JP7269810B2 - 導電性高分子分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、導電性高分子分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法に関する。
電子デバイスの製造に関する技術として、プラスチック基材の表面に導電層を形成することがある。また、π共役系導電性高分子は、導電性及び透明性に優れるので、導電層を形成する材料として注目されている。
π共役系導電性高分子を含有する導電層の形成方法としては、例えば、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含有する導電性複合体が水中に分散している導電性高分子分散液を基材に塗工し、乾燥させる方法が挙げられる(特許文献1)。
π共役系導電性高分子を含有する導電層には、擦りに対する耐性(耐傷付き性)が求められることがある。導電層の耐傷付き性を向上させる方法としては、例えば、導電性高分子分散液に硬化性アクリル化合物を配合し、導電層形成時に硬化性アクリル化合物を硬化させ、導電層の硬度を向上させる方法が知られている(特許文献2)。
国際公開第2015/108001号 特開2009-256545号公報
硬化性アクリル化合物を含む導電層がフィルム上に形成されている導電性フィルムは、フィルム基材を延伸すると導電層にミクロレベルの亀裂が生じ、表面抵抗値が著しく増加する問題がある。
本発明は、耐傷付き性に優れ、延伸後の表面抵抗値が良好な導電層を形成できる導電性高分子分散液、並びに導電性フィルム及びその製造方法を提供する。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、多価カルボン酸化合物と、ポリビニルアルコールと、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記多価カルボン酸化合物が、分子中にカルボキシ基を3つ以上有する化合物を含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記多価カルボン酸化合物が、チオジプロピオン酸、又は、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を含む、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] ポリビニルアルコール以外のバインダ樹脂をさらに含む、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] 前記バインダ樹脂が水分散体である、[4]に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記バインダ樹脂が水分散性ポリエステルである、[4]に記載の導電性高分子分散液。
[7] 高導電化剤をさらに含有する、[1]~[6]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[8] 前記高導電化剤がプロピレングリコールを含む、[7]に記載の導電性高分子分散液。
[9] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[10] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]~[9]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[11] [1]~[10]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工し、塗工フィルムを得ることを有する、前記導電性フィルムの製造方法。
[12] 前記フィルム基材が非結晶性フィルム基材であり、前記塗工フィルムを加熱するとともに延伸して延伸フィルムを得ることを有する、[11]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[13] 前記延伸フィルムを加熱した後に冷却して前記非結晶性フィルム基材を結晶化させることを有する、[12]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[14] 前記延伸フィルムの加熱温度を200℃以上にする、[13]に記載の導電性フィルムの製造方法。
[15] 前記非結晶性フィルム基材が非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムである、[12]~[14]の何れか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
[16] [1]~[10]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層が、フィルム基材の少なくとも一方の面に形成されている、導電性フィルム。
本発明によれば、延伸後の導電性及び耐傷付き性が優れた導電層及びこれを備えた導電性フィルムを容易に製造できる。
<導電性高分子分散液>
本発明の第一態様の導電性高分子分散液は、導電性複合体と、多価カルボン酸化合物と、ポリビニルアルコールと、分散媒とを含有する。
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液を塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
[多価カルボン酸化合物]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる多価カルボン酸化合物は、分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する低分子である。カルボキシ基を側鎖に有する高分子は多価カルボン酸化合物に該当しない。多価カルボン酸化合物の分子量は、50以上1000以下であることが好ましく、100以上500以下であることがより好ましい。多価カルボン酸化合物が分子中に有するカルボキシ基の数は2以上5以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、2以上3以下がさらに好ましい。
多価カルボン酸化合物の分子中におけるカルボキシ基同士の配置は、第一のカルボキシ基が結合した原子(第一のα原子)と第二のカルボキシ基が結合した原子(第二のα原子)とが隣接していないこと及び同一でないことを満たす、1組以上のカルボキシ基の対を有する配置が好ましい。ここで、α原子は、炭素原子、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が該当する。
また、第一のα原子と第二のα原子との間を一筆書きで連結する原子の数は、1以上10以下が好ましく、2以上8以下がより好ましく、3以上7以下がさらに好ましい。ここで、一筆書きの連結上に存在する原子は、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子が該当する。
