JP6634246B2 - 導電性高分子溶液及び導電性塗膜 - Google Patents
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Description
この実施の形態に係る導電性高分子溶液は、導電性高分子と、少なくとも水を含む溶媒とを有する。該導電性高分子は、π共役系導電性高分子と、そのπ共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、そのポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンとオキシラン基又はオキセタン基と反応した化合物と、を含む。加えて、導電性高分子溶液のpHは、2.5以上6.5以下である。ここで、上記溶媒は、有機溶剤を含んでいても良い。また、導電性高分子溶液は、バインダをさらに含んでいても良い。本願で用いられるポリアニオンをドーパントとしている導電性高分子は、好ましくは、おおよそ数十ナノメータの粒子径を持つ微粒子から形成される。かかる微粒子は、界面活性剤の作用をも持つポリアニオンの存在によって可視光領域において透明であって、溶媒中に微粒子が溶解しているように見える。実際には、当該微粒子は溶媒中に分散しているが、本願では、この状態を「分散可溶化」の状態と称している。
(1)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば好適に使用できる。π共役系導電性高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に制約無く用いることができる。アニオン性化合物とは、分子中に、π共役系導電性高分子への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さ及び高い安定性の観点から、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、π共役系導電性高分子へのドープ効果に優れる理由から、スルホ基あるいはカルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンの内でドープに寄与しないアニオンと、オキシラン基又はオキセタン基含有有機化合物との反応生成物は、前述のπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体に、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を添加して反応させることにより得られる。例えば、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体溶液と、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物とを混合し、0℃から100℃の温度で攪拌混合することにより得られる。必要により、メタノール、エタノール等の水溶性溶媒や界面活性剤を加えた混合溶媒中で反応を行っても良い。反応後は、エバポレーター等で溶媒や水、用いたオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の一部を除き、必要な濃度に調整しても良い。
(オキシラン基含有有機化合物)
単官能オキシラン基含有有機化合物としては、プロピレンオキサイド(酸化プロピレン)、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ琥珀酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]などを例示できる。これらの例示物の中では、酸化プロピレン、グリシドールがより好ましい。
単官能オキセタン基含有有機化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(=オキセタンアルコール)、2−エチルヘキシルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メタアクリレートなどを例示できる。
導電性高分子溶液を構成する溶媒は、少なくとも水を含む。溶媒中の好ましい水の含有率は、10〜99.9%である。溶媒に、有機溶剤を含めることもできる。有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒; クレゾール、フェノール、キシレノール等に代表されるフェノール類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等に代表されるアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等に代表されるケトン類; 酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等に代表されるエステル類; ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される炭化水素類; ギ酸、酢酸等に代表されるカルボン酸; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表されるカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等に代表されるエーテル化合物; エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等に代表される鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等に代表されるニトリル化合物などを好適に例示できる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を混合して用いても良い。これらの有機溶剤の内、種々の有機物との易混合性の観点から、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類をより好適に用いることができる。導電性高分子溶液を用いて塗膜を形成する場合、固形の導電性高分子を溶媒に分散可溶化させて塗料を製造し、それを基材に塗布して有機溶剤の一部若しくは全部を除去する。したがって、有機溶剤としては、沸点の低いものを好適に選択する。これにより、塗膜形成時の乾燥時間を短縮でき、もって塗膜の生産性を高めることができる。
(1)バインダ
導電性高分子溶液は、導電性塗膜の耐傷性や硬度を高くし、塗膜と基材との密着性を向上させる観点から、好適には、バインダの機能を持つ樹脂(バインダ、あるいはバインダ樹脂とも称する)を含んでも良い。バインダは、好ましくは、アルコキシシリル基を含む。好適なバインダは、アルコキシシラン、アルコキシシランの縮合物、該アルコキシシランの縮合物とそれに反応可能な反応性樹脂との反応物であり、π共役系導電性高分子同士を結着させる機能を持つ。
導電性高分子溶液は、塗膜の導電性をさらに向上させるべく、下記の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を有するのが好ましい。
(2.1)窒素含有芳香族性環式化合物
(2.2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(2.3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2.4)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2.5)アミド基を有する化合物
(2.6)イミド基を有する化合物
(2.7)ラクタム化合物
(2.8)その他
窒素含有芳香族性環式化合物としては、好適には、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物; ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR3−(R3は水素または任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
上記以外に、ジメチルスルホキシド(DMSO); ヒドロキシエチルアクリレート、乳酸エチル等のヒドロキシ基含有カルボン酸エステル化合物; エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシ基含有エーテル化合物を、導電性向上剤に使用しても良い。
この実施の形態に係る導電性高分子溶液は、一例として、以下の方法によって製造することができる。
