JP2020031013A - 導電性高分子分散液の製造方法、及び導電性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
通常、導電層が塗布されるフィルム基材は疎水性のプラスチックフィルムからなる。そのため、水系塗料である前記導電性高分子水分散液は、フィルム基材との密着性が低い傾向にあった。また、導電性高分子水分散液は乾燥時間が長くなるため、導電層形成の生産性が低くなる傾向にあった。
そこで、導電性高分子水分散液の分散媒である水を有機溶剤に置換した導電性高分子有機溶剤分散液を用いることがある。
導電性高分子有機溶剤分散液としては、π共役系導電性高分子及びポリアニオンからなる導電性複合体を含む導電性高分子水分散液を凍結乾燥して乾燥物を得た後、前記乾燥物に有機溶剤及びアミン化合物を添加して得たものが知られている(特許文献1)。
しかし、アミン化合物を含む導電性高分子有機溶剤分散液から形成される導電層は、導電性高分子水分散液から形成される導電層よりも導電性が低くなる、色調が変化するなどの問題を生じることがあった。また、導電層に離型性を発現させるために導電性高分子有機溶剤分散液に付加硬化型シリコーン化合物を配合した場合、アミン化合物の存在によって付加硬化型シリコーン化合物が硬化阻害を起こすことがあった。したがって、アミン化合物を用いた導電性高分子有機溶剤分散液では、導電層に充分な離型性を発現させることはできなかった。
そこで、本発明は、導電性が高い導電層を容易に形成できる導電性高分子分散液の製造方法を提供することを目的とする。また、導電性が高い導電層を容易に形成できる導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む水系分散媒を含む予備分散液を調製する予備分散液調製工程と、
前記予備分散液を180日以上経過させて水分散液を得る経過工程と、を有する導電性高分子分散液の製造方法。
[2] 前記経過工程が、前記予備分散液を180日以上1095日以下経過させる工程である、[1]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[3] 前記経過工程が、5℃以上40℃未満で行われる、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[4] 前記水分散液に、エポキシ化合物を添加して前記導電性複合体と反応させ、反応物を分取する反応物分取工程と、前記反応物に有機溶剤を添加する有機溶剤添加工程と、を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[5] 前記有機溶剤が非水溶性有機溶剤を含む、[4]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[6] 前記有機溶剤の含有量が、導電性高分子分散液の総質量に対して50質量%以上である、[4]又は[5]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[7] 前記有機溶剤が、メチルエチルケトンを含む、[4]〜[6]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[8] 前記有機溶剤が、トルエンを含む、[4]〜[7]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[9] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[10] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[11] バインダ成分を添加するバインダ成分添加工程を有する、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[12] 前記バインダ成分が、シリコーン化合物である、[11]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[13] 前記シリコーン化合物が、付加硬化型シリコーン化合物である、[12]に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[14] 前記水分散液を乾燥して前記導電性複合体の乾燥物を得る導電性複合体乾燥工程と、
前記乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加するエポキシ化合物添加工程と、を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
[15] フィルム基材の少なくとも一方の面に、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法で得られた導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した前記導電性高分子分散液を乾燥する乾燥工程とを有する、導電性フィルムの製造方法。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、導電性が高い導電層を容易に形成できる。
以下、本発明の製造方法によって得られる導電性高分子分散液の一態様について説明する。
本態様の導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
ポリアニオンとは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィを用いて測定し、ポリスチレン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
任意の有機基としては、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH2−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
