%(w/v)の水分散体とした際の、波長660nmの光の透過率をいうものとする。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの透明度の測定方法は、以下の通りである:
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、UV−VIS分光光度計 UV−1800(島津製作所製)を用い、光路長10mmの角型セルを用いて、660nm 光の透過率を測定する。
本発明のカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの透明度は、60%以上である。より好ましくは60〜100%であり、さらに好ましくは70〜100%であり、さらに好ましくは80〜100%であり、さらに好ましくは90〜100%である。このようなセルロースナノファイバーは、透明性が要求されるような用途に最適に使用することができる。上述のセルロースI型の結晶化度とカルボキシメチル置換度を有し、このような透明度を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、例えば、後述する方法により製造することができる。
<繊維径、アスペクト比>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、ナノスケールの繊維径を有するものである。平均繊維径は、好ましくは3nm〜500nm、さらに好ましくは3nm〜150nm、さらに好ましくは3nm〜20nm、さらに好ましくは5nm〜19nm、さらに好ましくは5nm〜15nmである。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、特に限定されないが、350以下であることが好ましく、300以下であることがさらに好ましく、200以下であることがさらに好ましく、120以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらに好ましく、80以下であることがさらに好ましい。アスペクト比が350以下であると、繊維が過度に長すぎず、繊維同士の絡まり合いが少なくなり、セルロースナノファイバーの塊(ダマ)の発生を低減することができ、添加剤として使用するのに適する。また、流動性が高いので、高濃度でも使用しやすくなり、高固形分が要求される用途においても使いやすくなるという利点が得られる。アスペクト比の下限は、特に限定されないが、好ましくは25以上であり、さらに好ましくは30以上である。アスペクト比が25以上であると、その繊維状の形状から、チキソ性の向上といった効果が得られる。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのアスペクト比は、カルボキシメチル化時の溶媒と水の混合比、薬品添加量、及びカルボキシメチル化の度合によって制御でき、また、例えば、後述する製法により製造することができる。
カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの平均繊維径および平均繊維長は、径が20nm以下の場合は原子間力顕微鏡(AFM)、20nm以上の場合は電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析し、平均を算出することにより、測定することができる。また、アスペクト比は下記の式により算出することができる:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径。
<水分散体における粘度とチキソ性>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、水を分散媒として分散体(水分散体)としたときに高いチキソ性を奏するものが好ましい。チキソ性(チキソトロピー)とは、剪断応力を受けることにより粘度が次第に低下し、静止すると粘度が次第に上昇する性質をいい、本願明細書では、チキソ性の指標として、低い剪断速度で測定した粘度を高い剪断速度で測定した粘度で除した値を用いる。具体的には、粘度及びチキソ性は以下の方法で測定する:
セルロースナノファイバー分散体(固形分1%(w/v)、分散媒:水)を調製し、25℃で16時間放置した後、撹拌機を用いて3000rpmで1分間撹拌し、粘度測定用サンプルとする。得られた粘度測定用サンプルの一部について、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数6rpmで3分後の粘度を測定する。また、粘度測定用サンプルの別の一部(粘度をまだ測定していないもの)を用いて、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.4ローター/回転数60rpmで3分後の粘度を測定する。粘度の測定時にはJIS−Z−8803の方法に準じる。得られた6rpmにおける粘度を60rpmにおける粘度で除した値を、チキソ性の指標として用いる。
本願発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の25℃、6rpmにおける粘度を固形分1%(w/v)の水分散体とした際の25℃、60rpmにおける粘度で除した値(単に「6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値」とも呼ぶ)が、6.0以上であることが好ましい。この値が高いほど、剪断応力の差によって粘度の変化が大きいことを示しており、チキソ性が高いことを示している。チキソ性の高いセルロースナノファイバーは、保形性付与剤や粘度調整剤として使用するのに適している。6rpmの粘度を60rpmの粘度で除した値の上限は限定されないが、実際は15.0程度が上限となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの6rpmにおける粘度(固形分1%(w/v)の水分散体、25℃)は、15000mPa・s以上であることが好ましく、20000mPa・s以上であることがさらに好ましい。低い剪断速度(6rpm)における粘度が高いほど、チキソ性が高くなる可能性がある。6rpmにおける粘度の上限は特に限定されないが、現実的には50000mPa・s程度となると考えられる。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの60rpmにおける粘度(固形分1%(w/v)の水分散体、25℃)は、1500〜8400mPa・s程度であることが好ましく、2000〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましく、2500〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましく、3000〜7000mPa・s程度であることがさらに好ましい。
