JP5686060B2 - 非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
また、上記の電極活物質として、化学式1「XLi(Li1/3M2/3)O2+YLiM'O2の固溶体 式中、M=4+の酸化数を有する金属から選択された1種以上の元素、M'=遷移金属から選択された1種以上の元素、0<X<1、0<Y<1、X+Y=1である。」(請求項2、請求項8、段落[0024])を使用した場合、「M'の酸化還元電位以上に充電される場合、Liが離脱されながら、酸化還元バランスを取るために酸素も離脱される。よって、電極活物質はプラトー電位を有することになる。」(段落[0025])、「上記の化学式1の化合物は、プラトー電位以上の充電電圧(4.4〜4.8V)に充電した後、ガス除去工程を行ってからも、充放電サイクルで電極活物質として安定的であるため、好ましい。」(段落[0026])、「好ましくは、MはMn、Sn、Ti金属から選択された1種以上の元素であり、M'はNi、Mn、Co、Cr金属から選択された1種以上の元素である。」(段落[0027])と記載されている。
また、特許文献3の実施例においては、溶液中でCo、Ni及びMnを含有する化合物を共沈させて前駆体を製造する工程におけるpHが11.5であり、リチウム遷移金属複合酸化物の焼成温度が1000℃である。
しかし、特許文献4には、「一般式:LizCo1−x−yMgxMyO2で表され、前記一般式に含まれる元素Mは、Al、Ti、Sr、Mn、NiおよびCaよりなる群から選択される少なくとも1種であり、前記一般式に含まれるx、yおよびzは、(イ)0≦z≦1.03、(ロ)0.005≦x≦0.1、および(ハ)0.001≦y≦0.03を満たす」正極活物質が具体的に記載されている(請求項2及び3)だけであり、過充電領域において酸素ガスを発生しないリチウム過剰遷移金属複合酸化物は示されていない。
(1)リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質において、前記リチウム遷移金属複合酸化物が、層状岩塩型結晶構造を有し、一般式Li a Co x Ni y Mn z O 2 (a+x+y+z=2)で表され、a/(x+y+z)が1.25〜1.40であり、x/(x+y+z)が0.020〜0.230であり、z/(x+y+z)が0.625〜0.719であり、かつ、正極の最大到達電位が4.5〜4.6V(vs.Li/Li+)の範囲にあるいずれかの電位までの充電を行ったときに、前記リチウム遷移金属複合酸化物から酸素ガスが発生しないことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
(2)前記充電が、初期充放電における充電であることを特徴とする前記(1)の非水電解質二次電池用正極活物質。
(3)前記正極活物質が、充電区間の中にプラトー電位を有し、前記4.5〜4.6V(vs.Li/Li+)の範囲にあるいずれかの電位は、前記プラトー電位以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)の非水電解質二次電池用正極活物質。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項の正極活物質を備えた非水電解質二次電池。
なお、非水電解質二次電池としては、リチウム二次電池が典型的なものであるから、以下においては、リチウム二次電池について説明する。
本発明において、「酸素ガスが発生しない」とは、酸素ガスが実質的に発生しないことを意味し、具体的には、本発明の組成を有する正極活物質を含む密閉型電池を作製し、4.5〜4.6V(vs.Li/Li+)の範囲にあるいずれかの電位までの充電を行い、2.0V(vs.Li/Li+)までの放電を行った後、電池を解体し、電池内から放出されたガスをガスクロマトグラフィーを用いて分析した場合に、酸素と窒素の体積比率が大気成分(O2/(N2+O2)=0.21)と変わらないこと(測定誤差:±5%)、すなわち、酸素ガスの発生量が、検出限界以下であることを意味する。なお、電池の充放電は、常温(25℃)で行い、極端に加熱された状態で行うものではない。
正極の最大到達電位が4.5V(vs.Li/Li+)以下では、4.3V(vs.Li/Li+)以下の放電領域において放電可能な電気量が小さくなり、また、正極の最大到達電位を4.6V(vs.Li/Li+)以上にすると、放電容量は大きくなるが、電解液の分解によるガスの発生する量が多くなり、電池の性能が低下するため好ましくない。
後述する実施例のように、初期充放電(初回充放電)における充電として、正極の最大到達電位が4.55V(vs.Li/Li+)までの充電を行ったときに、酸素ガスを発生させることなく、リチウム二次電池を製造することができ、また、このようにして製造したリチウム二次電池は、使用時に、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li+)である充電方法を採用した場合に、大きな放電容量を得ることができる。
本発明は、全遷移金属元素Me(Co、Ni及びMn)に対するLiのモル比Li/Meが1.25〜1.40であるリチウム遷移金属複合酸化物を含み、充電区間の中にプラトー電位を有する正極活物質を使用したリチウム二次電池の初期充放電(初回充放電)における充電を、プラトー電位以上で行った場合でも、リチウム遷移金属複合酸化物から酸素ガスが実質的に発生しないことを特徴とする。
