JP6987318B1 - 永久磁石同期モータ - Google Patents
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Abstract
Description
一般的に、表面磁石型の永久磁石同期モータが発生するトルクTは、
q軸電流Iqが必要であるからq軸電流Iqの減少はトルク低下につながる。このため、高回転または高速時に大トルクを出力するには、小さなd軸電流Idで効果的な弱め磁束制御を行う必要がある。これを行うためにd軸インダクタンスLdを大きくし、小さなd軸電流Idで効果的な弱め磁束制御を行う技術として以下の先行技術文献がある。
本先行技術では、ロータコア表面に配置された複数の永久磁石に嵌るように、ロータコアから径方向に突出した突起を形成することでd軸インダクタンスLdを大きくし弱め界磁制御を効果的に機能させ高回転時のトルク出力を改善している。
実施の形態1に係る永久磁石同期モータについて説明する。図1は、本実施の形態に係る永久磁石同期モータ100を軸方向と垂直に切断した構成を示す断面図である。ここで、永久磁石同期モータ100におけるロータ20の軸心に沿う方向を軸方向とする。軸方向に垂直なロータ20の断面において、ロータ20の半径に沿う方向を径方向とする。ロータ20の回転方向に沿う方向、すなわち、上記断面においてロータ20の軸心を中心とした円周に沿う方向を周方向とする。
永久磁石同期モータは、モータ入力電圧Viを越える端子電圧Vtを発生してトルクTを出力することができない。一般的に、回転数が上がると次式(1)〜(4)で示す式に従って端子電圧Vtが増大する。
Vt=√(Vd2+Vq2)・・・(1)
Vd=RId+ωLqIq・・・(2)
Vq=RIq+ωΦm+ωLdId・・・(3)
ω=2πf=2π(N/60)pn・・・(4)
ここで、Vd、Vqはdq軸電圧、Rは相抵抗、Id、Iqはdq軸電流、Φmは磁石磁束、Ld、Lqはdq軸インダクタンス、ωは角速度、fは周波数、Nは1分間当たりの回転数、pnは極対数である。永久磁石同期モータでは、高回転におけるトルク出力を増大させる制御方式として、端子電圧増大を抑制する、所謂、弱め磁束制御がある。この弱め磁束制御は磁石磁束Φmを弱める方向にd軸電流Idを通電する制御方式であるが、d軸インダクタンスLdが小さい場合、大きなd軸電流Idを流す必要がある。しかしながら、モータに通電することができる電流には上限があり、インバータからモータに供給する電流をIinvとすると、次式(5)となる。
√3×Iinv=√(Id2+Iq2)・・・(5)
T=PnΦmIq・・・(6)
であるから、d軸電流Idが増大するとトルクTを出力するためのq軸電流Iqが減少しトルク出力が低下する。従って、高回転でのトルクTを大きくするには少ないd軸電流Idで弱め磁束制御を効果的に得る必要があり、d軸インダクタンスLdを増大する必要がある。このために、図3に示す構造とすることでd軸インダクタンスLdを向上することができる。図4は、横軸を速度(回転数)、縦軸をトルク出力とした速度‐トルク特性と呼ばれるものである。図4に示すように、突起24、および、凹部25を適用することにより、高回転数(高速度)でのトルク出力が増大していることが分かる。
Pc≒Hm/gm・・・(7)
本実施の形態1では、図1、2に示すように、永久磁石22の外径と凹部25の最短距離L2がL1≦L2となるように永久磁石22の凹部25を円弧形状としている。
実施の形態2に係る永久磁石同期モータについて説明する。図9は、本実施の形態2に係る永久磁石同期モータを軸方向と垂直に切断し、図2と同様に永久磁石22の近傍を拡大した断面図である。図9には、図示していないが図1と同様にステータ10、ロータ20によって構成されている。
永久磁石22の凹部は、凹部251a、凹部251b、凹部251cの3か所を有しており、ロータコア21から径方向に突出する突起は、突起241a、突起241b、突起241cの3つを有している。
また、本実施の形態2において、図9に示すように、永久磁石22の中央部に位置する凹部251a、および、突起241aが最も外径側に位置している。
ロータコアは1極当たり奇数個の突起を有し、複数の突起を1組の突起とする突起集合体を有し、突起集合体の周方向外側において、凹部は周方向外側の凹部と永久磁石の外径円弧部との間の最短距離L2がL1≦L2に形成されている。
ここで、図9において、凹部251b、凹部251cは同じ寸法となっているが、必ずしも、同じ寸法である必要はない。しかしながら、トルクリップル、コギングトルク等を低減する観点から考慮すると、同じ寸法である方が望ましい。
