JP7083715B2 - 導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、前記導電性フィルムの導電層においては、大気中にて導電性が経時的に低下することがあった。
そこで、大気中での導電性の経時的低下を防ぐ方法として、導電層に酸化防止剤を含有させる方法が提案されている(特許文献1)。
さらに、導電性フィルムの導電層には、耐熱性に優れることが要求される。
本発明は、導電層を形成した際に耐久性(大気中での導電性の経時的低下を防ぎ、且つ耐熱性を有すること)に優れ、且つ導電性が高い導電層が得られる導電性高分子分散液を提供することを目的とする。
本発明は、上記効果を有する導電性高分子分散液を容易に製造できる導電性高分子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、耐久性に優れ、導電性が高い導電性フィルムが得られる導電性フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、下記式(1)で表される多価ヒドロキシ化合物と、を含有する、導電性高分子分散液。
[2] 前記多価ヒドロキシ化合物が、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチル)スルフィド、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-オルトクレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-メタクレゾール)、5,5’-チオジサリチル酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
[5] バインダ成分をさらに含有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記バインダ成分が、熱可塑性樹脂、硬化性のモノマー、硬化性のオリゴマー、及びシリカからなる群から選択される少なくとも1種である、[5]に記載の導電性高分子分散液。
[7] 前記バインダ成分が、アルコキシシランである、[5]又は[6]に記載の導電性高分子分散液。
[8] 基材の少なくとも一方の面に、[1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工すること、を含む、導電性フィルムの製造方法。
[9] [1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法であって、
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に下記式(1)で表される多価ヒドロキシ化合物を添加することを有する、導電性高分子分散液の製造方法。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、上記効果を有する導電性高分子分散液を容易に製造できる。
本発明の導電性フィルムの製造方法によれば、耐久性に優れ、導電性が高い導電性フィルムを製造できる。
本発明の一態様における導電性高分子分散液は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、多価ヒドロキシ化合物とを含有する。
前記導電性高分子分散液は、必要に応じて、バインダ成分、その他の添加剤を含有してもよい。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
上記π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性の点から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
前記π共役系導電性高分子は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボン酸基を有する高分子が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、帯電防止性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。
本明細書における質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定し、標準物質をポリスチレンとして求めた値である。
ただし、本態様におけるポリアニオンにおいては、全てのアニオン基がπ共役系導電性高分子にドープすることはなく、ドープに寄与しない余剰のアニオン基を有するようになっている。
ポリアニオン中の全てのアニオン基中、余剰のアニオン基は、ポリアニオン中の全てのアニオン基に対し、30~90モル%であることが好ましく、45~75モル%であることがより好ましい。
炭素数1~4のアルキレン基としては、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。直鎖のアルキレン基としては、メチレン基(-CH2-)、1,2-エチレン基(-CH2CH2-)、1,3-プロピレン基(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチレン基(-CH2CH2CH2CH2-)が挙げられる。分岐鎖のアルキレン基としては、1,1-エチレン基、2,2-プロピレン基等が挙げられる。
炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
多価ヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチル)スルフィド、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-オルトクレゾール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-メタクレゾール)、5,5’-チオジサリチル酸、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、及び4,4’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これら有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
導電性複合体の分散性を高める観点から、導電性高分子分散液の総質量に対する水の含有割合は、20~70質量%が好ましい。
前記バインダ成分は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ成分由来のバインダ樹脂の具体例としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン等が挙げられる。
エマルション樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂等であって、乳化剤によってエマルションにされたものが挙げられる。