このような粘度及びチキソ性を有するカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、例えば、後述する方法により製造することができる。
<疎水化>
本発明に用いられるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーは、本発明の効果を阻害しない範囲で、カルボキシメチル基由来のカルボキシル基(−COOH)を、適宜変性したものであってもよい。そのような変性としては、例えばアルキル基やアリール基、アラルキル基などを有するアミン系化合物やリン系化合物などをカルボキシル基に結合させて、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化することが挙げられる。
<カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの製造方法>
セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースのナノファイバーは、これに限定されないが、以下の方法により製造したカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、製造することができる。
カルボキシメチル化セルロースは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。本発明の上記特徴を有するナノファイバーを形成することができるカルボキシメチル化セルロースは、マーセル化(セルロースのアルカリ処理)を水を主とする溶媒下で行い、その後、カルボキシメチル化(エーテル化ともいう。)を水と有機溶媒との混合溶媒下で行うことにより、製造することができる。このようにして得たカルボキシメチル化セルロースは、従来の水媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を水を溶媒として行う方法)や溶媒法(マーセル化とカルボキシメチル化の両方を有機溶媒を主とする溶媒下で行う方法)で得たカルボキシメチル化セルロースに比べて、カルボキシメチル化剤の高い有効利用率を有しながら、解繊した際に、透明度の高いセルロースナノファイバー分散体へと変換することができる。
<セルロース>
本発明においてセルロースとは、D−グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ−1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができるが、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーにおいて60%以上のセルロースI型の結晶化度を維持するためには、セルロースI型の結晶化度が高いセルロースを原料として用いることが好ましい。原料となるセルロースのセルロースI型の結晶化度は、好ましくは、70%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。セルロースI型の結晶化度の測定方法は、上述した通りである。
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹、麻、ジュート、ケナフ等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合せた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプ又は未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ(サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ)、ケミカルパルプ(針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)等の亜硫酸パルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等のクラフトパルプ)等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
再生セルロースとしては、セルロースを銅アンモニア溶液、セルロースザンテート溶液、モルフォリン誘導体など何らかの溶媒に溶解し、改めて紡糸されたものが例示される。
微細セルロースとしては、上記天然セルロースや再生セルロースをはじめとする、セルロース系素材を、解重合処理(例えば、酸加水分解、アルカリ加水分解、酵素分解、爆砕処理、振動ボールミル処理等)して得られるものや、前記セルロース系素材を、機械的に処理して得られるものが例示される。
<マーセル化>
原料として前述のセルロースを用い、マーセル化剤(アルカリ)を添加することによりマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を得る。本明細書に記載の方法にしたがって、このマーセル化反応における溶媒に水を主として用い、次のカルボキシメチル化の際に有機溶媒と水との混合溶媒を使用することにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
溶媒に水を主として用いる(水を主とする溶媒)とは、水を50質量%より高い割合で含む溶媒をいう。水を主とする溶媒中の水は、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上である。特に好ましくは水を主とする溶媒は、水が100質量%(すなわち、水)である。マーセル化時の水の割合が多いほど、カルボキシメチル化セルロースを解繊して得られるセルロースナノファイバー分散体の透明度が高まる。水を主とする溶媒中の水以外の(水と混合して用いられる)溶媒としては、後段のカルボキシメチル化の際の溶媒として用いられる有機溶媒が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に50質量%未満の量で添加してマーセル化の際の溶媒として用いることができる。水を主とする溶媒中の有機溶媒は、好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。
マーセル化剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が挙げられ、これらのうちいずれか1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。マーセル化剤は、これに限定されないが、これらのアルカリ金属水酸化物を、例えば、1〜60質量%、好ましくは2〜45質量%、より好ましくは3〜25質量%の水溶液として反応器に添加することができる。