本態様で用いる多価カルボン酸化合物は、カルボキシ基以外の水酸基を有しないことが好ましい。
上述の好適な多価カルボン酸化合物であると、本態様の導電性高分子分散液から形成される導電層の耐傷付き性がより向上する。このメカニズムの詳細は未解明であるが、多価カルボン酸化合物のカルボキシ基とポリビニルアルコールの水酸基とがエステル結合することにより、ポリビニルアルコールの分子鎖同士を多価カルボン酸化合物が架橋することが要因であると推測される。架橋により、導電層の強度が高まり、耐傷付き性が向上していると考えられる。また、架橋が容易に起こるために、多価カルボン酸化合物が有するカルボキシ基同士が数原子以上離れていることが好ましいと考えられる。カルボキシ基同士が近すぎると立体障害により架橋が形成される割合が低減する可能性がある。
好適な多価カルボン酸化合物としては、例えば、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、3,3’-チオジプロピオン酸、フタル酸、ピロメリット酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボンサン等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液における多価カルボン酸化合物の含有量は、ポリビニルアルコールの含有量100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、50質量部以上1000質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
多価カルボン酸化合物の含有量が前記下限値以上であれば、形成される導電層の硬度を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
[ポリビニルアルコール]
本態様の導電性高分子分散液に含まれるポリビニルアルコールは、導電性複合体の分散剤として機能すると共に、フィルム基材上に形成される導電層の延伸性を向上させる機能も有する。つまり、ポリビニアルコールを含有する導電層は、フィルムの延伸に追従し易く、導電層に割れや剥がれ等が発生し難くなり、導電性が高くなる。また、ポリビニルアルコールは、導電層においてバインダ樹脂としての役割も果たす。そのため、フィルムを延伸しない場合であっても、導電性高分子分散液がポリビニルアルコールを含有することにより、導電層の欠陥を少なくでき、導電性を向上させることができる。
ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルのアセチル基をけん化することによって製造されるが、一部のアセチル基がけん化されないことがある。そのため、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニル単位を含むことがある。本態様で用いるポリビニルアルコールのけん化度は、70%以上100%以下であることが好ましい。ポリビニルアルコールのけん化度が前記下限値以上であれば、水に簡単に溶解させることができる。
ポリビニルアルコールの質量平均分子量は、1000以上100000以下であることが好ましく、1300以上60000以下であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの質量平均分子量が前記下限値以上であれば、導電層の延伸性を充分に向上させることができ、前記上限値以下であれば、水への溶解性を向上させることができる。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
前記導電性高分子分散液に含まれるポリビニルアルコールは、1種でもよいし、2種以上でもよい。
本態様の導電性高分子分散液におけるポリビニルアルコールの含有量は、導電性複合体100質量部に対して、例えば、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、150質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの固形分含有量が前記下限値以上であれば、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を向上させることができるとともに、後述する塗工フィルムの延伸性をより高くできる。ポリビニルアルコールの固形分含有量が前記上限値以下であれば、導電性の低下を抑制できる。
[水分散性樹脂]
水分散性樹脂は、本態様の導電性高分子分散液から形成される導電層内において、バインダ樹脂として機能し得る水分散体である。
水分散性樹脂は、水を含む分散媒中に分散又は溶解可能な樹脂である。本態様の導電性高分子分散液において、水分散性樹脂の状態は、ホモジナイズ等により分散された分散状態でもよいし、エマルション状態でもよいし、溶解状態でもよい。
水分散性樹脂は、水中で解離し得る官能基、例えばカルボキシ基、スルホ基等の酸基又はその塩、を有する樹脂であることが好ましい。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有する水分散性樹脂が好ましい。
前記導電層の基材に対する密着性がより向上することから、上記の水分散性樹脂のなかでも、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、又はアクリル樹脂が好ましい。特に、基材フィルムがポリエステル樹脂である場合、水分散性樹脂はポリエステル樹脂であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる水分散性樹脂は、1種でもよいし、2種以上でもよい。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部に対する前記水分散性樹脂の含有量は、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、20質量部以上500質量部以下がより好ましく、50質量部以上100質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、フィルム基材に対する導電層の密着性を高めるとともに、導電層の良好な導電性を確保できる。
[その他のバインダ成分]
本態様の導電性高分子分散液には、ポリビニルアルコール、前記水分散性樹脂以外のバインダ成分を含んでもよい。
バインダ成分の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂等のバインダ樹脂が挙げられる。
また、バインダ成分は、前記バインダ樹脂を形成するモノマー又はオリゴマーであってもよい。導電層形成時に、前記モノマー又は前記オリゴマーを重合させることによりバインダ樹脂を形成することができる。これらのモノマー又はオリゴマーの重合を促進させる光重合開始剤や熱重合開始剤が併せて含まれていてもよい。
