JP6634246B2 - 導電性高分子溶液及び導電性塗膜 - Google Patents

導電性高分子溶液及び導電性塗膜 Download PDF

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本発明は、導電性高分子溶液及び導電性塗膜に関する。
近年、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリンなどのπ共役系導電性高分子に電子供与性化合物や電子受容性化合物(ドーパント)を添加(ドーピング)した導電性材料が開発され、その用途は広がっている。特に、π共役系導電性高分子の透明性に着目され、透明導電体として広く利用されているITO膜(錫ドープ酸化インジウム膜)の代替が検討されている。しかし、π共役系導電性高分子自体は、いかなる溶媒にも溶解しないため、加工性が低い上に、膜の形成やパターニングが困難であった。π共役系導電性高分子を溶解させる手法として、質量平均分子量が2,000〜500,000のポリスチレンスルホン酸(ポリアニオン)をドーパントとして、3,4−ジアルコキシチオフェンを化学酸化重合して、ポリスチレンスルホン酸−ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)溶液(PEDOT−PSS溶液)を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、例えば、PEDOT−PSS溶液はスルホ基によって水溶性を持たせているため、溶液のpHは極めて低く、強酸性となる。このため、塗工設備の錆や損傷が激しくなるという欠点がある。この欠点を解消するために、PEDOT−PSS溶液にアミン化合物を添加してpHを上げる方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
特開2005−146259号公報 特開2006−249303号公報
しかし、昨今の導電性高分子塗膜の性能に対する要求特性は高くなってきており、より一層の高導電性が求められている。加えて、塗膜の高導電性を発揮するためには、導電性高分子溶液のより一層高い安定性も求められている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高導電性を有し、かつ溶液安定性にも優れた導電性高分子溶液及びそれを硬化して成る導電性塗膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究開発を行ってきた結果、pHを上げる方法として、オキセタンやエチレンオキシドといった環状エーテルを導電性高分子水溶液中で攪拌して環状エーテルを開環し、スルホ基のような強酸性を示す基のOH部と反応させることにより導電性高分子水溶液の酸性度を低下させることを考えた。環状エーテルを開環することによって、スルホ基のような強酸性を示す基との反応に寄与しない反応物はOH基を2つ有するため、塗膜乾燥後に高導電化するとの知見が得られ、本発明の完成に至った。詳細な課題解決手段は、次のとおりである。
上記目的を達成するための本発明の一実施の形態は、導電性高分子と、少なくとも水を含む溶媒とを有する導電性高分子溶液であって、導電性高分子は、π共役系導電性高分子と、該π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、該ポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンとオキシラン基又はオキセタン基と反応した化合物と、を含み、溶液のpHが2.5以上6.5以下の導電性高分子溶液である。
本発明の別の実施の形態は、さらに、溶媒に有機溶剤を含む導電性高分子溶液でも良い。
本発明の別の実施の形態は、また、π共役系導電性高分子をポリエチレンジオキシチオフェンとし、ポリアニオンをポリスチレンスルホン酸とした導電性高分子溶液でも良い。
本発明の別の実施の形態は、また、バインダをさらに含む導電性高分子溶液でも良い。
本発明の別の実施の形態は、さらに、バインダにアルコキシシリル基を有する導電性高分子溶液でも良い。
本発明の一実施の形態は、上述のいずれか1つの導電性高分子溶液の硬化体としての導電性塗膜である。
本発明によれば、高導電性を有し、かつ溶液安定性にも優れた導電性高分子溶液及びそれを硬化して成る導電性塗膜を提供することができる。
次に、本発明の導電性高分子溶液及び導電性塗膜の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態に記載の構成要素は、本発明にとって必ずしも必須であるとは限らない。
1.導電性高分子溶液
この実施の形態に係る導電性高分子溶液は、導電性高分子と、少なくとも水を含む溶媒とを有する。該導電性高分子は、π共役系導電性高分子と、そのπ共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、そのポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンとオキシラン基又はオキセタン基と反応した化合物と、を含む。加えて、導電性高分子溶液のpHは、2.5以上6.5以下である。ここで、上記溶媒は、有機溶剤を含んでいても良い。また、導電性高分子溶液は、バインダをさらに含んでいても良い。本願で用いられるポリアニオンをドーパントとしている導電性高分子は、好ましくは、おおよそ数十ナノメータの粒子径を持つ微粒子から形成される。かかる微粒子は、界面活性剤の作用をも持つポリアニオンの存在によって可視光領域において透明であって、溶媒中に微粒子が溶解しているように見える。実際には、当該微粒子は溶媒中に分散しているが、本願では、この状態を「分散可溶化」の状態と称している。
1.1 導電性高分子
(1)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば好適に使用できる。π共役系導電性高分子としては、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は、無置換のままでも、充分な導電性、バインダへの相溶性を得ることができるが、導電性及びバインダへの分散性又は溶解性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入しても良い。このようなπ共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種以上からなる(共)重合体を、抵抗値、反応性の点から好適に用いることができる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性を向上させることができる点で、より好ましい。また、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)のようなアルキル置換化合物は、溶媒溶解性、疎水性樹脂を添加した場合の相溶性及び分散性を向上させる観点から、より好ましい。また、アルキル基の中では、導電性に悪影響を与えることがないメチル基がより好ましい。
(2)ポリアニオン
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に制約無く用いることができる。アニオン性化合物とは、分子中に、π共役系導電性高分子への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さ及び高い安定性の観点から、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、π共役系導電性高分子へのドープ効果に優れる理由から、スルホ基あるいはカルボキシ基がより好ましい。