本発明のリチウム二次電池用活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質(酸化物)の組成通りに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向があり、このような材料は、活物質の可逆容量が大きく減少するので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが重要である。活物質の酸素放出温度は、本発明に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、共沈前駆体とLi2CO3を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を痛めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本発明活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで800℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本発明活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつ結晶子サイズが100nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として成型して充放電を行うことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは50nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。即ち、焼成温度を上記した活物質の酸素放出温度にできるだけ近付けるように選択することにより、はじめて、可逆容量が顕著に大きい活物質を得ることができる。
るリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より望ましい。
本願明細書に記載した合成条件及び合成手順を採用することにより、上記のような高性能の正極活物質を得ることができる。とりわけ、充電上限電位を4.4Vより低く設定した場合、例えば4.3Vといった充電上限電位を設定した場合でも高い放電容量を得ることができる非水電解質二次電池用正極活物質とすることができる。
硫酸コバルト7水和物、硫酸ニッケル6水和物及び硫酸マンガン5水和物をCo、Ni及びMnのモル比が12.5:19.94:67.56となるよう秤量し、イオン交換水に溶解させることで2Mの硫酸塩水溶液を作製した。一方、15Lの反応槽を用意した。この反応層には、反応槽内部の液面が一定の高さを超えるとその排出口から溶液が排出されるように排出口が設けられている。また、反応槽内には、撹拌羽が備えられていると共に、攪拌時に上下方向の対流を生じさせるための円筒型の対流板が固定されている。前記反応槽に7Lのイオン交換水を入れ、CO2ガスを30minバブリングさせることにより、前記イオン交換水中に前記CO2ガスを十分溶解させた。なお、CO2ガスバブリングは、硫酸塩水溶液を滴下し終わるまで継続した。次に、前記反応層を50℃に設定し、前記撹拌羽を1000rpmの回転速度で作動させた。前記反応槽中に2Lの硫酸塩水溶液を徐々に滴下した。滴下中、前記攪拌を継続した。また、反応槽中のpHを常時監視し、pHが8.6±0.2の範囲となるように、2Mの炭酸ナトリウム及び0.2Mのアンモニアが溶解している水溶液を加えた。前記硫酸塩水溶液を滴下している間、前記排出口から反応生成物を含む溶液一部が反応槽の外へ排出されるが、2Lの硫酸塩水溶液の全量を滴下し終わるまでの排出溶液は、反応槽内に戻さず、廃棄した。滴下終了後、反応生成物を含む溶液をから、吸引ろ過により共沈生成物を濾別し、付着したナトリウムイオンを除去するために、イオン交換水を用いて洗浄した。次に、大気雰囲気中、常圧下、オーブンで100℃にて乾燥させた。乾燥後、粒径を揃えるように、乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、共沈炭酸塩前駆体の粉末を得た。
図1は、本実施例に用いた角形リチウム二次電池の概略断面図である。この角形リチウム二次電池1は、アルミ箔集電体に正極活物質を含有する正極合剤層を有する正極板3と、銅箔集電体に負極活物質を含有する負極合剤層を有する負極板4とがセパレータ5を介して巻回された扁平巻状電極群2と、電解質塩を含有した非水電解質とを備える発電要素を幅34mm高さ50mm厚み5.2mmの電池ケース6に収納してなるものである。
上記電池ケース6には、安全弁8を設けた電池蓋7がレーザー溶接によって取り付けられ、負極板4は負極リード11を介して負極端子9と接続され、正極板3は正極リード10を介して電池蓋と接続されている。
上記のようにして作製したLi[Li1.13Co0.109Ni0.173Mn0.588]O2を正極活物質として用いて、以下の手順で、角形リチウム二次電池を作製した。
N−メチルピロリドンを分散媒とし、前記正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている正極ペーストを作製した。該正極ペーストを厚さ15μmのアルミニウム箔集電体の両方の面に塗布、乾燥した。次に、合剤充填密度が2.6g/ccとなるようにロールプレスすることによって正極板を作製した。