マーセル化剤の使用量は、カルボキシメチル化セルロースにおけるセルロースI型の結晶化度60%以上を維持できる量であり、一実施形態において、セルロース100g(絶乾)に対して0.1モル以上2.5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上2.0モル以下であることがより好ましく、0.4モル以上1.5モル以下であることがさらに好ましい。
マーセル化の際の水を主とする溶媒の量は、セルロース原料に対し、1.5〜20質量倍が好ましく、2〜10質量倍であることがより好ましい。このような量とすることにより、原料の撹拌混合が容易になり、原料に均一に反応を生じさせることができるようになる。
マーセル化処理は、発底原料(セルロース)と水を主とする溶媒とを混合し、反応器の温度を0〜70℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜40℃に調整して、マーセル化剤の水溶液を添加し、15分〜8時間、好ましくは30分〜7時間、より好ましくは30分〜3時間撹拌することにより行う。これによりマーセル化セルロース(アルカリセルロース)を得る。
マーセル化の際のpHは、9以上が好ましく、これによりマーセル化反応を進めることができる。該pHは、より好ましくは11以上であり、更に好ましくは12以上であり、13以上でもよい。pHの上限は特に限定されない。
マーセル化は、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することができる反応機を用いて行うことができ、従来からマーセル化反応に用いられている各種の反応機を用いることができる。例えば、2本の軸が撹拌し、上記各成分を混合するようなバッチ型攪拌装置は、均一混合性と生産性の両観点から好ましい。
<カルボキシメチル化>
マーセル化セルロースに対し、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)を添加することにより、カルボキシメチル化セルロースを得る。本明細書に記載の方法にしたがって、マーセル化の際は水を主とする溶媒として用い、カルボキシメチル化の際には水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、解繊した際に非常に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体とすることができるカルボキシメチル化セルロースを経済的に得ることができる。
カルボキシメチル化剤としては、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸イソプロピルなどが挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさという点でモノクロロ酢酸、またはモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
カルボキシメチル化剤の使用量は、セルロースI型の結晶化度60%以上を維持できる量であり、また、0.50以下のカルボキシメチル置換度となる量である。特に限定されないが、一実施形態において、セルロースの無水グルコース単位当たり、0.5〜1.5モルの範囲で添加することが好ましい。上記範囲の下限はより好ましくは0.6モル以上、さらに好ましくは0.7モル以上であり、上限はより好ましくは1.3モル以下、さらに好ましくは1.1モル以下である。カルボキシメチル化剤は、これに限定されないが、例えば、5〜80質量%、より好ましくは30〜60質量%の水溶液として反応器に添加することができるし、溶解せず、粉末状態で添加することもできる。
マーセル化剤とカルボキシメチル化剤のモル比(マーセル化剤/カルボキシメチル化剤)は、カルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムを使用する場合では、0.9〜2.45が一般的に採用される。その理由は、0.9未満であるとカルボキシメチル化反応が不十分となる可能性があり、未反応のモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムが残って無駄が生じる可能性があること、及び2.45を超えると過剰のマーセル化剤とモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムによる副反応が進行してグリコール酸アルカリ金属塩が生成する恐れがあるため、不経済となる可能性があることにある。
カルボキシメチル化において、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、15%以上であることが好ましい。より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上であり、特に好ましくは30%以上である。カルボキシメチル化剤の有効利用率とは、カルボキシメチル化剤におけるカルボキシメチル基のうち、セルロースに導入されたカルボキシメチル基の割合を指す。マーセル化の際に水を主とする溶媒を用い、カルボキシメチル化の際に水と有機溶媒との混合溶媒を用いることにより、高いカルボキシメチル化剤の有効利用率で(すなわち、カルボキシメチル化剤の使用量を大きく増やすことなく、経済的に)、解繊した際に高い透明度を有するセルロースナノファイバー分散体を得ることができるカルボキシメチル化セルロースを製造することができる。カルボキシメチル化剤の有効利用率の上限は特に限定されないが、現実的には80%程度が上限となる。なお、カルボキシメチル化剤の有効利用率は、AMと略すことがある。
カルボキシメチル化剤の有効利用率の算出方法は以下の通りである:
AM = (DS × セルロースのモル数)/ カルボキシメチル化剤のモル数
DS: カルボキシメチル置換度(測定方法は上述の通り)
セルロースのモル数:パルプ質量(100℃で60分間乾燥した際の乾燥質量)/162
(162はセルロースのグルコース単位当たりの分子量)。
カルボキシメチル化反応におけるセルロース原料の濃度は、特に限定されないが、カルボキシメチル化剤の有効利用率を高める観点から、1〜40%(w/v)であることが好ましい。
カルボキシメチル化剤を添加するのと同時に、あるいはカルボキシメチル化剤の添加の前または直後に、反応器に有機溶媒または有機溶媒の水溶液を適宜添加し、又は減圧などによりマーセル化処理時の水以外の有機溶媒等を適宜削減して、水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、この水と有機溶媒との混合溶媒下で、カルボキシメチル化反応を進行させる。有機溶媒の添加または削減のタイミングは、マーセル化反応の終了後からカルボキシメチル化剤を添加した直後までの間であればよく、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチル化剤を添加する前後30分以内が好ましい。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブタノール、イソブタノール、第3級ブタノール等のアルコールや、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン、ならびに、ジオキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、ジクロロメタンなどを挙げることができ、これらの単独または2種以上の混合物を水に添加してカルボキシメチル化の際の溶媒として用いることができる。これらのうち、水との相溶性が優れることから、炭素数1〜4の一価アルコールが好ましく、炭素数1〜3の一価アルコールがさらに好ましい。
