JP6962129B2 - 積層コイル部品及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層コイル部品及びその製造方法に関する。
素体と、素体内に第一方向で互いに離間して配置された複数の内部導体がスルーホール導体によって互いに電気的に接続されることにより構成されるコイルと、を備えた積層コイル部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。内部導体は、コイル部と、第一方向から見てコイル部の幅よりも広い幅を有するパッド部と、を有している。第一方向で互いに隣り合うパッド部は、スルーホール導体で互いに接続されており、かつ、第一方向から見て互いに重なっている。第一方向から見て、幅の狭いコイル部が、当該コイル部と第一方向で隣り合う幅の広いパッド部に重なっている。
特開2001−176725号公報
一般に、積層コイル部品の製造方法は、内部導体となる導体パターンをグリーンシート上に設ける工程と、導体パターンが設けられた複数のグリーンシートを積層する工程と、を含んでいる。積層する工程では、積層方向で互いに隣り合う導体パターンが互いに積層方向に直交する方向にずれる積層ずれが生じる場合がある。
上記特許文献1に記載の積層コイル部品を製造する際には、積層する工程において、幅の狭いコイル部となるコイル導体パターンに対し、幅の広いパッド部となるパッド導体パターンが積層方向で隣り合うので、当該隣り合うコイル導体パターンとパッド導体パターンとの積層ずれが大きくなる。その結果、積層する工程を経て製造された積層コイル部品において、第一方向で互いに隣り合う内部導体が互いに第一方向に直交する方向にずれる積層ずれが生じ易い。たとえば内部導体が外側に飛び出すような積層ずれが生じる場合、当該積層ずれは、積層する工程において、導体パターンが外側に飛び出すようにずれて積層されることによる。この場合、積層する工程の後にグリーンシートの積層体を所定の大きさのチップに切断する際、切断位置と導体パターンとの間の余長が、導体パターンが外側に飛び出した分だけ損失してしまう。また、たとえば内部導体が内側に飛び出すような積層ずれが生じると、内部導体が内側に飛び出した分だけコイルの内径が小さくなってしまい、所望のL値が得られなくなるおそれがある。また、積層ずれが大きくなると、第一方向で互いに隣り合うパッド部同士の接続不良が生じるおそれもある。
そこで、本発明は、積層ずれが抑制された積層コイル部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る積層コイル部品は、素体と、素体内に第一方向で互いに離間して配置されている複数の第一内部導体がスルーホール導体によって互いに電気的に接続されることにより構成されるコイルと、複数の第一内部導体のうちの少なくとも一つと同層に配置された少なくとも一つの第二内部導体と、を備え、第一内部導体は、コイル部と、第一方向から見てコイル部の幅よりも広い幅を有するパッド部と、を有し、第一方向で互いに隣り合うパッド部は、スルーホール導体で互いに接続されており、かつ、第一方向から見て互いに重なっており、第一方向から見て、コイル部は、第一方向で隣り合うパッド部に重なっていない第一部分と、第一方向で隣り合うパッド部の一部に重なっている第二部分と、を含んでおり、第一方向から見て、第二内部導体は、第二部分と同層に配置されていると共に、第一方向で隣り合うパッド部における第二部分からはみ出した部分に重なるように位置する。
本発明に係る積層コイル部品では、第一内部導体がコイル部とパッド部とを有している。第一方向から見て、コイル部は、第一方向で隣り合うパッド部に対して重なっていない第一部分と、第一方向で隣り合うパッド部に対して重なっている第二部分とを含んでいる。よって、第一方向から見て、パッド部は、コイル部の第二部分が重なっている部分と、コイル部の第二部分が重なっておらず当該第二部分からはみだした部分とを含んでいる。第一方向から見て、パッド部における第二部分からはみ出した部分に、第二部分と同層に配置された第二内部導体が重なるように位置している。つまり、第一方向から見て、第一内部導体の第二部分と第二内部導体とが、第一方向で隣り合うパッド部に重なっているので、第一内部導体のみが当該パッド部に重なっている場合に比して、第一方向で互いに隣り合う内部導体が互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、第一方向から見て互いに隣り合う内部導体が、第一方向に直交する方向に互いにずれ難く、積層ずれが抑制される。
本発明に係る積層コイル部品において、第二内部導体は、第一内部導体における第二部分と一体的に形成されており、第一方向から見て、第二部分と第二内部導体とは、コイル部における隣り合うパッド部に重なっている第三部分を構成しており、第三部分の幅は、第一部分の幅よりも広くてもよい。この場合、コイル部における隣り合うパッド部に重なっている第三部分の幅が、コイル部における隣り合うパッド部に重なっていない第一部分の幅よりも広くなっている分、第一方向で互いに隣り合う内部導体が互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、積層ずれが確実に抑制される。
本発明に係る積層コイル部品において、第二内部導体は、第一内部導体における第二部分と分離していてもよい。この場合、第一内部導体における第二部分に加え、当該第二部分とは分離している第二内部導体が、第一方向で隣り合うパッド部に重なっている。よって、第二部分のみが当該パッド導体部に重なっている場合に比して、第一方向で互いに隣り合う内部導体が互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、積層ずれが確実に抑制される。
本発明に係る積層コイル部品において、第一方向から見て、コイル部における隣り合うパッド部に重なっている部分の幅は、隣り合うパッド部の幅よりも狭くてもよい。この場合、コイル部における隣り合うパッド部に重なっている部分の幅が、第一方向で隣り合うパッド部の幅よりも狭いことにより、コイル部の内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎない。よって、所望のL値が確保される。
本発明に係る積層コイル部品において、第一方向から見て、第二内部導体は、第一内部導体の第二部分の内側に位置しており、第二内部導体の全体が、隣り合うパッド部におけるはみ出した部分に重なっていてもよい。この場合、第一内部導体の第二部分の内側に位置している第二内部導体の全体が、第一方向で隣り合うパッド部におけるはみ出した部分に重なっていることにより、コイル部の内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎない。よって、所望のL値が確保される。