置換基としての1価の基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)等が挙げられる。
置換基としての2価の基としては、酸素原子(−O−)、−SiR10R11−等が挙げられる。R10及びR11はそれぞれ独立に1〜4のアルキル基である。
エポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−CH2(CF2)mCF3 ・・・(3)
前記化学式(3)におけるmは0以上の整数であり、2以上10以下の整数であることが好ましく、3以上5以下の整数であることがより好ましい。mが前記下限値以上の整数であれば、導電性複合体の疎水性をより高めることができる。mが前記上限値以下の整数であれば、前記化学式(3)で表される置換基を容易に形成できる。
具体的には、R1が−CH2CF3、−CH2CF2CF3、−CH2(CF2)2CF3、−CH2(CF2)3CF3、−CH2(CF2)4CF3、−CH2(CF2)5CF3、−CH2(CF2)6CF3、−CH2(CF2)7CF3、−CH2(CF2)8CF3、−CH2(CF2)9CF3であることが好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が挙げられる。
炭素数1〜4のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
前記化学式(4)におけるnは1以上の整数であり、1以上10000以下であることが好ましく、10以上1000以下であることがより好ましい。nが前記下限値以上であれば、前記化学式(4)で表される置換基の疎水性がより高くなり、前記上限値以下であれば、有機溶剤中における導電性複合体の分散性低下を防止できる。
本態様の導電性高分子分散液は、有機溶剤を含むことが好ましい。
本態様で使用される有機溶剤は、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の両方でもよい。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対して溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対して溶解量が1g未満の有機溶剤である。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロパノール)、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本態様の導電性高分子分散液を導電層形成用塗工液として使用する場合、塗工液としての適性が良好になることから、水溶性有機溶剤としてはメチルエチルケトンが好ましい。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
非水溶性有機溶剤のなかでも、本態様における導電性高分子分散液を容易に製造できる点では、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、トルエンがより好ましい。
本態様の導電性高分子分散液は、得られる導電層の物性を向上させるために、バインダ成分を含有してもよい。
本態様の導電性高分子分散液は、分散媒として有機溶剤を使用しているため、バインダ成分として、低極性であるシリコーン化合物を好適に使用できる。但し、バインダ成分として使用されるシリコーンは、前記エポキシ化合物以外のシリコーン、すなわちエポキシ基非含有シリコーンである。
硬化型シリコーンは、付加硬化型シリコーン化合物、縮合硬化型シリコーンのいずれであってもよい。本態様では、付加硬化型シリコーン化合物を使用しても硬化阻害が生じにくいため、好適である。
付加硬化型シリコーン化合物としては、シロキサン結合を有する直鎖状ポリマーであって、前記直鎖の両方の末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサンと、ハイドロジェンシランとを有するものが挙げられる。このような付加硬化型シリコーン化合物は、付加反応によって三次元架橋構造を形成して硬化する。硬化を促進させるために白金系硬化触媒を用いてもよい。
付加硬化型シリコーン化合物の具体例としては、KS−3703T、KS−847T、KM−3951、X−52−151、X−52−6068、X−52−6069(信越化学工業社製)等が挙げられる。
付加硬化型シリコーン化合物は有機溶剤に溶解又は分散しているものが好適に使用される。
導電性高分子分散液は、導電性をより向上させるために、高導電化剤を含んでもよい。
ここで、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、エポキシ化合物、有機溶剤及びバインダ成分は、高導電化剤に分類されない。
高導電化剤は、糖類、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
導電性高分子分散液に含有される高導電化剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
高導電化剤の含有割合は導電性複合体の100質量部に対して、1質量部以上10000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上5000質量部以下であることがより好ましく、100質量部以上2500質量部以下であることがさらに好ましい。
高導電化剤の含有割合が前記下限値以上であれば、高導電化剤添加による導電性向上効果が充分に発揮され、前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下を防止できる。