図10は、本実施の形態2に係る永久磁石22の減磁率分布と、比較となる先行技術の減磁率分布を示した図である。図10(a)はL1>L2、図10(b)は実施の形態2の場合における減磁率分布を示している。濃い部分は減磁率が高く、淡い部分は減磁率が低いことを表示している。図10に示すように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に減磁率高い分布が狭くなっていることが分かる。また、図11、図12は、先行技術のようなL1>L2の形態と本実施の形態2における減磁前の誘起電圧と減磁後の誘起電圧低下率を示した図である。ここで、各図は先行技術の誘起電圧と誘起電圧低下率を1として規格化した図である。
以上のことから、永久磁石22に複数の凹部、および、ロータコア21に複数の突起を有する図9の形態とすることにより先行技術と比較してモータの特性低下を抑制することが可能となる。また、速度―トルク特性の高速域の出力増大効果は、突起を有しているため図4同様に得ることが可能である。
ロータコア21の突起241a〜241cと、永久磁石22の凹部 251a〜251cは、形状が異なり、突起241aと突起241b、または、突起241aと突起241cの間に永久磁石22が全て嵌っていなく、空隙を有している。図14における空隙は、図13における空隙より大きくなっている。一般的に、永久磁石に使用されるNd−Fe−B系の磁石は重希土類を使用しているため、高価である。このような構成にすることで、永久磁石22の使用量を削減し、コスト低減が可能となる。また、永久磁石の加工を容易にすることもでき、加工のための費用を削減することができる。
図13、図14のように構成することで、誘起電圧は多少低下するものの、実施の形態2と同様の効果を得られるため問題ない。
本実施の形態2として図9、図13〜図17に示した永久磁石は、3つの突起を有した形状となっているが、突起の数は3以上の奇数で構成されていても問題ない。
実施の形態3に係る永久磁石同期モータについて説明する。図18は、本実施の形態3に係る永久磁石同期モータのロータの永久磁石付近を拡大した図で、シャフトの軸方向と垂直に切断した断面図である。
このように、ロータコアは1極当たり偶数個の突起を有し、複数の突起を1組の突起とする突起集合体を有し、突起集合体の周方向外側において、凹部は周方向外側の凹部と永久磁石の外径円弧部との間の最短距離L2がL1≦L2に形成されている。
図19は、本実施の形態3に係る永久磁石22の減磁率分布と、比較となる先行技術の減磁率分布を示した図である。図19(a)はL1>L2、図19(b)は実施の形態2の場合における減磁率分布を示している。濃い部分は減磁率が高く、淡い部分は減磁率が低いことを表示している。図19に示すように、実施の形態3においても実施の形態1、2と同様に減磁率高い分布が狭くなっていることが分かる。図20は、先行技術であるL1>L2の誘起電圧を1として規格化し、本実施の形態の誘起電圧と比較した結果である。また、図21は、先行技術であるL1>L2の誘起電圧低下率を1として規格化して、本実施の形態の誘起電圧低下率と比較した図である。
図22は、2個の突起242a、突起242bに挟まれた永久磁石22がロータコア21まで伸びておらず途中までとなっている点が異なる。本形態とする理由としては、突起242a、突起242bに挟まれた部分の周方向幅が狭い場合、磁石の割れあるいは欠けが発生する可能性がある他、製造できない可能性がある。このため、生産可能性を考えた場合、永久磁石22の底面が外周側よりも外径側に位置する構造となる方が望ましい。この構成においても図18に示した本実施の形態3と同様の効果を得ることが可能である。
また、図23に示したように、突起242a、突起242bに挟まれたロータコアが外径側に位置する変形形態2も考えられる。本変形形態2においても、実施の形態3の効果を同様に得ることが可能である。
また、図24の変形形態3および図25の変形形態4は、凹部において、最短距離L2を形成する部分の形状は最外部形状が円弧形状となっており、また、図26の変形形態5は、凹部において、最短距離L2を形成する部分の形状は斜めに形成されている。これらの変形形態においても、実施の形態3の効果を同様に得ることができる。
実施の形態4に係る永久磁石同期モータについて説明する。図27は、本実施の形態4に係る永久磁石同期モータにおけるロータ部分をシャフトの軸方向と垂直に切断した構成を示す断面図である。基本的な構成は、実施の形態1〜3と同様であり、以下の点で異なる。
本実施の形態では、図27に示したようにロータのロータコア21にスリット26が設けられている。本スリット26を配置することにより、永久磁石同期モータにおけるq軸インダクタンスLqを低減することが可能となる。従って、前述の式(1)〜式(4)に記載のωLqIqを低下させることができ、d軸電圧Vdの低減および端子電圧Vtの低減につながる。つまり、電圧飽和を緩和することにつながり速度―トルク特性を増大することが可能となる。
