JP7269843B2 - 導電性高分子分散液、導電性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性高分子分散液、導電性積層体及びその製造方法に関する。
導電層を形成するための塗料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸がドープした導電性複合体を含む導電性高分子分散液を使用することがある。
特許文献1には、ジオール化合物を85~100質量%の割合で含む導電性高分子分散液から形成された導電層は、耐光性に優れることが開示されている。
特開2019-116537号公報
しかし、特許文献1に記載された導電性高分子分散液はジオール化合物を高濃度で含むので粘度が高く、スピンコートによる基材への塗布が難しくなる問題があった。
本発明は、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することが可能な導電性高分子分散液と、この導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた導電性積層体及びその製造方法を提供する。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記ヒドロキシピリジン化合物が、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシピリジン、2,3-ジヒドロキシピリジン、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシ-6-メチルピリジン、2-ヒドロキシ-5-メチルピリジン、2-ヒドロキシイソニコチン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、6-ヒドロキシニコチン酸、及び3-ヒドロキシ-2-ピリジンカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] バインダ成分をさらに含有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記バインダ成分が、熱可塑性樹脂、硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[5]に記載の導電性高分子分散液。
[7] 基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された、[1]~[6]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体。
[8] 基材の少なくとも一つの面に、[1]~[6]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
Figure 0007269843000001
[式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基または炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。]
本発明の導電性高分子分散液によれば、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することができる。この導電層は高温高湿環境に曝されたことによる導電性の低下が抑制されており、耐久性に優れる。また、導電層に任意成分である酸化防止剤を含ませた場合、高温高湿環境に曝されたことによる酸化防止剤のブリードアウトが抑制されており、高い透明性を維持することができる。同様に、高温高湿環境に曝されたことによる、後述の式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物のブリードアウトも殆ど生じず、高い透明性を維持することができる。
本発明の導電性積層体にあっては、耐光性、耐久性、透明性に優れた導電層を備えているので、ディスプレイや光学部材の用途にも適している。
本発明の導電性積層体の製造方法にあっては、バーコーター、スピンコート等の汎用的な塗布方法により導電性高分子分散液を塗布することができ、用途に合わせた膜厚の導電層を容易に形成することができる。
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、後述の式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液である。
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液を塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
[ヒドロキシピリジン化合物]
本態様の導電性高分子分散液に含まれている1種以上のヒドロキシピリジン化合物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「ヒドロキシピリジン化合物(1)」ということがある。)である。
Figure 0007269843000002
上記式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基または炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。
本発明の効果をより高める観点から、式(1)は下記の構成であることが好ましい。
前記アルキル基は直鎖状でもよいし、分岐鎖状でもよい。
前記アルキル基の炭素数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1がさらに好ましい。
前記Rの官能基数を表すmは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが0である場合、mは1であることが好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが1である場合、Rはカルボキシル基であることが好ましく、mは1であることが好ましい。
前記Rの官能基数を表すnが2である場合、2つのRのうち少なくとも一方はメチル基であることが好ましく、mは1であることが好ましい。
ヒドロキシピリジン化合物(1)の好適な具体例として、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシピリジン、2,3-ジヒドロキシピリジン、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシ-6-メチルピリジン、2-ヒドロキシ-5-メチルピリジン、2-ヒドロキシイソニコチン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、6-ヒドロキシニコチン酸、及び3-ヒドロキシ-2-ピリジンカルボン酸が挙げられる。本態様の導電性高分子分散液は、この群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
以上で例示した中でも、形成される導電層の耐久性が特に向上し易いことから、4-ヒドロキシピリジンが特に好ましい。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部(重量部)に対するヒドロキシピリジン化合物(1)の含有量は、1質量部以上1000質量部以下が好ましく、10質量部以上500質量部以下がより好ましく、20質量部以上200質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電層の耐久性、耐光性をより向上させることができる。
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の二価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