本発明に係る上記積層コイル部品を製造する製造方法は、絶縁体層となるグリーンシート上に、第一及び第二内部導体となる導体パターンを設ける工程と、導体パターンが設けられた複数のグリーンシートを積層する工程と、を含み、導体パターンは、第一内部導体となる第一内部導体パターンと、第二内部導体となる第二内部導体パターンと、を含み、第一内部導体パターンは、コイル部となるコイル導体パターンと、パッド部となるパッド導体パターンと、を含み、コイル導体パターンは、第一部分となる第一部分導体パターンと、第二部分となる第二部分導体パターンと、を含み、導体パターンを設ける工程では、第二内部導体パターンを、第二部分導体パターンと同層に形成し、積層する工程では、積層方向から見て、第二部分導体パターンがパッド導体パターンの一部に重なると共に、パッド導体パターンにおける第二部分導体パターンからはみ出した部分に第二内部導体パターンが重なるように、グリーンシートを積層する。
本発明に係る製造方法では、積層する工程において、積層方向から見て、第二部分導体パターンと第二内部導体パターンとが、積層方向で隣り合うパッド導体パターンに重なるように、グリーンシートが積層される。つまり、第二部分導体パターンのみが当該パッド導体パターンに重なるようにグリーンシートが積層される場合に比して、積層方向で互いに隣り合う導体パターンが互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、積層方向から見て互いに隣り合う導体パターンが、積層方向に直交する方向に互いにずれ難く、互いに隣り合う導体パターン同士の積層ずれが抑制される。その結果、積層する工程を経て製造された積層コイル部品において、第一方向で互いに隣り合う内部導体の積層ずれが抑制される。
本発明に係る製造方法において、導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、積層する工程の前において、グリーンシートの厚みに対する導体パターンの厚みの比率は、1.1以上かつ2.0以下であってもよい。この場合、導体パターンの厚みがグリーンシートの厚みに比して大きくなり過ぎない。よって、導体パターンの厚みがグリーンシートの厚みに比して大きくなり過ぎることにより積層ずれが大きくなることが抑制される。
本発明に係る製造方法において、導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、積層する工程の前において、パッド導体パターンの幅に対する第一部分導体パターンの幅の比率は、0.35以上かつ0.6以下であってもよい。この場合、パッド導体パターンの幅に対する第一部分導体パターンの幅の比率が0.6以下であることにより、第一部分導体パターンの幅がパッド導体パターンの幅に対して極力狭くなっているので、製造後のコイル部の内側における磁束が通る断面積が大きくなり、所望のL値が確実に得られる。第一部分導体パターンの幅がパッド導体パターンの幅に対して極力狭くなっていても、上述同様、積層方向で互いに隣り合う導体パターンが互いに重なる重なり面積が多くなっていることにより、互いに隣り合う導体パターン同士の積層ずれが抑制される。よって、所望のL値が確実に得られると共に、積層ずれが抑制される。ここで、パッド導体パターンの幅に対する第一部分導体パターンの幅の比率が0.35未満であると、第一部分導体パターンの幅が狭くなり過ぎて、第一部分導体パターンの幅に対するパッド導体パターンの幅の比率が大きくなり過ぎてしまう。その結果、製造後のコイル部品では、第一方向から見て、パッド部における第一方向で隣り合うコイル部からはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎてしまう。当該コイル部からはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎると、磁束が阻害され、インピーダンスが低下してしまう。本発明に係る製造方法では、パッド導体パターンの幅に対する第一部分導体パターンの幅の比率が0.35以上であるので、第一部分導体パターンの幅に対するパッド導体パターンの幅の比率が大きくなり過ぎない。その結果、第一方向から見て、パッド部における第一方向で隣り合うコイル部からはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎず、インピーダンスの低下が抑制される。
本発明によれば、積層ずれが抑制された積層コイル部品及びその製造方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。 図1に示す積層コイル部品の分解斜視図である。 コイル導体の平面図である。 コイル導体の平面図である。 導体パターンの断面図である。 第2実施形態に係る積層コイル部品の分解斜視図である。 第2実施形態に係るコイル導体の平面図である。 第2実施形態に係るコイル導体の平面図である。 第3実施形態に係る積層コイル部品の分解斜視図である。 第3実施形態に係るコイル導体の平面図である。 第3実施形態に係るコイル導体の平面図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る積層コイル部品を説明する。図1は、第1実施形態に係る積層コイル部品1を示す斜視図である。図2は、図1に示す積層コイル部品1の分解斜視図である。
図1に示されるように、積層コイル部品1は、素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置された一対の外部電極4,5と、を備えている。
素体2は、直方体形状を呈している。素体2は、その外表面として、互いに対向する一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2bを連結するように一対の端面2a,2bの対向方向に延びる4つの側面2c,2d,2e,2fと、を有している。側面2dは、たとえば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面として規定される。
各端面2a,2bの対向方向と、各側面2c,2dの対向方向と、各側面2e,2fの対向方向とは、互いに略直交している。なお、直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
図2に示されるように、素体2は、複数の絶縁体層11と、複数のコイル導体21〜24(複数の内部導体)と、複数の引出導体25,26とが積層されることによって構成されている。各絶縁体層11は、素体2の各側面2c,2dの対向方向に積層されている。すなわち、各絶縁体層11の積層方向は、素体2の各側面2c,2dの対向方向と一致している。以下、各側面2c,2dの対向方向を「積層方向」ともいう。各絶縁体層11は、積層方向からみて略矩形形状を呈している。
各絶縁体層11は、たとえば磁性材料(Ni−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、又はNi−Cu系フェライト材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各絶縁体層11は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。なお、各絶縁体層11を構成するセラミックグリーンシートの磁性材料には、Fe合金などが含まれていてもよい。各絶縁体層11は、非磁性材料から構成されてもよい。
