JP6950838B2 - 鋳片の製造方法および制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鋳片の製造方法および制御装置に関する。
本願は、2018年10月22日に日本に出願された特願2018−198356号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
金属薄帯(以下、鋳片という。)の製造は、例えば特許文献1に示されるように、双ドラム式連続鋳造装置が用いられている。双ドラム式連続鋳造装置は、一対の連続鋳造用鋳造ドラム(以下、鋳造ドラムという。)を平行に配置し、対向する周面をそれぞれ上方から下方に回転させ、これら鋳造ドラムの周面によって形成された湯溜まり部に金属溶湯を注入し、金属溶湯を鋳造ドラムの周面上で冷却、凝固させて、金属薄帯を連続鋳造する。一対の鋳造ドラムは、鋳造中は回転軸の平行を維持したまま、所定の押圧力で鋳片を押圧している。鋳片から鋳造ドラムに対する反力は凝固状態によって変化し、幅方向に不均一となることがあり、一対の鋳造ドラムの回転軸の平行度を厳密に保つことは困難である。このため、鋳片には幅方向両端部における板厚の差、いわゆるウェッジ(wedge)が発生することがある。ウェッジが発生すると、鋳造ドラムの鋳造方向下流に配置される圧延機において蛇行が発生することがあり、通板トラブルを引き起こすことがある。
例えば、圧延機における蛇行を抑制する手法として、特許文献1には、一対の鋳造ドラムが互いに平行な状態を維持したまま、鋳造ドラムの開閉、交差角およびオフセット量を制御して、鋳片のクラウンおよびウェッジを調整する技術が開示されている。
特許文献2には、平行な回転軸を有し任意の間隙を保持して互いに逆方向に回転する2つのドラムの表面間隙に金属の溶湯を鋳込み、薄板を鋳造する双ドラム式連鋳機の圧下制御方法が開示されている。かかる方法では、一方のドラムの両端部の押付力を検出・加算し、これに基づく信号により、一方のドラムの両端の押付力の和が所定の値になるように他方のドラムの両端を油圧シリンダによって平行に移動させることで、ウェッジを低減している。
特許文献3には、双ドラムから送り出される鋳片の先端に取り付けられたダミーシートの通過をミル出側板厚計で検出後、インラインミルのロール間隔を圧延時の目標位置まで狭める圧延開始方法が開示されている。かかる方法では、圧延機のロールクロス角またはロールベンディング力を変更して、鋳片の蛇行を抑制する。
特許文献4には双ドラム式連続鋳造機で製造した薄帯鋳片の蛇行を制御する蛇行制御方法に関する技術が開示されている。かかる方法では、圧延機入側の2箇所以上で検出した鋳片蛇行量の差に基づいて、熱間圧延機における左右のギャップ差を調整して、薄帯鋳片の蛇行を抑制する。
また特許文献5には、圧延機における蛇行の制御を目的とする制御方法に関する技術が開示されている。この文献の方法では、圧延スタンド間に設けられたセンサによって検出された板厚に基づく、入側と出側のウェッジ比率を制御する技術が開示されている。
また特許文献6には、圧延機の圧下設定制御方法において、板厚計が設置されていない場合等で板厚を求める際に、ミルストレッチを各ワークロール変形の寄与分とワークロール以外の変形の寄与分とに分離して板厚を推定することが開示されている。
日本国特開2017−196636号公報 日本国特開平01−166863号公報 日本国特開2000−343103号公報 日本国特開2003−039108号公報 日本国特開平09−168810号公報 日本国特開昭60−030508号公報
蛇行を引き起こし得るウェッジを高精度に制御し抑制するには、特許文献1に記載の技術のように、鋳造ドラムの鋳造方向下流に板厚を測定する厚み分布計等を設置し、厚み分布計による測定結果を用いて板厚を制御するフィードバック制御を実施することが考えられる。この際、厚みの測定値がウェッジの制御に反映されるまでのむだ時間を小さくするため、厚み分布計はできるだけ鋳造装置の近くに設置されることが望ましい。しかし、鋳造装置直下に厚み分布計を設置すると、溶融金属の引き抜きに失敗した場合に溶融金属が厚み分布計に降り注ぎ、厚み分布計を破損させてしまう可能性がある。このため、厚み分布計は、鋳造ドラムからある程度の距離を置いて離れた位置に設置する必要がある。厚み分布計が鋳造ドラムから離れるほど、厚み分布計の測定値をウェッジ制御に反映させるまでのむだ時間が大きくなるため、ウェッジを高精度にフィードバック制御して抑制することは難しい。
また、特許文献2に記載の技術では、鋳造ドラムの剛性は両端部で等しいとは限らず、押付力の和を目標とするように油圧シリンダによって平行に移動させたとしても、ウェッジが低減し蛇行が抑制できるとは限らない。
特許文献3には、ウェッジの低減に関する記載はなく、特許文献3に記載の技術によりウェッジを抑制しようとしても、ウェッジが大きい場合には、蛇行または絞込みによる通板トラブルが発生する可能性がある。
特許文献4又は特許文献5に記載の技術では、ワークロールの左右の圧下位置を適切に設定できないため、圧延機の左右で先進率および後進率の不均一が発生し、圧延機入側の材料速度が左右で不均一となる。この材料速度差により圧延機入側での蛇行量が決定するが、ワークロールの圧下位置を設定してから当該圧下位置により生じた材料速度差が蛇行量に現れるまでには時間がかかる。このため、蛇行制御を行っても制御が間に合わず、通板トラブルに至る可能性があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、双ドラム式連続鋳造装置と圧延機とを有する連続鋳造設備において鋳片を製造する際に、圧延機における蛇行をより低減し、通板トラブルを低減することが可能な、新規かつ改良された鋳片の鋳造方法および制御装置を提供することにある。
(1)本発明の一態様に係る鋳片の製造方法では、回転する一対の鋳造ドラムにより金属溶湯を凝固させて鋳片を鋳造する双ドラム式連続鋳造装置と、鋳造された鋳片を一対のワークロールにより圧延する圧延機と、を用いて鋳片を製造する鋳片の製造方法において、鋳片の鋳造開始前に取得された鋳造ドラムを支持するハウジングの変形特性と鋳造ドラムを圧下する圧下系の変形特性とを示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて、下記の式1より鋳片の幅方向の両端部の推定板厚を算出し、式1より算出された推定板厚に基づいて、圧延機の入側における両端部の板厚の差である入側ウェッジと鋳片の入側板厚との比率を示す入側ウェッジ比率とを算出し、圧延機の出側における両端部の板厚の差である出側ウェッジと鋳片の出側板厚との比率を示す出側ウェッジ比率とを算出し、入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が所定の範囲になるように、圧延機の圧下位置を調整する。
(圧延機入側の推定板厚)=(鋳造シリンダの圧下位置)
+(鋳造ドラムの弾性変形)
+(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
+(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
−(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)・・・式1
(2)上記(1)に記載の鋳片の製造方法では、出側ウェッジ比率の算出に用いられる出側板厚は、ロールバイト直下での鋳片の幅方向の位置情報を用いて、下記の式2により推定されてもよい。
(圧延機出側の推定板厚)=(圧延シリンダの圧下位置)
+(ワークロールの弾性変形)
+(圧延機ハウジング圧下系変形)
+(ワークロールのロールプロフィル)
−(圧下位置零点調整時におけるワークロールの弾性変形)・・・式2