前記バインダ成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性複合体は水に対する分散性が高いので、本態様の導電性高分子分散液の分散媒は水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液が含む全分散媒に対する水の含有割合は、例えば、50質量%以上100質量%以下とすることができ、60質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましい。水以外の分散媒としては、一価アルコールが好ましい。なお、後述の高導電化剤のうち、上記有機溶剤の例示に該当するものの質量は、全分散媒の質量に含まれるものとする。
本態様の導電性高分子分散液において、前述の水分散性樹脂は、水系分散媒に分散された状態にあることが好ましい。このような分散状態であれば、フィルム基材に導電性高分子分散液を塗布して得られる導電層の特性が導電層の全面に渡って均一になり、フィルム基材に対する導電層の密着性がより向上するので好ましい。
[高導電化剤]
本態様の導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。ここで、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、多価カルボン酸化合物、ポリビニルアルコール、前述の水分散性樹脂、及びバインダ成分は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。高導電化剤のなかでも、水への分散性が高く、導電性向上効果に優れることから、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、プロピレングリコールがより好ましい。
本態様の導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本態様の導電性高分子分散液における高導電化剤の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100,000質量部以下が好ましく、10質量部以上10,000質量部以下がより好ましく、500質量部以上5000質量部以下がさらに好ましい。高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、多価カルボン酸化合物、ポリビニルアルコール、水分散性樹脂、分散媒、バインダ成分及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
<導電性高分子分散液の製造方法>
本態様の導電性高分子分散液を製造する方法としては、例えば、導電性複合体の水分散液に、多価カルボン酸化合物、ポリビニルアルコール、水分散性樹脂、分散媒等を添加する方法が挙げられる。
導電性複合体の水分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
(作用効果)
本態様の導電性高分子分散液の塗膜からなる導電層は延伸後においても導電性に優れる。これはポリビニルアルコールの結着力によって導電層が延伸方向に追随し易くなっているためであると推測される。また、形成された導電層は優れた耐傷付き性も発揮する。これは、多価カルボン酸化合物が導電層中のポリビニルアルコールの分子鎖同士を架橋することにより、導電層の強度が向上しているためであると考えられる。ポリビニルアルコールの結着力を損なわずにポリビニルアルコールの分子鎖同士を架橋できることは、本態様における多価カルボン酸化合物の優れた点である。
<導電性フィルムの製造方法>
本発明の第二態様の導電性フィルムの製造方法は、第一態様の導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工して塗工フィルムを得る塗工工程を有する。
(塗工工程)
塗工工程において使用するフィルム基材としては、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂の中でも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
前記フィルム基材を構成する樹脂は、非結晶性でもよいし、結晶性でもよい。何れであっても後段の任意の結晶化工程において結晶性のフィルム基材となり得るが、延伸性が良好である観点から非結晶性フィルムであることが好ましい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよいが、後段の延伸工程で延伸する場合には、少なくとも一方向において未延伸であるものが好ましい。
フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用い、フィルム基材の断面の任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
フィルム基材の少なくとも一方の面に導電性高分子分散液を塗工することにより、塗膜(導電層)を形成する。
導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は、導電層の平均厚さが後述する範囲になる塗工量とすることが好ましい。
塗工工程において、フィルム基材の片面のみに前記導電性高分子分散液を塗工して片面のみに塗膜を形成してもよいし、フィルム基材の両面に前記導電性高分子分散液を塗工して両面に塗膜を形成してもよい。フィルム基材上に塗膜が形成されたものを塗工フィルムと称する。
塗工工程後、前記塗工フィルムの塗膜を乾燥して導電層を形成する。
塗工フィルムを乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
(延伸工程)
フィルム基材として非結晶性フィルム基材を用いる場合、塗工工程で得た塗工フィルムを延伸して、延伸フィルムを得てもよい。延伸工程に供される塗工フィルムが有する前記塗膜は、予め乾燥された硬化状態でもよいし、未乾燥状態でもよい。
塗工フィルムを延伸することにより、前記導電性高分子分散液の塗工面積を小さくしても大面積の導電性フィルムを得ることができ、導電性フィルムの生産性が向上する。フィルム基材として結晶性フィルム基材を用いた場合には、延伸が困難である。
本態様においては、塗工フィルムを得る際に使用した導電性高分子分散液がポリビニルアルコールを含有するため、塗工フィルムの延伸性が高くなっている。そのため、塗工フィルムを延伸しても、延伸時の塗膜の追従性が高く、得られる導電層において割れや剥がれ等の欠陥が生じることを防止できる。欠陥が少ない導電層は導電性がより高くなる。
延伸工程において、塗工フィルムを加熱するとともに延伸すれば、塗工フィルムが軟化して延伸が容易になる。この延伸のための加熱を塗膜の乾燥にも利用すれば、エネルギー効率を一層高められる。
なお、加熱によってポリビニルアルコールの一部が分解して消失する場合があるので、前記導電性高分子分散液に含まれていたポリビニルアルコールの全部が導電層に含まれるとは限らない。
