JP7012828B2 - グラファイトシートの製造方法及びグラファイトシート用のポリイミドフィルム - Google Patents
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Description
〔1〕リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上に熱処理する工程を含む、グラファイトシートの製造方法。
〔2〕リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下である、グラファイトシート用のポリイミドフィルム。
本発明の一態様のグラファイトシートの製造方法は、リンの含有量が0.025重量%以上、0.032重量%以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上に熱処理する工程を含むものであればよい。
炭化工程は、ポリイミドフィルムを1000℃程度の温度まで熱処理し、ポリイミドフィルムを炭素化する工程である。例えば、最高温度は、700℃~1800℃であることが好ましく、800℃~1500℃であることがより好ましく、900℃~1200℃であることがさらに好ましく、1000℃であることが特に好ましい。
黒鉛化工程は、炭化工程で得た炭素質フィルムを2400℃以上の温度まで熱処理し、炭素質フィルムを黒鉛化する工程である。例えば、最高温度は、2400℃以上、2500℃以上、2600℃以上、2700℃以上、2800℃以上、2900℃以上、又は3000℃以上を好ましく例示できる。上限は特に限定されないが、3300℃以下であることが好ましく、3200℃以下であることがより好ましい。なお、黒鉛化工程は、減圧下もしくは不活性ガス中でおこなわれるが、不活性ガスとしてはアルゴン、又はヘリウムが適当である。
黒鉛化後の炭素質フィルムに圧縮工程を施してもよい。圧縮工程を施すことによって、得られるグラファイトシートに柔軟性を付与することができる。圧縮工程は、面状に圧縮する方法や、金属ロールなどを用いて圧延する方法などを用いることができる。圧縮工程は室温で行っても、黒鉛化工程中に行ってもかまわない。
前記製造方法で得られるグラファイトシートの熱拡散率は、8.0cm2/s以上であることが好ましく、8.3cm2/s以上であることがより好ましく、8.5cm2/s以上であることがさらに好ましい。
以下、本発明の一実施形態に使用し得るポリイミドフィルムについて詳説する。前記製造方法に用いられるグラファイトシート用のポリイミドフィルムは、酸二無水物成分と、ジアミン成分とを原料とするポリイミドフィルムであり、所定量のリンを含有するものである。
ポリイミドフィルムは、リンの含有量が0.025重量%~0.032重量%であることが好ましく、0.027重量%~0.030重量%であることがより好ましい。かかる範囲内であれば、最終的に得られるグラファイトシートの熱拡散性及び柔軟性の両方の物性が優れる。
使用し得る酸二無水物成分は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7,-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を挙げることができる。これらを任意の割合で混合することができる。なかでも、ピロメリット酸二無水物や3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。かかる酸二無水物成分を使用することにより、最終的に得られるグラファイトシートの物性が良好なものとなる。
使用し得るジアミン成分は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,3-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノベンゼン及びそれらの類似物を挙げることができる。これらを任意の割合で混合することができる。なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルやp-フェニレンジアミンを使用することが好ましい。かかるジアミン成分を使用することにより、最終的に得られるグラファイトシートの物性が良好なものとなる。
ポリイミドフィルムの厚みは、12.5μm~125μm、好ましくは25μm~100μm、より好ましくは35μm~75μmである。前記範囲内であれば、厚み方向に均一に熱処理されるため、熱拡散性が向上する。
ポリイミドのイミド化方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱してイミド転化する熱キュア法、または、無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤や、ピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類に代表されるイミド化促進剤を用いて、前駆体であるポリアミド酸をイミド転化するケミカルキュア法、のいずれを用いてもよい。ケミカルキュア法を用いる場合のイミド化促進剤としては、上で挙げた第3級アミン類が好ましい。
ポリアミド酸の製造方法としては特に制限されないが、例えば、芳香族酸二無水物とジアミンとを実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解し、この有機溶液を芳香族酸二無水物とジアミンとの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌することによってポリアミド酸が製造され得る。重合方法としては特に制限されないが、例えば次のような重合方法(1)-(5)のいずれかが好ましい。なお、(1)-(5)では、芳香族酸二無水物として芳香族テトラカルボン酸二無水物を、ジアミンとして芳香族ジアミン化合物を用いた場合を例示している。
〔1〕リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上に熱処理する工程を含む、グラファイトシートの製造方法。
〔2〕前記ポリイミドフィルムのリンの含有量が0.027重量%以上0.030重量%以下である、〔1〕に記載のグラファイトシートの製造方法。
〔3〕リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下である、グラファイトシート用のポリイミドフィルム。
〔4〕リンの含有量が0.027重量%以上0.030重量%以下である、〔3〕に記載のグラファイトシート用のポリイミドフィルム。
ポリイミドフィルムのリンの含有量を、用いたリン酸塩の分子量とリンの原子量との比から計算して求めた。
後述の方法で得られたグラファイトシートのMIT耐屈曲試験における折り曲げ回数を測定し、柔軟性の評価方法とした。試験方法について、以下に示す。MIT耐屈曲試験では、東洋精機(株)社製MIT耐揉疲労試験機型式Dを用いた。試験条件は、R=2mm、左右の折り曲げ角度:135°、スプリング:φ14mmとした。
A:折り曲げ回数が50000回以上
B:折り曲げ回数が40000回以上50000回未満
C:折り曲げ回数が30000回以上40000回未満
D:折り曲げ回数が20000回以上30000回未満
E:折り曲げ回数が20000回未満
<熱拡散性>
