以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、且つ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。
例えば、以下の各実施例においては、テープ部材のテープ側縁部に、射出成形により複数の合成樹脂製のファスナーエレメントが取着される場合について説明しているが、本発明におけるテープ部材のテープ側縁部には、合成樹脂製のファスナーエレメントの代わりに、金属製のファスナーエレメントを取着することによって、ファスナーストリンガー及びスライドファスナーを形成することも可能である。この場合、金属製のファスナーエレメントは、従来と同様に、ファスナーエレメントの両脚部内にテープ部材のテープ側縁部を挿入して、ファスナーエレメントの脚部をテープ側縁部に向けて押圧して塑性変形させることによって、テープ部材のテープ側縁部に固定される。
図1は、本実施例1に係るスライドファスナーを示す平面図である。図2は、同スライドファスナーにおけるファスナーストリンガーの要部を拡大して示す斜視図であり、図3は、図2に示したIII−III線における断面図である。図4及び図5は、同ファスナーストリンガーの要部を示す平面図及び底面図である。なお、図2〜図5では、針糸の図示が省略されている。
また、以下の説明において、前後方向とは、テープ部材のテープ長さ方向を言い、スライダーが摺動する摺動方向と同じ方向である。特に、スライドファスナーを閉じるときにスライダーを摺動させる方向を前方とし、スライドファスナーを開くときにスライダーを摺動させる方向を後方とする。
また、左右方向とは、テープ部材のテープ幅方向を言い、テープ部材の長さ方向及び表裏方向に直交する方向を言う。更に、上下方向とは、テープ部材のテープ表裏方向を言い、特に、スライドファスナーが使用されるときに外部に露呈する方向(例えば、テープ部材に対してスライダーの引手が配される方向)を上方とし、その反対の方向を下方とする。
本実施例1のスライドファスナー1は、図1に示したように、左右のテープ部材20の対向する各テープ側縁部22に沿ってエレメント列11が形成された左右一対のファスナーストリンガー10と、各ファスナーストリンガー10の前端部にエレメント列11に隣接して配される左右の第1止具12(上止具とも言う)と、一対のファスナーストリンガー10の後端部にエレメント列11に隣接して配される開離嵌挿具13と、エレメント列11に取着され、エレメント列11に沿って摺動可能なスライダー14とを有する。
この本実施例1のスライドファスナー1は、ファスナーストリンガー10のテープ部材20が防水性を備えており、テープ部材20の表面側から裏面側への液体の浸入を抑制する止水ファスナーとして形成されている。また、本実施例1の開離嵌挿具13は、左側のテープ部材20の後端部にエレメント列11に隣接して配される蝶棒と、右側のテープ部材20の後端部にエレメント列11に隣接して配される箱棒と、箱棒の後端部に箱棒と一体的に形成され、蝶棒を挿入することが可能な箱体とを有する。
なお、本実施例1のスライドファスナー1における第1止具12、開離嵌挿具13、及びスライダー14は、従来の止水ファスナーに一般的に用いられている第1止具、開離嵌挿具、及びスライダーとそれぞれ同様に形成されているため、ここではこれらの詳しい説明は省略する。また本発明では、開離嵌挿具13の代わりに、左右のテープ部材20に跨って形成される第2止具(下止具とも言う)をエレメント列11に隣接して設けることも可能である。
左右のファスナーストリンガー10は、細帯状のテープ部材20と、テープ部材20の相手方に対向するテープ側縁部22に沿って形成されるエレメント列11とを有する。エレメント列11は、テープ側縁部22に複数の合成樹脂製ファスナーエレメント15が射出成形により一定の間隔をもって設けられることによって形成されている。
本実施例1のファスナーエレメント15は、例えば従来の一般的な止水性ファスナーに配されるファスナーエレメントと同様の形状を有する。
簡単に説明すると、本実施例1のファスナーエレメント15は、テープ部材20のテープ裏面側に配される第1エレメント部15aと、テープ部材20のテープ表面側に配され、第1エレメント部15aとは異なる形状を備えた第2エレメント部15bとを有する。
ここで、テープ部材20のテープ表面(部材表面)とは、後述するように、テープ部材20におけるテープ側縁部22の第2テープ固定部22cを折り返し、更に、テープ縫製線29によってテープ側縁部22の折り返された形態が保持されている状態において、上方に向いて外部に露呈する面(上面)を言う。また、テープ部材20のテープ裏面(部材裏面)とは、テープ表面の反対側に配され、上述の第2テープ固定部22cの折り返し形態が保持されている状態において下方に向く面(下面)を言う。
ファスナーエレメント15の第1エレメント部15aは、テープ部材20に固着される第1胴部と、第1胴部から連続して形成され、括れた形状を有する首部と、首部から連続して形成される長円形状の噛合頭部とを有する。
第2エレメント部15bは、テープ部材20に固着される略直方体状の第2胴部と、テープ部材20のテープ内対向側縁から突出するように第2胴部からテープ幅方向に延出するエレメント頭部とを有する。また、第2エレメント部15bのエレメント頭部は、テープ長さ方向の寸法がエレメント頭部の先端に向けて2段階で漸次減少する形状を有する。なお、本発明において、ファスナーエレメント15の形状は限定されるものではなく、任意に変更することができる。
本実施例1のテープ部材20は、可撓性及び防水透湿性を備える厚さの薄い生地を細幅状に裁断して形成されるテープ体23と、そのテープ体23のテープ側縁部22にテープ長さ方向に沿って設けられる第1及び第2芯紐部24a,24bとを有する。この場合、第1芯紐部24aは、テープ部材20の部材表面にテープ体23から上方に膨出するように設けられており、第2芯紐部24bは、テープ部材20の部材裏面にテープ体23から下方に膨出するように設けられている。
テープ部材20を構成するテープ体23は、防水透湿性を有する薄手の生地を準備し、その生地を細幅の形状(又は所望の形状)に裁断することにより形成されている。なお、上述のような防水透湿性を備える薄い生地としては、例えばゴアテックス(登録商標)などの生地を用いることが可能である。
また、本発明において、テープ体23は、上述のような防水透湿性ではなく、吸水(吸汗)・速乾性、蓄熱性、又は防汚性などのその他の性質を有する生地を用いて形成されても良いし、また、動物の天然皮革や合成皮革などの生地以外の素材を用いて形成されても良い。
