JP6465485B2 - 導電性固形物の製造方法、導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法、及び帯電防止フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
通常、帯電防止層が塗布されるフィルム基材は疎水性のプラスチックフィルムからなる。そのため、水系塗料である前記導電性高分子水分散液は、フィルム基材との密着性が低い傾向にあった。また、導電性高分子水分散液は乾燥時間が長くなるため、帯電防止層形成の生産性が低くなる傾向にあった。
そこで、導電性高分子水分散液の分散媒である水を有機溶剤に置換した導電性高分子有機溶剤分散液を用いることがある。
導電性高分子有機溶剤分散液を製造する方法としては、π共役系導電性高分子及びポリアニオンからなる複合体を含む導電性高分子水分散液を凍結乾燥して複合体固形物を得た後、前記複合体固形物に有機溶剤及びアミン化合物を添加する方法が提案されている(特許文献1)。
本発明は、有機溶剤に再分散させた際の分散性が低い凝集物の含有量を少なくできる導電性固形物の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、凝集物の含有量が少なく、π共役系導電性高分子が均一に分散した導電性高分子有機溶剤分散液を容易に製造できる導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、欠陥が少なく、均一な帯電防止性を有する帯電防止フィルムを容易に製造できる帯電防止フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。また、均一な帯電防止性を有する帯電防止フィルムを提供することを目的とする。
本発明の導電性固形物の製造方法における前記水溶性有機化合物は、気圧1013hPaでの凝固点が−40℃超であることが好ましい。
本発明の導電性固形物の製造方法における前記水溶性有機化合物は、気圧1013hPaでの沸点が150℃以下であることが好ましい。
本発明の導電性固形物の製造方法における前記水溶性有機化合物はt−ブタノールであることがより好ましい。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法は、上記導電性固形物の製造方法により導電性固形物を得た後、該導電性固形物を有機溶剤に分散させる分散工程を有する。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法においては、前記有機溶剤が、ケトン基を有することが好ましい。
ケトン基を有する有機溶剤は、メチルエチルケトンであることが好ましい。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法における前記分散工程では、前記有機溶剤に加えて導電性向上剤をさらに添加し、分散させてもよい。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法における前記分散工程では、前記有機溶剤に加えてバインダ樹脂をさらに添加し、分散させてもよい。
本発明の帯電防止フィルムの製造方法は、上記導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法により導電性高分子有機溶剤分散液を得た後、該導電性高分子有機溶剤分散液をフィルム基材に塗工して帯電防止層を形成する塗工工程を有する。
本発明の帯電防止フィルムは、上記の帯電防止フィルムの製造方法により得たものである。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法によれば、凝集物の含有量が少なく、π共役系導電性高分子が均一に分散した導電性高分子有機溶剤分散液を容易に製造できる。
本発明の帯電防止フィルムの製造方法によれば、欠陥が少なく、均一な帯電防止性を有する帯電防止フィルムを容易に製造できる。
本発明の導電性固形物の製造方法は、添加工程と乾燥工程とを有して、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性固形物を製造する方法である。
添加工程は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む水分散液に水溶性有機化合物及びアミン化合物を添加して導電性混合液を調製する工程である。
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む水分散液は、ポリアニオンと水系分散媒とを含む溶液中で、π共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合により重合することにより得られる。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、導電性、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホン酸基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万〜100万であることが好ましく、10万〜50万であることがより好ましい。
ただし、ポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープせず、余剰のアニオン基を有している。この余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
水溶性有機化合物における水溶性とは、25℃の蒸留水に、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
また、水溶性有機化合物は、前記ポリアニオン以外の分子量200以下の化合物である。
水溶性有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の窒素含有極性溶媒;クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物;ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類;3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物;アセトニトリル、グルタロニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、が挙げられる。これらの水溶性有機化合物は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
