JP7479160B2 - 導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性フィルムの製造方法 - Google Patents

導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルム及びその製造方法に関する。
導電層を形成するための塗料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸がドープした導電性複合体を含む導電性高分子分散液を使用することがある。特許文献1には、分散媒にジオール化合物を85~100質量%の割合で含む導電性高分子分散液から形成された導電層は、耐光性に優れることが開示されている。
特開2019-116537号公報
しかし、特許文献1に記載された導電性高分子分散液はジオール化合物を高濃度で含むので粘度が高く、フィルム基材への塗布が難しくなる問題があった。
本発明は、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することが可能な導電性高分子分散液及びその製造方法と、その導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた導電性フィルム及びその製造方法を提供する。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表されるリン酸骨格を有する、前記ポリアニオン以外のリン酸化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記リン酸化合物が前記π共役系導電性高分子に結合し、前記導電性複合体に含まれている、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] 前記分散媒が水を含む、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] バインダ成分をさらに含有する、[1]~[5]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[7] 前記バインダ成分が水分散性樹脂である、[6]に記載の導電性高分子分散液。
[8] 前記バインダ成分が水分散性ポリエステルである、[6]に記載の導電性高分子分散液。
[9] 下記式(1)のリン酸骨格を有するリン酸化合物と、下記式(1)で表されるリン酸骨格を有するリン酸化合物以外のポリアニオンと、分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子と前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記リン酸化合物と、前記分散媒とを含む導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法。
[10] 前記反応液に酸化剤及び触媒を添加することにより前記モノマーを重合した後、前記導電性高分子分散液から前記酸化剤及び前記触媒を除去する、[9]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[11] 前記導電性高分子分散液をイオン交換樹脂に接触させることにより前記酸化剤及び前記触媒を除去する、[10]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[12] 前記分散媒が水を含む、[9]~[11]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[13] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性フィルムの製造方法。
[14] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]~[8]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルム。
Figure 0007479160000001
[式(1)中、nは1以上の整数である。]
本発明の導電性高分子分散液によれば、ジオール化合物を高濃度で含まずとも耐光性に優れた導電層を形成することができる。
本発明の導電性フィルムにあっては、耐光性に優れた導電層を備えているので、ディスプレイや光学部材の用途にも適している。
本発明の導電性フィルムの製造方法にあっては、バーコーター等の汎用的な塗布方法により導電性高分子分散液を塗布することができ、導電層を容易に形成することができる。
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、後述の式(1)で表されるリン酸骨格を有する、前記ポリアニオン以外の(前記ポリアニオンとは異なる)リン酸化合物と、分散媒と、を含有する、導電性高分子分散液である。
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲であることが好ましく、10質量部以上700質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上500質量部以下の範囲であることがさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、導電性高分子分散液の総質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液を塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
[リン酸化合物]
本態様の導電性高分子分散液に含まれている1種以上のリン酸化合物は、下記式(1)で表されるリン酸骨格を有する化合物(以下、「リン酸化合物(1)」ということがある。)である。
Figure 0007479160000002
式(1)中、nは1以上の整数である。nの上限値は特に制限されず、リン酸化合物(1)の入手の容易さ、π共役系導電性高分子に対するリン酸化合物(1)の結合の容易さ、耐光性向上の観点から、nは1以上15以下が好ましく、2以上10以下がより好ましく、2以上5以下がさらに好ましい。
n=1~4のリン酸化合物(1)の市販品は容易に入手できる。nが大きい5以上のリン酸化合物(1)の市販品が入手困難である場合、例えばn=4のリン酸化合物(1)を用いた加熱脱水法、電解脱水法、オキシ塩化リンと高温で反応させて塩化水素を追い出す方法等の公知方法により、nが5以上のポリリン酸を得ることができる。
一般に、重合度n>1のポリリン酸は分解性である。このため、市販のポリリン酸は重合度nが異なるポリリン酸の混合物である場合がある。本態様の導電性高分子分散液に含まれるリン酸化合物(1)は、重合度nが異なるリン酸化合物(1)の混合物であってもよい。
本態様の導電性高分子分散液の総質量に対するリン酸化合物(1)の含有量は、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.6質量%以上3質量%以下がさらに好ましく、0.9質量%以上2質量%以下が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電層の耐光性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電層の導電性の低下を防止することができる。
