JP2024070463A - 導電性積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた導電性と、基材に対する高い密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、高い硬度を呈する積層された2層の導電層を備えた導電性積層体及びその製造方法を提供する。【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一部の表面に積層した導電層Aと、前記導電層Aの表面に積層した導電層Bと、を備えた導電性積層体であって、前記導電層Aは、導電性高分子及び有機系バインダーを含み、前記導電層Bは、導電性高分子及び無機系バインダーを含み、前記導電層Bの単独の表面抵抗値が100MΩ/sq.未満である、導電性積層体。【選択図】なし

Description

本発明は、導電性高分子を含む2層の導電層が積層された導電性積層体及びその製造方法に関する。
従来、導電層を形成するための塗料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)にポリスチレンスルホン酸がドープした導電性複合体を含む導電性高分子分散液を使用することがある。例えば特許文献1には、導電性複合体と、アクリルアミド化合物と、分散媒とを含有し、アクリルアミドの重合を開始させるラジカル重合開始剤を含まない導電性高分子分散液が開示されている。この発明によれば、従来は重合させていたアクリルアミド化合物を未重合のまま導電層に含有させることにより、優れた導電性等を発揮することができる。
特開2021-127397号公報
ところで、フィルム等の基材表面に形成された導電層には、優れた導電性だけでなく、基材表面に対する密着性、有機溶剤に対する耐性、高い硬度が求められることがある。しかしながら、従来、これらの特性をバランスよく発揮し得る導電層は実現されていなかった。
本発明は、優れた導電性と、基材に対する高い密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、高い硬度を呈する積層された2層の導電層を備えた導電性積層体及びその製造方法を提供する。
[1] 基材と、前記基材の少なくとも一部の表面に積層した導電層Aと、前記導電層Aの表面に積層した導電層Bと、を備えた導電性積層体であって、前記導電層Aは、導電性高分子及び有機系バインダーを含み、前記導電層Bは、導電性高分子及び無機系バインダーを含み、前記導電層Bの単独の表面抵抗値が100MΩ/sq.未満である、導電性積層体。
[2] 前記導電層A及び前記導電層Bに含まれる前記導電性高分子がπ共役系導電性高分子であり、前記π共役系導電性高分子はスルホン酸基含有ポリマーと導電性複合体を形成している、[1]に記載の導電性積層体。
[3] 前記有機系バインダーがポリエステル樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の導電性積層体。
[4] 前記無機系バインダーがアルコキシシランの縮合物を含む、[1]~[3]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[5] 前記導電層Aにおいて、前記有機系バインダーの含有量が前記導電性複合体の含有量に対して質量基準で1~10倍である、[2]~[4]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[6] 前記導電層Bにおいて、前記無機系バインダーの含有量が前記導電性複合体の含有量に対して質量基準で10~60倍である、[2]~[5]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[7] 前記導電層Aの単独の表面抵抗値Rは、前記導電層Bの単独の表面抵抗値Rよりも低い、[1]~[6]の何れか一項に記載の導電性積層体。
[8] [1]~[7]の何れか一項に記載の導電性積層体の製造方法であって、前記基材の少なくとも一部の表面に、前記導電性高分子、前記有機系バインダー及び分散媒を含む塗料Aを塗布し、塗膜を乾燥して前記導電層Aを形成する工程と、前記導電層Aの表面に、前記導電性高分子、前記無機系バインダー及び分散媒を含む塗料Bを塗布し、塗膜を乾燥して前記導電層Bを形成する工程と、を含み、前記塗料Aは、1気圧における沸点が150℃以上の高沸点溶剤を含み、前記塗料Aの総質量に対する前記高沸点溶剤の含有量が1質量%以上である、導電性積層体の製造方法。
[9] 前記塗料Bは前記分散媒として水を含み、前記塗料Bの総質量に対する水の含有量が30質量%以上であり、前記塗料Bを塗布してなる前記塗膜を加熱することにより、前記塗膜中の前記無機系バインダーを硬化させる、[8]に記載の導電性積層体の製造方法。
[10] 前記塗料A及び前記塗料Bの少なくとも一方が界面活性剤を含む、[8]又は[9]に記載の導電性積層体の製造方法。
本発明の導電性積層体にあっては、優れた導電性と、基材に対する高い密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、高い硬度を呈する積層された2層の導電層を有するので、種々の使用環境における耐久性が優れる。
本発明の導電性積層体の製造方法によれば、上記の特性のバランスに優れた導電性積層体を製造することができる。
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第一態様は導電性積層体の製造方法であり、後述の第二態様の導電性積層体を製造することができる。第一態様は少なくとも次の2つの工程A,Bを有する。
工程Aは、基材の少なくとも一部の表面に、導電性高分子、有機系バインダー及び分散媒を含む塗料Aを塗布し、塗膜を乾燥して導電層Aを形成する工程である。
工程Bは、前記導電層Aの少なくとも一部の表面に、導電性高分子、無機系バインダー及び分散媒を含む塗料Bを塗布し、塗膜を乾燥して前記導電層Bを形成する工程である。
<工程A>
塗料Aが含む導電性高分子は特に制限されず、導電性を高める観点からπ共役系導電性高分子が好ましい。
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
塗料Aに含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
(導電性複合体)
塗料Aにおけるπ共役系導電性高分子の分散性を高める観点から、π共役系導電性高分子にポリアニオンがドープし、導電性複合体を形成していることが好ましい。
導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、その導電性を高める。また、ポリアニオンの一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
塗料A中の導電性複合体は分散状態であってもよく、溶解状態であってもよい。本明細書において、分散状態と溶解状態は特に明記しない限り区別しない。
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。スルホ基を有するポリアニオンはスルホン酸基含有ポリマーと言い換えることができる。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
導電性複合体を構成するポリアニオンは1種でもよいし、2種以上でもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