上記に分類されない溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤のなかでも、導電性複合体の分散性をより高められることから、アルコール系溶剤およびジメチルスルホキシドから選択される1種以上が好ましい。
導電性複合体の分散性をより一層高める観点から、アルコール系溶剤、ジメチルスルホキシドは、水と組み合わせて含まれることが好ましい。
ジメチルスルホキシドは、アルコール系溶剤の1種以上と組み合わせて含まれることが好ましい。
導電性複合体は水に対する分散性が高いので、本態様の導電性高分子分散液の分散媒は水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液が含む全分散媒に対する水の含有割合は、例えば、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、40質量%以上65質量%以下がさらに好ましい。また、本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体1質量部に対して、100~250質量部の水が含まれることが好ましい。
水以外の分散媒としては、前述した有機溶剤が好ましい。なお、後述の高導電化剤のうち、上記有機溶剤の例示に該当するものの質量は、全分散媒の質量に含まれるものとする。
[バインダ成分]
バインダ成分は、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、及びヒドロキシピリジン化合物(1)以外の化合物であり、熱可塑性樹脂、導電層形成時に硬化する硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種である。熱可塑性樹脂はそのままバインダとなり、硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、シリカは、硬化により形成した硬化物がバインダ(結着材)となる。
バインダ成分由来のバインダの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン、アルコキシシランの縮合物、シリケートの縮合物等が挙げられる。
本明細書において、アルコキシシランの縮合物とシリケートの縮合物の総称としてシラン化合物ということがある。
本態様の導電性高分子分散液に含まれるバインダ成分は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
バインダ成分が熱可塑性樹脂である場合、バインダ樹脂は、導電性高分子分散液中に分散可能な水分散性樹脂が好ましい。水分散性樹脂は、エマルション樹脂又は水溶性樹脂である。
エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。
水溶性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。
水溶性樹脂は、25℃の蒸留水に1質量%以上溶解し、好ましくは5質量%以上溶解し、より好ましくは10質量%以上溶解する。
本態様の導電性高分子分散液を塗工する基材がポリエステル樹脂製である場合、バインダ成分は上述の水分散性のポリエステル樹脂から選択される1種以上を含むことが好ましい。
硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー、エポキシモノマー、オルガノシロキサン、アルコキシシラン、シリケート等が挙げられる。
硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーが含まれる場合、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーが含まれる場合、導電層に離型性を付与することができる。さらに、バインダ成分としてアルコキシシラン、シリケート、シリカが含まれる場合、加熱することによりシラノール構造が形成され、さらに縮合して容易に硬化し、導電層に硬度を付与することができる。
本明細書においてアルコキシシランとは、分子内にケイ素原子を1つ有し、そのケイ素原子にアルコキシ基が1つ以上結合した化合物をいう。
本態様に含まれるアルコキシシランは、容易に加水分解することから、メトキシ基またはエトキシ基を有することが好ましく、メトキシ基を有することがより好ましい。
アルコキシシランは、アルコキシ基以外の官能基として、例えば、エポキシ基、アリル基、ビニル基、グリシジル基等を有していてもよい。
具体的な好ましいアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液におけるアルコキシシランの好ましい含有量は、導電性複合体100質量部(重量部)に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、50質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上2000質量部以下がさらに好ましい。
シリケートの含有量が前記下限値以上であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
本明細書においてシリケートとは、1分子内にケイ素原子を2つ以上有し、そのうちの少なくとも1組のケイ素原子同士が1つの酸素原子を介してエーテル結合した化合物である。シリケートが1分子内に有するケイ素原子の数は、本態様の導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度がより高くなることから、4つ以上であることが好ましく、6つ以上であることがより好ましく、8つ以上であることがさらに好ましい。また、本態様の導電性高分子分散液におけるシリケートの溶解性を高める観点から、シリケートが1分子内に有するケイ素原子の数は、40個以下が好ましく、30個以下がより好ましい。
シリケートのSiO単位の含有量は、シリケートの総質量に対して15質量%以上70質量%以下であることが好ましく、25質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。シリケートのSiO単位の含有量が前記下限値以上であれば、本態様の導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度がより高くなり、前記上限値以下であれば、前記導電層の導電性低下を防ぐことができる。
ここで、シリケートのSiO単位の含有量は、シリケートの分子量100質量%に対する、シリケートに含まれるSiO単位(-O-Si-O-単位)の質量の割合のことであり、元素分析により測定できる。
シリケートは、下記化学式(X)で表される化合物が好ましい。
(X)… RO-[(RO-)(RO-)Si-O-]-R
式(X)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、sは、2~100の整数である。
炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
sは2~50が好ましく、3~25がより好ましく、4~10がさらに好ましい。
シリケートは、下記化学式(x1)で示される化合物及び下記化学式(x2)で示される化合物の少なくとも一方であることがより好ましい。
(x1)… Sim-1(OCH2m+2
(x2)… Sin-1(OCHCH2n+2
上記式(x1)(x2)中、mは2以上100以下であり、nは2以上100以下である。
上記式(x1)(x2)中、SiとOが結合し、Si同士、O同士は隣接しない。
