JP7485279B2 - 導電性表面処理粉体填料およびその製造方法、ならびに該填料を含有する導電性組成物 - Google Patents

導電性表面処理粉体填料およびその製造方法、ならびに該填料を含有する導電性組成物 Download PDF

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Description

本発明は、導電性表面処理粉体填料およびその製造方法、ならびに該填料を含有する導電性組成物に関し、より詳細には、樹脂またはゴム組成物に良好な導電経路を形成し得る導電性表面処理粉体填料およびその製造方法、ならびに該填料を含有する導電性組成物に関する。
現在における、携帯電話、パソコン、タブレット端末、プリンタ等の情報端末の普及はめざましい。これらは世界中で大量に使われ、業務上だけでなく日常生活においてもなくてはならない存在として認知されている。これら情報端末に多用されるタッチパネルには、操作性を向上させるために導電性機能を持った材料の存在が不可欠である。また、プリンタに使用されるOAゴムロールには、紙送り性を損なうことなくスムースな印刷転写を可能にするために、均一な導電性機能を有する材料が使用されている。導電性機能を有する材料の例としては、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、銀粉、銅粉末をドーピングした酸化亜鉛等の金属酸化物粉体が挙げられる。例えば、画像表示装置と一体型の入力スイッチとして用いられるタッチパネルセンサーでは、インジウムスズ酸化物やインジウム亜鉛酸化物を用いられており、これらは長期耐久性を有することが知られている(特許文献1)。
ITOやIZOなどのインジウム系酸化物は安定した導電性機能を発揮し実績のある原料である。しかし、これらはレアアースと言われる天然資源であり、資源の枯渇が懸念され、長期的な供給に対する問題を抱えている。例えば、これらの素材の真比重は、常温(例えば23℃)においてITO(7.1g/cm)、IZO(6.3g/cm)、銀粉(5.0~10.5g/cm)、銅粉(5.9g/cm)と非常に大きい。このため、これらを含有する樹脂組成物はその比重が大きくなり、その結果硬度も大きくなり、柔軟性および耐衝撃性に支障をきたす場合がある。また、このような樹脂組成物は、分散性および引張特性が低下するとともに非常に高価であるため、汎用的に乏しい。
また、電子回路基板上の接着素子として鉛系はんだ等が用いられていた。これに対し、近年では、基板の材質が樹脂に代わることにより銀粉、銀めっき粉等の金属粉を用いた導電性接着剤が報告されている(特許文献2)。これらの金属粉の導電性機能はITOやIZOに近い。しかし、銀粉も比較的高価なうえ高比重なため接着剤中で沈降分離することがあり、金属微粉末は吸入すると人体の健康に悪影響を及ぼす可能性がある点で取扱い上の課題がある。
また、画像形成装置の熱転写ローラ等に適用でき、トナーの転写ムラ等の画像不良を低減させる目的で導電性ゴムロールスポンジが使用されている。このような材料において、導電性を付与する導電性粉体としてカーボンブラックが使用されている(特許文献3)。カーボンブラックは導電性金属化合物に比べると真比重が小さく、原料コスト的には有利ではある。しかし、カーボンブラックの原料色調は黒色であるため、透明、白色などの所定の色調が所望される組成物への応用には制約がある。加えて、配合割合によって導電性のムラが生じることがある。
また、導電性ゴム組成物または樹脂組成物を構成するために導電性酸化亜鉛の使用が提案されている。導電性酸化亜鉛は白色度が高く、着色可能な導電性無機粉体として紹介されている(特許文献4)。しかし、色調における制約はなくなるものの、酸化亜鉛自身の比重が5.4と大きく、かつ樹脂組成物として硬くなる傾向があるため、情報端末の軽量化や樹脂組成物の耐衝撃性に支障をきたす場合がある。
さらに、炭酸カルシウムまたはケイ酸塩鉱物を、下記の一般式
Figure 0007485279000001
(式中、R1は水素原子またはメチル基、Mはアルカリ金属、アンモニウムまたはアミン)で表される構造単位を有する重合体で表面処理した導電性無機粉体が知られている(特許文献5)。
これらの導電性無機粉体は白色系の粉体であり、着色性に制約がなく真比重も大きくないという特徴を有する。しかし、上記の重合体で表面処理したものは導電性レベルが低く、かつ樹脂組成物にした場合、長期的な導電性および帯電防止効果が得られない。
また、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子をアゾ化合物等のラジカルで化学処理した変成導電性高分子を樹脂に含んだ組成物が、抵抗値にばらつきがなく安定した導電性を付与することが報告されている(特許文献6)。しかし、これらの導電性高分子は、樹脂中に連続的に結合した状態で導電経路を形成するいわゆるパーコレーション構造をとることで導電機能を発揮するのに対し、シリカ、タルク等の補強性のある充填剤は絶縁性のため、少量でもこれらの充填剤が配合されると導電性高分子の導電経路を失い急激に導電性能が低下するという問題がある。そのため、導電性機能を損なうことなく補強効果を上げるには、絶縁性の充填剤は配合できず、ITO、IZO、銀粉、銅粉などの高比重の金属酸化物粉体を用いるか、黒色のカーボンブラックを配合することになるため、導電性高分子を用いる特徴が失われる。あるいは、補強性のある充填剤を配合しない組成物に限定されてしまうため、この場合も導電性高分子の特徴が制限される。
上記問題に対して、白色系の無機粉体または白色系の有機粉体から選択される少なくとも1種の粉体の粒子の表面に、π共役系導電性ポリマーとポリアニオンを含有する表面処理剤で表面を処理した表面処理粉体の被覆層を有する表面処理粉体が提供されている(特許文献7および8)。
しかし、この表面処理粉体は耐熱性が未だ十分とは言えず、例えば粉体の作製の際に採用される乾燥工程ではできる限り高温に曝される機会を回避することが必要とされる。また、当該粉体を樹脂に配合する場合においても、低温かつ短時間で行う必要があり、配合設計や製造工程に制約を与えることがある(特許文献7)。さらに、π共役系導電性ポリマーとポリアニオンを大量に処理することで色調が悪化するだけでなく、コストの増大も避けられない(特許文献8)。
こうした表面処理粉体の耐熱性が十分とは言えない原因は、π共役系導電性ポリマー単独、あるいはポリアニオンとの混合系が高温下で不可逆的な化学変化を起こすためであると考えられる。
特開2012-118814号公報 特開2015-189860号公報 特開2012-155263号公報 特開2004-83614号公報 特開平6-107963号公報 特開2006-169291号公報 特開2018-016790号公報 特開2019-75265号公報
本発明は上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、ゴムまたは樹脂組成物に対して、良好な導電性と白色性または透明性などの色調の選択性とを付与することができる導電性表面処理粉体填料およびその製造方法、ならびに該填料を含有する導電性組成物を提供することにある。
本発明は、粉体(A)の粒子表面が、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)、ならびにヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)で表面処理された粉体粒子を含有し、
加熱直前の体積抵抗値が140000Ω・cm以下であり、
110℃下で24時間加熱した後の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R24log)と該加熱直前の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R00log)との差の絶対値が、以下の関係式(I):
Figure 0007485279000002
を満足し、
該表面処理剤(B)の含有量が、該粉体(A)の含有量100質量部に対して0.1質量部から4質量部であり、
該酸化防止剤(C)の含有量が、該粉体(A)の含有量100質量部に対して0.1質量部から4質量部である。
1つの実施形態では、上記粉体(A)は、カルシウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物およびアルミ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機粉体である。
1つの実施形態では、上記粉体(A)は、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂および木質系材料からなる群から選択される少なくとも1種の有機粉体である。
1つの実施形態では、上記π共役系導電性ポリマーは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリフルオレンからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。
さらなる実施形態では、上記ポリチオフェンは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。
1つの実施形態では、上記ポリアニオンは、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸およびポリアクリルアミドスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。
本発明はまた、上記導電性表面処理粉体填料と、ゴム材料または樹脂材料とを含有する、導電性組成物である。
1つの実施形態では、本発明の導電性組成物は、導電性ゴム組成物、あるいは導電性フィルム、導電性シーリング材、導電性接着剤、導電性塗料、または導電性プラスチゾルとして使用するための組成物である。
本発明はまた、上記導電性表面処理粉体填料の製造方法であって、
(S1)粉体(A)と、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)の水分散液と、ヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)との混合液から水を除去して、該粉体(A)と該表面処理剤(B)と該酸化防止剤(C)とを含有する固形物を得る工程、および
(S2)該固形物を解砕する工程、
を包含し、
該(S1)工程における該水の除去が瞬間乾燥により行われ、そして
該(S2)工程における該固形物の解砕が該固形物を予め冷却した状態で行われる、方法である。
本発明によれば、良好な導電性を有するゴムまたは樹脂組成物を提供することができる。このようなゴムまたは樹脂組成物は、白色、透明などの任意の色調を自由に選択して呈することができ、軽量性、柔軟性、耐熱性などの種々の物性を改善し得る。本発明の導電性表面処理粉体填料はまた、インジウム、スズ、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、アンチモン等の無機金属化合物を含む金属粉体に対する分散性に優れ、真比重の小さい導電性組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳述する。
(導電性表面処理粉体填料)
本発明の導電性表面処理粉体填料は、粉体(A)の粒子表面が、表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)で表面処理された粉体粒子を含有する。ここで、本明細書中に用いられる用語「表面処理」とは、例えば、対象となる粒子の表面が、他の材料で全部または部分的に被覆されている状態、および当該他の材料と全部または部分的に物理的および/または化学的に付着または結合している状態を包含して言う。
本発明の導電性表面処理粉体填料において、粉体粒子の真比重(Dio)は好ましくは4.3g/cm以下である。粉体粒子の真比重が4.3g/cmを超えると、例えばそのような粉体粒子を填料として樹脂に配合した場合に樹脂組成物の質量が増大し、結果として軽量化を達成するためには添加量を抑制せざるを得ないことになる。その結果、十分な導電性を付与した樹脂組成物を得ることが困難となる場合がある。また、柔軟性や耐衝撃性が低下するとともに、分散性が低下して引張特性等も低下するおそれがある。
なお、本発明の導電性表面処理粉体填料において、粉体(A)の真比重と、粉体(A)に表面処理剤(B)と酸化防止剤(C)とを表面処理してなる粉体粒子の真比重との差は無視できるほどの僅かな差に過ぎず、両者の真比重は実質的に同じとみなすことができる。これにより、所望の真比重を有する粉体粒子を得るためには、実質的に上記真比重の範囲を満足する粉体(A)を選択すればよい。