カルボキシメチル化の際の混合溶媒中の有機溶媒の割合は、水と有機溶媒との総和に対して有機溶媒が20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。有機溶媒の割合が高いほど、セルロースナノファイバー分散体としたときの透明度が高くなるという利点が得られる。有機溶媒の割合の上限は限定されず、例えば、99質量%以下であってよい。添加する有機溶媒のコストを考慮すると、好ましくは90質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以下であり、更に好ましくは70質量%以下である。
カルボキシメチル化の際の反応媒(セルロースを含まない、水と有機溶媒等との混合溶媒)は、マーセル化の際の反応媒よりも、水の割合が少ない(言い換えれば、有機溶媒の割合が多い)ことが好ましい。本範囲を満たすことで、得られるカルボキシメチル化セルロースの結晶化度を維持しながらカルボキシメチル置換度を高くしやすくなり、解繊した際に透明度の高いセルロースナノファイバー分散体となるカルボキシメチル化セルロースを、より効率的に得ることができるようになる。また、カルボキシメチル化の際の反応媒が、マーセル化の際の反応媒よりも水の割合が少ない(有機溶媒の割合が多い)場合、マーセル化反応からカルボキシメチル化反応に移行する際に、マーセル化反応終了後の反応系に所望の量の有機溶媒を添加するという簡便な手段でカルボキシメチル化反応用の混合溶媒を形成させることができるという利点も得られる。
水と有機溶媒との混合溶媒を形成し、マーセル化セルロースにカルボキシメチル化剤を投入した後、温度を好ましくは10〜40℃の範囲で一定に保ったまま15分〜4時間、好ましくは15分〜1時間程度撹拌する。マーセル化セルロースを含む液とカルボキシメチル化剤との混合は、反応混合物が高温になることを防止するために、複数回に分けて、または、滴下により行うことが好ましい。カルボキシメチル化剤を投入して一定時間撹拌した後、必要であれば昇温して、反応温度を30〜90℃、好ましくは40〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃として、30分〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、エーテル化(カルボキシメチル化)反応を行い、カルボキシメチル化セルロースを得る。
カルボキシメチル化の際には、マーセル化の際に用いた反応器をそのまま用いてもよく、あるいは、温度制御しつつ上記各成分を混合撹拌することが可能な別の反応器を用いてもよい。
反応終了後、残存するアルカリ金属塩を鉱酸または有機酸で中和してもよい。また、必要に応じて、副生する無機塩、有機酸塩等を含水メタノールで洗浄して除去し、乾燥、粉砕、分級してカルボキシメチル化セルロース又はその塩としてもよい。副生物除去のために洗浄する際は、予め酸型にして線状し、洗浄後に塩型に戻しても良い。乾式粉砕で用いる装置としてはハンマーミル、ピンミル等の衝撃式ミル、ボールミル、タワーミル等の媒体ミル、ジェットミル等が例示される。湿式粉砕で用いる装置としてはホモジナイザー、マスコロイダー、パールミル等の装置が例示される。
<ナノファイバーへの解繊>
上記の方法により得たカルボキシメチル化セルロースを解繊することにより、ナノスケールの繊維径を有するセルロースナノファイバーへと変換することができる。
解繊の際には、上記の方法で得られたカルボキシメチル化セルロースの分散体を準備する。分散媒は、取扱いの容易性から、水が好ましい。解繊時の分散体におけるカルボキシメチル化セルロースの濃度は、解繊、分散の効率を考慮すると、0.01〜10%(w/v)であることが好ましい。
カルボキシメチル化セルロースを解繊する際に用いる装置は特に限定されないが、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などの装置を用いることができる。解繊の際にはカルボキシメチル化セルロースの分散体に強力な剪断力を印加することが好ましい。特に、効率よく解繊するには、前記分散体に50MPa以上の圧力を印加し、かつ強力な剪断力を印加できる湿式の高圧または超高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。前記圧力は、より好ましくは100MPa以上であり、さらに好ましくは140MPa以上である。また、高圧ホモジナイザーでの解繊及び分散処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーなどの公知の混合、撹拌、乳化、分散装置を用いて、前記分散体に予備処理をほどこしてもよい。
高圧ホモジナイザーとは、ポンプにより流体に加圧(高圧)し、流路に設けた非常に繊細な間隙より噴出させることにより、粒子間の衝突、圧力差による剪断力等の総合エネルギーによって乳化、分散、解細、粉砕、及び超微細化を行う装置である。
上記の方法により、透明度が高いセルロースナノファイバーが得られる理由は明らかではないが、上記の方法によれば比較的高いセルロースI型の結晶化度を維持することができ、したがって、カルボキシメチル置換度を比較的高くしてもカルボキシメチル化セルロースの繊維状の形状を維持させることができることを本発明者らは確認している。繊維状の形状を維持しながらカルボキシメチル置換度を高くできる(すなわち、カルボキシメチル基を多く導入する)ことは、カルボキシメチル化セルロースの解繊性の向上につながると考えられ、これが、透明度が高いナノファイバー分散体が得られることの理由の1つであると推測される。しかし、これに限定されない。
<疎水物の製造方法>
上述の製法により得られるカルボキシメチル置換度が0.50以下であり、セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、上述の透明度が60%以上であるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化することで、均質でゴム、樹脂、および有機溶剤への分散安定性に優れ、これらを含む様々な分野で好適に使用できることができるカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物が得られる。
上記の疎水化には疎水化剤(界面活性剤)を用いる。
