以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。また、図面には、便宜上、直交座標系xyzを付すことがある。実施形態に係る電子部品は、いずれの方向が上方又は下方とされてもよいが、以下では、便宜的にz軸方向の正側を上方として、上面又は下面等の用語を用いることがある。
第2実施形態以降において、既に説明した構成と同一又は類似する構成については、既に説明した構成と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。既に説明した構成と対応する(類似する)構成に、既に説明した構成に付した符号とは異なる符号が付されている場合であっても、特に言及のない事項は、既に説明した構成と同様である。
<第1の実施形態>
(電子部品の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子部品1の構成を示す断面図である。
電子部品1は、例えば、比較的小型のものであり、z方向負側の面を不図示の回路基板に対向させて当該回路基板に実装される。その外形は、例えば、概略、z方向を厚さ方向とする薄型直方体状である。外形の寸法は、適宜に設定されてよいが、一例を挙げると、長さ(x方向)又は幅(y方向)は、1mm以上20mm以下であり、厚さ(z方向)は0.05mm以上0.8mm以下である。
電子部品1は、例えば、ベアチップ3と、ベアチップ3をパッケージングしているパッケージ5とを有している。ベアチップ3は、電子部品1の電気的機能の中心を担い、パッケージ5は、例えば、ベアチップ3の保護及び電子部品1の回路基板等への実装に寄与する。
ベアチップ3は、例えば、基板のおもて面(z方向負側の面)上に導体層、絶縁層及び/又は半導体層などが形成されて構成されており、基本的に、基板の側面及び裏面(z方向正側の面)並びに基板のおもて面上の層は、(パッケージ5以外の)封止材によっては覆われていない。ベアチップ3は、受動素子を構成していてもよいし、能動素子を構成していてもよい。ベアチップ3は、例えば、半導体素子であり、シリコン基板などの半導体基板に電極等が形成されて構成されている。半導体素子としてのベアチップ3は、例えば、ICチップ、トランジスタ又はダイオードである。
ベアチップ3の外形は、例えば、概略、z方向を厚さ方向とする薄型直方体状である。すなわち、ベアチップ3は、互いに対向する第1主面3a及び第2主面3b、並びにこの2つの主面をその周囲でつなぐ4つの側面3cを有している。第2主面3bは、導体層、絶縁層及び/又は半導体層などが形成されている面である。第1主面3aは、例えば、ベアチップ3の基板の裏面である。
ベアチップ3は、第2主面3bに電気信号(電源電圧含む)の入力又は出力に供される複数のパッド3pを有している。パッド3pの形状、寸法、数及び配置は適宜に設定されてよい。
パッケージ5は、例えば、ベアチップ3の第1主面3a及び4つの側面3cを覆う封止部7と、ベアチップ3の第2主面3bを覆う配線部9とを有している。別の観点では、パッケージ5は、ベアチップ3の外面全体を覆っている。
封止部7は、例えば、ベアチップ3の第1主面3a及び4つの側面3cを覆う絶縁性の第1樹脂層11と、第1樹脂層11に対してベアチップ3とは反対側(z方向正側)に重なる絶縁性の第1無機層13とを有している。
第1樹脂層11は、例えば、薄型直方体の下面(z方向負側)にベアチップ3に相当する凹部が形成された形状であり、ベアチップ3の直上に位置する直上部分11aと、ベアチップ3の側方に位置する4つの側方部分11bとを含んでいる。直上部分11aの厚みは例えば概ね一定であり、側方部分11bの厚み(壁の厚み)は例えば概ね一定である。第1無機層13は、例えば、第1樹脂層11の直上部分11a及び側方部分11bの全体に亘って概ね一定の厚みで広がる層状である。
直上部分11a、側方部分11b及び第1無機層13の厚さは、パッケージ5に要求される機能等に応じて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、直上部分11a又は第1無機層13の厚さは、3μm以上200μm以下であり、直上部分11a及び第1無機層13の合計の厚さは、6μm以上400μm以下である。また、これらの厚さの相対的な関係も適宜に設定されてよい。例えば、第1無機層13は、直上部分11aに比較して、薄くてもよいし、同等の厚さでもよいし、厚くてもよい。
なお、後述するように、本実施形態の製造方法においては、直上部分11aを好適に形成する観点から、第1無機層13の厚さ:直上部分11aの厚さは、50:50〜80:20であることが好ましい。
配線部9は、ベアチップ3の第2主面3bを覆う絶縁層15と、絶縁層15の内部等に設けられた複数の接続導体17と、絶縁層15の下面(z方向負側の面)に設けられた複数の導電性のバンプ19とを有している。絶縁層15は、例えば、第2主面3bの封止に寄与し、バンプ19は、例えば、電子部品1の実装に寄与し、接続導体17は、ベアチップ3のパッド3pとバンプ19との接続に寄与する。
絶縁層15は、例えば、絶縁性を有する複数の層が積層されて構成されている。具体的には、例えば、絶縁層15は、ベアチップ3側から順に、第2樹脂層21、第2無機層23及び第3樹脂層25を有している。各層は、例えば、概ね一定の厚さである。
第2樹脂層21、第2無機層23及び第3樹脂層25の厚さは、パッケージ5に要求される機能等に応じて適宜に設定されてよい。一例を挙げると、各層の厚さは、3μm以上200μm以下であり、3層の合計の厚さは、9μm以上600μm以下である。また、これらの厚さの相対的な関係も適宜に設定されてよい。例えば、第2無機層23は、第2樹脂層21に比較して、薄くてもよいし、同等の厚さでもよいし、厚くてもよい。なお、第3樹脂層25は、製造上の理由から、第2樹脂層21及び第2無機層23よりも薄いことが好ましい。
接続導体17は、例えば、ベアチップ3のパッド3pの直下において絶縁層15をその厚さ方向に貫通する孔部に充填された貫通導体からなる。接続導体17の横断面の形状及び縦断面の形状並びにその寸法は適宜に設定されてよい。接続導体17のバンプ19側の面は、絶縁層15の下面に対して、面一であってもよいし(図示の例)、内側(z方向正側)に位置していてもよいし、外側に位置していてもよい。接続導体17の材料は、例えば、Cuなどの適宜な金属材料とされてよい。また、接続導体17は、バンプ19側の面にAuなどの貴金属の層が設けられることなどによって、2種以上の材料から構成されてもよい。
バンプ19は、例えば、接続導体17の、絶縁層15から露出する面上において、概ね半球状に形成されている。バンプ19の大きさ、数及び配置は、電子部品1の機能等に照らして適宜に設定されてよい。バンプ19は、例えば、半田からなる。半田は、鉛フリー半田であってもよい。
(パッケージの材料)