(粉体(A))
粉体(A)は、好ましくは軽比重の粉体であり、例えば、無機化合物で構成される無機粉体、および有機化合物で構成される有機粉体、ならびにそれらの組み合わせを包含する。本発明の導電性表面処理粉体填料を用いて、白色などの任意の色調を有する導電性組成物を得ることができるという点から、粉体(A)の好ましい例としては、白色系無機粉体、白色系有機粉体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。これらの白色系無機粉体および白色系有機粉体は、当該技術分野にて白色であるとして通常用いられる程度の白色度を有する粉体であり、例えば、日本電色株式会社製カラーメーターZE-200にて測定したL値が粉体単独で85以上を示すものを用いることが好ましい。あるいは、当該白色系無機粉体および白色系有機粉体は、後述の表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)で表面処理した際に得られる樹脂組成物において、例えば、日本電色株式会社製カラーメーターZE-200にて測定したL値が80以上を示すものを用いることが好ましい。
粉体(A)を構成する無機粉体の例としては、カルシウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物およびアルミ化合物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
カルシウム化合物の具体的な例としては、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
炭酸カルシウムは、好ましくは4.3g/cm以下の真比重(例えば2.7g/cm)を有し、樹脂組成物に汎用される白色系無機粉体である。
なお、粉体の比重は真比重や嵩比重で示されるが、本明細書中で用いる用語「真比重」とは、表面細孔や内部の空隙を含めない固体自身がもつ体積あたりの質量であり、気体容積法による粒子密度を以下のようにして算出した値である:
電子天秤で秤量した粉体を乾式自動密度計(例えば、株式会社島津製作所製アキュピックII1340 10CC)にセットし、ヘリウムガスを用いて粉体の体積をJIS M 8717に準拠して測定し、「粉体の秤量値÷粉体の体積値」が真比重に相当する。
本発明において、炭酸カルシウムには、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)および合成炭酸カルシウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。天然炭酸カルシウムは、糖晶質石灰石から直接製造されるものであり、例えば、糖晶質石灰石原石を機械的に粉砕・分級することにより製造することができる。合成炭酸カルシウムは、緻密質石灰石を用いてキルン等の焼成炉で焼成することにより一旦酸化カルシウムを作製した後、水にて消化して水酸化カルシウムが製造され、例えば、水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。一般的に緻密質石灰石を用いて製造されたものは立方体状のコロイド炭酸カルシウムであり、粒子形状が比較的均一なカルサイト結晶を構成し得る。これはカルサイト系炭酸カルシウムとも呼ばれている。他方、合成炭酸カルシウムについては、水酸化カルシウムの温度条件を変更しマグネシウム化合物、ストロンチウム化合物、リン化合物などの添加剤を添加することにより、この水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させて針状のアラゴナイト結晶(例えば真比重2.95g/cm)を有する炭酸カルシウムを得ることができる。これはアラゴナイト系炭酸カルシウムとも呼ばれている。
炭酸カルシウムは、天然炭酸カルシウムおよび合成炭酸カルシウムのいずれを用いたとしても、これを添加してゴムまたは樹脂組成物を作製した際に、所定の導電性を付与することができる。しかし、当該ゴムまたは樹脂組成物に、導電性を安定的に付与させるにためは、粉体(A)は合成炭酸カルシウムであることが好ましい。粉体(A)に合成炭酸カルシウムを用いると、粉体(A)の粒子表面を後述の表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)で表面処理することによって樹脂組成物中に粉体どうしが連なって導電経路を構成する構造(パーコレーション構造)を形成し易いためである。これに対し、天然炭酸カルシウムでは、結晶性粗粒子が含まれることが多い。これにより、粉体(A)の粒子表面を後述の表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)で表面処理した際、得られる樹脂組成物中で、結晶性粗粒子である粉体(A)から当該表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)が分離して均一な分散が妨げられることが推測される。
粉体(A)として使用可能な炭酸カルシウムの大きさは必ずしも限定されないが、例えば粉体(A)がコロイド炭酸カルシウム(カルサイト系炭酸カルシウム)である場合、そのBET比表面積は3m/g~100m/gであることが好ましい。BET比表面積が3m/g未満であると、そのような炭酸カルシウムを用いて得られたゴムまたは樹脂組成物には、所定の導電性が付与されるものの、当該組成物には、十分な増粘性および補強性が得られないことがある。BET比表面積が100m/gを超えると、1次粒子同士が凝集し、得られるゴムまたは樹脂組成物中で分散不良を起こし、十分な導電性が得られないことがある。
ここで、本明細書中に用いられる用語「BET比表面積」は、表面処理炭酸カルシウムの窒素吸着法によるBET法で測定した場合の値であり、下記のようにして測定される。
まず、ガラスセルに試料を300mg仕込み、窒素を導通させながら200℃で10分前処理を行った後、常温で冷却して測定試料とする。次いで、BET比表面積計にて(例えば、マウンテック社製Macsorb H Mmode-1210を使用して)1点法によってBET比表面積が測定される。
本発明において、粉体(A)がアラゴナイト系炭酸カルシウムである場合、粉体(A)は例えば0.1~50μmの長径、0.01~5μmの短径、および3~50のアスペクト比を有するアラゴナイト針状結晶で構成されていることが好ましい。立方体粒子のカルサイト系炭酸カルシウムに比べ、針状のアラゴナイト系炭酸カルシウムは、粒子同士が連なって導電経路を構成する構造(パーコレーション構造)を形成し易い傾向にある。
粉体(A)がアラゴナイト系炭酸カルシウムである場合、そのBET比表面積は2m/g~30m/gであることが好ましい。BET比表面積が2m/g未満であると、そのような炭酸カルシウムを用いて得られたゴムまたは樹脂組成物には所定の導電性が付与されるものの、当該組成物には十分な増粘性および補強性が得られないことがある。また、針状炭酸カルシウムの特徴である分散性が低下するとともに、粒子の表面積が小さくなることにより、導電経路を構成するのに十分な量の表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)を粒子自体に付着させることが困難となる場合がある。BET比表面積が30m/gを超えると、アラゴナイト系炭酸カルシウムの針状結晶が凝集して互いに吸着し、表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)による十分な被覆が困難となって、得られるゴムまたは樹脂組成物に対して満足すべき導電性を付与できないことがある。
リン酸カルシウムは、好ましくはリン酸三カルシウム(真比重約3.1g/cm)である。リン酸カルシウムは、湿式法、熱水法、および乾式法と呼ばれる方法によって容易に合成することができ、特に工業的に最も大量に生産する場合は湿式法で合成される。あるいは、常温下で水酸化カルシウムスラリーにリン酸を滴下して合成する沈殿法やリン酸水素カルシウムニ水和物に炭酸カルシウムを反応させる加水分解法のいずれの合成法で得られたリン酸カルシウムであってもよい。
リン酸カルシウムはまた、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH)を含んでいてもよい。
粉体(A)がリン酸カルシウムである場合、そのBET比表面積は5m/g~80m/gであることが好ましい。BET比表面積が5m/g未満であると、それを用いて得られたゴムまたは樹脂組成物には所定の導電性が付与されるものの、十分なチキソ性および補強性を付与することが困難になり、当該組成物を用いて成形する際の作業効率を低下させることがある。BET比表面積が80m/gを超えると、粉体の粒子表面を被覆するために必要な表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)の各量が多くなり、填料自体の強度を低下させることがある。さらに、リン酸カルシウムの1次粒子同士が凝集し、得られる填料中で分散不良となり、その結果、これをゴムまたは樹脂組成物に添加した際に満足すべき導電性を付与できないことがある。
ケイ素化合物の具体的な例としては、シリカ(真比重約1.6g/cm)、石英粉(真比重約2.2g/cm)、珪石粉(真比重約3.2g/cm)、微粉珪酸(真比重約1.2g/cm)、微粉末珪酸カルシウム(真比重約2.9g/cm)、セリサイト(真比重約2.7g/cm)、雲母(真比重2.8g/cm~3.2g/cm)、ベントナイト(真比重約2.6g/cm)、ネフェリンサイナイト(真比重約2.6g/cm)、セピオライト(真比重約2.3g/cm)、ワラストナイト(真比重約2.9g/cm)、ゾノトライト(真比重約3.0g/cm)、ガラス繊維(真比重2.1g/cm~2.6g/cm)、シラスバルーン(真比重約0.2g/cm~1.5g/cm)、フライアッシュバールン(真比重約0.7g/cm)、ガラスバルーン(真比重約0.2g/cm)、シリカビーズ(真比重約2.5g/cm)、およびガラスビーズ(真比重約2.5g/cm)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。入手が容易でありかつ真比重が低いという理由からシリカが好ましい。シリカの例としては、ケイ酸ソーダと硫酸との反応、またはケイ酸ソーダと塩化マグネシウムなどの塩類との反応により得られたケイ酸塩を、硫酸または炭酸ガスで分解して合成した湿式合成シリカ;および気化した四塩化ケイ素と水素とを混合し1600~2000℃にて空気中で燃焼させることにより合成した乾式合成シリカ;ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
粉体(A)がケイ素化合物である場合、そのBET比表面積は40m/g~300m/gであることが好ましい。BET比表面積が40m/g未満であると、それを用いて得られたゴムまたは樹脂組成物には所定の導電性が付与されるものの、十分なチキソ性を付与することが困難になり、当該組成物を用いて成形する際の作業効率を低下させることがある。また、BET比表面積が300m/gを超えると、粉体の粒子表面を被覆するために必要な表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)の各量が多くなり、填料自体の強度を低下させることがある。さらに、ケイ素化合物の1次粒子同士が凝集し、得られる填料中で分散不良となり、その結果、これをゴムまたは樹脂組成物に添加した際に満足すべき導電性を付与できないことがある。
チタン化合物の具体的な例としては、酸化チタンおよびチタン酸カリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粉体(A)に使用され得る酸化チタンの真比重は、好ましくは3.8g/cm~4.3g/cmである。粉体(A)に使用され得るチタン酸カリウムの真比重は、好ましくは3.3g/cm~3.4g/cmである。酸化チタンおよびチタン酸カリウムのそれぞれにおいてこのような真比重を満足することにより、これらを粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
マグネシウム化合物の具体的な例としては、水酸化マグネシウム(真比重約2.4g/cm)、マグネシウム炭酸塩(真比重約2.99g/cm)、塩基性炭酸マグネシウム(真比重約2.9g/cm)、およびタルク(真比重約2.7g/cm)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらを粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