導電性高分子分散液には、公知のその他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、エポキシ化合物、有機溶剤、バインダ成分及び高導電化剤以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
導電性高分子分散液が上記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体の固形分100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下の範囲とすることができる。
本態様の導電性高分子分散液を製造する方法としては、製造方法A及びBが挙げられる。
[製造方法A]
製造方法Aは、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む予備分散液を調製する予備分散液調製工程と、前記予備分散液を180日以上経過させて水分散液を得る経過工程とを有し、さらに任意の工程として、前記水分散液に、エポキシ化合物を添加して前記導電性複合体と反応させ、反応物を分取する反応物分取工程と、前記反応物に有機溶剤を添加する有機溶剤添加工程とを有する。
予備分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む水系分散媒を含む。
予備分散液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中で、π共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合することにより得られる。また、予備分散液は市販のものを使用してもよいし、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の粉体に水を加えて調製してもよい。
つまり、予備分散液とは、前記モノマーが重合して水系分散媒に導電性複合体が形成された直後を0時間として、導電性複合体が水系分散媒中に存在する期間が180日(180×24時間)を経過していない分散液を意味する。
前記化学酸化重合には、公知の触媒を適用してもよい。例えば、触媒及び酸化剤を用いることができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
予備分散液に含まれる導電性複合体の含有量としては、予備分散液の総質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上4質量%以下がより好ましい。
水系分散媒は、水を含有し、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水系分散媒における水の含有量は、水系分散媒の総質量に対し、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
経過工程においては、予備分散液を調製した直後を0時間として180日以上経過させて、水分散液を得る。
つまり、水分散液とは、前記モノマーが重合して水系分散媒に導電性複合体が形成された直後を0時間として、導電性複合体が水系分散媒中に存在する期間が180日以上経過した分散液を意味する。
予備分散液を180日以上経過させる方法としては、静置すること、撹拌すること、超音波で処理すること等が挙げられる。これらを適宜組み合わせてもよい。なかでも、静置することが好ましい。
経過工程において、温度は5℃以上40℃未満が好ましく、10〜35℃がより好ましい。
上記の好適な温度範囲であると、所定日数の経過後に、前記エポキシ化合物に対して良好な反応性を示す状態となる。
経過工程において、日数は180日以上であり、180日以上1460日未満が好ましく、365日以上1095日以下がより好ましい。
180日以上であると導電性複合体が前記エポキシ化合物に対して良好な反応性を示す状態となる。1460日未満であると、導電性複合体が水分散液中でゲル化せずに良好な分散性が得られやすい。365日以上1095日以下であると、表面抵抗が小さい導電性フィルムの製造に適した状態となりやすい。
反応物分取工程においては、水分散液に、エポキシ化合物を添加して導電性複合体と反応させ、析出した反応物を分取する。
前記水分散液にエポキシ化合物を添加した際には、前記導電性複合体を構成するポリアニオンの一部のアニオン基、具体的にはπ共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基とエポキシ化合物のエポキシ基とが反応する。これにより、ポリアニオンのアニオン基にエポキシ化合物が付加してアニオン基が消失し、上記式(1)で表される疎水性置換基が形成されて、導電性複合体が疎水化された反応物が得られる。反応物は、水中で分散することができないため析出する。
但し、π共役系導電性高分子へのドープに関与しない余剰のアニオン基の全てにエポキシ化合物が反応しなくてもよく、ドープに関与しない余剰のアニオン基が一部残留してもよい。
水分散液にエポキシ化合物を添加する前、添加している最中、又は添加した後には、例えば50℃以上100℃以下の範囲で加熱してもよい。加熱により、アニオン基とエポキシ化合物との反応を促進させることができる。
また、水分散液にエポキシ化合物を添加している最中、又は添加した後には、攪拌、混合することが好ましい。
ろ過に使用するフィルターとしては、化学分析分野で用いられるろ紙が好ましい。このろ紙としては、例えば、アドバンテック社製ろ紙、保留粒子径7μm等が挙げられる。ここで、ろ紙の保留粒子径は目の粗さの目安であり、JIS P 3801〔ろ紙(化学分析用)〕で規定された硫酸バリウムなどを自然ろ過したときの漏えい粒子径により求められる。ろ紙の保留粒子径は、例えば2μm以上20μm以下とすることができる。この保留粒子径は、余剰のポリアニオンを透過させて容易に分離できることから、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