また、水溶性樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂であって、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有するものが挙げられる。本明細書において、水溶性とは、25℃の蒸留水に、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上溶解することである。
硬化性のモノマーとしては、例えば、アクリルモノマー、エポキシモノマー、オルガノシロキサン、アルコキシシラン、シリケート等が挙げられる。硬化性のオリゴマーとしては、例えば、アクリルオリゴマー、エポキシオリゴマー、シリコーンオリゴマー(硬化型シリコーン)等が挙げられる。
バインダ成分としてアクリルモノマー又はアクリルオリゴマーを用いた場合には、加熱又は光照射により容易に硬化させることができる。バインダ成分としてオルガノシロキサン又はシリコーンオリゴマーを用いた場合には、導電層に離型性を付与することができる。さらに、バインダ成分としてアルコキシシランを用いた場合には、加熱することにより容易に硬化し、導電層に硬度を付与することができる。
また、本態様におけるシリケートのSiO2単位の含有量はシリケートの総質量に対して40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。シリケートのSiO2単位の含有量が前記下限値以上であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の硬度がより高くなり、前記上限値以下であれば、前記導電性高分子分散液から形成される導電層の導電性低下を防ぐことができる。
ここで、シリケートのSiO2単位の含有量は、シリケートの分子量100質量%に対する、シリケートに含まれるSiO2単位(-O-Si-O-単位)の質量の割合のことであり、元素分析により測定できる。シリケートを2種以上使用する場合のSiO2単位の含有量は各シリケートのSiO2単位含有量の平均値である。
炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
sは2~50が好ましく、2~25がより好ましく、4~10がさらに好ましい。
SinOn-1(OCH3)2n+2 (nは2以上100以下である。) (I)
SimOm-1(OCH2CH3)2m+2 (mは2以上100以下である。)(II)
シリケートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。ただし、添加剤は、前記ポリアニオン、前記多価ヒドロキシ化合物及び前記バインダ成分以外の化合物からなる。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。ただし、本態様の導電性高分子分散液では、前記多価ヒドロキシ化合物によって導電層の大気中での経時的な導電性低下を抑制できるので、前記酸化防止剤を含まなくてもよい。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液は、例えば、下記(a)~(c)のいずれかの方法で製造できる。
(a)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に前記多価ヒドロキシ化合物を添加すること(以下、「多価ヒドロキシ化合物添加工程」ともいう。)を有する方法。
(b)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液を乾燥させて乾燥体を得ること(以下、「乾燥工程」ともいう。)と、前記乾燥体にアミン化合物及び有機溶剤を添加して導電性混合液を調製すること(以下、「導電性混合液調製工程」ともいう。)と、前記導電性混合液に前記多価ヒドロキシ化合物を添加すること(以下、「多価ヒドロキシ化合物添加工程」ともいう。)とを有する方法。
(c)π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液にエポキシ化合物を添加して導電性複合体を析出させて析出物を形成させること(以下、「析出工程」ともいう。)と、前記析出物を回収すること(以下、「回収工程」ともいう。)と、回収した析出物に有機溶剤を添加して導電性混合液を調製すること(以下、「導電性混合液調製工程」ともいう。)と、前記導電性混合液に前記多価ヒドロキシ化合物を添加すること(以下、「多価ヒドロキシ化合物添加工程」ともいう。)とを有する方法。
(b)において、乾燥体に添加したアミン化合物は、ポリアニオンのアニオン基、特にドープに関与しない余剰のアニオン基に配位又は結合して、導電性複合体を疎水化することができる。疎水化された導電性複合体は有機溶剤に対する分散性が高くなる。
乾燥体に、アミン化合物及び有機溶剤を添加した後には、高圧ホモジナイザー等を用いて、高い剪断力を付与しながら攪拌することが好ましい。
アミン化合物としては、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。また、アミン化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物は、炭素数2以上12以下の直鎖、もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、炭素数7以上12以下のアラルキル基、炭素数2以上12以下のアルキレン基、炭素数6以上12以下のアリーレン基、炭素数7以上12以下のアラルキレン基、及び炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基から選択される置換基を有していてもよい。
具体的な1級アミンとしては、例えば、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
具体的な2級アミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な3級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、トリナフチルアミン等が挙げられる。
具体的な4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、テトラナフチルアンモニウム塩等が挙げられる。アンモニウムの対となる陰イオンとしてはヒドロキシドイオンが挙げられる。
これらアミン化合物のうち、導電性複合体の有機溶剤に対する分散性がより高くなることから、3級アミンが好ましく、トリブチルアミン、トリオクチルアミンがより好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、C12,C13混合高級アルコールグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、アジピン酸グリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