導電性高分子分散液におけるシリケートの好ましい含有量は、シリケートのSiO単位の含有量に応じて適宜選択される。シリケートのSiO単位の含有量が前述の好ましい範囲である場合、シリケートの含有量は、導電性複合体100質量部に対し、1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上10000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2000質量部以下であることがさらに好ましい。
シリケートの含有量が前記下限値以上であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
本態様の導電性高分子分散液を塗工する基材がガラス製である場合、バインダ成分は上述のアルコキシシランまたはシリケートから選択される1種以上を含むことが好ましい。
硬化性のモノマー又はオリゴマーを用いた場合には、硬化触媒を添加してもよい。熱硬化性のモノマー又はオリゴマーの場合、加熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤が好ましい。光硬化性のモノマー又はオリゴマーの場合、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。また、オルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、硬化用の白金触媒を用いることが好ましい。
シリカとしては、分散性の点からコロイダルシリカが好ましく、有機溶媒分散性のコロイダルシリカ(以下、「オルガノシリカゾル」ともいう。)がより好ましい。市販のオルガノシリカゾルの製品としては、メタノールシリカゾル、MA-ST-M、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、IPA-ST-UP、EG-ST、EG-ST-ZL、DMAC-ST、DMAC-ST-ZL、NPC-ST-30、PGM-ST、MEK-ST、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP、MIBK-ST、MIBK-SD、PMA-ST、EAC-ST、NBAC-ST、XBA-ST、TOL-ST、MEK-AC-2101、MEK-AC-4101(商品名、日産化学工業社製);OSCAL-1432、OSCAL-1132、OSCAL-1632、OSCAL-1421(商品名、日揮触媒化学社製)を挙げることができる。
前述のアルコキシシラン及びシリケート以外のバインダ成分の固形分(不揮発成分)の含有割合は、導電性複合体の固形分100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上2000質量部以下がさらに好ましい。バインダ成分の含有割合が前記下限値以上であれば、導電層の強度を向上させることができる。一方、バインダ成分の含有割合が過剰であると、導電性複合体の含有割合が低下するため、導電層の導電性が低下することがある。
[高導電化剤]
本態様の導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、前述のヒドロキシピリジン化合物(1)、前述のバインダ成分は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
前記高導電化剤としては、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物(2価アルコール)又はアミド基を有する化合物が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジメチルスルホキシドがより好ましい。
本態様の導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本態様の導電性高分子分散液における高導電化剤の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100,000質量部以下が好ましく、10質量部以上10,000質量部以下がより好ましく、50質量部以上5000質量部以下がさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記導電性複合体、ヒドロキシピリジン化合物(1)、前記分散媒、前記高導電化剤、及び前記バインダ成分以外の化合物である。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
<特に好ましい実施形態1>
本態様の導電性高分子分散液がヒドロキシピリジン化合物(1)として、モノヒドロキシピリジン及びジヒドロキシピリジンのうち少なくとも一方を含む場合、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、メタノール又はエタノールと、水と、エチレングリコール又はプロピレングリコール又はジメチルスルホキシド又は1,3-プロパンジオールとを含み、且つ、バインダ成分として、1種以上のアルコキシシランまたは水溶性樹脂を含むことが特に好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有量は、40質量%以上90質量%以下が好ましく、45質量%以上80質量%以下がより好ましく、50質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する1価アルコールの含有量は、10質量%以上49質量%以下が好ましく、20質量%以上45質量%以下がより好ましく、30質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。ここで、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましく、4質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する2価アルコールの含有量は、1質量%以上40質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、4質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
上記の特に好ましい実施形態であると、樹脂製基材に対する濡れ性が良好であり、形成された導電層の樹脂製基材に対する接着性、耐久性、耐光性に優れた導電層を特に容易に形成することができる。
<特に好ましい実施形態2>
本態様の導電性高分子分散液がヒドロキシピリジン化合物(1)として、カルボキシル基を有するモノヒドロキシピリジン化合物を含む場合、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、メタノール又はエタノールと、水と、ジメチルスルホキシドとを含み、且つ、バインダ成分として、水溶性樹脂の1種以上を含むことが特に好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有量は、20質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する1価アルコールの含有量は、10質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上45質量%以下がより好ましく、30質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。ここで、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましく、6質量%以上15質量%以下がより好ましく、9質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対するジメチルスルホキシドの含有量は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましく、15質量%以上25質量%以下がさらに好ましい。