アルミニウム化合物の具体的な例としては、微粉珪酸アルミニウム(真比重約2.6g/cm)、カオリンクレー(真比重約2.6g/cm)、タルク(真比重約2.7g/cm)水酸化アルミニウム(真比重約2.4g/cm)、およびアルミナビーズ(真比重約3.6g/cm)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらを粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
粉体(A)を構成する有機粉体の例としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂および木質系材料、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
アクリル樹脂の具体的な例としては、アクリル樹脂バルーン(真比重0.1~0.3g/cm)が挙げられる。
一般に、樹脂バルーンは、低沸点を有する液状炭化水素を熱可塑性高分子殻(シェル)で包み込んだマイクロカプセルを加熱し、高分子の殻を軟化させかつ殻中の液状炭化水素を気体に変化させて、その圧力でカプセルが膨張したバルーン状の粒子を形成することにより製造される。この特性を応用し、熱膨張性マイクロカプセルは、さまざまな樹脂組成物の軽量化目的、柔軟性付与目的で近年様々な分野で使用されている。
上記アルキル樹脂バルーンを構成する殻となる樹脂の例としては、アクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等の熱可塑性樹脂の微粒子があり、架橋したもの、未架橋のもののいずれであってもよい。
粉体(A)に使用され得るアクリル樹脂バルーンのBET比表面積は1m/g~10m/gであることが好ましい。1m/g未満のBET比表面積は汎用のBET比表面積計で測定不可能である。また、BET比表面積が1m/g未満であると、粉体の粒子表面を被覆する表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)の各量を調整することが困難となり、それにより得られた填料を、ゴムまたは樹脂組成物に添加し際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができないことがある。BET比表面積が10m/gを超えるアクリル樹脂バルーンはそもそもその製造自体が困難であり、仮にそのような樹脂バルーンが得られたとしても2次凝集を起こし易く、ゴムまたは樹脂組成物に対して導電性のムラが生じることがある。
なお、上記アクリル樹脂バルーンは、その表面がシリカや炭酸カルシウム等の無機微粒子で被覆されているものであってもよい。
塩化ビニル樹脂の具体的な例としては、ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粉体(A)として塩化ビニル樹脂が用いられる場合、その真比重は1.0g/cm~1.4g/cmであることが好ましい。そのような真比重の範囲を満たす塩化ビニル樹脂を粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
ポリスチレン樹脂の具体的な例としては、約1.1g/cmの真比重を有するものが挙げられる。
ポリエチレン樹脂の具体的な例としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびポリエチレンテレフタレート、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粉体(A)としてポリエチレン樹脂が用いられる場合、その真比重は0.90g/cm~1.05g/cmであることが好ましい。そのような真比重の範囲を満たすポリエチレン樹脂を粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
ポリイミド樹脂の具体的な例としては、芳香族ポリイミドおよびピロメリット酸無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルとの重合物、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このようなポリイミド樹脂は、例えば1.42g/cmの真比重を有する。
フッ素樹脂の具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、およびペルフルオロアルコキシフッ素、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粉体(A)としてフッ素樹脂が用いられる場合、その真比重は1.6g/cm~2.2g/cmであることが好ましい。そのような真比重の範囲を満たすフッ素樹脂を粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
フェノール樹脂の具体的な例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールM、ビスキシノールP、およびビスフェニルヒドロキシフェニルメタン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。粉体(A)としてフェノール樹脂が用いられる場合、その真比重は1.2g/cm~2.1g/cmであることが好ましい。そのような真比重の範囲を満たすフェノール樹脂を粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
木質系材料の具体的な例としては、セルロース粉末(真比重は1.3g/cm~1.6g/cm)、パルプ粉末(真比重は1.1g/cm~1.6g/cm)、木粉(例えば真比重1.0g/cm以下)、クルミ粉(例えば真比重1.0g/cm以下)、コルク粉(例えば真比重1.0g/cm以下)、澱粉(例えば真比重1.6g/cm)、エボナイト粉末(例えば真比重1.2g/cm)、およびリグニン(真比重1.3g/cm~1.6g/cm)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これらを粉体(A)として用いた場合、本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に当該組成物に対して良好な導電性を付与することができる。
(表面処理剤(B))
表面処理剤(B)はπ共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する。
π共役系導電性ポリマーは、π共役系の主鎖を有する有機ポリマーであり、例えばポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、およびポリフルオレン、ならびにこれらの共重合体等が挙げられる。これらは単独で、または必要に応じ2種以上組み合わせて用いられてもよい。特に得られるゴムまたは樹脂組成物に対して、導電性の安定的に付与できるという理由から、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリフルオレンが好ましい。さらに、上記粉体(A)に対する表面処理が容易であり、当該表面処理後の白色度が良好であるとの理由からポリチオフェンが好ましい。
ポリチオフェンの例としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、およびポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)。ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。得られるゴムまたは樹脂組成物に対して、優れた導電性、耐熱性、白色性、および透明性の1つまたはそれ以上を付与することができるという理由から、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
ポリフェニレンの例としては、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルホン、およびポリフェニレンエーテル、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
ポリフェニレンビニレンの例としては、ポリフェニレンビニレン、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン、およびポリ[2-メトキシ-5-(3′,7′-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。有機溶媒に対する溶解度が高いという理由から、ポリ[2-メトキシ-5-(3′,7′-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]が好ましい。
ポリピロールの例としては、ポリ(N)メチルピロール、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、およびポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
ポリアニリンの例としては、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(2-エチルアニリン)、およびポリ(3-イソブチルアニリン)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
ポリフルオレンとしては、ポリ[9,9-ジ-(2-エチルヘキシル)-9-フルオレン-2,7-ビニレン]、ポリ[9,9-ビス-(2-エチルヘキシル)-9-フルオレン-2,7-ジイル]、ポリ[9,9-ジ(3’,7’-ジメチルオクチル)フルオレン-2,7-イレンエチニレン]、ポリ[9,9-ジ(2’-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-イレンエチニレン]、およびポリ[9,9-ジヘキシル-2,7-フルオレン-alt-9-フェニル3,6-カルバゾール]、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
粉体(A)の粒子表面に、上記π共役系導電性ポリマーだけを表面処理しても、当該粉体(A)の粒子表面は不十分な表面処理状態となり、導電性機能にバラツキが生じ易くなる。そのため、π共役系導電性ポリマーとともにポリアニオンを含有させることにより、ポリアニオンをπ共役系導電性ポリマーのドーパント剤として機能させることができる。これは、表面処理剤(B)を水分散液の形態で使用して粉体(A)の粒子表面に表面処理を行う上で、かつ導電性機能を向上させる上で重要である。
ポリアニオンの例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミドスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、およびドデシルベンゼンスルホン酸の単独重合体、ならびにそれらの2種または以上の組み合わせからなる共重合体が挙げられる。スルホン酸基を含有したポリアニオン(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、およびポリアクリルアミドスルホン酸、ならびにそれらの組み合わせ)が粉体(A)に対して表面処理を行う上で、かつ導電性機能を向上させる上で好ましい。
本発明では、表面処理剤(B)としてπ共役系導電性ポリマーとポリアニオンとを含有し、好ましくはこれを分散液の状態で粉体(A)の粒子表面に付与することにより、導電性機能をより発揮させることができる。ここで、表面処理剤(B)におけるπ共役系導電性ポリマーの含有量は、表面処理剤(B)の質量を基準として、好ましくは5質量%~70質量%、より好ましくは20質量%~60質量%である。これに対し、表面処理剤(B)におけるポリアニオンの含有量は、表面処理剤(B)の質量を基準として、好ましくは30質量%~95質量%、より好ましくは40質量%~80質量%である。π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンの含有量はそれぞれこのような範囲内にあることにより、粉体(A)に対して優れた導電性機能を提供することができる。
