JP6788212B2 - 非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
(1)ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物を含有し、次の(A)又は(B)を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
(A)前記xの値がx1及びx2(但し、x1>x2)であるときの、透過法により取得した前記正極活物質のNi−K吸収端XANESスペクトルより得られるNi−K吸収端エネルギーをそれぞれEbx1及びEbx2とし、前記xの値がx3及びx4(但し、x3>x4)であるときの、転換電子収量法より取得した前記正極活物質のNi−K吸収端XANESスペクトルより得られるNi−K吸収端エネルギーをそれぞれEsx3及びEsx4とし、Δxb=x1−x2、Δxs=x3−x4、ΔEb=Ebx1−Ebx2、ΔEs=Esx3−Esx4としたとき、1.0≦(ΔEb/Δxb)/(ΔEs/Δxs)≦ 1.2を満たす。
(B)前記xの値がx5及びx6(但し、x5>x6)であるときの、蛍光量子収量法により取得した前記正極活物質のNi−L吸収端XANESスペクトルにおけるピーク強度比の差分(b/a)x6−(b/a)x5をΔEbulkとし、前記xの値がx7及びx8(但し、x7>x8)であるときの、全電子収量法より取得した前記正極活物質のNi−L吸収端XANESスペクトルにおけるNi−L吸収端エネルギーのピーク強度比の差分(b/a)x7−(b/a)x8をΔEsurとしたとき、0.7≦(ΔEsur/ΔEbulk)≦ 1.0を満たす。但し、aは軟X線を用いたXAS測定により取得したNi−L吸収端スペクトルにおける854eV付近のピーク強度であり、bは前記Ni−L吸収端スペクトルにおける856eV付近のピーク強度である。
(2)上記(1)に記載の正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極。
(3)上記(2)に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池。
正極活物質の主成分とする化合物としては、ニッケルを含むリチウム遷移金属複合酸化物であれば、限定されない。なかでも、遷移金属Meに対するNiのモル比が0.2以上であるリチウム遷移金属複合酸化物であれば、上記(A)又は(B)を満たすことの確認が確実に行えるため、好ましい。ここで、遷移金属Meを構成するNi以外の元素としては、Co,Mn,Fe,Ti,Zr,Al,Mg,Cr,V,W等が例示される。一例として、一般式LixNiyMe1−yO2(0.5≦x≦1.5、0.2≦y)として表記することができる化合物が挙げられる。より具体的には、LiNiO2、LiNi0.7Mn0.3O2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li1.4Ni0.20Co0.12Mn0.68O2等のα―NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、LiNi0.5Mn1.5O4等のスピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質は、本発明のリチウムイオン二次電池を構成する正極に使用される。前記正極活物質は、遷移金属Meに対するMnのモル比が0.3以上であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池を構成する負極に使用する負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、限定されない。例えば、炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。 炭素質材料としては、グラファイト(黒鉛)、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらの中でもグラファイトは、金属リチウムに極めて近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電を実現できるため負極活物質として好ましく、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。特に、負極活物質粒子表面を不定形炭素等で修飾してあるグラファイトは、充電中のガス発生が少ないことから望ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。なかでも炭素質材料又はリチウム複合酸化物が安全性の点から好ましく用いられる。
正極活物質、及び負極活物質は正極及び負極の主要成分であるが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
本発明に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されず、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフランまたはその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソランまたはその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトンまたはその誘導体等の単独またはそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
本発明の非水電解質二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池等が一例として挙げられる。
図5に角型電池の一例を示す。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極よりなる電極群2が角型の電池容器3に収納され、正極リード4’を介して正極端子4が、負極リード5’を介して負極端子5が電池容器外に導出されている。
本発明の非水電解質二次電池は、特に電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源として用いる場合に、複数の非水電解質二次電池を集合して構成した蓄電装置(バッテリーモジュール)として搭載することができる。
図6に、非水電解質二次電池1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。
1.235mmol(51.82mg)のLiOH・H2O、0.62mmol(114.11mg)のNa4SiO4及び0.62mmol(94.18mg)のFeSO4をイオン交換水30.0gに加えて溶解させた水溶液を作製した。前記水溶液のpHは12である。水熱合成用の反応槽に、前記水溶液、及び、α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物の粉末10gを投入して密閉し、撹拌しながら、水熱合成を実施した。反応温度は150℃、反応時間は12時間とした。反応生成物を濾別、水洗、乾燥し、前記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に1wt%のLi2FeSiO4が付与された正極活物質を得た。