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部に対するリン酸化合物(1)の含有量は、10質量部以上5000質量部以下が好ましく、20質量部以上2500質量部以下がより好ましく、30質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電層の耐光性をより向上させることができる。
本態様の導電性高分子分散液において、前記π共役系導電性高分子100質量部に対するリン酸化合物(1)の含有量は、10質量部以上5000質量部以下が好ましく、20質量部以上2500質量部以下がより好ましく、30質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電層の耐光性をより向上させることができる。また、π共役系導電性高分子に対してリン酸化合物(1)が結合し易くなる。
本態様の導電性高分子分散液において、リン酸化合物(1)以外の前記ポリアニオン100質量部に対するリン酸化合物(1)の含有量は、10質量部以上5000質量部以下が好ましく、20質量部以上2500質量部以下がより好ましく、30質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、導電層の耐光性をより向上させることができる。また、前記π共役系導電性高分子に対してリン酸化合物(1)が結合し易くなる。
本態様の導電性高分子分散液に含まれるリン酸化合物(1)では、水酸基の一部が脱プロトン化して、負電荷を有すると考えられる。π共役系導電性高分子は、ポリアニオンにドープされて正電荷を有するので、リン酸化合物(1)の少なくとも一部はπ共役系導電性高分子に静電的に結合していると考えられる。
本態様の導電性高分子分散液のpHは、リン酸化合物(1)の少なくとも一部が負電荷を有するpHであることが好ましく、例えば、pH1~5以下が好ましい。これらの好適なpHであると、リン酸化合物(1)とともに前記ポリアニオンも負電荷を有し易く、導電性複合体が安定に形成され易い。
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
前記リン酸化合物(1)は、本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒には該当しないものとする。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の二価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
上記に分類されない溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本態様の導電性高分子分散液の分散媒としては、導電性複合体の分散性を高める観点から、水、水溶性有機溶剤、又は水と水溶性有機溶剤の混合溶剤が好ましい。
ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤から選択される1種以上が好ましい。
導電性複合体の分散性をより一層高める観点から、アルコール系溶剤は、水と組み合わせて含まれることが好ましい。
導電性複合体は水に対する分散性が高いので、本態様の導電性高分子分散液の分散媒は水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
本態様の導電性高分子分散液が含む全分散媒の総質量に対する水の含有割合は、例えば、10質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下がより好ましく、70質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
水以外の分散媒としては、前述した水溶性有機溶剤が好ましい。
[バインダ成分]
バインダ成分は、π共役系導電性高分子、ポリアニオン、リン酸化合物(1)、及び分散媒以外の化合物であり、導電層において導電性複合体を結着させ、導電層の強度を高める樹脂である。
バインダ樹脂の具体例としては、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、メラミン樹脂等が挙げられる。
導電性高分子分散液中における分散性が高く、塗膜の強度も充分に向上することから、バインダ樹脂として水分散性樹脂を使用することが好ましい。
水分散性樹脂としては、例えば、水分散性ポリエステル、水分散性アクリル樹脂、水分散性ポリウレタン、水分散性ポリイミド、水分散性メラミン樹脂等が挙げられる。これら水分散性樹脂のなかでも、水分散性ポリエステルが好ましい。バインダ樹脂が水分散性ポリエステルであれば、リン酸化合物(1)との相溶性が優れ、導電性高分子分散液の塗布によって形成される導電層の導電性を高め、その膜強度を強くすることができる。また、水分散性樹脂が水分散性ポリエステルであれば、導電性高分子分散液を塗布する基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合に、基材に対する導電層の密着性をより一層高めることができる。
水分散性樹脂は、その分散性を高める観点から、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有することが好ましい。
水分散性樹脂は、水系分散媒中に乳化されたエマルションであってもよい。
水分散性樹脂のなかでも、水分散性が高く、導電層の導電性をより高くできることから、酸基又はその塩を有するポリエステル、酸基又はその塩を有するポリウレタン、エマルション状のポリエステル、エマルション状のポリウレタンが好ましく、酸基又はその塩を有するポリエステルがより好ましい。
水分散性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ樹脂を添加する場合、導電性高分子分散液における水分散性樹脂等のバインダ樹脂の含有割合は、導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上5000質量部以下がより好ましく、100質量部以上1000質量部以下がさらに好ましい。
バインダ樹脂の含有割合が前記下限値以上であれば、導電層の基材に対する密着性が向上し、導電層の強度が向上する。バインダ樹脂の含有割合が前記上限値以下であれば、導電性複合体及びリン酸化合物(1)の相対的な含有量の低下による導電性の低下を抑制することができる。
[その他の添加剤]
本態様の導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記導電性複合体、リン酸化合物(1)、前記分散媒、及び前記バインダ成分以外の化合物である。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
《導電性高分子分散液の製造方法》