外部電極4は、素体2の端面2a側に配置されており、外部電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。すなわち、各外部電極4,5は、一対の端面2a,2bの対向方向に互いに離間して位置している。各外部電極4,5は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各外部電極4,5は、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)及びガラスフリットを含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各外部電極4,5には、電気めっきが施されることにより、その表面にはめっき層が形成されている。電気めっきには、たとえばNi、Snなどが用いられる。
外部電極4は、端面2a上に位置する電極部分4aと、側面2d上に位置する電極部分4bと、側面2c上に位置する電極部分4cと、側面2e上に位置する電極部分4dと、側面2f上に位置する電極部分4eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分4aは、端面2aの全面を覆っている。電極部分4bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分4cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分4dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分4eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分4a,4b,4c,4d,4eは、一体的に形成されている。
外部電極5は、端面2b上に位置する電極部分5aと、側面2d上に位置する電極部分5bと、側面2c上に位置する電極部分5cと、側面2e上に位置する電極部分5dと、側面2f上に位置する電極部分5eと、の5つの電極部分を含んでいる。電極部分5aは、端面2bの全面を覆っている。電極部分5bは、側面2dの一部を覆っている。電極部分5cは、側面2cの一部を覆っている。電極部分5dは、側面2eの一部を覆っている。電極部分5eは、側面2fの一部を覆っている。5つの電極部分5a,5b,5c,5d,5eは、一体的に形成されている。
複数のコイル導体21〜24及び複数の引出導体25,26は、素体2内に配置されている。各コイル導体21〜24及び各引出導体25,26は、積層方向(第一方向)に互いに離間して配置されている。各コイル導体21〜24及び各引出導体25,26の間には、それぞれ絶縁体層11が配置されている。各コイル導体21〜24及び各引出導体25,26は、積層方向で略同じ厚みを有している。各コイル導体21〜24及び各引出導体25,26は、絶縁体層11を介して積層方向に互いに重なって配置されている。
各コイル導体21〜24は、積層方向で、コイル導体21、コイル導体22、コイル導体23、コイル導体24の順に配置されている。コイル導体21は、積層方向で、引出導体25とコイル導体22との間に位置している。すなわち、コイル導体21は、積層方向で、引出導体25とコイル導体22とに隣り合っている。コイル導体22は、積層方向で、コイル導体21とコイル導体23との間に位置している。すなわち、コイル導体22は、積層方向で、コイル導体21とコイル導体23とに隣り合っている。コイル導体23は、積層方向で、コイル導体22とコイル導体24との間に位置している。すなわち、コイル導体23は、積層方向で、コイル導体22とコイル導体24とに隣り合っている。コイル導体24は、積層方向で、コイル導体23と引出導体26との間に位置している。すなわち、コイル導体24は、積層方向で、コイル導体23と引出導体26とに隣り合っている。
各コイル導体21〜24は、平面視で略矩形状に巻回されているコイル部21a〜24aと、コイル部21a〜24aの一方の端部に設けられたパッド部21b〜24bと、コイル部21a〜24aの他方の端部に設けられたパッド部21c〜24cと、を有している。各パッド部21b〜24b,21c〜24cは、積層方向から見て、各コイル部21a〜24aの幅よりも広い幅を有している。幅とは、積層方向から見て、各コイル部21a〜24aが延びている方向と直交する方向での長さを意味する。各パッド部21b〜24b,21c〜24cは、何れも同等の幅を有している。積層方向から見て、各パッド部21b〜24b,21c〜24cは、同層のコイル部21a〜24aに対して、内側のみに突出している。
上記のように各パッド部21b〜24b,21c〜24cの幅が広くなっている理由は、積層方向で互いに隣り合うパッド部同士(パッド部21cとパッド部22b、パッド部22cとパッド部23b、パッド部23cとパッド部24b)の各スルーホール導体12a〜12cによる接続性を向上するためである。各コイル部21a〜24aの幅が各パッド部21b〜24b,21c〜24cの幅よりも狭くなっている理由は、各コイル部21a〜24aの内径を小さくし過ぎないようにして、所望のL値を確保するためである。これらの理由から、コイル導体21〜24は、全体として一定の幅とはなっておらず、コイル部21a〜24aにおいて幅が狭くなっていると共に、パッド部21b〜24b,21c〜24bにおいて幅が広くなっている。
積層方向で互いに隣り合う各コイル導体21〜24の端部同士は、各スルーホール導体12a〜12cにより互いに電気的に接続されている。具体的には、コイル導体21のパッド部21cとコイル導体22のパッド部22bとは、スルーホール導体12aにより接続されており、かつ、積層方向から見て互いに重なっている。コイル導体22のパッド部22cとコイル導体23のパッド部23bとは、スルーホール導体12bにより接続されており、かつ、積層方向から見て互いに重なっている。コイル導体23のパッド部23cとコイル導体24のパッド部24bとは、スルーホール導体12cにより接続されており、かつ、積層方向から見て互いに重なっている。
各コイル導体21〜24の端部同士がスルーホール導体12a〜12cを介して接続されていることにより、素体2内に、螺旋状のコイル20が構成されている。すなわち、積層コイル部品1は、素体2内に、コイル20を備えている。コイル20は、積層方向に互いに離間しており且つ互いに電気的に接続されている複数のコイル導体21〜24を含んでいる。コイル20は、積層方向に沿った軸心を有している。
コイル導体21は、各コイル導体21〜24のうち、積層方向で素体2の側面2cに最も近い位置に配置されている。コイル導体21のパッド部21bは、コイル20の一方の端部E1を構成している。コイル導体24は、各コイル導体21〜24のうち、積層方向で素体2の側面2dに最も近い位置に配置されている。コイル導体24のパッド部24cは、コイル20の他方の端部E2を構成している。
