JP2008161104A - 食肉加工用塩漬液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来のタンパク質分解酵素活性を有する抽出物を含有し、亜硝酸濃度10〜1000ppm、及び食塩濃度0.1〜20質量%である食肉加工用塩漬液。担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物のタンパク質分解酵素活性は、筋原線維タンパク質のアクチン、ミオシンを選択的に分解するので、適度な軟化度で反応が終結する。またハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物には、植物性の渋味、酵素臭がなく、さらにマイタケ由来のタンパク質分解酵素のように特有の強い風味を有していないため、食肉に作用させても異味を残さない。
【選択図】 なし
Description
老廃家畜、経産家畜、ホルスタイン種などの乳用種またはグラスフェッド肥育された肉用種等の硬い食肉を軟化するには、機械的な破壊によるスジ切りや挽肉加工が一般的であるが、食肉加工用塩漬剤にタンパク質分解酵素を加え改質剤して使用することがなされている。タンパク質分解酵素は、パパイヤ未熟果汁の乳液、パイナップルの根茎、豚の胃粘膜等に含まれており、糸状菌、酵母菌、細菌などの微生物にも広く含まれていることが知られている。例えば、パパイヤ乳液を精製して得られるパパインやパイナップルの茎から精製して得られるブロメラインは、非常に安定性の高い酵素であり、熱に強い性質を有することから食肉加工用塩漬液に使用されている(特許文献3)。さらに担子菌門ヒダシナタケ目多孔菌科のキノコに属するマイタケにもタンパク質分解酵素が知られており(特許文献4)、使用が期待されている。
酵素は、その反応において基質特異性が知られており、また、食肉加工用塩漬液に含まれる各種物質により、その活性が阻害されたり、それ自体が失活したりする。塩漬液のように比較的食塩濃度が高く、しかも亜硝酸など各種の配合成分を含有する液中で、充分な活性を保持し且つ食肉に所望の作用を発揮することは困難であることと考えられていた。
例えば、従来から報告されているパパイン、あるいはブロメラインを含む食肉加工用塩漬液は、タンパク質分解酵素が筋原線維タンパク質を低分子量まで過剰に分解するため食肉本来の食感が失われ易いという問題点があった。また、食肉加工用塩漬液に長時間保存すると酵素活性が失活する。さらに渋味、酵素臭と呼ばれる刺激性の臭いが強いため、風味を重視する食肉加工品の旨味を阻害し、異味を残してしまうという問題点があった。
また、担子菌門ヒダシナタケ目多孔菌科のキノコに属するマイタケに含有するタンパク質分解酵素も、パパインと同様に食肉を低分子量のオリゴペプチドおよびアミノ酸まで分解してしまう。マイタケに含有するタンパク質分解酵素は、マイタケ特有の風味が非常に強いため、食肉の風味に影響を与えてしまう問題点があった。
担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物のタンパク質分解酵素活性は、パパインやブロメラインとは異なり、食肉の硬さに関与するタンパク質のうち、筋原線維タンパク質のアクチン、ミオシンを選択的に分解するので、適度な軟化度で反応が終結する。またハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物には、植物性の渋味、酵素臭がなく、さらにマイタケ由来のタンパク質分解酵素のように特有の強い風味を有していないため、食肉に作用させても比較的異味を残さない。
担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物のタンパク質分解酵素活性は、亜硝酸、NaClなどの酵素活性阻害剤との共存下でも、その活性を維持できるので、長時間の使用あるいは繰り返し使用が可能である。
担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコであるホンシメジ、ブナシメジおよびエノキタケ等は、食用されてあり、アレルギー物質もない安全な食材である。今日では、人工栽培により、季節を問わず大量に同品質のものを入手することが可能であり、パパイヤやパイナップルのような果実系の酵素からの抽出よりも生産効率が高く、食肉加工用塩漬液を製造できる。
本発明の食肉加工用塩漬液において使用する、担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物のタンパク質分解酵素活性は下記の理化学的性質を有している。
(a)作用及び基質特異性:タンパク質及びペプチドに特異的に作用し、そのペプチド結合を切断するエンドタイプのプロテアーゼ活性を示す。
(b)亜硝酸塩
37℃、pH6.0の条件において、1000ppm亜硝酸塩存在下で、80%以上の相対活性を示す。
