JP6910854B2 - 導電性高分子分散液、導電性基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
携帯電子機器は持ち運びやすさの点から薄型化が求められることが多く、その要求に応えるため、入力装置としてインセル型静電容量式タッチパネルが使用されることがある。インセル型静電容量式タッチパネルは、静電容量式タッチパネルがディスプレイの内部に組み込まれたものであり、ディスプレイの電極とタッチパネルの電極が共用されることで薄型化されている(例えば特許文献1)。
インセル型静電容量式タッチパネルは、基材の表面に導電層が形成された導電性基板を備えている。この導電性基板における導電層は、導電性が低すぎると、液晶分子帯電による表示不具合が生じることがある。一方、導電層の導電性が高すぎると、タッチパネルの静電容量変化の検知に悪影響を及ぼすことがある。そのため、導電層においては、適度な導電性、例えば1×107Ω/□以上1×1012Ω/□以下程度の表面抵抗が求められる。
このような表面抵抗を得るための導電材として、導電性高分子を使用することができる。導電性高分子を含む導電層の形成方法としては、例えば、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体を含む導電性高分子分散液を基材表面に塗工する方法が知られている。
本発明は、適度な導電性を有すると共に硬度及び耐熱性が充分に高い導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、適度な導電性を有すると共に硬度及び耐熱性が充分に高い導電層を備える導電性基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
[1]π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ケイ素原子を2つ以上有するシリケートと、芳香族化合物と、有機溶剤とを含有し、
前記芳香族化合物は、芳香環の2つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換された化合物、芳香環の2つ以上の水素原子がカルボニル基に置換された化合物、及び、芳香環の1つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換され且つ1つ以上の水素原子がカルボニル基に置換された化合物よりなる群から選ばれる1種以上である、導電性高分子分散液。
[2]前記シリケートはケイ素原子を4つ以上有する、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3]前記シリケートにおけるSiO2含有量が40質量%以上70質量%以下である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4]前記シリケートは、下記化学式(I)で示される化合物及び下記化学式(II)で示される化合物の少なくとも一方である、[1]〜[3]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
SinOn−1(OCH3)2n+2 (nは2以上100以下である。) (I)
SimOm−1(OCH2CH3)2m+2 (mは2以上100以下である。)(II)
[5]前記芳香族化合物における芳香環がベンゼン環である、[1]〜[4]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[6]前記芳香族化合物が、下記化学式(III)で示される化合物である、[5]に記載の導電性高分子分散液。
(化学式(III)におけるR1,R2,R3,R4,R5は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基である。)
[8]前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[7]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[9]前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[8]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[10]ガラス基材塗工用である、[1]〜[9]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液。
[12]前記基材がガラス基材である、[11]に記載の導電性基板。
[13]前記ガラス基材が無アルカリガラス基材である、[12]に記載の導電性基板。
[14]前記基材が液晶セルである、[11]〜[13]のいずれか一に記載の導電性基板。
[15][1]〜[10]のいずれか一に記載の導電性高分子分散液を基材に塗工する塗工工程を有する、導電性基板の製造方法。
本発明の導電性基板は、適度な導電性を有すると共に硬度及び耐熱性が充分に高い導電層を備える。
本発明の導電性基板の製造方法によれば、上記効果を有する導電性基板を容易に製造できる。
本発明の一態様の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、シリケートと、芳香族化合物と、有機溶剤とを含有する。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
ただし、ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
本態様で使用されるシリケートは、ケイ素原子を2つ以上有するケイ酸エステルである。本態様におけるシリケートは、該導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度がより高くなると共に耐熱性がより高くなることから、ケイ素原子を4つ以上有するケイ酸エステルであることが好ましく、6つ以上であることがより好ましく、8つ以上であることがさらに好ましい。
また、本態様におけるシリケートは、SiO2含有量が40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。シリケートのSiO2含有量が前記下限値以上であれば、該導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度がより高くなり、前記上限値以下であれば、該導電性高分子分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