(3)上記(1)に記載の鋳片の製造方法では、出側ウェッジ比率の算出に用いられる出側板厚は、圧延機の出側における鋳片の板厚の実測値であってもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の鋳片の製造方法では、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性は、鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放し、鋳造ドラムの間に鋳造ドラムのドラム長よりも板幅が長く板厚が均一な板を挟んだ状態で締込みを実施することにより得られた鋳造シリンダの圧下位置および荷重に基づき取得されてもよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の鋳片の製造方法では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整は、鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放して、鋳造ドラムの間に鋳造ドラムのドラム長よりも板幅が長く板厚が均一な板を挟んだ状態で行われてもよい。
(6)本発明の一態様に係る制御装置では、回転する一対の鋳造ドラムにより金属溶湯を凝固させて鋳片を鋳造する双ドラム式連続鋳造装置と、鋳造された鋳片を一対のワークロールにより圧延する圧延機と、を有する鋳片の製造設備における、圧延機の圧下位置を調整する制御装置であって、制御装置は、鋳片の鋳造開始前に取得された鋳造ドラムを支持するハウジングの変形特性と鋳造ドラムを圧下する圧下系の変形特性とを示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて、下記の式1より鋳片の幅方向の両端部の推定板厚を算出する板厚算出部と、推定板厚を用いて、圧延機の入側における両端部の板厚の差である入側ウェッジと、鋳片の入側板厚との比率を示す入側ウェッジ比率を求め、圧延機の出側における両端部の板厚の差である出側ウェッジと、鋳片の出側板厚との比率を示す出側ウェッジ比率と、を求める比率算出部と、入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が所定の範囲になるように、圧延機の圧下位置を調整する制御部と、を備える。
(圧延機入側の推定板厚)=(鋳造シリンダの圧下位置)
+(鋳造ドラムの弾性変形)
+(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
+(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
−(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)・・・式1
本発明によれば、双ドラム式連続鋳造装置と圧延機とを有する連続鋳造設備において鋳片を製造する際に、圧延機における蛇行をより低減し、通板トラブルを低減することが可能である。
本発明の一実施形態に係る鋳片の製造設備を示す概略的な断面図である。 鋳造ドラムの構成の一例を示した概略的な図である。 圧延機における蛇行の様子を示した概略的な図である。 鋳造ドラムにてウェッジが発生する一例を示した概略的な図である。 圧延機において蛇行を低減する圧延の様子を示した模式図である。 圧延機において鋳片の位置情報を取得する一例を示した概略的な図である。 鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得する一例を示した概略的な図である。 鋳造ドラムの圧下位置零点調整の一例を示した概略的な図である。 鋳造ドラムの圧下位置零点調整の一例を示した概略的な図である。 鋳造ドラムの圧下位置零点調整の一例を示した概略的な図である。 同実施形態に係る鋳片の製造設備の変形例の一例を示した概略的な断面図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また、以下の実施形態の各要素は、それぞれの組み合わせが可能であることは自明である。
(1.連続鋳造設備)
図1および図2を参照して、鋳片を製造する連続鋳造設備の構成の一例を説明する。図1は、鋳片を製造する連続鋳造設備1を示した図である。図2は、連続鋳造装置10を鋳造方向の直上から見た構成の一例を示す平面図である。
図1を参照すると、連続鋳造設備1は、双ドラム式連続鋳造装置10(以下、連続鋳造装置10と称す。)と、第1ピンチロール20と、圧延機30と、制御装置100と、蛇行計110と、第2ピンチロール40と、巻取装置50と、を備える。
連続鋳造装置10は、第1鋳造ドラム11と第2鋳造ドラム12とからなる一対の鋳造ドラムを有する。一対の鋳造ドラムは、水平方向に対向して配置されている。連続鋳造装置10は、一対の鋳造ドラムの対向する面同士が下方へ繰り出されるように、第1鋳造ドラム11と第2鋳造ドラム12とを互いに異なる周方向へ回転させ、これら鋳造ドラムの周面によって形成された湯溜まり部に注入された金属溶湯を、鋳造ドラムの周面上で冷却、凝固させて、鋳片Sを連続鋳造する。
ここで、図2を参照して、連続鋳造装置10の構成を説明する。図2を参照すると、連続鋳造装置10では、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12が、水平方向に対向して配備され、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の間で鋳片が鋳造される。第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12は、モータMの駆動により回転し、鋳片Sを鋳造方向下流に送り出す。
連続鋳造装置10には、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の幅方向の両端に、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12が対向して生じる間隙を囲むように、サイド堰15dおよびサイド堰15wが設けられる。第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12と、サイド堰15dおよびサイド堰15wとにより囲まれる領域に金属溶湯が貯められて、順次鋳片Sが鋳造される。
第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の幅方向の軸の両端は、それぞれハウジング13dおよびハウジング13wに支持される。第2鋳造ドラム12の軸の両端は、鋳造ドラムが対向する水平方向で、第1鋳造ドラム11が配置される側とは反対側にて、第2鋳造ドラム12の軸の両端を連結する連結部19が設けられる。連結部19は、第2鋳造ドラム12が配置される側とは反対側にて、シリンダ17と接続される。シリンダ17は、鋳造ドラムを鋳造ドラムが対向する水平方向に圧下することができる。シリンダ17が連結部19を圧下することで、第2鋳造ドラム12は、鋳造ドラムが対向する水平方向に移動可能となる。第2鋳造ドラム12が移動することにより、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12にて鋳片Sの圧下が可能となる。
第1鋳造ドラム11の軸の両端には、シリンダ17が配置される側とは反対側に、第1鋳造ドラム11にかかる荷重を測定するロードセル14dおよびロードセル14wがそれぞれ設けられる。これにより、シリンダ17の圧下による荷重を測定することができる。
連続鋳造装置10より鋳造された鋳片Sは、第1ピンチロール20により圧延機30に送出される。