(c)耐塩性
37℃、pH6.0の条件において、15質量%の食塩存在下で、60%以上の相対活性を示す。
酵素活性はpH5.0〜7.0の範囲で安定であり、酵素活性の至適温度40℃で、55℃以下の温度では安定である。
他に、(1)水溶液中での保存安定性がよい、(2)水溶液中での振動に耐性がある、等の性質を有する。
水溶液中では、10℃、2日間、80%以上の相対活性を維持でき、タンパク質分解酵素でありながら自己失括が少ない。
また、ピックルインジェクターで水溶液を繰り返し2時間循環させても、相対活性が安定であり、空気に対する接触や機械的振動に耐えうる酵素活性を有する。
また、亜硝酸塩、食塩等の阻害物質に対して耐性があり、食肉加工用塩漬液に含ましても、抽出物のタンパク質分解酵素活性が維持される。
原料になる担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコとしては、ホンシメジ、ブナシメジ(シメジ)およびエノキタケを挙げることができる。種、原産国、収穫時期等は限定されず、適度にタンパク質分解酵素が存在していれば、キノコの子実体及び菌糸体いずれも使用することができる。
最近ではブナシメジ及びエノキタケの子実体が人工栽培されており、容易に入手できるので、本発明における原料として好適である。タンパク質分解酵素は子実体に多く含まれており、子実体の使用が経済的には適している。キノコは採取したての生のもの、半乾燥品、乾燥品いずれも使用しうる。半乾燥品、乾燥品においては、凍結乾燥品など熱風で乾燥されていない製品の使用が好ましい。これらの子実体をそのまま用いてもよく、ペーストあるいはエキスなどの加工物も使用しうる。生のものを液体窒素あるいはドライアイスを用いて凍結粉砕したもの、カッターミルやフードプロセッサー等で粉砕したものも使用できる。
水としては、イオン交換水、精製水、蒸留水、天然水の他、水道水も場合によっては、使用することができる。緩衝液としては、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、リンゴ酸緩衝液を使用できるが、特に緩衝剤の濃度10〜300mMでpH5.5〜7.0の範囲に調整したものを用いることにより、酵素活性の高い抽出液が得られるので好ましい。
まず、キノコの子実体と水との均質化処理を行う。処理にはミキサーを使用するが、酵素の失活がおこらないような条件であれば、ミキサーの種類、攪拌・混合手法、時間等は特に限定されない。攪拌・混合の時間は、例えば家庭用のミキサーを用いた場合、一般的には、1〜10分間程度が適しており、20℃以下に保持するとよい。
得られた抽出液を、場合により、凍結濃縮、減圧濃縮、限外濃縮などの適当な濃縮手段を用いて、濃縮し、抽出物を製造することもできる。
こうして得られる担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来の抽出物は、タンパク質分解酵素活性を有する以外に、食肉加工用塩漬液に含有させると、後味が残ることなく食肉特有の臭みをマスキングさせることができる他、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸のような旨味成分を含有するため、食肉の風味に深みを与えることができる。
本発明の食肉加工用塩漬液は、担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来のタンパク質分解酵素活性を有する抽出物を含有することを特徴とするが、食肉加工用塩漬液自体は従来公知の各種組成のものを使用可能である。
代表的な食肉加工用塩漬液としては、亜硝酸及び食塩とともに発色助剤、結着剤、保存料、調味料、香辛料及び結着補強剤から少なくとも1種を含有するものを例示できる。上記において亜硝酸としては例えば亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等の亜硝酸塩を使用してもかまわない。
発色助剤としては、L−アスコルビン酸又はそのナトリウム塩等の塩類、エリソルビン酸又はそのナトリウム塩等の塩類、ニコチン酸アミド等;結着剤としては、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の重合リン酸塩等;保存料としては例えばソルビン酸又はそのカリウム塩等の塩類等;調味料としてコハク酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5’−リボヌクレオチドナトリウム等の核酸系呈味物質、砂糖等の糖類、ソルビット等の糖アルコール類、デキストリン等の糖類等;香辛料としては、例えばコショウ、コリアンダー、ローレル、オールスパイス、ニクズク、トウガラシ、ウィキョウ、コズイシ、セージ、タイム、月桂樹葉、丁香、ショウガ、タマネギ、ニンニク、ケイ皮等;また結着補強剤としては卵白タンパク質、乳タンパク質、カゼイン類、ゼラチン、小麦タンパク質、大豆タンパク質等の動植物タンパク質、その部分分解物や澱粉等を挙げることができる。また上記食肉加工用液には必要に応じてタール系合成色素や植物性天然色素、食用赤色3号、食用赤色4号等の着色料等や食用油脂等を配合される場合もある。