塗料Aの総質量に対する導電性複合体の含有量としては、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、塗料Aを塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、塗料Aにおける導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
(有機系バインダー)
塗料Aに含まれる有機系バインダーは、前記π共役系導電性高分子及び前記ポリアニオン以外の有機系樹脂(炭素-炭素結合を主体とするポリマー)又はその前駆体であり、熱可塑性樹脂、又は、導電層形成時に硬化する硬化性のモノマー又はオリゴマーである。熱可塑性樹脂はそのままバインダー樹脂となり、硬化性のモノマー又はオリゴマーは硬化により形成した樹脂がバインダー樹脂となる。
塗料Aに含まれる有機系バインダーは1種でもよいし、2種以上でもよい。
バインダー樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
塗料Aが含有するバインダー樹脂としては、水分散性樹脂が好ましく、水分散性エマルション樹脂がより好ましい。水分散性樹脂は、エマルション樹脂又は水溶性樹脂である。
水分散性エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。
塗料Aを基材に塗工した塗膜の基材に対する密着強度が高くなることから、バインダー樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂のエマルションを含むことがより好ましい。特に、ポリエステルフィルム基材に塗工する場合、基材に対する塗膜の密着性がより一層高くなるのでポリエステル樹脂又はそのエマルションを含むことが好ましい。
水溶性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂(アクリル化合物)、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。ここで、水溶性樹脂は、25℃の蒸留水100gに、1g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上溶解するものが挙げられる。水溶性樹脂が有するカルボキシ基、スルホ基等の酸基は、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のカチオンと塩を形成していてもよい。
有機系バインダーは、硬化性のモノマー又はオリゴマーは、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよいし、光硬化性のモノマー又はオリゴマーであってもよい。ここで、オリゴマーは、質量平均分子量が1万未満の重合体のことである。なお、質量平均分子量が1万を超えるポリマーは、硬化性を有さない。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー(アクリル化合物)、エポキシモノマー等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー(アクリル化合物)、エポキシオリゴマー等が挙げられる。
有機系バインダーとしてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。
硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、さらに硬化触媒を含むことが好ましい。例えば、熱硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、加熱によりラジカルを発生させる熱重合開始剤を含むことが好ましく、光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、光照射によりラジカルを発生させる光重合開始剤を含むことが好ましい。
塗料Aにおける有機系バインダーの含有量は、塗料A中の導電性複合体の含有量に対して質量基準で0.1~20倍が好ましく、0.5~15倍がより好ましく、1.0~10倍がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、塗料Aを基材に塗布する際の製膜性と、塗膜の膜強度を向上させ、さらに塗膜の基材表面及び導電層Bに対する密着性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であれば、導電性高分子の含有割合の低下による導電性の低下を抑制することができる。
(分散媒)
塗料Aに含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等の一価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンを含む導電性複合体は水に対する分散性が高いので、本態様の塗料Aの分散媒は水を含有する水系分散媒であることが好ましい。
塗料Aの総質量に対する水の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な含有量であると、基材表面及び導電層Bに対する密着性が優れた導電層を容易に形成することができる。
(高沸点溶剤)
塗料Aは、水の他に、1気圧における沸点が150℃以上250℃以下の範囲内にある高沸点溶剤をさらに含有することが好ましい。高沸点溶剤を含むことにより、導電性の向上、塗膜の乾燥時の収縮抑制等の効果が得られる。
塗料Aが含む高沸点溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
高沸点溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、硫黄原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点197℃)、1,2-プロパンジオール(別名:プロピレングリコール、沸点188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点214℃)、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、1,4-ブタンジオール(沸点228℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃、異性体の混合物)、2-ブチン-1,4-ジオール(沸点238℃)、ジエチレングリコール(沸点245℃)等の多価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188℃)等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルアミルケトン(沸点151℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン(沸点202℃)、N-メチルアセトアミド(沸点206℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、N,N-ジメチルアクリルアミド(沸点171℃)等が挙げられる。
硫黄原子含有溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)等が挙げられる。
