近年、衣料品などの衣類、鞄類、及び靴類などの製品では、それぞれの用途に応じて性質を改善したり、様々な機能を付与したりして付加価値を高めることが行われている。例えば日常的に使用される衣類や鞄類などにおいては、更なる軽量化や柔軟性の向上などが求められてきている。
しかし、上述したような特許文献1や特許文献3に記載されているスライドファスナーを含む従来のスライドファスナーでは、スライドファスナーの構成部品として、ファスナーテープが必要不可欠である。このため、従来の一般的なスライドファスナーが取着されたスライドファスナー付き製品の場合、スライドファスナーによる軽量化には限界がある。また、製品のファスナー取付部に、ファスナーテープがミシンによる縫製加工等によって取り付けられるため、製品の柔軟性を低下させる場合もある。
一方、例えば特許文献2に記載されているように、ファスナーエレメント又はエレメント部材を製品の生地に直接織り込み固定又は編み込み固定することによってスライドファスナー付き製品を製造する場合、上述のようにファスナーテープが不要となるため、スライドファスナー付き製品の軽量化が実現し易くなる。
しかし、ファスナーエレメントを製品の生地に直接織り込み固定又は編み込み固定するためには、高度の技術や専用の設備が必要となる。その結果、設備コストの増加を招くとともに、熟練の技術者の確保や育成に取り組むことも必要となる。また、特許文献2には、開離嵌挿具に関する説明がなく、この特許文献2に記載されている技術を利用して、ファスナーテープを備えずに、且つ、開離嵌挿具を備えたスライドファスナー付き製品を製造することは容易ではなかった。
更に、例えば製品の用途等に応じて、製品の生地に合成樹脂をコーティングすること等によって生地に所望の機能を付与することがある。しかし、特許文献2のように製品の生地を織成又は編成する際にファスナーエレメントを直接織り込み固定又は編み込み固定する場合、生地に合成樹脂をコーティングすること等によって所望の機能を安定して付与することが難しくなることもある。
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、複数のファスナーエレメントと開離嵌挿具とを製品のファスナー被着部材に直接且つ容易に取り付けられ、従来の一般的なスライドファスナー付き製品に比べて軽量化や柔軟性の向上が期待できるスライドファスナー付き製品及びその製品に用いられるエレメント部材、並びにそのスライドファスナー付き製品の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明により提供されるスライドファスナー付き製品は、
ファスナーエレメントとスライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部とが固定部材に取着された第1エレメント部材と、ファスナーエレメントと前記開離嵌挿具を形成する箱部とが固定部材に取着された第2エレメント部材と、一対の前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材が取着される一対のエレメント取付縁部を互いに対向する位置に備えるファスナー被着部材とを有し、前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材は、前記固定部材の長さ方向に関して、前記固定部材に前記ファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、前記固定部材に前記蝶棒部又は前記箱部が取着されているパーツ保持部とを備え、前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材は、前記ファスナー被着部材の前記エレメント取付縁部を刺通する固定用縫製部の縫製糸が前記固定部材を保持することにより、前記エレメント取付縁部に対して前記第1エレメント部材又は前記第2エレメント部材の幅方向の外側に並ぶ位置で、前記エレメント取付縁部に固定され、前記固定用縫製部は、前記縫製糸により形成されるとともに前記ファスナー被着部材を刺通するパーツ縫製部を有し、前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材の少なくとも前記パーツ保持部は、前記パーツ縫製部によって、前記エレメント取付縁部に固定されてなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明に係るスライドファスナー付き製品において、前記パーツ縫製部は、長さ方向に関して、前記蝶棒部又は前記箱部が前記固定部材に直接取着されている直接取着範囲の少なくとも一部に形成されることが好ましい。
また本発明のスライドファスナー付き製品において、前記パーツ縫製部は、長さ方向に関して、前記蝶棒部又は前記箱部が前記固定部材に直接取着されている直接取着範囲の前記エレメント保持部に近い側の端縁に対応する位置を越えて、前記エレメント保持部側に連続的に延びて配されていることが好ましい。
更に本発明のスライドファスナー付き製品において、前記固定部材は、前記蝶棒部又は前記箱部から、長さ方向の前記エレメント保持部から離れる方向に延出する延出部分を有することが好ましい。
この場合、前記パーツ縫製部は、長さ方向に関して、前記蝶棒部又は前記箱部が前記固定部材に直接取着されている直接取着範囲の前記エレメント保持部から遠い側の端縁に対応する位置を越えて、前記エレメント保持部側とは反対の側に連続的に延びて配されていることが好ましい。
本発明に係るスライドファスナー付き製品において、前記蝶棒部及び前記箱部は、前記パーツ縫製部の前記縫製糸を受け入れて収容する糸収容部を有し、前記パーツ縫製部は、当該パーツ縫製部の前記縫製糸の少なくとも一部が、前記蝶棒部又は前記箱部の前記糸収容部に収容されて形成されていることが好ましい。
また、本発明のスライドファスナー付き製品において、前記第1エレメント部材又は前記第2エレメント部材の前記パーツ保持部は、前記パーツ縫製部の前記縫製糸が、前記パーツ保持部に配される前記固定部材を保持すること、又は、前記蝶棒部若しくは前記箱部の一部を保持することにより、前記エレメント取付縁部に固定されていることが好ましい。
この場合、前記蝶棒部又は前記箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有し、前記パーツ縫製部の前記縫製糸は、前記分割体間に形成される間隙又は凹部に収容されていることが好ましい。
また本発明において、前記パーツ保持部は、前記パーツ縫製部の前記縫製糸が、前記蝶棒部又は前記箱部を貫通して前記エレメント取付縁部に直接縫い付けることにより、前記エレメント取付縁部に固定されていても良い。
この場合、前記蝶棒部又は前記箱部は、前記固定部材に沿って前記固定部材を包むパーツ本体部と、前記パーツ本体部から幅方向に延出し、前記エレメント取付縁部における一方の面上に配されるヒレ部とを有し、前記ヒレ部に、前記パーツ縫製部の前記縫製糸を収容する収容凹溝部若しくは収容凹部が配され、又は前記縫製糸を通して前記ヒレ部に貫通させる穴部が予め配され、前記ヒレ部が、前記エレメント取付縁部に縫い付けられていることが好ましい。
本発明のスライドファスナー付き製品において、前記ファスナーエレメントと前記蝶棒部又は前記箱部とは、合成樹脂により所定の形状で前記固定部材に一体的に形成され、複数の前記ファスナーエレメントは、それぞれが独立して形成されるとともに、前記固定部材に等間隔で配されていることが好ましい。
本発明のスライドファスナー付き製品において、前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材の前記エレメント保持部は、前記固定用縫製部のエレメント縫製部によって、前記エレメント取付縁部に直接固定されていることが好ましい。
この場合、前記エレメント縫製部と前記パーツ縫製部とは、前記固定部材の長さ方向に対してジグザグ状に折れ曲がって連続的に形成され、前記エレメント縫製部は、前記縫製糸が前記ファスナーエレメントごとに所定のパターンの縫い目を繰り返して形成され、前記パーツ縫製部は、前記エレメント縫製部における前記パターンの縫い目が繰り返されて形成されていることが好ましい。
また本発明において、前記エレメント縫製部は、前記固定部材の長さ方向に対してジグザグ状に折れ曲がって形成され、前記パーツ縫製部は、直線的に形成されていても良い。
本発明のスライドファスナー付き製品において、前記箱部は、前記蝶棒部を挿入して収容可能な蝶棒収容部を備えるとともにスライダーを当接させて停止させる箱体部を少なくとも有し、前記スライダーは、当該スライダーの後口が前記箱体部に向く姿勢で、前記ファスナーエレメントにより形成されるエレメント列に摺動可能に取着されていることが好ましい。
また本発明において、前記ファスナーエレメントにより形成されるエレメント列に、第1スライダー及び第2スライダーが、各スライダーの後口が相互に対向する姿勢で摺動可能に取着され、前記箱部は、前記第1スライダー及び第2スライダー内に挿通される箱棒部と、前記第1スライダー及び前記第2スライダーの一方を当接させて停止させるストッパー部とを有していても良い。
次に、本発明により提供されるエレメント部材は、固定部材と、前記固定部材に取着されるファスナーエレメントと、前記ファスナーエレメントが形成するエレメント列に連続するように配され、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部又は箱部とを有し、前記ファスナーエレメントと、前記蝶棒部又は前記箱部とは、前記固定部材に固定され、前記固定部材は、紐状の部材により形成され、且つ、前記ファスナーエレメントに包み込まれてなり、前記固定部材に前記蝶棒部又は前記箱部が固定されたパーツ保持部は、縫製糸により形成されるとともにファスナー被着部材を刺通するパーツ縫製部によって固定可能な構造を有し、前記固定部材は、前記蝶棒部又は前記箱部から、長さ方向の前記ファスナーエレメントから離れる方向に延出する延出部分を有してなる、ことを最も主要な特徴とするものである。
本発明のエレメント部材において、前記蝶棒部又は前記箱部は、前記蝶棒部又は前記箱部をファスナー被着部材に縫着する縫製糸を受け入れて収容することが可能な糸収容部を有することが好ましい。
本発明のエレメント部材において、前記蝶棒部又は前記箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有し、前記固定部材の長さ方向に互いに隣接する前記分割体間に、前記糸収容部として、前記縫製糸を挿入して収容可能な間隙又は凹部が配されていることが好ましい。
また本発明において、前記蝶棒部又は前記箱部は、前記固定部材に沿って前記固定部材を包むパーツ本体部と、前記パーツ本体部から幅方向に延出するヒレ部とを有していても良い。この場合、前記ヒレ部に、前記糸収容部として、前記パーツ縫製部の前記縫製糸を収容する収容凹溝部若しくは収容凹部が配され、又は前記縫製糸を通して前記ヒレ部に貫通させる穴部が予め配されていることが好ましい。
また、本発明により提供される別の態様のエレメント部材は、固定部材と、前記固定部材に取着されるファスナーエレメントと、前記ファスナーエレメントが形成するエレメント列に連続するように配され、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部又は箱部とを有し、前記ファスナーエレメントと、前記蝶棒部又は前記箱部とは、前記固定部材に固定され、前記蝶棒部又は前記箱部は、前記蝶棒部又は前記箱部をファスナー被着部材に縫着する縫製糸を受け入れて収容することが可能な糸収容部を有してなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明のエレメント部材において、前記固定部材は、前記蝶棒部又は前記箱部から、長さ方向の前記ファスナーエレメントから離れる方向に延出する延出部分を有することが好ましい。
また本発明のエレメント部材において、前記蝶棒部又は前記箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有し、前記固定部材の長さ方向に互いに隣接する前記分割体間に、前記糸収容部として、前記縫製糸を挿入して収容可能な間隙又は凹部が配されていることが好ましい。
更に本発明において、前記蝶棒部又は前記箱部は、前記固定部材に沿って前記固定部材を包むパーツ本体部と、前記パーツ本体部から幅方向に延出するヒレ部とを有していても良い。この場合、前記ヒレ部に、前記糸収容部として、前記パーツ縫製部の前記縫製糸を収容する収容凹溝部若しくは収容凹部が配され、又は前記縫製糸を通して前記ヒレ部に貫通させる穴部が予め配されていることが好ましい。
次に、本発明により提供される製造方法は、スライドファスナー付き製品を製造する製造方法において、ファスナーエレメントとスライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部とが固定部材に取着され、前記固定部材の長さ方向に関して、前記固定部材に前記ファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、前記固定部材に前記蝶棒部が取着されるパーツ保持部とを備える第1エレメント部材を形成すること、ファスナーエレメントと前記開離嵌挿具を形成する箱部とが固定部材に取着され、前記固定部材の長さ方向に関して、前記固定部材に前記ファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、前記固定部材に前記箱部が取着されるパーツ保持部とを備える第2エレメント部材を形成すること、一対のエレメント取付縁部を互いに対向する位置に備えるファスナー被着部材を形成すること、及び、ミシンを用いて、前記第1エレメント部材及び第2エレメント部材と、前記ファスナー被着部材の対応するエレメント取付縁部とに縫製加工を行うことにより、前記ファスナー被着部材を刺通する固定用縫製部を形成しながら、前記固定用縫製部の縫製糸が前記固定部材を保持することにより、前記固定用縫製部で、前記パーツ保持部を含む前記第1エレメント部材及び前記第2エレメント部材を、前記エレメント取付縁部に対して前記第1エレメント部材又は前記第2エレメント部材の幅方向の外側に並ぶ位置で前記エレメント取付縁部に固定することを含んでなることを最も主要な特徴とするものである。
本発明に係るスライドファスナー付き製品は、スライダーの摺動により開閉可能な開閉部を備えており、その開閉部の長さ方向の一端部に、蝶棒部及び箱部を少なくとも有する開離嵌挿具が取り付け可能に形成される。なお本発明では、蝶棒収容部を備える箱体部や、蝶棒収容部が設けられておらず、且つ、スライダーを停止させるストッパー部を備える箱棒部、箱棒部及び箱体部が一体的に形成された箱棒−箱体部等を総称して箱部と言う。
本発明のスライドファスナー付き製品は、複数のスライドファスナー用ファスナーエレメントとスライドファスナー用開離嵌挿具の蝶棒部とが固定部材に取着された第1エレメント部材と、複数のスライドファスナー用ファスナーエレメントとスライドファスナー用開離嵌挿具の箱部とが固定部材に取着された第2エレメント部材と、一対の第1エレメント部材及び第2エレメント部材が取着される一対のエレメント取付縁部を互いに対向する位置に備える製品のファスナー被着部材とを有する。この場合、固定部材は、可撓性を有する長尺の部材、特に紐状の部材である。
また本発明のスライドファスナー付き製品において、第1エレメント部材及び第2エレメント部材は、固定部材の長さ方向に関して、固定部材にファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、第1エレメント部材及び第2エレメント部材における長さ方向の一端部に配され、固定部材に蝶棒部又は箱部が取着されているパーツ保持部とをそれぞれ備える。この場合、パーツ保持部は、第1エレメント部材又は第2エレメント部材における複数のファスナーエレメントのうち、長さ方向の一方側の端部に配される端部ファスナーエレメントよりも更に長さ方向の一方へ延出している。
更に本発明では、第1エレメント部材及び第2エレメント部材が、対向して配されるファスナー被着部材のエレメント取付縁部にそれぞれ固定され、特に、第1エレメント部材及び第2エレメント部材の少なくともパーツ保持部が、ミシンの縫製によって形成されるパーツ縫製部によって、エレメント取付縁部に固定されている。この場合、本発明のパーツ縫製部は、複数の縫製糸により形成されており、また、第1エレメント部材又は第2エレメント部材が取着されるファスナー被着部材を刺通して形成されている。
上述のような本発明のスライドファスナー付き製品において、蝶棒部を有する第1エレメント部材と、箱部を有する第2エレメント部材とは、ファスナー被着部材に容易に且つ安定して固定される。また、ファスナー被着部材に対する第1エレメント部材及び第2エレメント部材の固定状態を安定して維持できる。
更に、本発明のスライドファスナー付き製品では、従来の一般的なスライドファスナーにおいて必須の構成部品であったファスナーテープを用いることなくスライドファスナーを構成できるとともに、蝶棒部と箱部とを備える開離嵌挿具を所定の位置に安定して形成することができる。
従って、本発明のスライドファスナー付き製品では、ファスナーテープを不要とすることにより、スライドファスナー付き製品の軽量化や柔軟性を向上できる。その上、開離嵌挿具の設置により、左右のファスナー被着部材を容易に分離して離間させることが可能となる。
更に本発明では、例えば防水性などのような所望の機能が付与されたファスナー被着部材に対して、第1エレメント部材及び第2エレメント部材を後から直接固定できる。このため、ファスナー被着部材(生地)が特別な機能も備えるスライドファスナー付き製品を、低コストで容易に製造することも可能となる。
従って、本発明のスライドファスナー付き製品では、スライドファスナーの使い易さや利便性を大幅に向上させることができる。このため、本発明の製品は、衣類、靴類、鞄類などの日用品に対してより好適に用いられ、また、日用品以外にも、産業用資材などの製品、自動車や航空機等の各種シート類などの様々な製品に対して好適に用いられる。
上述のような本発明のスライドファスナー付き製品において、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部をエレメント取付縁部に固定するパーツ縫製部は、長さ方向に関して、蝶棒部又は箱部が固定部材に間欠的に又は連続的に直接接して取着されている直接取着範囲の少なくとも一部に、好ましくは90%以上の範囲に、特に好ましくは直接取着範囲の全体に形成されている。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部にしっかりと固定できる。また、パーツ保持部の固定状態を安定して維持できる。
また本発明のスライドファスナー付き製品において、パーツ縫製部は、長さ方向に関して、蝶棒部又は箱部が固定部材に直接取着されている直接取着範囲から、その直接取着範囲のエレメント保持部に近い側の端縁(前端縁)に対応する位置を越えて、エレメント保持部側に連続的に延びて配されている。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部をよりしっかりとエレメント取付縁部に固定できる。また、パーツ保持部の固定状態をより安定して維持できる。この場合、パーツ縫製部は、直接取着範囲の前端縁に対応する位置を越える部分で少なくとも連続的に形成されていれば良く、当該位置を越える部分以外の部分では、パーツ縫製部が、互いに離間する複数の縫製部(縫製線)や、互いに一部分で重なる複数の縫製部(縫製線)等によって形成されていても良い。
更に本発明のスライドファスナー付き製品において固定部材は、蝶棒部又は箱部から、長さ方向のエレメント保持部から離れる方向に延出する延出部分を有する。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を、その後端部まで、エレメント取付縁部にしっかりと固定できる。
この場合、パーツ縫製部は、長さ方向に関して、蝶棒部又は箱部が固定部材に直接取着されている直接取着範囲から、その直接取着範囲のエレメント保持部から遠い側の端縁(後端縁)に対応する位置を越えて、エレメント保持部側とは反対の側に連続的に延びて配されている。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を更にしっかりとエレメント取付縁部に固定できる。また、パーツ保持部の固定状態を更に安定して維持できる。この場合、パーツ縫製部は、直接取着範囲の後端縁に対応する位置を越える部分で少なくとも連続的に形成されていれば良く、当該位置を越える部分以外の部分では、パーツ縫製部が、互いに離間する複数の縫製部(縫製線)や、互いに一部分で重なる複数の縫製部(縫製線)等によって形成されていても良い。