ポリアニオンとしては、例えば、アニオン基を有さないポリマーをスルホン化剤によりスルホン化等を行ってポリマー内にアニオン基を導入したポリマーの他、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得られたポリマーを挙げることができる。通常、ポリアニオンは、製造の容易さの観点から、好ましくは、アニオン基含有重合性モノマーを重合して得る。かかる製造方法としては、例えば、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下、酸化重合またはラジカル重合させて得る方法を例示できる。より具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保持し、そこに、予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解しておいた溶液を添加して、所定時間で反応させる。当該反応により得られたポリマーは、触媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させることもできる。アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び/又は酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
アニオン基含有重合性モノマーは、分子内にアニオン基と重合可能な官能基を有するモノマーであり、具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸及びその塩類、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリロイルオキシエチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリロイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、アクリロイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、3−ブテノイルオキシエチルスルホン酸(CHCHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、3−ブテノイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシエチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシプロピルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシフェニレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C−SOH)及びその塩類、4−ペンテノイルオキシナフタレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C10−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシエチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシプロピルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシ−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシ−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシフェニレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C−SOH)及びその塩類、メタクロイルオキシナフタレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C10−SOH)及びその塩類等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
こうして得られるポリアニオンの重合度は、特に限定されるものではないが、通常、モノマーの単位が10〜100,000程度であり、溶媒可溶化、分散性及び導電性を良好にする観点から、50〜10,000程度とするのがより好ましい。
ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリロイルオキシエチルスルホン酸、ポリアクリロイルオキシブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)を好適に挙げることができる。得られたアニオン性化合物がアニオン塩である場合には、アニオン酸に変質させるのが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法などを挙げることができる。これらの方法の中でも、作業容易性の観点から、限外ろ過法が好ましい。ただし、金属イオン濃度を低減することを要する場合には、イオン交換法を用いるのが好ましい。
π共役系導電性高分子とポリアニオンとの組み合わせとしては、それらの各グループから選択されたものを使用できるが、化学的安定性、導電性、保存安定性、入手容易性などの観点から、π共役系導電性高分子の一例であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、ポリアニオンの一例であるポリスチレンスルホン酸との組み合わせが好ましい。ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とは、前述のように、導電性高分子用のモノマーとドーパントが共存した水溶液または水分散液の状態で酸化剤の存在下にて重合を行い、合成しても良い。また、市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体を使用しても良い。市販の導電性高分子/ドーパント水分散体としては、例えば、「Clevios」(商品名、ヘレウス社製、PEDOT/PSSの水分散体)、「Orgacon」(商品名、アグファ社、PEDOT/PSSの水分散体)等が挙げられる。
ポリアニオンの含有量は、好ましくはπ共役系導電性高分子100質量部に対して10〜1,000質量部の範囲、より好ましくは50〜500質量部の範囲である。ポリアニオンの含有量を10質量部以上とすることにより、π共役系導電性高分子へのドーピング効果を高め、導電性を高めることができる。加えて、溶媒への溶解性が高くなり、均一分散形態の導電性高分子の溶液を得やすくなる。一方、ポリアニオンの含有量を1000質量部以下にすると、π共役系導電性高分子の含有割合を相対的に多くすることができ、より高い導電性を発揮させることができる。
(3)ポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンとオキシラン基又はオキセタン基と反応した化合物