引出導体25は、コイル導体21よりも積層方向で素体2の側面2c側に配置されている。引出導体25の端部25eは、スルーホール導体12dによってコイル導体21のパッド部21bと接続されている。すなわち、引出導体25とコイル20の端部E1とが、スルーホール導体12dによって接続されている。
引出導体25の端部25aは、素体2の端面2bに露出しており、端面2bを覆う外部電極5の電極部分5aと接続されている。すなわち、引出導体25と外部電極5とが接続されている。したがって、コイル20の端部E1と外部電極5とは、引出導体25及びスルーホール導体12dを介して電気的に接続されている。
引出導体26は、コイル導体24よりも積層方向で素体2の側面2d側に配置されている。引出導体26の端部26eは、スルーホール導体12eによってコイル導体24のパッド部24cと接続されている。すなわち、引出導体26とコイル20の端部E2とが、スルーホール導体12eによって接続されている。
引出導体26の端部26aは、素体2の端面2aに露出しており、端面2aを覆う外部電極4の電極部分4aと接続されている。すなわち、引出導体26と外部電極4とが接続されている。したがって、コイル20の端部E2と外部電極4とは、引出導体26及びスルーホール導体12eを介して電気的に接続されている。
積層方向から見て、コイル部21a〜24aは、直線状に延びている直線部と、屈曲されてなる屈曲部とを有している。積層方向から見て、コイル部21aは、その直線部において、積層方向で隣り合うパッド部22cに重なっている部分を有している。具体的には、積層方向から見て、コイル部21aは、パッド部22cに重なっていない非重複部21a(第一部分)と、パッド部22cに重なっている重複部21a(第三部分)と、を含んでいる。非重複部21aは、略一定の幅W1(図3の(a)参照)を有している。重複部21aは、非重複部21aよりも広い幅W2(図3の(a)参照)を有している。
積層方向から見て、コイル部22aは、その屈曲部において、積層方向で隣り合うパッド部21b,23cに重なっている。コイル部22aは、その直線部においては、積層方向で隣り合うパッド部21b,21c,23b,23cに重なっている部分を含んでいない。コイル部22aは、その全体において、コイル部21aの非重複部21aと同等であって略一定の幅W1(図3の(b)参照)を有している。本明細書において「同等」とは、等しいことに加え、測定誤差又は予め設定された範囲での微差などを含んだ値を同等としてもよい。
積層方向から見て、コイル部23aは、その屈曲部において、積層方向で隣り合うパッド部22b,24cに重なっている。コイル部23aは、その直線部においては、積層方向で隣り合うパッド部22b,22c,24b,24cに重なっている部分を含んでいない。コイル部23aは、その全体において、コイル部21aの非重複部21aと同等であって略一定の幅W1(図4の(a)参照)を有している。
積層方向から見て、コイル部24aは、その直線部において、積層方向で隣り合うパッド部23bに重なっている部分を有している。具体的には、積層方向から見て、コイル部24aは、パッド部23bに重なっていない非重複部24a(第一部分)と、パッド部23bに重なっている重複部24a(第三部分)と、を含んでいる。非重複部24aは、コイル部24aの非重複部24aと同等であって略一定の幅W1(図4の(b)参照)を有している。重複部24aは、非重複部24aよりも広い幅W2(図4の(b)参照)を有している。
以下、図3及び図4を参照して、各コイル部21a,24aの各重複部21a,24aについて詳細に説明する。図3及び図4は、各コイル導体21〜24の平面図である。図3の(a)はコイル導体21、図3の(b)はコイル導体22、図4の(a)はコイル導体23、図4の(b)はコイル導体24、をそれぞれ示している。
図3の(a)に示されるように、重複部21aは、所定幅部21a(第二部分)と、拡張幅部21a(第二内部導体)と、を含んでいる。所定幅部21aは、略矩形状を呈している。所定幅部21aは、非重複部21aの幅W1と同等であって略一定の幅W3を有している。所定幅部21aの幅W3は、同層のパッド部21b,21c及び積層方向で隣り合うパッド部22b,22cの各幅Wよりも狭い。
所定幅部21aは、積層方向から見て、パッド部22cの一部に重なっている。このため、図3の(b)に示されるように、パッド部22cは、積層方向から見て、所定幅部21aが重なっている部分22cと、所定幅部21aが重なっておらず所定幅部21aからはみ出した部分22cと、を含んでいる。
図3の(a)に示されるように、拡張幅部21aは、所定幅部21aと一体的に形成されている。すなわち、拡張幅部21aは、所定幅部21aと同層に配置されており、コイル導体21の一部を構成している。積層方向から見て、拡張幅部21aは、所定幅部21aから内側に突出しており、所定幅部21aの内側に位置している。拡張幅部21aは、コイル部21aの幅を部分的に拡張している。拡張幅部21aは、積層方向から見て、パッド部22cにおける所定幅部21aからはみ出した部分22cに重なるように位置している。すなわち、拡張幅部21aは、コイル部21aにおけるパッド部22cに対して重なる面積を増やすように形成されている。重複部21aの全体(所定幅部21aの全体及び拡張幅部21aの全体)が、パッド部22cに重なっている。
拡張幅部21aは、略台形形状を呈している。拡張幅部21aは、所定幅部21aとの境界位置から内側に向かって、すぼまった形状をしている。すなわち、拡張幅部21aにおける幅方向に直交する方向での長さは、所定幅部21aとの境界位置で最大となり、当該境界位置よりも内側に向かうに従い短くなっている。幅方向に直交する方向での長さを、以下、単に「長さ」とする。拡張幅部21aの最大長さは、所定幅部21aの長さと同等である。
拡張幅部21aは、所定幅部21aの幅W1よりも狭い幅W4を有している。なお、拡張幅部21aの幅W4は、拡張幅部21aにおける最大幅である。所定幅部21aの幅W3と拡張幅部21aの幅W4との和は、重複部21aの幅W2に等しい。重複部21aの幅W2は、重複部21aにおける最大幅である。重複部21aの幅W2は、非重複部21aの幅W1よりも広い。これにより、コイル部21aの幅が部分的に拡張されている。重複部21aの幅W2は、積層方向で隣り合うパッド部22cの各幅Wよりも狭い。これにより、コイル部21aの内径が小さくなり過ぎないようになっている。すなわち、コイル部21aの内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎないようになっている。
図4の(b)に示されるように、重複部24aは、所定幅部24a(第二部分)と、拡張幅部24a(第二内部導体)と、を含んでいる。所定幅部24aは、略矩形状を呈している。所定幅部24aは、非重複部24aの幅W1と同等であって略一定の幅W3を有している。所定幅部24aの幅W3は、同層のパッド部24b,24c及び積層方向で隣り合うパッド部23b,23cの各幅Wよりも狭い。