さらに、本発明の導電性表面処理粉体填料において、表面処理剤(B)の含有量は、上記粉体(A)の含有量100質量部に対して、0.1質量部~4質量部、好ましくは0.2質量部~1質量部である。粉体(A)の含有量100質量部に対して表面処理剤(B)の含有量が0.1質量部を下回ると、得られる填料が導電性を示さないことがある。粉体(A)の含有量100質量部に対して表面処理剤(B)の含有量が4質量部を上回ると、粉体の色調が悪化することがある。
(酸化防止剤(C))
酸化防止剤(C)は、分子骨格中にヒドロキシ基構造(すなわち、OH基)を有する有機化合物である。酸化防止剤(C)の例としては、エリソルビン酸およびその塩、フェノール系酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。表面処理剤(B)を構成する上記導電性ポリマーはπ共役系構造を有するため、酸化防止剤(C)は、π共役系構造にヒドロキシ基が結合したフェノール系構造を有するフェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
フェノール系酸化防止剤は、骨格にフェノールが含まれている有機化合物である。フェノール系酸化防止剤の具体的な例としては、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸(没食子酸)、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸メチル(没食子酸メチル)、3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、3,4-ジヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシアセトフェノン、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、4-[[4,6-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ペンチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,4-メタノナフタレン-5,8-ジオール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3,3’,5,5’-テトライソプロピル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール、4,6-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,3-ジオール、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-N’-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイル]プロパンヒドラジド、ガルビノキシルフリーラジカル、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンアミド]、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル、2-メチル-4,6-ビス(n-オクチルスルファニルメチル)フェノール、ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸][オキサリルビス(アザンジイル)]ビス(エタン-2,1-ジイル)、ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)スルフィド、および2,2’,6,6’-テトラ-tert-ブチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール、ならびにそれらの塩などが挙げられる。
本発明の導電性表面処理粉体填料において、酸化防止剤(C)の含有量は、上記粉体(A)の含有量100質量部に対して、0.1質量部~4質量部、好ましくは0.2質量部~2質量部である。粉体(A)の含有量100質量部に対して酸化防止剤(C)の含有量が0.1質量部を下回ると、酸化防止剤の効果が発揮されないことがある。粉体(A)の含有量100質量部に対して酸化防止剤(C)の含有量が4質量部を上回ると、酸化防止剤(C)によって表面処理剤(B)が分解することがある。
酸化防止剤(C)は、後述の表面処理剤(B)の水分散液と合わせた際に、表面処理剤(B)を構成するπ共役系導電性ポリマーの周囲により均一に分散させることを可能にするために、水に対して優れた溶解性を有することが好ましい。酸化防止剤(C)は、例えば水100mLに対して、0.1g以上溶解するものであることが好ましい。
(その他の表面処理剤(D))
本発明の導電性表面処置粉体填料は、導電性機能などの本発明の効果を損なわない範囲において、上記粉体(A)の粒子表面に対して、上記表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)に加えて、その他の表面処理剤(D)で表面処理されていてもよい。その他の表面処理剤の例としては、炭酸カルシウム;ならびに飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸、およびそれらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩など);が挙げられる。
飽和脂肪酸は、好ましくは炭素数6~31の飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数8~26の飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数9~21の飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸の具体的な例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸およびラウリン酸を併用するのが好ましい。
不飽和脂肪酸は、分子中に1つまたはそれ以上の二重結合を有する脂肪酸であり、例えば、飽和脂肪酸の脱水反応によって合成されるものである。不飽和脂肪酸は、好ましくは炭素数6~31の不飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数8~26の不飽和脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数9~21の不飽和脂肪酸である。不飽和脂肪酸の具体的な例としては、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸、エルカ酸およびリノール酸が好ましい。
なお、上記ともにまたは上記に代えて、これらが混合された、牛脂や豚脂などの動物原料由来の脂肪酸、パームやヤシなどの植物原料由来の脂肪酸などをその他の表面処理剤(D)として含有していてもよい。
脂肪族カルボン酸の具体的な例としては、ナフテン酸が挙げられる。樹脂酸の具体的な例としては、アビエチン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸などが挙げられる。あるいは、これらの不均化ロジン、水添ロジン、2量体ロジン、3量体ロジンなどの変成ロジン、アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸もまたその他の表面処理剤(D)として本発明の導電性表面処置粉体填料に含有されていてもよい。
上記その他の表面処理剤(D)は、単独でまたは必要に応じて2つまたはそれ以上を組み合わせて本発明の導電性表面処置粉体填料に含有されていてもよい。本発明の導電性表面処置粉体填料におけるその他の表面処理剤(D)の含有量は特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
本発明の導電性表面処理粉体填料は、粉体(A)の粒子表面がπ共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)、ならびにヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)と、必要に応じてその他の表面処理剤(D)とで表面処理されている。この点において、本発明の導電性表面処理粉体填料は、例えば:
(1)粉体(A)の粒子表面に、表面処理剤(B)、酸化防止剤(C)および必要に応じてその他の表面処理剤(D)の混合物が被膜となって被覆されたもの;
(2)粉体(A)の粒子表面に、表面処理剤(B)の被膜および酸化防止剤(C)の被膜が各々独立してこの順で被覆されたもの(ここで、任意成分であるその他の表面処理剤(D)は表面処理剤(B)の被膜または酸化防止剤(C)の被膜のいずれか、あるいは両方に含まれていてもよく、もしくはいずれにも含まれていなくてもよい);
(3)粉体(A)の粒子表面に、酸化防止剤(C)の被膜および表面処理剤(B)の被膜が各々独立してこの順で被覆されたもの(ここで、任意成分であるその他の表面処理剤(D)は酸化防止剤(C)の被膜または表面処理剤(B)の被膜のいずれか、あるいは両方に含まれていてもよく、もしくはいずれにも含まれていなくてもよい);
も包含する。
本発明の導電性表面処理粉体填料は、填料自体が未加熱(すなわち、以下の110℃下で24時間加熱する前(加熱直前))の状態で140000Ω・cm以下、好ましくは100000Ω・cm以下、さらに好ましくは70000Ω・cm以下の体積抵抗率を有する。導電性表面処理粉体填料自体が125000Ω・cm以下の体積抵抗率を有することにより、ゴムまたは樹脂組成物に添加された際に、良好な導電性を付与することができる。
さらに、本発明の導電性表面処理粉体填料では、110℃下で24時間加熱した後の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R24log)と加熱直前の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R00log)との差の絶対値が、以下の関係式(I):
Figure 0007485279000003
を満足し、好ましくは以下の関係式(I’):
Figure 0007485279000004
を満足する。上記R24logとR00logとの差の絶対値が、このような関係式を満足することにより、得られる填料は優れた耐熱性を有し、それにより100℃を超えるような高温下においても良好な導電性機能を保持することができる。
本発明の導電性表面処理粉体填料はまた良好な白色度を有する。白色度は、例えば填料10gを100mLポリカップに計量し、さらに可塑剤DINP(ジイソノニルフタレート)10gを計量し、これらを遊星式脱泡撹拌機(例えば、クラボウ株式会社製)にて60秒間撹拌し、得られた粉末ペーストについて、白色度を示すL値を、例えば日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000を用いて測定することにより測定することができる。本発明の導電性表面処理粉体填料のL値は、好ましくは40以上であり、より好ましくは80以上である。
本発明の導電性表面処理粉体填料は、例えば後述のようにゴム材料または樹脂材料と一緒に混合され、優れた導電性組成物を構成することができる。
(導電性表面処理粉体填料の製造方法)
本発明の導電性表面処理粉体填料を製造するにあたり、上記表面処理剤(B)および酸化防止剤(C)、ならびに必要に応じてその他の表面処理剤(D)を用いて粉体(A)の粒子表面を表面処理するには、(B)~(D)の各成分を粉末の状態で使用して粉体(A)の粒子について表面処理を行う乾式法と、(B)~(D)の各成分を水スラリー状、あるいはフタル酸系、アルコール系、ナフテン系または芳香族系の有機溶媒に溶解した状態で粉体(A)の粒子について表面処理を行う湿式法のいずれが行われてもよい。
乾式法が採用される場合、ヘンシェルミキサーのような処理設備が用いられる。例えば、ヘンシェルミキサー内で粉体(A)を流動撹拌した状態で、熱をかけながら、表面処理剤(B)および酸化防止(C)ならびに必要に応じてその他の表面処理剤(D)を投入することにより、粉体(A)の粒子表面にこれら成分の被膜を形成することができる。湿式法が採用される場合、スラリーの流動を可能にするための撹拌装置を備えたタンクが用いられる。例えば、このようなタンク内で各成分(A)~(D)を含むスラリーを撹拌することにより、粉体(A)の粒子表面に成分(B)~(D)の被膜を形成することができる。
ここで、表面処理剤(B)は、π共役系導電性ポリマーとポリアニオンとを含有するものであり、かつより良好な導電性をゴムまたは樹脂組成物に付与することができる点で、分散液、特に水分散液の状態で使用することが好ましい。他方、酸化防止剤(B)は、ゴムまたは樹脂組成物により良好な耐熱性を付与することができる点で、溶液、特に水溶液として使用することが好ましい。このことから、本発明の導電性表面処理粉体填料を製造するには湿式法を利用することが好ましい。