上記の特に好ましい実施形態であると、樹脂製基材に対する濡れ性が良好であり、形成された導電層の樹脂製基材に対する接着性、耐久性、耐光性に優れた導電層を特に容易に形成することができる。
<特に好ましい実施形態3>
本態様の導電性高分子分散液がヒドロキシピリジン化合物(1)として、アルキル基を有するモノヒドロキシピリジンを含む場合、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、メタノール又はエタノールと、水と、エチレングリコール又はプロピレングリコールとを含み、且つ、バインダ成分として、水溶性樹脂の1種以上を含むことが特に好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有量は、20質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上60質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する1価アルコールの含有量は、20質量%以上70質量%以下が好ましく、30質量%以上65質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。ここで、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、3質量%以上20質量%以下が好ましく、6質量%以上15質量%以下がより好ましく、9質量%以上12質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する2価アルコールの含有量は、1質量%以上40質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましく、4質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
上記の特に好ましい実施形態であると、樹脂製基材に対する濡れ性が良好であり、形成された導電層の樹脂製基材に対する接着性、耐久性、耐光性に優れた導電層を特に容易に形成することができる。
<特に好ましい実施形態4>
本態様の導電性高分子分散液がヒドロキシピリジン化合物(1)として、モノヒドロキシピリジン及びジヒドロキシピリジンのうち少なくとも一方を含み、且つ、バインダ成分として、アルコキシシランの2種以上を含む場合、分散媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルと、メタノール又はエタノールと、水と、エチレングリコール又はプロピレングリコールとを含むことが特に好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有量は、30質量%以上70質量%以下が好ましく、35質量%以上60質量%以下がより好ましく、40質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する1価アルコールの含有量は、10質量%以上49質量%以下が好ましく、20質量%以上40質量%以下がより好ましく、25質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。ここで、プロピレングリコールモノメチルエーテルの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上8質量%以下がより好ましく、3質量%以上6質量%以下がさらに好ましい。
前記導電性高分子分散液の総質量に対する2価アルコールの含有量は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましく、4質量%以上10質量%以下がさらに好ましい。
上記の特に好ましい実施形態であると、スピンコート法で容易に塗工可能な粘度となり、ガラス製基材に対する濡れ性が良好であり、形成された導電層のガラス製基材に対する接着性、耐久性、耐光性に優れた導電層を特に容易に形成することができる。
<導電性高分子分散液の製造方法>
本態様の導電性高分子分散液を製造する方法としては、例えば、導電性複合体の水分散液に、分散媒、バインダ成分、ヒドロキシピリジン化合物(1)等を添加する方法が挙げられる。
導電性複合体の水分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
≪導電性積層体≫
本発明の第二態様は、基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された、第一態様の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体である。
[導電層]
基材の少なくとも一つの面に備えられた前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下であることが好ましく、20nm以上50μm以下であることがより好ましく、30nm以上30μm以下であることがさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
本態様の導電層が有する良好な導電性の目安として、例えば、1×10Ω/sq.以上1×10Ω/sq.以下の表面抵抗値を有することが好ましく、1×10Ω/sq.以上1×10Ω/sq.以下の表面抵抗値を有することがより好ましく、1×10Ω/sq.以上1×10Ω/sq.以下の表面抵抗値を有することが好ましい。
[基材]
本態様の導電性積層体を構成する基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はバインダ樹脂と同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の接着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
前記フィルム基材として、公知の偏光フィルムを使用することもできる。
偏光フィルムとしては、例えば、一対の透明フィルムと、これらの間に配置された偏光層とを備えたものが知られている。
透明フィルムを構成する透明樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等が挙げられる。
透明フィルムの厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と強度の両立の点では、20μm以上300μm以下が好ましい。
偏光層としては、例えば、親水性フィルムに二色性物質を付着させ、一軸延伸して二色性物質を配向させたものが挙げられる。親水性フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化フィルム等が挙げられる。二色性物質としては、例えば、ヨウ素、二色性染料等が挙げられる。
偏光層の厚さは、例えば、10μm以上500μm以下とすることができ、薄型化と偏光性の両立の点では、20μm以上300μm以下が好ましい。
導電性フィルムを光学用途に使用する場合、フィルム基材が透明であることが好ましい。具体的には、フィルム基材の全光線透過率は65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。全光線透過率は、JIS K7136に従って測定した値である。
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第三態様は、基材の少なくとも一つの面に、第一態様の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第二態様の導電性積層体を製造することができる。
第一態様の導電性高分子分散液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