上述のような本発明のスライドファスナー付き製品において、蝶棒部及び箱部は、パーツ縫製部の縫製糸を受け入れて収容する間隙状、開口状、凹状、溝状、又は孔状の糸収容部を有する。また、パーツ縫製部は、そのパーツ縫製部の縫製糸の少なくとも一部が、蝶棒部又は箱部の糸収容部に収容されて形成されている。
蝶棒部及び箱部に上述のような糸収容部が蝶棒部及び箱部に設けられていることにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を、ミシンを用いてファスナー被着部材のエレメント取付縁部に取り付ける際に、縫製糸を蝶棒部又は箱部の糸収容部に導入して容易に収容できる。また、蝶棒部及び箱部に設けられている糸収容部を目安(目印)にして縫製を行うことができるため、蝶棒部及び箱部をファスナー被着部材のエレメント取付縁部に安定して取り付けることができる。更に、パーツ縫製部の縫製糸が、蝶棒部及び箱部の糸収容部内で安定して保持されるとともに、糸収容部によって他部材等が外部から接触し難いように保護される。このため、パーツ縫製部に糸切れを生じ難くして、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に蝶棒部及び箱部が取り付けられている状態を安定して維持することができる。
また本発明のスライドファスナー付き製品において、第1エレメント部材又は第2エレメント部材のパーツ保持部は、パーツ縫製部の縫製糸が、パーツ保持部に配される固定部材を、固定部材の外周面に接しながら包むように保持すること、又は、蝶棒部若しくは箱部の一部を、その外周面に接しながら包むように保持することにより、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に固定されている。これにより、パーツ縫製部の縫製糸で第1エレメント部材又は第2エレメント部材のパーツ保持部をエレメント取付縁部にしっかりと安定して固定できる。
この場合、蝶棒部又は箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有し、パーツ縫製部の縫製糸は、これらの分割体間に形成される間隙又は凹部に収容されている。これにより、パーツ縫製部の縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材のエレメント取付縁部にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。更に、蝶棒部又は箱部の分割体間に縫製糸が収容されて保持されるため、縫製糸を所定の位置に安定して維持できるとともに、その収容された縫製糸に、他部材等が外部から接触し難くなるため、糸切れを生じ難くすることができる。
また本発明のスライドファスナー付き製品では、第1エレメント部材又は第2エレメント部材のパーツ保持部は、パーツ縫製部の縫製糸が、蝶棒部又は箱部を貫通してエレメント取付縁部に直接縫い付けることにより、エレメント取付縁部に固定されていても良い。ここで、パーツ縫製部の縫製糸が蝶棒部又は箱部を貫通するとは、ミシンを用いて第1エレメント部材又は第2エレメント部材をファスナー被着部材に縫い付ける場合に、ミシンのミシン針が蝶棒部又は箱部を刺通して縫製糸を貫通させる場合だけでなく、例えば蝶棒部又は箱部にミシン針が挿通可能な貫通孔又は開口部を予め設けおき、その貫通孔又は開口部にミシン針が通ることによって縫製糸を貫通させる場合も含む。このようにパーツ縫製部の縫製糸で蝶棒部又は箱部がファスナー被着部材のエレメント取付縁部に直接縫い付けられることによっても、第1エレメント部材又は第2エレメント部材のパーツ保持部をエレメント取付縁部にしっかりと安定して固定できる。
この場合、蝶棒部又は箱部は、固定部材に沿って固定部材を包むパーツ本体部と、パーツ本体部から幅方向に延出し、エレメント取付縁部における一方の面上に配されるヒレ部とを有する。また、蝶棒部又は箱部のヒレ部には、パーツ縫製部の縫製糸を収容する収容凹溝部若しくは収容凹部が配され、又は縫製糸を通してヒレ部に貫通させる穴部が予め配されており、蝶棒部又は箱部のヒレ部が、パーツ縫製部の縫製糸によってファスナー被着部材に縫い付けられている。
これにより、パーツ縫製部の縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材のエレメント取付縁部にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。特に、ヒレ部に上述した収容凹溝部、収容凹部、又は穴部が設けられていることにより、第1エレメント部材又は第2エレメント部材のパーツ保持部を、ファスナー被着部材に縫製する際に、ミシンのミシン針をヒレ部に貫通させ易くすることができ、ミシンによる縫製を所定の位置に安定して行うことができる。更に、ヒレ部の収容凹溝部又は収容凹部に、パーツ縫製部の縫製糸が収容されて安定して保持されるとともに、収容凹溝部又は収容凹部内に収容された縫製糸を他部材等が外部から接触し難いように保護できる。
なお、上述したパーツ本体部とは、蝶棒部の場合、固定部材を包むように配される蝶棒本体部を言い、箱部の場合、固定部材を包むように配される箱体本体部及び/又は箱棒本体部を言う。また、パーツ本体部が固定部材を包むこととは、パーツ本体部(蝶棒本体部や箱体本体部等)が固定部材の外周面の少なくとも一部を覆った状態でパーツ本体部が固定部材に取り付けられていることを意味する。この場合、固定部材は、パーツ本体部によって、固定部材の外周面の少なくとも一部が包まれていれば良く、例えば固定部材の外周面の全周が完全に包み込まれる場合だけでなく、固定部材の外周面の一部分のみが包み込まれる場合を含む。
更に、上述した収容凹溝部は、ヒレ部の表面に、ある程度の溝幅を有して形成され、例えば直線状や曲線状等に連続して凹んだ溝状の部分である。また、収容凹部は、ヒレ部の表面に、縫製糸を収容可能な大きさを持って凹んで形成される部分であり、溝状に形成されていなくても良い。この収容凹部には、上述した収容凹溝部や、その他の形態の凹部が含まれる。
本発明のスライドファスナー付き製品において、ファスナーエレメントと蝶棒部又は箱部とは、合成樹脂の射出成形により、所定の形状で固定部材に一体的に固定されている。また、複数のファスナーエレメントは、それぞれが独立して形成されるとともに、固定部材に等間隔で配されている。これにより、スライドファスナーにおける左右のエレメント列と開離嵌挿具とを安定して形成できる。また、左右のエレメント列を安定して噛合・分離できるとともに、開離嵌挿具の安定した動作や機能を確保できる。
また本発明において、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のエレメント保持部は、ファスナー被着部材を刺通するエレメント縫製部によって、エレメント取付縁部に直接固定されている。この場合、エレメント縫製部の縫製糸は、エレメント部材における固定部材の外周面に接しながら固定部材を包み込むように保持する。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のエレメント保持部が、エレメント縫製部によって、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に沿って容易に且つ安定して固定される。
また、エレメント縫製部がエレメント取付縁部を刺通する位置が、第1エレメント部材及び第2エレメント部材の幅方向において、ファスナーエレメントからエレメント取付縁部の内側に離間して配されることが好ましい。言い換えると、第1エレメント部材及び第2エレメント部材の幅方向において、エレメント縫製部がファスナー被着部材を刺通する位置とエレメント部材のファスナーエレメントとの間には、所定の間隔が形成されている。これにより、エレメント縫製部の縫製糸によって、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に切断等の損傷を生じさせ難くすることができる。
この場合、第1エレメント部材又は第2エレメント部材を固定するエレメント縫製部とパーツ縫製部とは、例えばミシンによる本縫いにより、固定部材の長さ方向に対してジグザグ状に折れ曲がって連続的に形成されている。また、エレメント縫製部は、縫製糸がファスナーエレメントごとに所定のパターンの縫い目を繰り返して形成されており、パーツ縫製部は、エレメント縫製部におけるパターンの縫い目が繰り返されて形成されている。
これにより、ミシンを用いて第1エレメント部材又は第2エレメント部材におけるエレメント保持部と、蝶棒部又は箱部を備えるパーツ保持部とをファスナー被着部材のエレメント取付縁部に連続的に安定して縫製でき、エレメント保持部とパーツ保持部の両方をファスナー被着部材に円滑に且つ安定して取り付けることができる。
また本発明において、第1エレメント部材又は第2エレメント部材のエレメント縫製部とパーツ縫製部とは、ミシンによる連続した本縫いにより又は別々の本縫いにより形成されており、エレメント保持部を固定するエレメント縫製部は、固定部材の長さ方向に対してジグザグ状に折れ曲がって形成され、一方、パーツ保持部を固定するパーツ縫製部は、直線的に形成されていても良い。これによっても、ミシンを用いて第1エレメント部材又は第2エレメント部材におけるエレメント保持部とパーツ保持部の両方をファスナー被着部材に円滑に且つ安定して取り付けることができる。
また本発明のスライドファスナー付き製品では、上述したエレメント縫製部とパーツ縫製部とにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材が、エレメント取付縁部に対して幅方向の外側に並ぶ位置において、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に安定して固定されており、それによって、ファスナー被着部材にスライドファスナーを安定して形成できる。
更に本発明のスライドファスナー付き製品において、箱部は、蝶棒部を挿入して収容可能な蝶棒収容部を備えるとともにスライダーを当接させて停止させる箱体部を少なくとも有する。また、スライダーは、当該スライダーの後口が箱体部に向く姿勢で、複数のファスナーエレメントにより形成されるエレメント列に摺動可能に取着されている。すなわち、本発明では、ファスナーテープを備えないスライドファスナー付き製品に、蝶棒部と箱体部とを少なくとも備えるタイプ(箱体部ありのタイプ)の開離嵌挿具を設けることができる。この場合、箱部として、箱体部に箱棒部が一体的に形成される箱棒−箱体部が形成されても良いし、箱体部のみが形成されても良い。
また本発明において、ファスナーエレメントにより形成されるエレメント列に、第1スライダー及び第2スライダーが、各スライダーの後口が相互に対向する姿勢で摺動可能に取着されているとともに、箱部は、第1スライダー及び第2スライダー内に挿通される箱棒部と、第1スライダー及び第2スライダーの一方を当接させて停止させるストッパー部とを有していても良い。すなわち、本発明では、ファスナーテープを備えないスライドファスナー付き製品に、蝶棒部と箱部とが互いに対向して配されるとともに箱体部を備えない逆開きのタイプ(箱体部なしのタイプ)の開離嵌挿具を設けることもできる。
次に、本発明に係るエレメント部材は、固定部材と、固定部材に等間隔で取着される複数の独立するファスナーエレメントと、複数のファスナーエレメントが形成するエレメント列に連続するように配され、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部又は箱部とを有する。また、各ファスナーエレメントと、蝶棒部又は箱部とは、固定部材に合成樹脂を射出成形することにより、固定部材に一体的に形成されて固定されている。更に、固定部材に蝶棒部又は箱部が固定されたパーツ保持部は、縫製糸により形成されるとともにファスナー被着部材を刺通するパーツ縫製部によって固定可能な構造を有する。
このような本発明のエレメント部材であれば、ミシンを用いることにより、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に、エレメント部材を、特にエレメント部材のパーツ保持部を容易に且つ安定して固定することが可能である。また、ファスナー被着部材にエレメント部材の固定状態を安定して維持することが可能である。
また、上述のような本発明のエレメント部材を用いてスライドファスナー付き製品を製造することにより、従来の一般的なスライドファスナーにおいて必須の構成部品であったファスナーテープを用いることなくスライドファスナーを構成できるとともに、蝶棒部と箱部とを備える開離嵌挿具を所定の位置に安定して形成することが可能となる。
特に本発明のエレメント部材において、蝶棒部又は箱部は、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に縫着する縫製糸を受け入れて収容することが可能な間隙状、開口状、凹状、溝状、又は孔状の糸収容部を有する。これにより、ミシンを用いて蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に取り付ける際に、その糸収容部を目安(目印)にして縫製を円滑に行うことができるとともに、ミシンの縫製糸を蝶棒部又は箱部の糸収容部に導入して容易に収容できる。
それによって、蝶棒部及び箱部をファスナー被着部材のエレメント取付縁部の所定位置に安定して取り付けることができる。更に、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に固定する縫製糸が、蝶棒部及び箱部の糸収容部内で安定して保持されるとともに、糸収容部によって他部材等が外部から接触し難いように保護される。このため、縫製糸に糸切れを生じ難くして、蝶棒部又は箱部の取り付け状態を安定して維持することができる。
このような本発明のエレメント部材において、固定部材は、蝶棒部又は箱部から、長さ方向のファスナーエレメントから離れる方向に延出する延出部分を有する。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を、その後端部まで、エレメント取付縁部にしっかりと固定することが可能となる。
本発明のエレメント部材において、蝶棒部又は箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有する。また、エレメント部材における固定部材の長さ方向に互いに隣接する分割体間には、糸収容部として、縫製糸を挿入して収容可能な間隙又は凹部が配されている。
これにより、本発明のエレメント部材を、ミシンを用いてファスナー被着部材のエレメント取付縁部に取り付けることにより、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。更に、蝶棒部又は箱部の分割体間に縫製糸が収容されて保持されるため、縫製糸を所定の位置に安定して維持できるとともに、縫製糸に他部材等が外部から接触し難くなるため、糸切れを生じ難くすることができる。
また本発明では、蝶棒部又は箱部が、固定部材に沿って固定部材を包むパーツ本体部と、パーツ本体部から幅方向に延出するヒレ部とを有していても良い。蝶棒部又は箱部がヒレ部を有することにより、ミシンを用いて、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に取り付け易くすることができる。また、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に安定して固定し易くなる。
この場合、蝶棒部又は箱部のヒレ部に、糸収容部として、縫製糸を挿入して収容可能な収容凹溝部若しくは収容凹部、又は縫製糸を通してヒレ部に貫通可能な穴部が配されていることが好ましい。
これによって、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。特に、ヒレ部に上述した収容凹溝部、収容凹部、又は穴部が設けられていることにより、エレメント部材をファスナー被着部材にミシンを用いて縫製する際に、ミシンのミシン針をヒレ部に貫通させ易くすることができ、ミシンによる縫製を所定の位置に安定して行うことができる。更に、縫製糸をヒレ部の収容凹溝部又は収容凹部に収容して安定して保持できるとともに、収容凹溝部又は収容凹部内に収容された縫製糸に、他部材等が外部から接触し難くなるため、糸切れを生じ難くすることができる。
次に、本発明の別の態様に係るエレメント部材は、固定部材と、固定部材に等間隔で取着される複数の独立するファスナーエレメントと、複数のファスナーエレメントが形成するエレメント列に連続するように配され、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部又は箱部とを有する。また、各ファスナーエレメントと、蝶棒部又は箱部とは、固定部材に合成樹脂を射出成形することにより、固定部材に一体的に形成されて固定されている。更に、蝶棒部又は箱部は、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に縫着する縫製糸を受け入れて収容することが可能な間隙状、開口状、凹状、溝状、又は孔状の糸収容部を有する。
このような本発明のエレメント部材であれば、ミシンを用いることにより、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部に、エレメント部材を、特にエレメント部材のパーツ保持部を容易に且つ安定して固定することが可能である。また、ファスナー被着部材にエレメント部材の固定状態を安定して維持することが可能である。特に、蝶棒部又は箱部が上述のような糸収容部を有することにより、ミシンを用いて蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に取り付ける際に、その糸収容部を目安(目印)にして縫製を円滑に行うことができるとともに、ミシンの縫製糸を蝶棒部又は箱部の糸収容部に導入して容易に収容できる。
これにより、蝶棒部及び箱部をファスナー被着部材のエレメント取付縁部の所定位置に安定して取り付けることができる。更に、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に固定する縫製糸が、蝶棒部及び箱部の糸収容部内で安定して保持されるとともに、糸収容部によって他部材等が外部から接触し難いように保護される。このため、縫製糸に糸切れを生じ難くして、蝶棒部又は箱部の取り付け状態を安定して維持することができる。
また、上述のような本発明のエレメント部材を用いてスライドファスナー付き製品を製造することにより、従来の一般的なスライドファスナーにおいて必須の構成部品であったファスナーテープを用いることなくスライドファスナーを構成できるとともに、蝶棒部と箱部とを備える開離嵌挿具を所定の位置に安定して形成することが可能となる。
このような本発明のエレメント部材において、固定部材は、蝶棒部又は箱部から、長さ方向のファスナーエレメントから離れる方向に延出する延出部分を有する。これにより、第1エレメント部材及び第2エレメント部材のパーツ保持部を、その後端部まで、エレメント取付縁部にしっかりと固定することが可能となる。
本発明のエレメント部材において、蝶棒部又は箱部は、分割された少なくとも2つの分割体を有する。また、エレメント部材における固定部材の長さ方向に互いに隣接する分割体間には、糸収容部として、縫製糸を挿入して収容可能な間隙又は凹部が配されている。
これにより、本発明のエレメント部材を、ミシンを用いてファスナー被着部材のエレメント取付縁部に取り付けることにより、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。更に、蝶棒部又は箱部の分割体間に縫製糸が収容されて保持されるため、縫製糸を所定の位置に安定して維持できるとともに、縫製糸に他部材等が外部から接触し難くなるため、糸切れを生じ難くすることができる。
また本発明では、蝶棒部又は箱部が、固定部材に沿って固定部材を包むパーツ本体部と、パーツ本体部から幅方向に延出するヒレ部とを有していても良い。蝶棒部又は箱部がヒレ部を有することにより、ミシンを用いて、蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に取り付け易くすることができる。また、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材に安定して固定し易くなる。
この場合、蝶棒部又は箱部のヒレ部に、糸収容部として、縫製糸を挿入して収容可能な収容凹溝部若しくは収容凹部、又は縫製糸を通してヒレ部に貫通可能な穴部が配されていることが好ましい。