界面活性剤は、分子の中に少なくとも1つの親水性基と少なくとも1つの疎水性基とを有し得る物質、およびその前駆体(例えば、金属塩の存在下で上記両基を有し得る物質)を意味する。界面活性剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン型界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン(例えば、オレイルアミン、ステアリルアミン、テトラデシルアミン、1−ヘキセニルアミン、1−ドデセニルアミン、9,12−オクタデカジエニルアミン(リノールアミン)、9,12,15−オクタデカトリエニルアミン、リノレイルアミン、ドデシルアミン、プロピルアミン、メチルアミン等のモノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン)、テトラメチルアンモニウム塩(例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム)、テトラブチルアンモニウム塩(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム)、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化デシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリアルキルアンモニウム塩(例えば、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム(塩化ドデシルジメチルベンジルアンモニウム)、臭化ベンザルコニウム)、ジベンジルジアルキルアンモニウム塩(例えば、塩化ベンゼトニウム)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム)、アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム)、脂肪族アミン塩(例えば、モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩)が挙げられる。
陰イオン型界面活性剤としては、例えば、カルボン酸(例えば、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ペルフルオロノナン酸、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩)、スルホン酸(例えば、1−ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、ペルフルオロブタンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル(例えばラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム)、リン酸エステル(例えばラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム)が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル)、アルキルフェノールアルキレート(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール)、アルカノールアミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEA)、アルキルグルコシド(例えば、オクチルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド)が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール)、ベタイン系化合物(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン)、アルキルアミノ酸塩(例えば、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル−β−アラニン)、アルキルアミンオキシド(例えば、ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシド)が挙げられる。
界面活性剤は、両性界面活性剤および陽イオン性界面活性剤が好ましい。
両性界面活性剤は、ベタイン系化合物がさらに好ましく、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、コカミドプロピルベタインがさらにより好ましい。
界面活性剤は、脂肪族アミンおよびその誘導体を少なくとも1種含むことが好ましい。脂肪族アミンは、特に限定されないが、炭素原子数が20以下(好ましくは2〜20又は3〜20、より好ましくは10〜20、更に好ましくは12〜20、更により好ましくは14〜20、とりわけ好ましくは15〜20)であること、その構造中に不飽和結合を少なくとも1つ(好ましくは1つ)含むこと、および1級アミン(モノアルキルアミン)であること、からなる群より選ばれる1以上を満たすことが好ましく、すべてを満たすことがより好ましい。脂肪族アミンとしては例えば、オレイルアミン、ステアリルアミン、テトラデシルアミン、1−ヘキセニルアミン、1−ドデセニルアミン、9,12−オクタデカジエニルアミン(リノールアミン)、9,12,15−オクタデカトリエニルアミン、リノレイルアミン、ドデシルアミン、プロピルアミン、メチルアミン等のモノアルキルアミン;ジアルキルアミン;トリアルキルアミン;およびそれらの塩(例えば塩酸塩)が挙げられ、オレイルアミン、ステアリルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、およびプロピルアミンからなる群より含まれる少なくとも1つがより好ましく、オレイルアミンがさらに好ましい。脂肪族アミンの誘導体としては、例えば、陽イオン界面活性剤の具体例として挙げた、脂肪族アミン以外の例以外の化合物が挙げられる。
使用する界面活性剤は、1種の界面活性剤でもよく、2種以上の界面活性剤の組み合わせでもよい。
カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物が用いられる分野は限定されず、一般的に添加剤が用いられる様々な分野、例えば、ゴム、樹脂、化粧品、医薬、製紙、各種化学用品、塗料、スプレー、農薬、土木、建築、電子材料、難燃剤、家庭雑貨、接着剤、洗浄剤、芳香剤、潤滑用組成物などで、ゴム・プラスチック用配合材料、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、製紙用添加剤、増粘剤、ゲル化剤、糊剤、賦形剤、研磨剤、保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤、泥水調整剤、ろ過助剤、溢泥防止剤などとして使用することができる。