ポリアニオンの内でドープに寄与しないアニオンと、オキシラン基又はオキセタン基含有有機化合物との反応生成物は、前述のπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体に、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を添加して反応させることにより得られる。例えば、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体溶液と、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物とを混合し、0℃から100℃の温度で攪拌混合することにより得られる。必要により、メタノール、エタノール等の水溶性溶媒や界面活性剤を加えた混合溶媒中で反応を行っても良い。反応後は、エバポレーター等で溶媒や水、用いたオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の一部を除き、必要な濃度に調整しても良い。
オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物としては、ポリアニオンのアニオン基または電子吸引基に配位あるいは結合するものであれば、特に限定されない。1分子中に1個以下のオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を用いると、凝集やゲル化を低減できる点でより好ましい。オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の分子量は、有機溶剤への易溶解性を考慮すると、好ましくは50〜2,000の範囲である。
オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の量は、pHを2.5以上6.5以下とするためにも、好ましくは、π共役系導電性高分子のポリアニオン中のアニオン基あるいは電子吸引基に対して、重量比で0.1〜50であり、より好ましくは1.0〜40.0である。オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の量を上記重量比で0.1以上とすると、上記pHの範囲に調製しやすく、かつオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を、有機溶剤を多く含む溶媒にも溶解する程度に変性することが出来る。また、これらを水や有機溶媒で多量に希釈するとさらにpHを6.5近くまであげることができる。一方、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の量を上記重量比で50以下とすると、上記pHの範囲に調製しやすく、かつ余剰のオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物が導電性高分子溶液中に析出しにくいので、得られる導電性塗膜の導電率及び機械的物性の低下を防止しやすい。
オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物としては、オキシラン基若しくはオキセタン基を分子中に有していればどのような分子構造を持つ化合物でも良い。ただし、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物としては、炭素数4以下のものが好ましく、OH基を有する場合においては炭素数が5以上でも良い。製造工程中において水を多用する場合には、加水分解や水と反応する官能基を有するアルコキシシリル基を含有する化合物は、なるべく使用しないのが好ましい。一方、凍結乾燥を経由の製造方法の場合には、アルコキシシリル基を含有する化合物もまた、その特徴を維持したまま溶剤に分散あるいは可溶するので、使用しても良い。
以下、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を例示する。
(オキシラン基含有有機化合物)
単官能オキシラン基含有有機化合物としては、プロピレンオキサイド(酸化プロピレン)、2,3−ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシエイコサン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−9−デカン、2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2−エポキシシクロオクタン、グリシジルメタクリレート、1,2−エポキシシクロドデカン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1H,1H,2H,2H,3H,3H−ヘプタデカフルオロブタン、3,4−エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ琥珀酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α−ピネンオキサイド、2,3−エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3−[2−(パーフルオロヘキシル)エトキシ]−1,2−エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−3−(3−グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10−エポキシ−1,5−シクロドデカジエン、4−tert−ブチル安息香酸グリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、2−tert−ブチル−2−[2−(4−クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール−5α,6α−エポキシド、スチルベンオキサイド、p−トルエンスルホン酸グリシジル、3−メチル−3−フェニルグリシド酸エチル、N−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)ペルフルオロ−n−オクチルスルホンアミド、(2S,3S)−1,2−エポキシ−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−4−フェニルブタン、3−ニトロベンゼンスルホン酸(R)−グリシジル、3−ニトロベンゼンスルホン酸−グリシジル、パルテノリド、N−グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4−グリシジルオキシカルバゾール、7,7−ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]などを例示できる。これらの例示物の中では、酸化プロピレン、グリシドールがより好ましい。
多官能オキシラン基含有有機化合物としては、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、イソシアヌル酸トリグリシジルネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2:3,4−ジエポキシブタン、ポリエチレングリコール#200ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどを例示できる。
(オキセタン基含有有機化合物)