延伸工程において塗工フィルムを加熱する際の温度は、使用するフィルム基材の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、50℃以上150℃以下とすることができる。延伸工程における加熱温度は、後段の結晶化工程でフィルム基材を結晶化する目的で加熱する温度よりも低いことが好ましい。ここで、加熱温度は、加熱装置の設定温度である。
延伸は一軸延伸でもよいし、二軸延伸でもよいが、フィルム基材として一軸延伸フィルムを用いた場合には、既に延伸されている方向に対して垂直な方向に延伸することが好ましい。例えば、長手方向に沿って延伸された一軸延伸フィルムをフィルム基材として用いた場合には、幅方向(短手方向)に沿って延伸することが好ましい。
塗工フィルムの延伸倍率は4倍以上20倍以下にすることが好ましい。延伸倍率を4倍以上にすれば、導電性フィルムの生産性をより高くでき、20倍以下であれば、フィルムの破断を防止できる。
(結晶化工程)
延伸工程で得た延伸フィルムを加熱した後に冷却することによって、前記フィルム基材を構成する樹脂を結晶化させることができる。通常、結晶化したフィルムの方が、非結晶のフィルム(非結晶性フィルム)よりも機械的強度が強い。
延伸フィルムを加熱する温度は、フィルム基材の種類にもよるが、200℃以上であることが好ましい。200℃以上に加熱すると、フィルム基材を構成する樹脂の少なくとも一部が融解し始める。その融解後、樹脂の結晶化温度未満の温度まで冷却すると、融解した樹脂が結晶化して固化する。これにより、フィルム基材を結晶性の樹脂からなる結晶性フィルム基材にすることができる。
また、200℃以上に加熱することにより、前記塗膜に熱重合開始剤が含まれる場合には、熱重合開始剤による塗膜の硬化を完全に完了することができる。
加熱した後に冷却する降温速度としては、フィルム基材の種類にもよるが、例えば、1℃/分以上200℃/分以下が好ましく、10℃/分以上100℃/分以下がより好ましい。
上記範囲であると、フィルム基材の機械的強度を容易に向上させることができる。
前記延伸工程及び前記結晶化工程を適用する場合、延伸工程時の延伸性が高く、結晶化工程後の機械的物性に優れることから、非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
<導電性フィルム>
本発明の第三態様は、第二態様の製造方法によって得られる導電性フィルムである。導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された第一態様の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層と、を有する。
前記導電層には、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、多価カルボン酸化合物及びポリビニルアルコール由来の成分とを含有する。ここで、前記成分としては、例えば、多価カルボン酸化合物とポリビニルアルコールの水酸基とがエステル結合した反応物が挙げられる。
導電層の平均厚さとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記10nm以上であると、良好な導電性が得られ、前記5000nm以下であると、導電層を容易に形成することができる。
導電層の平均厚さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用い、導電性フィルムの断面の任意の10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
本態様の導電性フィルムの導電層は、第一態様の導電性高分子分散液から形成した導電層であるから、導電性及び耐傷付き性に優れる。導電層の傷付き性は、導電層に含まれる多価カルボン酸化合物とポリビニルアルコールとが反応し、ポリビニルアルコールの分子鎖同士が架橋することによって向上していると推測される。
(製造例1)ポリアニオンの合成
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(製造例2)導電性複合体の合成
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。得られた混合溶液を20℃に保ち、攪拌しながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
反応後の反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
次に、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去した。この操作を5回繰り返し、固形分濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT-PSS)の水分散液を得た。
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液30gに、水50gと、プロピレングリコール10gと、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)3.0gと、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、PVA-217、10質量%水溶液、けん化度87%以上89%以下、重合度1700。)7.5gと、を混合して、導電性高分子分散液を得た。
得られた導電性高分子分散液を、No.8のバーコーターを用いて、非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗工し、塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムを、二軸延伸装置(株式会社井元製作所製、11A9)を用いて、100℃で乾燥しつつ、4倍に延伸して延伸フィルムを得た。前記延伸フィルムを240℃で30秒間加熱した後、降温速度が100℃/分以下になるようにゆっくりと冷却した。これにより、非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムを結晶化して、結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に導電層を有する導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムの表面抵抗値、耐擦過性の評価の結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を3,3’-チオジプロピオン酸3.0gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)をフタル酸3.0gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
なお、実施例3は比較例である。