図28、図29も同様にスリット26が配置されている。なお、図27は図2の構成に対応し、図28は図9の構成に対応し、図29は図18の構成に対応している。
図27〜図29はスリット配置の一例である。永久磁石同期モータにおけるq軸磁束Φqに対して磁気抵抗が大きくなるようにスリットを配置するものであれば、これらに限定されない。また、図27〜図29においてスリットは1極当たり2本配置されているが、それ以上配置されていても問題ない。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
Claims (8)
- ステータの内側に空隙を介してロータが配置され、
前記ロータは磁性体によって構成されたロータコアを有し、前記ロータコアの外周表面には、複数の永久磁石が周方向に配置されており、
前記永久磁石が配置された前記ロータコアの外周表面には、前記ロータコアの径方向に突出して形成された突起を有し、
前記永久磁石は、前記ステータの内側と対向する外周表面が円弧状であり、且つ、前記ロータコアの外周表面と対向する内面には前記突起が嵌る凹部を有している永久磁石同期モータであって、
前記突起および前記凹部は、前記凹部に前記突起が嵌る部分において前記ステータに他よりも近い面の形状が円弧であり、
前記凹部の面と前記永久磁石の円弧状外周表面との最短距離をL1とし、
前記凹部の前記ステータに他よりも近い面に対して、前記永久磁石の磁石中央に向かって前記ロータのシャフトの中心から前記永久磁石に向かう放射状の線分と垂直となる接線と、前記凹部において、前記永久磁石の周方向端部側の前記永久磁石と前記ロータコアの貼付面から前記永久磁石の凹部への切り替えとなる周方向外側の点を始点として、
前記ロータのシャフト中心から前記永久磁石の中心に向かう放射状の線分に平行な平行線との交点を通過し、
前記凹部と前記円弧状外周表面との最短距離をL2としたときに、L1≦L2となる前記凹部を有する前記永久磁石を備えたことを特徴とする永久磁石同期モータ。 - ステータの内側に空隙を介してロータが配置され、
前記ロータは磁性体によって構成されたロータコアを有し、前記ロータコアの外周表面には、複数の永久磁石が周方向に配置されており、
前記永久磁石が配置された前記ロータコアの外周表面には、前記ロータコアの径方向に突出して形成された突起を有し、
前記永久磁石は、前記ステータの内側と対向する外周表面が円弧状であり、且つ、前記ロータコアの外周表面と対向する内面には前記突起が嵌る凹部を有している永久磁石同期モータであって、
前記突起および前記凹部は、前記凹部に前記突起が嵌る部分において前記ステータに他よりも近い面の形状が、永久磁石の磁石中央に向かって前記ロータのシャフトの中心から前記永久磁石の中心に向かう放射状の線分に対して垂直となる平面であって且つ前記平面の角部は、円弧、または、斜めに形成されており、
前記凹部の面と前記永久磁石の円弧状外周表面との最短距離をL1とし、
前記凹部の前記ステータに他よりも近い面に対して、前記放射状の線分と垂直となる接線と、前記凹部において、前記永久磁石の周方向端部側の前記永久磁石と前記ロータコアの貼付面から前記永久磁石の凹部への切り替えとなる周方向外側の点を始点として、
前記ロータのシャフト中心から前記永久磁石の中心に向かう放射状の線分に平行な平行線との交点を通過し、
前記凹部と前記円弧状外周表面との最短距離をL2としたときに、L1≦L2となる前記凹部を有する前記永久磁石を備えたことを特徴とする永久磁石同期モータ。 - 前記ロータコアは1極当たり複数個の突起を有し、複数の前記突起を1組の突起とする突起集合体を有し、前記突起集合体の周方向外側において、前記凹部は周方向外側の前記凹部と前記永久磁石の外径円弧部との間の最短距離をL2とし、L1≦L2に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の永久磁石同期モータ。
- 前記突起および前記凹部の数は、2以上の偶数であることを特徴と請求項3に記載の永久磁石同期モータ。
- 前記突起および前記凹部の数は、3以上の奇数であることを特徴とする請求項3に記載の永久磁石同期モータ。
- 前記凹部と前記突起の少なくとも1面が接していることを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の永久磁石同期モータ。
- 前記複数の突起および前記複数の凹部は、前記永久磁石の周方向中央を基軸として、鏡面対象であることを特徴とする請求項3から請求項5の何れか1項に記載の永久磁石同期モータ。
- 前記ロータには、永久磁石同期モータにおけるq軸磁束Φqに対して磁気抵抗が増大するようにスリットを設けたことを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の永久磁石同期モータ。
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