これによって、縫製糸で蝶棒部又は箱部をファスナー被着部材にしっかりと固定でき、また、その蝶棒部又は箱部の固定状態を安定して維持できる。特に、ヒレ部に上述した収容凹溝部、収容凹部、又は穴部が設けられていることにより、エレメント部材をファスナー被着部材にミシンを用いて縫製する際に、ミシンのミシン針をヒレ部に貫通させ易くすることができ、ミシンによる縫製を所定の位置に安定して行うことができる。更に、縫製糸をヒレ部の収容凹溝部又は収容凹部に収容して安定して保持できるとともに、収容凹溝部又は収容凹部内に収容された縫製糸に、他部材等が外部から接触し難くなるため、糸切れを生じ難くすることができる。
次に、本発明に係るスライドファスナー付き製品の製造方法は、例えば固定部材に合成樹脂の射出成形を行うことにより、所定の形状を有するファスナーエレメントと、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する蝶棒部とが固定部材に取着され、且つ、固定部材の長さ方向に関して、固定部材にファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、固定部材に蝶棒部が取着されるパーツ保持部とを備える第1エレメント部材を形成する。
また、固定部材に合成樹脂の射出成形を行うことにより、所定の形状を有するファスナーエレメントと、スライドファスナー用開離嵌挿具を形成する箱部とが固定部材に取着され、且つ、固定部材の長さ方向に関して、固定部材にファスナーエレメントが取着されているエレメント保持部と、固定部材に箱部が取着されるパーツ保持部とを備える第2エレメント部材を形成する。また、第1エレメント部材及び第2エレメント部材とは別に、一対のエレメント取付縁部を互いに対向する位置に備えるファスナー被着部材を形成する。
続いて、形成した第1エレメント部材及び第2エレメント部材と、ファスナー被着部材の対応するエレメント取付縁部とに縫製加工を行うことにより、ファスナー被着部材を刺通するパーツ縫製部を形成しながら、そのパーツ縫製部で第1エレメント部材及び第2エレメント部材の少なくともパーツ保持部を、ファスナー被着部材のエレメント取付縁部にそれぞれ固定する。
これにより、蝶棒部を有する第1エレメント部材と、箱部を有する第2エレメント部材とをファスナー被着部材に直接容易に固定できる。また、ファスナー被着部材に対する第1エレメント部材及び第2エレメント部材の固定状態を安定させることができる。その結果、スライドファスナー付き製品の所定の位置に蝶棒部と箱部とを備える開離嵌挿具を容易に形成できるとともに、形成された開離嵌挿具の安定した動作や機能を確保できるため、左右のファスナー被着部材を容易に分離して離間させることが可能となる。更に、ファスナーテープを用いないスライドファスナー付き製品を容易に製造することが可能となり、スライドファスナー付き製品における製造コストの削減、軽量化、柔軟性の向上が図れる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、以下の各実施例では、スライドファスナー付き製品がスライドファスナー付き衣服である場合について説明するが、本発明に係るスライドファスナー付き製品は、衣服(衣料品)に限定されるものではなく、靴類や鞄類などの日用雑貨品、産業用資材などの製品、自動車、列車、航空機等の各種シート類などの様々な製品が含まれる。
また、以下の各実施例で説明する開離嵌挿具は、製品となる衣服を正面側から見たときに左側に蝶棒部が配されるとともに、右側に箱体部や箱棒部などの箱部が配されており、その衣服を着用した人が蝶棒部を右手で操作する所謂右挿し用の開離嵌挿具として形成されている。しかし本発明では、例えば蝶棒部と箱部との位置関係を、下記の実施例とは左右方向に反対にすることにより、所謂左挿し用の開離嵌挿具をスライドファスナー付き製品に形成することも可能である。
図1は、本実施例1に係るスライドファスナー付き衣服の要部を模式的に示す平面図であり、図2は、その衣服の要部について開離嵌挿具が分離した状態を示す平面図である。図3及び図4は、開離嵌挿具の蝶棒部及び箱体部がそれぞれ設けられた衣服の前立て部を、噛み合わせ相手側から見た側面図である。図5は、開離嵌挿具の断面図である。
また、以下の説明において、前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行な第1エレメント部材及び第2エレメント部材の長さ方向を言い、特に、スライダーが左右のエレメント列を噛合させるように摺動する方向を前方とし、左右のエレメント列を分離させるように摺動する方向を後方とする。また、前方及び後方は、開離嵌挿具から離れる方向及び開離嵌挿具に近付く方向と言い換えることもできる。
左右方向とは、第1エレメント部材及び第2エレメント部材の幅方向(又は、ファスナー被着部材となる生地の幅方向)を言い、例えば、スライダーの摺動方向に直交し、且つ、生地の表面及び裏面に平行な方向である。上下方向とは、前後方向と左右方向とに直行する方向を言い、例えば生地の表面及び裏面に直交するエレメント部材の厚さ方向を言う。特に以下の場合では、エレメント部材に対してスライダーの引手が配される側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
本実施例1に係るスライドファスナー付き製品1は、スライドファスナー付きの衣服(衣料品)1であり、この衣服1において開閉部となる前身頃(特に、前立て部)を形成する生地5に、一対の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が取り付けられる左右のエレメント取付縁部2が配されている。
このような衣服における左右のエレメント取付縁部2には、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20がそれぞれ縫着により取着されており、左右の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20に配される複数のファスナーエレメント11により、左右のエレメント列3が形成されている。
更に、衣服1における左右のエレメント取付縁部2の後端部(図1の図面上では下端部)には、蝶棒部31及び箱部41を有する開離嵌挿具30が形成されている。更に、左右のエレメント列3には、単一のスライダー50がエレメント列3に沿って摺動可能に取り付けられている。このスライダー50をエレメント列3に沿って前方又は後方に摺動させることにより左右のエレメント列3を噛合又は分離させ、それによって、衣服における左右の前身頃の前立て部(開閉部)を閉じること又は開くことができる。
この場合、衣服の前身頃を構成する生地(ガーメント生地とも言う)が、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が取着されるファスナー被着部材5となる。従って、本実施例1で構成されるスライドファスナーは、衣服の生地5に第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が直接固定されることにより形成された左右のエレメント列3を備える左右一対のファスナーストリンガー部と、左右のファスナーストリンガー部のエレメント列3を噛合及び分離させることが可能なスライダー50と、左右のエレメント列3の後端部に隣接して配される開離嵌挿具30とを有する。
ファスナー被着部材となる生地5は、衣服に必要な性能や性質(柔らかさ、厚さ、質感、色合いなど)を備えている。本実施例1において、エレメント部材が縫着される生地5は、衣服の形やデザイン等に応じて、所定の形状及び寸法に裁断されている。また、衣服の生地(ファスナー被着部材)5に設けられる左右のエレメント取付縁部2は、衣服の前身頃における互いに対向する位置(すなわち、前立て部の対向縁部)に、直線状に且つ連続的に配されている。
この場合、左右のエレメント取付縁部2は、図7に示すように、生地5の裁断端部となる側縁部が、エレメント部材の幅方向にU字状に折り返されることによって形成される。このようにエレメント取付縁部2が形成されることにより、エレメント取付縁部2の強度を高めることができる。それにより、エレメント取付縁部2が切断され難くなり、エレメント取付縁部2の耐久性が高められる。また、エレメント取付縁部2の強度が高められることによって、そのエレメント取付縁部2に第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20をしっかりと固定できる。
更に、生地5の側縁部がU字状に折り返されることにより、例えば生地5の側端縁に解れが生じていても、その解れがエレメント取付縁部2の裏面側に隠されて、外側に表出しないようにすることができる。それによって、スライドファスナー付き衣服1が、良好な外観品質(見栄え)を備えることができる。また、生地5の側端縁に生じている解れに起因して、左右のエレメント列3の噛み合わせが悪くなることやスライダー50の摺動性が低下することを防止できる。
本実施例1における左側の第1エレメント部材10は、1本の紐状の固定部材13(芯紐部材とも言う)と、固定部材13に一定の間隔(取付ピッチ)で固定される複数の独立したファスナーエレメント11(単独ファスナーエレメントとも言う)と、固定部材13の後端部に固定される蝶棒部31とを有する。ここで、ファスナーエレメント11間の間隔(取付ピッチ)とは、長さ方向に隣り合うファスナーエレメント11において、各ファスナーエレメント11の長さ方向における所定位置(例えば、中心位置)間の長さ方向における間隔(寸法)を言う。
また、右側の第2エレメント部材20は、1本の紐状の固定部材13と、固定部材13に一定の間隔で固定される複数の独立したファスナーエレメント11と、固定部材13の後端部に固定される箱部41とを有する。この場合、左側の第1エレメント部材10に配される各ファスナーエレメント11と、右側の第2エレメント部材20に配される各ファスナーエレメント11とは、左右対称的な形状に形成されているものの、実質的に同じ構造を有する。
第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20にそれぞれ配される複数のファスナーエレメント11は、固定部材13によって等間隔に連結された状態で、長さ方向に沿って一列に整列している。これらのファスナーエレメント11は、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を、1本の固定部材13に対して射出成形することにより、固定部材13と一体的に所定の形状を有して形成されている。
ここで、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20の固定部材13に配される複数のファスナーエレメント11のうち、長さ方向の開離嵌挿具30(蝶棒部31又は箱部41)が配される側の最も端(本実施例1の場合は後端)に配されるファスナーエレメント11を、端部ファスナーエレメント11a(第1ファスナーエレメントと呼ばれることもある)と規定する。
なお、本発明において、ファスナーエレメント11の材質は、上記した合成樹脂に限定されるものではなく、例えばファスナーエレメント11をその他の合成樹脂又は金属で形成することも可能である。また、本実施例1の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20は、熱可塑性樹脂を固定部材13に射出成形してファスナーエレメント11が形成されたものに限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を射出成形して所定の形状に形成されたファスナーエレメントを、固定部材に溶着又は接着などによって固着されて形成されるものも含む。
更に、本発明における第1エレメント部材及び第2エレメント部材は、本実施例1のような射出成形された合成樹脂製のファスナーエレメント11が固定部材13に一体的に形成されて連結されているものに限定されない。本発明の第1エレメント部材及び第2エレメント部材には、例えば、紐状の固定部材に金属のダイカスト成形を行ってファスナーエレメントが形成されるエレメント部材、横断面が略Y形状を呈する線材(所謂、Yバー)を切断してファスナーエレメント(エレメント素子とも言う)を作製し、更にそのファスナーエレメントを押圧変形により固定部材に取り付けて形成されるエレメント部材、薄板状の平板部材を打ち抜いてファスナーエレメント(エレメント素子とも言う)を作製し、更にファスナーエレメントを押圧変形により固定部材に取り付けて形成されるエレメント部材などが含まれる。
本実施例1のファスナーエレメント11は、図7に示したように、固定部材13に固定される胴部12aと、胴部12aから第1エレメント部材10(又は第2エレメント部材20)の幅方向に連続的に延出するとともに長さ方向の寸法が細くなるように括れた形状を有する首部12bと、首部12bから更に幅方向に連続的に延出するとともに平面視にて略長円形を呈する噛合頭部12cと、首部12bから前方及び後方に突出する突片部12d(肩部とも言う)とを有する。
ファスナーエレメント11の胴部12aは、一定の厚さ寸法を備える略直方体状の形態を有する。また、胴部12aにおける生地5に対向する側面部(生地対向側面部)には、生地5のエレメント取付縁部2の一部が挿入される挿入凹部12eが長さ方向に沿って設けられている。この挿入凹部12eに、生地5のエレメント取付縁部2が挿入された状態で、第1エレメント部材10(又は第2エレメント部材20)が後述する固定用縫製部6でエレメント取付縁部2に固定されることにより、各ファスナーエレメント11を所定の向きでエレメント取付縁部2にしっかりと安定して固定できる。
また、ファスナーエレメント11の胴部12aには、固定部材13が、胴部12aに包み込まれた状態で長さ方向に沿って貫通している。この場合、固定部材13は、胴部12aにおける厚さ方向の中央部に保持されており、固定部材13のファスナーエレメント11を保持する部分では、ファスナーエレメント11の胴部12aによって、固定部材13の外周面全体が覆われている。
噛合頭部12cの頂端部(先端部)には、左右のエレメント列3を噛合させるときに噛合相手側のファスナーエレメント11の突片部12dを嵌入させる凹溝部12fが長さ方向に沿って形成されている。なお本発明において、ファスナーエレメント11の形状や大きさは特に限定されず、任意に変更することが可能である。
本実施例1における左右の固定部材(芯紐部材)13は、可撓性を備えるとともに長さ方向に直交する断面が略円形を呈する同じ紐状の部材により形成されている。特に、各固定部材13は、円形の断面を有するとともにその断面積が長さ方向に一定となる部材であることが好ましい。このような固定部材13としては、例えばモノフィラメント、撚糸(撚紐)、又は、引き揃えられた複数本のマルチフィラメントからなる芯糸を、複数の編糸で編成される袋織部で包み込むことにより形成される紐体(ニットコードとも言われる)などを用いることが可能である。
なお本発明で用いられる固定部材13は、複数のファスナーエレメント11と蝶棒部31又は箱部41とを取着することができれば、特に限定されるものではない。また、固定部材13の断面形状は必要に応じて任意に変更することも可能である。更に、本発明の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20は、複数のエレメントを2本以上の紐状固定部材13によって連結することにより形成されていても良い。
本実施例1の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20は、図6に示すように、その長さ方向(又は固定部材13の長さ方向)に関して、複数のファスナーエレメント11が等間隔で取着されるエレメント保持部15aと、上述した端部ファスナーエレメント11aよりも更に後方に延出するとともに開離嵌挿具30を形成する構成パーツ(本実施例1の場合は蝶棒部31や箱部41)が取着されるパーツ保持部15bとを有する。
本実施例1においてスライドファスナーの後端部に設けられる開離嵌挿具30は、左側の第1エレメント部材10のパーツ保持部15bに配される蝶棒部31と、右側の第2エレメント部材20のパーツ保持部15bに配される箱部41とを有する。蝶棒部31及び箱部41は、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂をそれぞれの固定部材13に射出成形することにより、固定部材13と一体的に所定の形状を有して形成されている。この場合、蝶棒部31及び箱部41は、ファスナーエレメント11と同じ合成樹脂により形成されていることが好ましい。
左側の蝶棒部31は、端部ファスナーエレメント11aの後方に端部ファスナーエレメント11aから離間して配される第1蝶棒分割体32(前側蝶棒分割体)と、その第1蝶棒分割体32の後方に離間して配される第2蝶棒分割体33(後側蝶棒分割体)とを有する。この場合、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33は、第1エレメント部材10の端部ファスナーエレメント11aから後方に向けて、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで配されている。
本実施例1において、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33のそれぞれの前面及び後面は、長さ方向に直交して配されている。また、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33の長さ寸法(長さ方向における寸法)は、ファスナーエレメント11の長さ寸法の±20%の範囲の大きさに、好ましくはファスナーエレメント11の長さ寸法と同じ大きさに設定される。
また、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33における生地5に接する左側側面(生地対向側面)と、ファスナーエレメント11の胴部12aにおける生地5に接する左側側面(生地対向側面)とは、幅方向に直交して配されている。これらファスナーエレメント11、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33の各左側側面は、第1エレメント部材10の平面視において、1つの直線上に並ぶように配されている。
この場合、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33の幅寸法(幅方向における寸法)の最大値は、ファスナーエレメント11の噛合頭部12cの先端から胴部12aの生地対向側面までの幅寸法(すなわち、ファスナーエレメント11の幅寸法の最大値)よりも小さく設定される。更に、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33の厚さ寸法(厚さ方向における寸法)は、ファスナーエレメント11の厚さ寸法と同じ大きさに設定される。
本実施例1の第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33は、上下方向(厚さ方向)の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。第1蝶棒分割体32は、六面体(立方体又は直方体)状の第1蝶棒本体部32aと、第1蝶棒本体部32aの上面及び下面から上下方向に隆起する第1隆起部32bと、第1蝶棒本体部32aの箱部41に対向する対向面から左右方向(幅方向)に突出する突片部32cとを有する。また、第2蝶棒分割体33は、六面体状の第2蝶棒本体部33aと、第2蝶棒本体部33aの上面及び下面から上下方向に隆起する第2隆起部33bとを有する。
第1蝶棒分割体32の第1蝶棒本体部32aは、固定部材13を内部に挿通させて、固定部材13の外周面を覆って形成されている。第1隆起部32bは、第1蝶棒本体部32aの上面及び下面と第1隆起部32bの上面及び下面との間に段差を形成して設けられている。この第1隆起部32bは、第1エレメント部材10の平面視又は底面視においてJ字状又はフック状を呈する形状を有しており、第2エレメント部材20の箱部41における後述する箱延出部43に対して係合可能な係合部32dを有する。第1蝶棒分割体32の突片部32cは、左右のエレメント列3を噛合させたときに、第2エレメント部材20の端部ファスナーエレメント11aに形成される上述の凹溝部12fに挿入可能に形成されている。
第2蝶棒分割体33の第2蝶棒本体部33aは、固定部材13を内部に挿通させて、固定部材13の外周面を覆って形成されている。また、第2蝶棒本体部33aは、平面視又は底面視において後方に向けて幅寸法を漸減させる漸減部を有する。第2隆起部33bは、長さ方向に沿って設けられている。第2蝶棒本体部33aの上面及び下面と、第2隆起部33bの上面及び下面との間には、段差が形成されている。