図2は、封止部7及び絶縁層15の材料を説明するための模式的な断面図である。なお、図2は、あくまで封止部7及び絶縁層15の材料を概念的に説明するための模式図であって、後述する粒子の径及び分布(含有率)は、実際のものとは一致しない。また、図示の都合上、一部の部材について、断面を示すハッチング(斜線)は省略されている。
(複数の層の材料の概要)
封止部7及び絶縁層15を構成するいずれの層(11、13、21、23及び25)も、樹脂29と、絶縁性の無機材料からなる無機絶縁粒子(31A、又は、31A及び31B)とが混在した材料によって構成されている。ただし、これらの層は、例えば、無機絶縁粒子の径及び含有率が互いに異なっている。
具体的には、例えば、第1樹脂層11、第2樹脂層21及び第3樹脂層25においては、比較的径が大きい大径粒子31Aのみが配置されているのに対して、第1無機層13及び第2無機層23においては、大径粒子31Aに加えて、比較的径が小さい小径粒子31Bも配置されている。なお、以下では、大径粒子31A及び小径粒子31Bを無機絶縁粒子31といい、両者を区別しないことがある。
また、封止部7において、第1無機層13は、第1樹脂層11よりも無機絶縁粒子31の含有率が高い。第1樹脂層11において、直上部分11aは、その他の部分(例えば側方部分11b)よりも無機絶縁粒子31の含有率が高い。絶縁層15において、第2無機層23は、第2樹脂層21及び第3樹脂層25よりも無機絶縁粒子31の含有率が高い。
上記では、封止部7及び絶縁層15それぞれにおいて、無機層は樹脂層に比較して無機絶縁粒子31の含有率が高いことを述べたが、封止部7及び絶縁層15の双方に着目した場合にも、無機層(13及び23)は樹脂層(11、21及び25)に比較して無機絶縁粒子31の含有率が高くてよい。第1無機層13及び第2無機層23のうちいずれの層において、無機絶縁粒子31の含有率が相対的に高くてもよいが、例えば、両層における無機絶縁粒子31の含有率は概ね同等である。同様に、第1樹脂層11、第2樹脂層21及び第3樹脂層25のうちいずれの層において、無機絶縁粒子31の含有率が相対的に高くてもよいが、例えば、直上部分11aを除いて、これらの層における無機絶縁粒子31の含有率は概ね同等である。
(樹脂の材料)
樹脂29は、複数の層(11、13、21、23及び25)間において、互いに同一の材料であってもよいし、互いに異なる材料であってもよい。ただし、後述する本実施形態の製造方法によって封止部7が作製される場合、第1樹脂層11に含まれる樹脂29と、第1無機層13に含まれる樹脂29とは同一の材料からなり、かつ一体的に成形(硬化)されている。また、第1樹脂層11において、直上部分11aとその他の部分(例えば側方部分11b)とでは、無機絶縁粒子31の含有率が異なるが、樹脂29は、両部分間において同一の材料からなり、かつ一体的に成形(硬化)されている。また、後述する本実施形態の製造方法によって絶縁層15が作製される場合、第2樹脂層21に含まれる樹脂29と、第2無機層23に含まれる樹脂29とは同一の材料からなり、かつ一体的に成形(硬化)されている。
樹脂29は、例えば、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂又はポリイミド樹脂を挙げることができる。樹脂29の熱膨張係数等の物性値は適宜なものであってよい。例えば、熱膨張係数は20ppm/℃以上50ppm/℃以下である。なお、樹脂29の熱膨張係数は、例えば、ベアチップ3の熱膨張係数よりも大きい。
(無機絶縁粒子の材料及び粒径等)
無機絶縁粒子31は、複数の層(11、13、21、23及び25)間において、互いに同一の材料から構成されていてもよいし、互いに異なる材料から構成されていてもよい。大径粒子31A及び小径粒子31Bは、互いに同一の材料から構成されていてもよいし、互いに異なる材料から構成されていてもよい。複数の層(11、13、21、23及び25)間において、大径粒子31Aの粒径の統計値(例えば平均値及び/又は度数分布)は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。同様に、小径粒子31Bの粒径の統計値は、第1無機層13と第2無機層23とで同一であってもよいし、異なっていてもよい。
無機絶縁粒子31は、上記のように無機絶縁材料からなる。無機絶縁材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム又は酸化カルシウムを挙げることができる。なお、低誘電正接及び低熱膨張率等の観点から、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましい。
無機絶縁粒子31の物性値は適宜なものであってよい。ただし、無機絶縁粒子31の熱膨張係数は、少なくとも、その無機絶縁粒子31の周囲の樹脂29(すなわち同一の層の樹脂29)の熱膨張係数よりも小さい。例えば、いずれの層の樹脂29の熱膨張係数も20ppm/℃以上50ppm/℃以下であるのに対して、いずれの層の無機絶縁粒子31の熱膨張係数も0ppm/℃以上15ppm/℃以下である。
第1無機層13又は第2無機層23において、無機絶縁粒子31の粒径の度数分布を測定した場合、大径粒子31Aに対応して度数が高くなる粒径の範囲(ヒストグラムにおける山)と、小径粒子31Bに対応して度数が高くなる粒径の範囲とが存在してもよいし(すなわち2つの山が存在してもよいし)、存在しなくてもよい。好ましくは、2つの山が存在する。2つの山のピークの差は、例えば、100nm以上である。なお、大径粒子31A及び小径粒子31Bが互いに異なる材料からなる場合においては、無機絶縁粒子31の粒径のヒストグラムに1つの山しか現れなくても、両者を区別することができる。
大径粒子31Aの粒径は、例えば、0.5μm以上5.0μm以下(ただし、各層が5.0μm以下の場合は、それよりも小さい値以下)の範囲内にある。なお、偏差が比較的大きい場合においては、平均値又は中央値が上記の範囲内にあり、上記の範囲外の大径粒子31Aが存在してもよい。また、第1無機層13又は第2無機層23においては、2つの度数の山のうち大きい方の山(大径粒子31A及び小径粒子31Bに対応する山のうち大径粒子31Aに対応する山)のピークが上記の範囲内にあってもよい。
小径粒子31Bの粒径は、例えば、3nm以上110nm以下の範囲内にある。なお、偏差が比較的大きい場合においては、平均値又は中央値が上記の範囲内にあり、上記の範囲外の小径粒子31Bが存在してもよい。また、第1無機層13又は第2無機層23においては、2つの度数の山のうち小さい方の山(大径粒子31A及び小径粒子31Bに対応する山のうち小径粒子31Bに対応する山)のピークが上記の範囲内にあってもよい。
また、別の観点では、小径粒子31Bの粒径は、例えば、大径粒子31Aの粒径の1/200以上1/10以下の範囲内にある。なお、この観点においては、例えば、大径粒子31A及び小径粒子31Bの粒径の代表値(平均値又は中央値)を用いて、両粒子の粒径を比較してよい。