単官能オキセタン基含有有機化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(=オキセタンアルコール)、2−エチルヘキシルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メタアクリレートなどを例示できる。
多官能オキセタン基含有有機化合物としては、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ベンゼンジカルボン酸,ビス{[3−エチル−3−オキセタニル]メチル}エステルなどを例示できる。
以上のように、導電性高分子は、ポリアニオンのドープに寄与していないアニオン基にオキシラン基若しくはオキセタン基が反応しているため、ポリアニオンのアニオン基に由来する溶液の強酸性を弱酸性の域(具体的には、pH=2.5以上6.5以下)に上げることができる。
1.2 溶媒
導電性高分子溶液を構成する溶媒は、少なくとも水を含む。溶媒中の好ましい水の含有率は、10〜99.9%である。溶媒に、有機溶剤を含めることもできる。有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒; クレゾール、フェノール、キシレノール等に代表されるフェノール類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等に代表されるアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等に代表されるケトン類; 酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等に代表されるエステル類; ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される炭化水素類; ギ酸、酢酸等に代表されるカルボン酸; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表されるカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等に代表されるエーテル化合物; エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等に代表される鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等に代表されるニトリル化合物などを好適に例示できる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を混合して用いても良い。これらの有機溶剤の内、種々の有機物との易混合性の観点から、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類をより好適に用いることができる。導電性高分子溶液を用いて塗膜を形成する場合、固形の導電性高分子を溶媒に分散可溶化させて塗料を製造し、それを基材に塗布して有機溶剤の一部若しくは全部を除去する。したがって、有機溶剤としては、沸点の低いものを好適に選択する。これにより、塗膜形成時の乾燥時間を短縮でき、もって塗膜の生産性を高めることができる。
1.3 その他添加物
(1)バインダ
導電性高分子溶液は、導電性塗膜の耐傷性や硬度を高くし、塗膜と基材との密着性を向上させる観点から、好適には、バインダの機能を持つ樹脂(バインダ、あるいはバインダ樹脂とも称する)を含んでも良い。バインダは、好ましくは、アルコキシシリル基を含む。好適なバインダは、アルコキシシラン、アルコキシシランの縮合物、該アルコキシシランの縮合物とそれに反応可能な反応性樹脂との反応物であり、π共役系導電性高分子同士を結着させる機能を持つ。
アルコキシシランの縮合物は、アルコキシシランを加熱、脱水させて得たものである。アルコキシシランとしては、有機官能基(例えば、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基等)を有しているものが好ましい。有機官能基はケイ素原子に直接結合していてもよいし、炭素数1〜10の2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合していてもよい。
有機官能基を有するアルコキシシランの具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、9−デセニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、上記化合物のうち、耐溶剤性がより高くなる点では、β−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシランがより好ましい。また、上記有機官能基を有するアルコキシシランは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルコキシシランは、有機官能基を有さないものであってもよい。有機官能基を有さないテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。これらの中でも、アルコキシシラン基が容易に加水分解することから、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランが好ましい。有機官能基を有さないアルコキシシラン1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
反応性樹脂は、アルコキシシランの縮合物と反応可能な官能基を有するものである。アルコキシシランの縮合物と反応可能な官能基は、具体的には、アルコキシシランの縮合物の加水分解により生成するシラノールと反応可能な官能基、または、アルコキシシランの縮合物が有する有機官能基と反応する官能基である。このような官能基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ニトリル基、ヒドロキシ基、ニトリル基、アミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基などが挙げられる。これら官能基の中でも、耐溶剤性の面からエポキシ基が好ましい。反応性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アルコキシシランとの反応性、基材との密着性の面から、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
導電性高分子溶液中のバインダの含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計を100質量部とした際の200〜9,000質量部であることが好ましく、500〜6,000質量部であることがより好ましい。バインダの含有量が200質量部以上であれば、得られる導電性塗膜の耐溶剤性をより高くでき、9,000質量部以下であれば、充分な帯電防止性を確保できる。
(2)導電性向上剤
導電性高分子溶液は、塗膜の導電性をさらに向上させるべく、下記の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を有するのが好ましい。
(2.1)窒素含有芳香族性環式化合物
(2.2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(2.3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2.4)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(2.5)アミド基を有する化合物