圧延機30は、鋳片Sを所望の板厚に圧延する。圧延機30は、上ワークロール31および下ワークロール32と、上ワークロール31および下ワークロール32を支持する上バックアップロール33および下バックアップロール34と、を備える。圧延機30は、上ワークロール31と下ワークロール32とにより、鋳片Sを挟んで圧下する。
図1に示す圧延機30の圧延方向上流には、制御装置100と蛇行計110とが備えられる。蛇行計110は、圧延機30のワークロールに対する鋳片Sの位置情報を取得する機能を有する。蛇行計110は、さらに、取得した位置情報を制御装置100に出力する機能も有する。
蛇行計110は、例えばカメラ等の撮像装置であってもよい。この場合、撮像画像を画像処理することで、鋳片Sの位置情報を取得することができる。なお、本実施形態では、位置情報取得のために、蛇行計110を一例としたが、位置情報を取得できれば形態は限られない。例えば、蛇行計110の代わりに幅方向の温度計を用いて、鋳片Sの位置情報を取得してもよく、鋳片Sのパスラインに分割式のルーパーを設置して、ルーパーから得られる張力を用いて、鋳片Sの位置情報を取得してもよい。
また、本実施形態では、圧延機30の圧延方向上流に蛇行計110を設置したが、圧延方向下流に蛇行計110を設置してもよい。蛇行計110の設置場所は、圧延機30の圧延方向上流または下流で、圧延機30に近いほど、鋳片Sの位置情報を迅速に取得可能である。
制御装置100は、板厚算出部と、比率算出部と、制御部と、を備える。制御装置100は、蛇行計110から鋳片Sの幅方向における位置情報を取得して、位置情報に基づいて圧延機30を制御する機能を有する。制御装置100の動作の詳しくは後述する。
圧延機30は、制御装置100により制御される。制御装置100は、例えば、鋳片Sを圧延する際に、蛇行計110の計測結果に基づいて上ワークロール31および下ワークロール32の圧下位置を制御する。
圧延機30により所望の板厚に圧延された鋳片Sは、第2ピンチロール40により巻取装置50に送出され、巻取装置50にてコイル状に巻き取られる。
(2.鋳片の圧延方法)
以下に記載する鋳片の圧延方法は、双ドラム式連続鋳造装置と圧延機とを有する連続鋳造設備において、圧延機により鋳片の蛇行をより低減し、通板トラブルを低減する技術に関する。
図3および図4を参照して、圧延機30における蛇行を説明する。図3は、圧延機30における鋳片Sの蛇行の様子を示した概略平面図であり、上ワークロール31側から鋳片Sの板面を見た図である。図4は、ウェッジが発生した鋳片を鋳造する様子を示した概略平面図である。
図3を参照すると、上ワークロール31と下ワークロール32とにより圧延された鋳片Sは、圧延方向に対して平行に進行しておらず、鋳片の通板位置が圧延方向に対して直角方向に移動する蛇行が発生している。蛇行は、上ワークロール31および下ワークロール32の一端と他端、つまり左右が非対称に圧延されることにより引き起こされる。このような鋳片Sの蛇行は、圧延機30にて圧延される前、つまり鋳造時の鋳片Sの板厚の形状に起因して発生し得る。
例えば図4に示すように、連続鋳造装置10により、幅方向の一方の端部から他方の端部へ向かって徐々に板厚が変化している鋳片Sが鋳造される場合がある。図4の鋳片Sは、一方の端部の板厚tが他方の端部の板厚tよりも厚くなっている。
このように板厚が均一でなく、ウェッジが生じている鋳片Sが圧延機30にて圧延されると、板厚の厚い部分が板厚の薄い部分よりも大きく延伸される。圧延機30における圧下率は、圧延機30入側において板厚t側よりも板厚t側の端部の方が大きくなる。この場合、圧延時の鋳片Sの圧延機30入側における材料速度は、入側板厚t側よりもt側の端部が小さくなる。このように、鋳片Sの一端と他端との材料速度の差、すなわち鋳片Sの面内で回転が生じることで、蛇行が発生する。蛇行の発生を低減するには、上述したような鋳片Sの一端と他端との材料速度の差を抑制して、所望の出側板厚となるように圧延することが有効である。
本発明者らは、鋳片Sの一端と他端との材料速度の差を抑制して、所望の出側板厚となるように圧延するための圧延方法を鋭意検討し、圧延機30にて蛇行を抑制し通板トラブルを抑制する圧延方法を見出した。図5を参照して説明する。
図5の(a)に、圧延機30においてウェッジが発生している鋳片Sを圧延している状態と、圧延機30入側および出側での鋳片Sの幅方向断面とを示す。図5は、蛇行を発生させる鋳片を長手方向(搬送方向)に断面視した断面図の一例である。図5の(b)に示すように、圧延前、すなわち圧延機30の入側では、鋳片Sは、一端の板厚Hが他端の板厚Hよりも薄く、幅方向に一方から他方へ向かって徐々に板厚が変化した形状である。このような鋳片Sを圧延機30で圧延したとき、図5の(c)に示すように、圧延機30の出側での鋳片Sが、例えば、一端が板厚hであり他端が板厚hである形状になったとする。
本実施形態に係る圧延機30では、圧延機30での圧延時に生じる鋳片Sの幅方向における材料速度差を抑制するため、鋳片Sの幅方向における圧下率が略同一となるようにウェッジが発生している鋳片Sを圧延する。この際に、入側ウェッジ比率((板厚H−板厚H)/入側板厚)と出側ウェッジ比率((板厚h−板厚h)/出側板厚)とを求め、これらの差分から、鋳片Sの幅方向における圧下率が略同一となっているかを判断して、圧延機30の圧下位置を制御する。鋳片Sの幅方向の圧下率が略同一であれば、鋳片Sの幅方向において材料速度差が生じず、鋳片Sの面内で回転が生じないため、圧延機における蛇行の発生を抑制することができる。
このような圧延方法を実現するために、制御装置100の板厚算出部は、まず、圧延機の入側における鋳片Sの両端部の板厚の差である入側ウェッジ(板厚H−板厚H)と鋳片の入側板厚との比率を示す入側ウェッジ比率(%)を算出する。鋳片Sの入側板厚とは、鋳片Sの幅方向中央の板厚Hであってもよい。
次に、板厚算出部は、圧延機の出側における両端部の板厚の差である出側ウェッジ(板厚h−板厚h)と鋳片の出側板厚との比率を示す出側ウェッジ比率(%)を算出する。鋳片Sの出側板厚とは、鋳片Sの幅方向中央の板厚hであってもよい。
さらに、制御装置100の比率算出部は、入側ウェッジ比率(%)と出側ウェッジ比率(%)との差分を求める。
その後、制御装置100の制御部は、該差分が所定の範囲になるように、圧延機の圧下位置を調整する。入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分の所定の範囲は、例えば、実操業で許容できる蛇行量から経験的に求めても良い。また、0%以上2%以下の値であってもよい。差分の大きさの上限が2%であることにより、圧延機30における蛇行をより確実に低減できる。これにより、鋳片Sの一端と他端との材料速度差を抑制し、蛇行を抑制できる。
以下、各処理について詳細に説明する。
(圧延機入側ウェッジ比率の算出方法)
まず、板厚算出部における入側ウェッジ比率の算出方法を説明する。圧延機30にて圧延される鋳片Sは圧延機30よりも圧延方向上流に配置される連続鋳造装置10にて鋳造される。本実施形態では、連続鋳造装置10にて鋳造される鋳片Sの板厚を算出し、圧延機30の入側板厚として圧延機入側ウェッジ比率の算出に用いる。これにより、圧延機30の入側に板厚計等を設置しなくとも、圧延機30の入側での鋳片Sの板厚を取得することができる。
圧延機30の入側での鋳片Sの板厚は、鋳造ドラムのドラム間隙から推定される。鋳造ドラムのドラム間隙は、シリンダ圧下位置による変化の他、鋳造ドラムにかかる荷重、鋳片との接触等によって変化が生じる。鋳造ドラムにかかる荷重、鋳片との接触等によるドラム間隙の変化は、鋳造ドラムの弾性変形の寄与分とドラム以外の弾性変形の寄与分、および、鋳造ドラムのドラムプロフィルの変化の寄与分に分離して考えることができる。鋳造ドラム以外の弾性変形寄与分を、鋳造ドラムハウジング圧下系変形と呼ぶ。これより、圧延機30の入側板厚は、鋳造ドラムの各種条件を用いて、下記の式1により推定することができる。
