JP6372918B2 - 導電性組成物、導電性組成物の製造方法、帯電防止樹脂組成物ならびに帯電防止樹脂皮膜 - Google Patents
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Description
1.導電性組成物
本発明の実施の形態に係る導電性組成物は、(a)π共役系導電性高分子と、(b)ポリアニオンと、(c)下記の化学式(1)で表される化合物と、を含む。本願において、(c)下記の化学式(1)で表される化合物は、この実施の形態に係る導電性組成物中に単に分散していても良く、また、(b)ポリアニオンと反応して反応生成物を形成していても良い。この実施の形態に係る導電性組成物は、水を主とする溶媒に分散したものでも良く、また有機溶剤を主とする溶媒に分散したものでも良い。
この実施の形態に係る導電性組成物は、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に、前記化学式(1)で表される化合物を添加し、少なくとも水分を除去する工程を含む製造方法にて得られる。また、この実施の形態に係る導電性組成物は、前記化学式(1)で表される化合物を、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に添加し、水に不溶の有機溶媒への転相を行い、少なくとも水分を除去する工程を含む製造方法にて得ることもできる。さらに、この実施の形態に係る導電性組成物は、前記化学式(1)で表される化合物を、予め水分を低減したπ共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の乾燥固体に添加する工程を含む製造方法にて得ることもできる。
(1)導電性高分子/ポリアニオン複合体を分散させた水分散体からの製造方法
導電性高分子/ポリアニオン複合体を分散させた水分散体は、導電性高分子用のモノマーとドーパントとが共存した水溶液または水分散体の状態に、酸化剤の存在下で重合を行うことで得られる。ただし、このようなモノマーからの重合のみならず、市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体を用いても良い。市販の導電性高分子/ドーパント複合体の水分散体としては、例えば、Heraeus社のPEDOT/PSS複合体の水分散体(商品名: Clevios)、アグファ社のPEDOT/PSS複合体の水分散体(商品名: Orgacon)などを挙げることができる。
(2−a)
凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン複合体の固形物を、カルボン酸ハライドを含む水溶液に入れて撹拌し、ろ過を行った後、ろ取したものを水洗し、塩化水素を抜く。最後に、有機溶剤を加えることにより、導電性組成物を得る。
有機溶剤中に、凍結乾燥された導電性高分子/ポリアニオン複合体の固形物を入れ、さらに、そこにカルボン酸ハライドを入れ、導電性組成物を得る。
(a)π共役系導電性高分子
π共役系導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば、何らの限定もなく用いることができる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体を好適に挙げることができる。重合の容易性、空気中における安定性の観点では、特に、ポリピロール類、ポリチオフェン類あるいはポリアニリン類を好適に用いることができる。π共役系導電性高分子は、無置換のままでも、十分に高い導電性およびバインダへの相溶性を示すが、導電性、バインダへの分散性若しくは溶解性をより高めるためには、アルキル基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基などの官能基が導入されても良い。
ポリアニオンは、アニオン性化合物であれば、特に制約無く用いることができる。アニオン性化合物とは、分子中に、(a)π共役系導電性高分子への化学酸化ドーピングが起こりうるアニオン基を有する化合物である。アニオン基としては、製造の容易さおよび高い安定性の観点から、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基、などが好ましい。これらのアニオン基の内、(a)π共役系導電性高分子へのドープ効果に優れる理由から、スルホ基あるいはカルボキシ基がより好ましい。
化学式(1)で表される化合物(カルボン酸ハライド)としては、化学式(1)中のRについては特に制約がなく、XについてはCl、Br、I、Fのいずれかであれば、特に限定されない。また、ポリアニオンのアニオン基または電子吸引基に配位あるいは結合するものであれば、より好ましい。カルボン酸ハライドの分子量は、有機溶剤への易溶解性を考慮すると、好ましくは50〜2,000の範囲である。カルボン酸ハライドの量は、好ましくは、π共役系導電性高分子のポリアニオン中のアニオン基あるいは電子吸引基に対して、重量比で0.1〜50であり、より好ましくは1.0〜30.0である。カルボン酸ハライドの量を上記重量比で0.1以上とすると、カルボン酸ハライドを、ポリアニオンのアニオン基が溶剤に溶解する程度に変性することが出来る。一方、カルボン酸ハライドの量を上記重量比で50以下とすると、余剰のカルボン酸ハライドが導電性高分子溶液中に析出しにくいので、得られる導電性塗膜の導電率および機械的物性の低下を防止しやすい。
導電性組成物は、導電性塗膜の耐傷性や硬度を高くし、塗膜と基材との密着性を向上させる観点から、好適には、バインダの機能を持つ樹脂(バインダ、あるいはバインダ樹脂とも称する)を含む。バインダ樹脂は、上記(a)〜(c)の各成分と異なり、この実施の形態に係る導電性組成物に含めても、あるいは含めなくても良い。バインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂の他、熱可塑性樹脂であっても良い。π共役系導電性高分子は、親水性ではなく、親油性であるため、特に疎水性樹脂と相溶しやすい。バインダ樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル; ポリイミド; ポリアミドイミド; ポリアミド6,ポリアミド6,6,ポリアミド12,ポリアミド11等のポリアミド; ポリフッ化ビニリデン,ポリフッ化ビニル,ポリテトラフルオロエチレン,エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー,ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂; ポリビニルアルコール,ポリビニルエーテル,ポリビニルブチラール,ポリ酢酸ビニル,ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂; エポキシ樹脂; キシレン樹脂; アラミド樹脂; ポリイミドシリコーン; ポリウレタン; ポリウレア; メラミン樹脂; フェノール樹脂; ポリエーテル; アクリル樹脂; シリコーン樹脂; ウレタン樹脂; およびこれらの共重合体や混合物などを好適に例示できる。
有機溶剤は、上記(a)〜(c)の各成分と異なり、この実施の形態に係る導電性組成物に含めても、あるいは含めなくても良い。導電性組成物を可溶化若しくは分散させる溶媒に用いられる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホニウムトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等に代表される極性溶媒; クレゾール、フェノール、キシレノール等に代表されるフェノール類; メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等に代表されるアルコール類; アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等に代表されるケトン類; 酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等に代表されるエステル類; ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等に代表される炭化水素類; ギ酸、酢酸等に代表されるカルボン酸; エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等に代表されるカーボネート化合物; ジオキサン、ジエチルエーテル等に代表されるエーテル化合物; エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等に代表される鎖状エーテル類; 3−メチル−2−オキサゾリジノン等に代表される複素環化合物; アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等に代表されるニトリル化合物などを好適に例示できる。これらの有機溶剤は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を混合して用いても良い。