本実施例1において、第1エレメント部材10の端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体32の間、及び、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33の間には、収容空間部(収容間隙)39が、後述するパーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する糸収容部(糸受入部)として形成されており、これらの収容空間部39では固定部材13が露出している。このような収容空間部39が設けられることにより、ミシンを用いて第1エレメント部材10と生地5のエレメント取付縁部2とに縫製を行う際に、収容空間部39に縫製糸(ミシン糸)を通して収容でき、縫製糸の位置を安定させることができる。
更に、本実施例1の固定部材13は、第2蝶棒分割体33から後方に延出して配されている。この場合、固定部材13における第2蝶棒分割体33から延出する延出部分13aの長さは、例えば後述する固定用縫製部6の後端部における解れを生じ難くするために、後述する単位走行領域17の長さ寸法の1/3以上の大きさを有することが好ましい。これにより、固定部材13の延出部分13aを、生地5のエレメント取付縁部2に安定して固定することができる。
なお本実施例1において、第2蝶棒分割体33から延出する固定部材13の延出部分13aは、所定の長さ寸法で切断されている。しかし本発明では、例えば固定部材13の第2蝶棒分割体33から延出する延出部分13aの長さ寸法を大きく確保し、生地5のエレメント取付縁部2を折り返して生地5の端末処理を行う際に、固定部材13の延出部分13aの一部を生地5のエレメント取付縁部2側に折り曲げるとともに、その折り曲げた部分を生地5の端末処理が施される部分で包み込むことも可能である。これにより、固定部材13の延出部分13aが綺麗に仕上げられて、スライドファスナー付き衣服1の外観品質を高めることができる。
本実施例1において、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33は、上述のように端部ファスナーエレメント11aからファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで配されている。このため、第1エレメント部材10では、互いに隣接するファスナーエレメント11間の間隙に露出する固定部材13の露出部分と、端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体32の間の間隙(収容空間部39)に露出する固定部材13の露出部分と、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33の間の間隙(収容空間部39)に露出する固定部材13の露出部分と、第2蝶棒分割体33から後方に延出する固定部材13の延出部分13aとが、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。
このため、本実施例1の蝶棒部31を、後述するようにパーツ縫製部8を形成して生地5のエレメント取付縁部2に取り付ける場合、端部ファスナーエレメント11a及び第1蝶棒分割体32間の収容空間部39と、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33間の収容空間部39とに、パーツ縫製部8の縫製糸が挿入されて収容される。それとともに、そのパーツ縫製部8の縫製糸が、これらの収容空間部39に露出する固定部材13と第2蝶棒分割体33の後方に延出する固定部材13とを当該固定部材13の外周面に接しながら包み込むことにより、固定部材13を一定の間隔で支持することができる。それによって、蝶棒部31が生地5のエレメント取付縁部2に固定される。
右側の箱部41は、直方体状の箱体部42と、箱体部42から厚さ寸法及び幅寸法を小さくして前方に向けて延出する箱延出部43とを有する。また、本実施例1の箱部41は、上下方向(厚さ方向)の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
この場合、箱体部42の長さ寸法は、箱体部42内に少なくとも蝶棒部31の第2蝶棒分割体33を挿入して収容可能なように、第2蝶棒分割体33の長さ寸法よりも大きく設定されている。箱体部42における上面及び下面間の厚さ寸法と、生地対向側面(右側面)及び蝶棒対向側面(左側面)間の幅寸法は、箱体部42にスライダー50を当接させて停止可能なように、少なくとも、スライダー50の後口側端部における後述するエレメント案内路の厚さ寸法と幅寸法よりもそれぞれ大きく設定される。
箱延出部43は、箱体部42にスライダー50を当接させたときに、スライダー50のエレメント案内路に挿入可能に形成されている。特に本実施例1の場合、箱延出部43がスライダー50のエレメント案内路に挿入されたときに、箱延出部43の上面と下面がスライダー50のエレメント案内路の案内面(後述する上翼板53及び下翼板55の内面)に接する又は近接するように、箱延出部43の上面及び下面は、長さ方向及び幅方向に平行な平坦面に形成されているとともに、箱延出部43における上面及び下面間の厚さ寸法は、ファスナーエレメント11の厚さ寸法の±20%の範囲の大きさに、好ましくはファスナーエレメント11の厚さ寸法と同じ大きさに設定される。
本実施例1の箱部41は、箱部41の右側半部(生地側半部)の内部に固定部材13を挿通させて形成されており、固定部材13の外周面を覆っている。また、箱体部42の右側側面部(生地対向側面部)には、生地5のエレメント取付縁部2の一部を挿入可能な凹溝部42aが、長さ方向に沿って形成されている。
更に、箱部41の左側半部(蝶棒側半部)には、蝶棒部31を挿入して収容可能な蝶棒収容部41aが、箱体部42と箱延出部43とに亘って前後方向に沿って設けられている。特に本実施例1の蝶棒収容部41aは、箱部41を前後方向に貫通している。
本実施例1の蝶棒収容部41aは、例えば箱部41を端部ファスナーエレメント11a側(前方側)から見たときに(図10を参照)、厚さ方向の中央部に配され、蝶棒部31の第1蝶棒本体部32a及び第2蝶棒本体部33aを挿入可能な第1収容部41a1と、第1収容部41a1の上方及び下方に配され、蝶棒部31の第2隆起部33bを挿入可能な第2収容部41a2とを有する。
更に、箱体部42における蝶棒部31に対向する左側側面部(蝶棒対向側面部)には、第1エレメント部材10が取り付けられている生地5のエレメント取付縁部2を挿通させる挿通溝(挿通スリット)42bが、箱体部42の前端面から後方に向けて直線的に所定の長さで設けられている。この挿通溝42bは、蝶棒収容部41aに連通している。
本実施例1の箱体部42には、収容空間部(収容開口部)49aが、後述するパーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する糸収容部として設けられている。この箱体部42の収容空間部49aは、箱体部42を上下方向に貫通するように形成されており、収容空間部49aを上方又は下方から見たときに、収容空間部49a内に固定部材13と生地5のエレメント取付縁部2とが露出して配されている。
また、この収容空間部49aは、箱部41の平面視又は底面視において、箱体部42の生地5に接する右側側面(生地対向側面)から一定の長さ寸法で幅方向に沿って形成される直線状の空間部と、溝部の先端部から幅方向に延出するとともに、その長さ寸法を溝部よりも大きくして形成される先端空間部とを有する。
このように箱体部42の収容空間部49aが形成されることにより、パーツ縫製部8の縫製糸を直線状の空間部に収容して安定して保護できる。また、ミシンを用いて箱部41を生地5のエレメント取付縁部に取り付ける際に、ミシンのミシン針を収容空間部49aの先端空間部内に通し易くすることができる。このため、例えばミシン針が箱部41に干渉して縫製が妨げられることやミシン針が折れることを生じ難くすることができる。
なお本実施例1では、箱部41の収容空間部49aにおける直線状の空間部を、例えば当該空間部の長さ寸法を先端空間部から離間させるにつれて漸増させるように形成することも可能である。それにより、パーツ縫製部8の縫製糸を箱部41に干渉させ難くすることが可能となるため、縫製糸に弛みをより生じさせ難くして、パーツ縫製部8で箱部41を生地5のエレメント取付縁部2にしっかりと固定することができる。
本実施例1の箱延出部43には、箱部41の平面視又は底面視において、箱延出部43の蝶棒対向側縁部に配され、前方に向けて(ファスナーエレメント11側に向けて)突出する係合突出部43aが形成されている。箱延出部43の係合突出部43aは、蝶棒部31を箱部41の蝶棒収容部41aに挿入して収容したときに(図12を参照)、蝶棒部31の第1蝶棒分割体32に配されるJ字状又はフック状の第1隆起部32bを引っ掛けさせて係合させる部分である。本実施例1では、蝶棒部31の第1隆起部32bが箱延出部43の係合突出部43aに係合するときの蝶棒部31の位置が、蝶棒部31が箱部41に最も深くまで挿入されてスライダー50を摺動させることが可能になる蝶棒挿入完了位置となる。
本実施例1の第2エレメント部材20では、上述のように箱体部42に収容空間部(収容開口部)49aが形成されているとともに、端部ファスナーエレメント11aと箱部41の間には、収容空間部(収容間隙)49bが、パーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する糸収容部として形成されている。
更に、固定部材13は、箱体部42から更に後方に延出している。この場合、固定部材13の箱体部42から延出する延出部分13aは、所定の長さ寸法で切断されている。しかし本発明では、第1エレメント部材10の延出部分13aの場合と同様に、第2エレメント部材20の延出部分13aを長く確保して、延出部分13aの一部を折り曲げて、その折り曲げた部分を生地5の端末処理が施される部分で包み込むことも可能である。
また、本実施例1の第2エレメント部材20では、互いに隣接するファスナーエレメント11間の間隙に露出する固定部材13の露出部分と、端部ファスナーエレメント11aと箱部41との間の間隙(収容空間部49b)に露出する固定部材13の露出部分と、箱部41に形成される収容空間部49a(収容開口部)に露出する固定部材13の露出部分と、箱体部42から後方に延出する固定部材13の延出部分13aとが、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。
このため、本実施例1の箱部41を、後述するようにパーツ縫製部8を形成して生地5のエレメント取付縁部2に取り付ける場合、端部ファスナーエレメント11a及び箱部41間の収容空間部(収容間隙)49bと、箱部41に形成される収容空間部(収容開口部)49aとに、パーツ縫製部8の縫製糸が挿入されて収容される。それとともに、そのパーツ縫製部8の縫製糸が、これらの収容空間部49a,49bに露出する固定部材13と、箱体部42の後方に延出する固定部材13の延出部分13aとを当該固定部材13の外周面に接しながら包み込むことにより、固定部材13を一定の間隔で支持することができる。それによって、箱部41が生地5のエレメント取付縁部2に固定される。
上述のような本実施例1における左側の第1エレメント部材10と右側の第2エレメント部材20とは、左右の生地5の各エレメント取付縁部2に対して、それぞれ幅方向の外側に隣接する位置に並べられて、固定用縫製部(固定用縫製線)6によって固定されている。この場合、左右の固定用縫製部6は、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20のエレメント保持部15aを生地5のエレメント取付縁部2に固定するエレメント縫製部7と、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20のパーツ保持部15bを生地5のエレメント取付縁部2に固定するパーツ縫製部8とを有する。
また本実施例1の場合、固定用縫製部6におけるエレメント縫製部7とパーツ縫製部8とは、千鳥縫いミシンによる1回の縫製により、途切れることなく連続的に形成されるとともに、前後方向(長さ方向)に対してジグザグ状に折れ曲がって形成される。このような固定用縫製部6によって、第1エレメント部材10は、各ファスナーエレメント11の胴部12aと、蝶棒部31の第1蝶棒本体部32a及び第2蝶棒本体部33aとをそれぞれ生地5のエレメント取付縁部2に接触させた状態でエレメント取付縁部2に固定される。
特に本実施例1において、第1エレメント部材10の長さ方向に関して、例えば図2に示したように、蝶棒部31が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている範囲を、直接取着範囲38とした場合に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲38の長さ方向の全体に形成されている。ここで、蝶棒部31が間欠的に取着されているとは、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33が互いに離間しているものの、これらの第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33によって形成される1つの蝶棒部31が固定部材13に取着されていることを言う。この場合の直接取着範囲38は、第1蝶棒分割体32の固定部材13に接する前端位置から、第2蝶棒分割体33の固定部材13に接する後端位置までの長さ方向の範囲を言う。
更にこの場合、第1エレメント部材10の長さ方向に関して、上述の直接取着範囲38におけるエレメント保持部15a(又はファスナーエレメント11)に近い側の前端縁に対応する位置(第1蝶棒分割体32の前端位置)を前端位置38aとし、また、直接取着範囲38におけるエレメント保持部15a(又はファスナーエレメント11)から遠い側の後端縁に対応する位置(第2蝶棒分割体33の後端位置)を後端位置38bとした場合、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、直接取着範囲38から、上記の前端位置38aを越えて前方に連続的に延出するとともに、上記の後端位置38bを越えて後方に連続的に延出して形成されている。ここで、パーツ縫製部8が、前端位置38a又は後端位置38bを越えて連続的に延出するとは、縫製糸(上糸及び下糸)が途切れることなく連続して配されてパーツ縫製部8が連続的に形成されていることを言う。
また、上述の固定用縫製部6によって、第2エレメント部材20は、各ファスナーエレメント11の胴部12aと、箱部41の箱体部42とをそれぞれ生地5のエレメント取付縁部2に接触させた状態でエレメント取付縁部2に固定される。特に本実施例1では、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20を生地5のエレメント取付縁部2に固定したときに、エレメント取付縁部2の一部が、各ファスナーエレメント11の挿入凹部12eに挿入されて保持されるとともに、箱体部42の凹溝部42aに挿入されて保持される。
本実施例1において、第2エレメント部材20の長さ方向に関して、例えば図2に示したように、第1エレメント部材10の場合と同様に、箱部41が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている範囲を、直接取着範囲48とした場合に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲48の長さ方向の全体に形成されている。ここで、箱部41が間欠的に取着されているとは、箱体部42が収容空間部49aにより部分的に分割されているものの、収容空間部49aの領域を含む箱体部42と箱延出部43とによって形成される1つの箱部41が固定部材13に取着されていることを言う。この場合の直接取着範囲48は、箱延出部43の固定部材13に接する前端位置から、箱体部42の固定部材13に接する後端位置までの長さ方向の範囲を言う。なお本実施例1において、パーツ縫製部8は、蝶棒部31側の直接取着範囲38又は箱部41側の直接取着範囲48の長さ方向の少なくとも一部に、好ましくは90%以上の範囲に亘って形成されていれば良い。
更にこの場合、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第2エレメント部材20の長さ方向に関して、直接取着範囲48から、直接取着範囲48の前端位置48aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲48の後端位置48bを越えて後方に延出して形成されている。
ここで、千鳥縫いミシンとは、ミシンの送り方向に交差する交差方向に沿ってミシン針を揺動させながら、生地等を本縫いでジグザグに縫うことが可能なミシンである。なお、千鳥縫いミシンにおけるミシン針の揺動を千鳥振りと言うこともある。このような千鳥縫いミシンを用いるとともに、その千鳥縫いミシンに、例えばミシン針の針落ち位置となるX座標(送り方向の位置)とY座標(交差方向の位置)の座標データを設定して縫製を行うことにより、縫製後に形成される固定用縫製部6を、千鳥縫いミシンの送り方向に対し、上記交差方向にジグザグ状となるように容易に屈曲させることができる。
本実施例1において、本縫いにより形成される固定用縫製部6の縫製糸は、エレメント取付縁部2の表面(第1面)を走行するとともに固定部材13の表面側半部に接する上糸(針糸)と、エレメント取付縁部2の裏面(第2面)を走行するとともに固定部材13の裏面側半部に接する下糸(ボビン糸)とを有する。この場合、固定用縫製部6は本縫いで形成されるため、上糸と下糸とは互いに面対称な位置関係で配される。
この場合、本縫いの上糸と下糸とには、従来の一般的なミシン糸が用いられる。また、本縫いにおける上糸と下糸とは、固定用縫製部6が生地5のエレメント取付縁部2を刺通する刺通位置(後述する第1刺通位置18a及び第2刺通位置18b)と、図3及び図4に示すように固定部材13の外周面に接する位置とにおいて、互いに交差(交絡)している。
本実施例1において、固定用縫製部6の上糸と下糸とは、厚さ方向に関して、エレメント取付縁部2の表面を走行する上糸とエレメント取付縁部2の裏面を走行する下糸との間の位置で互いに交差している。特に本実施例1における上糸と下糸とは、エレメント取付縁部2における厚さ方向の中央部分の位置で相互に交差している。これにより、刺通位置における上糸と下糸の交差部分を、エレメント取付縁部2で保護するとともに外部から見え難くすることができる。なお、厚さ方向における上糸と下糸の交差位置は、千鳥縫いミシンにおける上糸及び下糸のテンションコントロールを行うことによって容易に変更することが可能である。
本実施例1の固定用縫製部6は、上述のように千鳥縫いミシンを用いて上糸と下糸とを他糸レーシングする本縫いのステッチで形成されている。これにより、固定用縫製部6が生地5のエレメント取付縁部2を刺通するとともに、上糸及び下糸が第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20の固定部材13の外周面に接しながら、当該固定部材13を包み込むように保持することができる。この場合、固定用縫製部6の上糸及び下糸は、固定部材13の一定の間隔で露出する露出部分を保持する。このため、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20は、固定用縫製部6によって、生地5のエレメント取付縁部2に容易に且つ安定して取り付けられて固定される。
また千鳥縫いミシンを用いて固定用縫製部6を形成することにより、縫製後の固定用縫製部6のエレメント縫製部7の上糸と下糸とが、ファスナーエレメント11に対して、ファスナーエレメント11の表面(上面)及び裏面(下面)で交差するように重なって配置されることを効果的に防止できる。また、縫製後のパーツ縫製部8の上糸と下糸とが、蝶棒部31や箱部41に重なって配置されることも防止できる。
これにより、固定用縫製部6の上糸及び下糸が、ファスナーエレメント11、蝶棒部31、及び箱部41に重なることに起因して上糸及び下糸の弛み、エレメント列3の噛み合わせの円滑さ(噛み合わせ易さ)の低下、スライダー50の摺動性の低下などの不具合が生じることを防止できる。
特に、本実施例1のエレメント縫製部7は、本縫いの上糸と下糸とが、1つのファスナーエレメント11に対して固定部材13の外周面上で交差する外周交差位置から、次の固定部材13の外周面上で交差する外周交差位置まで走行する単位走行領域17を有し、この単位走行領域17の縫い目が長さ方向にファスナーエレメント11ごとに繰り返して配されることによって形成されている。この場合、本実施例1のエレメント縫製部7を形成する各単位走行領域17の縫い目は、エレメント縫製部7がエレメント取付縁部2を刺通する刺通位置を2つずつ有する。
また本実施例1において、単位走行領域17における縫い目のパターンは、エレメント縫製部7だけではなく、パーツ縫製部8にも同じピッチで繰り返されており、それによって、蝶棒部31及び箱部41を生地5のエレメント取付縁部2に固定している。