(圧延機入側の推定板厚)=(鋳造シリンダの圧下位置)
+(鋳造ドラムの弾性変形)
+(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
+(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
−(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)・・・式1
ただし、式1において、鋳造シリンダの圧下位置、鋳造ドラムハウジング圧下系変形は、それぞれ、圧下位置零点調整時からの差分を表す。差分は、圧下位置零点調整時のシリンダ圧下位置、鋳造ドラムハウジング変形に対する差分であってもよい。
(シリンダの圧下位置)
シリンダの圧下位置とは、図2に示した連続鋳造装置10のシリンダ17の押圧方向におけるシリンダ17の圧下位置を示す。例えば、シリンダの圧下位置とは、シリンダの位置が零点調整された零点である初期値からの差分による位置を示す。シリンダの圧下位置は、図2又は図7の矢印aに沿った方向の変位から求めることができる。シリンダの圧下位置は、シリンダ17の移動量を計測可能な位置センサ等(図示せず)により適時測定することができる。
(鋳造ドラムの弾性変形)
鋳造時における鋳造ドラムの弾性変形とは、鋳造を開始してから鋳造を終了するまでの任意の時点における鋳造ドラムの弾性変形を示す。鋳造ドラムは、鋳造ドラムと接触する鋳片からの反力や、鋳造ドラムに加えられる外力の影響により、鋳造ドラムの軸に撓みが発生したり、鋳造ドラムに扁平変形が発生したりする。これらの変形を鋳造時における鋳造ドラムの弾性変形と言う。鋳造ドラムの弾性変形は、弾性理論を用いた解析等の手段により、求めることができる。
例えば、鋳造ドラムのドラム変形の寄与分の鋳造ドラムの軸の撓みについては、鋳造ドラムを両端支持梁とみなして、材料力学の梁のたわみ計算から算出することができる。たわみ計算の際に用いられる幅方向の荷重分布については、鋳造ドラムの軸の両端に設けられるロードセル値に基づき幅方向について線形の分布を仮定して問題ない。
(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性とは、鋳造ドラムにかかる圧下荷重の影響をうけて、ハウジング13dおよびハウジング13wが変形する特性と、シリンダ17を含む鋳造ドラムを圧下する構成が変形する特性と、を包含した変形特性を示す。上記式1の鋳造ドラムハウジング圧下系変形は、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて算出された鋳造ドラムハウジングの変形量を示す。例えば、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性は、特許文献6に記載の方法を用いて求めることができる。鋳造ドラムハウジング圧下系変形は、後述するように、ロードセル14d(又はロードセル14w)が測定した荷重等に基づいて算出できる。
(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
鋳造ドラムのドラムプロフィルとは、鋳造ドラムの熱膨張量または、鋳造ドラムの摩耗量を示す指標である。鋳造ドラムのドラムプロフィルでは、熱膨張量は、鋳造ドラムにかかる熱を踏まえて、鋳造ドラム表面形状の変形量を算出する。摩耗量は、鋳造前のドラムプロフィルを実測しても良いし、鋳造条件から推定しても良い。例えば、鋳造ドラム設計時の表面形状は既知であるため、その表面形状に熱膨張および摩耗による形状変形を加算することで、ドラムプロフィルの変形量を求めることができる。
(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)
圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形とは、鋳造開始前に鋳造ドラムの圧下位置の初期値を決定する圧下位置零点調整の時の鋳造ドラムの弾性変形を示す。圧下位置零点調整は、鋳造ドラムに対して荷重をかけた状態で行うため、鋳造ドラムに弾性変形が発生する。その時の弾性変形量を圧下位置零点調整時の鋳造ドラムの弾性変形としている。この弾性変形量は、鋳造時の鋳造ドラムの弾性変形と同様に、ドラムを両端支持梁とみなした材料力学の梁のたわみ計算から算出することができる。
推定板厚は、上述したように、「鋳造シリンダの圧下位置」と「鋳造ドラムの弾性変形」と「鋳造ドラムハウジング圧下系変形」と「鋳造ドラムのドラムプロフィル」との値の和から、「鋳造ドラムの圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形」の値を減じることで求められる。
上記式1にて求めた鋳造ドラム間のギャップによる連続鋳造装置10の出側板厚は、圧延機30の入側における鋳片の板厚と同等であるため、この連続鋳造装置10の出側板厚から鋳片Sの両端部の板厚を求めることができる。そして、該両端部の板厚差と鋳片Sの幅方向中央の板厚とから入側ウェッジ比率を算出できる。
(圧延機出側ウェッジ比率の算出方法)
次に、圧延機30の出側ウェッジ比率の算出方法を説明する。出側板厚は、例えば、上ワークロール31と下ワークロール32との間のギャップを算出する下記の式2を用いて推定できる。幅方向における上ワークロール31と下ワークロール32との間のギャップの分布がわかれば、上ワークロール31および下ワークロール32で圧延される鋳片Sのプロフィルも推定し得る。
(圧延機出側の推定板厚)=(圧延シリンダの圧下位置)
+(ワークロールの弾性変形)
+(圧延機ハウジング圧下系変形)
+(ワークロールのロールプロフィル)
−(圧下位置零点調整時におけるワークロールの弾性変形)・・・式2
圧延シリンダの圧下位置とは、圧延機のワークロールを圧下するシリンダが圧下する方向におけるシリンダの位置を示す。例えば、シリンダの圧下位置とは、シリンダの位置が零点調整された零点である初期値からの差分による位置を示す。
ワークロールの弾性変形とは、圧延を開始してから圧延を終了するまでの任意の時点におけるワークロールの弾性変形を示す。ワークロールでは、ワークロールと接触する鋳片やバックアップロールからの反力や、ワークロールに加えられる外力の影響により、ワークロールの軸に撓みが発生したり、ワークロールに扁平変形が発生したりする。これらの変形をワークロールの弾性変形と言う。ワークロールの弾性変形であるワークロールの軸の撓みやワークロールの偏平変形については、例えば、特許文献6に記載の方法を用いて求めることができる。
圧延機ハウジング圧下系変形特性とは、ワークロールにかかる圧延荷重の影響をうけて、ワークロール等を支持するハウジングが変形する特性と、シリンダを含むワークロールを圧下する構成が変形する特性と、を包含した変形特性を示す。例えば、特許文献6に記載の方法を用いて、圧延機ハウジング圧下系変形特性を求めることができる。
ワークロールのロールプロフィルとは、ワークロールの熱膨張量または、鋳造ドラムの摩耗量を示す指標である。ワークロールのロールプロフィルでは、熱膨張量は、ワークロールにかかる熱を踏まえて、ワークロールの表面形状の変形量を算出する。摩耗量は、圧延前のロールプロフィルを実測しても良いし、圧延条件から推定しても良い。例えば、圧延機設計時のワークロールの表面形状は既知であるため、その表面形状に熱膨張による形状変形を加算することで、ロールプロフィルの変形量を求めることができる。
