JP7008004B2 - 無機酸化物中空粒子及びその製造方法 - Google Patents
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一方、特許文献4に記載される中空粒子は、2つ以上のピークを有する多峰性の粒度分布を有する中空粒子であり、最密充填性が高く、断熱、遮熱等の効果の向上を期待できる。しかしながら、この中空粒子は、2つのピークが大径粒子と小径粒子とから構成されるため、樹脂等に混合後、気泡の除去等を行うために振動を加えたり、移送中に振動が加わると、粒度の相違に起因して分離が起こりやすい。特に、このような分離が樹脂等と混合した後に起こると、樹脂中で中空粒子の分散が不均一になり、断熱、遮熱の効果の低下だけでなく、凹凸等により表面性状の悪化も避けられない。
本発明の課題は、粒度の相違による分離が起こり難く、最密充填性に優れる無機酸化物中空粒子及びその製造方法を提供することにある。
〔1〕粒度分布において2つ以上のピークを有する無機酸化物中空粒子であって、
最小ピークの強度が、最大ピークの強度を100としたときに50以上100未満であり、かつ
ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度が、最大ピークの強度を100としたときに30以上99以下である、
無機酸化物中空粒子。
〔2〕最大ピーク強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、〔1〕記載の無機酸化物中空粒子。
〔3〕最小ピーク強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、〔1〕又は〔2〕記載の無機酸化物中空粒子。
〔4〕ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の無機酸化物中空粒子。
〔5〕噴霧熱分解装置内に2以上のノズルを装着し、各ノズルから平均粒子径の異なるミストを噴霧する工程を含む、無機酸化物中空粒子の製造方法。
本発明の無機酸化物中空粒子は、粒度分布において2つ以上のピークを有しており、最小ピークの強度が、最大ピークの強度を100としたときに50以上100未満であり、かつピーク間の谷間の強度のうちの最小強度が、最大ピークの強度を100としたときに30以上99以下であるという特徴を有するものである。
ここで、本明細書において「粒度分布」とは、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠して測定される、体積基準の粒度分布をいう。そして、粒度分布は、横軸を粒子径(μm)、縦軸を体積基準の頻度(%)とする分布曲線により表される。なお、レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、例えば、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用することができる。
最小ピーク強度を与える粒子の粒子径は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、0.1~100μmが好ましく、0.1~50μmがより好ましく、0.1~30μmが更に好ましい。ここで、本明細書において「最小ピーク強度を与える粒子の粒子径」とは、最小ピークの頂点に相当する粒子の粒子径をいう。また、最小ピーク強度を与える粒子の粒子径は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、最大ピーク強度を与える粒子の粒子径に対して、通常1.5~15倍、好ましくは2~10倍の大きさであることが好ましい。
ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、0.1~100μmが好ましく、0.1~50μmがより好ましく、0.1~30μmが更に好ましい。ここで、本明細書において「ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径」とは、ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度に相当する粒子の粒子径をいう。また、ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径は、最大ピーク強度を与える粒子の粒子径よりも大きく、最小ピーク強度を与える粒子の粒子径よりも小さいことが分離の抑制、最密充填性の向上の観点から好ましい。例えば、ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、最大ピーク強度を与える粒子の粒子径に対して、通常1.5~5倍、好ましくは1.5~3倍の大きさであって、最小ピーク強度を与える粒子の粒子径に対して、通常0.1~0.9倍、好ましくは0.2~0.8倍の大きさである。
また、最小ピークの山の粒子は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、全粒子中に、好ましくは10~90体積%、より好ましくは20~80体積%、更に好ましくは30~70体積%である。
本発明の無機酸化物中空粒子は、粒度分布において上記特性を有すれば、適宜の方法により製造することが可能であり、特に限定されない。例えば、粒度分布において2つのピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合、噴霧熱分解装置内にノズルからミストを噴霧し噴霧熱分解法により第1の無機酸化物中空粒子を製造し、次いで第1の無機酸化物中空粒子とは仕様の異なるノズルを使用するか、あるいは第1の無機酸化物中空粒子とは異なる噴霧条件を採用して噴霧熱分解法により第2の無機酸化物中空粒子を製造し、粒度分布が上記特性を具備するように第1の無機酸化物中空粒子と第2の無機酸化物中空粒子とを混合する方法を挙げることができる。
また、粒度分布において3つピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合、第1、2の無機酸化物中空粒子とは仕様の異なるノズルを使用するか、あるいは第1、2の無機酸化物中空粒子とは異なる噴霧条件を採用して噴霧熱分解法により第3の無機酸化物中空粒子を製造し、粒度分布が上記特性を具備するように第1~3の無機酸化物中空粒子を混合すればよい。
なお、粒度分布において4つ以上のピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合には、上記と同様の操作を繰り返し行えばよい。