具体的に説明すると、本実施例1の第1エレメント部材10では、上述のように蝶棒部31に縫製糸を受け入れる収容空間部(収容間隙)39が設けられており、それによって、固定部材13の露出部分が、第1エレメント部材10のエレメント保持部15aとパーツ保持部15bの全体に亘って、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、第2エレメント部材20も同様に、箱部41に縫製糸を受け入れる収容空間部49a,49b(収容開口部及び収容間隙)が設けられており、固定部材13の露出部分が、第2エレメント部材20のエレメント保持部15aとパーツ保持部15bの全体に亘って、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。
このため、固定用縫製部6において、本縫いによるジグザグ状の一定の縫い目のパターンが、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20のエレメント保持部15aとパーツ保持部15bの全体に亘って同じピッチで繰り返されることにより、固定用縫製部6の縫製糸(上糸及び下糸)が生地5のエレメント取付縁部2を一定の間隔で刺通するとともに、一定の間隔で配置される固定部材13の露出部分を固定用縫製部6の縫製糸で保持することができる。これによって、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が、生地5のエレメント取付縁部2に安定して固定される。
この場合、第1エレメント部材10において固定部材13の第2蝶棒分割体33から後方に延出して露出する延出部分13aと、第2エレメント部材20において固定部材13の箱体部42から後方に延出して露出する延出部分13aとについても、ジグザグ状の本縫いによって生地5のエレメント取付縁部2に固定されている。なお本発明において、固定部材13の上述した延出部分13aは、ジグザグ状の本縫いによって生地5のエレメント取付縁部2に固定されていなくても良い。
ここで、本実施例1の固定用縫製部6(エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8)の単位走行領域17について具体的に説明する。本実施例1における固定用縫製部6の上糸及び下糸は、各単位走行領域17において、固定部材13の外周面で上糸と下糸が交差する外周交差位置から最初の第1刺通位置18aまで配される第1走行部17aと、その第1刺通位置18aから次の第2刺通位置18bまで配される第2走行部17bと、第2刺通位置18bから次の外周交差位置まで配される第3走行部17cとを有する。
この場合、第1走行部17aは、上糸(又は下糸)が、上述の外周交差位置から、ファスナーエレメント11の側面部に対応する幅方向の位置まで幅方向(又は略幅方向)に沿って走行し、更に第1刺通位置18aまでは幅方向に対して斜めに走行することにより形成される。第1走行部17aの幅方向に沿って走行する部分と幅方向に対して斜めに走行する部分との境界部は、ファスナーエレメント11の胴部12aに接することもある。第2走行部17bは、第1刺通位置18aと第2刺通位置18bとの間で、上糸(又は下糸)が長さ方向に沿って走行することにより形成される。第3走行部17cは、上糸(又は下糸)が第2刺通位置18bからファスナーエレメント11の側面部に対応する幅方向の位置まで幅方向に対して斜めに走行し、更に外周交差位置までは幅方向(又は略幅方向)に沿って走行することにより形成される。この場合、第3走行部17cの幅方向に対して斜めに走行する部分と幅方向に沿って走行する部分との境界部は、ファスナーエレメント11の胴部12aに接することもある。
本実施例1では、エレメント縫製部7が生地5のエレメント取付縁部2を刺通する第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bを、各ファスナーエレメント11の内側側面部(生地対向側面部)から、幅方向における生地5の内側に向けて離間させて形成されている。すなわち、エレメント部材の幅方向において、エレメント縫製部7の第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bと、各ファスナーエレメント11の側面部の位置との間には、幅方向に一定の間隔が設けられている。また、パーツ縫製部8の第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bも、蝶棒部31又は箱部41から生地5の内側に向けて離間させて形成されており、パーツ縫製部8の第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bと、蝶棒部31又は箱部41の位置との間には、幅方向に一定の間隔が設けられている。
固定用縫製部6の第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bの位置を上述のように設定することにより、固定用縫製部6の上糸及び下糸が、ファスナーエレメント11、蝶棒部31、及び箱部41に重なることをより安定して防止できる。更に、第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bとエレメント取付縁部2の側端縁との間の幅方向における間隔を大きく確保できる。これにより、エレメント取付縁部2の強度を安定して確保し易くなり、例えば生地5が上糸及び下糸によって擦られることによって第1刺通位置18a又は第2刺通位置18bからエレメント取付縁部2の側端縁に向けて切れるというような生地5の損傷を生じさせ難くすることができる。
なお本実施例1において、固定用縫製部6の単位走行領域17における長さ方向の寸法は、エレメント縫製部7とパーツ縫製部8とにおいて同じ大きさに設定されている。しかし本発明では、例えば蝶棒部31や箱部41の形態や大きさを変更した場合に、千鳥縫いミシンに設定する座標データを変更すること等によって、固定部材13におけるエレメント縫製部7とパーツ縫製部8との間で、単位走行領域17における長さ方向の寸法を異ならせることも可能である。また、パーツ縫製部8内で単位走行領域17ごとに長さ方向の寸法を異ならせることも可能である。
更に、本実施例1のスライドファスナー付き衣服1では、幅方向における各ファスナーエレメント11の側面部の位置と固定用縫製部6の刺通位置(第1刺通位置18a及び第2刺通位置18b)との間の領域に、固定用縫製部6の上糸及び下糸を弛まないように締め付けるための補助縫製部9が長さ方向に沿って連続的に形成されている。
特に本実施例1の場合、左側の第1エレメント部材10では、固定用縫製部6の全体(すなわち、エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8)に補助縫製部9が形成されている。一方、右側の第2エレメント部材20では、エレメント縫製部7に対してのみ補助縫製部9が形成されており、パーツ縫製部8には補助縫製部9が形成されていない。
本実施例1の補助縫製部9は、ミシンを用いて補助用上糸(針糸)と補助用下糸(ボビン糸)を他糸レーシングする本縫いのステッチにより、エレメント部材の長さ方向に沿って直線的に形成されている。特に本実施例1の補助縫製部9は、固定用縫製部6における上述した第1走行部17a及び第3走行部17cに重なる領域において、補助用上糸及び補助用下糸が固定用縫製部6の上糸及び下糸の上にそれぞれ交差して形成されている。
このように補助縫製部9を本縫いで形成することにより、補助縫製部9を容易に且つ安定して形成できるとともに、固定用縫製部6の上糸及び下糸を安定して押さえ付ける(締め付ける)ことができる。また、補助縫製部9が形成されることにより、固定用縫製部6の上糸及び下糸を、補助用上糸及び補助用下糸で、上下からエレメント取付縁部2に向けて(言いかえると、厚さ方向の内側に向けて)押さえ付けることができる。
これにより、補助縫製部9によって固定用縫製部6の上糸及び下糸を締め付けてテンションを加えることができる。このため、固定用縫製部6の上糸及び下糸に弛みが生じていたとしても、その弛みを解消することができる。また、固定用縫製部6の上糸及び下糸に弛みが生じることも効果的に防止できる。
なお、本実施例1の補助縫製部9は、長さ方向に沿った直線状の本縫いにより形成されているが、本発明では、補助縫製部9が固定用縫製部6の上糸及び下糸をエレメント取付縁部2に向けて押さえることができれば、二重環縫い等のような本縫い以外のステッチによって補助縫製部9を形成することも可能である。
上述のような固定用縫製部6と補助縫製部9とによって左側の第1エレメント部材10と右側の第2エレメント部材20とが左右の生地5のエレメント取付縁部2にそれぞれ取り付けられることにより、左右の生地5のエレメント取付縁部2に沿って左右のエレメント列3が形成される。また、固定用縫製部6及び補助縫製部9によって、左側の生地5のエレメント取付縁部2には、第1エレメント部材10の蝶棒部31がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定され、右側の生地5のエレメント取付縁部2には、第2エレメント部材20の箱部41がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定される。これによって、生地5に固定された左側の蝶棒部31と、生地5に固定された右側の箱部41とを有する右挿し用の開離嵌挿具30が、スライドファスナーの後端部に形成される。
本実施例1のスライダー50は、図1及び図11等に模式的に示したように、スライダー胴体51と引手52とを有する。本実施例1のスライダー胴体51は、従来の一般的なスライダー胴体と実質的に同様に形成されているため、その詳しい構造の図示を省略するが、このスライダー胴体51は、上翼板53と、上翼板53と離間して平行に配された下翼板55と、上翼板53及び下翼板55の前端部(肩口側端部)間を連結する連結柱56と、上翼板53及び下翼板55の左右側縁部に配される上下のフランジ部57と、上翼板53の上面に配される引手取付部54とを有する。
また、スライダー胴体51の前端部には、案内柱を間に挟んで左右の肩口が形成され、スライダー胴体51の後端部には後口が形成されている。また、上翼板53及び下翼板55間には、左右の肩口と後口とを連通する略Y字形状のエレメント案内路が形成されている。更に、スライダー胴体51における上下のフランジ部57間には、生地5のエレメント取付縁部2を挿通させる挿通間隙が形成されている。
次に、上述のような開離嵌挿具30を有する本実施例1のスライドファスナー付き衣服1の製造方法について説明する。
先ず、衣服用の生地5と、左側の第1エレメント部材10と、右側の第2エレメント部材20とを準備する。本実施例1の場合、1本の紐状の固定部材13に合成樹脂を直接射出成形することによって、所定の形状を有する複数のファスナーエレメント11を一定の取付ピッチで形成するとともに、固定部材13の後端部に蝶棒部31又は箱部41を所定の位置に形成する。これによって、左側の第1エレメント部材10及び右側の第2エレメント部材20が作製される。
更に、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20とは別に、ファスナー被着部材5となる衣服用の生地5を編成や織成などによって作製する。このとき、例えば生地5に防水性を付与したい場合には、編成又は織成された生地5に合成樹脂をコーティングしたり、樹脂フィルムを貼り付けたりすることも可能である。更に、裁断した左右の生地5における裁断端縁部となる側縁部をU字状に折り返すことにより、エレメント取付縁部2を形成する。この場合、左右一対の前身頃用生地5にそれぞれ形成されるエレメント取付縁部2は、衣服を製造したときに互いに対向して配される位置に設けられる。
次に、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20と、所定の形状に裁断されてエレメント取付縁部2が形成された左右の生地5(生地5パーツ)を用いて、衣服構成パーツを作製する。
先ず、1回目の縫製工程として、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20を、千鳥縫いミシンを用いて左右の生地5のエレメント取付縁部2にそれぞれ取り付けて固定する。このとき、針落ち位置の座標データが設定されている千鳥縫いミシンを用いて、第1エレメント部材10と生地5のエレメント取付縁部2に対し、第1エレメント部材10の全体に亘って、ジグザグ状に折れ曲がるように本縫いによる縫製加工を行う。この千鳥縫いミシンにより形成される固定用縫製部6は、ジグザグ状の一定の縫い目のパターンが固定用縫製部6の全体(エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8)に亘って同じピッチで繰り返されて形成される。
この固定用縫製部6により、第1エレメント部材10を生地5のエレメント取付縁部2に取り付けて固定する。これによって、左側の生地5のエレメント取付縁部2に左側のエレメント列3が形成されるとともに、蝶棒部31が左側のエレメント列3に連続するように所定の位置に固定される。また同様に、固定用縫製部6により、第2エレメント部材20を生地5のエレメント取付縁部2に取り付けて固定する。これによって、右側の生地5のエレメント取付縁部2に右側のエレメント列3が形成されるとともに、箱部41が右側のエレメント列3に連続するように所定の位置に固定される。
次に、2回目の縫製工程として、固定用縫製部6によって第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が固定された左右の生地5のエレメント取付縁部2に対し、1本針の本縫いミシンを用いて補助縫製部9を形成する縫製を行う。これにより、固定用縫製部6が形成されたエレメント取付縁部2の所定位置に、上述した直線状の本縫いからなる補助縫製部9を安定して形成することができる。この補助縫製部9によって、固定用縫製部6の上糸及び下糸がエレメント取付縁部2に向けて押さえ付けられるため、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20をより強固に左右のエレメント取付縁部2にそれぞれ固定することができる。
以上のような作業を行うことにより、左右の第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が左右の生地5のエレメント取付縁部2にそれぞれ取り付けられた左右の衣服構成パーツが作製される。また本実施例1では、上述した左右一対の衣服構成パーツの他に、衣服における左右の袖部や後身頃を構成する不図示の衣服構成パーツなどを作製して準備する。
その後、作製した各部位の衣服構成パーツを互いに縫製等により結合させて、衣服を組み立てる。更に、生地5のエレメント取付縁部2に形成されたエレメント列3に、スライダー50を摺動可能に取り付けるととともに、左右のエレメント列3の前端部にスライダー50の脱落を防止する図示しない止具を設ける。これによって、図1に示したような開離嵌挿具30を備えるスライドファスナー付き衣服1が安定して製造される。
このようにして製造された本実施例1のスライドファスナー付き衣服1は、衣服の生地5の一部が、衣服を構成するだけでなく、従来のスライドファスナーのファスナーテープとしても機能する。このため、このスライドファスナー付き衣服1では、従来のスライドファスナーでは必須構成部品であったファスナーテープの存在を省略した形態で、スライドファスナーの機能を有することができる。これにより、スライドファスナー付き衣服1の製造コスト(特に、材料コスト)を低減することができる。また、スライドファスナー付き衣服1を軽量化できるとともに、衣服の柔軟性を向上させることができる。
その上、開離嵌挿具30がスライドファスナーの後端部に形成されており、この開離嵌挿具30を、従来の一般的な開離嵌挿具30と同様に操作することができる。例えばスライドファスナーにおける左右のエレメント列3が分離して第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が互いに離間している状態からスライドファスナーを閉鎖する場合、図11に示したように、開離嵌挿具30の蝶棒部31を、スライダー50の左側の肩口からエレメント案内路に挿入し、更に、スライダー50のエレメント案内路を介して箱部41の蝶棒収容部41aに挿入して収容する。
このとき、図12に示したように、蝶棒部31に設けたJ字状又はフック状の第1隆起部32bを、箱延出部43の係合突出部43aに引っ掛けて係合させる。これにより、蝶棒部31をそれ以上は後方に挿入することができない蝶棒挿入完了位置に保持できる。その後、スライダー50を前方(閉鎖方向)に摺動させることにより、左右のエレメント列3を円滑に噛合させることができる。
なお、上述の図11及び図12や、後述する図16、図18〜図21、及び図23では、ファスナーエレメント、開離嵌挿具、スライダーの関係を判り易く示すために、スライダーを断面で表すとともに、ファスナーテープや固定用縫製部等の図示を省略している。
一方、左右のエレメント列3が噛合してスライドファスナーが閉鎖されている状態から左右のエレメント列3を分離して離間させる場合は、先ず、スライダー50を開離嵌挿具30の箱体部42に当接するまで後方(分離方向)に摺動させる。これにより、図12に示したように左右のエレメント列3を分離することができる。その後、蝶棒部31を斜め前方に引っ張って箱部41の蝶棒収容部41aから抜脱させる。これにより、第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20が互いに離間するため、衣服1の左右の前立て部を開いて離れさせることができる。
また、本実施例1のスライドファスナー付き衣服1では、上述したように、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33を有する蝶棒部31と、その蝶棒部31を挿入して収容可能な箱部41とにより開離嵌挿具30が形成されている。このような本実施例1の開離嵌挿具30では、開離嵌挿具30の全体の長さ寸法を比較的短くすることができる。これにより、本実施例1の開離嵌挿具30に、例えば左右のエレメント列3に亘って形成される従来の止具(下止具と呼ばれることもある)のような外観を備えさせることが可能となる。それによって、本実施例1の開離嵌挿具30をスマート又はスタイリッシュに見せることが可能となるため、開離嵌挿具30の外観品質を高めることができる。
更に本実施例1の蝶棒部31は、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33の2つの分割体によって形成されるとともに、第1蝶棒分割体32に、箱部41の係合突出部43aに係合するJ字状又はフック状の第1隆起部32bが形成されている。
これにより、例えば左右のエレメント列3が噛合している状態において、左右のエレメント列3がそれぞれ幅方向の外側に向けて引っ張られる横引き力を受けても、第1蝶棒分割体32の第1隆起部32bと箱部41の係合突出部43aとの係合状態が維持され、且つ、それらの係合によって、蝶棒部31が箱部41の蝶棒収容部41aから抜脱し難くなり、第2蝶棒分割体33が箱部41の蝶棒収容部41aに挿入されている状態を安定して維持できる。
このため、横引き力に起因して、左右のエレメント列3が、スライダー50の摺動に依らずに、開離嵌挿具30側から強制的に順次分離するといった噛合割れを生じ難くすることができる。その結果、横引き力に対する噛合強度(横引き強度)が高いスライドファスナーを得ることができ、スライドファスナーに故障等の不具合を発生させ難くすることができる。
更に、本実施例1の場合、例えば生地5に防水性や撥水性などのような所望の機能を付与した上で、当該生地5に第1エレメント部材10及び第2エレメント部材20を直接取り付けることが可能である。このため、防水性や撥水性などを備えた高品質のスライドファスナー付き衣服1を容易に製造することも可能となる。
なお本実施例1では、上述したように、第1エレメント部材10の端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体32の間、及び、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33の間に収容空間部(収容間隙)39が形成されており、この収容空間部39では第1エレメント部材10の固定部材13が露出している。また、第2エレメント部材20の箱体部42には収容空間部(収容開口部)49aが形成されており、この収容空間部49a内で第2エレメント部材20の固定部材13が露出している。更に、第2エレメント部材20では、第2エレメント部材20の端部ファスナーエレメント11aと箱部41との間に収容空間部(収容間隙)49bが形成されており、この収容空間部49bでは第1エレメント部材10の固定部材13が露出している。