後述の方法で得られたグラファイトシートの熱拡散率を以下の方法で測定した。具体的には、光交流法に基づく熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社の「LaserPit」)を用い、4mm×40mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、20℃の雰囲気下で10Hzの交流条件下で測定した。
(製造例1)
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)を溶解したジメチルホルムアミド溶液に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)を、ODAとPMDAとが当モル量となるように溶解して、ポリアミド酸を18.5重量%含むポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.11重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した。この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびジメチルホルムアミドを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に厚さ75μmになるようにアルミ箔上に塗布し、混合溶液層を得た。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブン及び遠赤外線ヒーターを用いて乾燥した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.12重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.027重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-2)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.13重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.030重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-3)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.14重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.032重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-4)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素二アンモニウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.12重量%となるようにリン酸水素二アンモニウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.028重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-5)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.10重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.023重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-6)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、リン酸水素カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.15重量%となるようにリン酸水素カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0.034重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-7)を作製した。
得られたポリアミド酸溶液に、炭酸カルシウムの濃度がポリアミド酸の固形分に対して0.15重量%となるようにリン酸水素カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを添加した以外は、製造例1と同様にして、リンの含有量0重量%、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-8)を作製した。
(実施例1)
サイズ200mm×200mm、厚さ75μmのポリイミドフィルム(A-1)を、サイズ220mm×220mmの黒鉛シートで挟み(ポリイミドフィルム1枚と黒鉛シートとを交互に積層)、窒素雰囲気下で、0.5℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温した後、1000℃で10分間熱処理して炭化した。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは36μm、密度は1.87g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは37μm、密度は1.92g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは37μm、密度は1.92g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-5)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは36μm、密度は1.87g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-6)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは35μm、密度は1.97g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-7)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは38μm、密度は1.82g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
ポリイミドフィルム(A-1)の代わりにポリイミドフィルム(A-8)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3のグラファイトシートを作製した。圧縮後のグラファイトシートの厚みは34μm、密度は2.03g/cm3であった。圧縮後のグラファイトシートについて、上述の試験により特性を調べた。
Claims (4)
- リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上に熱処理する工程を含む、グラファイトシートの製造方法。
- 前記ポリイミドフィルムのリンの含有量が0.027重量%以上0.030重量%以下である、請求項1に記載のグラファイトシートの製造方法。
- リンの含有量が0.025重量%以上0.032重量%以下である、グラファイトシート用のポリイミドフィルム。
- リンの含有量が0.027重量%以上0.030重量%以下である、請求項3に記載のグラファイトシート用のポリイミドフィルム。
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