エポキシ化合物を有機溶剤に分散させた溶液におけるエポキシ化合物の濃度は、溶液の総質量に対し、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤を含む場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤添加工程においては、反応物分取工程で得た反応物(析出物)を有機溶剤に分散させる。この分散によって、反応物が有機溶剤中に分散している導電性高分子分散液を得る。
反応物を有機溶剤に分散させる際には、反応物を含む有機溶剤に分散処理を施すことが好ましい。分散方法としては、有機溶剤への析出物の分散性を高くできる点では、加圧可能な高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
バインダ成分添加工程においては、水分散液、反応物、又は、前記分散によって得られた導電性高分子分散液に、バインダ成分を添加すればよい。
これら添加方法のうち、導電性高分子分散液中にバインダ成分を安定に分散させるためには、前記有機溶剤添加工程後にバインダ成分を添加することが好ましい。
バインダ成分が付加硬化型シリコーン化合物である場合には、付加硬化型シリコーン化合物と共に硬化触媒を添加することが好ましい。
高導電化剤・添加剤等を添加する場合、その添加方法としては、例えば、下記(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)水分散液に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
(ii)反応物に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
(iii)前記分散によって得られた導電性高分子分散液に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
これらの方法のなかでも、前記有機溶剤に分散した後の導電性高分子分散液中に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を安定に分散できる点では、(iii)の方法が好ましい。
製造方法Bは、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む予備分散液を調製する予備分散液調製工程と、前記予備分散液を180日以上経過させて水分散液を得る経過工程と、前記水分散液を乾燥して前記導電性複合体の乾燥物を得る導電性複合体乾燥工程と、前記乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加するエポキシ化合物添加工程と、を有する。
製造方法Bにおける予備分散液調製工程は、製造方法Aと同様の方法で実施できる。
製造方法Bにおける経過工程は、製造方法Aと同様の方法で実施できる。
導電性複合体乾燥工程においては、水分散液を乾燥して導電性複合体の乾燥物を得る。
水分散液の乾燥方法としては、例えば、水分散液を凍結乾燥する方法、水分散液を加熱乾燥する方法、水分散液を真空乾燥する方法、加熱真空乾燥する方法、膜分離により水を除去する方法等が挙げられる。前記の水の除去方法のなかでも、導電性複合体を劣化させることなく水分散液の水を充分に除去できることから、水分散液を凍結乾燥する方法が好ましい。
凍結乾燥では、水分散液中の水分を凍結させ、真空乾燥する。凍結乾燥の際の温度は、0℃以下とすることが好ましい。凍結乾燥温度が前記上限値以下であれば、水分を凍結させやすい。また、凍結乾燥温度は−60℃以上とすることが好ましく、−40℃以上とすることがより好ましい。凍結乾燥温度が前記下限値以上であれば、温度を容易に調整できる。
乾燥物における水の含有量を前記上限値以下にすれば、本態様の導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有量を容易に1.0質量%以下にできる。
エポキシ化合物添加工程では、前記乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加して、導電性複合体中のポリアニオンとエポキシ化合物を反応させて反応物を得る。
エポキシ化合物の添加量は、導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100000質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50000質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上10000質量部以下であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の添加量が前記下限値以上であれば、導電性複合体の疎水性を充分に向上させることができる。エポキシ化合物の添加量が前記上限値以下であれば、導電性高分子分散液から形成される導電層の導電性低下を防止できる。
有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤が挙げられる。水溶性有機溶剤を含む場合、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加する前、添加している最中、又は添加した後には、例えば50℃以上100℃以下の範囲で加熱してもよい。加熱により、アニオン基とエポキシ化合物との反応を促進させることができる。
また、乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加している最中、又は添加した後には、攪拌、混合することが好ましい。
エポキシ化合物添加工程においては、反応物を有機溶剤に分散させる分散処理を施すことが好ましい。この分散によって、反応物が有機溶剤中に分散している導電性高分子分散液を得る。
分散処理においては、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