しかし、本発明において、蝶棒部31や箱部41に形成される収容空間部39,49a,49bは、縫製糸の受入部として、固定用縫製部6の縫製糸を収容することができれば、収容空間部39,49a,49b内で固定部材13を必ずしも露出させなくても良い。
例えば図13及び図14に本実施例1の変形例に係る蝶棒部31aを示すように、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33との間に、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33を連結する合成樹脂性の連結部35を、固定部材13が包まれるように形成することもできる。この場合、蝶棒部31aの連結部35は、第1蝶棒分割体32及び第2蝶棒分割体33に比べて、幅寸法及び厚さ寸法を小さくして形成されている。これにより、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33との間には、固定用縫製部6の縫製糸を受け入れて収容することが可能な収容空間部(収容凹部)39aが、連結部35の外周面に沿って凹状に形成される。
このような変形例に係る蝶棒部31aであっても、上述の実施例1で説明したパーツ縫製部8によって生地5のエレメント取付縁部2に安定して固定することができる。更に、第1蝶棒分割体32と第2蝶棒分割体33とが連結部35によって固定されるため、蝶棒部31aの剛性を高めることができる。
それによって、蝶棒部31aをスライダー50と開離嵌挿具30の箱部41とに挿入し易くなるため、蝶棒部31の挿入操作性が高められる。更に、左右のエレメント列3が噛合している状態で横引き力を受けても、蝶棒部31が箱部41の蝶棒収容部41aから更に抜脱し難くなるため、スライドファスナーの横引き強度をより高めることができる。
また上述した実施例1において、第1エレメント部材10の固定部材13が露出している露出部分、及び第2エレメント部材20の固定部材13が露出している露出部分は、長さ方向に一定の間隔で配されている。しかし本発明では、例えば蝶棒部を形成する分割体の取付ピッチを、ファスナーエレメント11の取付ピッチと異ならせることや、箱部に形成される収容空間部(収容開口部)の長さ方向における位置を前後にずらすこと等によって、固定部材の露出部分が設けられる間隔(形成ピッチ)を意図的に変えることも可能である。
このように固定部材の露出部分の間隔を変えた場合でも、固定用縫製部を形成する千鳥縫いミシンにおいて、ミシン針の針落ち位置の座標データを適切に設定することより、固定部材の露出部分を固定用縫製部の縫製糸で適切に保持して、第1エレメント部材及び第2エレメント部材を生地のエレメント取付縁部に安定して固定することができる。
図15は、本実施例2に係るスライドファスナー付き衣服の要部を模式的に示す平面図である。図16は、本実施例2に係る開離嵌挿具の蝶棒部が箱部の蝶棒収容部に挿入された状態を示す模式図である。
本実施例2のスライドファスナー付き衣服1aでは、その開離嵌挿具60の形態が前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1と異なるものの、それ以外の構成については前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1と実質的に同様に形成されている。
従って、本実施例2では、前述の実施例1と実質的に同じ構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。また、後述する実施例3以降の説明においても、それ以前に説明された実施例と実質的に同じ構成を有する部品及び部材ついては同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。
本実施例2においてスライドファスナーの後端部に設けられる開離嵌挿具60は、左側の第1エレメント部材10aのパーツ保持部15bに配される蝶棒部61と、右側の第2エレメント部材20aのパーツ保持部15bに配される箱部71とを有する。この場合、蝶棒部61及び箱部71は、熱可塑性樹脂の射出成形により固定部材13に一体的に形成されている。
左側の蝶棒部61は、端部ファスナーエレメント11aの後方に端部ファスナーエレメント11aから離間して配される第1蝶棒分割体(前側蝶棒分割体)62と、その第1蝶棒分割体62の後方に離間して配される第2蝶棒分割体(後側蝶棒分割体)63とを有する。また、第1蝶棒分割体62及び第2蝶棒分割体63は、前述の実施例1の場合と同様に、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで配されているとともに、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
本実施例2の第1蝶棒分割体62は、固定部材13を内部に挿通させる六面体状の第1蝶棒本体部62aと、第1蝶棒本体部62aの上面及び下面から上下方向に隆起する第1隆起部62bとを有する。この場合、第1蝶棒本体部62aは、前述の実施例1の第1蝶棒本体部32aと同様に形成されている。
第1隆起部62bは、前述の実施例1の第1隆起部32bと異なり、長さ方向に沿って形成されており、箱体部72と係合する係合部を備えていない。第2蝶棒分割体63は、第1蝶棒分割体62と同様に、六面体状の第2蝶棒本体部63aと、第2隆起部63bとを有しており、前述の実施例1の第2蝶棒分割体33と実質的に同様に形成されている。
本実施例2において、第1エレメント部材10aの端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体62の間、及び、第1蝶棒分割体62と第2蝶棒分割体63の間には、前述の実施例1の場合と同様に、収容空間部(収容間隙)69が糸収容部として形成されており、これらの収容空間部69は、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、これらの収容空間部69では固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、第2蝶棒分割体63から後方に延出して配されている。
右側の箱部71は、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。この箱部71は、直方体状の箱体部72と、箱体部72と一体的に形成されるとともに箱体部72から厚さ寸法及び幅寸法を小さくして前方に向けて延出する箱延出部73と、端部ファスナーエレメント11aと箱延出部73との間に配される箱側係合部74とを有する。
本実施例2の箱体部72及び箱延出部73には、蝶棒部61を挿入して収容可能な蝶棒収容部が前後方向に沿って設けられている。また、箱体部72における蝶棒に対向する左側側面部(蝶棒対向側面部)には、第1エレメント部材10a側のエレメント取付縁部2を挿通させる挿通溝が設けられている。
本実施例2の箱体部72は、前述の実施例1の箱体部42と実質的に同様に形成されており、この箱体部72には、パーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する収容空間部(収容開口部)79aが右側半部に設けられている。本実施例2の箱延出部73は、前述の実施例1の係合突出部43aが形成されていないことを除いて、前述の実施例1の箱延出部43と実質的に同様に形成されている。
本実施例2の箱側係合部74は、固定部材13を内部に挿通させる本体部74aと、本体部74aから第1エレメント部材10aに向けて斜め前方に突出する突出部74bとを有する。本実施例2では、蝶棒部61を箱部71の蝶棒収容部に挿入して収容させるときに、箱側係合部74が第1エレメント部材10aの端部ファスナーエレメント11aと係合する。この箱側係合部74が端部ファスナーエレメント11aと係合するときの蝶棒部61の位置が、蝶棒部61が箱部71に最も深くまで挿入され、スライダー50を摺動させることが可能になる蝶棒挿入完了位置となる。
本実施例2の第2エレメント部材20aでは、上述のように箱体部72に収容空間部(収容開口部)79aが糸収容部として形成されているとともに、端部ファスナーエレメント11aと箱側係合部74との間、並びに、箱側係合部74と箱体部72及び箱延出部73との間には、収容空間部(収容間隙)79bが糸収容部として形成されている。これらの収容空間部79a,79bは、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。更に、固定部材13は、箱体部72から後方に延出して配されている。
本実施例2において、左側の第1エレメント部材10aと右側の第2エレメント部材20aとは、左右の生地5のエレメント取付縁部2に、エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8を備えたジグザグ状に固定用縫製部6によって固定されている。この場合、固定用縫製部6は、前述の実施例1の場合と同様に、ジグザグ状の一定の縫い目のパターンが同じピッチで繰り返されることにより形成されている。更に、この固定用縫製部6に重なるように補助縫製部9が、前述の実施例1の場合と同様に形成されている。
また本実施例2において、第1エレメント部材10aの長さ方向に関して、例えば図15に示したように、蝶棒部61が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている範囲を、直接取着範囲68とした場合に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲68の長さ方向の全体に形成されている。
更にこの場合、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第1エレメント部材10aの長さ方向に関して、直接取着範囲68から、直接取着範囲68の前端位置68aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲68の後端位置68bを越えて後方に延出して形成されている。
また、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第2エレメント部材20aに関しても同様に、長さ方向に関して、箱部71が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている直接取着範囲78の長さ方向の全体に形成されている。更に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、直接取着範囲78から、直接取着範囲78の前端位置78aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲78の後端位置78bを越えて後方に延出して形成されている。
従って、本実施例2においても、上述した固定用縫製部6と補助縫製部9とによって、左側の蝶棒部61がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されているとともに、右側の箱部71がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されている。
上述のような蝶棒部61及び箱部71を備えた開離嵌挿具60を有する本実施例2のスライドファスナー付き衣服1aでは、前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1と同様の効果が得られる。
図17は、本実施例3に係るスライドファスナー付き衣服の要部を模式的に示す平面図である。
本実施例3のスライドファスナー付き衣服1bにおいて、スライドファスナーの後端部に設けられる開離嵌挿具80は、左側の第1エレメント部材10bのパーツ保持部15bに配される蝶棒部81と、右側の第2エレメント部材20bのパーツ保持部15bに配される箱部91とを有する。この場合、蝶棒部81及び箱部91は、熱可塑性樹脂の射出成形により固定部材13に一体的に形成されている。また、本実施例3の蝶棒部81及び箱部91は、前述の実施例1の蝶棒部31及び箱部41よりも長さ方向に長くして形成されている。
本実施例3のおける左側の蝶棒部81は、端部ファスナーエレメント11aの後方に端部ファスナーエレメント11aから離間して配される第1蝶棒分割体(前側蝶棒分割体)82と、その第1蝶棒分割体82の後方に、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで離間して配される第2蝶棒分割体(中央蝶棒分割体)83及び第3蝶棒分割体(後側蝶棒分割体)84とを有する。また、第1蝶棒分割体82〜第3蝶棒分割体84は、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
本実施例3の第1蝶棒分割体82は、固定部材13を内部に挿通させる六面体状の第1蝶棒本体部82aと、第1蝶棒本体部82aの上面及び下面から隆起するとともに平面視又は底面視においてJ字状又はフック状を呈するように形成される第1隆起部82bと、第1蝶棒本体部82aから箱部91に向けて突出する突片部82cとを有する。この第1蝶棒分割体82は、前述の実施例1における第1蝶棒分割体32と実質的に同様に形成されている。
本実施例3の第2蝶棒分割体83及び第3蝶棒分割体84は、固定部材13を内部に挿通させる第2蝶棒本体部83a又は第3蝶棒本体部84aと、第2蝶棒本体部83a又は第3蝶棒本体部84aの上面及び下面から隆起するとともに長さ方向に沿って形成される第2隆起部83b又は第3隆起部84bとを有する。この場合、本実施例3の第3蝶棒分割体84は、前述の実施例1における第2蝶棒分割体33と実質的に同様に形成されている。また、第2蝶棒分割体83の第2蝶棒本体部83aは一定の幅寸法を有する。
本実施例3において、第1エレメント部材10bの端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体82の間、第1蝶棒分割体82と第2蝶棒分割体83の間、及び、第2蝶棒分割体83と第3蝶棒分割体84の間には、収容空間部(収容間隙)89が糸収容部として形成されており、これらの収容空間部89は、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、これらの収容空間部89では固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、第3蝶棒分割体84から後方に延出して配されている。
右側の箱部91は、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。この箱部91は、直方体状の箱体部92と、箱体部92と一体的に形成されるとともに箱体部92から厚さ寸法及び幅寸法を小さくして前方に向けて延出する箱延出部93とを有する。箱体部92及び箱延出部93には、蝶棒部81を挿入して収容可能な蝶棒収容部が前後方向に沿って設けられている。また、箱体部92における蝶棒に対向する左側側面部(蝶棒対向側面部)には、第1エレメント部材10b側のエレメント取付縁部2を挿通させる挿通溝が設けられている。
本実施例3の箱体部92は、前述の実施例1の箱体部42と実質的に同様に形成されており、この箱体部92には、パーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する収容空間部(収容開口部)99aが右側半部に設けられている。
本実施例3の箱延出部93は、箱体部92から、前述の実施例1の箱延出部43よりも前方に更に延出して形成されている。この箱延出部93には、蝶棒部81における第1蝶棒分割体82の第1隆起部82bを引っ掛けさせて係合させる係合突出部93aが設けられている。また、本実施例3の箱延出部93には、箱体部92に形成された収容空間部99aと同様の収容空間部(収容開口部)99bが設けられており、この収容空間部99bにパーツ縫製部8の縫製糸が挿入されて収容される。
更に本実施例3では、端部ファスナーエレメント11aと箱延出部93の間に、収容空間部(収容間隙)99cが糸収容部として形成されている。本実施例3で設けられる上述のような収容空間部99a〜99cは、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。更に、固定部材13は、箱体部92から後方に延出して配されている。
本実施例3においても、ジグザグ状の固定用縫製部6と、その固定用縫製部6を押さえ付ける補助縫製部9とによって、左側の蝶棒部81がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されているとともに、右側の箱部91がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されている。
特に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第1エレメント部材10bの長さ方向に関して、蝶棒部81が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている直接取着範囲88の長さ方向の全体に形成されている。また、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、直接取着範囲88から、直接取着範囲88の前端位置88aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲88の後端位置88bを越えて後方に延出して形成されている。
また、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第2エレメント部材20bに関しても同様に、長さ方向に関して、箱部91が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている直接取着範囲98の長さ方向の全体に形成されている。更に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、直接取着範囲98から、直接取着範囲98の前端位置98aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲98の後端位置98bを越えて後方に延出して形成されている。
上述のような本実施例3のスライドファスナー付き衣服1bでは、前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1と同様に、ファスナーテープを省略した形態で、スライドファスナーの機能を有することができる。また、開離嵌挿具80により左右の第1エレメント部材10b及び第2エレメント部材20bの噛合・離間を適切に且つ円滑に行うことができる。更に、防水性や撥水性などのような所望の機能が付与された生地5を用いて、スライドファスナー付き衣服1bを容易に形成することが可能となる。
更に、本実施例3のスライドファスナー付き衣服1bでは、上述したように3つの分割体を有する蝶棒部81と、その蝶棒部81を挿入して収容可能な箱部91とにより開離嵌挿具80が形成されている。このような本実施例3の開離嵌挿具80では、前述の実施例1の開離嵌挿具30に比べて、箱部91の箱延出部93が長さ方向に長く形成されている。これにより、スライダー50を箱体部92に当接させたときに、図18に示すように、箱延出部93をスライダー50のエレメント案内路内に深く挿入できるため、スライダー50の姿勢を安定させることができる。その結果、図18及び図19に示すように、蝶棒部81を、スライダー50のエレメント案内路を介して、箱部91の蝶棒収容部41aに円滑に安定して挿入して収容し易くすることができる。
また本実施例3の開離嵌挿具80では、蝶棒部81及び箱部91の長さ寸法を、従来の蝶棒、箱棒、及び箱体を備えた一般的な開離嵌挿具における蝶棒の長さ寸法と箱体・箱棒の長さ寸法とに近づけることができる。このため、使用者が、本実施例3の開離嵌挿具80を従来の開離嵌挿具と略同様に取り扱うことが可能となるため、開離嵌挿具の操作を、違和感を持つことなく適切に行うことができる。
図20は、本実施例4に係る開離嵌挿具において、蝶棒部が箱部の蝶棒収容部に挿入される状態を示す模式図である。図21は、開離嵌挿具の蝶棒部が箱部の蝶棒収容部に挿入された状態を示す模式図である。
本実施例4のスライドファスナー付き衣服1cにおいて、スライドファスナーの後端部に設けられる開離嵌挿具100は、左側の第1エレメント部材10cのパーツ保持部15bに配される蝶棒部101と、右側の第2エレメント部材20cのパーツ保持部15bに配される箱部111とを有する。この場合、蝶棒部101及び箱部111は、熱可塑性樹脂の射出成形により固定部材13に一体的に形成されている。