導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体は、導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行う。ただし、このようなモノマーからの重合のみならず、市販の導電性高分子/ドーパント水分散体を用いても良い。市販の導電性高分子/ドーパント水分散体としては、例えば、Heraeus社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Clevios)、アグファ社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Orgacon)などを挙げることができる。次に、上記水分散体に、最終的に得られる塗料のpHが2.5〜6.5の範囲になるようにオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を添加後、撹拌する。この結果、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の環状エーテルが開環し、そこに、ポリアニオン中のドープに寄与していないアニオン基のOHが反応する。その後、得られた反応液を濃縮、濾別あるいは乾固すると、導電性高分子が得られる。その後、得られた固形の導電性高分子を、溶媒中に可溶若しくは分散させて、導電性高分子溶液を得る。その他の添加物を加える場合には、予め溶媒中に当該添加物を混合し、あるいは導電性高分子と共に当該添加物を溶媒に混合するのが好ましい。導電性高分子溶液は、その後、塗料の形態で使用される。また、上記水分散体に、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を溶剤と共に添加後、好ましくはアニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させている間若しくは反応後に、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に導電性高分子を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、溶媒中に、導電性高分子を可溶若しくは分散させても良い。
既に固体となっているπ共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンの状態の導電性高分子に、水及び/またはオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物が溶解する溶媒を適量添加後、好ましくはアニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させる。その後、反応液を濃縮、濾別あるいは乾固する。その後、好適には、得られた濃縮物あるいは固体を、溶媒中に可溶若しくは分散させて、塗料の形態で使用する。また、上記製造において、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させた後、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に導電性高分子を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、導電性高分子を、溶媒中に可溶若しくは分散させても良い。この方法によれば、凍結乾燥された導電性高分子を原料として用いているので、特に、濃縮する工程の時間を短縮できる。
この実施の形態に係る導電性塗膜は、前述の導電性高分子溶液の硬化体である。この導電性塗膜は、前述の導電性高分子溶液から溶媒の大部分若しくは全部が揮発して、溶媒中に存在する導電性高分子及び存在する場合にはその他添加物が薄い膜状に固化したものである。導電性高分子は、π共役系導電性高分子にポリアニオンがドープし、そのポリアニオン中のドープに寄与していないアニオンと、オキシラン基又はオキセタン基とが反応した化合物を含む。導電性高分子溶液が既に少なくとも水を含む溶媒中に可溶若しくは分散させた状態の溶液である場合にはそのまま若しくは有機溶剤でさらに希釈して塗料とする。塗料は、紙、PET等のプラスチック、鉄、セラミックス、ガラスに代表される基体上に供給される。供給方法としては、刷毛やバーコーターを使う塗布法、塗料中に基体を浸漬するディップ法、塗料を基体上に滴下して基体を回転させて塗料を拡げるスピンコート法などの種々の手法を例示できる。基体上の塗料の硬化法は、加熱し若しくは室温で有機溶剤を除去する方法の他、紫外線などの光や電子線を照射して硬化する方法などを例示できる。
(製造例1)・・・ポリスチレンスルホン酸の製造
1,000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1,000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1,000ml溶液を除去し、残液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。得られたポリスチレンスルホン酸についてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。
(製造例2)・・・PEDOT−PSS水溶液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2,000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2,000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去し、これに2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPEDOT−PSSの水溶液を得た。
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液100gに対し酸化プロピレンを6.25g添加してから8時間攪拌し、溶液を作製した。
(実施例2)
酸化プロピレンを12.5gに変更した以外は実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例3)
酸化プロピレンを25.0gに変更した以外は実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例4)
酸化プロピレンの代わりにグリシドール8.2gを用いた以外を実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例5)
グリシドールの添加量を16.4gに変更した以外を実施例4と同様に溶液を作製した。
(実施例6)
実施例2の溶液100gを用いてオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を20g、イオン交換水250g、エタノール250gを添加し、溶液を作製した。
(比較例1)
製造例2のPEDOT−PSS水溶液を用意した。
(比較例2)
酸化プロピレンを3.2gに変更した以外を実施例1と同様に溶液を作製した。
(比較例3)
グリシドールを4.1gに変更した以外を実施例4と同様に溶液を作製した。
(比較例4)
実施例2の溶液に代えて比較例1のPEDOT−PSS水溶液を用いた以外を、実施例6と同様に溶液を作製した。
(比較例5)
実施例2の溶液100gに代え、製造例2のPEDOT−PSS100gに対して炭酸水素ナトリウム0.032gを添加した溶液を用い、それ以外を実施例6と同様に溶液を作製した。
(比較例6)
製造例2のPEDOT−PSS100gに対して炭酸水素ナトリウム0.032gを添加した溶液に代え、製造例2のPEDOT−PSS100gに対してトリエチルアミン0.32gを添加した溶液を用いる以外を比較例5と同様に溶液を作製した。
得られた水溶液の内、実施例1〜5及び比較例1〜3は溶液のpHの測定(HORIBA)を行い、メタノールで2倍に希釈し、バーコーターNo.04で塗工し、120℃、1minで乾燥して塗膜を作製した。塗膜の抵抗値は、低抵抗計ロレスタ(三菱化学アナテリック)で印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。各種配合と結果とを表1に示す。
次に、実施例6、比較例4〜6溶液は、溶液のpH測定後、次のように塗膜の作製を行った。すなわち、バーコーターNo.04で塗工し、120℃、30minで乾燥して塗膜を作製した。塗膜の抵抗値は、高抵抗計ハイレスタ(三菱化学アナテリック)で印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。各種配合と結果とをそれぞれ表2及び表3に示す。
比較例1と比較して酸化プロピレン、グリシドールを添加したものはどれもpHが上昇していた。また、加えて表面抵抗値が下がるという結果が得られた。また、バインダ成分としてアルコキシシリル基を有するオルトケイ酸テトラエチルを添加し、水とエタノールで希釈した実施例6は、溶液が安定し、高導電性、pHが中性に近づくといった結果が得られた。
Claims (1)
- π共役系導電性高分子と、前記π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンとを含む導電性高分子を、少なくとも水を含む溶媒に分散または溶解した溶液を用意し、
前記ポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンと、溶液のpHを2.6以上5以下とするために必要な量のオキシラン基又はオキセタン基含有有機化合物の該オキシラン基又はオキセタン基と、を反応させることにより、前記溶液のpHを2.6以上5以下とすることを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
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