塗料Aの総質量に対する高沸点溶剤の含有料は、1質量%以上が好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成される導電層の導電性がより一層向上する。
上記範囲の上限値以下であると、塗膜の乾燥時間が過度に長くならずに済む。
(界面活性剤)
塗料Aは1種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、基材表面に対する濡れ性が高まり、均一な厚さの導電層を形成することができる。その結果、導電性及び基材表面に対する密着性が優れた導電層を容易に形成することができる。
界面活性剤はアセチレン系界面活性剤であることが好ましい。アセチレン系界面活性剤は分子内に炭素原子同士の三重結合を少なくとも1つ有する、非イオン性の化合物である。好適なアセチレン系界面活性剤としては、例えば、ダイノール604、ダイノール607、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104PA、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールSE、サーフィノールSE-F、サーフィノールPSA-336、サーフィノール2502等の日信化学工業株式会社製の濡れ剤が挙げられる。
アセチレン系界面活性剤が分子内に有する炭素数は、11~100が好ましく、12~70がより好ましく、13~50がさらに好ましく、14~40が最も好ましい。これらの好適な範囲の炭素数であると濡れ性がより一層向上する。
アセチレン系界面活性剤は、分子内に水酸基又はエーテル結合を構成する酸素原子を有することが好ましい。酸素原子を有すると濡れ性がより一層向上する。
塗料Aの総質量に対する、界面活性剤の含有量は、0.0001質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な含有量であると、基材表面に対する濡れ性がより高まり、均一な厚さの導電層を形成することができる。その結果、導電性及び基材表面に対する密着性がより優れた導電層をより容易に形成することができる。
(アルコキシシラン)
塗料Aには1種以上のアルコキシシランが含まれていてもよい。ここで、アルコキシシランとは、ケイ素原子に酸素原子を介在させて結合したアルキル基(アルコキシ基)を1~4つ有する化合物である。前記アルキル基の炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。前記アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
前記ケイ素原子には、前記アルコキシ基の他に、1~3つのアルキル基が直接に結合していてもよい。前記ケイ素原子に直接結合するアルキル基の炭素数は1~6が好ましく、1~3がより好ましい。前記アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランが挙げられる。
前記テトラアルコキシシランの各アルコキシ基を構成するアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。前記アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
前記トリアルコキシシランの各アルコキシ基を構成するアルキル基の炭素数はそれぞれ独立に、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。前記アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
前記トリアルコキシシランのケイ素原子には、アルコキシ基以外に水素原子又はアルキル基が結合していることが好ましい。ケイ素原子に直接結合するアルキル基の炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。前記アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が挙げられる。
トリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
塗料Aにアルコキシシランを含む場合、塗料A中のアルコキシシランの含有量は、塗料A中の有機系バインダーの含有量に対して質量基準で、0.01~0.7倍が好ましく、0.05~0.5倍がより好ましく、0.1~0.3倍がさらに好ましい。
上記の好適な範囲であると、有機系バインダーの特性を損なわずに、アルコキシシランを添加したことによる導電層の機械強度を高めることができる。
(その他の添加剤)
塗料Aには、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、高沸点溶剤、アセチレン系界面活性剤、及び分散媒以外のものである。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、没食子酸若しくはそのエステル等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
塗料Aが前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上50質量部以下の範囲とすることができる。
[基材]
導電性積層体を構成する基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂は有機系バインダーと同種の樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂が好ましい。
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、導電層の接着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
[塗布]
塗料Aを基材の任意の表面に塗布(塗工)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
塗料Aの基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、1.0g/m以上100.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
また、乾燥後に形成される導電層Aの厚さが0.1~2μmとなる膜厚で塗布することが好ましい。この場合、塗膜の厚さは例えば0.3~4μmとすることが好ましい。
基材上に塗工した塗料Aからなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去し、硬化させることにより、導電層Aを形成することができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
乾燥後、必要に応じて、有機系バインダーを硬化させるためにUV等の活性エネルギー線を照射する処理を行ってもよい。
<工程B>