圧下位置零点調整時におけるワークロールの弾性変形とは、圧延開始前に圧延機の圧下位置の初期値を決定する圧下位置零点調整の時のワークロールの弾性変形を示す。圧下位置零点調整は、ワークロールに対して荷重をかけた状態で行うため、ワークロールに弾性変形が発生する。その時の弾性変形量を圧下位置零点調整時のワークロールの弾性変形としている。この弾性変形量は、圧延時のワークロールの弾性変形と同様に算出することができる。
圧延機出側のワークロール間のギャップは、上述したように、「圧延シリンダの圧下位置」と「ワークロールの弾性変形」と「圧延機ハウジング圧下系変形」と「ワークロールのロールプロフィル」との値の和から、「圧下位置零点調整時におけるワークロールの弾性変形」の値を減じることで求められる。
ここで、圧延機30の出側における鋳片のウェッジを算出するためには、上記式2において圧延機30の上ワークロール31および下ワークロール32に対する鋳片Sの幅方向の位置の特定が必要である。鋳片Sの位置により、ワークロールと接触する鋳片からの反力の作用点位置が変わったり、鋳片Sやバックアップロールからワークロールに及ぼす反力の幅方向分布が変わったりすることで、ワークロールの弾性変形が変化し、上ワークロール31と下ワークロール32との間のギャップの幅方向分布が変化するからである。
そこで、板厚算出部は、蛇行計110から鋳片Sの位置情報を取得し、圧延機30に対する鋳片Sの幅方向の位置を特定する。そして、板厚算出部は、上記式2にて求めたワークロール間のギャップの分布から、鋳片Sの幅方向の位置に対応するワークロール間のギャップを鋳片Sの出側板厚とする。これより、鋳片Sの両端部に相当する板厚が求められる。板厚算出部は、鋳片Sの両端部の板厚差と鋳片の幅方向中央の板厚とに基づき出側ウェッジ比率を算出する。
図6を参照して鋳片Sの位置情報を説明する。図6は、圧延方向から見た圧延機30を模式的に示した図である。
位置情報は、ワークロールに対する鋳片Sの位置情報である。位置情報は、ワークロールに鋳片Sが接している箇所の位置を示す情報であってもよい。具体的には、位置情報は、鋳片Sの幅方向の中央点Scから、上ワークロール31の幅方向の中央点31cおよび下ワークロール32の幅方向の中央点32cを結んだ直線の中点Wまでの距離Yであってもよい。
このように、板厚算出部と比率算出部とにより、圧延機30の入側ウェッジ比率および出側ウェッジ比率が算出される。比率算出部は、算出した入側ウェッジ比率および出側ウェッジ比率を制御部へ出力する。
(圧延機の制御)
制御部は、比率算出部から入側ウェッジ比率および出側ウェッジ比率を取得して、入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分を求める。制御部は、この差分が、所定の範囲になるように、圧延機30の圧下位置を調整する。圧延機30の調整は、圧延機30に設けられたシリンダにより行われる。所定の範囲(すなわち、許容し得る入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分の大きさ)は、鋳片の材質、圧延機30の状態等に応じて適宜決定し得るが、例えば0%以上2%以下であってもよい。入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分の大きさを2%以下とすることで、より確実に圧延機30の蛇行の発生を抑制できる。
(3.鋳片の製造方法)
以下、上記実施形態に係る鋳片の製造方法に関して、具体的な全体の手順について、説明する。
まず、制御装置100の板厚算出部は、圧延機30入側における入側板厚を算出する。入側板厚は、上記式1に基づき算出される。連続鋳造装置10には、例えば、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の温度測定器、荷重を測定するロードセル14dおよびロードセル14w等の各種計測器が配備されている。板厚算出部は、これらの各種計測器から各種値を取得して、上記式1より、鋳片の両端部の推定板厚を算出する。板厚算出部は、上記式1により算出された入側板厚の鋳片Sの両端部の板厚を用いて、入側ウェッジを算出する。
次に、板厚算出部は、圧延機30出側における出側板厚を算出する。出側板厚は上記式2に基づき算出される。圧延機30には、例えば、上ワークロール31および下ワークロール32の温度測定器、荷重を測定する荷重測定器等の各種計測器が配備されている。板厚算出部は、これらの各種計測器から各種値を取得して、上記式2より、出側板厚を算出する。
ここで、板厚算出部は、蛇行計110から鋳片Sの位置情報を取得する。板厚算出部は、該位置情報を用いて、ワークロールに対する鋳片Sの位置を特定する。板厚算出部は、特定した鋳片Sの位置と上記式2により算出された出側板厚とから、鋳片Sの両端部に対応する板厚を推定し、出側ウェッジを算出する。
次に、比率算出部は、板厚算出部にて算出された、圧延機30入側および出側の鋳片Sのウェッジと圧延機30入側および出側の鋳片の板厚から、ウェッジ比率を算出する。具体的には、比率算出部は、入側ウェッジと、入側の鋳片の幅方向中央の板厚または入側の鋳片の平均板厚と、を用いて、入側ウェッジ比率を算出し、出側ウェッジと、出側の鋳片の幅方向中央の板厚または出側の鋳片の平均板厚と、を用いて出側ウェッジ比率を算出する。
次に、制御部は、比率算出部により算出された入側ウェッジ比率および出側ウェッジ比率との差分を算出して、該差分が所定の範囲になるように、圧延機30のシリンダ(図示せず)の圧下位置を調整する。
以上、本実施形態における鋳片の製造方法の詳細に関して説明を行った。
(4.圧延機入側板厚算出の精度向上)
本実施形態において、圧延機30の入側での鋳片Sの板厚は、上記式1に基づき、鋳造ドラムの各種条件を用いて推定する。上記式1による板厚の推定精度が高いほど、入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分の精度が高まり、その結果、圧延機30の蛇行もさらに抑制することができる。
ここで、上記式1の各項のうち、ドラム以外の構成の変形特性を示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性は、特に低荷重領域で接触面の微妙な形状に大きく依存し、特性が変化しやすく、公知の物理モデルを用いても幾何学形状を厳密に把握することが困難である。そこで、本発明者らは、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得するための手法を検討し、以下に示す手法に想到した。
(鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得)
図7を参照して鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得方法を説明する。図7は、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得方法の一例を示した図である。
図7に示されるように、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得は、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12に試験板16を挟んで行い得る。試験板16は、長手方向の長さが鋳造ドラムの幅方向のバレル長よりも長く、板厚が均一である。この状態から、シリンダ17により試験板16を押圧して締めこむことで、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12により試験板16を押圧する。試験板16の長手方向に垂直な方向の長さは、限定されないが、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12に十分に接することができるように、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12のドラム径の2倍程度の、50〜100cm程度の長さであることがより好ましい。