所定幅部24aは、積層方向から見て、パッド部23bの一部に重なっている。このため、図4の(a)に示されるように、パッド部23bは、積層方向から見て、所定幅部24aが重なっている部分23bと、所定幅部24aが重なっておらず所定幅部24aからはみ出した部分23bと、を含んでいる。
図4の(b)に示されるように、拡張幅部24aは、所定幅部24aと一体的に形成されている。すなわち、拡張幅部24aは、所定幅部24aと同層に配置されており、コイル導体24の一部を構成している。積層方向から見て、拡張幅部24aは、所定幅部24aから内側に突出しており、所定幅部24aの内側に位置している。拡張幅部24aは、コイル部24aの幅を部分的に拡張している。拡張幅部24aは、積層方向から見て、パッド部23bにおける所定幅部24aからはみ出した部分23bに重なるように位置している。すなわち、拡張幅部24aは、コイル部24aにおけるパッド部23bに対して重なる面積を増やすように形成されている。重複部24aの全体(所定幅部24aの全体及び拡張幅部24aの全体)が、パッド部23bに重なっている。
拡張幅部24aは、略台形形状を呈している。拡張幅部24aは、所定幅部24aとの境界位置から内側に向かって、すぼまった形状をしている。すなわち、拡張幅部24aの長さは、所定幅部24aとの境界位置で最大となり、当該境界位置よりも内側に向かうに従い短くなっている。拡張幅部21aの最大長さは、所定幅部21aの長さと同等である。
拡張幅部24aは、所定幅部24aの幅W3よりも狭い幅W4を有している。なお、拡張幅部24aの幅W4は、拡張幅部24aにおける最大幅である。所定幅部24aの幅W3と拡張幅部24aの幅W4との和は、重複部24aの幅W2に等しい。重複部24aの幅W2は、重複部24aにおける最大幅である。重複部24aの幅W2は、非重複部24aの幅W1よりも広い。これにより、コイル部24aの幅が部分的に拡張されている。重複部24aの幅W2は、積層方向で隣り合うパッド部23bの幅Wよりも狭い。これにより、コイル部24aの内径が小さくなり過ぎないようになっている。すなわち、コイル部24aの内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎないようになっている。
各コイル導体21〜24、各引出導体25,26及び各スルーホール導体12a〜12eは、たとえば導電材(たとえば、Ag又はPd)を含んでいる。各コイル導体21〜24、各引出導体25,26、及び各スルーホール導体12a〜12eは、導電性金属粉末(たとえば、Ag粉末又はPd粉末)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各コイル導体21〜24、各引出導体25,26、及び各スルーホール導体12a〜12eには、たとえば金属酸化物(TiO、Al3、ZrO)が含有されていてもよい。この場合、各コイル導体21〜24、各引出導体25,26、及び各スルーホール導体12a〜12eは、上記金属酸化物を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。この場合によれば、導電性ペーストの焼成時における収縮率を小さくすることができる。
次に、図5を参照して、積層コイル部品1の製造方法について説明する。
図5は、導体パターンの断面図である。図5においては、各コイル導体21,22となる導体パターン31,32の断面を一例として示している。図5に示されている導体パターン31,32の断面は、コイル部21aにおける非重複部21aに対応する位置で切断した断面である。なお、各コイル導体23,24となる導体パターンの断面は、コイル導体21,22となる導体パターン31,32の断面と同様であるので、図示及びその説明を省略する。図5の(a)は、積層圧着前の導体パターン31,32を示し、図5の(b)は、積層圧着後の導体パターン31,32を示している。
まず、素体2の主成分であるフェライト粉末にバインダ樹脂などを混合して、絶縁体スラリーを用意する。用意した絶縁体スラリーを、ドクターブレード法によって基材(たとえば、PETフィルムなど)上に塗布して、絶縁体層11となる絶縁体グリーンシート30を形成する。絶縁体グリーンシート30は、主面30aを有している。次に、絶縁体グリーンシート30におけるスルーホール導体12a〜12e(図2参照)の形成予定位置に、レーザ加工によって貫通孔を形成する。
次に、第1の導電性ペーストを絶縁体グリーンシート30の貫通孔内に充填する。第1の導電性ペーストは、導電性金属粉末及びバインダ樹脂などを混合して作製される。続いて、絶縁体グリーンシート30の主面30a上に、第1の導電性ペーストを塗布して、各コイル導体21〜24及び各引出導体25,26となる導体パターンを設ける。このとき、導体パターンは、貫通孔内の導電性ペーストと接続される。
各コイル導体21〜24となる導体パターンは、平面視で、前述した各コイル導体21〜24と略同じ形状を呈しているので、平面視での図示を省略する。各コイル導体21〜24となる導体パターンは、コイル部21a〜24aとなるコイル導体パターンと、パッド部21b〜24b,21c〜24cとなるパッド導体パターンと、を含んでいる。平面視で、パッド導体パターンの幅は、コイル導体パターンの幅よりも広い。コイル導体パターンは、非重複部21a,24aとなる非重複部導体パターンと、重複部21a,24aとなる重複部導体パターンと、を含んでいる。重複部導体パターンは、所定幅部21a,24aとなる所定幅部導体パターンと、拡張幅部21a,24aとなる拡張幅部導体パターンと、を含んでいる。導体パターンを設ける工程では、拡張幅部導体パターンを所定幅部導体パターンと同層に一体的に形成する。平面視で、所定幅部導体パターンの幅は、非重複部導体パターンの幅と同等の幅を有している。重複部導体パターンの幅は、非重複部導体パターンの幅よりも広く、かつ、パッド導体パターンの幅よりも狭くなっている。
図5の(a)に示されるように、各コイル導体21,22となる導体パターン31,32の断面は、矩形状を呈している。導体パターン31は、幅方向(主面30aに沿う方向)において互いに対向する一対の側面31a,31bと、高さ方向(主面30aに直交する方向)において互いに対向する一対の側面31c,31dと、を有している。幅方向は、積層方向に直交する方向に対応し、高さ方向は、積層方向に対応する。導体パターン32は、幅方向において互いに対向する一対の側面32a,32bと、高さ方向において互いに対向する一対の側面32c,32dと、を有している。側面31c,32cは、導体パターンを設ける工程において絶縁体グリーンシート30の主面30aと接触する面である。
導体パターンを設ける工程において設けられた導体パターン31,32の断面の幅に対する高さの比であるアスペクト比は、たとえば約1.0である。すなわち、導体パターン31,32の断面形状が略正方形状となっている。
導体パターンを設ける工程においては、絶縁体グリーンシート30の厚みT1に対し、厚過ぎない厚みT2の導体パターン31,32が設けられる。たとえば、導体パターンを設ける工程の後であって、絶縁体グリーンシート30を積層する工程の前において、絶縁体グリーンシート30の厚みT1に対する導体パターン31,32の厚みT2の比率は、1.1以上かつ2.0以下である。