なお、無機絶縁粒子31の粒径は、例えば、以下のように測定される。まず、対象となる層(11、13、21、23又は25)の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影する。次に、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定し、該測定された最大粒径をフィラー粒子の粒径とする。大径粒子31Aの粒径の測定と小径粒子31Bの粒径の測定とでは、互いに異なる縮尺の断面画像が用いられてよい。
無機絶縁粒子31の形状は、例えば、概略球形である。ただし、球形に限らず、例えば、鱗片状であってもよい。この場合の粒径も、上記と同様に計測されてよい。
(各層における無機絶縁粒子の含有率)
パッケージ5の複数の層間における無機絶縁粒子31の含有率の異同は上述したとおりである。その具体的な値は、例えば、以下のとおりである。
封止部7の第1樹脂層11における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、70体積%未満である。より具体的には、例えば、第1樹脂層11のうち直上部分11a以外の部分(例えば側方部分11b)における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、25体積%以上55体積%以下である。また、直上部分11aにおける無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、50体積%以上70体積%未満(ただし、側方部分11bにおける無機絶縁粒子31の含有率が50体積%以上の場合はそれよりも大きい含有率)である。
絶縁層15の第2樹脂層21又は第3樹脂層25における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、第1樹脂層11と同様に70体積%未満であり、好ましくは、第1樹脂層11の側方部分11bと同様に55体積%以下である。
封止部7の第1無機層13又は絶縁層15の第2無機層23における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、70体積%以上であり、より具体的には、例えば、70体積%以上80体積%以下である。また、これらの層(11又は15)において、無機絶縁粒子31全体に占める小径粒子31Bの割合は、例えば、20体積%以上40体積%以下である。すなわち、大径粒子31Aの割合は60体積%以上80体積%以下である。
なお、無機絶縁粒子31の含有率(体積%)は、例えば、以下のように測定される。まず、対象となる層(11、13、21、23又は25)の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で撮影する。次に、その撮影した画像に基づいて、画像解析装置によって無機絶縁粒子31の面積比率(面積%)を測定する。この測定を10箇所の断面にて行い、面積比率の平均値を含有量(体積%)として算出する。なお、このときの縮尺は、粒径が小さい無機絶縁粒子31の存在の影響が反映されるように、十分に大きい縮尺(例えば1画素が最小の粒径未満となる縮尺)とされる。
(無機層における3次元網目構造)
第1無機層13又は第2無機層23は、ナノサイズの小径粒子31Bを含んでいること、及び無機絶縁粒子31の含有率が比較的高いことに加えて、無機絶縁粒子31同士が樹脂29によらずに互いに固定されている点も樹脂層(11、21及び25)と相違している。具体的には、以下のとおりである。
図3(a)は、第1無機層13(第2無機層23も同様である)の一部を示す断面図であり、図3(b)は、図3(a)の領域IIIbの拡大図である。なお、小径粒子31Bは、大径粒子31Aに比較して粒径が小さいことから、図3(a)では、個々の小径粒子31Bは図示が省略され、複数の小径粒子31Bの配置領域(後述する3次元網目構造33)にハッチングが付されている。
図3(b)に示されているように、複数の小径粒子31Bは、3次元的に密に配置されているとともに、固定部33aにおいて互いに直接的に固定されている。従って、複数の小径粒子31Bによって一体的な3次元網目構造33(3次元マトリックス構造、3次元骨組構造)が構成され、また、1つ又は少数の3次元網目構造33が第1無機層13の全体に亘って広がっている。
なお、固定部33aにおける直接的な固定は、小径粒子31B同士が直接的に当接して固定されている状態だけでなく、小径粒子31Bの粒径に比較して極めて薄い適宜な材料(ただし、樹脂29は除く。例えば後述する溶剤の残存物)が小径粒子31B間に介在して小径粒子31B同士が固定されている状態も含むものとする。固定部33aは、極めて微細なために、その構造を正確に特定することは極めて困難であるが、後述するパッケージ5の製造方法によって、樹脂29によらずに小径粒子31B同士が互いに固定された3次元網目構造33が現に作製されることが確認されている。
3次元網目構造33は、小径粒子31Bに囲まれた複数の小径空隙35Bを構成している。なお、断面においては、複数の小径空隙35Bは互いに分離しているが、実際には、3次元的に互いに接続されており、第1無機層13全体に対して1つ又は比較的少数の3次元網目状の空隙を構成している。断面における小径空隙35Bの径は、例えば、小径粒子31Bの粒径と概ね同一であり、上述した小径粒子31Bの粒径の説明(例えば3nm以上110nm以下の範囲など)がそのまま当てはまる。
小径空隙35Bには、基本的に樹脂29が充填されている。ただし、複数の小径空隙35Bの一部及び/又は各小径空隙35Bの一部に、完全に樹脂29が充填されずに、気体が存在する、又は真空となっている部分が存在してもよい。
また、図3(b)に示されているように、複数の大径粒子31Aそれぞれには、複数の小径粒子31Bが固定部33bにおいて直接的に固定されている。従って、図3(a)に示されているように、複数の大径粒子31Aは、その間に介在する3次元網目構造33(複数の小径粒子31B)によって互いに固定されている。
なお、ここでいう固定部33bにおける直接的な固定は、固定部33aにおける直接的な固定と同様である。例えば、固定部33bにおける直接的な固定は、大径粒子31Aと小径粒子31Bとが直接的に当接して固定されている状態だけでなく、小径粒子31Bの粒径に比較して極めて薄い適宜な材料(ただし、樹脂29は除く)が介在している状態も含み、また、後述するパッケージ5の製造方法によって現に実現されることが確認されている。
図3(b)に示されているように、大径粒子31Aとその周囲の複数の小径粒子31Bとの間には複数の空隙が形成されている。この大径粒子31Aの周囲の複数の空隙は、断面においては互いに分離しているが、3次元的に互いに直接又は間接につながっており、小径空隙35Bとともに第1無機層13全体に対して1つ又は比較的少数の3次元網目状の空隙を構成している。大径粒子31Aの周囲の複数の空隙は、例えば、小径空隙35Bと概ね同様の大きさであり、また、小径空隙35Bと同様に、基本的に樹脂29が充填されている。なお、以下では、この空隙も小径空隙35Bとして言及する。