導電性高分子分散液のフィルム基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒を除去することにより、前記塗膜が硬化してなる導電層(導電膜)が形成された導電性積層体を得ることができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、1分以上30分以下が好ましく、5分以上15分以下がより好ましい。
塗工した導電性高分子分散液が、バインダ成分として前述のアルコキシシラン、シリケート、シリカ等の酸化ケイ素含有化合物を含む場合には、塗膜を加熱して、バインダ成分同士を反応させることにより、硬化した導電層を形成することができる。
塗工した導電性高分子分散液が、バインダ成分として熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜を加熱して、バインダ成分同士を反応させることにより、硬化した導電層を形成することができる。
塗工した導電性高分子分散液が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗膜に紫外線又は電子線を照射して、バインダ成分同士を反応させることにより、硬化した導電層を形成することができる。
(製造例1)ポリアニオンの合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(製造例2)導電性複合体の合成
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。得られた混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
反応後の反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次に、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、固形分濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)の水分散液を得た。
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25g(固形分0.3g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gと、メタノール29.2gと、イオン交換水29.2gと、エチレングリコール5.0gを加え、バインダ成分としてテトラエトキシシラン(信越化学株式会社製、KBE-04、SiO換算固形分濃度28.8質量%)1.6gを加え、室温で24時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として4-ヒドロキシピリジン95mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、得られた導電性高分子分散液を、バーコーター(wet膜厚30μm)を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーT60)に塗布して、塗膜を形成した。その塗膜を、乾燥温度120℃で10分間加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
(実施例2)
4-ヒドロキシピリジンを3-ヒドロキシピリジンに変更した以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例3)
4-ヒドロキシピリジンを2,4-ジヒドロキシピリジンに変更した以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例4)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25g(固形分0.3g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gと、メタノール25gと、イオン交換水16.7gと、ジメチルスルホキシド20gを加え、バインダ成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂社製、ペスレジンA6451G、固形分濃度30質量%)3.3gを加え、室温で2時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として2-ヒドロキシニコチン酸139mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例5)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25g(固形分0.3g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル10gと、エタノール40gと、イオン交換水16gと、プロピレングリコール5.0gを加え、バインダ成分として水分散ポリエステル樹脂(互応化学工業社製、RZ-105、固形分濃度25質量%)4.0gを加え、室温で2時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として2,6-ジメチル-4-ヒドロキシピリジン123mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例6)
エチレングリコールを1,3-プロパンジオールに、テトラエトキシシランの使用量を5.0gに、プロピレングリコールモノメチルエーテルの使用量を7.0gにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例7)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25g(固形分0.3g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル5gと、メタノール22gと、イオン交換水40gと、エチレングリコール5gを加え、バインダ成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂社製、ペスレジンA6451G、固形分濃度30質量%)3.3gを加え、室温で2時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として4-ヒドロキシピリジン380mgを加え、さらにフェノール系酸化防止剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン63mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例8)
エチレングリコールをジメチルスルホキシドに変更し、フェノール系酸化防止剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン63mgを加えた以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
(実施例9)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液40g(固形分0.48g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gと、メタノール24gと、イオン交換水15gと、エチレングリコール9.0gを加え、バインダ成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE-04、SiO換算固形分濃度28.8質量%)5.0gとメチルトリエトキシシラン(信越化学社製、KBE-13、SiO換算固形分濃度33.7質量%)2.0gを加え、室温で24時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として4-ヒドロキシピリジン95mgを加え、さらにフェノール系酸化防止剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド60mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、得られた導電性高分子分散液を、スピンコーター(ミカサ社製MS-B100、回転数700rpm)を用いて、無アルカリガラス(コーニング社製イーグルXG 75mm×75mm×0.7mm)に塗布して、塗布膜を形成した。その塗布膜を、乾燥温度120℃で30分間加熱乾燥し、導電性ガラスを得た。