バインダ成分添加工程においては、水分散液、乾燥物、又は、前記分散によって得られた導電性高分子分散液に、バインダ成分を添加すればよい。
導電性高分子分散液中にバインダ成分を安定に分散させるためには、前記分散工程後にバインダ成分をさらに添加することが好ましい。
バインダ成分が付加硬化型シリコーン化合物である場合には、付加硬化型シリコーン化合物と共に硬化触媒を添加することが好ましい。
高導電化剤、添加剤等を添加する場合、その添加方法としては、例えば、下記(iv)〜(vi)の方法が挙げられる。
(iv)乾燥する前の水分散液に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
(v)乾燥物に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
(vi)前記分散によって得られた導電性高分子分散液に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を添加する方法。
これらの方法のなかでも、前記分散工程後の導電性高分子分散液中に、高導電化剤、及び添加剤よりなる群から選ばれる1種を安定に分散できる点では、(vi)の方法が好ましい。
本態様においては、予備分散液を180日以上経過させることを特徴としている。これにより、導電性複合体が、疎水性のπ共役系導電性高分子を内側に有し、かつ親水性のポリアニオンを外側に有する3次構造を形成すると推察される。さらに時間の経過とともに、ポリアニオンにおけるドープに関与しない余剰のアニオン基が、導電性複合体の周りを囲む水分子と水素結合を形成すべく、導電性複合体の外側を向くコンフォメーションをとると推察される。そのため、エポキシ化合物を添加した際に、余剰のアニオン基とエポキシ化合物との反応性をより高めることができると考えられる。エポキシ化合物との反応性が高まることで、より多くの疎水性置換基を導入することができるため、導電性複合体の有機溶剤中での分散性をより高めることができると考えられる。
また、導電性複合体の分散性が高い導電性高分子分散液を塗工することにより、導電層中の導電性複合体の分散性も高くできるため、導電性が高い導電層を容易に形成できる。
また、分散媒の主成分が有機溶剤である本態様の導電性高分子分散液は、バインダ成分を高い分散性で分散できる。バインダ成分を含む導電性高分子分散液から形成した導電層は、強度が高いものとなる。
以下、本発明の導電性フィルムの製造方法の一態様について説明する。
本態様の導電性フィルムの製造方法は、フィルム基材の少なくとも一方の面に、前記態様の製造方法で得られた導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜(導電層)を乾燥する乾燥工程とを含む方法である。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂のなかでも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
前記フィルム基材用樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
また、フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
また、フィルム基材には、導電性高分子分散液から形成される導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みは、マイクロメーターを用いて10か所の厚みを測定し、それら厚みを平均した平均値である。
導電性高分子分散液を塗工する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた塗工方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた噴霧方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
前記導電性高分子分散液のフィルム基材への塗工量は特に制限されないが、固形分として、0.1g/m2以上10.0g/m2以下の範囲であることが好ましい。
塗工した導電性高分子分散液を乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定され、例えば、50℃以上150℃以下に設定できる。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
前記導電性高分子分散液が活性エネルギー線硬化性のバインダ成分を含有する場合には、前記乾燥工程後に、乾燥した導電性高分子の塗膜に活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程をさらに有してもよい。活性エネルギー線照射工程を有すると、導電層の形成速度を速くでき、導電性フィルムの生産性が向上する。
活性エネルギー線照射工程を有する場合、使用される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源を用いることができる。
紫外線照射における照度は100mW/cm2以上が好ましい。照度が100mW/cm2未満であると、活性エネルギー線硬化性のバインダ成分が充分に硬化しないことがある。また、積算光量は50mJ/cm2以上が好ましい。積算光量が50mJ/cm2未満であると、充分に架橋しないことがある。なお、本明細書における照度、積算光量は、トプコン社製UVR−T1(工業用UVチェッカー、受光器;UD−T36、測定波長範囲;300nm以上390nm以下、ピーク感度波長;約355nm)を用いて測定した値である。
導電性高分子分散液がバインダ成分として硬化型シリコーンを含む場合には、シリコーンが未硬化であるため、基材に容易に密着できる。塗膜を硬化させると、シリコーンが硬化し、シリコーンの凝集力が向上するため、離型性を発現させることができる。