次に、本発明の導電性表面処理粉体填料を湿式法により製造する方法の一例について説明する。
本発明の製造方法では、まず、粉体(A)と、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)の水分散液と、ヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)との混合液から水が除去される(以下、この混合液から水を除去する工程を「(S1)工程」と呼ぶことがある)。なお、混合液には、必要に応じて上記その他の表面処理剤(D)が添加されてもよい。
この(S1)工程における混合液からの水の除去は、上記表面処理剤(B)に含まれるπ共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンの劣化を抑制するという理由から、生成物に対して可能な限り熱エネルギーの付加を減じた状態で行うことが所望される。このため、混合液からの水の除去には、混合液の瞬間乾燥が採用される。瞬間乾燥の具体的な例としては、スプレードライが挙げられる。スプレードライのために設定される条件は、混合液の量等によって変動するため、必ずしも限定されない。当業者によって任意の条件が選択され得る。
混合液から水が除去されることにより、粉体(A)と表面処理剤(B)と酸化防止剤(C)と必要に応じてその他の表面処理剤(D)とを含有する固形物が形成される。
本発明の製造方法では、次いで、この固形物が解砕される(以下、この固形物を解砕する工程を「(S2)工程」と呼ぶことがある)。
この(S2)工程における固形物の解砕は、例えば当業者に公知の手段を用いて粉砕または摩砕が行われる。固形物の解砕はまた、上記表面処理剤(B)に含まれるπ共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンの劣化を抑制するという理由から、固形物に対して可能な限り熱エネルギーの付加を減じた状態で行うことが所望される。このため、固形物の解砕は該固形物を予め冷却した状態で行われる。冷却条件は、解砕のために使用する手段、固形物の量等によって変動するため、必ずしも限定されず、当業者によって任意の条件が選択され得るが、冷却温度は好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下である。
このようにして本発明の導電性表面処理粉体填料が製造される。
(導電性組成物)
上記導電性表面処理粉体填料は、ゴム材料または樹脂材料に添加され、所定の導電性を有する導電性組成物に調製され得る。本発明の導電性組成物は、例えば、導電性ゴム組成物、あるいは導電性フィルム、導電性シーリング材、導電性接着剤、導電性塗料、または導電性プラスチゾルとして使用するための組成物である。
本発明の導電性組成物が導電性ゴム組成物である場合、当該組成物に含有され得るゴム材料の例としては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、およびエピクロルヒドリンゴム(CO,ECO,GECO)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
これらのうち、例えば、導電性ゴムローラーに用いられるアクリロニトリルブタジエンゴムやエピクロルヒドリンゴムは一般にゴム成分として安定した導電性を得ることができることが知られている。しかし、組成物の硬度調整を行う目的で配合され得るコロイド炭酸カルシウムが絶縁性であるため、これを配合すると、導電性が低下傾向にあったり、感圧による印刷ムラが生じたりする場合がある。これに対し、本発明の導電性表面処理粉体填料を配合することによって、組成物の硬度も低く柔軟性を維持しながら、より高く安定した導電性が得られるゴム組成物となる。
本発明においては、導電性ゴム組成物は、必要に応じてさらなるゴム用添加剤を含有していてもよい。ゴム用添加剤の例としては、ステアリン酸亜鉛などの加工助剤、酸化亜鉛などの加硫促進助剤、チアゾール系、チウラム系などの加硫促進剤、プロセスオイル、ポリエステル系、フタル酸系等の可塑剤、希釈剤、およびカーボンブラック等の充填材、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。また、当該導電性ゴム組成物は、さらに過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、変成脂肪族ジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルテトラエチルアンモニウムなどの導電性を付与するイオン導電剤を含有していてもよい。当該イオン導電材を含有することにより、さらに導電性の向上した導電性ゴム組成物を得ることができる。導電性ゴム組成物における上記ゴム用添加剤およびイオン導電剤の含有量は特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
本発明の導電性組成物が導電性フィルムとして使用するための組成物である場合、当該組成物に含有され得る樹脂材料の例としては、アクリル樹脂(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリブタジエン(PBD)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等で代表される汎用樹脂や、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂(FR)、液晶ポリマー(LCP)等のエンジニアリングプラスチック、フェノール、尿素、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、およびこれらを主たる構成成分として含む共重合体、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。当該組成物によれば、上記導電性表面処理粉体填料を配合することによって、分散性、フィルムの補強効果、反射率を維持するだけでなく、より高い導電性、より安定した導電性が得られ、かつ柔軟性の効果も有するフィルムまたはシートを成形することができる。
従来の導電性フィルム組成物では、フィルムの加工性、柔軟性、耐久性、耐熱性を向上させるために、通常、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤等の樹脂添加剤が所定量添加され得るが、本発明においては、当該樹脂添加剤の添加は必ずしも必要とされない。上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、これらの機能または効果を一層高めることができるからである。
本発明の導電性組成物が導電性シーリング材または導電性接着剤として使用するための組成物である場合、当該組成物に含有され得る樹脂材料の例としては、シリコーン、変成シリコーン、アクリルシリコーン、シリコーン変成エポキシ、シリル化ウレタン、ポリイソブチレン、シアノアクリレート等の末端にシラノール基または反応性シリル基等架橋性ケイ素基を持った樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリサルファイド樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
上記樹脂材料のうち、架橋性ケイ素基を持った樹脂は、通常、銀粉、銅粉等の金属粉を配合させて導電性機能を付与することにより、プリント基盤のはんだ付けの代替材料として使用されている。これに対し、本発明においては当該金属粉の添加は必ずしも必要とされない。上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、これらの機能または効果を一層高めることができるからである。
また、従来の導電性シーリング材または導電性接着剤のための組成物には、通常、シリコーンオイル、フタル酸系等の可塑剤、イソパラフィン系、ナフテン系等の高沸点溶剤が用いられる。これに対し、本発明においては、これらの可塑剤および高沸点溶剤の使用を低減することができる。上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、可塑剤および高沸点溶剤の使用を低減した状態でも液体成分のブリードを抑えることができるからである。
さらに、従来の導電性シーリング材または導電性接着剤のための組成物には、通常、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒等の添加剤が、シーラント、接着剤の加工性、柔軟性、反応速度、耐久性、耐熱性などの各種物性を向上させるために配合されている。これに対し、本発明においては当該添加剤の添加は必ずしも必要とされない。上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、得られる導電性シーリング材組成物および接着剤組成物の比重を増大させることなく、軽量でかつ接着強度を向上させることができるからである。
本発明の導電性組成物が導電性塗料として使用するための組成物である場合、当該組成物に含有され得る樹脂材料の例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、およびポリウレタン樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。当該組成物には、必要に応じてシリコーンオイル、フタル酸系等の可塑剤;イソパラフィン系、ナフテン系等の高沸点溶剤;メタノール、エタノール、アセトン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の有機溶剤の単独またはそれらの組み合わせ;および水;ならびにそれらの組み合わせ;を含有していてもよい。本発明によれば、上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、強度が向上しかつ安定した導電性を有する塗膜を形成することができる。
本発明の導電性組成物が導電性プラスチゾルとして使用するための組成物である場合、当該組成物に含有され得る樹脂材料の例としては、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。特に、塩化ビニル樹脂を含有する場合、本発明の導電性組成物は、自動車等の車両用途のアンダーコート、ボディーシーラー等のプラスチゾルを得るために有用である。
従来の導電性プラスチゾル組成物には、通常、生石灰、タルク、クレー、マイカ、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイド炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ガラスバルーン、アクリル樹脂バルーン、ケイソウ土等の充填材、フタル酸系等の可塑剤、イソパラフィン系、ナフテン系等の高沸点溶剤等がプラスチゾル用添加剤として配合されている。これらのプラスチゾル組成物には導電性機能がなく絶縁性である。これに対し、上記導電性表面処理粉体填料を含有することにより、得られる導電性プラスチゾル組成物は、自動車等の車両を構成する電着板との接着性を向上させ、耐スリップ性能もまた大幅に改善し、かつ車両用途に必要な帯電防止効果をも付与することができる。
本発明の導電性表面処理粉体填料は、ゴム、プラスチック、フィルム、シーリング材、接着剤、塗料、プラスチゾルなどの樹脂に配合された組成物中に当該填料の分散によって導電経路を形成すべきパーコレーション構造を形成することができる。したがって、本発明の導電性表面処理粉体填料は、導電性機能を付与させるだけでなく、本来の粉体の特徴である白色度が高いことから着色性に優れ、透明性を可能にし、黒色系以外の導電性樹脂組成物を得ることができる。また、他のインジウム、スズ、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、アンチモン等の無機金属化合物を含んだ金属粉体に比べて分散性に優れており、真比重も小さい。これにより、比較的少ない添加量でも導電性効果が得られ、かつ粉体本来が有する補強機能、導電性ポリマーが有する高伸長等の柔軟性機能および軽量化機能を備える樹脂組成物を提供することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例で作製した填料サンプルについて説明する。