このように、第1無機層13は、複数の無機絶縁粒子31(大径粒子31A及び小径粒子31B)が直接的に固定されることによって構成された3次元網目構造の空隙に樹脂29が充填された構成となっている。
図3(a)に示すように、第1無機層13には、比較的径が大きい1以上の大径空隙35Aが形成されていてもよい。大径空隙35Aは、その周囲の小径空隙35Bと通じている。断面において互いに分離している複数の大径空隙35Aは、3次元的に、かつ小径空隙35Bを介さずに直接的に、互いに通じていてもよい。断面における大径空隙35Aの径は、例えば、大径粒子31Aの粒径と同等又はそれ以上である。
なお、以下では、大径空隙35Aと小径空隙35Bとを区別せずに、単に空隙35ということがある。
(電子部品1の製造方法)
図4(a)〜図6(d)は、電子部品1の製造方法の手順を説明するための模式的な断面図である。製造工程(ステップ)は、図4(a)から図6(d)へ順に進む。なお、以下では、製造工程の進行に伴って材料又は部材の状態又は形状が変化しても、便宜上、同一の符号を用いることがある。
図4(a)では、第1支持具41上に第1支持体43が配置され、さらにその上に複数のベアチップ3が配置される。
第1支持具41は、例えば、第1支持体43が配置される平坦な上面を有している。当該上面は、例えば、ガラス基板等の比較的変形が小さい部材によって構成されている。なお、第1支持具41は、ヒータ等を内蔵していてもよい。
第1支持体43は、例えば、粘着剤が塗布された樹脂シートから構成され、又は接着材若しくは粘着材が第1支持具41の上面に塗布されて形成されている。そして、第1支持体43は、複数のベアチップ3を第1支持具41の上面に対して固定する。
ベアチップ3は、公知の方法によって製造されてよい。例えば、まず、シリコンウェハに対してドーピング及び薄膜形成等を行い、ウェハ状態の複数のベアチップ3を形成する。その後、そのウェハをダイシングして個片化する。これにより、複数のベアチップ3が作製される。
複数のベアチップ3は、パッド3pが形成されている第2主面3bを第1支持体43の上面に対向させて配置される。また、複数のベアチップ3は、例えば、縦横に(複数行×複数列で)第1支持体43の上面に配列される。なお、行数及び列数は適宜に設定されてよい。好適には、上述したシリコンウェハから切り出されるベアチップ3の数と同数のベアチップ3が第1支持体43上に配置される。
図4(b)では、複数のベアチップ3が配置された第1支持体43上に、未硬化状態の封止材45が供給される。
封止材45は、少なくとも第1樹脂層11を構成するものであり、また、本実施形態では、後述するように第1無機層13の一部(例えば樹脂29)も構成する。封止材45は、未硬化状態の樹脂29と、樹脂29に混ぜ込まれた複数の無機絶縁粒子31とを含んでいる。樹脂29及び無機絶縁粒子31の形成方法は公知の方法と同様でよい。
未硬化状態の封止材45は、第1樹脂層11等の形成に十分な量で供給されれば、その配置位置及び配置直後の形状等は適宜に設定されてよい。例えば、未硬化状態の封止材45は、第1支持体43上の複数のベアチップ3のうち一部のみを覆っていてもよいし、第1支持体43上の全てのベアチップ3を覆っていてもよい。また、封止材45の供給方法も適宜なものとされてよい。例えば、ディスペンサやスクリーン印刷によって液状の封止材45が供給されてもよいし、加熱により液状の封止材45になるシート状成形体が配置されてもよい。
図4(c)(及びこれに続く図5(a))では、第1支持体43上に供給された未硬化状態の封止材45が第1無機層前駆体51によって押圧される。
これにより、未硬化状態の封止材45は、付与された圧力によって第1支持体43(及び複数のベアチップ3)と第1無機層前駆体51との間の隙間に広がる(充填される)。また、第1無機層前駆体51下の封止材45の厚さは、第1樹脂層11の厚さと概ね同等とされる。
第1無機層前駆体51は、後に第1無機層13となる層である。第1無機層前駆体51は、例えば、第2支持体49に保持されており、第2支持体49は第2支持具47に保持されている。第2支持具47及び第2支持体49の構成は、例えば、第1支持具41及び第1支持体43の構成と同様でよい。また、第2支持体49は、第1無機層前駆体51を作製する際に、第1無機層前駆体51となる無機絶縁ゾル(後述)が塗布される層(例えば金属箔)を含んで構成されていてもよい。
図5(a)では、第1無機層前駆体51による押圧が完了した未硬化状態の封止材45(樹脂29)が硬化される。
例えば、樹脂29は熱硬化性樹脂であり、不図示のヒータによって第1支持具41の上面を構成する部材及び第2支持具47の下面を構成する部材が加熱され、ひいては、樹脂29が加熱される。なお、加熱は、第1無機層前駆体51による封止材45の加圧が完了する以前に開始されていてもよい。
封止材45が硬化することによって、図5(a)及び図5(b)の符号の比較から理解されるように、第1無機層前駆体51(第1無機層13)下においては第1樹脂層11(ただし、個片化前のもの)が形成される。また、後述するように、第1無機層前駆体51は第1無機層13(ただし、個片化前のもの)となる。また、複数のベアチップ3は、個片化前の第1樹脂層11及び第1無機層13によって互いに固定される。すなわち、複数のベアチップ3、第1樹脂層11及び第1無機層13からなる第1母基板53が作製される。
図5(b)では、第1支持体43が複数のベアチップ3及び第1樹脂層11から除去されるとともに、第2支持体49が第1無機層13から除去される。
支持体の除去は、剥離によるものであってもよいし、支持体を溶融させたり、薬液に溶かしたりすることによって除去するものであってもよい。また、支持体が除去された面は、適宜に洗浄及び/又は研削若しくは研磨が行われてもよい。
図5(c)(及びこれに続く図5(d))に示すように、第1母基板53の、第2主面3b側の面には、絶縁層15(ただし、個片化前のもの)が配置される。これにより、第1母基板53及び絶縁層15からなる第2母基板57が作製される。
具体的には、例えば、絶縁層15は、予め(第1母基板53への配置前に)第2樹脂層21、第2無機層23及び第3樹脂層25が積層されて作製されている。ただし、第2樹脂層21及び第3樹脂層25のうち少なくとも第2樹脂層21においては、樹脂29は完全には硬化されておらず、ある程度の粘度を有した未硬化状態で層状に形成されている。例えば、第2樹脂層21は、ISO472:1999に準ずるA−ステージ又はB−ステージのものである。そして、第2樹脂層21を第1母基板53に当接させ、第1母基板53及び絶縁層15を加熱しつつ加圧する。これにより、絶縁層15が第1母基板53に固定される。
絶縁層15は、例えば、第3支持体55によって保持されている。第3支持体55は、例えば、第1支持体43と同様のものであってもよいし、絶縁層15を作製する際に、第3樹脂層25となる封止材が塗布される層(例えば金属箔)を含んで構成されていてもよい。