ここで、シリケートのSiO2含有量は、シリケートの分子量100質量%に対する、シリケートから形成されるSiO2質量の割合のことであり、元素分析により測定できる。シリケートを2種以上使用する場合のSiO2含有量は平均値である。
また、シリケートは、入手が容易であることから、下記化学式(I)で示される化合物及び下記化学式(II)で示される化合物の少なくとも一方であることがより好ましい。
SinOn−1(OCH3)2n+2 (nは2以上100以下である。) (I)
SimOm−1(OCH2CH3)2m+2 (mは2以上100以下である。)(II)
シリケートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本態様で使用される芳香族化合物は、芳香環の2つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換された化合物、芳香環の2つ以上の水素原子がカルボニル基に置換された化合物、及び、芳香環の1つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換され且つ1つ以上の水素原子がカルボニル基に置換された化合物よりなる群から選ばれる1種以上である。以下、本態様で使用される前記芳香族化合物のことを「芳香族化合物(A)」という。芳香族化合物(A)は、酸化防止機能を有し、導電性複合体の耐熱性を向上させることができ、高熱環境下での導電性低下を防止できる。
芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン、チオフェン、ピロール等が挙げられ、耐熱性向上効果がより高くなる点では、ベンゼン環が好ましい。
芳香環の2つ以上の水素原子がカルボキシ基に置換された化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
芳香環の1つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換され且つ1つ以上の水素原子がカルボキシ基に置換された化合物としては、後述する化学式(III)で示される化合物が挙げられる。
芳香族化合物(A)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
化学式(III)におけるR1,R2,R3,R4,R5は、各々独立して、水素原子又は任意の置換基である。任意の置換基としては特に制限されず、例えば、ヒドロキシ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、フェノキシ基、アミノ基等が挙げられる。
化学式(III)で示される芳香族化合物(A)の具体例としては、例えば、ガリック酸、ガリック酸のエステル(例えば、ガリック酸メチル、ガリック酸プロピル、ガリック酸ブチル等)、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンズアミド、4−ヒドロキシアセトフェノン、4−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−カルボキシピロガロール、2,3,4−トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
芳香族化合物(A)のなかでも、ガリック酸及びガリック酸のエステルの少なくとも一方が好ましい。ガリック酸及びガリック酸のエステルは、耐熱性の向上効果がより高く、該導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度をより高める効果も有し、しかも入手容易である。
本態様で使用される有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
窒素原子含有化合物系溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
また、本態様では、導電性複合体の製造過程では水を使用するため、導電性高分子分散液には水が含まれてもよい。有機溶剤と水の合計に対する水の含有量は60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。導電性高分子分散液が水を全く含まなくてもよい。水の含有量が少なければ、導電性高分子分散液中でのシリケートの加水分解を抑制できる。
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、シリケート及び芳香族化合物(A)は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、シリケート、芳香族化合物(A)及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、芳香族化合物(A)以外のフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
本態様の導電性高分子分散液を製造する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
まず、ポリアニオン及び水系分散媒を含む溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合して導電性複合体の水分散液を調製する。次いで、その水分散液に有機溶剤、シリケート、芳香族化合物(A)、必要に応じて高導電化剤及びその他の添加剤を添加して、導電性高分子分散液を得る。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
前記水系分散媒は、水の含有量が50質量%であり、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤を含む場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本態様の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含むため、該導電性高分子分散液から形成された導電層は導電性を有する。