本態様の製造方法により得られる導電性フィルムは、フィルム基材と、前記フィルム基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体を含有する。導電層に含まれるポリアニオンの一部のアニオン基の水素原子は前記化学式(1)で表される疎水性置換基に置換されている。導電性高分子分散液がバインダ成分を含む場合には、導電層にバインダ成分又はバインダ成分が硬化した硬化物が含まれる。
前記導電層の平均厚さとしては、10nm以上20000nm以下であることが好ましく、20nm以上10000nm以下であることがより好ましく、30nm以上5000nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本明細書における平均厚さは、任意の10箇所について断面を観察して厚さを測定し、それらの測定値を平均した値である。
上記態様の導電性高分子分散液は、有機溶剤中で導電性複合体が高度に分散しているから、導電性高分子分散液から形成される導電層中においても導電性複合体を高度に分散させた状態で含有させることができる。そのため、導電層の導電性を充分に高くできる。
また、本態様の導電性フィルムの製造方法では、親油性が高い上記態様の導電性高分子分散液をフィルム基材に塗工するため、導電性高分子分散液から形成される導電層はフィルム基材に対する密着性が高い。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去し、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去した。残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶媒を除去し、ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)を水洗した。この操作を8回繰り返した後、高圧ホモジナイザーを用いて分散して、固形分濃度1.2質量%のPEDOT−PSS予備分散液を得た。なお、PEDOT−PSS固形分に対するPSSの含有量は75質量%である。
付加硬化型シリコーン化合物(信越化学工業株式会社製、KS−3703T、固形分濃度30質量%、トルエン溶液)2.25g、トルエン38.25g、メチルエチルケトン90.0g、及び白金触媒(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)0.45gを混合してバインダ成分溶液を得た。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから180日間、5℃以上40℃未満にて静置して水分散液を得た。得られた水分散液にメタノール300g、及びエポキシ化合物(共栄社化学株式会社製、エポライトM−1230、C12、13混合高級アルコールグリシジルエーテル)25gを加えて50℃にて4時間加熱撹拌した。析出した反応物をろ取し、このときの濾過性を後述する基準で評価した。次に、ろ取した反応物をメタノール100gで洗浄した。得られた反応物をメチルエチルケトンに濃度が0.55質量%となるように加え、高圧ホモジナイザーで分散し、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液の重量と性状を後述する基準で評価した。
得られた導電性高分子分散液をNo.8のバーコーターを用いてPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布し、100℃にて1分乾燥して導電性フィルムを得た。
さらに、導電性高分子分散液0.6gと製造例3のバインダ成分溶液17.4gとを混合した溶液を調製し、No.14のバーコーターを用いてPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーT60)に塗布し、150℃にて1分間乾燥して帯電防止剥離フィルムを得た。
得られたフィルムの表面抵抗値と剥離力を測定した。測定結果を表1に示す。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから365日間、5℃以上40℃未満にて静置して水分散液を得たこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液、導電性フィルム、及び帯電防止剥離フィルムを得た。さらに実施例1と同様に測定及び評価を行った。得られた結果を表1に示す。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから1095日間、5℃以上40℃未満にて静置して水分散液を得たこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液、導電性フィルム、及び帯電防止剥離フィルムを得た。さらに実施例1と同様に測定及び評価を行った。得られた結果を表1に示す。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから1460日間、5℃以上40℃未満にて静置して水分散液を得たこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液、導電性フィルム、及び帯電防止剥離フィルムを得た。さらに実施例1と同様に測定及び評価を行った。得られた結果を表1に示す。
PEDOT−PSS予備分散液を調製して直ぐに前記エポキシ化合物を加えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を調製した。しかしながら、導電性複合体とエポキシ化合物との反応が進行しなかったため、反応物が析出しなかった。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから30日間、5℃以上40℃未満にて静置した予備分散液に、前記エポキシ化合物を加えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液、導電性フィルム、及び帯電防止剥離フィルムを得た。さらに実施例1と同様に測定及び評価を行った。得られた結果を表1に示す。
