JP6906509B2 - 塩味増強効果のある組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、塩味増強効果を有する組成物に関するものである。詳細には、健康等の観点からナトリウム塩の配合量を減量した飲食物について、低減した塩味を増強する方法、塩味が改善された飲食物、及び塩味増強効果のある組成物に関する。
食塩(塩化ナトリウム)は食品を調味する際の基本調味料として幅広く使用されているが、食塩の過剰摂取は高血圧、脳卒中、心筋梗塞などの成人病に繋がることが知られており、近年の健康志向により、減塩加工飲食品が多く提案され、商品化されている。
しかしながら、食塩は味の骨格であるため、食塩の量を低減した食品いわゆる減塩加工飲食品は食塩の不足により食味の点での満足度も低減されてしまう欠点があり、これを補うために様々な食塩代替物質や塩味増強物質がこれまでに提案されている。
食塩代替物質とはそれ自身が食塩味を呈する物質の事であり、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸からなるペプチド等が知られている。しかしながら、カリウム塩やマグネシウム塩は、食塩味の他に苦味を有し、特有の後味をもたらすという欠点を有する。これら不快な呈味を抑制する技術として、塩化カリウム、塩化アンモニウム、乳酸カルシウム、L−アスパラギン酸ナトリウム、L− グルタミン酸塩及び/又は核酸系呈味物質を特定の割合で混合してなる調味料組成物(特許文献1)、有機酸のカルシウム塩やマグネシウム塩を組み合わせた塩化カリウムの苦味抑制方法(特許文献2)等が知られている。また、特許文献3では、ナトリウム塩やカリウム塩を含有する飲食物における塩味を増強し、且つ、カリウム塩のエグ味をマスキングする方法が記載されている。しかしながら、未だなお、塩味以外の不快な呈味がある、塩味強度が低い等の理由で、消費者のニーズに合った減塩技術には達していない。
塩味増強物質は、食塩を代替することはできないが、食塩の塩味を増強することにより食塩の使用量の低減を可能とする物質である。塩味増強物質の例として、分子量50,000ダルトン以下のコラーゲンを加水分解して得られるペプチド(特許文献4)、各種蛋白素材の蛋白加水分解物(特許文献5)などが挙げられる。しかしながら、これらにおいても塩味強度がなお十分でない事や、蛋白を加水分解する際に発がん性物質であるクロロプロパノール類が副生される恐れがある事などから、さらに消費者のニーズにあった減塩技術が求められている。
このように、減塩方法として食塩代替物質を使用する方法や、食塩味増強物質を使用する方法が数多く提案されているが、嗜好性、効果、経済性、安全性等の点から未だ満足できる減塩方法は開発されておらず、上記の問題点を解決した減塩方法が強く望まれている。
特開平11−187841号公報 特開平4―108358号公報 WO2012/017710 特開昭63―3766号公報 特開平7−289198号公報
減塩した加工飲食品は、塩味が弱いため、食べた時に物足りなさを感じられることが多い。満足度を上げるために塩味代替物質や香料が使用されることが多いが、その添加効果が弱い、もしくは元の食品の風味を変えてしまう等の問題がある。そのため、本発明は、減塩加工飲食品に余分な味を付与することなく、その塩味を十分に増強することを課題とする。また、その際に用いるものは、安全性の高いものであることが望ましい。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究の結果、減塩加工飲食品などの一般加工飲食品に、食物繊維、中でも特定の比率でグルカン及びマンナンを含有する組成物を添加することで、違和感の少ない自然な塩味を増強させる効果があることを見出した。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
(1)グルカン及びマンナンを含み、そのグルカン:マンナンの組成比(重量比)が1:1.5〜1:25である塩味増強用組成物。
(2)上記(1)の組成物を飲食物に添加する塩味増強方法。
本発明の組成物は、加工飲食品に少量添加するだけで、その飲食品に異質な風味を付与することなく、塩味を増強することができる。本発明の組成物は、飲食品の塩味増強用組成物、塩味増強剤として使用することができる。
実施例1〜3、比較例1,2のサンプルについて、味覚センサー(アルファ・モス・ジャパン株式会社製電子味覚システム「Astree」)で分析した結果である。