導体パターンを設ける工程においては、パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率が所定の範囲内になるように、導体パターンが設けられる。たとえば、導体パターンを設ける工程の後であって、絶縁体グリーンシート30を積層する工程の前において、パッド導体パターンの幅(パッド部21b,24b,21c,24cの幅Wに対応)に対する非重複部導体パターンの幅(非重複部21a,24aの幅W1)の比率は、0.35以上かつ0.6以下である。このように、パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率を0.6以下として、非重複部導体パターンの幅を極力狭くすることにより、製造後のコイル部21a,24aの内径が大きくなり、コイル部21a,24aの内側における磁束が通る断面積が大きくなる。
パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率が0.35未満である場合には、非重複部導体パターンの幅が狭くなり過ぎて、非重複部導体パターンの幅に対するパッド導体パターンの幅の比率が大きくなり過ぎてしまう。その結果、製造後の積層コイル部品では、第一方向D1から見て、パッド部21b,24b,21c,24cにおけるコイル部22a,23aからはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎてしまう。当該コイル部22a,23aからはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎると、磁束が阻害され、インピーダンスが低下してしまう。本実施形態では、パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率を0.35以上とすることにより、非重複部導体パターンの幅に対するパッド導体パターンの幅の比率が大きくなり過ぎない。その結果、パッド部21b,24b,21c,24cにおけるコイル部22a,23aからはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎず、インピーダンスの低下が抑制される。パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率の下限値は、より好ましくは、0.45以上であってもよい。当該比率の下限値を0.45以上とする場合には、パッド部21b,24b,21c,24cにおける、コイル部22a,23aからはみ出している部分の面積がより小さくなるので、より良好なインピーダンスが得られる。
続いて、絶縁体グリーンシート30を積層する。ここでは、導体パターンが設けられた複数の絶縁体グリーンシート30を基材から剥がして積層し、積層方向に加圧して積層体を形成する。このとき、各コイル導体21〜24及び引出導体25,26となる各導体パターンが積層方向に重なるように、各絶縁体グリーンシート30を積層する。
絶縁体グリーンシート30を積層する工程では、積層方向から見て、所定幅部導体パターンがパッド導体パターンの一部に重なると共に、パッド導体パターンにおける所定幅部導体パターンからはみ出した部分に拡張幅部導体パターンが重なるように、絶縁体グリーンシート30を積層する。
絶縁体グリーンシート30を積層する工程において、各コイル導体21,22となる各導体パターン31,32は、積層方向に加圧されることにより、各絶縁体グリーンシート30に挟まれて積層方向に力を受ける。これにより、図5の(b)に示されるように、各導体パターン31,32は積層方向に潰れる。潰れた状態において、各導体パターン31,32の断面の幅に対する高さの比であるアスペクト比は、たとえば約0.3である。
続いて、絶縁体グリーンシート30の積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。続いて、グリーンチップから、各部に含まれるバインダ樹脂を除去した後、このグリーンチップを焼成する。これにより、素体2が得られる。各導体パターン31,32が焼成されてなる各コイル導体21,22の断面形状は、各導体パターン31,32の断面形状と同等である。各コイル導体21,22は、焼成により、焼成前の各導体パターン31,32に対して約1.1倍の縮率で収縮する。
続いて、素体2の一対の端面2a,2bのそれぞれに対して第2の導電性ペーストを設ける。第2の導電性ペーストは、導電性金属粉末、ガラスフリット及びバインダ樹脂等を混合して作製される。続いて、熱処理を施すことにより第2の導電性ペーストを素体2に焼付けて、一対の外部電極4,5を形成する。一対の外部電極4,5の表面に電気めっきを施して、メッキ層を形成してもよい。以上の工程により、積層コイル部品1が得られる。
以上、本実施形態に係る積層コイル部品1によれば、積層方向から見て、所定幅部21aと拡張幅部21aとが、積層方向で隣り合うパッド部22cに重なっているので、所定幅部21aのみがパッド部22cに重なっている場合に比して、積層方向で隣り合うコイル導体21とコイル導体22とが互いに重なる面積が多くなっている。よって、コイル導体21とコイル導体22とが、積層方向に直交する方向に互いにずれ難い。すなわち、コイル導体21の位置とコイル導体22の位置とが積層方向に直交する方向に互いにずれる位置ずれが生じ難い。積層方向から見て、所定幅部24aと拡張幅部24aとが、積層方向で隣り合うパッド部23bに重なっているので、所定幅部24aのみがパッド部23bに重なっている場合に比して、積層方向で隣り合うコイル導体23とコイル導体24とが互いに重なる面積が多くなっている。よって、コイル導体23とコイル導体24とが、積層方向に直交する方向に互いにずれ難い。すなわち、コイル導体23の位置とコイル導体24の位置とが積層方向に直交する方向に互いにずれる位置ずれが生じ難い。これにより、積層ずれが抑制される。
本実施形態に係る積層コイル部品1によれば、コイル部21a,24aにおける重複部21a,24aの幅W2が非重複部21a,24aの幅W1よりも広くなっている分、積層方向で互いに隣り合うコイル導体21〜24が互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、積層ずれが確実に抑制される。
本実施形態に係る積層コイル部品1によれば、重複部21a,24aの幅W2が積層方向で隣り合うパッド部22c,23bの幅Wよりも狭いことにより、コイル部21a,24aの内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎない。よって、所望のL値が確保される。
本実施形態に係る積層コイル部品1によれば、各所定幅部21a,24aの内側に位置している各拡張幅部21a,24aの全体が、積層方向で隣り合う各パッド部22c,23bにおけるはみ出した各部分22c,23bに重なっていることにより、コイル部21a,24aの内側における磁束が通る断面積が小さくなり過ぎない。よって、所望のL値が確保される。