本発明の第二態様は、リン酸化合物(1)と、ポリリン酸以外のポリアニオンと、分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、前記π共役系導電性高分子と前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、リン酸化合物(1)と、前記分散媒とを含む導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法である。本態様の製造方法により、第一態様の導電性高分子分散液を製造することができる。
前記反応液を構成する分散媒は、水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
前記分散媒の総質量に対する水の含有割合は、例えば、60質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下がさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
水以外の分散媒としては、前述した水溶性有機溶剤が好ましい。
前記反応液の総質量に対するリン酸化合物(1)の含有量は、製造する導電性高分子分散液に含まれるリン酸化合物(1)の濃度と同様にすればよく、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.6質量%以上3質量%以下がさらに好ましく、0.9質量%以上2質量%以下が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、製造する導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の耐光性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、前記反応液中におけるπ共役系導電性高分子の合成を妨げず、製造する導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の導電性の低下を防止することができる。
前記反応液の総質量に対するポリリン酸以外のポリアニオンの含有量は、製造する導電性高分子分散液に含まれる前記ポリアニオンの濃度と同様にすればよく、例えば、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.6質量%以上3質量%以下がさらに好ましく、0.9質量%以上2質量%以下が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、合成するπ共役系導電性高分子に前記ポリアニオンを充分にドープさせることができ、導電性に優れた導電性複合体を合成することができる。
上記範囲の上限値以下であると、リン酸化合物(1)の含有量とバランスが取れ、合成するπ共役系導電性高分子に対して、リン酸化合物(1)の少なくとも一部を結合させることができる。この結果、製造する導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の耐光性をより向上させることができる。
前記反応液の総質量に対する前記モノマーの含有量は、製造する導電性高分子分散液に含まれる前記π共役系導電性高分子の濃度と同様にすればよく、例えば、0.05質量%以上2質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以上0.6質量%以下が特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、合成するπ共役系導電性高分子に前記ポリアニオンを充分にドープさせることができ、導電性に優れた導電性複合体を合成することができる。
上記範囲の上限値以下であると、リン酸化合物(1)の含有量とバランスが取れ、合成するπ共役系導電性高分子に対して、リン酸化合物(1)の少なくとも一部を結合させることができる。この結果、製造する導電性高分子分散液を用いて形成する導電層の耐光性をより向上させることができる。
π共役系導電性高分子は、前記モノマーを化学酸化重合することにより合成される。
前記モノマーの化学酸化重合は公知方法と同様に行えばよい。
前記反応液には、公知の触媒、酸化剤を適量で加えることが好ましい。
触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。これらの触媒は、前記反応液の総質量に対して、例えば、0.01質量%以上0.05質量%以下で添加することができる。
酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。これらの酸化剤は、前記反応液の総質量に対して、例えば、0.1質量%以上2質量%以下で添加することができる。
前記モノマーの化学酸化重合によりπ共役系導電性高分子を合成することにより、目的の第一態様の導電性高分子分散液を得ることができる。
前記反応液に触媒及び酸化剤を添加した場合、導電性高分子分散液から前記触媒及び前記酸化剤を除去することが好ましい。
除去する方法としては、例えば、イオン交換樹脂に導電性高分子分散液を接触させ、触媒及び酸化剤をイオン交換樹脂に吸着させる方法、導電性高分子分散液を限外ろ過することにより分散媒の置換とともに除去する方法等が挙げられる。このうち、イオン交換樹脂を使用する方法が簡便であるため好ましい。前記イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を併用することが好ましい。
第一態様の導電性高分子分散液は、上述した本発明の第二態様以外の方法で得ることもできる。すなわち、市販のπ共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の分散液に対して、リン酸化合物(1)を適量添加する方法である。しかし、既に導電性複合体が完成した状態でリン酸化合物(1)を添加しても、リン酸化合物(1)がπ共役系導電性高分子に対して結合し難いことがある。
一方、本発明の第二態様の方法で製造すると、π共役系導電性高分子の化学酸化重合時にリン酸化合物(1)が存在するので、リン酸化合物(1)がポリアニオンとともにπ共役系導電性高分子に結合し易くなる。この結果、耐光性に優れた導電層を形成可能な本発明の第一態様の導電性高分子分散液が確実に得られる。
≪導電性フィルムの製造方法≫
本発明の第三態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子分散液、又は第二態様の製造方法で得た導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性フィルムの製造方法である。フィルム上に形成された塗膜は、乾燥することにより導電層となる。
本態様において使用するフィルム基材としては、例えば、プラスチックフィルムが挙げられる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、形成する導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みとしては、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
(塗工工程)
導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工することができる。