本実施例1のテープ部材20は、衣服や鞄などのファスナー被着製品に縫い付けられるテープ主体部21と、テープ主体部21の一側縁からテープ幅方向に延び、第1及び第2芯紐部24a,24bを備えるテープ側縁部22とを有し、テープ側縁部22には、第1及び第2芯紐部24a,24bが設けられた状態で、複数のファスナーエレメント15が射出成形によって形成されている。このため、テープ側縁部22は、エレメント取付部と呼ばれることもある。
なお、本実施例1のテープ部材20は、上述のように細幅状の形態を有するが、本発明では、例えば衣服等のファスナー被着製品の一部を構成する生地(ガーメント生地とも言う)をそのままテープ部材として用いて、そのガーメント生地に複数のファスナーエレメント15を射出成形により直接形成することによってスライドファスナーを製造することも可能である。
この場合、テープ部材(又はテープ体)は、細幅の形状ではなく、そのファスナー被着製品に用いられる構成パーツに対応する形状を有する。例えば、複数のファスナーエレメント15が衣服の前立て部を形成するガーメント生地(前立て部の構成パーツ)に直接形成される場合、ファスナーエレメント15が形成されるテープ部材のテープ体は、所望の性質(例えば、防水透湿)を有する生地を、細幅状の形状ではなく、前立て部の構成パーツに対応した形状に裁断することによって形成される。これによって、衣服等のファスナー被着製品と一体感があり、また、柔軟で軽量なスライドファスナーを得ることが可能となる。
本実施例1において、テープ部材20のテープ側縁部22は、図8に示したように、テープ主体部21からテープ幅方向に連続して配され、第1芯紐部24aが形成される第1テープ固定部22aと、第1テープ固定部22aから延出し、部材裏面側に略U字状に折り曲げられる折曲部22bと、折曲部22bからテープ内側に向けて延びる第2テープ固定部22cとを有する。また、第2テープ固定部22cは、第1テープ固定部22aに重ね合わされるとともに、テープ縫製線29によって第1テープ固定部22aに縫い付けられている。
また、本実施例1のテープ側縁部22は、第1テープ固定部22aに第2テープ固定部22cを重ね合せたときに対向する内面となる第1テープ面と、テープ側縁部22の部材表面及び部材裏面を形成する第2テープ面とを有する。
ここで、第1テープ面及び第2テープ面は、テープ体23が平坦な状態(第2テープ固定部22cが折り返される前の状態)において、そのテープ体23が有する一方のテープ面と他方のテープ面のことを言い、特に、第1テープ面は、テープ体23に対して後述する紐部材25を固定する縫製加工を行う際に、ミシン針5を刺し通すときに上面を向き、針糸26がテープ長さ方向に沿って走行するテープ面を言い、第2テープ面は、刺し通されたミシン針5で針糸26のループが形成される側のテープ面を言う。特に本実施例1のテープ体23では、第2テープ面が、紐部材25が固定される側のテープ面となる。
従って、本実施例1のテープ側縁部22では、第2テープ固定部22cが、折曲部22bを介して、テープ側縁部22の第2テープ面が外側に向くとともに第1テープ面が内周面を形成するように、第1テープ固定部22aに折り返されて縫着されている。
この場合、第1テープ固定部22aのテープ主体部21に近接する部分と、第2テープ固定部22cの先端寄りの部分(テープ体23の裁ち目となるテープ側端縁寄りの部分)とは、第1及び第2テープ固定部22cが重ね合わされた状態で、テープ縫製線29によって相互に縫い合わされている。
本実施例1の第1芯紐部24aは、テープ側縁部22における第1テープ固定部22aの部材表面(第2テープ面)にテープ長さ方向に沿って直線状に設けられており、第2芯紐部24bは、テープ側縁部22における第2テープ固定部22cの部材裏面(第2テープ面)にテープ長さ方向に沿って直線状に設けられている。
また、第1及び第2芯紐部24a,24bは、例えば図9に第1芯紐部24aの構造を模式的に示すように、それぞれ、ふんわりとした嵩高性のある撚糸からなる1本の紐部材25が、テープ長さ方向に沿って直線状に配されるともに、その紐部材25が1本の針糸26によって固定されることによって形成されている。なお、図9では、第1芯紐部24aの構造を、より判り易く示すために、実際に形成される第1芯紐部24aに比べて、テープ体23のテープ側縁部22、紐部材25、及び針糸26間のそれぞれの間隔を拡げるとともに、針糸26自身の交わりを緩めた形態で図示している。
本実施例1の第1及び第2芯紐部24a,24bでは、図9に示したように、針糸26が一定のステッチ形式をテープ長さ方向に繰り返し形成しながら、その針糸26のループが、第1及び第2芯紐部24a,24bを形成する各紐部材25に絡まることによって、針糸26が、紐部材25を刺し通すことなく、紐部材25を締め付けてテープ側縁部22に固定している。
この場合、第1及び第2芯紐部24a,24bを形成する各紐部材25の太さは、テープ部材20に形成されるファスナーエレメント15の大きさや形状等に応じて、任意に選択することができる。また、本実施例1の場合、第1芯紐部24aを形成する第1紐部材25aと、第2芯紐部24bを形成する第2紐部材25bとは、同じ太さを有するものの、本発明では、第1紐部材25aの太さと第2紐部材25bの太さを相互に異ならせることもできる。
また、本実施例1の第1及び第2紐部材25a,25bには、任意の色彩を有する紐部材25を用いることができる。すなわち、本実施例1では、テープ体23、第1及び第2紐部材25a,25b、針糸26、並びにファスナーエレメント15のそれぞれの色彩を選択することが可能であり、それによって、スライドファスナー1のデザインのバリエーションを増やして、ファスナー被着製品の意匠性を効果的に高めることができる。
本実施例1の針糸26には、第1及び第2芯紐部24a,24bを形成する紐部材25よりも細い糸が用いられている。この針糸26は、テープ側縁部22の第1テープ面を走行し、且つ、一定の間隔でテープ体23を第1テープ面から第2テープ面に刺通するとともに、刺通する一針ごとに第2テープ面上に1つのループを形成する。また、針糸26が形成する1つ1つのループは、テープ側縁部22の第2テープ面側において、嵩高の紐部材25を刺通することなく、その紐部材25の外周面を接触しながら2回ずつ交差する。
針糸26が、上述のようなループの形態(ステッチ)を形成することによって、直線状に延ばされる紐部材25が、1本の針糸26によって、テープ側縁部22にテープ長さ方向やテープ幅方向に動かないようにしっかりと固定されている。なお、紐部材25の外周面とは、テープ体23に接触する内周面とは反対側に配され、外部に露呈する側の紐部材25の周面を言う。
ここで、細幅状に裁断加工されたテープ体23を準備し、そのテープ体23のテープ側縁部22に第1及び第2芯紐部24a,24bを形成することによって、図8に示したテープ部材20を製造する方法について、図6〜図13を参照しながら説明する。