一方、イオン交換水を分散媒とし、負極活物質としてのグラファイト、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)が質量比97:2:1の割合で混練分散されている負極ペーストを作製した。該負極ペーストを厚さ10μmの銅箔集電体の両方の面に塗布、乾燥した。次に、合剤充填密度が1.4g/ccとなるようにロールプレスすることによって負極板を作製した。
電解液として、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3:7で混合した混合溶媒に、濃度が1mol/lとなるようにLiPF6を溶解させた溶液を用いた。
セパレータには、厚さ20μmのポリエチレン微多孔膜(旭化成製H6022)を用いた。
作製後の角形リチウム二次電池の長側面の中心部を、長側面に対して垂直方向から(短側面側から水平方向に)ノギスで挟み込むようにして電池厚みを測定した。このときの測定値を「試験前の電池厚み(mm)」として記録した。
また、電池厚み測定については、下記放電容量試験後においても、上記と同じ要領で電池厚みを測定した。このときの測定値を「試験後の電池厚み(mm)」として記録した。
まず、25℃にて、1サイクルの初期充放電(初回充放電)を実施した。ここで、充電は、電流0.2CA、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、充電時間は8時間とし、放電は電流0.2CA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。続いて、放電容量試験を行った。放電容量試験の条件は、充電電圧を4.2Vに変更したことを除いては前記初回充放電と同じ条件による1サイクルの充放電からなる。このときの放電電気量を「放電容量(mAh)」として記録した。
放電後の電池を流動パラフィン内において解体し、電池内から放出されたガスの全てを水上置換の要領で採取した。このガスを、カラムにMolecularSieve13XとPorapak Q(いずれもSPELCO製)を備えたガスクロマトグラフィー(HEWLETT PACKARD社製 HP5890シリーズII ガスクロマトグラフ)を用いてガス成分の分析を行った。
電池1と同じ手順で作製されたリチウム二次電池(電池2)を用いて、初回充放電における充電電圧を4.45Vにしたこと以外は電池1と同じように放電容量試験及びガス分析を実施した。
電池1と同じ手順で作製されたリチウム二次電池(電池3)を用いて、初回充放電における充電電圧を4.40Vにしたこと以外は電池1と同じように放電容量試験及びガス分析を実施した。
電池1と同じ手順で作製されたリチウム二次電池(電池4)を用いて、初回充放電における充電電圧を4.20Vにしたこと以外は電池1と同じように放電容量試験を実施した。
電池1は、放電容量試験後に電池が膨れており、電池2及び電池3と比較してガス採取量(電池内のガス量に相当)が多いものの、酸素と窒素の体積比率(O2/(N2+O2))は通常の大気成分と変化はなく、酸素が発生したとは考えられない。電池1では、COガス体積比率(CO/採取量)が増加していることから、電池膨れの原因は電解液の正極場酸化分解によるものと考えられる。
すなわち、電池電圧で4.50V〔正極電位で4.60V(vs.Li/Li+)〕まで初期充放電(初回充放電)における充電を行っても、試験前と比較して酸素の体積比率に変化はなく、酸素ガスは発生していない。
しかし、充電時に酸素ガスが発生しない活物質を用いても、正極の最大到達電位が4.6V(vs.Li/Li+)以上で初期充電を行うと、電解液の分解によるガスが発生する。
また、プラトー電位を経ない正極の最大到達電位が4.5V(vs.Li/Li+)未満で初期充電を行った場合には、電池電圧で4.2V〔正極電位で4.3V(vs.Li/Li+)充電時の放電容量が小さいという問題がある。
したがって、充電時に酸素ガスが発生しない正極活物質を用いた場合であっても、正極の最大到達電位は4.5V(vs.Li/Li+)以上4.6V(vs.Li/Li+)未満とすることが好ましく、特に、4.55V(vs.Li/Li+)程度とすることが最適な初期化成(初期充放電)条件であると考えられる。
5 セパレータ 6 電池ケース 7 蓋 8 安全弁
9 負極端子 10 正極リード−11 負極リード
Claims (4)
- リチウム遷移金属複合酸化物を含む非水電解質二次電池用正極活物質において、前記リチウム遷移金属複合酸化物が、層状岩塩型結晶構造を有し、一般式Li a Co x Ni y Mn z O 2 (a+x+y+z=2)で表され、a/(x+y+z)が1.25〜1.40であり、x/(x+y+z)が0.020〜0.230であり、z/(x+y+z)が0.625〜0.719であり、かつ、正極の最大到達電位が4.5〜4.6V(vs.Li/Li+)の範囲にあるいずれかの電位までの充電を行ったときに、前記リチウム遷移金属複合酸化物から酸素ガスが発生しないことを特徴とする非水電解質二次電池用正極活物質。
- 前記充電が、初期充放電における充電であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質が、充電区間の中にプラトー電位を有し、前記4.5〜4.6V(vs.Li/Li+)の範囲にあるいずれかの電位は、前記プラトー電位以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極活物質を備えた非水電解質二次電池。
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