図5(d)では、第2母基板57から第3支持体55が除去される。支持体の除去は、剥離によるものであってもよいし、支持体を溶融させたり、薬液に溶かしたりすることによって除去するものであってもよい。また、支持体が除去された面は、適宜に洗浄及び/又は研削若しくは研磨が行われてもよい。
図6(a)では、接続導体17のための貫通孔15hが第2母基板57に形成される。貫通孔15hは、公知の方法によって形成されてよく、例えば、フォトレジストからなるマスクを介したエッチングによって形成される。
図6(b)では、貫通孔15hに接続導体17が設けられる。接続導体17は、公知の方法によって形成されてよく、例えば、めっき法によって金属が貫通孔15hに充填されることによって形成される。
図6(c)では、接続導体17の絶縁層15から露出する表面上に、バンプ19が形成される。バンプ19は、公知の方法によって形成されてよく、例えば、スクリーン印刷によって半田ペーストが供給され、半田ペーストが加熱処理されることによって形成される。
図6(d)では、バンプ19が設けられた第2母基板57をダイシングして個片化する。これにより、電子部品1が作製される。なお、ダイシングは、公知の方法によって行われてよく、例えば、図示のようにダイシングブレード59によって行われてもよいし、レーザによって行われてもよい。
(封止材の押圧の詳細)
図7(a)及び図7(b)は、封止材45を第1無機層前駆体51によって押圧するとき(図4(c)及び図5(a))の封止材45及び第1無機層前駆体51の模式的な拡大断面図である。なお、この図では、便宜上、断面を示すハッチングを省略している。また、他の図と同様に、無機絶縁粒子31の寸法等は現実のものとは一致していない。
第1無機層前駆体51は、第1無機層13において、小径空隙35B及び大径空隙35Aに樹脂29が充填されていない状態のものである。従って、第1無機層前駆体51によって封止材45を押圧する工程が所定の気体(例えば空気又は窒素)の雰囲気下で行われる場合は、押圧の直前において、空隙35には、その気体が存在している。また、押圧する工程が真空雰囲気で行われる場合は、押圧の直前において、空隙35は真空となっている。
図7(a)に示すように、第1無機層前駆体51による押圧前において、封止材45においては、無機絶縁粒子31の分布は、概ね一様となっている。すなわち、ベアチップ3の側方(側方部分11bが形成される領域)と、ベアチップ3の直上(直上部分11aが形成される領域)とで、無機絶縁粒子31の分布は同様である。
図7(b)に示すように、第1無機層前駆体51によって封止材45が押圧されると、矢印y1で示すように、封止材45における未硬化状態の樹脂29が第1無機層前駆体51の空隙35に流れ込む。従って、その後に樹脂29(封止材45)が硬化されると、空隙35に樹脂29が充填された第1無機層13が形成される。また、樹脂29は、第1樹脂層11及び第1無機層13に亘って同一材料によって一体的に成形されることになる。
ここで、第1無機層前駆体51は、小径粒子31Bを含むとともに、無機絶縁粒子31が互いに直接的に固定されるほどに密に配置されており、空隙35(特に小径空隙35B)は比較的小さい。従って、封止材45の樹脂29が空隙35に流れ込む一方で、封止材45の無機絶縁粒子31(大径粒子31A)は、空隙35に流れ込まない、又は極めて流れ込みにくい。その結果、第1無機層前駆体51下においては、樹脂29及び無機絶縁粒子31の体積のうち樹脂29の体積のみが減じられる。ひいては、封止材45における無機絶縁粒子31の含有率が高くなる。
ベアチップ3の直上領域における封止材45の厚さは、ベアチップ3の厚さに起因して、ベアチップ3の側方領域における封止材45の厚さよりも薄い。従って、直上領域においては、側方領域に比較して、空隙35に流れ込む樹脂29の、封止材45の厚さに対する相対量が大きい。その結果、直上領域においては、側方領域に比較して無機絶縁粒子31の含有率が高くなりやすい。
及び/又は、押圧前の封止材45の表面は、ベアチップ3の直上領域において相対的に上方に位置しやすい。従って、第1無機層前駆体51によって封止材45を押圧するとき、ベアチップ3の側方領域の樹脂29よりも直上領域の樹脂29が空隙35へ流れ込みやすい。また、ベアチップ3の直上領域から空隙35を介してベアチップ3の側方領域へ樹脂29が流れ込みやすい。その結果、直上領域においては、側方領域に比較して無機絶縁粒子31の含有率が高くなりやすい。
上記のような作用の結果、第1樹脂層11において、直上部分11aは、側方部分11bよりも無機絶縁粒子31の含有率が高くなる。ただし、封止材45は、基本的に小径粒子31Bを有していないことから、直上部分11aにおける含有率は、第1無機層13における含有率を超えない。
なお、図7(a)の封止材45が押圧されていない状態において、封止材45における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、樹脂29が硬化した後の側方部分11bにおける無機絶縁粒子31の含有率(例えば25体積%以上55体積%以下)と概ね同等でよく、また、硬化による影響及び/又は押圧による影響を考慮して、当該含有率よりも若干低くてもよい。封止材45における無機絶縁粒子31の含有率の調整は、公知の方法によってなされてよい。
また、第1無機層前駆体51における無機絶縁粒子31の含有率は、例えば、第1無機層13における無機絶縁粒子31の含有率(例えば70体積%以上80体積%以下)と同等とされている。換言すれば、100%から無機絶縁粒子31の含有率を差し引いた割合(例えば20体積%以上30体積%以下)は、空隙35が存在する割合である。そして、この空隙35に樹脂29が流れ込むことなどにより、直上部分11aとなる封止材45(硬化前)における無機絶縁粒子31の含有率は、直上部分11a(硬化後)における無機絶縁粒子31の含有率(例えば50体積%以上70体積%未満)となる。
第1無機層13が薄すぎると、第1無機層13に流れ込む樹脂29の量が少なく、ひいては、直上部分11aにおいて無機絶縁粒子31の含有率が高くなる効果が小さい。一方、第1無機層13が厚すぎると、第1無機層13が樹脂29を吸収し過ぎ、直上部分11aにボイドが発生するおそれがある。従って、第1無機層13の厚さ:直上部分11aの厚さは、既述のように50:50〜80:20であることが好ましい。
(第1無機層前駆体の形成)
第1無機層前駆体51及びこれに含まれる無機絶縁粒子31は、例えば、特許文献2及びその他特許文献において本願出願人によって公開されている方法又は当該方法から推測される方法によって作製されてよい。その概略は以下のとおりである。
例えば、第1無機層前駆体51は、大径粒子31A及び小径粒子31Bと溶剤とを有する無機絶縁ゾルを金属箔等からなる支持体上に塗布し、加熱によって溶剤を蒸発させることによって作製される。ただし、焼結体を形成するときのような高温での加熱は行われない。従って、複数の無機絶縁粒子31は、互いに結合されつつも、粒界は基本的に維持され、アモルファス状態が保たれる。これにより、複数の無機絶縁粒子31による3次元網目構造が実現される。