これらエポキシ化合物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダ成分添加工程は、多価ヒドロキシ化合物添加工程の前でも後でもよい。
本発明の一態様の導電性フィルムは、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える。前記導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、多価ヒドロキシ化合物とを含有する。
前記導電層は、必要に応じて、バインダ成分、その他の添加剤を含有してもよい。バインダ成分、その他の添加材は、<導電性高分子分散液>で述べたものと同様のものを使用できる。
導電層は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、前記多価ヒドロキシ化合物とを含有する。
導電層の平均厚さとしては、10nm以上5000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることがより好ましく、30nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、充分に高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層を容易に形成できる。
本明細書における平均厚さは、フィルムの断面を走査過型電子顕微鏡(SEM)(型番:JCM-6000、日本電子社製)で観察し、無作為に選ばれる5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
基材としては、ガラス基材、又はフィルム基材を使用することができる。
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ酸化物の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
フィルム基材としては、プラスチックフィルムを用いることができる。
プラスチックフィルムを構成するフィルム基材用樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのフィルム基材用樹脂の中でも、安価で機械的強度に優れる点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みとしては、5~400μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましい。導電性フィルムを構成するフィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
本発明の一態様の導電性フィルムの製造方法は、少なくとも、上記導電性高分子分散液を基材の少なくとも一方の面に塗工すること(以下、「塗工工程」ともいう)を有する。
導電性フィルムの製造方法により、基材と、基材の少なくとも一方の面に形成された導電層とを備える導電性フィルムが得られる。
上記のうち、簡便に塗工できることから、バーコーターを用いることがある。バーコーターにおいては、種類によって塗工厚が異なり、市販のバーコーターでは、種類ごとに番号が付されており、その番号が大きい程、厚く塗工できるものとなっている。
塗工した導電性高分子分散液を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの通常の方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上150℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。
導電性高分子分散液が、バインダ成分として光硬化性のモノマー又はオリゴマーを含む場合には、塗工工程後、塗工した導電性高分子分散液に紫外線又は電子線を照射し、硬化させて導電層を形成する。これにより導電性フィルムを得る。
本発明の一態様の導電性フィルムは、IC、LSI、キャパシタ等の電子部品の包装又は容器、食品の包装又は容器等に使用できる。
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を12時間攪拌した。
得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法によりポリスチレンスルホン酸含有溶液の約1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。
この限外ろ過操作を3回繰り返した。
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンと、36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合させた。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、得られた溶液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法により約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、1.2質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)水分散液(PEDOT-PSS水分散液)を得た。
製造例2で得たPEDOT-PSS水分散液30gに、プロプレングリコールモノメチルエーテル10gと、メタノール50gと、水10gと、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.2g(PEDOT-PSS固形分100質量部に対して56質量部)を添加して、導電性高分子分散液を得た。
次いで、導電性高分子分散液を、No.8のバーコーターを用いてポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60)に塗布して、塗布膜を形成した。
その塗布膜を、乾燥温度120℃、乾燥時30分で加熱乾燥し、分散媒を除去して、導電性フィルムを得た。
水を10gから2gに変更し、水分散性ポリエステル樹脂(互応化学工業(株)製、RZ-105、固形分濃度25質量%)8gをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドをビス(4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィドに変更したこと以外は実施例2と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
メタノールを50gから43gに変更し、テトラエトキシシラン(信越化学社製、KBE-04、SiO2換算固形分濃度28.8質量%)7gをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