先ず、準備した細幅状のテープ体23におけるテープ側縁部22の第2テープ面に、第1及び第2芯紐部24a,24bを形成する。この場合、図6及び図7に示しように、テープ側縁部22の第2テープ固定部22cが第1テープ固定部22aに対して折り返される前の平坦な状態のテープ体23に対し、ミシン縫いを行うことによって、第1及び第2紐部材25a,25bを、テープ長さ方向に沿って直線状に且つ互いに平行に固定する。
また、第1紐部材25aは、テープ側縁部22の第1テープ固定部22aの第2テープ面に、針糸26によって固定され、第2紐部材25bは、テープ側縁部22の第2テープ固定部22cの第2テープ面に、針糸26によって固定される。
本実施例1において、第1及び第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22の第1及び第2テープ固定部22a,22bに、それぞれミシン縫いによって固定する場合、二重環縫いの動作を行うミシン針5及びルーパ6を備えたミシンを用いるとともに、第1及び第2紐部材25a,25bをそれぞれルーパ糸(下糸)として用いて、以下に詳述するような縫製加工が行われる。
なお本実施例1において、第1及び第2紐部材25a,25bの固定に用いるミシンには、ミシン針5とルーパ6とが、日本工業規格(JIS)のL0120−1984に表示記号401として規定されている二重環縫いのステッチ形式を形成するように動作する二重環縫いミシンが用いられる。
また、以下の説明では、第1紐部材25aをテープ側縁部22の第1テープ固定部22aに固定して第1芯紐部24aを形成する場合について説明するが、本実施例1では、第2紐部材25bをテープ側縁部22の第2テープ固定部22cに固定して第2芯紐部24bを形成する場合にも、第1芯紐部24aの場合と同様の縫製加工が行われる。
縫製加工によって、テープ側縁部22の第1テープ固定部22aに第1紐部材25aを固定する場合、その縫製加工は、図10〜図13に示したように、針糸26が通されたミシン針5を上下方向に昇降させるとともに、ルーパ6が針板の裏面側で所定のタイミングで前進及び後退を繰り返しながら、テープ体23のテープ側縁部22を、ミシン針5の上下動に合わせて間欠的に下流側(後方)に向けて所定の送り量で移動させることによって行われる。
より具体的に説明すると、ミシン針5が下降することによって、例えば図10に示したように、テープ体23のテープ側縁部22を第1テープ面から第2テープ面に刺通し、更に、そのミシン針5が、ルーパ6の後退によって形成される第1紐部材25a(ルーパ糸)のループ27a内を通り抜けて、針最下位置まで移動する。
次に、ミシン針5が針最下位置から上昇し始める。このミシン針5の上昇により、図11に示すように、ミシン針5の先端部で針糸26のループ26aが緩む(膨らむ)。更に、所定の待機位置で待機していたルーパ6が、その先端部に第1紐部材25aを保持しながら、針糸26の緩んだループ26a内を通り抜けるように前進して、当該ルーパ6が針糸26のループ26aをすくう(言い換えると、第1紐部材25aの次のループ27bが、針糸26のループ26aと他糸ルーピングする)。それとともに、ミシン針5が、ルーパ6に針糸26のループ26aが掛かった状態で更に上昇し、テープ側縁部22の上方に移動する。またこのとき、針糸26にテンションを加えることにより、針糸26が引き締められる
これにより、図12に示すように、テープ側縁部22の第2テープ面側に形成される針糸26のループ26aが、テープ側縁部22に近接して既に形成されている第1紐部材25aのループ27a内を通り抜けるとともに、その針糸26のループ26aの先端部内を、第1紐部材25aの次に形成されるループ27bが通り抜けた状態となる。
次に、図12に矢印で示すように、テープ体23のテープ側縁部22がミシンの送り動作によって下流側に移動することにより、ミシン針5がテープ側縁部22に対して相対的に前進するとともに、そのミシン針5が下降し始めてテープ側縁部22を刺通する。また、針糸26のループ26a内を通り抜けたルーパ6も、テープ側縁部22の移動に合わせて後退する。このとき、図13に示すように、ルーパ6の先端部で第1紐部材25aのループ27bが緩む。
その後、テープ側縁部22を刺通したミシン針5が更に下降して、テープ側縁部22の第2テープ面側に形成される針糸26の次のループ26bが、ルーパ6の先端部における第1紐部材25aのループ27b内を通り抜ける(言い換えると、針糸26のループ26bが第1紐部材25aのループ27bと他糸ルーピングする)。それと同時に、第1紐部材25aのループ27bにミシン針5が掛かった状態でルーパ6が後退し、当該ルーパ6が、ミシン針5がテープ側縁部22を1つ前に刺通したときに形成した針糸26のループ26a内から抜け出して、待機位置に戻る。
更に、このルーパ6の後退に伴って、図示しないルーパ糸のテンション付与部が、第1紐部材25a(ルーパ糸)を、図13に示したように強く引っ張って第1紐部材25aにテンションを加える。これにより、1つ前の第1紐部材25aのループ27aから、テープ側縁部22を刺通したミシン針5までの範囲の第1紐部材25aをまっすぐに延ばすと同時に、1つ前の針糸26のループ26aと、2つ前の針糸26のループ26zとを変形させる。更にこのとき、針糸26にテンションを加えることにより、針糸26を引き締めて第1紐部材25aにしっかりと巻き付けることができる。
これにより、針糸26と第1紐部材25aとが図10に示した状態に進み、2つ前の針糸26のループ26zが、まっすぐに延ばされた第1紐部材25aの外周面を接触しながら2回交差するように絡まって、第1紐部材25aを締め付けた状態(すなわち、図10に示したループ26zより1つ前の針糸26のループの状態)となるため、第1紐部材25aが針糸26のループ26zによって固定される。
以上のように、ミシンの送り動作に合わせて一針ごと(ミシンの1ピッチごと)に、ミシンのミシン針5とルーパ6が二重環縫いの動作を繰り返して行うとともに、ミシン針5がテープ側縁部22を刺通するタイミングに合わせて間欠的に第1紐部材25aにテンションを強く付加することによって、通常の二重環縫いのステッチが変形して、第1紐部材25aが直線状に延ばされるとともに、針糸26のループが、その直線状の第1紐部材25aに対して交絡する。
その結果、針糸26がテープ側縁部22の第1テープ面を走行し、且つ、テープ側縁部22を刺通して第2テープ面に一針ごとにループを形成するとともに、その針糸26の各ループが、直線状に延ばされる第1紐部材25aの外周面を2回ずつ交差して締め付けることができる。