塗料Bが含む導電性高分子は特に制限されず、導電性を高める観点からπ共役系導電性高分子が好ましい。π共役系導電性高分子の例示は塗料Aで例示したものと同じものが挙げられる。塗料Bが含む導電性高分子は、塗料Aが含む導電性高分子と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塗料Bにおけるπ共役系導電性高分子の分散性を高める観点から、π共役系導電性高分子にポリアニオンがドープし、導電性複合体を形成していることが好ましい。塗料Bにおけるポリアニオン及び導電性複合体の説明は塗料Aにおけるポリアニオン及び導電性複合体の説明と同じであるので、ここで重複する説明は省略する。
塗料Bの総質量に対する導電性複合体の含有量としては、0.01質量%以上2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、塗料Bを塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、塗料Bにおける導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
(無機系バインダー)
塗料Bに含まれる無機系バインダーは、ケイ素-酸素-ケイ素結合若しくはケイ素-ケイ素結合を主体とする無機系化合物(無機系ポリマー)又はその前駆体である。
無機系バインダーとしては、アルコキシシランやシリケートが好ましい。アルコキシシランの例示は塗料Aで例示したものが挙げられる。塗料Bが含むアルコキシシランは、塗料Aが含むアルコキシシランと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
アルコキシシランは、分子内にケイ素原子を1つ有し、そのケイ素原子にアルコキシ基が1つ以上結合した化合物であればよい。
アルコキシシランは、容易に加水分解することから、メトキシ基またはエトキシ基を有することが好ましい。
塗料Bに含まれるアルコキシシランは、アルコキシ基以外の官能基として、例えば、エポキシ基、アリル基、ビニル基、グリシジル基等を有していてもよい。
具体的な好ましいアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アルコキシ基以外の官能基の反応を促進するために、塩酸等の触媒を適量添加してもよい。
シリケートは、1分子内にケイ素原子を2つ以上有し、そのうちの少なくとも1組のケイ素原子同士が1つの酸素原子を介してエーテル結合した化合物である。シリケートが1分子内に有するケイ素原子の数は、塗料Bから形成される導電層の硬度がより高くなることから、4つ以上であることが好ましく、6つ以上であることがより好ましく、8つ以上であることがさらに好ましい。また、塗料Bにおけるシリケートの溶解性を高める観点から、シリケートが1分子内に有するケイ素原子の数は、40個以下が好ましく、30個以下がより好ましい。
シリケートのSiO単位の含有量は、シリケートの総質量に対して15質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上50質量%以下がより好ましい。シリケートのSiO単位の含有量が前記下限値以上であれば、塗料Bから形成される導電層の硬度がより高くなり、前記上限値以下であれば、前記導電層の導電性低下を防ぐことができる。
ここで、シリケートのSiO単位の含有量は、シリケートの分子量100質量%に対する、シリケートに含まれるSiO単位(-O-Si-O-単位)の質量の割合のことであり、元素分析により測定できる。
シリケートは、下記化学式(X)で表される化合物が好ましい。
(X)… RO-[(RO-)(RO-)Si-O-]-R
式(X)中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、sは、2~100の整数である。
炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
sは2~50が好ましく、3~25がより好ましく、4~10がさらに好ましい。
シリケートは、下記化学式(x1)で示される化合物及び下記化学式(x2)で示される化合物の少なくとも一方であることがより好ましい。
(x1)… Sim-1(OCH2m+2
(x2)… Sin-1(OCHCH2n+2
上記式(x1)(x2)中、mは2以上100以下であり、nは2以上100以下である。
上記式(x1)(x2)中、SiとOが結合し、Si同士、O同士は隣接しない。
塗料B中の無機系バインダーの含有量は、塗料B中の導電性複合体の含有量に対して質量基準で2~100倍が好ましく、10~80倍がより好ましく、15~60倍がさらに好ましい。ここで、無機系バインダーの含有量はSiO換算固形分濃度又は縮合反応物換算固形分濃度である。
上記範囲の下限値以上であると、塗膜の膜強度を向上させ、さらに導電層Bの硬度及び耐溶剤性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であれば、塗料Bを導電層Aの表面に塗布する際の製膜性と、導電性高分子の含有割合の低下による導電性の低下を抑制することができる。
塗料Bには、導電層Bの硬度及び耐溶剤性を高める観点から、添加剤としてシリカが含まれてもよい。シリカとしては、分散性の点からコロイダルシリカ(シリカゾル)が好ましい。塗料Bの総質量に対するシリカの含有量は、1~10質量%が好ましい。
塗料Bにシリカが含まれる場合、アルミニウムアセチルアセトナートを合わせて含有することが好ましい。塗料Bの総質量に対するアルミニウムアセトナートの含有量は、0.1~1.0質量%が好ましい。アルミニウムアセチルアセトナートを含むことにより、導電層Bの硬度及び耐溶剤性をより高めることができる。
(分散媒)
塗料Bに含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。具体的な分散媒は塗料Aで例示したものが挙げられる。塗料Bが含む分散媒は、塗料Aが含む分散媒と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塗料Bが分散媒として水を含む場合、塗料Bの総質量に対する水の含有量は30質量%以上が好ましく、35~60質量%がより好ましく、40~50質量%がさらに好ましい。
塗料Bが好適な量の水を含むことにより、塗料Bを塗布してなる塗膜を加熱することにより、塗膜中の無機系バインダー同士を反応させ、硬化させることができる。
塗料Bが水を含む場合、塗布性及び製膜性を高める観点から、分散媒として1価アルコール系溶剤(高沸点溶剤を除く)を含むことが好ましい。塗料Bの総質量に対する1価アルコール系溶剤の含有量は10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
(高沸点溶剤)
塗料Bは、1気圧における沸点が150℃以上250℃以下の範囲内にある高沸点溶剤をさらに含有することが好ましい。高沸点溶剤を含むことにより、導電性の向上、塗膜の乾燥時の収縮抑制等の効果が得られる。
具体的な高沸点溶剤は塗料Aで例示したものが挙げられる。塗料Bが含む高沸点溶剤は、塗料Aが含む高沸点溶剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塗料Bが含む高沸点溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
塗料Bの総質量に対する高沸点溶剤の含有料は、1質量%以上が好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~10質量%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、形成される導電層の導電性がより一層向上する。