メタノールを50gから45gに変更し、メタノール分散シリカゾル(日産化学工業(株)製、MA-ST-M、固形分濃度40質量%)5gをさらに添加したこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドをビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドをビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィドに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドをビス(4-ヒドロキシ-3-メチル)スルフィドに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを4,4’-ジヒドロキシビフェニルに変更したこと以外は実施例4と同様にして、導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
PEDOT-PSS水分散液にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
PEDOT-PSS水分散液にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
PEDOT-PSS水分散液にビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィドを添加しなかったこと以外は実施例5と同様にして導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド0.2gをプロピレングリコール0.2gに変更したこと以外は実施例4と同様にして導電性高分子分散液を得た。得られた導電性高分子分散液を使用して、実施例1と同様に導電性フィルムを得た。
各例の導電性フィルムについて、作製後1時間以内に測定した表面抵抗値(初期の表面抵抗値)R0と、温度25℃且つ湿度50%に調整された空気に導電層の表面が曝された状態(以下、大気暴露の状態という。)で7日間放置した後の表面抵抗値(大気暴露後の表面抵抗値)R1と、をそれぞれ測定した。その測定の際、抵抗率計((株)三菱化学アナリテック製ロレスタ)を用い、印加電圧を10Vとした。測定結果を表1に示す。
温度25℃における導電性フィルムの導電層における電気伝導度R25Bを、ロレスタ(三菱化学(株)製)を用いて測定した。続いて、測定後の導電層を温度85℃の環境下に240時間放置した後、導電層を温度25℃に戻し、電気伝導度R25Aを測定した。これらの測定値を下記式に代入して電気伝導度熱維持率を算出した。計算結果を表1に示す。
電気伝導度熱維持率(%)=100×R25A/R25B
各測定結果における表面抵抗値が小さい程、導電性が高いことを示す。また、R1/R0で表される表面抵抗値の比の値が1.0に近い程、大気中での導電性の経時的低下を抑制していることを示す。また、電気伝導度熱維持率が100%に近いほど、温度変動に対して安定であり、耐熱性に優れることを示す。
多価ヒドロキシ化合物を含む実施例1~11の導電性高分子分散液から形成された導電性フィルムは、耐久性に優れ、且つ導電性に優れていた。
多価ヒドロキシ化合物を含まない比較例1~4の導電性高分子分散液から形成された導電性フィルムは、耐久性において劣っていた。
なお、実施例1~3,5,6,9~11は比較例である。
Claims (7)
- π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィド、及びビス(4-ヒドロキシ-3-メチル)スルフィド、からなる群から選択される少なくとも1種の多価ヒドロキシ化合物と、
テトラエトキシシランと、を含有する、導電性高分子分散液(但し、下記式(4)で表される化合物を含むものを除く)。
[式(4)中、R9~R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリル基又はフェニル基である。
R13及びR14は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。
X2は、アミド基、エーテル基、カルボニル基、キシレニル基、スルフィド基、スルホニル基、ジスルフィド基、シクロアルキレン基、フェニレン基又は下記式(5)で表される基である。
d、e及びgは、それぞれ独立して1又は2である。fは0以上2以下の整数である。
mは0以上2以下の整数である。ただし、f及びmは同時に0となることはない。nは0又は1である。また、d、e、f、g及びmは、下記式(II)及び(III)を満たす。]
2≦d+f+m≦4 (II)
2≦e+g≦3 (III)
Y2は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、アダマンチル基又は下記式(6)で表される基である。
ただし、Y2とR15とは互いに結合してシクロアルカン構造又はフルオレン構造を形成していてもよい。]
R18は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又はベンジル基である。
R19は、水素原子又はアルキル基である。
h及びiは、それぞれ独立して0以上2以下の整数であり、下記式(IV)を満たす。]
0≦h+i≦3 (IV) - 前記π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
- 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸である、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
- 前記多価ヒドロキシ化合物の含有量が、前記導電性複合体100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 前記テトラエトキシシランの含有量が、前記導電性複合体100質量部に対して、100質量部以上2000質量部以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液。
- 基材の少なくとも一方の面に、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工すること、を含む、導電性フィルムの製造方法。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の製造方法であって、
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体の水系分散液に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)スルフィド、及びビス(4-ヒドロキシ-3-メチル)スルフィド、からなる群から選択される少なくとも1種の多価ヒドロキシ化合物と、テトラエトキシシランを添加することを有する、導電性高分子分散液の製造方法。
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