本態様の導電性高分子分散液は、分散媒に有機溶剤が含まれるため、基材、特にガラス基材に対する導電性高分子分散液の濡れ性が高くなり、導電層の形成が容易になる。また、導電性高分子分散液に含まれるシリケートは加水分解してシラノール基を生成し、ガラス基材の表面ヒドロキシ基と結合できるため、本態様の導電性高分子分散液によれば、ガラス基材に容易に導電層を形成できる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれるシリケートは、導電性高分子分散液から導電層を形成する際にシリカ(SiO2)を形成することができる。そのため、該導電性高分子分散液から形成された導電層はシリカを含有し、そのシリカによって導電層の硬度を高めることができる。特に、シリケートとしてケイ素原子が2つ以上のものを使用するため、シリカの分子量が大きくなり、導電層の硬度を充分に高くできる。また、本態様の導電性高分子分散液に含まれる芳香族化合物(A)は、導電層形成時の導電性複合体の劣化を防止できるため、耐熱性を向上させる共に導電層の硬度を向上させる効果を有する。したがって、本態様の導電性高分子分散液を基材に塗工することにより、基材の表面の硬度を充分に高めて傷付き防止性を向上させることができる。
また、本態様の導電性高分子分散液には、酸化防止機能を発揮する芳香族化合物(A)を含有すると共に、シリケートがケイ素原子2つ以上有するため、該導電性高分子分散液から形成された導電層は耐熱性に優れる。
また、芳香族化合物(A)は導電性高分子分散液中においてシリケートの分解を引き起こすようなものではないから、シリケート由来の凝集物を生じにくく、本態様の導電性高分子分散液は保存安定性にも優れる。
本態様の導電性基板は、基材と、該基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。
基材としては、ガラス基材及びプラスチック基材のいずれであってもよいが、上記の本態様の導電性高分子分散液はガラス基材に好適に使用できる。ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ酸化物の含有量が0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
ガラス基材の平均厚さとしては、100μm以上3000μm以下であることが好ましく、100μm以上1000μm以下であることがより好ましい。ガラス基材の平均厚さが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性基板を使用する部材の薄型化に充分に寄与できる。
本明細書における厚さは、任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
塗工においては、基材の片面のみに前記導電性高分子分散液を塗工して基材の片面のみに導電層を形成してもよいし、基材の両面に前記導電性高分子分散液を塗工して基材の両面に導電層を形成してもよい。
塗工工程後には、塗工した導電性高分子分散液を乾燥する乾燥工程を有することが好ましい。塗工した導電性高分子分散液を乾燥すれば、導電性高分子分散液を硬化して導電層を形成することが容易になる。
乾燥方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は50℃以上150℃以下の範囲であり、好ましくは100℃以上150℃以下、より好ましくは100℃以上130℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
また、充分に分散媒を除去する点で、乾燥時間は5分以上であることが好ましい。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。得られたポリスチレンスルホン酸溶液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返して、固形分濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
製造例2で得たPEDOT−PSS水分散液2.54g(PEDOT−PSSの量は0.03048g)に、水2.54gとメタノール22.1gとプロピレングリコールモノメチルエーテル2.73gとガリック酸メチル0.025gとシリケート(三菱ケミカル社製、MKCシリケートMS51、前記化学式(I)で示されるシリケート、ケイ素原子の数が4から6までの混合物、SiO2含有量52±1%、表中では「MS51」と表記する。)0.7gとを混合して導電性高分子分散液を得た。
得られた導電性高分子分散液を、No.8のバーコーターを用いて無アルカリガラス基材に塗工して、塗工膜を形成した。その塗工膜を、乾燥温度110℃、乾燥時間10分間加熱乾燥し、導電層を形成して、導電性基板を得た。
シリケートの添加量を0.84gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートの添加量を0.98gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートの添加量を1.12gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートの添加量を1.26gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートを三菱ケミカル社製MKCシリケートMS56(前記化学式(I)で示されるシリケート、ケイ素原子の数が15から38の混合物、SiO2含有量56±1%、表中では「MS56」と表記する。)に変更し、その添加量を0.98gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートを三菱ケミカル社製MKCシリケートMS56S(前記化学式(I)で示されるシリケート、ケイ素原子の数が4以上の混合物、SiO2含有量59±1%、表中では「MS56S」と表記する。)に変更し、その添加量を0.98gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
シリケートを三菱ケミカル社製MKCシリケートMS57(前記化学式(I)で示されるシリケート、ケイ素原子の数が4以上の混合物、SiO2含有量58±1%、表中では「MS57」と表記する。)に変更し、その添加量を0.98gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
ガリック酸メチルの添加量を0.0125gに、シリケートの添加量を0.98gに変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