上記範囲の上限値以下であると、塗膜の乾燥時間が過度に長くならずに済む。
(界面活性剤)
塗料Bは1種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、導電層Aに対する濡れ性が高まり、均一な厚さの導電層Bを形成することができる。その結果、導電性、硬度及び耐溶剤性が優れた導電層Bを容易に形成することができる。
具体的な界面活性剤は塗料Aで例示したものが挙げられる。塗料Bが含む界面活性剤は、塗料Aが含む界面活性剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塗料Bが含む界面活性剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
塗料Bの総質量に対する、界面活性剤の含有量は、0.0001質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下がさらに好ましい。
上記の好適な含有量であると、基材表面に対する濡れ性がより高まり、均一な厚さの導電層を形成することができる。その結果、導電性及び基材表面に対する密着性がより優れた導電層をより容易に形成することができる。
(その他の添加剤)
塗料Bには、その他の添加剤が含まれてもよい。
具体的な添加剤は塗料Aで例示したものが挙げられる。塗料Bが含む添加剤は、塗料Aが含む添加剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
塗料Bが含む添加剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
塗料Bが前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上50質量部以下の範囲とすることができる。
[塗布]
塗料Bを導電層Aの表面に塗布(塗工)する方法は特に制限されず、塗料Aの塗布方法として例示した方法が挙げられる。
塗料Bの基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、1.0g/m以上100.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
また、乾燥後に形成される導電層Bの厚さが0.1~2μmとなる膜厚で塗布することが好ましい。この場合、塗膜の厚さは例えば0.3~4μmとすることが好ましい。
導電層Aの表面に塗工した塗料Bからなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去し、硬化させることにより、導電層Bを形成することができる。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
<塗料A,塗料Bの製造方法>
本態様の塗料A,塗料Bを製造する方法として、従来の導電性高分子分散液の製造方法を適用することができ、各材料を混合できる方法であれば特に制限されない。
導電性複合体の水分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
≪導電性積層体≫
本発明の第一態様は、基材と、前記基材の少なくとも一部の表面に積層した導電層Aと、導電層Aの表面に積層した導電層Bと、を備えた導電性積層体である。
本態様の導電層Aは、導電性高分子及び有機系バインダーを含み、前述の塗料Aの硬化物であり得る。
本態様の導電層Bは、導電性高分子及び無機系バインダーを含み、前述の塗料Bの硬化物であり得る。
本態様の導電層Bの単独の表面抵抗値は100MΩ/sq.未満であることが好ましい。
[導電層A]
導電層Aの形成範囲は、基材が有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよい。基材が有する面の一部のみに導電層Aが形成されている場合、例えば、当該導電層Aは回路や電極などの微細な導電パターンであってもよいし、導電層Aが設けられた領域と設けられていない領域とが同じ面に存在して大まかに区分けされただけであってもよい。
導電層Aの平均厚みとしては、例えば、10nm以上10μm以下が好ましく、20nm以上5μm以下がより好ましく、30nm以上3μm以下がさらに好ましい。
導電層Aの平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層Aの基材に対する密着性がより向上する。
導電層Aの平均厚みは、無作為に選択される10箇所についてその断面の厚さを測定し、その測定値を平均した値である。導電層Aの断面の観察は、電子顕微鏡等の公知の拡大観察手段によってなされる。
(表面抵抗値)
導電層Aの単独の表面抵抗値Rは、例えば100~10,000Ω/sq.とすることができる。このうち、100~6,000Ω/sq.が好ましく、100~4,000Ω/sq.がより好ましく、100~2,000Ω/sq.がさらに好ましい。
導電層Aの単独の表面抵抗値Rが上記の好適な範囲であると、導電層Bを積層した後の導電性積層体全体としての表面抵抗値を充分に低減し、優れた導電性を発揮することができる。
ここで、導電層Aの単独の表面抵抗値Rは、基材表面に導電層Aのみを形成した時点の測定値である。表面抵抗値は市販の抵抗率計を用いて測定することができる。
[基材]
本態様の導電性積層体を構成する基材の説明は、前述の工程Aの基材の説明と同様であるので、ここで重複する説明は省略する。
[導電層B]
導電層Bの形成範囲は、導電層Aが有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよいが、耐溶剤性を充分に発揮する観点から、導電層Aの表面の全体であることが好ましい。
導電層Bの平均厚みとしては、例えば、10nm以上10μm以下が好ましく、20nm以上5μm以下がより好ましく、30nm以上3μm以下がさらに好ましい。
導電層Bの平均厚さが前記下限値以上であれば、導電性、機械的強度、及び耐溶剤性を充分に発揮できる。前記上限値以下であれば、導電層Bの導電層Aに対する密着性がより向上する。
導電層Bの平均厚みは、無作為に選択される10箇所についてその断面の厚さを測定し、その測定値を平均した値である。導電層Bの断面の観察は、電子顕微鏡等の公知の拡大観察手段によってなされる。
(表面抵抗値)
導電層Bの単独の表面抵抗値Rは、100MΩ/sq.未満(100×10Ω/sq.未満)が好ましく、40MΩ/sq.未満がより好ましく、20MΩ/sq.未満がさらに好ましく、1MΩ/sq.未満が最も好ましい。
導電層Bの単独の表面抵抗値Rが上記の好適な範囲であると、導電性積層体全体としての表面抵抗値を充分に低減し、優れた導電性を発揮することができる。
ここで、導電層Bの単独の表面抵抗値Rは、基材表面に導電層Bのみを形成し、これを測定した値である。表面抵抗値は市販の抵抗率計を用いて測定することができる。
本態様の導電層A及び導電層Bに含まれる導電性高分子はπ共役系導電性高分子であることが好ましく、そのπ共役系導電性高分子はスルホン酸基含有ポリマーと導電性複合体を形成していることが好ましい。この構成であると、導電層A,Bを積層したことによる導電性積層体全体としての導電性と、基材に対する密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、硬度とが高い水準でバランスよく発揮され易い。