本発明の組成物は、グルカン及びマンナンを含む組成物であり、望ましくはグルカン:マンナンの比率(重量比)が1:1.5〜1:25、望ましくは1:1.5〜1:20、より好ましくは1:1.5〜1:18、さらに望ましくは1:1.5〜1:14の組成物である。本発明で用いるグルカンの種類は、特に制限はない。例えば、酵母細胞壁由来、乳酸菌由来、植物由来などのグルカンを使用することができる。
本発明で用いるマンナンの種類は、特に制限はない。例えば、酵母細胞壁、こんにゃく芋などの植物細胞壁由来のマンナンを使用することができる。
本発明の組成物は、前段に例示された、由来の異なるグルカンとマンナンを混合しても良いし、また、同一由来からグルカン及びマンナンを抽出してきても良い。
同一原料からグルカン及びマンナンを取得する場合、例えば酵母の細胞壁成分から取得することができる。酵母細胞壁成分は、酵母エキス抽出後の残渣に多く含まれるため、本発明の組成物を効率的に得ることができる。酵母エキス抽出後の残渣とは具体的には、食用酵母について熱水、アルカリ性溶液、機械的破砕、細胞壁溶解酵素、蛋白質分解酵素、リボヌクレアーゼ、またはデアミナーゼのいずれか一つ以上を用いて抽出処理することにより酵母エキスを抜いた後の残渣である。このような残渣は一般的に、グルカン・マンナンを含む食物繊維や蛋白質、脂質を主要な成分とするものである。
グルカンとマンナンを本発明の組成物とする手段としては、個別のグルカンとマンナンを混合する方法の他に、例えば酵母エキス残渣を更に蛋白質分解酵素やリボヌクレアーゼで処理し、細胞壁成分が多く含まれる高分子成分を取得する方法が挙げられる。具体的には、酵母エキス残渣を熱水抽出もしくはグルカナーゼ処理したものに対し、プロテアーゼ処理とリボヌクレアーゼ処理を施す。それを分画分子量13000の分離ろ過膜で分離後、分子量13000以上のろ過液を回収して得られる。
前段までに得られたグルカン及び/又はマンナンを含む組成物、またはそれらを必要に応じて混合し、グルカン:マンナンの組成比が1:1.5〜1:25になるように調製したものは、本発明の塩味増強用組成物となる。なお、本発明の組成物中のグルカンとマンナンの含量及び組成比は、以下のように測定する。 試料溶液に硫酸を1Nとなるよう添加し、110℃、3.5hr加熱処理する。この間、細胞壁成分の多糖が単糖へ分解される。加熱処理後、水酸化バリウムにて、硫酸添加前の試料溶液のpHまで中和する。中和後、遠心分離し、得られた上清を0.45μmフィルターで濾過し、HPLCにてグルコース含量、マンノース含量を測定する(A)。他方、試料溶液を0.45μmフィルターで濾過したものについても、HPLCにてグルコース含量、マンノース含量を測定し、ブランク値とする(B)。グルコース、マンノースそれぞれについて、(A)から(B)を引いた値を基にして、試料中のグルカン含量とマンナン含量を計算し、それらの値から、試料中のグルカンとマンナンの含量比を求める。
Figure 0006906509
本発明の塩味増強用組成物を使用できる飲食品としては、主に減塩加工飲食品であり、その種類は特に制限がない。例えば、味噌、醤油、つゆ、たれ、ソース、ドレッシング、マヨネーズなどの調味料、ハム、ソーセージなどの畜肉加工品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工品、漬物、佃煮などの農産加工品、スープなど様々な食品が挙げられる。
減塩加工飲食品を含む一般加工飲食品に対する本発明品の添加量は、塩味を増強する食品に応じて適宜調整する。一般的に、本発明品のグルカン、マンナンの合計量が一般加工飲食品に対して0.01〜5重量%となるように添加することが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.1重量%である。0.01〜5重量%の範囲であれば、減塩加工飲食品を含む一般加工飲食品の塩味を自然に増強することができる。添加する食品によって異なるが、0.01重量%より少ない添加量では塩味増強の効果を認めにくく、また、5重量%より多い添加量では、塩味以外の風味がきわだったり、あるいはマスキングされてしまうことがある。
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。但し、本発明は、以下の様態に限定されるものではない。
<製造例1>
キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)酵母の10重量%菌体懸濁液1000mLを10N硫酸でpH3.5に調整し、60℃、30分間加熱処理した後、遠心分離で菌体を回収した。この菌体を水で洗浄し余分な抽出物を除去した。本菌体を水に懸濁し10重量%濃度に調整した後、90℃、30分間加熱して菌体内酵素を完全に失活させた。この菌体懸濁液を40℃、pH7.0に調整し、細胞壁溶解酵素(大和化成株式会社製「ツニカーゼ」)を加え4時間反応させることにより、エキスを抽出した。この反応後の組成物を45℃、pH8.0に調整し、蛋白質分解酵素(天野エンザイム株式会社製「プロチンNY」、ナガセケムテックス株式会社製「XPP488」)を作用させた後、90℃で加熱して酵素を失活させた。さらにこの組成物を69℃、pH5.8に調整し、リボヌクレアーゼ(天野エンザイム株式会社製「ヌクレアーゼ アマノG」)を作用させた後、90℃で加熱処理することで酵素を失活させた。得られた組成物溶液を分画分子量13000の分離ろ過膜(旭化成株式会社製「UFラボモジュールACP−1010D」)で分離した後、高分子側のろ過液を回収した。凍結乾燥にて粉末化し、グルカンとマンナンの合計の含有量が97%、グルカン:マンナンの含量(重量)比が1:2.5の組成物を取得した。
<製造例2>
製造例1において、40℃、pH7.0に調整、細胞壁溶解酵素(大和化成株式会社製「ツニカーゼ」)を加えて反応させる工程を除いた以外は製造例1と同様に行い、グルカンとマンナンの合計の含有量が87%、グルカン:マンナンの含量(重量)比が1:18.1の組成物を取得した。
<比較製造例3>
製造例2において、凍結乾燥する前のろ過液(分子量13000以上の画分)を40℃、pH7.0に調整し、細胞壁溶解酵素(大和化成株式会社製「ツニカーゼ」)を作用させ、次いで凍結乾燥にて粉末化した。得られた組成物は、グルカンとマンナンの合計の含有量が67.5%、グルカン:マンナンの含量(重量)比が1:37.4であった。
<比較製造例4>
比較製造例3において、凍結乾燥する前の溶液をさらに分画分子量13000の分離ろ過膜(旭化成株式会社「UFラボモジュールACP−1010D」)で分離した後、高分子側のろ過液を回収した。凍結乾燥にて粉末化し、グルカンとマンナンの合計の含有量が75.5%、グルカン:マンナンの含量(重量)比が1:31.8の組成物を取得した。
<実施例1>
1.0重量%の食塩水に、こんにゃく由来の食物繊維(清水化学株式会社製「レオレックスLM」)(グルカン:マンナン=1:1.6)を0.026重量%添加し、溶解した。官能評価を実施したところ、1.0重量%の食塩水と比較して、塩味が増して感じられた。
<実施例2>
1.0重量%の食塩水に、製造例1で取得した組成物(グルカン:マンナン=1:2.5)を0.026重量%添加し、溶解した。
<実施例3>
1.0重量%の食塩水に、製造例2で取得した組成物(グルカン:マンナン=1:18.1)を0.026重量%添加し、溶解した。
<比較例1>
1.0重量%の食塩水に、製造例3で取得した組成物(グルカン:マンナン=1:37.4)を0.026重量%添加し、溶解した。
<比較例2>
1.0重量%の食塩水に、製造例4で取得した組成物(グルカン:マンナン=1:31.8)を0.026重量%添加し、溶解した。
1.0重量%食塩水への添加により官能評価を実施した結果、実施例1、実施例2、実施例3のサンプルは、無添加の食塩水と比較して、塩味が増して感じられ、その中でも実施例2、実施例3のサンプルは塩味増強効果が明らかであった。一方、比較例1、比較例2のサンプルは、無添加の食塩水の味と比較して、差が感じられなかった。
これらのサンプルを味覚センサー(アルファ・モス・ジャパン株式会社製電子味覚システム「Astree」)で分析した結果を図1に示す。実施例2と実施例3のサンプルは顕著な塩味増強効果が見られ、特に実施例3については、1.3重量%の食塩水に近い位置にマッピングされた。以上のように、本発明の塩味増強用組成物は、客観的分析でも塩味増強効果が示された。
<実施例4>
表2に示す通り調製したチーズスープに、製造例2で取得した組成物を0.026重量%添加、溶解した。官能評価により、製造例2による組成物を添加したスープと添加していないものと比較したところ、前者は全体の味が濃く、塩味が強く感じられた。
Figure 0006906509

Claims (2)

  1. グルカン及びマンナンを含み、そのグルカン:マンナンの組成比(重量比)が1:1.5〜1:25である塩味増強用組成物。
  2. 請求項1記載の組成物を飲食物に添加する塩味増強方法。
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