(2.6)イミド基を有する化合物
(2.7)ラクタム化合物
(2.8)その他
(2.1)窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、好適には、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール(N−ヒドロキシエチルイミダゾール)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
(2.2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
(2.3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物; ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
(2.4)1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
(2.5)アミド化合物
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
また、アミド化合物として、アクリルアミドを使用することもできる。アクリルアミドとしては、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどが挙げられる。アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
(2.6)イミド化合物
イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
また、イミド化合物は、両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方または両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。その具体例としては、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
(2.7)ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素または任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
(2.8)その他
上記以外に、ジメチルスルホキシド(DMSO); ヒドロキシエチルアクリレート、乳酸エチル等のヒドロキシ基含有カルボン酸エステル化合物; エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のヒドロキシ基含有エーテル化合物を、導電性向上剤に使用しても良い。
導電性向上剤の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計量100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、30〜5,000質量部であることがより好ましい。導電性向上剤の含有量が前記下限値以上で上限値以下であれば、帯電防止性をより向上させることができる。
2.導電性高分子溶液の製造方法
この実施の形態に係る導電性高分子溶液は、一例として、以下の方法によって製造することができる。
2.1 導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体の溶液からの製造方法
導電性高分子/ポリアニオン錯体水分散体は、導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行う。ただし、このようなモノマーからの重合のみならず、市販の導電性高分子/ドーパント水分散体を用いても良い。市販の導電性高分子/ドーパント水分散体としては、例えば、Heraeus社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Clevios)、アグファ社のPEDOT/PSS水分散体(商品名: Orgacon)などを挙げることができる。次に、上記水分散体に、最終的に得られる塗料のpHが2.5〜6.5の範囲になるようにオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を添加後、撹拌する。この結果、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の環状エーテルが開環し、そこに、ポリアニオン中のドープに寄与していないアニオン基のOHが反応する。その後、得られた反応液を濃縮、濾別あるいは乾固すると、導電性高分子が得られる。その後、得られた固形の導電性高分子を、溶媒中に可溶若しくは分散させて、導電性高分子溶液を得る。その他の添加物を加える場合には、予め溶媒中に当該添加物を混合し、あるいは導電性高分子と共に当該添加物を溶媒に混合するのが好ましい。導電性高分子溶液は、その後、塗料の形態で使用される。また、上記水分散体に、オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物を溶剤と共に添加後、好ましくはアニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させている間若しくは反応後に、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に導電性高分子を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、溶媒中に、導電性高分子を可溶若しくは分散させても良い。
2.2 凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン錯体固形物からの製造方法
既に固体となっているπ共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンの状態の導電性高分子に、水及び/またはオキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物が溶解する溶媒を適量添加後、好ましくはアニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させる。その後、反応液を濃縮、濾別あるいは乾固する。その後、好適には、得られた濃縮物あるいは固体を、溶媒中に可溶若しくは分散させて、塗料の形態で使用する。また、上記製造において、アニオンとオキシラン基若しくはオキセタン基とを反応させた後、水に不溶の有機溶剤を加えて、水不溶の溶剤相に導電性高分子を転相させ、必要に応じて脱水などの工程を経た後に、導電性高分子を、溶媒中に可溶若しくは分散させても良い。この方法によれば、凍結乾燥された導電性高分子を原料として用いているので、特に、濃縮する工程の時間を短縮できる。
オキシラン基及び/又はオキセタン基含有有機化合物の量は、最終的に得られる塗料のpHが2.5〜6.5の範囲になる量である。例えば、PEDOT−PSS系の導電性高分子を含む水溶液100gに酸化プロピレンを添加する場合、酸化プロピレンの添加量は、4g以上49g以下、好ましくは5g以上25g以下である。また、PEDOT−PSS系の導電性高分子を含む水溶液100gにグリシドールを添加する場合、グリシドールの添加量は、5g以上40g以下、好ましくは8g以上35g以下である。