本実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法によれば、絶縁体グリーンシート30を積層する工程において、積層方向から見て、所定幅部導体パターンと拡張幅部導体パターンとが、積層方向で隣り合うパッド導体パターンに重なるように、絶縁体グリーンシート30が積層される。つまり、所定幅部導体パターンのみが当該パッド導体パターンに重なるように絶縁体グリーンシートが積層される場合に比して、積層方向で互いに隣り合う導体パターンが互いに重なる重なり面積が多くなっている。これにより、積層方向から見て互いに隣り合う導体パターンが、積層方向に直交する方向に互いにずれ難く、互いに隣り合う導体パターン同士の積層ずれが抑制される。その結果、積層する工程を経て製造された積層コイル部品1において、積層方向で互いに隣り合うコイル導体21〜24の積層ずれが抑制される。
本実施形態に係る製造方法によれば、導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、積層する工程の前において、絶縁体グリーンシート30の厚みT1に対する導体パターン31,32の厚みT2の比率が1.1以上かつ2.0以下である。すなわち、導体パターン31,32の厚みT2が絶縁体グリーンシート30の厚みT1に比して大きくなり過ぎない。よって、導体パターン31,32の厚みT2が絶縁体グリーンシート30の厚みT1に比して大きくなり過ぎることにより積層ずれが大きくなることが抑制される。
本実施形態に係る製造方法によれば、導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、積層圧着する工程の前において、パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率が0.35以上かつ0.6以下である。パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率が0.6以下であることにより、非重複部導体パターンの幅がパッド導体パターンの幅に対して極力狭くなっているので、製造後のコイル部21a,24aの内側における磁束が通る断面積が大きくなり、所望のL値が確実に得られる。非重複部導体パターンの幅がパッド導体パターンの幅に対して極力狭くなっていても、上述同様、積層方向で互いに隣り合う導体パターンが互いに重なる重なり面積が多くなっていることにより、互いに隣り合う導体パターン同士の積層ずれが抑制される。よって、所望のL値が確実に得られると共に、積層ずれが抑制される。パッド導体パターンの幅に対する非重複部導体パターンの幅の比率が0.35以上であるので、非重複部導体パターンの幅に対するパッド導体パターンの幅の比率が大きくなり過ぎない。その結果、第一方向D1から見て、パッド部21b,24b,21c,24cにおけるコイル部22a,23aからはみ出している部分の面積が大きくなり過ぎず、インピーダンスの低下が抑制される。
なお、本実施形態において、各コイル部22a,23aは、その屈曲部において、積層方向で隣り合う各パッド部21b,23c,22b,24cに重なっている。これらの屈曲部は、コイル部22a,23aが屈曲されてなることにより、コイル部22a,23aが積層方向で隣り合う各パッド部21b,23c,22b,24cに対して重なる重なり面積が大きくなっている。よって、これらの屈曲部においても、積層ずれが抑制される。
(第2実施形態)
次に、図6〜図8を参照して、第2実施形態に係る積層コイル部品1Aについて説明する。第2実施形態に係る積層コイル部品1Aは、第1実施形態に係る積層コイル部品1と同様の要素や構造を備えている。そのため、第1実施形態に係る積層コイル部品1と同様の要素や構造には同一の符号を付して詳細な説明は省略し、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図6は、積層コイル部品1Aの分解斜視図である。図7及び図8は、第2実施形態に係るコイル導体21〜24の平面図である。本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、コイル部21a,24aの形状が、第1実施形態と異なっている。積層コイル部品1Aでは、コイル部21a,24aにおける重複部21a,24aの形状が第1実施形態とは異なっている。
図7の(a)及び図8の(b)に示されるように、本実施形態においては、各重複部21a,24aにおける各拡張幅部21a,24aの形状が、略台形形状ではなく、略弓形状を呈している。各拡張幅部21a,24aは、各所定幅部21a3,24aとの境界位置と反対側の辺が直線状ではなく、円弧状を呈している。各拡張幅部21a,24aの最大長さは、各所定幅部21a,24aの長さよりも短い。
本実施形態においても、各所定幅部21a,24aのみが各パッド部22c,23bに重なっている場合に比して、コイル導体21とコイル導体22とが互いに重なる重なり面積、及び、コイル導体23とコイル導体24とが互いに重なる重なり面積が、それぞれ多くなっている。よって、上記第1実施形態と同様、積層ずれが抑制される。
(第3実施形態)
次に、図9〜図11を参照して、第3実施形態に係る積層コイル部品1Bについて説明する。第3実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、上記実施形態に係る積層コイル部品1,1Aと同様の要素や構造には同一の符号を付して詳細な説明は省略し、上記実施形態と異なる部分について説明する。
図9は、積層コイル部品1Bの分解斜視図である。図10及び図11は、第3実施形態に係るコイル導体21〜24の平面図である。本実施形態に係る積層コイル部品1Bでは、コイル部21a,24aの形状が、上記実施形態と異なっている。積層コイル部品1Bでは、各重複部21a,24aが、各所定幅部21a,24aのみで構成されており、各拡張幅部21a,24aを含んでいない。積層コイル部品1Bでは、各拡張幅部21a,24aに代えて、各コイル導体21,24とは分離した各分離導体41,44(第二内部導体)を有している。
各分離導体41,44は、各コイル導体21,24と同層に配置されている。すなわち、分離導体41は、コイル導体21と同様、積層方向でコイル導体22と隣り合っており、分離導体44は、コイル導体24と同様、積層方向でコイル導体23と隣り合っている。各分離導体41,44は、コイル導体21,24と一体的に形成されておらず、各コイル導体21,24とは別個に形成されている。積層方向から見て、各分離導体41,44は、各所定幅部21a,24aに対し、所定の間隔を有して対向しており、各所定幅部21a,24aの内側に位置している。