上記各成分の配合量は、特に限定されるものではなく、原料肉の種類や目的に応じて適宜決定されるが、通常食塩では約5〜20質量%(塩漬液中濃度%、以下同じ)、好ましくは10質量%、発色剤として亜硝酸ナトリウムでは10〜1000ppm、好ましくは100ppmであることが好ましい。
本発明の食肉加工用塩漬液は、上記の本発明の食肉加工用塩漬液に、担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来のタンパク質分解酵素活性を有する抽出物の酵素活性を調整し、これを加えて製造するが、製造の際に、抽出液をそのまま加えたり、抽出物を含有する粉末を加えることもできる。
製造の際は、タンパク質分解酵素の失括を極力抑えるために20℃以下で製造することが好ましく、各種成分を水に溶解し調整する。
このようにして調整された本発明の食肉加工用塩漬液は、食肉としては、通常のハム、ソーセージ、ベーコン等に加工できる各種のもの、例えば牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉、羊肉等のいずれにも使用でき、これらはステーキ、角切り、薄切り、ミンチ等の各種の形態で、本発明の食肉加工用塩漬液を使用できる。例えば、浸漬法であれば原料肉を直接塩漬液に浸漬し、インジェクション法であれば、インジェクターにより原料肉に注入した後タンブリングを行い、浸漬される。
本発明の食肉加工用塩漬液の使用量は、インジェクターを使用する場合、食肉100質量部に対して10〜30質量部が好ましい。一方、漬け込みの場合、食肉100質量部に対して200〜500質量部が好ましい。使用温度は3〜18℃が好ましく、使用時間は24〜48時間が好ましい。
本発明の食肉加工用塩漬液は、食肉をこれに浸漬して使用するが、インジェクション法により食肉の内部にあらかじめ本発明の食肉加工用塩漬液を注入した食肉をさらに浸漬に使用してもよい。また、漬け込み工程を行わなくても、本発明の食肉加工用塩漬液を注入した食肉も軟化するのでそのまま使用することができる。
インジェクション法による注入の方法としては、例えば、ピックルインジェクター等の注入機を用いて、0〜10℃の食肉に注入する。注入液の液温は0〜30℃が好ましく、5〜15℃がより好ましい。注入後は、抽出物に含まれるタンパク質分解酵素による食肉タンパク質の分解を促進させるために、2〜10℃で1〜48時間、好ましくは12〜24時間静置することが好ましい。また注入の前後に、テンダーライザーを用いて機械的に軟化する方法や、注入後にタンブリングマシンを用いて注入液の浸透を促進する方法を併用してもよい。
本発明の食肉加工用塩漬液は、豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉などの原料肉から製造されるハム、ソーセージ、ベーコン、などの通常塩漬工程を有する畜肉食品であれば、全て利用することができる。
なお、各例におけるタンパク質分解酵素活性の測定は次の方法で行った。
(活性測定法)
0.6質量%カゼイン溶液(pH6.0)5mlに試験(酵素)溶液1mlを混合し、38℃、60分反応させた後、400mMトリクロロ酢酸溶液5mlを加え攪拌し38℃、30分間放置後、上清2mlを0.55M炭酸ナトリウム溶液5mlに加えさらに2倍希釈したフェノール試薬を1ml添加攪拌後、38℃、30分間放置し、660nmの吸光度を測定する。上記の測定条件下で1秒間に1molのチロシンに相当する吸光度を増加させる酵素量を、酵素活性1単位(1unit)と定義する。
キノコ由来のタンパク質分解酵素活性を有する抽出物を粉末化した場合は、粉末を約1g精密に量り、2質量%塩化カリウム溶液50mlを加え攪拌溶解し、適宜希釈した液を試験溶液とし、活性を測定した。
市販されているブナシメジの子実体(ホクト(株))を24時間凍結乾燥させたものを、ブレンダーで2分間粉砕する。粉末化したサンプル100gに対して100mlの50mMリン酸‐NaOH(pH6.0、10℃)を加えて1時間静置させ、ろ紙(アドバンテック東洋(株)、No.5C)で濾過したものを遠心分離機((株)コクサン:H−2000B)で遠心分離(8000×g、10分間)し、その上澄み液を抽出液とした。この抽出液の酵素活性は、200単位/gであった。