なお、加熱温度は、溶剤の残存を低減する観点から、溶剤の沸点以上であることが好ましい。また、加熱温度は、焼結の進行を抑制する観点から、結晶化開始温度未満である。このように加熱温度が低温であっても、小径粒子31Bの粒径が比較的小さいことなどから、複数の無機絶縁粒子31は互いに固定される。例えば、無機絶縁粒子31の材料が酸化ケイ素(結晶化開始温度:約1300℃)である場合、小径粒子31Bの粒径が110nm以下に設定されているときは250℃程度の加熱温度を用いることができ、また、小径粒子31Bの粒径が15nm以下に設定されているときは150℃程度の加熱温度を用いることができる。
大径粒子31Aは、酸化ケイ素から成る場合、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を低減しつつ加熱することにより、作製することができる。小径粒子31Bは、酸化ケイ素から成る場合、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化ケイ素を析出させることにより、作製することができる。小径粒子31Bの粒径は、酸化ケイ素の析出時間を短くすることによって小さくされる。
(絶縁層の形成)
絶縁層15及び絶縁層15に含まれる無機絶縁粒子31は、例えば、特許文献2及びその他特許文献において本願出願人によって公開されている方法又は当該方法から推測される方法によって作製されてよい。その概略は以下のとおりである。
絶縁層15の第2無機層23は、例えば、まず、第1無機層前駆体51と同様の前駆体が形成され、その後、図5(c)の絶縁層15を第1母基板53に接着させるステップ等において、前駆体の空隙35に第2樹脂層21の樹脂29が流れ込み、かつ硬化されることによって形成される。従って、樹脂29は、第2樹脂層21及び第2無機層23に亘って同一材料によって一体的に成形される。
なお、図5(c)の絶縁層15を第1母基板53に接着させるステップの直前において、第2樹脂層21だけでなく、第3樹脂層25も未硬化状態(例えばA−ステージ又はBステージ)とされていてよい。この場合、絶縁層15を第1母基板53に接着させる際、第3樹脂層25の樹脂29も第2無機層23の空隙35に流れ込み、かつ硬化される。そして、樹脂29は、第3樹脂層25及び第2無機層23(の一部)に亘って同一材料によって一体的に成形される。
第2樹脂層21、第2無機層23及び第3樹脂層25(これらの前駆体を含む)は、互いに別個に形成されてから積層されてもよいし、積層されつつ形成されてもよい。例えば、第2無機層23の前駆体を第1無機層前駆体51と同様に形成した後、その両面に第2樹脂層21及び第3樹脂層25を重ねてもよい。また、例えば、金属箔などからなる支持体上に、第3樹脂層25となる樹脂29を塗布し、その上に第2無機層23の前駆体となる無機絶縁ゾルを塗布し、その上に第2樹脂層21となる樹脂29を塗布してもよい。
以上のとおり、本実施形態では、電子部品1は、ベアチップ3と、ベアチップ3を封止しており、樹脂29と複数の無機絶縁粒子31とが混在している材料からなるパッケージ5と、を有している。パッケージ5は、ベアチップ3の側方に位置している側方部分11bと、ベアチップに対して一方の主面(例えば第1主面3a)が面する側に位置しており、側方部分11bよりも複数の無機絶縁粒子31の含有率が高い高含有率部(例えば直上部分11a及び/又は第1無機層13)を有している。
従って、ベアチップ3を好適に封止できる。例えば、ベアチップ3は、通常、薄型形状であることから、第1主面3aにおいてベアチップ3とパッケージ5との間で生じる熱応力(又は熱応力に起因する残留応力)は、側面3cにおいて生じる熱応力に比較して、ベアチップ3の全体に付与されやすい。そこで、一般に熱膨張係数の低下のために樹脂29に混入される無機絶縁粒子31の含有率をベアチップ3の直上において高くすることによって、熱応力によってベアチップ3の電気特性が低下するおそれを低減できる。その一方で、側方部分11bにおいては、無機絶縁粒子31の含有率が相対的に低くされるから、例えば、無機絶縁粒子31の誘電率が高い場合において、ベアチップ3の側方に位置する他の電子部品との間に浮遊容量が生じるおそれを低減できる。また、例えば、ベアチップ3の直上においては、樹脂29にクラックが発生したとしても、そのクラックの伸長が無機絶縁粒子31によって低減される。その結果、例えば、水分等の侵入が抑制される。また、例えば、第1無機層前駆体51のような構造のみによってパッケージングする場合に比較して、隙間なくベアチップ3を囲むことができる。また、例えば、電子部品1は、本実施形態の製造方法によって作製可能であり、後述する本実施形態の製造方法の効果が潜在的に奏される。
また、本実施形態では、パッケージ5は、側方部分11bを含み、複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%未満の第1樹脂層11と、ベアチップ3及び第1樹脂層11に対して一方の主面(例えば第1主面3a)が面する側に位置しており、複数の無機絶縁粒子31として粒径が1μm未満の複数のナノ粒子(小径粒子31B)を含んでおり、かつ複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%以上の第1無機層(例えば第1無機層13)と、を有している。第1無機層13は、前記の高含有率部の少なくとも一部を構成している。
従って、高含有率部は、極めて高い含有率で無機絶縁粒子31を有しており、上述の効果がより奏される。第1無機層13が小径粒子31Bを含んでいることから、高い含有率の実現が可能である。また、無機絶縁粒子31同士が樹脂29によらずに直接的に固定されている場合においては、パッケージ5全体としての剛性の向上が期待される。
また、本実施形態では、樹脂29は、第1樹脂層11及び第1無機層13に亘って同一材料によって一体的に成形されている。
従って、第1樹脂層11及び第1無機層13は、無機絶縁粒子31の含有率等が互いに異なっているにも関わらず、樹脂29については一体的に成形されており、剥離のおそれが低減される。
また、本実施形態では、第1樹脂層11は、ベアチップ3の第1主面3aと第1無機層13との間に位置している直上部分11aを更に含んでいる。樹脂29は、側方部分11b及び直上部分11aに亘って同一材料によって一体的に成形されている。直上部分11aは、側方部分11bよりも複数の無機絶縁粒子31の含有率が高い。すなわち、直上部分11a及び第1無機層13は、側方部分11bよりも無機絶縁粒子31の含有率が高い高含有率部を構成している。