積層方向から見て、各分離導体41,44は、略楕円形状を呈している。各分離導体41,44の短軸は、幅方向に沿っており、各分離導体41,44の長軸は、長さ方向に沿っている。各分離導体41,44の長軸方向での長さ(すなわち、最大長さ)は、各所定幅部21a,24aの長さよりも短い。積層方向から見て、各分離導体41,44の全体が、積層方向で隣り合う各パッド部22c,23bに重なっている。各所定幅部21a,24aの幅W3と、各分離導体41,44の幅W5との和は、各非重複部21a1,24aの幅W1よりも広い。各所定幅部21a,24aの幅W3と、各分離導体41,44の幅W5との和は、積層方向で隣り合う各パッド部22c,23bの幅Wよりも狭い。
本実施形態によれば、所定幅部21aに加えて、所定幅部21aとは分離している分離導体41が、積層方向で隣り合うパッド部22cに重なっている。よって、所定幅部21aのみがパッド部22cに重なっている場合に比して、コイル導体21及び分離導体41とコイル導体22とが互いに重なる重なり面積が多くなっている。所定幅部24aに加えて、所定幅部24aとは分離している分離導体44が、積層方向で隣り合うパッド部23bに重なっている。よって、所定幅部24aのみがパッド部23bに重なっている場合に比して、コイル導体24及び分離導体44とコイル導体23とが互いに重なる重なり面積が多くなっている。よって、上記実施形態と同様、積層ずれが抑制される。
本実施形態によれば、各所定幅部21a,24aの内側に位置している分離導体41,44の全体が、各パッド部22c,23bにおけるはみ出した部分22c,23bに重なっている。これにより、各コイル部21a,24aの内側における磁束が各分離導体41,44によって阻害され難く、各コイル部21a,24aの内側における磁束が通る断面積が実質的に小さくなり過ぎない。よって、所望のL値が確保される。
以上、本発明の種々の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他に適用したものであってもよい。
パッド部21b〜24b,21c〜24cは、コイル部21a〜24aの端部でなく途中部に設けられていてもよい。
積層方向から見て、各パッド部21b〜24b,21c〜24cは、同層のコイル部21a〜24aに対して、外側のみに突出していてもよく、外側及び内側の両方に突出していてもよい。なお、各パッド部21b〜24b,21c〜24cが、同層のコイル部21a〜24aに対して、内側と外側とに同等に突出している場合には、積層ずれが生じ難い。
各拡張幅部21a,24aの全体でなく、その一部が各パッド部22c,23bに重なっていてもよい。各分離導体41,44の全体でなく、その一部が各パッド部22c,23bに重なっていてもよい。
上記実施形態において、積層コイル部品1,1Aは二つの拡張幅部21a,24aを含んでいるが、一つ又は三つ以上の拡張幅部を含んでいてもよい。また、積層コイル部品1Bは二つの分離導体41,44を含んでいるが、一つ又は三つ以上の分離導体を含んでいてもよい。
1…積層コイル部品、2…素体、20…コイル、21〜24…コイル導体(内部導体)、21a〜24a…コイル部、21b〜24b,21c〜24c…パッド部、21a,24a…非重複部(第一部分)、21a,24a…重複部(第三部分)、21a,24a…所定幅部(第二部分)、21a,24a…拡張幅部(第二内部導体)、41,44…分離導体(第二内部導体)、W1,W2,W…幅、30…絶縁体グリーンシート、31,32…導体パターン、T1,T2…厚み。

Claims (7)

  1. 素体と、
    前記素体内に第一方向で互いに離間して配置されている複数の第一内部導体がスルーホール導体によって互いに電気的に接続されることにより構成されるコイルと、
    前記複数の第一内部導体のうちの少なくとも一つと同層に配置された少なくとも一つの第二内部導体と、を備え、
    前記第一内部導体は、コイル部と、前記第一方向から見て前記コイル部の幅よりも広い幅を有するパッド部と、を有し、
    前記第一方向で互いに隣り合う前記パッド部は、前記スルーホール導体で互いに接続されており、かつ、前記第一方向から見て互いに重なっており、
    前記第一方向から見て、前記コイル部は、前記第一方向で隣り合う前記パッド部に重なっていない第一部分と、前記第一方向で隣り合う前記パッド部の一部に重なっている第二部分と、を含んでおり、
    前記第一方向から見て、前記二内部導体は、前記第二部分と同層に配置されていると共に、前記第一方向で隣り合う前記パッド部における前記第二部分からはみ出した部分に重なるように位置し、
    前記第一方向から見て、前記コイル部と前記第二内部導体とにおける前記隣り合う前記パッド部に重なっている部分の幅の和は、前記隣り合う前記パッド部の幅よりも狭い、積層コイル部品。
  2. 前記第二内部導体は、前記第一内部導体における前記第二部分と一体的に形成されており、
    前記第一方向から見て、前記第二部分と前記第二内部導体とは、前記コイル部における前記隣り合う前記パッド部に重なっている第三部分を構成しており、前記第三部分の幅は、前記第一部分の幅よりも広い、請求項1に記載の積層コイル部品。
  3. 前記第二内部導体は、前記第一内部導体における前記第二部分と分離している、請求項1に記載の積層コイル部品。
  4. 前記第一方向から見て、前記第二内部導体は、前記第一内部導体の前記第二部分の内側に位置しており、前記第二内部導体の全体が、前記隣り合う前記パッド部における前記はみ出した部分に重なっている、請求項1〜の何れか一項に記載の積層コイル部品。
  5. 請求項1に記載の積層コイル部品を製造する製造方法であって、
    絶縁体層となるグリーンシート上に、前記第一及び第二内部導体となる導体パターンを設ける工程と、
    前記導体パターンが設けられた複数の前記グリーンシートを積層する工程と、を含み、
    前記導体パターンは、前記第一内部導体となる第一内部導体パターンと、前記第二内部導体となる第二内部導体パターンと、を含み、
    前記第一内部導体パターンは、前記コイル部となるコイル導体パターンと、前記パッド部となるパッド導体パターンと、を含み、
    前記コイル導体パターンは、前記第一部分となる第一部分導体パターンと、前記第二部分となる第二部分導体パターンと、を含み、
    前記導体パターンを設ける工程では、前記第二内部導体パターンを、前記第二部分導体パターンと同層に形成し、
    前記積層する工程では、積層方向から見て、前記第二部分導体パターンが前記パッド導体パターンの一部に重なると共に、前記パッド導体パターンにおける前記第二部分導体パターンからはみ出した部分に前記第二内部導体パターンが重なるように、前記グリーンシートを積層する、製造方法。
  6. 前記導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、前記積層する工程の前において、前記グリーンシートの厚みに対する前記導体パターンの厚みの比率は、1.1以上かつ2.0以下である、請求項に記載の製造方法。
  7. 前記導体パターンを設ける工程の後であり、かつ、前記積層する工程の前において、前記パッド導体パターンの幅に対する前記第一部分導体パターンの幅の比率は、0.35以上かつ0.6以下である、請求項5又は6に記載の製造方法。
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