実施例1~13および比較例1~8で得られた填料サンプルの特性または物性について、以下の方法を用いて測定し、かつ各測定値を予め設定した基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
(填料サンプルの白色度)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプル10gを、100mLのポリカップに計量し、さらに可塑剤DINP(ジイソノニルフタレート)10gを計量し、これを遊星式脱泡混練機(クラボウ株式会社製/KK-500)にて、混練条件「9-9-6」で撹拌して粉末ペーストを得た。ここで、混練条件について「a-b-c」と表した際、a、bおよびcは各々数値であり、aは公転条件、bは自転条件を示し、cはc×10秒の時間を意味する。このようにして得られた粉末ペーストを、日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて、白色度を表すL値を測定した。
(填料サンプルの白色度の判定基準)
上記により得られたL値について、以下の基準により3、2、1および0の4段階に分類した評価点を設けた。
Figure 0007485279000005
(填料サンプルの体積抵抗率)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプルを、100MPa(1020kgf/cm)の圧力でハンドプレスでかけて成型し、直径10mmおよび厚さ2mmの粉体成型物を作製した。得られた粉体成型物をヒューレットパッカード社製インピーダンス/ゲインフェーズアナライザー4194Aにより体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
上記により得られた体積抵抗率について、以下の基準により3、2、1および0の4段階に分類した評価点を設けた。
Figure 0007485279000006
(填料サンプルの耐熱性;加熱開始前から加熱開始後24時間までの体積抵抗率)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプル200gを量り取り、これを90mm×205mmの紙封筒に入れた。各々の紙封筒をエスペック社製オーブンPV-331に入れ雰囲気温度110℃で保持した。加熱開始時間からの時間を計測し、加熱開始後12時間、18時間、および24時間の時点での当該サンプルの体積抵抗率を上記と同様にして測定した。
上記により得られた加熱開始前から加熱開始後24時間までの体積抵抗率について、以下の基準により3、2、1および0の4段階に分類した評価点を設けた。
Figure 0007485279000007
(酸化防止剤の水溶性)
さらに実施例1~13および比較例1~8で使用した酸化防止剤について、それ自体の水溶性を以下のようにして評価した。実施例および比較例で使用した酸化防止剤を1gに水を添加した総質量を100gに調製した。10分撹拌した後、酸化防止剤が全て溶解しているものを1、溶け残りがあるものを0とした。
(実施例1:導電性表面処理粉体填料サンプル(E1)の作製)
BET比表面積10m/gを有する、33質量%の酸化チタン水スラリー3000gを10Lタンクに仕込み、これにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して0.25質量部となるように添加して、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で30分間、800rpmにて撹拌した。他方で、没食子酸メチルを水に溶解して1質量%の水溶液を調製した。次いで、この没食子酸メチル水溶液を用いて、当該没食子酸メチルの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して0.125質量部となるように上記10Lタンクに添加して混合液を調製し、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で5分間、600rpmで撹拌した。
これを高速ディスク式スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製L-8型)で入り口温度160℃、排気温度105℃で乾燥させ、冷蔵庫にて10℃で16時間冷却し、その後解砕して、導電性酸化チタンの填料サンプル(E1)を作製した。得られた填料サンプル(E1)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例2:導電性表面処理粉体填料サンプル(E2)の作製)
没食子酸メチル水溶液の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して0.25質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E2)を作製した。得られた填料サンプル(E2)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例3:導電性表面処理粉体填料サンプル(E3)の作製)
没食子酸メチル水溶液の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して0.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E3)を作製した。得られた填料サンプル(E3)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例4:導電性表面処理粉体填料サンプル(E4)の作製)
BET比表面積10m/gを有する、40質量%の酸化チタン水スラリー2500gを10Lタンクに仕込み、これにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して0.25質量部となるように添加して、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で30分間、800rpmで撹拌した。他方で、没食子酸メチルを水に溶解させ1質量%の水溶液に調製した。次いで、この没食子酸メチル水溶液を用いて、当該没食子酸メチルの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して1.25質量部となるように上記10Lタンクに添加して混合液を調整し、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で5分間、600rpmで撹拌した。
これを高速ディスク式スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製L-8型)で入り口温度160℃、排気温度105℃で乾燥させ、冷蔵庫にて10℃で16時間冷却し、その後解砕して、導電性酸化チタンの填料サンプル(E4)を作製した。得られた填料サンプル(E4)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例5:導電性表面処理粉体填料サンプル(E5)の作製)
没食子酸メチルを水に溶解させ1質量%の水溶液を調製した。この没食子酸メチル水溶液を用いて、当該没食子酸メチルの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して0.25質量部となるように10Lタンクに仕込み、これにBET比表面積10m/gを有する酸化チタン1000gを添加した。次いで、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量が酸化チタン含有量100質量部に対して0.25質量部となるように添加し、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で30分間、800rpmで撹拌した。
これを高速ディスク式スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製L-8型)で入り口温度160℃、排気温度105℃で乾燥させ、冷蔵庫にて10℃で16時間冷却し、その後解砕して、導電性酸化チタンの填料サンプル(E5)を作製した。得られた填料サンプル(E5)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例6:導電性表面処理粉体填料サンプル(E6)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりに没食子酸を用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E6)を作製した。得られた填料サンプル(E6)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例7:導電性表面処理粉体填料サンプル(E7)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりに4-ヒドロキシ安息香酸メチルを用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E7)を作製した。得られた填料サンプル(E7)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例8:導電性表面処理粉体填料サンプル(E8)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりに4-ヒドロキシアセトフェノンを用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E8)を作製した。得られた填料サンプル(E8)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例9:導電性表面処理粉体填料サンプル(E9)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりに3,4-ジヒドロキシ安息香酸メチルを用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E9)を作製した。得られた填料サンプル(E9)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例10:導電性表面処理粉体填料サンプル(E10)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりに3’,4’-ジヒドロキシアセトフェノンを用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E10)を作製した。得られた填料サンプル(E10)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例11:導電性表面処理粉体填料サンプル(E11)の作製)
BET比表面積10m/gを有する33質量%のフッ素樹脂水スラリー3000gを10Lタンクに仕込み、これにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量がフッ素樹脂含有量100質量部に対して0.55質量部となるように添加して、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で30分間、800rpmで撹拌した。他方で、没食子酸メチルを水に溶解させ1質量%の水溶液に調製した。次いで、この没食子酸メチル水溶液を用いて、当該没食子酸メチルの含有量がフッ素樹脂含有量100質量部に対して0.55質量部となるように上記10Lタンクに添加して混合液を調製し、モーターに接続した長さ10cmの金属羽根を有する撹拌翼で5分間、600rpmで撹拌した。
これを高速ディスク式スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製L-8型)で入り口温度160℃、排気温度105℃で乾燥させ、冷蔵庫にて10℃で16時間冷却し、その後解砕して、導電性酸化チタンの填料サンプル(E11)を作製した。得られた填料サンプル(E11)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例12:導電性表面処理粉体填料サンプル(E12)の作製)
表面処理剤(B)として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量を酸化チタン含有量100質量部に対して3質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E12)を作製した。得られた填料サンプル(E12)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(実施例13:導電性表面処理粉体填料サンプル(E13)の作製)