これにより、図9に示すような針糸26のステッチが形成されるため、針糸26が第1紐部材25aを刺通することなく、直線状の第1紐部材25aを、テープ側縁部22の第2テープ面に、針糸26の各ループの交絡によってテープ長さ方向に沿ってしっかりと安定して固定して、第1芯紐部24aを形成することができる。また、形成される第1芯紐部24aでは、針糸26の各ループが、第1紐部材25aに、第1紐部材25aを締め付けるように交絡しているいため、第1紐部材25aの位置がテープ長さ方向やテープ幅方向にずれることも防止できる。
更に本実施例1では、この第1芯紐部24aを形成すると同時に、又は、第1芯紐部24aを形成する前に若しくは後に、針糸26と第2紐部材25bを用いて、二重環縫いミシンによる縫製加工を、第1芯紐部24aの場合と同様に行うことによって、第2芯紐部24bを形成することができる。
この第2芯紐部24bの形成においても、図9に示すような針糸26のステッチが形成されるため、針糸26が第2紐部材25bを刺通することなく、直線状の第1紐部材25bを、テープ側縁部22の第2テープ面に、針糸26の各ループの交絡によってテープ長さ方向に沿ってしっかりと安定して固定することができる。
そして、上述のように第1及び第2芯紐部24a,24bを形成することによって、図6及び図7に示したように、テープ側縁部22の第1テープ固定部22aに、第1紐部材25aがテープ長さ方向に沿って直線的に設けられるとともに、テープ側縁部22の第2テープ固定部22bに、第2紐部材25bが、第1芯紐部24aから離間して、且つ、第1芯紐部24aと平行に、直線的に設けられる。特にこの場合、例えばテープ体23が伸縮性を備えるものであっても、第1及び第2紐部材25a,25bをテープ体23のテープ側縁部22に直線状にまっすぐ固定することができる。
従って、本実施例1では、防水透湿性と言う所望の特性を備える芯紐部のないテープ体23に対して、第1及び第2芯紐部24a,24bを後から容易に形成することができる。また、形成された第1及び第2芯紐部24a,24bの位置がずれることや、第1及び第2紐部材25a,25bがテープ長さ方向に動くことなどの不具合が生じることも防止できる。
更に本実施例1では、ミシン縫いを行う際に、紐部材25をミシン用の針糸及びルーパ糸と別途に用意して案内する必要がなく、また、1回のミシン掛けのみで第1芯紐部24a又は第2芯紐部24bを形成できる。このため、第1及び第2芯紐部24a,24bの形成を簡便に且つ効率的に行うことができる。その上、例えば特殊な動きを行う特別な構造のミシンではなく、従来の一般的な二重環縫いミシンを用いることができるため、設備費用などのコストの増大も抑制できる。
そして、上述のようにテープ体23のテープ側縁部22に第1及び第2芯紐部24a,24bをテープ長さ方向に沿って形成した後(図6及び図7を参照)、テープ側縁部22の第2芯紐部24bが形成された第2テープ固定部22cを、例えば図8に示したように、第1芯紐部24aと第2芯紐部24bの中間位置を基準にして、第1芯紐部24aが形成された第1テープ固定部22aに対し、テープ側縁部22の針糸26が走行する第1テープ面が内側に向くようにテープ幅方向に折り返して、重ね合わせる。これにより、第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとの間の折曲部22bが、略U字状に折り曲げられる。
更に、その重ね合せた第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとを、第1及び第2紐部材25a,25bよりもテープ内方側の位置(テープ主体部21に近付いた位置)で縫い合わせる。このとき、本実施例1では、第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとが、二重環縫いミシンを用いてテープ長さ方向に沿って縫合されるため、第1及び第2紐部材25a,25bとテープ主体部12との間の位置には、二重環縫いによるテープ縫製線29が、第1及び第2紐部材25a,25bに沿って形成される。
このように第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとがテープ縫製線29によって縫い合わせられることにより、図2及び図3に示したようなテープ側縁部22の部材表面に第1芯紐部24aが上方に膨出するように配され、且つ、テープ側縁部22の部材裏面に第2芯紐部24bが下方に膨出するように配された本実施例1のテープ部材20が製造される。
このようにして製造される実施例1のテープ部材20では、第2テープ固定部22cが折り返された状態で第1テープ固定部22aに縫い合わせられている。このため、第2テープ固定部22cのテープ側縁端が、例えば裁断されたままの未処理の状態(裁ち目の状態)であっても、その未処理のテープ側縁端がテープ部材20の部材裏面側に折り返されて、スライドファスナー1における左右のテープ部材20の対向する側面部に露呈しなくなる。
従って、テープ体23の未処理の側縁端が外部(特にスライドファスナーの上面側)から見え難くなるため、スライドファスナー1の外観品質を向上させることができる。また、スライダー14の摺動操作が繰り返し行われても、左右のテープ部材20の対向側面部に、糸のほつれ等の不具合が生じ難くなるため、スライダー14の摺動性等の品質や性能を長期に亘って安定して維持することができる。
なお、本実施例1では、テープ体23のテープ側縁部22に、撚糸からなる第1及び第2紐部材25a,25bを固定することによって第1及び第2芯紐部24a,24bが形成されている。しかし、本発明において、第1及び第2芯紐部24a,24bを形成する第1及び第2紐部材25a,25bには、上述のような撚糸に代えて、モノフィラメント、又は、複数の糸をまとめて束ねた状態でその周囲を編成することで得られるニットコードを用いることも可能である。
そして本実施例1では、上述のような第1及び第2芯紐部24a,24bが形成されたテープ部材20のテープ側縁部22に合成樹脂材料を射出成形して、所定の形状を有する複数のファスナーエレメント15を形成することにより、ファスナーストリンガー10が製造される。
この場合、各ファスナーエレメント15は、テープ側縁部22の第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとを縫い合わせたテープ縫製線29に重なるような(テープ縫製線29を跨ぐような)大きさで形成されても良いし、また、テープ縫製線29に重ならないような大きさ(テープ縫製線29よりも折曲部22b寄りの領域内で形成される大きさ)で形成されても良い。
更に、上述のようにして製造された本実施例1のファスナーストリンガー10を2つ一組で組み合わせて、当該一組のファスナーストリンガー10のエレメント列11に対して、スライダー14を取り付けるとともに第1止具12及び開離嵌挿具13を形成することによって、図1に示したスライドファスナー1が製造される。