導電層Aを構成する有機系バインダーはポリエステル樹脂を含むことが好ましい。この構成であると、導電層Aの導電層B及び基材表面に対する密着性が優れ、導電性積層体全体としての導電性と、基材に対する密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、硬度とが高い水準でバランスよく発揮され易い。
導電層Bを構成する無機系バインダーはアルコキシシランの縮合物を含むことが好ましい。この構成であると、導電層Bの硬度及び耐溶剤性が高まるだけでなく、導電層Aに対する密着性が優れ、導電性積層体全体としての導電性と、基材に対する密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、硬度とが高い水準でバランスよく発揮され易い。
導電層Aにおいて、有機系バインダーの含有量が導電性複合体の含有量に対して質量基準で0.1~20倍が好ましく、0.5~15倍がより好ましく、1.0~10倍がさらに好ましい。この構成であると、導電層Aの導電層B及び基材表面に対する密着性が優れ、導電性積層体全体としての導電性と、基材に対する密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、硬度とが高い水準でさらにバランスよく発揮され易い。
導電層Bにおいて、無機系バインダーの含有量が導電性複合体の含有量に対して質量基準で2~100倍が好ましく、10~80倍がより好ましく、15~60倍がさらに好ましい。この構成であると、導電層Bの硬度及び耐溶剤性が高まるだけでなく、導電層Aに対する密着性が優れ、導電性積層体全体としての導電性と、基材に対する密着性と、外部から接触し得る有機溶剤に対する耐性と、硬度とが高い水準でさらにバランスよく発揮され易い。
[導電性積層体と各層の表面抵抗値]
本態様の導電性積層体において、導電層Aの単独の表面抵抗値Rは、導電層Bの単独の表面抵抗値Rよりも低いことが好ましい。この関係であると、導電性積層体全体としての表面抵抗値を充分に低減し、より優れた導電性を発揮することができる。
また、本態様の導電性積層体全体の表面抵抗値Rと、導電層Aの単独の表面抵抗値Rとの(R/R)で表される比は、1.0~2.0が好ましく、1.0~1.2がより好ましく、1.0~1.1がさらに好ましい。この構成であると、導電性積層体全体としての表面抵抗値Rcは導電層Aの単独の表面抵抗値Rの低さを充分に反映し、導電性積層体全体としての導電性がより一層高まる。
ここで、導電性積層体全体としての表面抵抗値Rは、導電性積層体の導電層Bの表面に測定端子を接触させて測定した値である。表面抵抗値は市販の抵抗率計を用いて測定することができる。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたポリスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、得られたポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000mlの溶液を限外ろ過法により除去した。次いで、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去して、ポリスチレンスルホン酸を水洗した。この水洗操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸(PSS)を得た。
(製造例2)PEDOT-PSS水分散液の製造
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液を20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
次に、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、固形分濃度1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT-PSS水分散液)を得た。
(導電性塗料の調製)
導電層Aを形成する導電性塗料A1~A5およびAC1は、下記の方法で調製した。
[導電性塗料A1]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液40gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製、ペスレジンA645GH、固形分濃度30質量%)10g、沸点197℃のエチレングリコール5g、純水30gとメタノール15gを加え、24℃で1時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gと表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、ダイノール604)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料A1を得た。
導電性塗料A1のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して6.3重量倍である。
[導電性塗料A2]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液20gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製、ペスレジンA645GH、固形分濃度30質量%)10g、ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製、クラレポバールPVA-217、固形分濃度10質量%)5g、沸点197℃のエチレングリコール5g、純水40gとメタノール25gを加え、24℃で1時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gと表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料A2を得た。導電性塗料A2のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して8.3重量倍である。
[導電性塗料A3]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液15gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(互応化学工業社製、RZ-105、固形分濃度25質量%)6g、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)1g、沸点171℃のN,N-ジメチルアクリルアミド5g、純水23gとエタノール50gを加え、24℃で3時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gと表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、ダイノール604)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料A3を得た。導電性塗料A3のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して9.9重量倍である。