(実施例10)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液40g(固形分0.48g)に、プロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gと、メタノール28gと、イオン交換水15gと、エチレングリコール9.0gを加え、バインダ成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE-04、SiO換算固形分濃度28.8質量%)3.0gと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM-403、SiO換算固形分濃度25.4質量%)0.3gを加え、室温で24時間撹拌した。その後、ヒドロキシピリジン化合物として4-ヒドロキシピリジン190mgを加え、さらにフェノール系酸化防止剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン63mgを加え、室温で1時間撹拌して、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例9と同様に導電性ガラスを得た。
(比較例1)
ヒドロキシピリジン化合物を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例2)
4-ヒドロキシピリジンをピリジンに変更した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例3)
4-ヒドロキシピリジンをイミダゾールに変更した以外は実施例1と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例4)
ヒドロキシピリジン化合物を添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして導電性フィルムを得た。
(比較例5)
ヒドロキシピリジン化合物を添加しなかったこと以外は実施例9と同様にして導電性ガラスを得た。
(比較例6)
ヒドロキシピリジン化合物を添加せず、フェノール系酸化防止剤として没食子酸メチル190mgを加えたこと以外は実施例9と同様にして導電性高分子分散液を得て、実施例9と同様に導電性ガラスを得た。
<評価>
以下の評価項目について、結果を表1に示す。
[表面抵抗値の測定]
各例の導電性積層体について、導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。
[ヘイズの測定]
実施例9~10および比較例5~6の導電性ガラスのヘイズは、ヘイズメーター(日本電色社製NDH500)を用いて測定した。
[耐久性の評価]
各例の導電性積層体について、作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期の表面抵抗値)と、高温高湿条件下(温度85℃且つ湿度85%)に導電層の表面が曝された状態で500時間放置した後の表面抵抗値(高温高湿暴露後の表面抵抗値)と、をそれぞれ測定した。表面抵抗値の変化率(暴露後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値)を耐久性の指標とした。表面抵抗値の変化率の値が1に近いほど耐久性が高いことを示す。
[耐光性の評価]
各例の導電性積層体について、作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期の表面抵抗値)と、キセノン耐光性試験機(株式会社DJK社製Ci4000、6500W水冷キセノンアークランプ)を用いて導電層の表面が曝された状態で100時間放置した後の表面抵抗値(キセノン暴露後の表面抵抗値)と、をそれぞれ測定した。表面抵抗値の変化率(暴露後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値)を耐光性の指標とした。表面抵抗値の変化率の値が1に近いほど耐光性が高いことを示す。
[ヘイズの評価]
実施例9~10および比較例5~6の導電性ガラスについて、上記耐久性評価前後のヘイズを測定値し、ヘイズの上昇値(暴露後のヘイズ-初期のヘイズ)を評価した。ヘイズの上昇値が小さいほど添加剤等のブリードアウトが少なく安定性が優れることを示す。
Figure 0007269843000003
Figure 0007269843000004
<結果>
ヒドロキシピリジン化合物(1)を含む実施例1~10の導電性高分子分散液から形成された導電性積層体の導電層は、耐久性、耐光性に優れ、且つ基材に対する接着性にも優れていた。また、高温高湿環境下におけるヒドロキシピリジン化合物(1)及び酸化防止剤等の添加剤のブリードアウトも少なかった。
ヒドロキシピリジン化合物(1)を含まない比較例1~6の導電性高分子分散液から形成された導電性積層体の導電層は、初期表面抵抗値は良好であるが、耐久性及び耐光性に劣っていた。また、高温高湿環境下における酸化防止剤等の添加剤のブリードアウトは多かった。

Claims (5)

  1. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるヒドロキシピリジン化合物と、分散媒と、バインダ成分と、を含有し、
    前記分散媒はメタノール又はエタノールを含み、
    前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、
    前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、導電性高分子分散液。
    Figure 0007269843000005
    [式(1)中、Rは水酸基であり、Rはカルボキシル基または炭素数1~4のアルキル基であり、mは1~3の整数であり、nは0~2の整数である。]
  2. 前記ヒドロキシピリジン化合物が、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシピリジン、2,3-ジヒドロキシピリジン、2,6-ジメチル-4-ヒドロキシピリジン、2,4-ジヒドロキシ-6-メチルピリジン、2-ヒドロキシ-5-メチルピリジン、2-ヒドロキシイソニコチン酸、2-ヒドロキシニコチン酸、6-ヒドロキシニコチン酸、及び3-ヒドロキシ-2-ピリジンカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
  3. 前記バインダ成分が、熱可塑性樹脂、硬化性モノマー、硬化性オリゴマー、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
  4. 基材と、前記基材の少なくとも一つの面に形成された、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体。
  5. 基材の少なくとも一つの面に、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
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