このようにして得られる本実施例1のスライドファスナー1では、防水透湿性を備えるテープ体23を用意して、そのテープ体23のテープ側縁部22に第1及び第2紐部材25a,25bを後から固定することによって、表裏方向に膨出する第1及び第2芯紐部24a,24bを備えたテープ部材20が作製されている。このため、防水透湿性を備えるスライドファスナー用テープ部材20を、比較的低い製造コストで簡単に製造することが可能となる。
更に、第1及び第2紐部材25a,25bが針糸26の交差(又は交絡)によってしっかりと固定されて第1及び第2紐部材25a,25bが形成されているため、テープ側縁部22に固定された第1及び第2紐部材25a,25bの位置が、テープ幅方向やテープ長さ方向にずれ難くなっている。
それにより、テープ部材20のテープ側縁部22にファスナーエレメント15を射出成形して形成する際に、湯漏れが生じることを防いで、ファスナーエレメント15を所定の位置に安定して取り付けることができ、また、成形されたファスナーエレメント15の姿勢が傾くことや、ファスナーエレメント15の位置がテープ長さ方向にずれることも効果的に防止できる。
従って、本実施例1のスライドファスナー1は、横引き強度などのファスナー本来の性能を適切に且つ安定して備えるだけでなく、テープ部材20が防水透湿性を備えるという付加価値が加えられている。更に、このスライドファスナー1は、テープ体23の薄さに起因してスライダー14の摺動抵抗が軽減されるため、スライダー14の摺動性が向上した高品質なスライドファスナー1となる。このような特徴を有するスライドファスナー1は、例えばアウトドア用の製品に好適に用いられる。
なお、上述した実施例1では、テープ部材20のテープ側縁部22が、図8に示したように、第1芯紐部24aが形成される第1テープ固定部22aと、略U字状の折曲部22bと、第2芯紐部24bが形成される第2テープ固定部22cとを有して形成されている。しかし、本発明におけるテープ側縁部22の形態はこれに限定されるものではなく、例えば図14及び図15に示したような形態でテープ側縁部32,42を形成することも可能である。
例えば図14に、実施例1の第1変形例に係るテープ部材30の断面図を示すように、この第1変形例に係るテープ部材30のテープ側縁部32は、テープ主体部31からテープ幅方向に連続して配され、芯紐部24が部材表面に形成されるテープ固定部32aと、テープ固定部32aから延出し、部材裏面側に略U字状に折り曲げられた折曲部32bと、折曲部32bからテープ内側に向けて延び、テープ固定部32aに重ね合わされるテープ折返し部32cとを有する。
この場合、テープ固定部32aのテープ主体部31に近接する部分と、テープ折返し部32cの先端部とは、テープ固定部32a及びテープ折返し部32cが重ね合わされた状態で、紐部材25をテープ固定部32aに固定する針糸26によって、相互に縫い合わされている。
第1変形例における芯紐部24は、テープ側縁部32のテープ固定部32aにテープ長さ方向に沿って直線状に設けられている。この芯紐部24は、撚糸からなる1本の紐部材25がテープ長さ方向に沿って直線状に配されるともに、その紐部材25が当該紐部材25よりも細い固定糸となる1本の針糸26によって固定されることによって形成されている。
なお、第1変形例の紐部材25を固定する針糸26のステッチ自体は、前述の実施例1における第1及び第2芯紐部24a,24bにおいて第1及び第2紐部材25a,25bを固定する針糸26のステッチと同様に形成される。
すなわち、この第1変形例における芯紐部24は、二重環縫いミシンにより、紐部材25をルーパ糸として用いて前述の実施例1の場合と同様の縫製加工を行って、その紐部材25を針糸26でテープ固定部32aに固定することによって形成される。この場合、二重環縫いミシンでは、前述の実施例1と同様に、ミシン針5とルーパ6に二重環縫いの動作を行わせるとともに、所定のタイミングで紐部材25に間欠的にテンションを強く加えて直線状に延ばす作業が行われる。
また、この第1変形例では、テープ側縁部32のテープ固定部32aとテープ折返し部32cとが、上述したように、紐部材25をテープ固定部32aに固定する針糸26と同じ針糸26によって縫い合わされている。
例えば前述の実施例1におけるテープ側縁部22は、図6〜図8に示したように、第1及び第2紐部材25a,25bを第1及び第2テープ固定部22a,22cにそれぞれ固定した後に、第2テープ固定部22cを折り返して第1テープ固定部22aと縫い合わせることによって形成されている。
これに対して、図14に示した第1変形例では、紐部材25がテープ側縁部32に固定される前に、テープ側縁部32のテープ折返し部32cが折り返されてテープ固定部32aに重ね合わされる。そして、テープ折返し部32cがテープ固定部32aに重ね合わされた状態で、二重環縫いミシンによる上述のような芯紐部24を形成する縫製加工を行うことにより、紐部材25をテープ固定部32aの表面(テープ折返し部32cが重ね合わされるテープ面とは反対のテープ面)に固定すると同時に、重ね合わされているテープ固定部32aとテープ折返し部32cとを縫い合わせている。
このようにして形成される第1変形例のテープ側縁部32では、テープ固定部32aの部材表面に紐部材25がしっかりと固定されて、芯紐部24がテープ側縁部32の部材表面のみに容易に且つ安定して形成される。
またこの場合、テープ折返し部32cのテープ側縁端が、たとえ裁断されたままの未処理の状態であっても、その未処理の側縁端が左右のテープ部材30の対向する側面部に露呈しなくなる。このため、第1変形例では、前述の実施例1の場合と同様に、スライドファスナー1の外観品質が向上し、また、スライダー14の摺動操作が繰り返し行われても、左右のテープ部材30の対向側面部に糸のほつれ等の不具合が生じ難くなるため、スライドファスナー1の品質や性能を長期に亘って安定して維持することができる。
なお、この実施例1の第1変形例では、テープ固定部32aに紐部材25を固定すると同時に同テープ固定部32aにテープ折返し部32cを縫い付けているが、本発明では、テープ折返し部32cをテープ固定部32aに縫い付けることなく紐部材25をテープ固定部32aに固定し、更にその後に、テープ折返し部32cをテープ固定部32aに折り返して、そのテープ折返し部32cを、接着等により、又は射出成形するファスナーエレメント15で押さえることにより、テープ固定部32aに固定しても良い。
一方、図15に示した実施例1の第2変形例に係るテープ部材40では、当該テープ部材40の長さ方向に直交する断面を見たときに、固定された紐部材25を内側に包み込んで被覆するテープ被覆部42aと、テープ被覆部42aにおけるテープ主体部側の第1端縁から延びる第1隣接部(テープ内側隣接部)42bと、テープ被覆部42aにおける第1端縁とは反対側の第2端縁から延びる第2隣接部(テープ外側隣接部)42cとを有する。