前記分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、良好な導電性を得る観点から、固形分として、0.1g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
(乾燥工程)
フィルム基材に形成された塗膜を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記温度で乾燥する場合の乾燥時間としては、例えば、30秒以上3分以下とすることができる。
前記塗膜が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合、乾燥後の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は、導電層を充分に硬化させる観点から、100mW/cm以上が好ましい。また、導電層を充分に硬化させる観点から、積算光量は50mJ/cm以上が好ましい。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR-T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD-T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
≪導電性フィルム≫
本発明の第四態様は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、第一態様の導電性高分子分散液、又は第二態様で製造した導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層を備えた、導電性フィルムである。本態様の導電性フィルムは、第三態様の製造方法によって製造することができる。
本態様の導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。導電層は、リン酸化合物(1)と導電性複合体を含有しており、導電性複合体のπ共役系導電性高分子にはリン酸化合物(1)が結合していると考えらえる。
塗布した導電性高分子分散液がバインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分又はバインダ成分が硬化した硬化物が含まれる。
本態様の導電性フィルムが有する導電層の平均厚さとしては、例えば、10nm以上50000nm以下であることが好ましく、20nm以上40000nm以下であることがより好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本態様の導電性フィルムの導電層の表面抵抗値は、良好な導電性の目安として、例えば、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下が好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下がより好ましく、1×10Ω/□以上1×10Ω/□以下がさらに好ましい。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶媒を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶媒を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
(実施例1)
0.5gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、1.5gのポリスチレンスルホン酸を15.0gのイオン交換水に溶かした溶液を20℃で混合した。次に、ポリリン酸(富士フィルム和光純薬社製、重合度n=4を主成分とするn=2~6の混合物)の10質量%水溶液5gと、イオン交換水84.5gを添加した。
得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、0.03gの過硫酸アンモニウムを4.97gのイオン交換水に溶かした酸化剤溶液と、1.1gの硫酸第二鉄を8.9gのイオン交換水に溶かした触媒溶液とをゆっくり添加し、得られた反応液を24時間攪拌して反応させた。
上記反応により、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、前記π共役系導電性高分子に結合したポリリン酸と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。
この導電性高分子分散液にデュオライトC255LFH(住化ケムテックス社製、陽イオン交換樹脂)13.2gとデュオライトA368S(住化ケムテックス社製、陰イオン交換樹脂)13.2gを加え、濾過してイオン交換樹脂を除き、前記酸化剤及び前記触媒が除去された導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の固形分(不揮発成分)の質量とpHを測定した結果を表1に示す。
また、得られた導電性高分子分散液の溶剤をエバポレーターにより除去し、析出した固体について蛍光X線により含有元素を調べ、リン元素の有無を確認した結果を表1に示す。
次に、得られた導電性高分子分散液5gにメタノール5gを添加し#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
(実施例2)
ポリリン酸の添加量を5gから10gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから79.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(実施例3)
ポリリン酸の添加量を5gから15gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから74.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(実施例4)
ポリリン酸(10質量%水溶液)5gの代わりに、リン酸(関東化学社製、重合度n=1、10質量%水溶液)5gを添加した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
ここで得た導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、前記π共役系導電性高分子に結合したリン酸と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の固形分とpHを測定した結果を表1に示す。
(実施例5)
リン酸の添加量を5gから10gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから79.5gに変更した以外は、実施例4と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(実施例6)
リン酸の添加量を5gから15gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから74.5gに変更した以外は、実施例4と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(比較例1)