[導電性塗料A4]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液55gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製、ペスレジンA125S、固形分濃度30質量%)10g、沸点238℃の2-ブチン-1,4-ジオール2g、純水18gとメタノール15gを加え、24℃で1時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gと表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工)業社製、ダイノール604)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料A4を得た。導電性塗料A4のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して4.5重量倍である。
[導電性塗料A5]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(互応化学工業社製、RZ-570、固形分濃度25質量%)3g、沸点188℃のプロピレングリコール7g、純水40gとメタノール25gを加え、24℃で1時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料A5を得た。導電性塗料A5のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して3.0重量倍である。
[導電性塗料AC1]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液25gに、沸点197℃のエチレングリコール5g、純水43gとメタノール20gを加え、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)7gをゆっくり添加し、24℃で5時間撹拌混合した。その後、安定剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業社製)0.05gと、表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料AC1を得た。導電性塗料AC1のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して6.8重量倍である。
同様に、導電層Bを形成する導電性塗料B1~B3およびBC1~BC2を下記の方法で調整した。
[導電性塗料B1]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液10gに、沸点188℃のプロピレングリコール5g、純水35gとメタノール43gを加え、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)7gをゆっくり添加し、24℃で3時間撹拌混合した。その後、安定剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業社製)0.05gと、表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料B1を得た。導電性塗料B1のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して16.9重量倍である。
[導電性塗料B2]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液10gに、沸点171℃のN,N-ジメチルアクリルアミド5g、純水35gとメタノール43gを加え、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)6gとメチルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE-13、縮合反応物換算固形分濃度38質量%)1gをゆっくり添加し、24℃で3時間撹拌混合した。その後、安定剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業社製)0.05gと、表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料B2を得た。導電性塗料B2のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して18.4重量倍である。
[導電性塗料B3]
沸点188℃のプロピレングリコール5gとメタノール20gを混合し、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)4.2gと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBM-403、縮合反応物換算固形分濃度71質量%)8gを加え、触媒として0.05N塩酸4gを加えて、24℃で16時間撹拌混合した。その後、シリカゾル(日産化学社製スノーテックスST-O-40、固形分濃度40質量%)15gをゆっくり添加し、純水23.5gとアルミニウムアセチルアセトナート0.3gと製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液20gを加え、24℃で30分撹拌混合して、導電性塗料B3を得た。導電性塗料B3のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して53.7重量倍である。
[導電性塗料BC1]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液5gに、純水34gとメタノール50gを加え、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)10gとメチルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE-13、縮合反応物換算固形分濃度38質量%)2gをゆっくり添加し、24℃で5時間撹拌混合した。その後、安定剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業社製)0.05gと、表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料BC1を得た。導電性塗料BC1のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して76.3重量倍である。
[導電性塗料BC2]
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液10gに、有機系バインダー成分として水分散ポリエステル樹脂(高松油脂株式会社製、ペスレジンA645GH、固形分濃度30質量%)10g、沸点197℃のエチレングリコール5g、純水40gとメタノール35gを加え、24℃で1時間撹拌混合した。その後、安定剤として没食子酸0.1gと表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、ダイノール604)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性塗料BC2を得た。導電性塗料BC2のバインダーの含量は導電性複合体(PEDOT-PSS)の含量に対して25.0重量倍である。
[導電性高分子不含有塗料C1]