(実施例4)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)3.0gの配合量を1.5gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1においてPVA-217をPVA-210(株式会社クラレ製、PVA-210、10質量%水溶液、けん化度87%以上89%以下、重合度1000)7.5gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(実施例6)
実施例1においてPVA-217をPVA-224(株式会社クラレ製、PVA-224、10質量%水溶液、けん化度87%以上89%以下、重合度2400)7.5gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(実施例7)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)3.0gの配合量を2.0gに変更し、さらにプラスコートRZ-105(互応化学社製、水分散ポリエステル、固形分25%)1.0gを添加したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1においてPVA-217を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例3)
実施例2においてPVA-217を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例3においてPVA-217を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例5においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例6においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例7)
実施例7においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を添加しなかったこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
(比較例8)
実施例1においてイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を安息香酸3.0gに変更したこと以外は同様にして導電性フィルムを得て評価した。結果を表1に示す。
<評価>
(表面抵抗値)
得られた導電性フィルムの導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ハイレスタ)を用い、印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。測定結果を表1に示す。表面抵抗値が小さい程、導電性に優れる。なお、表中の「2.0E+06」は、2.0×10であることを意味する。
(耐傷付き性)
得られた導電性フィルムの導電層の表面を、水を含ませた不織布により10g/cmの荷重をかけて10往復擦った際の導電層の外観の状態を目視により観察した。観察結果を表1に示す。
Figure 0007269810000001
多価カルボン酸化合物及びポリビニルアルコールを含有する導電性高分子分散液から導電層を形成した各実施例の導電性フィルムは、延伸後においても表面抵抗値が低く、導電性に優れており、さらに耐傷付き性にも優れていた。
これに対し、多価カルボン酸化合物及びポリビニルアルコールのうち何れか一方を含有しない導電性高分子分散液から導電層を形成した比較例1~8の導電性フィルムは、耐傷付き性が低かった。ポリビニルアルコールを含有せず、多価カルボン酸化合物を含有する比較例2~4の導電性フィルムは、延伸後の表面抵抗値が著しく劣り、耐傷付きも著しく劣っていることから、多価カルボン酸化合物を含むだけでは導電性及び耐傷付き性は向上しないことが理解される。また、比較例1,5~7から、多価カルボン酸化合物を含有するのみでは耐傷付き性は向上せず、併せてポリビニルアルコールを含有することにより耐傷付き性が向上することが理解される。このメカニズムの詳細は未解明であるが、ポリビニルアルコールが有する水酸基同士を多価カルボン酸化合物が架橋している可能性が高いと考えられる。なぜならば、分子中にカルボキシ基を1つのみ有する安息香酸を多価カルボン酸化合物の代わりに添加した比較例8においても、耐傷付き性は向上していないからである。

Claims (14)

  1. π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、多価カルボン酸と、ポリビニルアルコールと、分散媒とを含有する、導電性高分子分散液であり、
    前記多価カルボン酸の含有量は、前記ポリビニルアルコールの含有量100質量部に対して、10質量部以上1000質量部以下であり、
    前記多価カルボン酸が、チオジプロピオン酸、又は、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)を含む、導電性高分子分散液。
  2. ポリビニルアルコール以外のバインダ樹脂をさらに含む、請求項1記載の導電性高分子分散液。
  3. 前記バインダ樹脂が水分散体である、請求項に記載の導電性高分子分散液。
  4. 前記バインダ樹脂が水分散性ポリエステルである、請求項に記載の導電性高分子分散液。
  5. 高導電化剤をさらに含有する、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  6. 前記高導電化剤がプロピレングリコールを含む、請求項に記載の導電性高分子分散液。
  7. 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  8. 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
  9. 請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液をフィルム基材の少なくとも一方の面に塗工し、塗工フィルムを得ることを有する導電性フィルムの製造方法。
  10. 前記フィルム基材が非結晶性フィルム基材であり、前記塗工フィルムを加熱するとともに延伸して延伸フィルムを得ることを有する、請求項に記載の導電性フィルムの製造方法。
  11. 前記延伸フィルムを加熱した後に冷却して前記非結晶性フィルム基材を結晶化させることを有する、請求項10に記載の導電性フィルムの製造方法。
  12. 前記延伸フィルムの加熱温度を200℃以上にする、請求項11に記載の導電性フィルムの製造方法。
  13. 前記非結晶性フィルム基材が非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1012の何れか一項に記載の導電性フィルムの製造方法。
  14. 請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層が、フィルム基材の少なくとも一方の面に形成されている、導電性フィルム。
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