この場合、第1隣接部42bは、テープ被覆部42aのテープ主体部側に隣接して配され、第2隣接部42cは、そのテープ被覆部42aの反対側に隣接して配される。また、第1隣接部42bが、テープ主体部41からテープ幅方向に連続して配されており、この第1隣接部42bから、テープ被覆部42aと第2隣接部42cとがテープ幅方向に順番に配されている。
この第2変形例では、先ず、テープ被覆部42aの第2テープ面に紐部材25を固定して芯紐部24を形成し、続いて、テープ被覆部42aを、固定した紐部材25の周面に巻き付けるよう被せて紐部材25をテープ被覆部42aの内側に包み込むとともに、第2隣接部42cを第1隣接部42bに重ね合せる。その後、二重環縫いミシンを用いて、重ね合せた第2隣接部42cと第1隣接部42bとを、紐部材25に沿って縫い合わせることによって、テープ側縁部42が形成される。
この第2変形例における芯紐部24は、撚糸からなる1本の紐部材25が、二重環縫いミシンにより、紐部材25をルーパ糸として用いて前述の実施例1の場合と同様の縫製加工を行うことによって、テープ被覆部42aにテープ長さ方向に沿って直線状に固定されることにより形成されている。この第2変形例において、紐部材25を固定する針糸26のステッチは、前述の実施例1における第1及び第2芯紐部24a,24bの場合と同様に形成される。
このようにして形成される第2変形例のテープ側縁部42では、テープ被覆部42aの内周面(第2テープ面)に紐部材25がしっかりと固定されて芯紐部24が安定して形成される。また、固定された紐部材25がテープ被覆部42aで包まれて保護されているため、芯紐部24に毛羽等が生じ難く、芯紐部24の耐久性を向上させることができる。
更に、この第2変形例でも、第2隣接部(テープ外側隣接部)42cのテープ側縁端が、左右のテープ部材40の対向する側面部に露呈しないため、そのテープ側縁端が裁断されたままの未処理の状態であっても、前述の実施例1や第1変形例と同様に、スライドファスナー1の外観品質が向上するとともに、スライドファスナー1の品質や性能を長期に亘って安定して維持することができる。
図16は、本実施例2に係るテープ部のテープ側縁部を示す断面図である。図17及び図18は、同テープ部材において、第2テープ固定部が折り返される前のテープ側縁部を示す平面図及び断面図である。図19は、同テープ側縁部に紐部材を固定する本縫いのステッチを模式的に示す模式図である。
本実施例2のテープ部材50では、テープ体23のテープ側縁部22に第1及び第2紐部材25a,25bを固定する手段として、前述の実施例1のような針糸26のステッチを用いる代わりに、針糸56とボビン糸57によるジグザグ状の本縫いのステッチを用いている。
なお、本実施例2のテープ部材50における第1及び第2紐部材25a,25bを固定するステッチ以外の構成については、前述の実施例1と実質的に同様に形成されている。従って、本実施例2では、前述の実施例1と異なる構成を中心に説明し、前述の実施例1と実質的に同じ構成を有する部位又は部材については、同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。
本実施例2のテープ部材50は、可撓性及び防水透湿性を備える生地を細幅状に裁断して形成されるテープ体23と、そのテープ体23のテープ側縁部22にテープ長さ方向に沿って設けられる第1及び第2芯紐部54a,54bとを有する。本実施例2のテープ体23は、前述の実施例1におけるテープ体23と同様に形成されている。
また、テープ部材50のテープ側縁部22は、テープ主体部21から延出し、第1芯紐部54aが形成される第1テープ固定部22aと、第1テープ固定部22aから延出し、略U字状に折り曲げられる折曲部22bと、折曲部22bから更に延びて配され、第2芯紐部54bが形成される第2テープ固定部22cとを有する。また、第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとは、互いに重ね合わされた状態で、テープ主体部21に近接する部分に形成されるテープ縫製線29によって、相互に縫い合わされている。
この場合、第1芯紐部54aは、テープ側縁部22の部材表面(言い換えると、第1テープ固定部22aの第1テープ面)にテープ長さ方向に沿って直線状に設けられており、第2芯紐部54bは、テープ側縁部22の部材裏面(言い換えると、第2テープ固定部22cの第1テープ面)にテープ長さ方向に沿って直線状に設けられている。
また、第1及び第2芯紐部54a,54bは、それぞれ、撚糸からなる1本の紐部材25(すなわち、第1紐部材25a又は第2紐部材25b)がテープ長さ方向に沿って直線状に配されるともに、その紐部材25が、当該紐部材25よりも細い針糸56及びボビン糸57により形成されるジグザグ状の本縫いのステッチにより固定されることによって形成されている。
本実施例2において第1及び第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22に固定する本縫いのステッチは、図19に示す針糸56とボビン糸57のステッチ形式がテープ長さ方向に連続的に繰り返されることによって、第1又は第2紐部材25bに対してジグザグ状に屈曲して形成されている。
この場合、第1又は第2紐部材25a,25bがテープ側縁部22の第1テープ面と針糸56の間に挿入されるように配されるとともに、ステッチを形成する針糸56が紐部材25の外周面を接触しながらジグザグ状に交差することによって、第1又は第2紐部材25a,25bがテープ側縁部22の第1テープ面に固定される。
ここで、図19に示したステッチ形式は、JISのL0120−1984に表示記号304として規定されているステッチ形式である。すなわち、本実施例2で用いるステッチ形式では、針糸56がテープ側縁部22の第1テープ面を走行するとともに、針糸56が、テープ側縁部22を第1テープ面から第2テープ面に通り抜けて、第2テープ面においてボビン糸57と交差する(他糸レーシングする)。
また、針糸56がボビン糸57と交差するときに、針糸56の引き戻しが行われることにより、針糸56とボビン糸57の交差部分がテープ側縁部22内に引き込まれて縫い目が形成される。更に、ミシン針5の一針ごとに形成される1つ1つの縫い目(ステッチ部分)が、隣接する縫い目に対して交差する方向に形成されることにより、連続する複数の縫い目が、紐部材25を跨ぐようにジグザグ状に配置される。
上述のような本実施例2のテープ部材50を作製する場合、先ず、図17及び図18に示したように、平坦な状態のテープ体23のテープ側縁部22に、ミシンを用いて、第1又は第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22の第1テープ面と針糸56の間に挿入されるように供給しながら、図19に示したステッチ形式が繰り返されるジグザグ状の本縫いを行って、第1又は第2紐部材25a,25bを固定することによって、第1及び第2芯紐部54a,54bを順番に(又は同時に)形成する。