従って、ベアチップ3の直上においては、全体的に(第1無機層13及び第1樹脂層11(直上部分11a)の双方において)無機絶縁粒子31の含有率が高くされつつも、第1無機層13とベアチップ3との間に比較的樹脂29の多い第1樹脂層11(直上部分11a)が配置される。その結果、例えば、第1無機層13及びベアチップ3に比較してヤング率が低い直上部分11aによって第1無機層13とベアチップ3との間に緩衝部が構成されることになり、ベアチップ3が好適に保護される。
また、本実施形態では、側方部分11bにおける複数の無機絶縁粒子31の含有率が25体積%以上55体積%以下であり、直上部分11aにおける複数の無機絶縁粒子31の含有率が50体積%以上70体積%未満であり(ただし、側方部分11bにおける含有率が50体積%以上の場合は、その含有率よりも高い)、第1無機層13における複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%以上80体積%以下である。
このような無機絶縁粒子31の含有率であれば、例えば、第1無機層13及び直上部分11aにおいて含有率が高いことによる熱応力乃至は残留応力の緩和の効果、及び樹脂29が封止部7(第1無機層13、直上部分11a及び側方部分11b)に亘って一体的に成形されていることによる剥離抑制の効果等が好適に奏される。
また、本実施形態では、ベアチップ3及び側方部分11bに対してベアチップ3の他方の主面(例えば第2主面3b)が面する側から重なっている絶縁層15を更に有している。絶縁層15は、ベアチップ3側から他方の主面(第2主面3b)が面する側へ順に、第2樹脂層21(複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%未満)と、第2無機層23(複数の無機絶縁粒子31として粒径が1μm未満の複数の小径粒子31Bを含んでおり、かつ複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%以上)と、第3樹脂層25(複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%未満)と、を有している。
従って、例えば、ベアチップ3に対して第1無機層13とは反対側にも第1無機層13と同様の第2無機層23が設けられることになり、対称性が向上する。その結果、例えば、ベアチップ3を撓ませるような熱応力又は残留応力が生じるおそれが低減される。また、絶縁層15において、第2無機層23のみを設けるのではなく、第2樹脂層21及び第3樹脂層25を設けることから、例えば、絶縁層15のベアチップ3に対する密着性を向上させたり、外面(第3樹脂層25)の取り扱い性を向上させたりすることができる。
また、本実施形態では、ベアチップ3は、第2主面3bにパッド3pを有している。電子部品1は、絶縁層15に設けられており、パッド3pに接続されるとともに絶縁層15からベアチップ3とは反対側に露出している接続導体17と、接続導体17の絶縁層15から露出している部分に配置されている導電性のバンプ19と、を更に有している。
従って、例えば、実装に供される部分に、第2無機層23を含むことによって熱膨張係数が低い絶縁層15が用いられることになる。その結果、例えば、実装の際の熱膨張によって実装の精度が低下したり、実装後の残留応力が大きくなったりするおそれが低減される。
また、別の観点では、本実施形態の電子部品1の製造方法は、ベアチップ3と、ベアチップ3を封止しており、樹脂29と複数の無機絶縁粒子31とが混在している材料からなるパッケージ5とを有している電子部品1の製造方法であって、第1支持体43上に複数のベアチップ3を配置するステップ(図4(a))と、複数のベアチップ3が配置された第1支持体43上に、未硬化状態の樹脂29を含む封止材45を供給するステップ(図4(b))と、複数の無機絶縁粒子31の含有率が封止材45よりも高い第1無機層13(厳密には第1無機層前駆体51)によって、第1支持体43上の、未硬化状態の封止材45を第1支持体43側へ押圧するステップ(図4(c)及び図5(a))と、第1無機層13で押圧された封止材45上に第1無機層13を配置したまま、封止材45を硬化させることにより、第1無機層13下で硬化した封止材45からなる第1樹脂層11と第1無機層13とを含むパッケージ5の少なくとも一部を形成するステップ(図5(a))と、を有している。
このような製造方法によれば、例えば、上述した種々の効果を有する電子部品1を実現できる。また、例えば、第1無機層13で封止材45を押圧して成形を行い、その第1無機層13がそのままパッケージ5となることから、第1支持具41と第2支持具47とによる圧縮力を解除しても、熱膨張係数が相対的に低い第1無機層13によって第1母基板53の反りが低減される。その結果、例えば、絶縁層15を貼り合わせるとき(図5(c))に第1母基板53が割れるおそれ、及び絶縁層15に接続導体17及びバンプ19を設けるとき(図6(a)〜図6(c))にその精度が低下するおそれが低減される。
また、本実施形態では、押圧するステップの前(図7(a))において、第1無機層13は、気体が存在する、又は真空の空隙35を複数の無機絶縁粒子31間に有しており、押圧ステップ(図7(b))では、封止材45の樹脂29が空隙35に流れ込む。
従って、例えば、第1無機層13自体によってベアチップ3の第1主面3a側における熱膨張係数を下げることができるだけでなく、樹脂29を第1無機層13に流れ込ませることによって直上部分11aの熱膨張係数も下げることができる。その一方で、例えば、封止材45のうち第1無機層13から離れた部分においては、樹脂29の流動性を維持することができ、パッケージ5をベアチップ3に密着させることが容易化される。
また、本実施形態では、電子部品1の製造方法は、ベアチップ3及び第1樹脂層11から第1支持体43を除去するステップ(図5(b))と、ベアチップ3及び第1樹脂層11の第1支持体43が除去された面(第2主面3b等)に、パッケージ5の他の一部を構成する絶縁層15を設けるステップ(図5(c))と、を更に有している。絶縁層15を設けるステップでは、第2樹脂層21(複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%未満)と、第2無機層23(複数の無機絶縁粒子31として粒径が1μm未満の複数の小径粒子31Bを含んでおり、かつ複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%以上)と、第3樹脂層25(複数の無機絶縁粒子31の含有率が70体積%未満)と、が順に積層されて構成されている絶縁層15を、第1支持体43が除去された面に密着させる。
従って、例えば、予め第2無機層23を含んで熱膨張係数が低くされた絶縁層15が第1母基板53に貼り付けられることになる。その結果、例えば、第1母基板53に貼り付けられる第2樹脂層21の硬化収縮によって残留応力が生じるおそれが低減される。