純水39gにメタノール50gを加え、無機系バインダー成分としてテトラエトキシシラン(信越化学社製KBE-04、SiO換算固形分濃度29質量%)10gとメチルトリエトキシシラン(信越化学社製KBE-13、縮合反応物換算固形分濃度38質量%)2gをゆっくり添加し、24℃で5時間撹拌混合した。その後、安定剤としてビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド(東京化成工業社製)0.05gと、表面調整剤としてアセチレン系界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール420)0.01gを加え、さらに1時間撹拌混合して、導電性高分子を含有しない塗料C1を得た。
(基材)として次の材料を用いた。
PET:ポリエチレンテレフタラートフィルム(東レ社製、ルミラーT60)
PC:ポリカーボネートフィルム(帝人社製、パンライトPC-1151)
PMMA:アクリル樹脂板(三菱ケミカル社製、アクリライト)
(実施例1)
PET基材にバーコーター(wet膜厚16μm)を用いて導電性塗料A1を塗布し、乾燥温度100℃で5分間加熱乾燥して、導電層A1を形成した。この膜の上に、同じくバーコーター(wet膜厚16μm)を用いて導電性塗料B1を塗布し、乾燥温度100℃で15分間加熱乾燥して、導電層A1の上に導電層B1が積層した導電性積層体を作成した。得られた導電性積層体を以下の方法で評価した。評価結果を表1にまとめた。また、比較のために同様の方法で基材上にそれぞれ単独で導電層A1および導電層B1を形成し、表面抵抗値を評価した。
[表面抵抗値]
表面抵抗値は抵抗率計((株)日東精工アナリテック製ロレスタ-GX、または(株)日東精工アナリテック製ハイレスタ-UX)を用い、印加電圧10Vの条件で測定した。実施例1の導電性積層体の表面抵抗値(R)は650Ω/sq.であった。また、導電層A1のみの表面抵抗値(R)は600Ω/sq.であり、導電層B1のみの表面抵抗値(R)は30kΩ/ sq.であった。表面抵抗値の比(R/R)は1.08であった。
[塗膜の密着性]
導電性積層体の塗膜の密着性は、JIS K5600-5-6:1999(クロスカット法)で規定された試験方法に則って評価した。導電性積層体の導電層Bの表面から下層の導電層Aまで、専用冶具を用いて格子状に切り込みを入れ、25mm幅の透明感圧付着テープを用いて密着性を評価した。評価基準を下に示す。実施例1の導電性積層体の密着性評価結果はAであった。
評価A:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
評価B:クロスカット部分で、はがれがある格子の割合が5%未満。
評価C:クロスカット部分で、はがれがある格子の割合が5%以上、35%未満。
評価D:クロスカット部分で、はがれがある格子の割合が35%以上。
[耐溶剤]
導電性積層体の表面に露出する導電層Bの耐溶剤性は、以下に示す方法で評価した。
導電層Bの表面に、軽量ピペットを用いて200μLのアセトンを滴下し、1分間放置後に不織布で拭き取り、試験部分の外観を目視で観察して評価した。評価基準を下に示す。実施例1の耐溶剤性評価結果はAであった。
評価A:試験部分の外観変化なし。
評価B:試験部分に白濁が見られる。
評価C:試験部分に塗膜のはがれが見られる。
(実施例2~6、比較例1~4)
基材と導電性塗料を変えた以外は、実施例1と同様の方法で導電性積層体を作成して評価した。使用した塗料と、評価結果を表1にまとめた。
なお、表中の文字を見やすくするために、「RA」を「RA」、「RB」を「RB」、「RC」を「RC」と表記した。
Figure 2024070463000001
本発明に係る実施例1~6の導電性積層体全体の表面抵抗値は、単独の表面抵抗値が高い導電層Bが存在するにも関わらず、単独の導電層Aと同等の表面抵抗値であり、さらに基材に対して強い密着性と、高い耐溶剤性を示した。また、導電層Bに含まれるアルコキシシランの縮合物の影響により、導電層Bの硬度も高かった。
一方、導電層Bが導電性ポリマーを含有していない比較例1の導電性積層体の表面抵抗値は高い。また、高沸点溶剤を含まない塗料BC1によって形成した比較例2の導電層Bは、導電性複合体の含有量が他の実施例と比べて少なく、バインダーの含量が相対的に多いため、比較例2の導電性積層体の表面抵抗値は高い。比較例2の結果は特に意味深い。導電層Aの単独の表面抵抗値が低くても、導電層Bの単独の表面抵抗値が100MΩ/sq.以上であると、導電性積層体全体の表面抵抗値を充分に下げることはできないことが理解される。
また、導電層Aが有機系バインダーを含まない比較例3は基材との密着性が低く、導電層Bが無機系バインダーを含まない比較例4は耐溶剤性が弱かった。

Claims (10)

  1. 基材と、前記基材の少なくとも一部の表面に積層した導電層Aと、
    前記導電層Aの表面に積層した導電層Bと、を備えた導電性積層体であって、
    前記導電層Aは、導電性高分子及び有機系バインダーを含み、
    前記導電層Bは、導電性高分子及び無機系バインダーを含み、
    前記導電層Bの単独の表面抵抗値が100MΩ/sq.未満である、導電性積層体。
  2. 前記導電層A及び前記導電層Bに含まれる前記導電性高分子がπ共役系導電性高分子であり、前記π共役系導電性高分子はスルホン酸基含有ポリマーと導電性複合体を形成している、請求項1に記載の導電性積層体。
  3. 前記有機系バインダーがポリエステル樹脂を含む、請求項2に記載の導電性積層体。
  4. 前記無機系バインダーがアルコキシシランの縮合物を含む、請求項3に記載の導電性積層体。
  5. 前記導電層Aにおいて、前記有機系バインダーの含有量が前記導電性複合体の含有量に対して質量基準で1~10倍である、請求項4に記載の導電性積層体。
  6. 前記導電層Bにおいて、前記無機系バインダーの含有量が前記導電性複合体の含有量に対して質量基準で10~60倍である、請求項5に記載の導電性積層体。
  7. 前記導電層Aの単独の表面抵抗値Rは、前記導電層Bの単独の表面抵抗値Rよりも低い、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性積層体。
  8. 請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性積層体の製造方法であって、
    前記基材の少なくとも一部の表面に、前記導電性高分子、前記有機系バインダー及び分散媒を含む塗料Aを塗布し、塗膜を乾燥して前記導電層Aを形成する工程と、
    前記導電層Aの表面に、前記導電性高分子、前記無機系バインダー及び分散媒を含む塗料Bを塗布し、塗膜を乾燥して前記導電層Bを形成する工程と、
    を含み、
    前記塗料Aは、1気圧における沸点が150℃以上の高沸点溶剤を含み、
    前記塗料Aの総質量に対する前記高沸点溶剤の含有量が1質量%以上である、
    導電性積層体の製造方法。
  9. 前記塗料Bは前記分散媒として水を含み、前記塗料Bの総質量に対する水の含有量が30質量%以上であり、
    前記塗料Bを塗布してなる前記塗膜を加熱することにより、前記塗膜中の前記無機系バインダーを硬化させる、請求項8に記載の導電性積層体の製造方法。
  10. 前記塗料A及び前記塗料Bの少なくとも一方が界面活性剤を含む、請求項9に記載の導電性積層体の製造方法。
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