左側の蝶棒部101は、端部ファスナーエレメント11aの後方に端部ファスナーエレメント11aから離間して配される第1蝶棒分割体(前側蝶棒分割体)102と、その第1蝶棒分割体102の後方に、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで離間して配される第2蝶棒分割体(中央蝶棒分割体)103及び第3蝶棒分割体(後側蝶棒分割体)104とを有する。また、第1蝶棒分割体102〜第3蝶棒分割体104は、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
本実施例4の第1蝶棒分割体102は、固定部材13を内部に挿通させる本体部102aと、その本体部102aから第2エレメント部材20cに向けて斜め前方に突出する突出部102bとを有する。この第1蝶棒分割体102は、図21に示すように、第2エレメント部材20cの端部ファスナーエレメント11aと係合可能に形成されている。
本実施例4の第2蝶棒分割体103は、固定部材13を内部に挿通させる第2蝶棒本体部103aと、第2蝶棒本体部103aの上面及び下面から隆起するとともに長さ方向に沿って形成される第2隆起部103bと、第2蝶棒本体部103aから箱部111に向けて突出する突片部103cとを有する。この場合、突片部103cは、蝶棒部101を箱部111の蝶棒収容部に収容したときに、箱部111の後述する箱分割体114に形成された図示しない挿入凹溝部に挿入可能に形成されている。
第3蝶棒分割体104は、固定部材13を内部に挿通させる第3蝶棒本体部104aと、第3蝶棒本体部104aの上面及び下面から隆起するとともに長さ方向に沿って形成される第3隆起部104bとを有する。
この場合、本実施例4の第2蝶棒本体部103a及び第3蝶棒本体部104aは、前述の実施例3における第2蝶棒本体部83a及び第3蝶棒本体部84aよりも幅寸法を大きくして形成されている。また、第3蝶棒本体部104aの箱棒対向側面は、平面視又は底面視において、第3蝶棒本体部104aの幅寸法を後方に向けて漸減させるように、長さ方向に対して傾斜する傾斜面に形成されている。
本実施例4において、第1エレメント部材10cの端部ファスナーエレメント11aと第1蝶棒分割体102の間、第1蝶棒分割体102と第2蝶棒分割体103の間、及び、第2蝶棒分割体103と第3蝶棒分割体104の間には、収容空間部(収容間隙)109が糸収容部として形成されており、これらの収容空間部109は、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、これらの収容空間部109では固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、第3蝶棒分割体104から後方に延出して配されている。
右側の箱部111は、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。この箱部111は、外形が直方体状の箱体部112と、箱体部112と一体的に形成されるとともに箱体部112から厚さ寸法及び幅寸法を小さくして前方に向けて延出する箱延出部113と、第2エレメント部材20cの端部ファスナーエレメント11aと箱延出部113との間に配される箱分割体114とを有する。
本実施例4の箱体部112は、前述の実施例1の箱体部42と実質的に同様に形成されており、この箱体部112には、パーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する収容空間部(収容開口部)119aが右側半部に設けられている。
本実施例4の箱延出部113は、箱体部112よりも厚さ寸法及び幅寸法を小さくして形成されている。また、箱延出部113は、固定部材13を内側に包んで形成されている。本実施例4の箱分割体114は、固定部材13を内側に包む六面体(直方体)の形状を有するとともに、箱延出部113と同じ厚さ寸法及び幅寸法を有して形成されている。また、箱分割体114の左側側面部(蝶棒対向側面部)には、第2蝶棒分割体103の上述した突片部103cを挿入可能な図示しない挿入凹溝部が長さ方向に沿って凹設されている。
本実施例4において、端部ファスナーエレメント11aと箱分割体114の間、及び箱分割体114と箱延出部113の間には、パーツ縫製部8の縫製糸を受け入れて収容する収容空間部(収容間隙)119bが形成されており、これらの収容空間部119bは、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、箱体部112に設けられる上述した収容空間部119a,119bでは、固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、箱体部112から後方に延出して配されている。
本実施例4においても、ジグザグ状の固定用縫製部6と、その固定用縫製部6を押さえ付ける補助縫製部9とによって、左側の蝶棒部101がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されているとともに、右側の箱部111がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されている。
また、本実施例4の固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、前述の実施例1〜実施例3の場合と同様に、第1エレメント部材10c及び第2エレメント部材20cに関して、蝶棒部101又は箱部111が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている直接取着範囲の長さ方向の全体に形成されている。更に固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲から、直接取着範囲の前端位置を越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲の後端位置を越えて後方に延出して形成されている。
上述のような開離嵌挿具100を有する本実施例4のスライドファスナー付き衣服1cでは、前述の実施例3のスライドファスナー付き衣服1bと同様の効果が得られる。
図22は、本実施例5に係るスライドファスナー付き衣服の要部を模式的に示す平面図である。図23は、開離嵌挿具の蝶棒部が2つのスライダーに挿入された状態を模式的に示す模式図である。図24〜図27は、開離嵌挿具の蝶棒部を示す斜視図、平面図、側面図、及び断面図である。図28〜図31は、開離嵌挿具の箱部を示す斜視図、平面図、側面図、及び断面図である。
本実施例5のスライドファスナー付き衣服1dにおいて構成されるスライドファスナーは、第1エレメント部材10d及び第2エレメント部材20dにより形成された左右のエレメント列3を備える左右一対のファスナーストリンガー部と、左右のファスナーストリンガー部のエレメント列3を噛合及び分離させることが可能な後方側の第1スライダー50a及び前方側の第2スライダー50bと、左右のエレメント列3の後端部に隣接して配される開離嵌挿具120とを有する。
この場合、第1スライダー50aと第2スライダー50bは、前述の実施例1で用いたスライダー50と実質的に同様の構造を有する。また、第1スライダー50aと第2スライダー50bは、互いに後口を対向させる姿勢でエレメント列3に摺動可能に取り付けられている。
本実施例5の開離嵌挿具120は、衣服の互いに対向する位置に配される蝶棒部121と箱部131とを有する。この開離嵌挿具120は、前述の実施例1〜実施例4の開離嵌挿具30,60,80,100とは異なり、蝶棒部121を挿入できるような箱体部を備えない逆開きタイプの開離嵌挿具120として形成されている。
具体的に説明すると、本実施例5の開離嵌挿具120は、左側の第1エレメント部材10dに配されるとともに左側生地5のエレメント取付縁部2に固定される蝶棒部121と、右側の第2エレメント部材20dに配されるとともに右側生地5のエレメント取付縁部2に固定される箱部(箱棒部)131とを有する。これら蝶棒部121及び箱部131は、熱可塑性樹脂の射出成形により、各固定部材13に一体的に形成されている。
左側の蝶棒部121は、第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126の5個の蝶棒分割体により形成されている。これらの第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126は、それぞれ、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
また、第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126は、第1エレメント部材10dにおける端部ファスナーエレメント11aの後方に、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで等間隔に配されている。なお、蝶棒部121を形成する5個の蝶棒分割体122〜126については、端部ファスナーエレメント11aに最も近い分割体蝶棒から後方に向けて順番に第1蝶棒分割体122、第2蝶棒分割体123、第3蝶棒分割体124、第4蝶棒分割体125、及び第5蝶棒分割体126と規定する。
本実施例5の第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126は、固定部材13を内部に挿通させる六面体状の蝶棒本体部122a〜126aと、蝶棒本体部122a〜126aにおける箱棒対向側面部から幅方向に突出する突出片部122b〜126bとをそれぞれ有する。この場合、第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126の各蝶棒本体部122a〜126aは、互いに同じ形状及び大きさを有する。また、蝶棒本体部122a〜126aにおける上下方向の厚さ寸法は、第1スライダー50a及び第2スライダー50bのエレメント案内路内を挿通可能なように、第1エレメント部材10dのファスナーエレメント11における厚さ寸法と同じ大きさに設定されている。
第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126の各突出片部122b〜126bは、蝶棒本体部122a〜126aからそれぞれ段差を介して、蝶棒本体部122a〜126aよりも厚さ寸法を小さくするとともに、右側に向けて突出している。
また、第1蝶棒分割体122〜第4蝶棒分割体125の各突出片部122b〜125bは、平面視又は底面視において、蝶棒本体部122a〜125aからの一定の幅寸法で長さ方向に沿って配されている。一方、第5蝶棒分割体126の突出片部126bは、平面視又は底面視において、その蝶棒本体部126aからの幅寸法を後方に向けて漸減させる形状に形成されている。
本実施例5の蝶棒部121において、第1エレメント部材10dの端部ファスナーエレメント11a及び第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126のそれぞれの間には、収容空間部(収容間隙)129が糸収容部として形成されており、これらの収容空間部129は、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、これらの収容空間部129では固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、第5蝶棒分割体126から後方に延出して配されている。
本実施例5における右側の箱部131は、第1スライダー50a及び第2スライダー50bのエレメント案内路内に挿入される箱棒部として形成されている。この箱部131は、第1箱分割体132〜第5箱分割体136の5つの箱分割体により形成されている。これらの第1箱分割体132〜第5箱分割体136は、それぞれ、上下方向の中心位置を基準にして上下に対称的な形状を有する。
また、第1箱分割体132〜第5箱分割体136は、第2エレメント部材20dにおける端部ファスナーエレメント11aの後方に、ファスナーエレメント11の取付ピッチと同じ取付ピッチで等間隔に配されている。なお、箱部131を形成する5つの箱分割体132〜136については、端部ファスナーエレメント11aに最も近い箱分割体から後方に向けて順番に第1箱分割体132、第2箱分割体133、第3箱分割体134、第4箱分割体135、及び第5箱分割体136と規定する。
本実施例5の第1箱分割体132〜第5箱分割体136は、六面体状の外形を有しており、第1箱分割体132〜第5箱分割体136の内部には固定部材13が前後方向に貫通するように挿通されている。この場合、第1箱分割体132〜第4箱分割体135は、例えば第1スライダー50a及び第2スライダー50bを、蝶棒部121を挿入可能な後端位置に保持したときに、第1スライダー50a及び第2スライダー50bのエレメント案内路内に挿入させる箱棒部として配されている。このため、第1箱分割体132〜第4箱分割体135における上下方向の厚さ寸法は、第1スライダー50a及び第2スライダー50bのエレメント案内路内を挿通可能なように、第2エレメント部材20dのファスナーエレメント11における厚さ寸法と同じ大きさに設定されている。
一方、第5箱分割体136は、図28及び図30に示すように、第1箱分割体132〜第4箱分割体135よりも厚さ寸法を大きくして形成されている。この第5箱分割体136において、第1箱分割体132〜第4箱分割体135の上面及び下面の厚さ位置(高さ位置)よりも上下方向に突出している上下の突出部136aが、箱部131において、第1スライダー50aにおける上翼板53及び下翼板55の肩口側端部を当接させて第1スライダー50aを停止させることが可能なストッパー部136aとして形成されている。また、第5箱分割体136は、第1スライダー50aを当接させたときに、その第1スライダー50aの当接状態を安定して維持できるように、その長さ寸法を幅方向の中心位置に向けて漸減した形状を有する。
本実施例5において、第1箱分割体132及び第2箱分割体133は、互いに同じ形状及び大きさを有する。また、第1箱分割体132及び第2箱分割体133における蝶棒対向側面部には、蝶棒部121における第1蝶棒分割体122〜第5蝶棒分割体126の突出片部122b〜126bを挿入可能な挿入凹溝部132a,133aが、第1箱分割体132及び第2箱分割体133における厚さ方向の中央部に、長さ方向に沿って形成されている。
例えば図23に示したように、第1箱分割体132及び第2箱分割体133の挿入凹溝部132a,133aに、蝶棒部121の突出片部122b〜124bが挿入されて保持されることにより、蝶棒部121と箱部131の厚さ方向における相対的な位置を合わせることができ、また、その厚さ方向における相対的な位置が上下にずれることを防止できる。
本実施例5の第3箱分割体134及び第4箱分割体135は、直方体状に形成されており、互いに同じ形状及び大きさを有する。なお、第3箱分割体134及び第4箱分割体135には、第1箱分割体132及び第2箱分割体133のような挿入凹溝部が形成されていない。本実施例5の第5箱分割体136は、平面視又は底面視において、第1箱分割体132〜第4箱分割体135と同じ形状を呈するように形成されている。
本実施例5の箱部131において、端部ファスナーエレメント11a及び第1箱分割体132〜第5箱分割体136のそれぞれの間には、収容空間部(収容間隙)139が糸収容部として形成されており、これらの収容空間部139は、固定部材13の長さ方向に一定の間隔で配置される。また、これらの収容空間部139では固定部材13が露出している。更に、固定部材13は、第5箱分割体136から後方に延出して配されている。
本実施例5では、前述の実施例1等と同様に、ジグザグ状の本縫いによる固定用縫製部6(エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8)と、その固定用縫製部6を押さえ付けるように形成される補助縫製部9とによって、左側の蝶棒部121がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されているとともに、右側の箱部131がエレメント列3の後方に連続するように所定の位置に適切に固定されている。
更に図22に示したように、本実施例5の固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、前述の実施例1〜実施例4の場合と同様に、第1エレメント部材10d及び第2エレメント部材20dに関して、蝶棒部121又は箱部131が固定部材13に直接接するとともに間欠的に取着されている直接取着範囲128,138の長さ方向の全体に形成されている。更に固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲128,138から、直接取着範囲128,138の前端位置128a,138aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲128,138の後端位置128b,138bを越えて後方に延出して形成されている。
上述のような本実施例5のスライドファスナー付き衣服1dでは、スライドファスナーの後端部に逆開きタイプの開離嵌挿具120が形成されている。このため、例えば図23に示したように、右側の蝶棒部121が第1スライダー50a及び第2スライダー50b内に蝶棒挿入完了位置まで深く挿入された後、前側の第2スライダー50bを前方(エレメント噛合方向)に向けて摺動させることにより、左右のエレメント列3を順番に噛合させることができる。
またその後、後側の第1スライダー50aを前方に摺動させることにより、第2スライダー50bで噛合させた左右のエレメント列3をその後端部から順番に分離することができる。なお、本実施例5の開離嵌挿具120において、蝶棒挿入完了位置とは、左側の第1エレメント部材10dの端部ファスナーエレメント11aが、右側の第2エレメント部材20dの端部ファスナーエレメント11aに近接する位置又は接する位置を言う。
更に、本実施例5のスライドファスナー付き衣服1dでは、前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1等と同様に、ファスナーテープを省略した形態で、スライドファスナーの機能を有することができる。また、防水性や撥水性などのような所望の機能が付与された生地5を用いて、スライドファスナー付き衣服1dを容易に形成することが可能となる。
図32及び図33は、本実施例6に係るスライドファスナー付き衣服の要部を模式的に示す平面図及び底面図である。図34及び図35は、スライドファスナーにおける開離嵌挿具の蝶棒部を示す斜視図及び正面図である。図36及び図37は、開離嵌挿具の箱部を示す斜視図及び背面図である。
本実施例6のスライドファスナー付き衣服1eにおいて構成されるスライドファスナーは、第1エレメント部材10e及び第2エレメント部材20eにより形成されたエレメント列3を備える左右一対のファスナーストリンガー部と、左右のエレメント列3を噛合及び分離させることが可能な図示しないスライダーと、左右のエレメント列3の後端部に隣接して配される蝶棒部141及び箱部151を備えた開離嵌挿具140とを有する。この場合、本実施例6のスライダーは、前述の実施例1で用いたスライダー50と実質的に同様の構造を有する。
本実施例6における左側の第1エレメント部材10eは、1本の紐状の固定部材13と、固定部材13に一定の間隔で固定される複数のファスナーエレメント11と、固定部材13の後端部に固定される蝶棒部141とを有する。右側の第2エレメント部材20eは、1本の紐状の固定部材13と、固定部材13に一定の間隔で固定される複数のファスナーエレメント11と、固定部材13の後端部に固定される箱部151とを有する。また、これらの第1エレメント部材10e及び第2エレメント部材20eは、生地5のエレメント取付縁部2に固定用縫製部6(エレメント縫製部7及びパーツ縫製部8)によって固定されている。
本実施例6の蝶棒部141及び箱部151は、ナイロン等の熱可塑性樹脂を射出成形することにより、左右の固定部材13に一体的に形成されている。この場合、蝶棒部141は、固定部材13が蝶棒部141から後方に延出する位置に固定されている。なお本発明では、固定部材13を後方に延出させないように蝶棒部141を形成することも可能である。
本実施例6の蝶棒部141は、蝶棒部141のパーツ本体部として固定部材13の後端部を固定部材13に沿って包む蝶棒本体部142と、蝶棒本体部142の生地対向側面部(左側側面部)から幅方向に延出し、生地5のエレメント取付縁部2の下面上に配される蝶棒ヒレ部143と、蝶棒本体部142の前端部に一体的に設けられ、右側の第2エレメント部材20eの端部ファスナーエレメント11aと噛み合わせられる噛合部144とを有する。また、蝶棒本体部142の箱対向側面部(右側側面部)には、箱部151に設けられた後述の箱側挿入片部154を受け入れる蝶棒側凹部145が長さ方向に沿って形成されている。