PEDOT−PSS予備分散液を調製してから90日間、5℃以上40℃未満にて静置した予備分散液に、前記エポキシ化合物を加えたこと以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液、導電性フィルム、及び帯電防止剥離フィルムを得た。さらに実施例1と同様に測定及び評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[濾過性]
各例の導電性高分子分散液を、JIS P 3801に規定される5種Aのろ紙(ADVANTEC社製、商品名FILTER PAPER No.5A)を用いて減圧ろ過し、濾過性を以下の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:ろ紙上にサラサラした反応物が得られた(濾過性が良好であった)。
B:ろ紙上にベタベタした反応物が得られた(濾過性が悪かった)。
[重量]
各例の導電性高分子分散液の重量を、電子天秤を用いて測定した。測定結果を表1に示す。
[性状]
各例の導電性高分子分散液の性状を目視で確認し、以下の評価基準で評価した。評価結果を表1に示す。
A:液状であった。
B:わずかにゲル化していた。
[表面抵抗値の測定]
各例の導電性フィルム及び帯電防止剥離フィルムについて、導電層の表面抵抗値を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリティック製ハイレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。測定結果を表1に示す。
[剥離力の測定]
各例の帯電防止剥離フィルムの導電層における下記の方法により剥離力を測定して離型性を評価した。
各例の帯電防止剥離フィルムの導電層の表面に幅25mmポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製、No.31B)を載せ、その粘着テープの上に1976Paの荷重を載せて25℃で20時間加圧処理した。次に、JIS Z0237に従い、引張試験機を用いて、上記導電層に貼った上記粘着テープを180゜の角度で剥離(剥離速度0.3m/分)して、剥離力(単位:N)を測定した。測定結果を表1に示す。剥離力が小さい程、導電層の離型性が高いことを意味する。
予備分散液の経過時間が180日未満である比較例2及び3の導電性高分子分散液は、濾過性が悪く、取り扱い性において劣っていた。また、比較例2及び3の導電性フィルム及び帯電防止剥離フィルムは表面抵抗値が大きく、導電性において劣っていた。
Claims (15)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体、並びに水を含む水系分散媒を含む予備分散液を調製する予備分散液調製工程と、
前記予備分散液を180日以上経過させて水分散液を得る経過工程と、を有する導電性高分子分散液の製造方法。 - 前記経過工程が、前記予備分散液を180日以上1095日以下経過させる工程である、請求項1に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記経過工程が、5℃以上40℃未満で行われる、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記水分散液に、エポキシ化合物を添加して前記導電性複合体と反応させ、反応物を分取する反応物分取工程と、
前記反応物に有機溶剤を添加する有機溶剤添加工程と、を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。 - 前記有機溶剤が非水溶性有機溶剤を含む、請求項4に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記有機溶剤の含有量が、導電性高分子分散液の総質量に対して50質量%以上である、請求項4又は5に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記有機溶剤が、メチルエチルケトンを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記有機溶剤が、トルエンを含む、請求項4〜7のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- バインダ成分を添加するバインダ成分添加工程を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記バインダ成分が、シリコーン化合物である、請求項11に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記シリコーン化合物が、付加硬化型シリコーン化合物である、請求項12に記載の導電性高分子分散液の製造方法。
- 前記水分散液を乾燥して前記導電性複合体の乾燥物を得る導電性複合体乾燥工程と、
前記乾燥物にエポキシ化合物、及び有機溶剤を添加するエポキシ化合物添加工程と、を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法。 - フィルム基材の少なくとも一方の面に、請求項1〜14のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法で得られた導電性高分子分散液を塗工する塗工工程と、塗工した前記導電性高分子分散液を乾燥する乾燥工程とを有する、導電性フィルムの製造方法。
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