このようにバレル長よりも長い試験板16を用いることにより、鋳造ドラムの両端部に均等な荷重を与えることができ、精度よく鋳造ドラムハウジング圧下系変形を取得することができる。鋳造ドラムハウジング圧下系変形は、荷重変化と鋳造ドラムハウジング圧下系の変形量との関係を示す。
具体的には、試験板16を鋳造ドラムに挟んだ状態で、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12を回転させない状態で、試験板16に対して零点調整時の荷重よりも大きな所定の荷重で鋳造ドラムを締めこんでいき、鋳造ドラムの圧下位置とロードセル14d、14wが測定した荷重とを取得して、各荷重での鋳造ドラムの変形量を計算する。そして、鋳造ドラムの圧下位置から鋳造ドラムの変形量を減じることで、各荷重に対する鋳造ドラムハウジング圧下系変形量を取得する。これにより、鋳片Sを鋳造する際に鋳片Sに対して負荷する荷重に応じた鋳造ドラムハウジング圧下系変形量を示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得できる。また、他の手法としては、試験板16を挟んだ状態で、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12を回転させ、上記所定の荷重で、鋳造ドラムを締めこんでいき、所定の時間だけ該荷重を保持して、該荷重と鋳造ドラムの圧下位置との平均値を取得してもよい。その後、さらに、鋳造ドラムの荷重を変化させて、変化させた荷重を所定の時間だけ保持して、別水準の荷重と鋳造ドラムの圧下位置との平均値を取得してもよい。ここで、各荷重を保持する時間は、鋳造ドラム2回転分であってもよい。また、この平均値は、荷重と圧下位置の時系列データを取得して、これらの時間平均から算出してもよい。このようにして、各荷重での鋳造ドラムの変形量が計算され、鋳造ドラムの圧下位置から鋳造ドラムの変形量が減じられることで、各荷重に対する鋳造ドラムハウジング圧下系変形量が取得される。このように、鋳造ドラムの幅方向のバレル長よりも長く、板厚が均一な試験板16を用いて鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得することで、鋳造時に鋳造ドラムにかかる荷重による鋳造ドラムハウジングおよびシリンダ等を含む圧下系の変形量を求めて、式1に反映することができる。その結果、式1により得られる推定板厚の精度を高めることができる。
鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得は、一連の鋳造作業開始前に一度行っておけばよい。また、ハウジングまたは圧下系の構成の一部が交換された場合に行うことで、設備状況に応じた鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性の取得が可能である。
試験板16は、例えば、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の表面に形成されたディンプル等を潰さないように、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12よりも柔らかい材料から形成されることがより好ましい。試験板16は、限定されないが、例えばアルミ合金から形成されることがより好ましい。
(圧下位置零点調整への適用)
さらに、鋳造ドラムの圧下位置零点調整において、図7のように、鋳造ドラムの幅方向端部に設けられる一対のサイド堰を開放して、鋳造ドラムの間に、鋳造ドラムのドラム長よりも長く板厚が均一な板を挟み、鋳造ドラムを締めこんでもよい。これにより、鋳造ドラムの回転軸が平行な状態が保持された状態で鋳片ドラムが締め込まれるので、鋳造ドラムの両端に均等な負荷を付与することができ、圧下位置零点調整の精度を高めることで圧延機の入側の推定板厚の精度を高めることができる。
連続鋳造装置10では、稼働を開始する前に鋳造ドラムの圧下位置零点調整を行っている。圧延機30にて圧延する鋳片の板厚を推定する上で、ドラムギャップを推定するため、鋳造ドラムにおける零点調整は精度よく行われることが求められる。
まず、圧下位置零点調整に関して図8〜図10を参照して説明する。図8〜図10は、鋳造開始前の圧下位置零点調整時の鋳造ドラムを模式的に示した図である。図8〜図10では、説明のためにプロファイルの凹形状を強調して示している。
図8〜図10に示されるように、鋳造開始前の鋳造ドラムのドラムプロフィルは、板幅方向に凹形状を有する。これは、第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12が鋳造を開始してから定常鋳造時に到達するまでに、経過時間とともに熱膨張して変化することに起因する。鋳造ドラムは、熱膨張が見られる定常鋳造時における鋳片の板プロフィル(クラウン)が所望の板プロフィルとなるように、鋳造ドラムの初期プロフィルが設定されている。すなわち、鋳造ドラムの初期プロフィルは、鋳造ドラムの幅中央部のドラム径が鋳造ドラムの両端部のドラム径よりも小さくされた凹クラウンに設定されている。
このような凹クラウンが付与された鋳造ドラムは、一対の鋳造ドラム同士を接触(キス)させて、所定の荷重Fを付与した際の圧下位置(押付位置)を零として、圧下位置零点調整が行われる。この圧下位置零点調整により、鋳造ドラムを押圧するシリンダの圧下位置の初期値等が設定され得る。
ところが、鋳造ドラムには、上述したように凹クラウンが付与されている。このため、鋳造ドラム同士を接触(キス)させて、鋳造ドラムに対して所定の荷重Fが付与された場合には、鋳造ドラムの両端部同士のみが接触する。このため、例えば、図8に示すように、鋳造ドラムの幅方向の位置が完全に一致せず、鋳造ドラムに対して所定の荷重Fをかけた際、第1鋳造ドラム11の両端部と第2鋳造ドラム12の両端部の接触点がずれて、ずれ量xが発生し不安定な状態となる。このため、圧下位置零点調整の精度が低下する。
これを避けるために、凹クラウンを付与した鋳造ドラムを用いた圧下位置零点調整時には、図9に示すように、鋳造ドラム間に薄板18を挟んだ圧下位置零点調整が行われる。図9では、薄板18の幅方向の長さの中間点18Cが、第1鋳造ドラム11の幅方向の長さの中間点11Cおよび第2鋳造ドラム12の幅方向の長さの中間点12Cを結ぶ直線上に配置されているため、鋳造ドラムの両端部にずれは発生しない。ずれが発生していなければ、第1鋳造ドラム11の回転軸Ar1および第2鋳造ドラム12の回転軸Ar2は平行であるため、圧下位置零点調整を安定して実施することができる。
しかし、ずれを抑制すべく薄板18を鋳造ドラムに挟んで圧下位置零点調整を行う場合であっても、図10に示すように、薄板18の幅方向の長さの中間点18Cが、第1鋳造ドラム11の幅方向の長さの中間点11Cおよび第2鋳造ドラム12の幅方向の長さの中間点12Cを結ぶ直線上に配置されず、薄板18が鋳造ドラムの幅方向のどちらか一方の端部に寄って配置されることがある。この場合、図10に示すように、第1鋳造ドラム11の回転軸Ar1と第2鋳造ドラム12の回転軸Ar2とが平行ではなくなるため、圧下位置零点調整を行っても鋳造ドラムの左右(第1鋳造ドラム11および第2鋳造ドラム12の幅方向の両端)で誤差を含む状態となる。圧下位置零点調整に誤差が含まれてしまうと、鋳造中の鋳造ドラムの圧下位置等が誤差を含むため、圧延機30の板厚を推定する際に正確性が低下する。よって、圧下位置零点調整の精度を向上できれば、圧延機30における蛇行をさらに低減できる。