なお、以上の実施形態において、ベアチップ3の第1主面3aはベアチップの一方の主面の一例であり、直上部分11a及び/又は第1無機層13は、高含有率部の一例であり、第1無機層13は第1無機層の一例である。ただし、例えば、請求項1及び2に関しては、ベアチップ3の第2主面3bがベアチップの一方の主面の一例であるとともに、第2無機層23が高含有率部及び第1無機層の一例であると捉えることも可能である。また、小径粒子31Bは、ナノ粒子の一例である。
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る電子部品201の構成を示す、図1に対応する断面図である。
電子部品201のパッケージ205においては、封止部207の構成のみが第1実施形態と相違する。具体的には、封止部207において、第1無機層13は、第1樹脂層211を介在させずに、ベアチップ3の第1主面3aに直接的に重ねられている。別の観点では、第1樹脂層211は、第1実施形態の直上部分11aを有しておらず、側方部分11bのみを有している。
このような構成は、例えば、第1実施形態の製造方法において、例えば、第1無機層13(第1無機層前駆体51)によって封止材45を押圧する際(図4(d)及び図5(a))に、第1無機層13がベアチップ3に当接するまで押圧を継続すればよい。また、ベアチップ3上の樹脂29を第1無機層13が吸収しやすいように第1無機層13を厚く形成するなどしてもよい。また、ベアチップ3上に位置する封止材45の無機絶縁粒子31が第1無機層13とベアチップ3との間に残存しないように、封止材45の無機絶縁粒子31の含有率を低くしたり、封止材45を樹脂29のみから構成したりしてもよい。
なお、ベアチップ3と第1無機層13との間に、封止材45の無機絶縁粒子31が残存しているか否か、明確でなくても、第1無機層13によって封止材45を押圧するのであれば、必ず第1実施形態及び第2実施形態の一方に該当する。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、パッケージ5は、ベアチップ3の側方に位置している側方部分(本実施形態では第1樹脂層211の全体)と、ベアチップ3の一方の主面(例えば第1主面3a)側に位置しており、側方部分よりも複数の無機絶縁粒子31の含有率が高い高含有率部(例えば第1無機層13)を有している。
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、熱応力又は残留応力によってベアチップ3の電気特性が低下するおそれを低減できる。また、第1実施形態に比較して、ベアチップ3の直上に第1無機層13のみが存在することから、熱膨張係数をより低くすることができる。なお、第1実施形態は、本実施形態に比較して、パッケージ5のベアチップ3に対する密着性等において有利である。
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態に係る電子部品301の構成を示す、図1に対応する断面図である。
本実施形態のパッケージ305では、第1実施形態における第1樹脂層11及び第1無機層13に相当する第1樹脂層311及び第1無機層313がベアチップ3の第2主面3b側に設けられている。そして、これらの層に接続導体17及びバンプ19が設けられている。なお、図示の例では、第1無機層313の第1樹脂層311とは反対側に付加樹脂層325が設けられているが、付加樹脂層325は設けられなくてもよい。
このような電子部品301の製造方法は、図4(a)〜図4(c)において、ベアチップ3の上下の向きを第1実施形態と逆にすればよい。すなわち、図4(a)において、ベアチップ3の第1主面3aを第1支持体43に対向させるようにして複数のベアチップ3を第1支持体43に配置し、ベアチップ3の第2主面3b側に封止材45を配置し、この封止材45を第1無機層313(その前駆体を含む)によって押圧すればよい。その後、第1無機層313の上に付加樹脂層325を適宜な方法によって形成し、図6(a)以降と同様の工程を行う。なお、第1支持体43の除去は、第1実施形態と異なり、接続導体17及びバンプ19の形成後に行うことも可能である。
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、パッケージ5は、ベアチップ3の側方に位置している側方部分311bと、ベアチップ3に対して一方の主面(第2主面3b)が面する側に位置しており、側方部分311bよりも複数の無機絶縁粒子31の含有率が高い高含有率部(例えば直上部分311a及び/又は第1無機層313)を有している。従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、熱応力又は残留応力によってベアチップ3の電気特性が低下するおそれを低減できる。
なお、特に図示しないが、第3実施形態において、第2実施形態と同様に、第1無機層313がベアチップ3の第2主面3bに対して第1樹脂層311を介在させずに直接的に重なるようにしてもよい。
なお、第3実施形態において、直上部分311a及び/又は第1無機層313は高含有率部の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
実施形態では、封止材45を押圧する第1無機層13(第1無機層前駆体51)は、無機絶縁粒子31同士が直接的に固定されて構成されており、また、空隙35は、封止材45の樹脂29が流れ込むことが可能となっていた。しかし、封止材45を押圧する第1無機層は、空隙35に予め樹脂が充填されたものであってもよいし、また、無機絶縁粒子31同士が直接的に固定されて構成されたものではなく、樹脂に無機絶縁粒子が混ぜ込まれて形成されたものであってもよい。ただし、この場合、封止材45の樹脂29が第1無機層に流れ込む作用は生じないから、第1樹脂層11の直上部分11aにおける無機絶縁粒子31の含有率は側方部分11bと同等であり、第1無機層及び直上部分11aのうち第1無機層のみが高含有率部を構成する。同様に、第2無機層(23)は、第1樹脂層(21)の樹脂とは異なる材料の樹脂を含むものであってもよいし、無機絶縁粒子同士が直接的に固定されていないものであってもよい。
無機絶縁粒子として粒径が1μm未満のナノ粒子を含み、かつ無機絶縁粒子の含有率が70体積%以上の無機層は、設けられなくてもよい。すなわち、パッケージにおいて、ベアチップの側方部分よりも無機絶縁粒子の含有率が高い高含有率部は、ナノ粒子を含まず、及び/又は、無機絶縁粒子の含有率が70体積%未満の樹脂層のみから構成されていてもよい。なお、ナノ粒子を含まずに含有率70体積%以上を実現することは、通常は困難である。
実施形態で示した各部の含有率(例えば、直上部分11aについて50体積%以上70体積%未満)は、一例に過ぎず、適宜に変更されてよい。
第1及び第2実施形態のようにベアチップのパッドとは反対側に高含有率部を設ける場合において、パッケージの配線層(9)は、高含有率部を含んでいなくてもよい。
実施形態では、ベアチップ3のパッド3pとバンプ19とを接続する接続導体17は、貫通導体のみによって接続されたが、接続導体は、ベアチップの主面に平行な導電層を含んでいてもよい。