本実施例6の蝶棒本体部142は、所定の長さ寸法を有するとともに、図35に示すように、その厚さ方向の中央部に固定部材13を内部に挿通させて形成されている。また、蝶棒本体部142の生地対向側縁部(左側側縁部)には、生地5のエレメント取付縁部2の一部を挿入可能な生地挿入凹溝部146が、長さ方向に沿って形成されている。
この場合、生地挿入凹溝部146は、蝶棒部141の厚さ方向に関して、蝶棒本体部142における厚さ方向の中心位置よりも上側に変位した位置に配されるとともに、挿入される生地5の厚さに対応する厚さ寸法を有する。この生地挿入凹溝部146の幅寸法(溝深さ寸法)は、生地挿入凹溝部146が固定部材13に達しない範囲で任意に変更することが可能である。
本実施例6の蝶棒ヒレ部143は、蝶棒本体部142と同じ長さ寸法を有して形成されている。この蝶棒ヒレ部143は、蝶棒部141の厚さ方向に関して、蝶棒本体部142における厚さ方向の中心位置よりも下側に変位した位置から、生地5の内側に向けて幅方向に沿って延出している。
このように1つの蝶棒ヒレ部143が、厚さ方向の中心位置から変位して(ずらして)設けられることにより、例えば生地5のエレメント取付縁部2を挟むように上下の2つの蝶棒ヒレ部が設けられる場合に比べて、1つの蝶棒ヒレ部143の厚さ寸法を大きくすることができる。このため、蝶棒ヒレ部143は、使用に耐え得る適切な強度を安定して有することができる。なお本実施例6において、蝶棒ヒレ部143の幅寸法は、蝶棒ヒレ部143に直接縫製を行うことができれば任意に変更することが可能である。
また、蝶棒ヒレ部143の下面(生地5に接する面とは反対側の面)には、第1エレメント部材10eを生地5のエレメント取付縁部2に固定する際に形成される固定用縫製部6(パーツ縫製部8)の縫製糸を受け入れて収容する収容凹溝部149が、糸収容部として長さ方向に沿って凹設されている。また、この収容凹溝部149は、溝幅寸法が前方に向けて漸増する第1凹溝部(拡幅凹溝部)と、その第1凹溝部から後方に延びるとともに一定の溝幅寸法を有する第2凹溝部(一定幅凹溝部)とを有する。
本実施例6の箱部151は、スライダーを当接させて停止させるとともに固定部材13を包むパーツ本体部として形成される箱体部(箱体本体部)152と、箱体部152から前方に延出するとともに固定部材13を包むパーツ本体部として形成される箱棒部(箱棒本体部)153と、箱棒部153の前端部から幅方向に沿って突出する薄板状の箱側挿入片部154と、箱部151及び箱棒部153の側縁部から幅方向に延出し、生地5のエレメント取付縁部2の下面上に配される箱ヒレ部155とを有する。
この場合、箱側挿入片部154は、蝶棒部141が箱体部152に挿入されて収容されたときに、当該蝶棒部141の上述した蝶棒側凹部145に挿入される。これにより、蝶棒部141と箱部151の位置関係(特に上下方向の位置関係)を安定させることができる。
本実施例6の箱体部152は、直方体状又は立方体状の外形を有しており、この箱体部152の右側半部(生地側半部)に固定部材13が包み込まれて固定されている。箱体部152の左側半部(蝶棒対向側半部)には、蝶棒部141を挿入して収容する蝶棒収容部156が箱体部152の前端面から後方に向けて設けられている。また、この蝶棒収容部156は、蝶棒収容部156の一部が箱体部152の後壁部(底面部)を貫通するように形成されている。この箱体部152の左側側面部(蝶棒対向側面部)には、第1エレメント部材10e側のエレメント取付縁部2を挿通させる挿通溝157が設けられている。
本実施例6の箱棒部153は、長さ方向に直交する横断面が略C字状を呈する形状を有するとともに、箱体部152と一体的に形成されている。この箱棒部153は、箱体部152から厚さ寸法及び幅寸法を小さくして前方に向けて延出しており、箱体部152にスライダーを当接させたときに、スライダーのエレメント案内路に挿入可能に形成されている。
箱体部152及び箱棒部153の生地対向側縁部(右側側縁部)には、生地5のエレメント取付縁部2の一部を挿入可能な生地挿入凹溝部153aが、長さ方向に沿って形成されている。この生地挿入凹溝部153aは、箱部151の厚さ方向に関して、箱体部152及び箱棒部153における厚さ方向の中心位置よりも上側に変位した位置に形成されている。
本実施例6の箱ヒレ部155は、箱部151の厚さ方向に関して、箱体部152における厚さ方向の中心位置よりも下側に変位した位置から、生地5の内側に向けて幅方向に沿って延出している。これによって、箱ヒレ部155は、蝶棒ヒレ部143の場合と同様に、適切な強度を安定して有することができる。なお、箱ヒレ部155の幅寸法は、箱ヒレ部155に直接縫製を行うことができれば任意に変更することが可能である。
この箱ヒレ部155の下面には、第2エレメント部材20eを生地5のエレメント取付縁部2に固定する際に形成される固定用縫製部6(パーツ縫製部8)の縫製糸を受け入れて収容する収容凹溝部159が、糸収容部として長さ方向に沿って凹設されている。また、この収容凹溝部159は、溝幅寸法が前方に向けて漸増する第1凹溝部(拡幅凹溝部)と、その第1凹溝部から後方に延びるとともに一定の溝幅寸法を有する第2凹溝部(一定幅凹溝部)とを有する。
本実施例6において、蝶棒部141を有する左側の第1エレメント部材10eと、箱部151を有する右側の第2エレメント部材20eとは、左右の生地5の各エレメント取付縁部2に対して、それぞれ幅方向の外側に隣接する位置に並べられるとともに、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143と箱部151の箱ヒレ部155をエレメント取付縁部2に下面側から重ね合せた状態で、ミシンにより形成される固定用縫製部6によって固定されている。またこの場合、生地5のエレメント取付縁部2の一部が、蝶棒部141の生地挿入凹溝部146及び箱部151の生地挿入凹溝部153aに挿入された状態で、蝶棒部141及び箱部151が生地5のエレメント取付縁部2に固定されている。
本実施例6の場合、左右の固定用縫製部6は、第1エレメント部材10e及び第2エレメント部材20eのエレメント保持部15aを生地5のエレメント取付縁部2に固定するエレメント縫製部7と、パーツ縫製部8とを有しており、固定用縫製部6のパーツ縫製部8によって、第1エレメント部材10eの蝶棒部141が配されるパーツ保持部15b、及び第2エレメント部材20eの箱部151が配されるパーツ保持部15bが、生地5のエレメント取付縁部2に固定されている。
本実施例6の固定用縫製部6におけるエレメント縫製部7は、前述の実施例1におけるエレメント縫製部7と同様に、ジグザグ状に折れ曲がった本縫いにより形成されている。また、エレメント縫製部7の上には、エレメント縫製部7を生地5に向けて押さえ付ける補助縫製部9が形成されている。
一方、本実施例6の固定用縫製部6におけるパーツ縫製部8は、エレメント縫製部7から連続して形成されるものの、エレメント縫製部7のようなジグザグ状に折れ曲がって形成されていない。このパーツ縫製部8は、ミシンを用いて、生地5のエレメント取付縁部2と、そのエレメント取付縁部2に重ね合わされた蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143(又は箱部151の箱ヒレ部155)とを本縫いで縫い合わせることにより、長さ方向に沿って直線的に形成されている。
この場合、パーツ縫製部8は、返し縫いが行われて形成されることが好ましく、それによって、パーツ縫製部8の端部に解れを生じさせ難くすることができる。このように直線状のパーツ縫製部8によって蝶棒部141及び箱部151を生地5のエレメント取付縁部2に縫い付けることによって、蝶棒部141及び箱部151の固定を容易に且つ安定して行うことができる。
特に本実施例6では、ミシンのミシン針を、蝶棒ヒレ部143の収容凹溝部149又は箱ヒレ部155の収容凹溝部159に刺通させて縫製を行うことにより、パーツ縫製部8を、当該収容凹溝部149,159内に形成して収容することができる。
この場合、蝶棒ヒレ部143及び箱ヒレ部155では、収容凹溝部149,159が形成されている部分の厚さが薄いため、その厚さの薄い部分にミシン針を円滑に刺し通し易くなり、その結果、ミシン針の刺通に起因して蝶棒ヒレ部143又は箱ヒレ部155に破損が生じることを防止又は抑制できる。更に、蝶棒ヒレ部143又は箱ヒレ部155の収容凹溝部149,159内にパーツ縫製部8が収容されることにより、パーツ縫製部8に、スライダーのフランジ部57を接触させ難くして、パーツ縫製部8に糸切れを生じさせ難くすることができる。
本実施例6において、蝶棒部141及び箱部151は、左右の生地5のエレメント取付縁部2に対して、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143及び箱部151の箱ヒレ部155から、生地5のエレメント取付縁部2がそれぞれ下方に延出してエレメント取付縁部2の一部が露出する位置に固定されている。なお本発明では、左右の生地5のエレメント取付縁部2の下端縁の位置と、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143及び箱部151の箱ヒレ部155の各下端縁の位置とが一致するように蝶棒部141及び箱部151が左右の生地5のエレメント取付縁部2に固定されても良い。
更に本実施例6の場合、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第1エレメント部材10eの長さ方向に関して、蝶棒部141が固定部材13に直接接するとともに連続的に取着されている直接取着範囲148の長さ方向の全体に形成されている。また、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、その直接取着範囲148から、直接取着範囲148の前端位置148aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲148の後端位置148bを越えて後方に延出して形成されている。
また、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、第2エレメント部材20eに関して、箱部151が固定部材13に直接接するとともに連続的に取着されている直接取着範囲158の長さ方向の全体に形成されている。更に、固定用縫製部6のパーツ縫製部8は、直接取着範囲158から、直接取着範囲158の前端位置158aを越えて前方に延出するとともに、直接取着範囲158の後端位置158bを越えて後方に延出して形成されている。
なお本実施例6では、固定用縫製部6のエレメント縫製部7とパーツ縫製部8とは、ミシンによる一回の本縫いの縫製によって、連続して形成されている。しかし本発明において、固定用縫製部6のエレメント縫製部7とパーツ縫製部8とは、連続的に形成されずに、互いに離間して別々に形成されていても良い。
上述のような本実施例6のスライドファスナー付き衣服1eでは、前述の実施例1のスライドファスナー付き衣服1等と同様に、ファスナーテープを省略した形態で、スライドファスナーの機能を有することができる。また、スライドファスナーの後端部に開離嵌挿具140が形成されているため、左右の第1エレメント部材10e及び第2エレメント部材20eの噛合・離間を適切に且つ円滑に行うことができる。また、防水性や撥水性などのような所望の機能が付与された生地5を用いて、スライドファスナー付き衣服1eを容易に形成することが可能となる。
なお、上述した実施例6において、第1エレメント部材10eの蝶棒部141及び第2エレメント部材20eの箱部151は、生地5のエレメント取付縁部2に、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143又は箱部151の箱ヒレ部155を重ね合せて縫い付けられることによって形成されている。しかし本発明において、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143又は箱部151の箱ヒレ部155は、生地5のエレメント取付縁部2に上面側から重ね合せて縫い付けられるように形成されていても良い。
また上述した実施例6において、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143又は箱部151の箱ヒレ部155は、生地5のエレメント取付縁部2に、直線状の本縫いにより形成されるパーツ縫製部8によって縫い付けられている。しかし本発明において、パーツ縫製部8のステッチは、直線状の本縫いに限定されるものではなく、例えばジグザグ状の本縫い、ボックス縫い(平面視で矩形状を呈する本縫い)、環縫いなどによって形成されていて良い。この場合、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143及び箱部151の箱ヒレ部155に、パーツ縫製部8の縫製糸を収容するために形成される糸受け部は、パーツ縫製部8のステッチの形式及び形態に対応する形状を備えた収容凹部(収容凹溝部等)により形成される。
更に上述した実施例6では、蝶棒部141の蝶棒ヒレ部143及び箱部151の箱ヒレ部155に、パーツ縫製部8の縫製糸を収容する糸受け部として、収容凹溝部149,159が長さ方向に沿って設けられている。しかし本発明では、このような収容凹溝部149,159の代わりに(又は収容凹溝部149,159とともに)、糸受け部として、パーツ縫製部8の本縫いが蝶棒ヒレ部143又は箱ヒレ部155を刺通する位置に、蝶棒ヒレ部143又は箱ヒレ部155を厚さ方向に貫通するとともにパーツ縫製部8の縫製糸を挿通させることが可能な複数の貫通穴部が、パーツ縫製部8の形成位置に沿うように予め設けられていても良い。このような複数の貫通穴部が蝶棒ヒレ部143又は箱ヒレ部155に糸受け部として予め形成されていることにより、縫製時にミシン針を蝶棒ヒレ部143及び箱ヒレ部155に直接刺し通す必要がなくなるため、蝶棒ヒレ部143及び箱ヒレ部155の破損をより生じさせ難くすることができる。
また上述した実施例6の開離嵌挿具140は、蝶棒部141と蝶棒収容部156が形成された箱部151とを備える通常タイプの開離嵌挿具として形成されているが、本実施例6では、上述の箱部151の代わりに、ストッパー部を備えた箱棒状の箱部を形成することによって、所謂逆開きのタイプの開離嵌挿具をスライドファスナーの後端部に設けることも可能である。
なお、前述した実施例1〜実施例6のスライドファスナー付き衣服1,1a〜1eにおいては、第1エレメント部材10,10a〜10e及び第2エレメント部材20,20a〜20eの少なくともエレメント保持部15aが、千鳥縫いミシンにより形成されるジグザグ状の固定用縫製部6と、本縫いミシンにより形成される補助縫製部9とによって、生地5のエレメント取付縁部2にしっかりと固定されている。
しかし本発明では、本縫いミシンにより形成される上述の補助縫製部9を形成せずに、第1エレメント部材10,10a〜10e及び第2エレメント部材20,20a〜20eの少なくともエレメント保持部15aが、ジグザグ状の固定用縫製部6のみによって生地5のエレメント取付縁部2に固定されていても良い。
またこの場合、ジグザグ状の固定用縫製部6を形成する上糸(針糸)及び下糸(ボビン糸)の少なくとも一方に、前述の実施例1のような通常のミシン糸ではなく、芯鞘構造を有する溶着糸(融着糸とも言う)が用いられることが好ましい。この芯鞘構造を有する溶着糸では、溶着糸の芯部が、所定の温度以上に加熱されても溶融しない繊維材料、又は加熱によって収縮する熱収縮性を備えた繊維材料によって形成される。溶着糸の鞘部は、所定の温度以上に加熱されることによって溶融する熱融着性を備えた繊維材料によって形成される。
このような芯鞘構造を有する溶着糸が、固定用縫製部6の上糸及び下糸の少なくとも一方に用いられることにより、固定用縫製部6の形成後に加熱処理が行われることにより、前述の実施例1等の場合のような補助縫製部9が形成されていなくても、固定用縫製部6による第1エレメント部材10,10a〜10e及び第2エレメント部材20,20a〜20eの固定を強固にしっかりと行うことができる。また、その固定用縫製部6の上糸及び下糸に弛みが生じることも効果的に防止できる。
更に本発明では、本縫いミシンにより形成される上述の補助縫製部9を形成せずに、ジグザグ状に形成される固定用縫製部6の上に、その固定用縫製部6を生地5のエレメント取付縁部2に固定するための透明のフィルム部材(テープ部材)を貼着することも可能である。なお、このフィルム部材は、固定用縫製部6の縫製糸を固定するための糸固定用フィルム部材と言うこともできる。この場合、フィルム部材は、固定用縫製部6の第1刺通位置18a及び第2刺通位置18bを含む固定用縫製部6の少なくとも一部を被覆するように、エレメント取付縁部2の表面と裏面の少なくとも一方の面に貼着される。
これにより、固定用縫製部6の上糸及び下糸の少なくとも一方をエレメント取付縁部2に強固に固定することができる。従って、固定用縫製部6の上に前述の補助縫製部9が形成されていなくても、固定用縫製部6によるエレメント部材の固定を強固にすることができる。なお、上述のようなフィルム部材を貼着する代わりに、そのフィルム部材が貼着される範囲に、接着剤を塗布する又はコーティングすることによって、固定用縫製部6の上糸及び下糸をエレメント取付縁部2に接着して強固に固定することも可能である。
また、前述した実施例1〜実施例6において、ジグザグ状の固定用縫製部6は、図2等に示したように、ファスナーエレメント11よりも生地5の内方側に形成される部分が等脚台形の形状を呈するような所定の縫い目のパターンを備えた単位走行領域17が繰り返されて形成されている。
しかし本発明において、固定用縫製部6に形成される単位走行領域17の形状(縫い目のパターン)はこれに限定されるものではなく、例えば固定用縫製部6が、生地5のエレメント取付縁部2をファスナーエレメント11から生地5の内方側に離間した位置で刺通するとともに、その固定用縫製部6が固定部材13を包み込むように支持することができれば、その他の形状で形成することも可能である。
更に本発明では、例えば固定用縫製部6がエレメント取付縁部2を刺通する刺通位置を、ファスナーエレメント11の生地対向側面部から生地5の内側に向けて、実施例1等の場合よりも大きく離間させることも可能である。この場合、固定用縫製部6の各単位走行領域17において、固定用縫製部6がエレメント取付縁部2を刺通する刺通位置を、図2等に示すような2つではなく、1つに減らした形態で固定用縫製部6をジグザグ状に形成することもできる。また、各単位走行領域17において、固定用縫製部6がエレメント取付縁部2を刺通する刺通位置を例えば3つ以上に増やすことも可能である。
また、上述した実施例1〜実施例6では、生地5の側縁部がU字状に折り返されてエレメント取付縁部2が形成されており、それによって、エレメント取付縁部2の強度が高められている。また、生地5の裁断端縁(側端縁)に解れが生じている場合には、その解れをエレメント取付縁部2の裏面側に隠して見えないようにすることもできる。
しかし本発明では、生地5の側縁部をU字状に折り返すことなく、幅方向にまっすぐに延ばした状態でエレメント取付縁部2が形成されていても良い。また、生地5の側縁部を幅方向にまっすぐに延ばしてエレメント取付縁部2を形成する場合には、その生地5の側縁部に補強剤を含浸することや、生地5の側縁部に合成樹脂製の補強用フィルム部材を、当該側縁部を内側に包み込むように貼り付けることによって、まっすぐに形成されるエレメント取付縁部2の強度を安定して高めることが可能である。
この場合、生地5に含浸する補強剤は硬化型の接着剤であり、このような補強剤としては、例えば、1液硬化型接着剤、2液硬化型接着剤、瞬間接着剤、ホットメルト型接着剤、エマルジョン系接着剤、又は、紫外線や電子線等によって硬化する光硬化型接着剤等を使用することができる。また、生地5に貼り付ける補強用フィルム部材は、貼着することにより生地5の強度を高めることが可能なフィルム状の部材である。この補強用フィルム部材には、伸縮性が少ないフィルム部材又は伸縮しないフィルム部材が使用されることが好ましい。
このように補強剤の含浸や補強用フィルム部材の貼着によってエレメント取付縁部2が補強されることによっても、例えば固定用縫製部6の上糸及び下糸がエレメント取付縁部2に刺通していても、その上糸及び下糸によってエレメント取付縁部2が切断され難くすることができるため、エレメント取付縁部2の耐久性を高めることができる。
また、まっすぐな状態のエレメント取付縁部2にエレメント部材がしっかりと固定されるため、そのエレメント取付縁部2に固定された各エレメントの位置及び姿勢を安定させることができる。更に、エレメント取付縁部2に補強剤を含浸することや補強用フィルム部材を貼着することによって、エレメント取付縁部2の側端縁に糸の解れを生じさせ難くすることができる。