導電性組成物を可溶あるいは分散させた溶媒への添加剤として、例えば、導電性を向上させるものを挙げることができる。
導電性組成物の製造の際、塗膜の導電性をさらに向上させるべく、下記(f1)〜(f8)の化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を添加するのが好ましい。
(f1)窒素含有芳香族性環式化合物
(f2)2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
(f3)2個以上のカルボキシ基を有する化合物
(f4)1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物
(f5)アミド基を有する化合物
(f6)イミド基を有する化合物
(f7)ラクタム化合物
(f8)グリシジル基を有する化合物
窒素含有芳香族性環式化合物としては、好適には、一つの窒素原子を含有するピリジン類およびその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体、ピラジン類およびその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類およびその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類およびその誘導体、イミダゾール類およびその誘導体、ピリミジン類およびその誘導体が好ましい。
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、D−グルコース、D−グルシトール、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、チオジエタノール、グルコース、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; セルロース、多糖、糖アルコール等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸およびその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸およびその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸およびその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸およびその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸およびその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸およびその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等の芳香族化合物、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物; ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸(チオジ酢酸)、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
1個以上のヒドロキシ基および1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素および尿素誘導体などが挙げられる。アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グリコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、ピルボアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素およびこれらの誘導体等が挙げられる。
イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミドおよびフタルイミド誘導体、スクシンイミドおよびスクシンイミド誘導体、ベンズイミドおよびベンズイミド誘導体、マレイミドおよびマレイミド誘導体、ナフタルイミドおよびナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素または任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
1.帯電防止樹脂組成物
本発明の実施の形態に係る帯電防止樹脂組成物は、上述の導電性組成物と、有機溶剤に溶解した樹脂溶液とを混合してなる。当該樹脂溶液は、上述の(d)バインダ樹脂と(e)有機溶剤とを含む。したがって、帯電防止樹脂組成物は、上述の(a)〜(d)の成分を含む。
本発明の実施の形態に係る帯電防止樹脂皮膜は、上述の帯電防止樹脂組成物から有機溶剤を低減せしめ硬化して成る膜である。導電性組成物が固形の場合には、それを、有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させた溶液から帯電防止樹脂組成物(塗料)を用意する。また、導電性組成物が既に有機溶剤を主とする溶媒中に可溶若しくは分散させた状態の溶液である場合にはそのまま若しくは有機溶剤でさらに希釈して帯電防止樹脂組成物(塗料)を用意する。塗料は、紙、プラスチック、鉄、セラミックス、ガラスに代表される基体上に供給される。供給方法としては、刷毛やバーコーターを使う塗布法、塗料中に基体を浸漬するディップ法、塗料を基体上に滴下して基体を回転させて塗料を拡げるスピンコート法などの種々の手法を例示できる。基体上の塗料の硬化法は、加熱により有機溶剤を除去する方法の他、紫外線などの光や電子線を照射して硬化する方法などを例示できる。
(製造例1)・・・ポリスチレンスルホン酸の製造
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃にて攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、その溶液を12時間攪拌した。得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に、10質量%に希釈した硫酸を1000ml添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の1000ml溶液を除去し、残液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。さらに、得られたろ液に約2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形物を得た。得られたポリスチレンスルホン酸についてGPC(ゲル濾過クロマトグラフィー)カラムを用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを用いて、昭和電工株式会社製プルランを標準物質として重量平均分子量を測定した結果、分子量は30万であった。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、製造例1で得た36.7gのポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。これにより得られた混合溶液を20℃に保ち攪拌を行いながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくりと添加し、3時間攪拌して反応させた。得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。次に、得られた溶液に、200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水とを加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。さらに、得られた溶液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの溶液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のPEDOT−PSSの水溶液を得た。