そこで、図7に示したように、鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得と同様、鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放して、鋳造ドラムの間に鋳造ドラムのドラム長よりも板幅が長く板厚が均一な試験板16を挟んだ状態で圧下位置零点調整を行う。これにより、圧下位置零点調整を精度よく実施することができる。なお、かかる手法により圧下位置零点調整を行う場合には、圧下位置零点調整において鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を取得してもよい。
(5.変形例)
次に、図11を参照して、上記実施形態にかかる鋳片の製造方法の変形例の一例について説明する。図11は、上記実施形態にかかる鋳片の製造方法の変形例の一例を示した図である。
図11に示す鋳片の連続鋳造設備1を用いた鋳片の製造方法は、図1に示す蛇行計110の代わりに、板厚計210から取得される実測板厚を、制御装置200が出側ウェッジ算出の際に用いる点が異なる。
図11では、鋳片の連続鋳造設備1の圧延機30の圧延方向下流に板厚計210が設置されている。板厚計210は、例えば、鋳片Sの幅方向の板厚を測定可能な厚み分布計であってもよい。本変形例では、出側ウェッジ比率の算出に用いられる出側板厚は、圧延機30の出側における鋳片の板厚計210の実測値である。制御装置200は、板厚計210から鋳片Sの両端部の板厚の実測値を取得して、出側ウェッジ比率を求める。入側ウェッジ比率は、上述した実施形態と同様に求められる。制御装置200は、求められた入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分をさらに求める。制御装置200は、求めた差分が所定の範囲となるように、圧延機30の圧下位置を調整する。これにより、算出過程の誤差を抑制して、出側ウェッジを算出し、精度高く圧延機30を制御することができる。なお、板厚計210は、少なくとも圧延機30の圧延方向下流に設置されればよい。
本実施例では、本発明の効果を確認するために、上記実施形態に示した連続鋳造設備1を用いて、鋳片を製造した。本実施例で使用した鋳造ドラムは、ドラムバレル長1000mmであった。圧延機におけるシリンダ位置、圧力、板厚については、定常部の値を用いた。ここで定常部とは、被圧延材について、圧延機の入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が小さくなるように実施される、圧延機左右のシリンダの圧下位置制御による圧下位置変化が小さくなった箇所を意味する。本実施例では、圧延開始後1分30秒経過後〜1分40秒経過までの時間における、各値の平均値を用いた。
各実施例および比較例における各種条件および値、通板性の評価は、下記表1にまとめて記した。通板性の評価は、最大の蛇行量が30mm未満を◎(良好)、80mm未満を○(合格)、それ以上を×(不合格)とした。
実施例1では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整方法として、図7に示したように、鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放して、鋳造ドラムの間に鋳造ドラムのドラム長よりも長く板厚が均一な板を挟んだ状態で圧下位置零点調整を行った。表1中には、この圧下位置零点調整方法をAと記した。圧延機の制御は、圧延機入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が小さくなるように圧延機左右のシリンダの圧下位置制御を行った。
実施例2では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整方法として、図9に示したような、鋳造ドラムのドラムバレル長よりも短い板を、一対の鋳造ドラムに挟んで圧下位置零点調整を行った。表1中には、この圧下位置零点調整方法をBと記した。圧延機の制御は、圧延機入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が小さくなるように圧延機左右のシリンダの圧下位置制御を行った。
実施例3では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整方法として、図9に示したような、鋳造ドラムのドラムバレル長よりも短い板を、一対の鋳造ドラムに挟んで圧下位置零点調整を行った。表1中には、この圧下位置零点調整方法をBと記した。圧延機の出側に板厚計を設置した。圧延機の制御は、入側ウェッジ比率と出側ウェッジ比率との差分が0になるように圧延機の両端部に設けられる左右のシリンダの圧下位置制御を行った。
比較例1では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整方法として、実施例2と同様に、図9に示したような、鋳造ドラムのドラムバレル長よりも短い板を、一対の鋳造ドラムに挟んで圧下位置零点調整を行った。表1中には、この圧下位置零点調整方法をBと記した。圧延機の制御は、圧延機の圧下力が左右で同一となるように圧延機左右のシリンダの圧下位置制御を行った。
比較例2では、鋳造ドラムの圧下位置零点調整方法として、実施例2と同様に、図9に示したような、鋳造ドラムのドラムバレル長よりも短い板を、一対の鋳造ドラムに挟んで圧下位置零点調整を行った。表1中には、この圧下位置零点調整方法をBと記した。圧延機の制御は、圧延機の圧下位置が左右で同一となるように圧延機左右のシリンダの圧下位置制御を行った。
本実施例1〜3および比較例1〜2に係る鋳片は、圧延機入側の定常部における実測の板厚は、ドライブサイドDSの端部の板厚が1.760mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.820mmであり、ウェッジ(ウェッジ量)は−60μmであった。また、入側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、−3.35%であった。以下、各制御方法を用いて鋳片の製造を行った結果を説明する。
実施例1は、圧延機入側の両端部の板厚は上記式1を用いて推定し、圧延機出側の両端部の板厚は上記式2を用いて推定した。推定されたこれらの板厚に基づいて、圧延機の制御が行われた。圧延機出側の鋳片の実測値は、圧延機出側のドライブサイドDSの端部の板厚が1.232mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.287mmであり、ウェッジは−55μmであった。また、出側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、−4.35%であった。これより、ウェッジ比率の差分は、0.99%であった。圧延機における蛇行量は最大で20mm程度であり、鋳片Sの先端部から尾端部まで問題なく圧延実施できた。
実施例2は、圧延機入側の両端部の板厚は上記式1を用いて推定し、圧延機出側の両端部の板厚は上記式2を用いて推定した。推定されたこれらの板厚に基づいて、圧延機の制御が行われた。圧延機出側の鋳片の実測値は、圧延機出側のドライブサイドDSの端部の板厚が1.243mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.259mmであり、ウェッジは−17μmであった。また、出側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、−1.35%であった。これより、ウェッジ比率の差分は、2.00%であった。圧延機における蛇行量は最大で70mm程度であり、鋳片Sの先端部から尾端部まで問題なく圧延実施できた。