ゴム分野で、ゴム組成物にカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物が用いられる場合、ゴム成分と上記疎水物を混合して用いることが一般的である。ゴム成分とはゴムの原料であり、架橋してゴムとなるものをいう。ゴム成分としては、天然ゴム用のゴム成分と合成ゴム用のゴム成分が存在する。天然ゴム用のゴム成分としては、例えば、化学修飾を施さない狭義の天然ゴム(NR);塩素化天然ゴム、クロロスルホン化天然ゴム、エポキシ化天然ゴム等の化学修飾した天然ゴム;水素化天然ゴム;脱タンパク天然ゴムが挙げられる。合成ゴム用のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等のジエン系ゴム;ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM、EPDM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。
ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
ゴム組成物における疎水物の含有量は特に限定されないが、好ましい含有量は以下のとおりである。
疎水物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。これにより引張強度の向上効果が十分に発現し得る。上限は、50質量部以下が好ましく、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。これにより、製造工程における加工性を保持することができる。従って、1〜50質量部が好ましく、2〜40質量部がより好ましく、3〜30質量部がさらに好ましい。
<任意成分>
ゴム組成物は、後段で説明するゴム組成物の用途等に応じて1種または2種以上の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、補強剤(例えば、カーボンブラック、シリカ等)、シランカップリング剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸)、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤、着色剤など、ゴム工業で使用され得る配合剤が挙げられる。このうち加硫促進剤、加硫促進助剤が好ましい。任意成分の含有量は、任意成分の種類等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
ゴム組成物が未加硫ゴム組成物または最終製品である場合、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも硫黄が好ましい。架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上がより好ましく、1.7質量部以上がさらに好ましい。上限は、10質量部以下が好ましく、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが挙げられる。加硫促進剤の含有量は、(D)成分に対し0.1質量部が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.4質量部以上がさらに好ましい。上限は、5質量部以下が好ましく、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
ゴム組成物中、疎水物、ゴム成分および任意成分は、それぞれ独立して存在してもよく、また、少なくとも2成分の反応物など複合体として存在してもよい。ゴム組成物中の各成分の含有量は、通常、原料としての使用量に準じる。
<用途>
本発明のゴム組成物の用途は、特に制限されず、最終製品としてゴムを得るための組成物であればよい。すなわち、ゴム製造用の中間体(マスターバッチ)でもよいし、加硫剤を含む未加硫のゴム組成物でもよいし、最終製品としてのゴムでもよい。最終製品の用途は特に限定されず、例えば、自動車、電車、船舶、飛行機等の輸送機器等;パソコン、テレビ、電話、時計等の電化製品等;携帯電話等の移動通信機器等;携帯音楽再生機器、映像再生機器、印刷機器、複写機器、スポーツ用品等;建築材;文具等の事務機器等、容器、コンテナー等が挙げられる。これら以外であっても、ゴムや柔軟なプラスチックが用いられている部材への適用が可能であり、タイヤへの適用が好適である。タイヤとしては例えば、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用などの空気入りタイヤが挙げられる。
また、本発明の形成されたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物は、マンガン乾電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、リチウム電池、鉛蓄電池、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、ニッケル−亜鉛蓄電池、酸化銀−亜鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、各種のゲル電解質電池、全固体電池、亜鉛−空気蓄電池、鉄−空気蓄電池、アルミニウム−空気蓄電池、燃料電池、太陽電池、ナトリウム硫黄電池、ポリアセン電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ(電気二重層コンデンサともいう)などの各種電池の部材として用いることができ、部材としては、正極または負極などの各電極の電極集電体、活物質、絶縁膜(セパレータ)、電解質膜などとして使用することができる。
化粧品用添加剤としては、これらに限定されないが、化粧品用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。化粧品としては、例えば、化粧水、美容液、乳液、モイスチャークリーム、オールインワンジェル、洗顔フォーム、フォーム剤、クレンジング、パック、サンスクリーン、マッサージ用製品、美白化粧料、アンチエイジング製品、美容マスクなどのスキンケア用品;ファンデーション、口紅、アイブロウ、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、マニキュア、ネイルケア、おしろい、リップクリーム、リップグロス、リップライナー、チーク、BBクリーム、コンシーラーなどのメイクアップ製品;シャンプー、ヘアカラー、トリートメント、ヘアスプレー、液状整髪料、ヘアクリーム、ヘアワックス、ヘアジェル、セットローション、頭皮ケア化粧料、まつ毛ケア化粧料、眉毛ケア化粧料、パーマ剤、染毛剤液、染毛剤クリーム、育毛剤などのヘアケア製品;ボディクリーム、ハンドクリーム、ボディシャンプー、石鹸などのボディケア製品などが挙げられる。また、オイル、リキッド、ワックス、スティック、パウダー、シート状製品に限定されず、液化石油ガス等の噴射剤と共に用いてエアゾールタイプのものとしてもよい。