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとブチリルクロリド3.87gを混合し、スターラーを用いて室温にて1時間攪拌した。得られた溶液にメタノール100gを添加し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、高圧分散して0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとラウロイルクロリド7.95gを混合し、スターラーを用いて室温にて1時間攪拌した。得られた溶液にメタノール100gを添加し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、高圧分散して0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとパルミトイルクロリド9.90gを混合し、スターラーを用いて室温にて1時間攪拌した。得られた溶液にメタノール100gを添加し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、高圧分散して0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gとメタノール100gとC12、C13混合高級アルコールグリシジルエーテル12.5gを混合し、スターラーを用いて60℃で4時間攪拌し、析出した固形物を、ろ取した。得られた固形物に150gのメチルエチルケトンを加え、0.5%濃度の導電性高分子溶液を得た。
実施例1
製造例3で得られた導電性高分子溶液を#14のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥後、ローレスタ(三菱化学社製)を用いて表面抵抗値を測定した。測定結果を表1に示す。
製造例4で得られた導電性高分子溶液をPETフィルム上に塗布した以外、実施例1と同様の方法で塗膜を形成した。表面抵抗値の測定結果を表1に示す。
製造例5で得られた導電性高分子溶液をPETフィルム上に塗布した以外、実施例1と同様の方法で塗膜を形成した。表面抵抗値の測定結果を表1に示す。
製造例4で得られた導電性高分子溶液9gにKS−3703T(信越化学工業社製、付加型シリコーン、固形分:30%、溶媒:トルエン溶液)1gとCAT−PL−50T(信越化学工業社製、白金触媒)0.02gとを添加して、塗料を作製した。得られた塗料を#14のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、150℃で1分間乾燥後、ハイレスタ(三菱化学社製)を用いて表面抵抗値を測定した。その測定結果を表1に示す。
製造例4で得られた導電性高分子溶液8.5gにバイロン240(東洋紡社製、ポリエステル樹脂、固形分:20%、溶媒:トルエン溶液)1.5gを添加して、塗料を作製した。得られた塗料を#14のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥後、ハイレスタ(三菱化学社製)を用いて表面抵抗値を測定した。その測定結果を表1に示す。
製造例6で得られた導電性高分子溶液を#14のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、100℃で1分間乾燥後、ローレスタ(三菱化学社製)を用いて表面抵抗値を測定した。その測定結果を表1に示す。
製造例6で得られた導電性高分子溶液9gにKS−3703T(信越化学工業社製、付加型シリコーン、固形分:30%、溶媒:トルエン溶液)1gとCAT−PL−50T(信越化学工業社製、白金触媒)0.02gとを添加して、塗料を作製した。得られた塗料を#14のバーコーターを用いてPETフィルム上に塗布し、150℃で1分間乾燥後、ハイレスタ(三菱化学社製)を用いて表面抵抗値を測定した。その測定結果を表1に示す。
製造例2で得られたPEDOT−PSS水溶液100gを、スターラーを用いて室温にて1時間攪拌した。得られた溶液にメタノール100gを添加しろ過したが、溶液全てがろ紙を通過し、固形物を得ることができなかった。
Claims (13)
- 前記(b)ポリアニオンと前記(c)化学式(1)で表される化合物との反応生成物を含む請求項1に記載の導電性組成物。
- 有機溶剤に可溶な(d)バインダ樹脂をさらに含む請求項1または請求項2に記載の導電性組成物。
- 前記(d)バインダ樹脂が硬化性オルガノポリシロキサン組成物である請求項3に記載の導電性組成物。
- 前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性組成物。
- 前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)またはポリピロールであることを特徴とする請求項5に記載の導電性組成物。
- 前記(b)ポリアニオンのアニオン基が、スルホン酸基、リン酸基およびカルボキシ基から選択される1種若しくは2種以上から成ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電性組成物。
- 前記(b)ポリアニオンが、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリル酸アルキレンスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)またはそれらの1種以上を共重合構成体として含むものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の導電性組成物。
- 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性組成物を製造する方法であって、
π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に、前記化学式(1)で表される化合物を添加し、少なくとも水分を除去する工程を含む導電性組成物の製造方法。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性組成物を製造する方法であって、
前記化学式(1)で表される化合物を、π共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の水分散体に添加し、水に不溶の有機溶媒への転相を行い、少なくとも水分を除去する工程を含む導電性組成物の製造方法。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性組成物を製造する方法であって、
前記化学式(1)で表される化合物を、予め水分を低減したπ共役系導電性高分子とそれにドープしたポリアニオンとの複合体の乾燥固体に添加する工程を含む導電性組成物の製造方法。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の導電性組成物と、有機溶剤に溶解した樹脂溶液とを混合してなる帯電防止樹脂組成物。
- 請求項12に記載の帯電防止樹脂組成物から有機溶剤を低減せしめ硬化して成る帯電防止樹脂皮膜。
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