一方、水溶性有機化合物の凝固点は、20℃以下であることが好ましい。
一方、水溶性有機化合物の沸点は、40℃以上であることが好ましい。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩、芳香族アミンであり、前記アミンは、炭素数2〜12の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基、及び炭素数2〜12のオキシアルキレン基から選択される置換基を有していてもよい。
2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウムの対となる陰イオンとしてはヒドロキシドイオンが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、イミダゾール、N−メチル−イミダゾール、N−エチル−イミダゾール、N−プロピル−イミダゾール、N−ブチル−イミダゾール、N−ペンチル−イミダゾール、N−ヘキシル−イミダゾール、N−ヘプチル−イミダゾール、N−オクチル−イミダゾール、N−デシル−イミダゾール、N−ウンデシル−イミダゾール、N−ドデシル−イミダゾール、2−ヘプチル−イミダゾール、ピリジン等が挙げられる。
これらアミン化合物のうち、得られる導電性固形物の有機溶剤に対する分散性がより高くなることから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。
乾燥工程は、前記導電性混合液を凍結乾燥又は噴霧乾燥し、水及び水溶性有機化合物を除去して導電性固形物を得る工程である。
凍結乾燥では、前記導電性混合液中の水分を凍結させ、真空乾燥する。
凍結乾燥の際の温度は、−60〜60℃とすることが好ましく、−40〜40℃とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度調整しやすく、前記上限値以下であれば、導電性混合液を容易に凍結乾燥できる。
真空乾燥の際には、分散媒を充分に揮発させるために、前記凍結乾燥温度にした後に、例えば40℃以上に加熱してもよい。
噴霧乾燥では、前記導電性混合液を真空容器中に噴霧することにより水分を蒸発させて、粉体状の導電性固形物を得る。
噴霧乾燥の際の温度は、−20〜40℃とすることが好ましく、0〜30℃とすることがより好ましい。噴霧乾燥温度が前記下限値以上であれば、導電性混合液を容易に乾燥でき、前記上限値以下であれば、導電性複合体の熱劣化を防止できる。
水分量を少なくするためには、例えば、乾燥時間を長く、乾燥温度を高く、真空度を高くすればよい。
本発明の導電性固形物の製造方法では、上記のように、凍結乾燥前又は噴霧乾燥前にアミン化合物及び水溶性有機化合物を導電性高分子水分散液に添加する。水溶性有機化合物は非水溶性であるアミン化合物を溶解させるため、アミン化合物とポリアニオンのアニオン基との反応を促進させることができる。ポリアニオンのアニオン基がアミン化合物と反応することにより、アニオン基の末端に炭化水素基を形成させて疎水化することができる。しかも、液状の状態でアニオン基にアミン化合物を反応させるため、均一に且つ充分にアニオン基を疎水化することができる。したがって、乾燥した導電性固形物を有機溶剤に分散させた際には、高い分散性で分散させることでき、凝集物の発生を防止することができる。
本発明の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法は、上記導電性固形物の製造方法により導電性固形物を得た後、該導電性固形物を有機溶剤に分散させる分散工程を有する。
この導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法により得られた導電性高分子有機溶剤分散液は、少なくとも、π共役系導電性高分子と、アニオン基にアミン化合物が配位又は結合して疎水化されたポリアニオンと、有機溶剤とを含有する。本発明における導電性高分子有機溶剤分散液においては、π共役系導電性高分子と、アニオン基にアミン化合物が配位又は結合して疎水化されたポリアニオンとを高分散にできる。
また、導電性高分子有機溶剤分散液の用途や導電性高分子有機溶剤分散液に添加するバインダ樹脂又は添加剤の種類によっては、アルコールの存在が好ましくない場合があるが、本発明では、アルコールを添加しなくてもよい。
後述するようにバインダ樹脂として特にポリエステル樹脂又はシリコーン樹脂を添加する場合には、有機溶剤は、ケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
有機溶剤の添加量は、導電性高分子有機溶剤分散液の固形分濃度が好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.2〜5質量%になる量とする。
バインダ樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、酢酸ビニル樹脂などが用いられる。導電性高分子有機溶剤分散液がバインダ樹脂を含有すれば、帯電防止層の膜強度を向上させることができる。
また、バインダ樹脂の代わりに、帯電防止層形成時に重合し、硬化する硬化性化合物(例えば、ビニル系化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物)を用いてもよい。硬化性化合物は熱重合性でもよいし、光重合性でもよい。光重合性とする場合には、光重合開始剤を含有させてもよい。
添加剤としては本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
具体的に、導電性向上剤は、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
これら化合物の具体例は、例えば、特開2010−87401号公報に記載されている。ただし、導電性向上剤は、前記π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記水溶性有機化合物、前記アミン化合物、前記有機溶剤、前記バインダ樹脂及び前記添加剤以外の化合物である。
導電性高分子有機溶剤分散液に剪断力を付与する高分散化処理においては、分散機を用いることが好ましい。分散機としては、例えば、ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ、ビーズミル等が挙げられ、中でも、高圧ホモジナイザが好ましい。