没食子酸メチル水溶液の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して3質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(E13)を作製した。得られた填料サンプル(E13)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例1:導電性表面処理粉体填料サンプル(C1)の作製)
没食子酸メチル水溶液を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(C1)を作製した。得られた填料サンプル(C1)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例2:導電性表面処理粉体填料サンプル(C2)の作製)
使用したセプルジーダ(登録商標)の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して0.09質量部に変更し、かつ使用した没食子酸メチル1質量%水溶液の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して0.09質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(C2)を作製した。得られた填料サンプル(C2)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例3:導電性表面処理粉体填料サンプル(C3)の作製)
表面処理剤(B)として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合水溶液(信越ポリマー株式会社製セプルジーダ(登録商標);濃度1%(当該混合水溶液中、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)25質量%およびポリスチレンスルホン酸75質量%を含有))を用いて、当該セプルジーダの含有量を酸化チタン含有量100質量部に対して11質量部に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、導電性酸化チタン導電性酸化チタンの填料サンプル(C3)を作製した。得られた填料サンプル(C3)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例4:導電性表面処理粉体填料サンプル(C4)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりにチオ硫酸ナトリウムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性酸化チタン導電性酸化チタンの填料サンプル(C4)を作製した。得られた填料サンプル(C4)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例5:導電性表面処理粉体填料サンプル(C5)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりにL-アスコルビン酸を用いたこと以外は実施例2と同様にして、導電性酸化チタンの填料サンプル(C5)を作製した。得られた填料サンプル(C5)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例6:導電性表面処理粉体填料サンプル(C6)の作製)
酸化防止剤として没食子酸メチルの代わりにキシロースを用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(C6)を作製した。得られた填料サンプル(C6)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例7:導電性表面処理粉体填料サンプル(C7)の作製)
解砕前に冷却しなかったこと以外は実施例1と同様にして導電性酸化チタン導電性酸化チタンの填料サンプル(C7)を作製した。得られた填料サンプル(C7)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
(比較例8:導電性表面処理粉体填料サンプル(C8)の作製)
没食子酸メチル水溶液の添加量の割合を、酸化チタン含有量100質量部に対して5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして導電性酸化チタンの填料サンプル(C8)を作製した。得られた填料サンプル(C8)の各種特性または物性の評価結果を表4に示す。
Figure 0007485279000008
表4に示すように、実施例1~13で作製された填料サンプル(E1)~(E13)はいずれも、加熱開始前の体積抵抗率が低く抑えられており、24時間の加熱を経ても良好な導電性を示していた。さらに、実施例1~13で作製された填料サンプル(E1)~(E13)は、いずれも良好な白色度を有しているものであったこともわかる。
さらに、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)および比較例1~8の填料サンプル(C1)~(C8)について得られた加熱開始後24時間までの体積抵抗率について、0時間(開始直前)と、加熱開始後12時間、18時間、および24時間の各体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値を算出し、24時間加熱した後の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R24log)と加熱直前の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R00log)との差の絶対値を算出した。なお、上記表4においてこれらの体積抵抗率が「測定範囲外」となったものについては、対応する体積抵抗率を10Ω・cm以上であったと仮定してその常用対数値を算出した。得られた結果を表5に示す。
Figure 0007485279000009
表5に示すように、実施例1~13で得られた填料サンプル(E1)~(E13)は、24時間加熱した後の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R24log)と加熱直前の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R00log)との差の絶対値が、0.77~1.12の範囲内に抑えられおり、比較例1~8の填料サンプル(C1)~(C8)の結果と比較して、110℃にて24時間の加熱を行ったとしても体積抵抗率に変化が少なく、優れた耐熱性を有していた。
(実施例14~26および比較例9~16:導電性ゴム組成物の作製)
実施例1~14、および比較例1~8で得られた各填料サンプルを、以下の表6に示す配合で60℃にてオープンロール(関西ロール株式会社製ラボラトリーミル)により練りこみコンパウンドを作製した。
Figure 0007485279000010
得られたコンパウンドから厚さ2mmのゴム状シートを作製し、23℃かつ50%の湿度条件下で以下の測定を行った。
(シートの白色度、硬度値、破断伸び率、および体積抵抗率)
日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて、各シートの色彩値を測定し、L値を白色度の測定値とした。また、硬度計(高分子計器株式会社製アスカーゴム硬度計C型)にて1000g荷重後の硬度値を測定した。さらに、各シートをダンベル3号で打ち抜き、JIS K 6265に準拠した引張試験(引張速度200mm/分)を行い、破断伸び率を測定した。
他方、得られたコンパウンドを幅120mm、長さ100mm、および厚さ2mmのゴム状シートに成形し、23℃かつ50%の湿度条件下で3時間静置し、Agilent社製レジストメーター4339Bにて当該シートの体積抵抗率を測定した。
なお、実施例14~26および比較例9~16で得られた各シートの各測定値を、予め設定した以下の基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
Figure 0007485279000011
Figure 0007485279000012
Figure 0007485279000013
Figure 0007485279000014
得られた結果を表11に示す。
Figure 0007485279000015
表11に示すように、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)を配合した導電性ゴム組成物から構成されるシート(実施例14~26で作製されたシート)は、比較例9~16のシートと比較して、白色度が良好であり、ゴム組成物本来の硬度値および破断伸び率を低下させることなく、優れた導電性を維持していたことがわかる。
(実施例27~39および比較例17~24:導電性フィルム組成物の作製)
実施例1~13、および比較例1~8で得られた各填料サンプルを用いて、以下の表12に示す配合による白色ポリエチレン樹脂フィルムを作製した。
Figure 0007485279000016
ポリエチレン樹脂に填料サンプルをヘンシェルミキサーに投入し、30分間分散かつ撹拌した後に、混練押出機(東洋精機株式会社製ラボプラストミル2D25W型)を用い、130℃で造粒してペレットを得た。得られたペレットを110℃で1時間乾燥させた後、このペレットをフィルム押出機(東洋精機株式会社製ラボプラストミルD2025型製)を用い、T型ダイからフィルム状に押出しして、30℃の冷却ドラムで冷却固化し無延伸フィルムを得た。その後、テンター延伸機で無延伸フィルムを押出し方向に3.3倍延伸し、さらに120℃に加熱して横手方向に3倍延伸して厚さ180μmのフィルムを得た。
得られたフィルムについて、以下の測定を行った。
(フィルムの白色度、分散性、体積抵抗率、反射率、および引張特性)
(白色度)得られたフィルムを日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて白色度を測定し、白色度を示すL値を測定した。
(分散性)得られたフィルムの300mm×300mm中における凝集物、粗大粒子によるフィッシュアイの数をカウントすることにより分散性評価を行った。
(体積抵抗率)厚さ180μm、幅150mmかつ長さ100mmに成形したフィルムを、23℃にて50%の湿度条件下で3時間静置し、Agilent社製レジストメーター4339Bにより体積抵抗率を測定した。
(反射率)得られたフィルムについて、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製UV3101PC)を用い、硫酸バリウム白板を100%とした時の反射率を0.30~0.80μmの波長範囲で測定し、0.45μmの反射率を代表値とした。
(引張特性)JIS Z 1702(ポリエチレンフィルムの引張特性)に準拠し、得られたフィルムを500mm/分の速度で引っ張った場合の破壊強度および破断伸び率をそれぞれ測定した。
なお、実施例27~39および比較例17~24で得られた各フィルムの上記測定値を、予め設定した以下の基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
Figure 0007485279000017
Figure 0007485279000018
Figure 0007485279000019
Figure 0007485279000020
Figure 0007485279000021
Figure 0007485279000022
得られた結果を表19に示す。
Figure 0007485279000023
表19に示すように、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)を配合した導電性フィルム組成物から構成されるフィルム(実施例27~39で作製されたフィルム)は、比較例17~24のシートと比較して、導電性が良好であり、かつ分散性を損なうことなくフィルム組成物本来の白色度および反射率を維持し、さらには破断強度および破断伸び率も十分な性能を有していたことがわかる。