例えば、ファンデーション、アイブロウ、マスカラなどの粉末状のメイクアップ製品に本発明の添加剤を配合することにより、顔料の分散性を向上させダマを防止する、保形性またはチキソ性を付与して塗りやすさ、定着性、つや感を向上させる、などの効果が得られる。
また、例えば、BBクリーム、モイスチャークリーム、ヘアクリーム、液状整髪料、ヘアジェル、ヘアワックスなどのクリーム状、液状、またはジェル状の化粧品に本発明の添加剤を配合することにより、顔料などの粉末原料の分散性の向上、液体原料の乳化性の向上、チキソ性付与による塗りやすさ、保形性やチキソ性付与による髪のスタイリング性の向上及び持続、また、しなやかさやつや感の向上などの効果が得られる。
また、例えば、シャンプー、石鹸、ボディシャンプー、洗顔料、フォーム剤などの泡状にして用いる化粧品に本発明の添加剤を配合することにより、保形性付与による泡の安定性の向上、泡を洗い流した後の皮膚のすべり感やうるおい感の向上及び持続、などの効果が得られる。
また、例えば、化粧水、美容液などの肌への保湿性付与が期待される化粧品に本発明の添加剤を配合することにより、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーによる保水性付与により高い保湿効果を得ることができる。
また、例えば、ミストタイプの化粧水などに本発明の添加剤を使用すると、チキソ性付与により噴射しやすいという効果を得ることができる。
また、例えば、美容用パックに本発明の添加剤を使用すると、チキソ性、保形性付与により、肌に塗った後に垂れにくく使いやすいという効果を得ることができる。
医薬品用添加剤としては、これらに限定されないが、医薬品用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。使用できる食品としては、これらに限定されないが、錠剤、軟膏、絆創膏、パップ剤、ハンドクリーム、練歯磨などが挙げられる。
製紙用添加剤としては、これらに限定されないが、製紙用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。例えば、表面サイズ剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤、コーティング剤、嵩高紙用添加剤などとして用いることができる。
塗料用添加剤としては、これらに限定されないが、塗料用の保水性付与剤、保形性付与剤、粘度調整剤、乳化安定剤、分散安定剤が挙げられる。塗料としては、クリア系塗料、艶消し塗料、建築用塗料、自動車内装塗料などが挙げられる。
その他、洗剤、ラップ、フィルム、入浴剤などの日用品における分散安定剤、補強材等;食用油や各種溶剤の濾過(水分除去);繊維壁、砂壁、石膏ボードなどの建材の補強材;気泡シールド、連壁止水剤などの土木;発泡スチロール、生分解性樹脂、ゴム、セラミック、塩ビなどの樹脂充填剤、コンパウンド、または補強材;微粒子カーボンブラック、硫酸バリウム(X線造影剤)、酸化チタンや酸化亜鉛の分散などの分散剤;塩化カルシウム等の潮解性剤の吸湿時の保形性改善などの吸湿剤助剤;繊維(生地、糸)の改質剤;液体の担体;潤滑油剤;窯業;猫砂;乾燥剤用吸水材;緑化工法;バインダーなどに用いることもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例をあげてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、部および%は質量部および質量%を示す。
(製造例1)
回転数を150rpmに調節した二軸ニーダーに、水130部と、水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものとを加え、広葉樹パルプ(日本製紙(株)製、LBKP)を100℃60分間乾燥した際の乾燥質量で100部仕込んだ。35℃で80分間撹拌、混合しマーセル化セルロースを調製した。更に撹拌しつつイソプロパノール(IPA)230部と、モノクロロ酢酸ナトリウム60部を添加し、30分間撹拌した後、70℃に昇温して90分間カルボキシメチル化反応をさせた。カルボキシメチル化反応時の反応媒中のIPAの濃度は、50%である。反応終了後、pH7になるまで酢酸で中和、含水メタノールで洗浄、脱液、乾燥、粉砕して、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。
得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を水に分散し、固形分1%(w/v)水分散体とした。これを、140MPaの高圧ホモジナイザーで3回処理し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。得られた分散体の透明度と粘度、また、セルロースナノファイバーの平均繊維径、カルボキシメチル置換度、セルロースI型の結晶化度、及びカルボキシメチル化剤の有効利用率を、上述の方法で測定した。
(製造例2)
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を90%とした以外は製造例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.47、セルロースI型の結晶化度は63%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は56%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を製造例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
(製造例3)
IPAの添加量を変えることによりカルボキシメチル化反応時の反応液中のIPAの濃度を30%とした以外は製造例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を製造例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
(製造例4)
マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム40部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸50部を用いた以外は製造例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.31、セルロースI型の結晶化度は60%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は36%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を製造例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