高圧ホモジナイザは、例えば、高分散化処理する導電性高分子水分散液などを加圧する高圧発生部と、分散を行う対向衝突部やオリフィス部あるいはスリット部とを備える装置である。高圧発生部としては、プランジャーポンプ等の高圧ポンプが好適に用いられる。
高圧ポンプには、一連式、二連式、三連式などの各種の形式があるが、いずれの形式も本発明において採用できる。
高圧ホモジナイザの具体例としては、吉田機械興業製の商品名ナノマイザー、マイクロフルイディスク製の商品名マイクロフルイダイザー、スギノマシン製のアルティマイザーなどが挙げられる。
本発明の帯電防止フィルムの製造方法は、上記導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法により導電性高分子有機溶剤分散液を得た後、該導電性高分子有機溶剤分散液をフィルム基材に塗工して帯電防止層を形成する塗工工程を有する。
帯電防止層は、少なくとも、π共役系導電性高分子と、アニオン基にアミン化合物が配位又は結合して疎水化されたポリアニオンとを含有する。導電性高分子有機溶剤分散液にバインダ樹脂を添加した場合には、帯電防止層はバインダ樹脂又は硬化性化合物を含有し、導電性高分子有機溶剤分散液に添加剤を添加した場合には、帯電防止層は添加剤を含有する。
プラスチックフィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも、透明性、可撓性、汚染防止性及び強度等の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましく、非晶性ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
プラスチックフィルムは未延伸のフィルムでもよいし、一軸延伸のフィルムでもよいし、二軸延伸のフィルムでもよい。機械的物性に優れる点では、プラスチックフィルムは二軸延伸のフィルムが好ましい。
前記導電性高分子有機溶剤分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1〜2.0g/m2の範囲であることが好ましい。
乾燥工程における乾燥法としては、例えば、熱風加熱による乾燥法や、赤外線加熱による乾燥法などの通常の方法を採用できる。加熱温度は、前記導電性高分子有機溶剤分散液に含まれる有機溶剤の沸点以上とすることが好ましい。
乾燥工程は、前記塗工フィルムを加熱して乾燥させると共に延伸させてもよい。塗工フィルムを延伸させることにより、塗工面積を小さくしても大面積の帯電防止フィルムを得ることができ、帯電防止フィルムの生産性を向上させることができる。
また、乾燥工程後に、延伸させても構わない。
延伸する場合の延伸倍率は2〜5倍にすることが好ましい。延伸倍率を前記下限値以上にすれば、帯電防止フィルムの生産性をより高くでき、前記上限値以下であれば、フィルムの破断を防止できる。
導電性高分子有機溶剤溶液が、光硬化性の硬化性化合物を含有する場合には、塗工工程後に光を照射して硬化させればよい。塗工フィルムを延伸する場合には、延伸後に光照射することが好ましい。
結晶化工程では、乾燥させた塗工フィルムを、200℃以上に加熱した後に、ポリエチレンテレフタレートの結晶化温度まで冷却する。
200℃以上に加熱すると、フィルム基材を構成する非晶性ポリエチレンテレフタレートの少なくとも一部が融解し始める。その融解後、ポリエチレンテレフタレートの結晶化温度未満の温度まで冷却した際には、融解した一部の非晶性ポリエチレンテレフタレートが結晶化すると共に固化する。これにより、フィルム基材を結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムにすることができる。結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるフィルム基材は、引張強度等の機械的物性に優れる。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT−PSS水分散液)を得た。
(実施例1)
PEDOT−PSS水分散液1000gにt−ブタノール(TBA)2000gとトリオクチルアミン(TOA)10.6gを添加して導電性混合液を調製した。その導電性混合液を下記凍結乾燥法により凍結乾燥して、22.6gの凍結乾燥体からなる導電性固形物を得た。
[凍結乾燥法]
凍結乾燥においては、凍結乾燥装置(ToliomasterII−A04、共和真空株式会社)を用いた。
具体的には、まず、導電性混合液をトレイに入れ、そのトレイを凍結乾燥装置の中に入れた。次に、導電性混合液を、20℃から−40℃に0.5時間かけて冷却した後、−40℃のまま3.5時間かけて完全凍結させた。次に、凍結乾燥装置の真空度を13.3Paまで気圧を下げ、1.5時間かけて−40℃から30℃まで温度を上昇させた。さらに、13.3Pa、30℃の状態で29.5時間保った後、0.5時間かけて40℃まで温度を上昇させた。さらに、13.3Pa、40℃の状態で13時間保ち、次に40℃の状態で3時間かけて常圧まで戻して、凍結乾燥体を得た。
PEDOT−PSS水分散液1000gにt−ブタノール2000gとトリオクチルアミン10.6gを添加して導電性混合液を調製した。その導電性混合液を下記噴霧乾燥法により噴霧乾燥して、22.6gの噴霧乾燥体からなる導電性固形物を得た。
[噴霧乾燥法]
導電性混合液を、100℃に熱した窒素ガス中に噴霧し、急速乾燥することで、噴霧乾燥体を得た。
PEDOT−PSS水分散液1000gにt−ブタノール2000gとトリブチルアミン(TBA)5.6gを添加して導電性混合液を調製した。その導電性混合液を実施例1と同様の凍結乾燥法により凍結乾燥して、17.6gの凍結乾燥体からなる導電性固形物を得た。
実施例1の凍結乾燥において導電性混合液をPEDOT−PSS水分散液1000gに置き換えた以外は同様に実施例1と同様に凍結乾燥して、12.0gの凍結乾燥体からなる導電性固形物を得た。
(実施例4)
実施例1の凍結乾燥体5.0gに883.3gのイソプロパノールを加え、24時間スターラーを用いて攪拌した後、ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて100MPaの圧力で分散処理して導電性高分子有機溶剤分散液を得た。得られた導電性高分子有機溶剤分散液を、目開き1μmのろ紙を用いてろ過した。