ガリック酸メチルの添加量を0.05gに変更したこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
ガリック酸メチル0.0125gをガリック酸0.025gに変更したこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
ガリック酸メチル0.0125gを4−ヒドロキシ安息香酸0.025gに変更したこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
ガリック酸メチル0.0125gをレゾルシノール0.025gに変更したこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
PEDOT−PSS水分散液にシリケートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性基板を得た。
PEDOT−PSS水分散液にガリック酸メチルを添加しなかったこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
MKCシリケートMS51をテトラエトキシシラン(表中では「TEOS」と表記する。)に変更したこと以外は実施例9と同様にして導電性基板を得た。
(鉛筆硬度測定)
導電層の表面において、鉛筆ひっかき試験機を用い、荷重750gの条件で鉛筆硬度を測定した。測定結果を表1に示す。
(耐熱性評価)
得られた直後の導電性基板の導電層の表面抵抗を、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。この表面抵抗を、初期の表面抵抗として表1に示す。
また、導電性基板を、温度85℃の高熱環境下に240時間放置した後、上記と同様に導電層の表面抵抗を測定した。この表面抵抗を、高熱環境下放置後の表面抵抗として表1に示す。
初期の表面抵抗に対する高熱環境下放置後の表面抵抗の上昇率を求めた。その値を表1に示す。表面抵抗の上昇率が小さい程、耐熱性が高い。
(密着性)
得られた直後の導電性基板の導電層の表面抵抗にセロテープ(登録商標、日東電工社製、B−31)を圧着し、その後、勢いよく剥がした際の塗膜の剥がれを観測した。塗膜の剥がれが見られないものは、ガラス基材に対する密着性が高い。
シリケート及び芳香族化合物(A)を含む導電性高分子分散液を用いて製造した実施例1〜13の導電性基板は、導電層の硬度が高く、しかも耐熱性に優れていた。また、ガラス基材に対する導電層の密着性も高かった。
これに対し、シリケートを含まない導電性高分子分散液を用いて製造した比較例1の導電性基板は、導電層の硬度が低く、耐熱性も低かった。また、ガラス基材に対する導電層の密着性も低かった。
芳香族化合物(A)を含まない導電性高分子分散液を用いて製造した比較例2の導電性基板は、導電層の硬度が低く、耐熱性も低かった。
ケイ素原子が2つ以上のシリケートの代わりにケイ素原子が1つのテトラエトキシシランを含む導電性高分子分散液を用いて製造した比較例3の導電性基板は、導電層の硬度が低く、耐熱性も低かった。また、ガラス基材に対する導電層の密着性も低かった。
Claims (15)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、ケイ素原子を2つ以上有するシリケートと、芳香族化合物と、有機溶剤と、水とを含有し、
前記有機溶剤と前記水の合計に対する、前記水の含有量が20質量%以下であり、
前記シリケートは、下記化学式(I)で示される化合物及び下記化学式(II)で示される化合物の少なくとも一方であり、
前記芳香族化合物は、芳香環の2つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換された化合物、芳香環の2つ以上の水素原子がカルボキシ基に置換された化合物、及び、芳香環の1つ以上の水素原子がヒドロキシ基に置換され且つ1つ以上の水素原子がカルボキシ基に置換された化合物(該カルボキシ基はエステルを形成していてもよい。)よりなる群から選ばれる1種以上である、導電性高分子分散液。
SinOn−1(OCH3)2n+2 (nは2以上100以下である。) (I)
SimOm−1(OCH2CH3)2m+2 (mは2以上100以下である。)(II) - 前記シリケートはケイ素原子を4つ以上有する、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
- 前記シリケートにおけるSiO2含有量が40質量%以上70質量%以下である、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
- 前記芳香族化合物における芳香環がベンゼン環である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 前記芳香族化合物が、ガリック酸及びガリック酸のエステルの少なくとも一方である、請求項4に記載の導電性高分子分散液。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- ガラス基材塗工用である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された導電層と、を有し、前記導電層は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液が硬化した塗膜である、導電性基板。
- 前記基材がガラス基材である、請求項10に記載の導電性基板。
- 前記ガラス基材が無アルカリガラス基材である、請求項11に記載の導電性基板。
- 前記基材が液晶セルである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の導電性基板。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を基材に塗工する塗工工程を有する、導電性基板の製造方法。
- 前記有機溶剤は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1プロパノール、及びアリルアルコールから選択される1種以上である、請求項1〜9の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
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