(実施例40~52および比較例25~32:導電性シーリング材組成物の作製)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプルを用いて、以下の表20に示す配合による変性シリコーンシーリング材を作製した。
Figure 0007485279000024
填料サンプル、重質炭酸カルシウム、およびアマイドワックスを110℃で3時間乾燥あるいは溶融させた状態で、5Lのダルトンミキサー5DMV-01-7(株式会社ダルトン製)中に変成シリコーンポリマーとともに投入し、減圧下で撹拌を行った。次いで、可塑剤、脱水剤触媒および接着付与剤を添加して同様に撹拌を行い、変成シリコーンシーリング材を作製した。得られたシーリング材を320mLカートリッジに充填し、密封して保管した。
得られたシーリング材について下記の物性を測定した。
(シーリング材の粘度、白色度、引張特性および体積抵抗率)
(粘度)得られたシーリング材をカートリッジから突出させて、100mLのPPカップに充填し、B型粘度計(株式会社トキメック製)ローターNo.7を用いて1rpm粘度および10rpm粘度を測定した。併せて、作業性の目安となるTI値(1rpm粘度/10rpm粘度)を測定した。
(白色度)得られたシーリング材を日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて白色度を測定し、白色度を示すL値を測定した。
(引張特性)得られたシーリング材を厚み2mm、幅20mmおよび長さ100mmのシート状に充填して23℃で14日間および35℃で14日間養生し、3号ダンベルに打ち抜いて、JIS K 6253に準拠して引張特性を測定した。
(体積抵抗率)得られたシーリング材を、厚さ2mm、幅120mmおよび長さ100mmのシート状に充填し、23℃で14日間および35℃で14日間養生し、23℃かつ50%の湿度条件下で3時間静置し、Agilent社製レジストメーター4339Bにより体積抵抗率を測定した。
なお、実施例40~52および比較例25~32で得られた各変性シリコーンシーリング材の上記測定値を、予め設定した以下の基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
Figure 0007485279000025
Figure 0007485279000026
Figure 0007485279000027
Figure 0007485279000028
Figure 0007485279000029
得られた結果を表26に示す。
Figure 0007485279000030
表26に示すように、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)を配合した導電性シーリング材組成物から構成される変性シリコーンシーリング材(実施例40~52で作製されたシーリング材)は、比較例25~32のシーリング材と比較して、導電性が良好であり、かつ低モジュラスであり、かつ高い伸び性能が維持され、シーリング材組成物本来の白色度および引張特性を有していたことがわかる。
(実施例53~65および比較例33~40:導電性塗料組成物の作製)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプルを用いて、以下の表27に示す配合によるエポキシ塗料を作製した。
Figure 0007485279000031
エポキシ樹脂と填料サンプルとを1Lの金属容器に仕込んだ。ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ株式会社製)を100質量部添加して、30分間撹拌して分散させた。ガラスビーズを濾過して取り除いた後、硬化剤を添加して1分間混練して分散させた。混練後の混合物を遊星式脱泡混練機(クラボウ株式会社製KK-500)にて、混練条件5-5-6で脱泡し、エポキシ塗料を作製した。ここで、混練条件について「a-b-c」と表した際、a、bおよびcは各々数値であり、aは公転条件、bは自転条件を示し、cはc×10秒の時間を意味する。
得られた塗料について、下記の物性を測定した。
(エポキシ塗料の分散性、白色度および表面抵抗率)
(分散性)得られたエポキシ塗料をガラス板の上に載せ、縦10cm、横5cmおよび厚さ3mmの塗膜を形成し、当該塗膜5cmあたりに存在する0.5mm以上の粒の個数をカウントした。
(白色度)得られたエポキシ塗料をガラス板の上に載せ、縦10cm、横5cmおよび厚さ3mmの塗膜を形成し、完全に硬化した後に日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて白色度を測定し、白色度を示すL値を測定した。
(表面抵抗率);得られたエポキシ塗料をガラス板の上に載せ、縦10cm、横5cm、および厚さ3mmの塗膜を形成し、完全に硬化した後に三菱ケミカル株式会社製ハイレスタ-UX MCP-HT800にて表面抵抗率を測定した。
なお、実施例53~65および比較例33~40で得られた各エポキシ塗料の上記測定値を、予め設定した以下の基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
Figure 0007485279000032
Figure 0007485279000033
Figure 0007485279000034
得られた結果を表31に示す。
Figure 0007485279000035
表31に示すように、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)を配合した導電性塗料組成物から構成されるエポキシ塗料(実施例53~65で作製されたエポキシ塗料)は、比較例33~40のエポキシ塗料と比較して、導電性および白色度が良好であり、かつ分散性も損なわれていないものであったことがわかる。
(実施例66~78および比較例41~48:導電性プラスチゾルの作製)
実施例1~13および比較例1~8で得られた各填料サンプルを用いて、以下の表32に示す配合による塩化ビニル樹脂系プラスチゾルを作製した。
Figure 0007485279000036
表32に記載の各材料を5Lの万能混合撹拌機(ダルトン社製)に投入し、3分間混練し、一旦蓋を開け壁面に付着した材料を掻き落とした後、再度真空雰囲気下で10分間混練した。混練後、得られたゾルを、遊星式脱泡混練機(クラボウ株式会社製KK-500)にて、混練条件5-5-18で脱泡することにより塩化ビニル樹脂系プラスチゾルを作製した。ここで、混練条件について「a-b-c」と表した際、a、bおよびcは各々数値であり、aは公転条件、bは自転条件を示し、cはc×10秒の時間を意味する。
得られた塩化ビニル樹脂系プラスチゾルについて、下記の物性を測定した。
(塩化ビニル樹脂系プラスチゾルの粘度、白色度、耐スリップ性、分散性および体積抵抗率)
(粘度)得られたプラスチゾルを100mLのPPカップに充填し、BH型粘度計(株式会社トキメック製)ローターNo.7を用いて2rpm粘度および20rpm粘度を測定した。併せて、作業性の目安となるTI値(2rpm粘度/20rpm粘度)を算出した。
(白色度)得られたプラスチゾルを日本電色株式会社製カラーメーターZE-2000にて白色度を測定し、白色度を示すL値を測定した。
(耐スリップ性)得られたプラスチゾルを100mLのPPカップに詰め、23℃にて3日静置した後、130mm×60mmの被着体に12mmの半円ビードに100mmの長さで塗布した後、23℃で垂直方向に立てかけて放置し、放置後30分間経過後のゾルの滑り落ちた距離を定規にて測定した。
(分散性)得られたプラスチゾルをガラス板に縦5cm以上、横5cm以上および厚み1mm以内となるようにヘラで薄く塗り広げ、当該塗膜5cmあたりに存在する0.5mm以上の粒の個数をカウントした。
(体積抵抗率)得られたプラスチゾルを、厚さ2mm、幅120mmおよび長さ100mmのシート状に成形し、23℃で50%の湿度条件下にて3時間以静置し、Agilent社製レジストメーター4339Bにより当該プラスチゾルの体積抵抗率を測定した。
なお、実施例66~78および比較例41~48で得られた各プラスチゾルの上記測定値を、予め設定した以下の基準に基づいて3、2、1および0の4段階により分類した。
Figure 0007485279000037
Figure 0007485279000038
Figure 0007485279000039
Figure 0007485279000040
Figure 0007485279000041
得られた結果を表38に示す。
Figure 0007485279000042
表38に示すように、実施例1~13の填料サンプル(E1)~(E13)を配合した導電性プラスチゾル組成物から構成される塩化ビニル樹脂系プラスチゾル(実施例66~78で作製されたプラスチゾル)は、比較例41~48のプラスチゾルと比較して、導電性が良好であり、かつ分散性および耐スリップ性を損なうことなく、プラスチゾル組成物本来の白色度を保持していたことがわかる。
本発明によれば、例えばゴムまたは樹脂成型分野、接着剤分野、塗料分野、ならびにこれらに関連する広範な技術分野において有用である。

Claims (6)

  1. 粉体(A)の粒子表面が、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)、ならびにヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)で表面処理された粉体粒子を含有し、
    加熱直前の体積抵抗値が140000Ω・cm以下であり、
    110℃下で24時間加熱した後の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R24log)と該加熱直前の体積抵抗率(Ω・cm)の常用対数値(R00log)との差の絶対値が、以下の関係式(I):
    Figure 0007485279000043
    を満足し、
    該表面処理剤(B)の含有量が、該粉体(A)の含有量100質量部に対して0.1質量部から4質量部であり、
    該酸化防止剤(C)の含有量が、該粉体(A)の含有量100質量部に対して0.1質量部から4質量部であり、
    該粉体(A)が、0.2g/cm ~4.3g/cm の真比重を有し、かつカルシウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物およびアルミ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の白色系無機粉体であり、
    該π共役系導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリフルオレン、ならびにこれらの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
    該ポリアニオンがスルホン酸基を含有し、
    該酸化防止剤(C)がフェノール系酸化防止剤である、導電性表面処理粉体填料。
  2. 前記π共役系導電性ポリマーがポリチオフェンであり、該ポリチオフェンが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項に記載の導電性表面処理粉体填料。
  3. 前記ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸およびポリアクリルアミドスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである、請求項1または2に記載の導電性表面処理粉体填料。
  4. 請求項1からのいずれか1項に記載の導電性表面処理粉体填料と、ゴム材料または樹脂材料とを含有する、導電性組成物。
  5. 導電性ゴム組成物、あるいは導電性フィルム、導電性シーリング材、導電性接着剤、導電性塗料、または導電性プラスチゾルとして使用するための組成物である、請求項に記載の導電性組成物。
  6. 請求項1からのいずれか1項に記載の導電性表面処理粉体填料の製造方法であって、
    (S1)粉体(A)と、π共役系導電性ポリマーおよびポリアニオンを含有する表面処理剤(B)の水分散液と、ヒドロキシ基構造を有する酸化防止剤(C)との混合液から水を除去して、該粉体(A)と該表面処理剤(B)と該酸化防止剤(C)とを含有する固形物を得る工程、および
    (S2)該固形物を解砕する工程、
    を包含し、
    該(S1)工程における該水の除去が瞬間乾燥により行われ、そして
    該(S2)工程における該固形物の解砕が該固形物を予め冷却した状態で行われる、方法。
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