(比較製造例5)
カルボキシメチル化反応時の溶媒を水100%とし、マーセル化反応時に水酸化ナトリウム20部を水100部に溶解したものに代えて水酸化ナトリウム45部を水100部に溶解したものを用い、カルボキシメチル化反応時のカルボキシメチル化剤としてモノクロロ酢酸ナトリウム60部に代えてモノクロロ酢酸ナトリウム150部を用いた以外は製造例1と同様にして、カルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を得た。カルボキシメチル置換度は0.28、セルロースI型の結晶化度は45%、カルボキシメチル化剤の有効利用率は13%であった。得られたカルボキシメチル化セルロースのナトリウム塩を製造例1と同様にして解繊し、カルボキシメチル化セルロースのナノファイバーの分散体を得た。
Figure 2019206607
(実施例:ゴム組成物)
<実施例1>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの固形分濃度1%水分散液1000gをTKホモミキサー(4000rpm)で撹拌しながらオレイルアミン4.15gを添加、30分間撹拌し、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物を得た。さらにこの疎水物と天然ゴムラテックス固形分濃度10%懸濁液500gを混合して、ゴム成分:疎水物の質量比が100:20となるようにし、TKホモミキサー(8000rpm)で10分間攪拌した。さらにスリーワンモーター(150〜300rpm)で攪拌しながら硫酸アルミニウムの濃度が0.35質量%になるまで硫酸アルミニウム10質量%水溶液を添加し、目開き5μmのナイロンメッシュで固液分離した後、イオン交換水で洗浄し、70℃の加熱オーブン中で10時間乾燥させることにより、マスターバッチを得た。
このマスターバッチに固体の天然ゴムを加え、ゴム成分:変性セルロースナノファイバーの質量比が100:5となるようにし、168gをオープンロール(関西ロール株式会社製)にて、40℃で5分間混練した。次に、ステアリン酸0.7g(ゴム成分100質量部に対し0.5質量部)、酸化亜鉛8.4g(ゴム成分100質量部に対し6質量部)、硫黄4.9g(ゴム成分100質量部に対し3.5質量部)、加硫促進剤(大内新興化学社製、MSA−G、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド))1g(ゴム成分100質量部に対し0.7質量部)を加え、オープンロール(関西ロール株式会社製)を用い、60℃で10分間混練して、未加硫のゴム組成物のシートを得た。
このシートを、金型にはさみ、150℃で10分間プレス加硫することにより、厚さ2mmの加硫ゴム組成物のシートを得た。これを所定の形状の試験片に裁断し、JIS K6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、補強性の一つである引張強度を測定した。各々の数値が大きい程、加硫ゴム組成物が良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れることを示す。
<実施例2>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの代わりに製造例2で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例3>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの代わりに製造例3で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
<実施例4>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの代わりに製造例4で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
<比較例1>
製造例1で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーの代わりに、比較製造例5で得られたカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
<引張強度>
上述の方法で、引張強度を測定した。その結果、セルロースI型の結晶化度が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー疎水物を用いた実施例1〜4は、各々の引張強度が比較例1より大きい数値を示した。実施例のゴム組成物は良好に補強されており、ゴムの機械強度に優れる。

Claims (6)

  1. セルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であり、固形分1%(w/v)の水分散体とした際の波長660nmの光の透過率が60%以上である、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーを疎水化することを特徴とする、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物の製造方法。
  2. 前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーが、水を主とする溶媒下でマーセル化反応を行い、次いで、水と有機溶媒との混合溶媒下でカルボキシメチル化反応を行うことにより製造されたカルボキシメチル化セルロースを、解繊することにより得られたものである、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記水を主とする溶媒が、水を50質量%より多く含む溶媒である、請求項2に記載の製造方法。
  4. カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物であって、前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーのセルロースI型の結晶化度が60%以上であり、カルボキシメチル置換度が0.50以下であることを特徴とする、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物。
  5. 前記カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物の平均繊維径が3nm〜500nmである、請求項4に記載の疎水物。
  6. 請求項4または5記載の、カルボキシメチル化セルロースナノファイバーの疎水物を用いたゴム組成物。
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