この場合、第1紐部材25aは、平坦なテープ側縁部22の第1テープ固定部22aに、針糸56によって刺通されることなくしっかりと強固に固定され、また、第2紐部材25bは、第2テープ固定部22cに針糸56によって刺通されることなくしっかりと強固に固定される。これにより、図17及び図18に示したように、防水透湿性を備えるテープ体23のテープ側縁部22に、互いに平行に且つ直線状に配される第1及び第2芯紐部54a,54bを、容易に且つ効率的に形成することができる。
上述のように第1及び第2芯紐部54a,54bを形成した後、テープ側縁部22の第2テープ固定部22cを、第1芯紐部54aと第2芯紐部54bの中間位置を基準にして、第1テープ固定部22aに対し、テープ側縁部22のボビン糸57が走行する第2テープ面が内側に向くようにテープ幅方向に折り返して、重ね合わせる。これにより、第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとの間の折曲部22bが、略U字状に折り曲げられる。
更に、その重ね合せた第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとを、第1及び第2紐部材25a,25bとテープ主体部21との間の位置で、例えば二重環縫いミシンによる縫製によって縫い合わせる。これにより、二重環縫いによるテープ縫製線29が、第1及び第2紐部材25a,25bに沿って形成される。
このように第1テープ固定部22aと第2テープ固定部22cとがテープ縫製線29によって縫い合わせられることにより、図16に示したテープ側縁部22を有する本実施例2のテープ部材50が製造される。更に、この本実施例2のテープ部材50に合成樹脂材料を射出成形して、前述の実施例1と同様の形状を有する複数のファスナーエレメント15を所定の取付ピッチで形成することにより、ファスナーストリンガーが製造される。
以上のように、本実施例2では、防水透湿性を備えるテープ体23のテープ側縁部22に第1及び第2紐部材25a,25bをジグザグ状の本縫いにより固定することによって、本縫いのステッチは縫い目がしっかりと強く形成されるため、表裏方向に膨出する第1及び第2芯紐部54a,54bがテープ側縁部22に強固に形成された防水透湿性を備えるテープ部材50を、比較的低い製造コストで簡単に製造することができる。
そして、本実施例2のファスナーストリンガー10を用いてスライドファスナーを製造することにより、スライドファスナー本来の性能を適切に且つ安定して備え、且つ、テープ部材50が防水透湿性を備えるとともにスライダー14の摺動性が向上した高品質なスライドファスナーを簡単に得ることができる。
なお、上述した実施例2では、第1及び第2紐部材25a,25bが、テープ側縁部22における第1テープ面と針糸56の間に挿入されて固定されているが、本発明では、テープ部材50を製造する際に、例えば第1又は第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22の第2テープ面とボビン糸57の間に挿入されるように供給しながらジグザグ状の本縫いを行うことによって、テープ側縁部22の第2テープ面に第1及び第2芯紐部54a,54bを形成することも可能である。
また、上述した実施例2では、テープ部材50のテープ側縁部22が、図16に示したように、第1芯紐部54aが形成される第1テープ固定部22aと、略U字状の折曲部22bと、第2芯紐部54bが形成される第2テープ固定部22cとを有して形成されている。しかし、本発明では、テープ部材50のテープ側縁部を、実施例2で説明したジグザグ状の本縫いのステッチを用いて、例えば実施例1の第1変形例で説明したようなテープ固定部32a、折曲部32b、及びテープ折返し部32cを有するテープ側縁部32(図14を参照)の形態に形成することや、また、実施例2で説明したジグザグ状の本縫いのステッチを用いて、例えば実施例1の第2変形例で説明したようなテープ被覆部42a、第1隣接部42b、及び第2隣接部42cを有するテープ側縁部42(図15を参照)の形態に形成することも可能である。
更に、上述した実施例2では、第1及び第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22に固定する本縫いのステッチ形式として、JISのL0120−1984に表示記号304として規定されているステッチ形式(図19)を採用しているが、本発明では、このステッチ形式に代えて、例えばJISのL0120−1984に表示記号404として規定されているステッチ形式を採用して、第1及び第2紐部材25a,25bをテープ側縁部22に固定することも可能である。ここで、JISのL0120−1984に表示記号404として規定されているステッチ形式は、針糸とルーパ糸を用いて二重環縫いにより形成される縫い目がジグザグ状に配置されるステッチ形式である。
図20は、本実施例3に係るテープ部材のテープ側縁部を示す平面図である。図21は、同テープ側縁部に紐部材を固定する縁かがり縫いのステッチを模式的に示す模式図である。
本実施例3のテープ部材60では、テープ体23のテープ側縁部62に紐部材25を固定する手段として、針糸66と2つのルーパ糸67,68とを用いて形成される縁かがり縫い(オーバーロック縫いとも言う)のステッチが採用されている。
なお、本実施例3のテープ部材60における紐部材25を固定するステッチ以外の構成については、前述の実施例1と実質的に同様に形成されている。従って、本実施例3においても、前述の実施例1と実質的に同じ構成を有する部位又は部材については、同じ符号を用いて表すことによって、その説明を省略することとする。
本実施例3のテープ部材60は、可撓性及び防水透湿性を備える生地を細幅状に裁断して形成されるテープ体23と、そのテープ体23のテープ側縁部62の部材表面にテープ長さ方向に沿って直線状に設けられる芯紐部64とを有する。
また、テープ部材60のテープ側縁部62は、図示を省略するものの、前述の実施例1の第1変形例の場合と同様に、テープ主体部61からテープ幅方向に連続して配され、芯紐部64が部材表面に形成されるテープ固定部と、テープ固定部から延出し、部材裏面側に略U字状に折り曲げられた折曲部と、折曲部からテープ内側に向けて延び、テープ固定部に重ね合わされて縫着されるテープ折返し部とを有する。この場合、本実施例3のテープ折返し部は、テープ固定部に紐部材25が縁かがり縫いのステッチにより固定されると同時に、同じ縁かがり縫いのステッチでテープ固定部に縫い合わせられる。