基質にウシ血清由来アルブミン(BSA 、Albmin from Bovine Serum 、ナカライテスク(株))を使用し、タンパク質分解酵素としての性質を調べた。抽出液(0.25μg/μl)と基質(5μg/μl)を38℃で、各0h、1h、3h、5h、24h反応させた後、SDS−PAGE電気泳動にて、基質の分解状態を確認した。
SDS−PAGEの条件
電気泳動装置:AE−6500型(アトー(株)製)
ゲル :10%均一ゲル 12ウエル
泳動緩衝液 :25mMトリス、192mMグリシン、0.1%SDS
通電 :定電流 30mA 100分
染色 :CBB(クマジーブリリアントブルー)染色
SDS−PAGE後のゲルについては、CSアナライザー(アトー(株)製)を使用し、染色したゲルのバンドを濃度定量および位置を数値化して解析した。
結果を表1に示す。
市販されているパパイン製剤(和光純薬工業(株)製、酵素活性7000単位/g)の0.03質量部(約200単位/g)を用い、参考例1と同様の実験を行い、その結果を表1に示す。
(A)シメジ由来抽出物粉末の製造
市販のブナシメジ(雪国まいたけ(株))を適度な大きさに切断した後、50mMの緩衝液(pH6.0)をブナシメジと等量加え、家庭用ミキサーを用いて3分間ホモジナイズした。次に遠心分離機(株式会社コクサン:H−2000B)を用いて5000×gで10分間遠心分離し、上清液をプレフィルタレーションした後に、除菌フィルター(30インチ円筒型カートリッジタイプ 孔径0.45〜0.8μmキュノ(株)製 ビバシュアIII:商標)で処理したものをブナシメジの水溶性成分とした。この水溶性成分にデキストリン(松谷化学工業(株)製、パインデックス:商標)を50質量%添加した後、−20℃にて凍結乾燥を2日間行い、シメジ由来抽出物粉末を製造した。製造したシメジ由来抽出物粉末のタンパク質分解活性は98単位/gであった。
上記のように製造したシメジ由来抽出物粉末1gを50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加した試験溶液を作製し、10℃下で12時間、24時間、48時間、72時間、そして96時間放置した。各時間経過した試験溶液から1mlを採取し、0.6質量%カゼイン溶液(pH6.0)5mlに混合し、20〜70℃の範囲に設定した各恒温槽において60分間反応させ、タンパク質分解酵素活性を調べた。
同様に市販されているパパイン製剤(和光純薬工業(株)製、酵素活性7000単位/g)の0.03質量部(約200単位/g)を50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加した試験溶液を作製し、参考例2と同様の実験を行った。0時間における酵素活性を100とした場合の各時間の相対活性を示した。
上記でシメジ由来抽出物粉末1gを、各亜硝酸Naおよび各食塩濃度に調整した50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加し、10℃下で24時間保持した後、上記の活性測定法に準じて、本発明のタンパク質分解酵素に及ぼす亜硝酸Na、食塩による影響を調べた。亜硝酸Na無添加(0ppm)、NaCl無添加(0質量%)時の酵素活性を100とした場合の各条件における活性を測定し、その結果を表3に示した。
パパイン酵素(パパイン製剤(和光純薬工業(株)製)0.03gを、同様に各亜硝酸Naおよび各食塩濃度に調整した50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加して実験した(参考比較例3)。
ハム・ソーセージなどの食肉加工品の発色剤として使用される亜硝酸Naの使用基準は、1kgあたり0.070g(70ppm)以下に規制されており、実際に使用される基準内での亜硝酸Naの添加量を考慮すると、シメジ由来の酵素に対して亜硝酸Naによる酵素活性阻害はないものと考えられる。一方、比較対象のパパイン酵素では、亜硝酸Na濃度に比例して、残存活性が低下する傾向があり、使用基準内であっても大きな感受性を示し、残存活性が、約50%にまで減少した。したがってシメジ由来抽出物に含まれるタンパク質分解酵素は、パパイン酵素などの既存の軟化酵素よりも亜硝酸Naに対する耐性が高く、他の酵素よりも優位性を持っていることがわかる。
また、シメジ由来抽出物の水溶液では、食肉用浸漬液の組成濃度である食塩濃度15質量%において、60%以上の残存酵素活性を維持できることがわかる。
参考例2で製造したシメジ由来抽出物粉末1gを、亜硝酸濃度を100ppmとし、各食塩(濃度0〜18質量%)に調整した50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加し、10℃下で24時間保持した後、上記の活性測定法に準じて、亜硝酸Naと食塩を併用した塩漬液の場合における発明のタンパク質分解酵素に及ぼす影響を調べた。各条件における酵素活性を測定し、その結果を表4に示した。