実施例3は、圧延機入側の両端部の板厚は上記式1を用いて推定し、圧延機出側の両端部の板厚は、板厚計により実測され、推定された板厚と実測された板厚に基づいて、圧延機の制御が行われた。圧延機出側の鋳片の実測値は、圧延機出側のドライブサイドDSの端部の板厚が1.232mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.284mmであり、ウェッジは−52μmであった。また、出側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、−4.13%であった。これより、ウェッジ比率の差分は、0.78%であった。圧延機における蛇行量は最大で15mm程度であり、鋳片Sの先端部から尾端部まで問題なく圧延実施できた。
比較例1では、圧延機出側の鋳片の実測値は、圧延機出側のドライブサイドDSの端部の板厚が1.285mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.238mmであり、ウェッジは47μmであった。また、出側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、3.74%であった。これより、ウェッジ比率の差分は、7.09%であった。圧延機における蛇行量は最大で200mm程度であり、鋳片Sの尾端部で絞り込みが発生した。
比較例2では、圧延機出側の鋳片の実測値は、圧延機出側のドライブサイドDSの端部の板厚が1.285mmであり、ワークサイドWSの端部の板厚が1.219mmであり、ウェッジは65μmであった。また、出側の鋳片の板厚に対するウェッジ比率は、5.22%であった。これより、ウェッジ比率の差分は、8.58%であった。圧延機における蛇行量は最大で250mm程度であり、鋳片が圧延機入側のサイドガイドに接触および折れ込みが発生し、破断に至った。
以上より、上述したような鋳片製造設備を用いた鋳片の製造において、鋳片の鋳造開始前に取得された鋳造ドラムを支持するハウジングの変形特性と鋳造ドラムを圧下する圧下系の変形特性とを示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて、鋳片Sの板厚を推定し、圧延機の入側ウェッジ比率および出側ウェッジ比率の差分を所定の範囲になるように圧延機の圧下位置を調整することにより、圧延機における蛇行を低減し、通板トラブルを低減できる。
Figure 0006950838
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、双ドラム式連続鋳造装置と圧延機とを有する連続鋳造設備において鋳片を製造する際に、圧延機における蛇行をより低減し、通板トラブルを低減することが可能であるため、産業上の利用可能性が高い。
10 連続鋳造装置
11 第1鋳造ドラム
12 第2鋳造ドラム
20 第1ピンチロール
30 圧延機
40 第2ピンチロール
50 巻取装置
100 制御装置
110 蛇行計
200 制御装置
210 板厚計
111、112 軸受け箱(又はチョック)

Claims (6)

  1. 回転する一対の鋳造ドラムにより金属溶湯を凝固させて鋳片を鋳造する双ドラム式連続鋳造装置と、鋳造された前記鋳片を一対のワークロールにより圧延する圧延機と、を用いて鋳片を製造する鋳片の製造方法において、
    前記鋳片の鋳造開始前に取得された前記鋳造ドラムを支持するハウジングの変形特性と前記鋳造ドラムを圧下する圧下系の変形特性とを示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて、下記の式1より前記鋳片の幅方向の両端部の推定板厚を算出し、
    前記式1より算出された前記推定板厚に基づいて、前記圧延機の入側における前記両端部の板厚の差である入側ウェッジと前記鋳片の入側板厚との比率を示す入側ウェッジ比率とを算出し、
    前記圧延機の出側における前記両端部の板厚の差である出側ウェッジと前記鋳片の出側板厚との比率を示す出側ウェッジ比率とを算出し、
    前記入側ウェッジ比率と前記出側ウェッジ比率との差分が所定の範囲になるように、前記圧延機の圧下位置を調整する、鋳片の製造方法。
    (圧延機入側の推定板厚)=(鋳造シリンダの圧下位置)
    +(鋳造ドラムの弾性変形)
    +(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
    +(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
    −(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)・・・式1
  2. 前記出側ウェッジ比率の算出に用いられる出側板厚は、ロールバイト直下での前記鋳片の幅方向の位置情報を用いて、下記の式2により推定される、請求項1に記載の鋳片の製造方法。
    (圧延機出側の推定板厚)=(圧延シリンダの圧下位置)
    +(ワークロールの弾性変形)
    +(圧延機ハウジング圧下系変形)
    +(ワークロールのロールプロフィル)
    −(圧下位置零点調整時におけるワークロールの弾性変形)・・・式2
  3. 前記出側ウェッジ比率の算出に用いられる出側板厚は、前記圧延機の出側における鋳片の板厚の実測値である、請求項1に記載の鋳片の製造方法。
  4. 前記鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性は、前記鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放し、前記鋳造ドラムの間に前記鋳造ドラムのドラム長よりも板幅が長く板厚が均一な板を挟んだ状態で締込みを実施することにより得られた前記鋳造シリンダの圧下位置および荷重に基づき取得される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鋳片の製造方法。
  5. 前記鋳造ドラムの圧下位置零点調整は、前記鋳造ドラムの幅方向端部に設けられた一対のサイド堰を開放して、前記鋳造ドラムの間に前記鋳造ドラムのドラム長よりも板幅が長く板厚が均一な板を挟んだ状態で行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋳片の製造方法。
  6. 回転する一対の鋳造ドラムにより金属溶湯を凝固させて鋳片を鋳造する双ドラム式連続鋳造装置と、鋳造された前記鋳片を一対のワークロールにより圧延する圧延機と、を有する鋳片の製造設備における、前記圧延機の圧下位置を調整する制御装置であって、
    前記制御装置は、
    前記鋳片の鋳造開始前に取得された前記鋳造ドラムを支持するハウジングの変形特性と前記鋳造ドラムを圧下する圧下系の変形特性とを示す鋳造ドラムハウジング圧下系変形特性を用いて、下記の式1より前記鋳片の幅方向の両端部の推定板厚を算出する板厚算出部と、 前記推定板厚を用いて、前記圧延機の入側における前記両端部の板厚の差である入側ウェッジと、前記鋳片の入側板厚との比率を示す入側ウェッジ比率を求め、
    前記圧延機の出側における前記両端部の板厚の差である出側ウェッジと、前記鋳片の出側板厚との比率を示す出側ウェッジ比率と、を求める比率算出部と、
    前記入側ウェッジ比率と前記出側ウェッジ比率との差分が所定の範囲になるように、前記圧延機の圧下位置を調整する制御部と、を備える、制御装置。
    (圧延機入側の推定板厚)=(鋳造シリンダの圧下位置)
    +(鋳造ドラムの弾性変形)
    +(鋳造ドラムハウジング圧下系変形)
    +(鋳造ドラムのドラムプロフィル)
    −(圧下位置零点調整時における鋳造ドラムの弾性変形)・・・式1
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