本実施例3の芯紐部64は、撚糸からなる1本の紐部材25がテープ長さ方向に沿って直線状に配されるともに、その紐部材25が、紐部材25よりも細い針糸66と、紐部材25よりも細い第1及び第2ルーパ糸67,68とにより形成される縁かがり縫いのステッチにより固定されることによって、形成されている。
本実施例3における縁かがり縫いのステッチは、図21に示すステッチ形式がテープ長さ方向に連続的に繰り返されることによって形成されている。このステッチを形成する第1ルーパ糸67が、紐部材25の外周面を接触しながら、テープ長さ方向に一定の間隔でテープ幅方向に斜めに傾斜するように交差することによって、紐部材25がテープ側縁部62の部材表面に固定されている。
ここで、図21に示したステッチ形式は、JISのL0120−1984に表示記号504として規定されている縁かがり縫いのステッチ形式である。すなわち、本実施例3で用いるステッチ形式では、針糸66がテープ側縁部62の第1テープ面(テープ固定部の第1テープ面)上を走行するとともに、その針糸66のループ66aが、第1ルーパ糸67の第1ループ67aとテープ側縁部62とを通り抜けて、テープ側縁部62の第2テープ面にて第2ルーパ糸68と交差する(他糸ルーピングする)。また、第2ルーパ糸68のループ68aは、テープ側縁部62における対向側縁の側面部で、第1ルーパ糸67の第2ループ67bと交差する(他糸ルーピングする)。
この場合、第1ルーパ糸67の第1ループ67aは、第1ルーパ糸67の第2ループ67bが第2ルーパ糸68のループ68aと交差する位置から、紐部材25の外周面に接触しながら次の縫い目における針貫通点まで引き延ばされることにより、第1ルーパ糸67の第1ループ67aが紐部材25を斜めに交差する。これによって、紐部材25が、図21に示したステッチよりテープ側縁部62に安定して固定される。
上述のような形態を有する本実施例3のテープ部材60を作製する場合、先ず、テープ側縁部62のテープ折返し部が折り返されてテープ固定部に重ね合わされ、更に、テープ折返し部がテープ固定部に重ね合わされた状態で、ミシンを用いて上述のような縁かがり縫いのステッチを形成するように縫製加工が行われる。
このような縫製加工が行われることにより、紐部材25をテープ固定部の部材表面(テープ固定部のテープ折返し部が重ね合わされるテープ面とは反対のテープ面)に第1ルーパ糸67で固定すると同時に、重ね合わされているテープ固定部とテープ折返し部とを、縁かがり縫いのステッチで縫い合わせることができる。これによって、テープ側縁部62が、テープ固定部と、略U字状の折曲部と、テープ固定部に縫い合わせられるテープ折返し部とを備えるとともに、そのテープ固定部の部材表面に芯紐部64が形成された本実施例3のテープ部材60が製造される。
更に、製造された本実施例3のテープ部材60に合成樹脂材料を射出成形して、前述の実施例1と同様の形状を有する複数のファスナーエレメント15を所定の取付ピッチで形成することにより、ファスナーストリンガーが製造される。
上述のように、本実施例3では、テープ側縁部62に芯紐部64を有するともに防水透湿性を備えるテープ部材60を、比較的低い製造コストで簡単に製造することができる。更に、本実施例3のファスナーストリンガーを用いてスライドファスナーを製造することにより、スライドファスナー本来の性能を適切に且つ安定して備え、且つ、テープ部材60が防水透湿性を備えるとともにスライダー14の摺動性が向上した高品質なスライドファスナーを簡単に得ることができる。
なお、上述した実施例3では、紐部材25が、テープ側縁部62におけるテープ固定部の部材表面(第1テープ面)に、図21に示した縁かがり縫いのステッチ形式を用いて固定されることによって芯紐部64が形成されている。しかし、本発明では、例えば、紐部材25を、テープ側縁部62の部材裏面と、図21に示した縁かがり縫いのステッチ形式における第2ルーパ糸68との間に挿入するとともに、その第2ルーパ糸68のループを紐部材25の外周面に接触させながら交差させることによって、テープ側縁部62の部材裏面に紐部材25を固定して芯紐部を形成することも可能である。
更に、上述した実施例3では、紐部材25をテープ側縁部62に固定する縁かがり縫いのステッチ形式として、JISのL0120−1984に表示記号504として規定されている図21のステッチ形式が採用されているが、本発明では、このステッチ形式に代えて、JISのL0120−1984に表示記号502として規定されているステッチ形式や、図22に示したステッチ形式を採用して、紐部材25をテープ側縁部62に固定することも可能である。
ここで、JISのL0120−1984に表示記号502として規定されているステッチ形式は、1本の針糸と1本のルーパ糸とを用いて形成される縁かがり縫いのステッチ形式である。この表示記号502のステッチ形式では、針糸がテープ側縁部62の第1テープ面(部材表面)上を走行するとともに、その針糸のループが、ルーパ糸の第1ループとテープ側縁部62とを通り抜けて、テープ側縁部62の第2テープ面(部材裏面)側で、ルーパ糸の第2ループと交差する(他糸ルーピングする)。
この場合、ルーパ糸の第1ループは、テープ側縁部62の部材裏面に配される第1ルーパ糸の第2ループの位置から、テープ側縁部62の対向側縁の側面部に接触するともに当該側面部を跨ぐように第2テープ面から第1テープ面に渡り、更に、紐部材25の外周面に接触しながら次の縫い目における針貫通点まで引き延ばされることにより、紐部材25に対して斜めに交差する。これによって、紐部材25が、当該ステッチによりテープ側縁部62に安定して固定される。
また、図22に示したステッチ形式は、図21に示したステッチ形式(JISのL0120−1984に表示記号504として規定されているステッチ形式)における第2ルーパ糸68のループ68aを短くするとともに、第1ルーパ糸67の第1ループ67aを長くすることによって形成されるステッチ形式である。
この図22に示したステッチ形式の場合、第1ルーパ糸67の第1ループ67aは、第1ルーパ糸67の第2ループ67bが第2ルーパ糸68のループ68aと交差する位置から、テープ側縁部62の対向側縁の側面部に接触するともに当該側面部を跨ぐように第2テープ面から第1テープ面に渡り、更に、紐部材25の外周面に接触しながら次の縫い目における針貫通点まで引き延ばされることにより、紐部材25に対して斜めに交差する。これによって、紐部材25が、図22に示したステッチによりテープ側縁部62に安定して固定される。
上述のようなJISのL0120−1984に表示記号502として規定されているステッチ形式を用いて、又は図22に示したステッチ形式を用いて、紐部材25がテープ側縁部62に固定されたテープ部材であっても、上述の実施例3のテープ部材60と同様の効果が得られる。