ポリリン酸(10質量%水溶液)5gを添加せず、イオン交換水の添加量を84.5gから89.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
ここで得た導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の固形分とpHを測定した結果を表1に示す。
(比較例2)
ポリリン酸(10質量%水溶液)5gの代わりに、硫酸(10質量%水溶液)5gを添加した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
ここで得た導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びポリスチレンスルホン酸を含む導電性複合体(PEDOT-PSS)と、分散媒である水とを含む導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の固形分とpHを測定した結果を表1に示す。
(比較例3)
硫酸の添加量を5gから10gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから79.5gに変更した以外は、比較例2と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(比較例4)
硫酸の添加量を5gから15gに変更し、イオン交換水の添加量を84.5gから74.5gに変更した以外は、比較例2と同様にして導電性高分子分散液を得て、導電性フィルムを作製した。
(実施例7)
実施例1で得た導電性高分子分散液5gに、メタノール4gとプラスコートRZ-105(互応化学社製、水分散性ポリエステル、固形分25%)1gを添加し、塗料を得た。この塗料を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
(実施例8)
実施例4で得た導電性高分子分散液5gに、メタノール4gとプラスコートRZ-105(互応化学社製、水分散性ポリエステル、固形分25%)1gを添加し、塗料を得た。この塗料を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
(比較例5)
実施例3においてポリスチレンスルホン酸を添加しなかったこと以外は同様にして反応を行ったが、π共役系導電性高分子と考えられる青色の固体が析出し、イオン交換樹脂と共に青色の固体がすべてろ取されたため、中止した。
(比較例6)
実施例6においてポリスチレンスルホン酸を添加しなかったこと以外は同様にして反応を行ったが、π共役系導電性高分子と考えられる青色の固体が析出し、イオン交換樹脂と共に青色の固体がすべてろ取されたため、中止した。
(比較例7)
比較例1で得た導電性高分子分散液5gに、メタノール4gとプラスコートRZ-105(互応化学社製、水分散性ポリエステル、固形分25%)1gを添加し、塗料を得た。この塗料を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
(比較例8)
比較例2で得た導電性高分子分散液5gに、メタノール4gとプラスコートRZ-105(互応化学社製、水分散性ポリエステル、固形分25%)1gを添加し、塗料を得た。この塗料を#4のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥して、導電性フィルムを得た。
<評価>
各例で作製した導電性フィルムについて以下のように評価した。結果を表1に示す。なお、表1において、1.0E+06は1.0×10を表し、他も同様である。
[耐光性の評価]
各例で作製した導電性フィルムについて、導電層の初期の表面抵抗値Rと、紫外線照射後の表面抵抗値Rを測定し、その変化割合(R/R)を算出した。この変化割合が1に近いほど耐光性が高いことを示す。
導電層の表面抵抗値は、抵抗率計(三菱ケミカルアナリテック社製ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。
導電層の紫外線照射は、カーボンアーク式の耐光性試験機を用い、48時間照射した。
Figure 0007479160000003
<結果>
リン酸化合物(1)を含む実施例1~8の導電性高分子分散液から形成された導電性フィルムの導電層は、耐光性に優れていた。n=1のリン酸を用いた実施例4~6,8よりも、n>1のポリリン酸を用いた実施例1~3,7の方が、より耐光性に優れていた。

Claims (10)

  1. 下記式(1)のリン酸骨格を有するリン酸化合物と、下記式(1)で表されるリン酸骨格を有するリン酸化合物以外のポリアニオンと、分散媒とを含む反応液で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを重合することにより、
    前記π共役系導電性高分子と前記ポリアニオンを含む導電性複合体と、前記リン酸化合物と、前記分散媒とを含む導電性高分子分散液を得る、導電性高分子分散液の製造方法。
    Figure 0007479160000004
    [式(1)中、nは1以上の整数である。]
  2. 前記反応液に酸化剤及び触媒を添加することにより前記モノマーを重合した後、
    前記導電性高分子分散液から前記酸化剤及び前記触媒を除去する、請求項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  3. 前記導電性高分子分散液をイオン交換樹脂に接触させることにより前記酸化剤及び前記触媒を除去する、請求項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  4. 前記分散媒が水を含む、請求項の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  5. 前記導電性高分子分散液にバインダ成分をさらに添加する、請求項1~4の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  6. 前記バインダ成分が水分散性樹脂である、請求項5に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  7. 前記バインダ成分が水分散性ポリエステルである、請求項5に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  8. 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1~7の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  9. 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1~8の何れか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
  10. 請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法により導電性高分子分散液を得ることと、フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性フィルムの製造方法。
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