また、異なる噴霧条件としては、例えば、ノズルから噴霧するミストの平均粒子径の制御、液滴径の異なるノズルチップの使用等を挙げることができる。
更に、粒度分布において2つのピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合には、噴霧熱分解装置内に2つのノズルを装着し、各ノズルから互いに異なる噴霧条件でミストを噴霧してもよい。また、粒度分布において3つのピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合には、噴霧熱分解装置内に3つのノズルを装着し、各ノズルから互いに異なる噴霧条件でミストを噴霧してもよい。このように、所望するピーク数に応じてノズルの設置本数を選択し、各ノズルから互いに異なる噴霧条件でミストを噴霧すればよい。この場合、使用するノズルは、同一でも異なっていてもよい。
被噴霧液体の流量は、分離の抑制、最密充填性の向上、生産性の観点から、1~100L/hが好ましく、3~80L/hがより好ましく、5~60L/hが更に好ましい。
粒度分布において2つのピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合には、平均粒子径が0.1~20μmの第1のミストと、平均粒子径が1~50μmの第2のミストとの組み合わせが好ましく、平均粒子径が0.5~10μmの第1のミストと、平均粒子径が5~35μmの第2のミストとの組み合わせが更に好ましい。また、第2のミストの平均粒子径は、分離の抑制、最密充填性の向上の観点から、第1のミストの平均粒子径に対して、通常2~10倍、好ましくは2~6倍の大きさである。
また、粒度分布において3つのピークを有する無機酸化物中空粒子を製造する場合には、平均粒子径が0.1~20μmの第1のミストと、平均粒子径が1~50μmの第2ミストと、平均粒子径が第1のミスト及び第2のミストとは異なる第3のミストとの組み合わせが好ましく、平均粒子径が0.5~10μmの第1のミストと、平均粒子径が5~35μmの第2ミストと、平均粒子径が第1のミスト及び第2のミストとは異なる第3のミストとの組み合わせが更に好ましい。また、第2のミストの平均粒子径は、第1のミストの平均粒子径に対して、通常2~15倍、好ましくは3~10倍、更に好ましくは4~8倍の大きさであり、第3のミストの平均粒子径は、第1のミストよりも大きく、第2のミストよりも小さいことが分離の抑制、最密充填性の向上の観点から好ましい。
熱分解ゾーンの温度は、800~1500℃が好ましく、800~1300℃が更に好ましい。この熱分解ゾーンでは、高温で急激に熱分解反応を進めることで、乾燥ゾーンにて形成された中空構造を強固にすることにより、中空室を区画する殻を有する無機酸化物中空粒子であって、殻の厚さの一定な無機酸化物中空粒子が得られる。
噴霧熱分解装置に二流体ノズルを2基設置し、蒸留水1L当たり硝酸アルミニウムを0.04mol、オルトケイ酸テトラエチルを0.16mol溶解したアルミニウム及びケイ素の混合水溶液を溶液タンクに投入した。投入された水溶液をポンプで各二流体ノズルに送液し、各二流体ノズルから平均粒子径が7μm及び33μmのミストを噴霧した。また、ミストは、フレームと接触しないように噴霧した。ミストが通過する加熱炉の内部温度は1000℃とした。その後、バグフィルターを用いてアルミノシリケート中空粒子を回収した。
噴霧熱分解装置に二流体ノズルを3基設置し、各二流体ノズルから平均粒子径が3μm、6μm及び20μmのミストを噴霧したこと以外は、実施例1と同様の操作によりアルミノシリケート中空粒子を製造した。
実施例2において、平均粒子径が3μmのミストを噴霧した二流体ノズルの噴霧条件を制御し、平均粒子径が3μmよりも微粒なミストを噴霧したこと以外は、実施例2と同様の操作によりアルミノシリケート中空粒子を製造した。
平均粒子径が1μmであり、かつ粒度分布のピークがシャープなアルミノシリケート中空粒子と、平均粒子径10μmであり、かつ粒度分布のピークがシャープなアルミノシリケート中空粒子とをミキサータイプの混合機にて十分混合し、アルミノシリケート中空粒子を得た。
実施例1~3、比較例1で得られたアルミノシリケート中空粒子について、JIS R1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠して体積基準の粒度分布を測定した。なお、レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用した。そして、得られた粒度分布から、各アルミノシリケート中空粒子の特性を分析した。その結果を表1に示す。なお、図1に実施例1で得られたアルミノシリケート中空粒子の粒度分布を、図2に実施例2で得られたアルミノシリケート中空粒子の粒度分布を、図3に実施例3で得られたアルミノシリケート中空粒子の粒度分布を、それぞれ示す。
実施例1~3、比較例1で得られたアルミノシリケート中空粒子を、容器(3cm×3cm×15cm)に高さ10cmまで詰め、容器をバイブレーターで振動させて、上層と下層に分離させた。次いで、下層のアルミノシリケート中空粒子について粒度分布を測定した。そして、評価前後における最大ピーク強度と最小ピーク強度との比(最小ピーク/最大ピーク)の変化量を下記式(1)により算出し、以下の基準にて評価した。
○:0~15%
△:16~30%
×:31~45%
Claims (4)
- レーザ回折・散乱法により測定される体積基準の粒度分布において2以上のピークを有する無機酸化物中空粒子であって、
最小ピークの強度が、最大ピークの強度を100としたときに50以上100未満であり、かつ
ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度が、最大ピークの強度を100としたときに30以上99以下である、
無機酸化物中空粒子(但し、酸化ホウ素及び二酸化ケイ素の混合酸化物を除く)。 - 最大ピーク強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、請求項1記載の無機酸化物中空粒子。
- 最小ピーク強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、請求項1又は2記載の無機酸化物中空粒子。
- ピーク間の谷間の強度のうちの最小強度を与える粒子の粒子径が0.1~100μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の無機酸化物中空粒子。
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