比較としてパパイン酵素(パパイン製剤(和光純薬工業(株)製)0.03gを、同様に各食塩(濃度0〜18%)に調整した50mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加して実験した(比較例1)。
参考例2で製造したシメジ由来抽出物粉末10gを、亜硝酸塩濃度100ppm下および食塩濃度10%下に調整した5000mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加して、ピックル液を作製した。作製したピックル液について、ピックルインジェクターを用いて、液温10℃に保持しながら、0〜2時間ピックル液を循環させた後、上記の活性測定法に準じて、ピックルインジェクターによる物理的シェアにおける本発明のタンパク質分解酵素に及ぼす影響を調べた。各条件における残存活性を測定し、その結果を表5に示した。比較としてパパイン酵素(パパイン製剤(和光純薬工業(株)製)0.3gを、同様に亜硝酸塩濃度100ppm下および食塩濃度10%下に調整した5000mlの50mMリン酸緩衝液(pH6.0)に添加して実験した(比較例2)。
冷水(10℃以下)中に亜硝酸Naを100ppm、食塩10質量%になるように各々を添加し、溶解させて塩漬液を作製した。作製した塩漬液1000mlに参考例2で製造したシメジ由来物粉末を10g添加させて、シメジ由来抽出物を含む塩漬液を作製した。得られた塩漬液1000mlに市販の牛モモ肉(日本産ホルスタイン種経産牛)200gを冷蔵庫中(5℃)で24時間浸漬させた後、1cm幅にスライスカットを行ってから、フライパンで両面を焼成して牛モモ肉のステーキを作った。官能試験を行い、食感と食味そして発色の色合いについて評価した。結果を表6に示す。
食感は、非処理の場合に比べて軟らかくなっているか否かについて「軟らかすぎる」を□、「軟らかい」を◎、「やや軟らかい」を○、「やや硬い」を△、「硬い」を×で表した。
食味は、非処理の場合に比べて向上しているか否かについて「良好」を◎、「やや良好」を○、「やや後味が悪い」を△、「後味が悪い」を×で表した。
発色は、「色合いが良好」を◎、「やや色合いが良好」を○、「やや色合いが悪い」を△、「色合いが悪い」を×で表した。
(B)マイタケ由来抽出物粉末の製造(比較例6)
市販のマイタケ(雪国まいたけ(株)製)の可食部を適度な大きさに切断した後、50mMの緩衝液(pH6.0)をマイタケと等量加え、家庭用ミキサーを用いて3分間ホモジナイズした。次に遠心分離機(株式会社コクサン:H−2000B)を用いて5000×gで10分間遠心分離し、上清液をプレフィルタレーションした後に、除菌フィルター(30インチ円筒型カートリッジタイプ 孔径0.45〜0.8μmキュノ(株)製 ビバシュアII:商標)で処理したものをマイタケの水溶性成分とした。この水溶性成分にデキストリン(松谷化学工業(株)製、パインデックス:商標)を50質量%添加した後、−20℃にて凍結乾燥を2日間行い、マイタケ由来抽出物粉末を作製した。マイタケ由来抽出物粉末のタンパク質分解活性は、205単位/gであった。
表7に示す組成でソーセージを製造した。
卵白粉末(乾燥卵白、キューピー(株)製)、大豆タンパク(フジプロR、(株)不二製油製)、乳清タンパク(ラクプロダン80)、カゼインナトリウム(インスタンラックS、中央商工(株)製)を用いた。パパイン製剤(和光純薬(株)製)、デキストリン(パインデックス♯2、松谷化学工業(株)製)を用いた。
試料の調整は、常法にてチョッピングし、豚モモ肉をサイレントカッターで細切りにした挽肉に各々残りの原料を混合、脱気した後、24時間、5℃にて塩漬した。塩漬した原料を羊腸に充填し、70℃の湯浴にて30分間保持し、20℃の水槽にて1時間冷却し、ソーセージを得た。次に、製造されたソーセージの食感、食味、発色の色合いについて 実施例3と同様に評価した。
表8に示す組成でロースハムのピックル液を製造した。
卵白粉末、大豆タンパク、カゼインNa、デキストリンは、実施例4と同様のものを用いた。以下に説明する方法でピックル液を調整した。ミキサーを備えたチャンバーに、5℃に冷却した水を入れ、原料を溶解した。
豚ロース肉にインジェクターを用いて作製ピックル液を注入し、12時間のタンブリングを行い、塩漬を5℃にて36時間行い、常法通り充填した後、中心温度が73±1℃になるまで加熱した後、冷却し、ロースハムを得た。比較のため、対象品も同様に調整した。次に、製造されたロースハムの食感、食味、発色の色合いについて実施例3と同様に評価した。
Claims (1)
- 担子菌門ハラタケ目キシメジ科に属するキノコ由来のタンパク質分解酵素活性を有する抽出物を含有し、亜硝酸濃度10〜1000ppm、及び食塩濃度0.1〜20質量%である食肉加工用塩漬液。
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