3.導電性塗膜
この実施の形態に係る導電性塗膜は、前述の導電性高分子溶液の硬化体である。この導電性塗膜は、前述の導電性高分子溶液から溶媒の大部分若しくは全部が揮発して、溶媒中に存在する導電性高分子及び存在する場合にはその他添加物が薄い膜状に固化したものである。導電性高分子は、π共役系導電性高分子にポリアニオンがドープし、そのポリアニオン中のドープに寄与していないアニオンと、オキシラン基又はオキセタン基とが反応した化合物を含む。導電性高分子溶液が既に少なくとも水を含む溶媒中に可溶若しくは分散させた状態の溶液である場合にはそのまま若しくは有機溶剤でさらに希釈して塗料とする。塗料は、紙、PET等のプラスチック、鉄、セラミックス、ガラスに代表される基体上に供給される。供給方法としては、刷毛やバーコーターを使う塗布法、塗料中に基体を浸漬するディップ法、塗料を基体上に滴下して基体を回転させて塗料を拡げるスピンコート法などの種々の手法を例示できる。基体上の塗料の硬化法は、加熱し若しくは室温で有機溶剤を除去する方法の他、紫外線などの光や電子線を照射して硬化する方法などを例示できる。
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
<製造例>
(製造例1)・・・ポリスチレンスルホン酸の製造
1,000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1,000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1,000ml溶液を除去し、残液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。得られたポリスチレンスルホン酸についてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。
(製造例2)・・・PEDOT−PSS水溶液の製造
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2,000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2,000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2,000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2,000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去し、これに2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2,000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2,000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPEDOT−PSSの水溶液を得た。
<実施例>
(実施例1)
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液100gに対し酸化プロピレンを6.25g添加してから8時間攪拌し、溶液を作製した。
(実施例2)
酸化プロピレンを12.5gに変更した以外は実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例3)
酸化プロピレンを25.0gに変更した以外は実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例4)
酸化プロピレンの代わりにグリシドール8.2gを用いた以外を実施例1と同様に溶液を作製した。
(実施例5)
グリシドールの添加量を16.4gに変更した以外を実施例4と同様に溶液を作製した。
(実施例6)
実施例2の溶液100gを用いてオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を20g、イオン交換水250g、エタノール250gを添加し、溶液を作製した。
<比較例>
(比較例1)
製造例2のPEDOT−PSS水溶液を用意した。
(比較例2)
酸化プロピレンを3.2gに変更した以外を実施例1と同様に溶液を作製した。
(比較例3)
グリシドールを4.1gに変更した以外を実施例4と同様に溶液を作製した。
(比較例4)
実施例2の溶液に代えて比較例1のPEDOT−PSS水溶液を用いた以外を、実施例6と同様に溶液を作製した。
(比較例5)
実施例2の溶液100gに代え、製造例2のPEDOT−PSS100gに対して炭酸水素ナトリウム0.032gを添加した溶液を用い、それ以外を実施例6と同様に溶液を作製した。
(比較例6)
製造例2のPEDOT−PSS100gに対して炭酸水素ナトリウム0.032gを添加した溶液に代え、製造例2のPEDOT−PSS100gに対してトリエチルアミン0.32gを添加した溶液を用いる以外を比較例5と同様に溶液を作製した。
<実験1>
得られた水溶液の内、実施例1〜5及び比較例1〜3は溶液のpHの測定(HORIBA)を行い、メタノールで2倍に希釈し、バーコーターNo.04で塗工し、120℃、1minで乾燥して塗膜を作製した。塗膜の抵抗値は、低抵抗計ロレスタ(三菱化学アナテリック)で印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。各種配合と結果とを表1に示す。
Figure 0006634246
<実験2>
次に、実施例6、比較例4〜6溶液は、溶液のpH測定後、次のように塗膜の作製を行った。すなわち、バーコーターNo.04で塗工し、120℃、30minで乾燥して塗膜を作製した。塗膜の抵抗値は、高抵抗計ハイレスタ(三菱化学アナテリック)で印加電圧10V、印加時間10秒の条件で測定した。各種配合と結果とをそれぞれ表2及び表3に示す。
Figure 0006634246
Figure 0006634246
<考察>
比較例1と比較して酸化プロピレン、グリシドールを添加したものはどれもpHが上昇していた。また、加えて表面抵抗値が下がるという結果が得られた。また、バインダ成分としてアルコキシシリル基を有するオルトケイ酸テトラエチルを添加し、水とエタノールで希釈した実施例6は、溶液が安定し、高導電性、pHが中性に近づくといった結果が得られた。
本発明は、導電性塗膜、例えば、剥離紙、帯電防止フィルム、導電性塗料、タッチスクリーン、有機LED、有機EL、リチウム二次電池、有機薄膜太陽電池、導電性高分子繊維などに有効に利用できる。

Claims (1)

  1. π共役系導電性高分子と、前記π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンとを含む導電性高分子を、少なくとも水を含む溶媒に分散または溶解した溶液を用意し、
    前記ポリアニオンの内ドープに寄与しないアニオンと、溶液のpHを2.6以上5以下とするために必要な量のオキシラン基又はオキセタン基含有有機化合物の該オキシラン基又はオキセタン基と、を反応させることにより、前記溶液のpHを2.6以上5以下とすることを特徴とする導電性高分子溶液の製造方法。
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