2.47mmolのLiOH・H2O、1.24mmolのNa4SiO4及び1.24mmolのFeSO4をイオン交換水30.0gに加えて溶解させた水溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様の処方で、前記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に2wt%のLi2FeSiO4が付与された正極活物質を得た。
4.94mmolのLiOH・H2O、2.48mmolのNa4SiO4及び2.48mmolのFeSO4をイオン交換水30.0gに加えて溶解させた水溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様の処方で、前記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に4wt%のLi2FeSiO4が付与された正極活物質を得た。
前記α−NaFeO2型結晶構造を有し、組成式LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物の粉末をそのまま正極活物質とした。
9.88mmolのLiOH・H2O、4.96mmolのNa4SiO4及び4.96mmolのFeSO4をイオン交換水30.0gに加えて溶解させた水溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様の処方で、前記リチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に8wt%のLi2FeSiO4が付与された正極活物質を得た。
上記実施例及び比較例に係る正極活物質をそれぞれ用いて、次の手順で正極板を作製した。それぞれの正極活物質を5.4g秤量し、前記正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を固形分として93:3:4の質量比率で含有し、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極ペーストを作製し、厚み20μmのAl箔集電体の両面に塗布、乾燥し、ローラープレス機により加圧成形して正極合剤層を形成した後、150℃で14時間減圧乾燥した。このようにして正極板を作製した。
負極活物質としてグラファイトを2.7g秤量し、前記負極活物質、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を固形分として96.7:2.1:1.2の質量比率で含有し、水を溶剤とする負極ペーストを作製し、厚み10μmのCu箔集電体の両面に塗布、乾燥し、ローラープレス機により加圧成形して負極合剤層を形成した後、25℃で14時間減圧乾燥した。このようにして負極板を作製した。
ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して前記正極板と前記負極板を積層し、扁平形状に捲回して発電要素を作製し、アルミニウム製の角型電槽缶に収納し、正極端子及び負極端子を取り付けた。非水電解質として1mol/LのLiPF6をエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比3:7)の混合溶媒に溶解した非水電解液を注液後、封口し、定格容量650mAhのリチウムイオン二次電池を作製した。
次に、加速試験として、45℃の恒温槽中で2000サイクルの充放電を行った。充電は、充電電流1CA、上限充電電圧4.1Vの定電流定電圧充電とし、充電時間は4.1Vに到達後3時間とした。放電は、放電電流1CA、放電終止電圧2.75Vの定電流放電とした。充電後及び放電後に10分間の休止を設けた。
次に、25℃の恒温槽中で、上記充放電サイクル試験後のリチウムイオン二次電池について、充放電サイクル試験前に行った上記高率放電性能の測定と同一の手順により、高率放電性能(%)を求めた。
上記電池試験とは別に、上記実施例及び比較例で作製した正極板についてXAS測定を行った。測定に先立ち、種々の電位を有する正極活物質の組成を確認するため、それぞれの正極板を所定の大きさに切り出し、金属リチウムを対極とし、リチウムイオン二次電池用セパレータ及び非水電解液を用いて、金属樹脂複合フィルムを外装体とする複数個のリチウムイオン二次電池を組立てた。種々の充電電位を採用した定電流定電位充電により、正極板を種々の電位に調整した。次に、電池を解体して正極板を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄して乾燥し、測定用試料とした。それぞれの正極板が含有している正極活物質のリチウム量、即ち、Li1−xNi1−yMyO2におけるxの値は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により定量した。
上記の手順で準備した各種測定用試料について、透過法によりXANESスペクトルを取得し、それぞれの試料についてNi−K吸収端エネルギーを求めた。また、転換電子収量法によりXANESスペクトルを取得し、それぞれの試料についてNi−K吸収端エネルギーを求めた。以降の手順について図を用いて説明する。
上記の手順で準備した各種測定用試料について、蛍光量子収量法によりXANESスペクトルを取得した。また、全電子収量法によりXANESスペクトルを取得した。以降の手順について図を用いて説明する。
Claims (3)
- 表面に、電解液との反応を抑制しうる材料が配され、Li 1−x Ni 1−y M y O 2 (MはCo,Mn,Fe,Ti,Zr,Al,Mg,Cr,V及びWから選ばれる1種類以上の元素、0≦x≦1、0≦y≦0.8)で表わされるリチウム遷移金属複合酸化物の粒子を含有し、次の(A)又は(B)を満たすことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
(A)前記xの値がx1及びx2(但し、x1>x2)であるときの、透過法により取得した前記正極活物質のNi−K吸収端XANESスペクトルより得られるNi−K吸収端エネルギーをそれぞれEbx1及びEbx2とし、前記xの値がx3及びx4(但し、x3>x4)であるときの、転換電子収量法より取得した前記正極活物質のNi−K吸収端XANESスペクトルより得られるNi−K吸収端エネルギーをそれぞれEsx3及びEsx4とし、Δxb=x1−x2、Δxs=x3−x4、ΔEb=Ebx1−Ebx2、ΔEs=Esx3−Esx4としたとき、1.0≦(ΔEb/Δxb)/(ΔEs/Δxs)≦ 1.2を満たす。
(B)前記xの値がx5及びx6(但し、x5>x6)であるときの、蛍光量子収量法により取得した前記正極活物質のNi−L吸収端XANESスペクトルにおけるピーク強度比の差分(b/a)x6−(b/a)x5をΔEbulkとし、前記xの値がx7及びx8(但し、x7>x8)であるときの、全電子収量法より取得した前記正極活物質のNi−L吸収端XANESスペクトルにおけるNi−L吸収端エネルギーのピーク強度比の差分(b/a)x7−(b/a)x8をΔEsurとしたとき、0.7≦(ΔEsur/ΔEbulk)≦ 1.0を満たす。但し、aは軟X線を用いたXAS測定により取得したNi−L吸収端スペクトルにおける854eV付近のピーク強度であり、bは前記Ni−L吸収端スペクトルにおける856eV付近のピーク強度である。 - 請求項1に記載の正極活物質を含むリチウムイオン二次電池用正極。
- 請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極を備えたリチウムイオン二次電池。
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