次いで、ろ過後の導電性高分子有機溶剤分散液を、#4のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、100℃で1分間乾燥して、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
実施例1の凍結乾燥体の代わりに実施例2の凍結乾燥体を用いた以外は実施例4と同様にして、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
実施例3の凍結乾燥体5.0gに1136.4gのイソプロパノール(IPA)を加え、24時間スターラーを用いて攪拌した後、ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて分散処理して導電性高分子有機溶剤分散液を得た。得られた導電性高分子有機溶剤分散液を、目開き1μmのろ紙を用いてろ過した。
次いで、ろ過後の導電性高分子有機溶剤分散液を、#4のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、100℃で1分間乾燥して、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
イソプロパノール883.3gの代わりにメチルエチルケトン(MEK)883.3gに変更した以外は実施例4と同様にして、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
実施例3の凍結乾燥体の添加量を10.0gに変更した以外は実施例7と同様にして、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
分散処理後且つろ過前に44.4gのヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)をバインダとして添加した以外は実施例4と同様にして、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
分散処理後且つろ過前に222.1gのポリエステル(東洋紡社製バイロン240、20質量%トルエン溶液)をバインダとして添加した以外は実施例7と同様にして、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
比較例1の凍結乾燥体2.65gにイソプロパノール883.3gとトリオクチルアミン2.35gとを加え、24時間スターラーを用いて攪拌した後、ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて分散処理して、導電性高分子有機溶剤分散液を得た。得られた導電性高分子有機溶剤分散液を、目開き1μmのろ紙を用いてろ過した。
次いで、ろ過後の導電性高分子有機溶剤分散液を、#4のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、100℃で1分間乾燥して、帯電防止層を備える帯電防止フィルムを得た。
比較例1の凍結乾燥体2.65gにメチルエチルケトン883.3gとトリオクチルアミン2.35gとを加え、24時間スターラーを用いて攪拌した後、ナノマイザー(吉田機械興業社製)を用いて分散処理した。しかしながら、均一な分散液が得られず、PEDOT−PSSとメチルエチルケトンとが分離したため、帯電防止フィルムの作製は中止した。
各例の導電性高分子有機溶剤分散液をろ過した後の、ろ紙上の異物の有無を目視により確認した。その結果を表1に示す。
得られた帯電防止フィルムの帯電防止層の表面抵抗値を、ローレスタ(三菱化学製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。表面抵抗値が小さい程、帯電防止性に優れる。
これに対し、凍結乾燥後にアミン化合物を添加した比較例1では、導電性高分子有機溶剤分散液中に1μm以上の異物が多かった。また、帯電防止層の表面抵抗値が大きく、帯電防止性が充分ではなかった。
比較例2では、ポリスチレンスルホン酸がメチルエチルケトンには溶解しないため、アミン化合物とポリスチレンスルホン酸のスルホン酸基とが反応せず、有機溶剤分散液を得ることができなかった。
Claims (9)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む水分散液にt−ブタノール及び3級アミンを添加して導電性混合液を調製する添加工程と、
前記導電性混合液を凍結乾燥又は噴霧乾燥して導電性固形物を得る乾燥工程と、を有する、導電性固形物の製造方法。 - 前記3級アミンが常温で液体である、請求項1に記載の導電性固形物の製造方法。
- 前記3級アミンが、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、又はトリナフチルアミンである、請求項1に記載の導電性固形物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性固形物の製造方法により導電性固形物を得た後、該導電性固形物を有機溶剤に分散させる分散工程を有する、導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記有機溶剤が、ケトン基を有する、請求項4に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
- ケトン基を有する有機溶剤が、メチルエチルケトンである、請求項5に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記分散工程では、前記有機溶剤に加えて導電性向上剤をさらに添加し、分散させる、請求項4〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
- 前記分散工程では、前記有機溶剤に加えてバインダ樹脂をさらに添加し、分散させる、請求項4〜7のいずれか一項に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法。
- 請求項4〜8のいずれか一項に記載の導電性高分子有機溶剤分散液の製造方法により導電性高分子有機溶剤分散液を得た後、該導電性高分子有機溶剤分散液をフィルム基材に塗工して帯電防止層を形成する塗工工程を有する、帯電防止フィルムの製造方法。
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