JP6785056B2 - 捕捉体の設置方法及び堰堤構造物 - Google Patents
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Description
また、図16に示すように、敷幅(河川の流れ方向に沿った幅)が短い既設の堰堤110に捕捉体111を設ける場合には、堰堤110の水通し部112における上流側又は下流側に腹付部113を設け、水通し部112の底部及び腹付部113を利用して捕捉体111を設ける。
また、捕捉体が設けられていない、いわゆる不透過型堰堤においては、水の流れを制御するために水通し部の幅が狭いため、水通し部に設けられる捕捉体も小さくなり、すぐに目詰まりして堰堤の袖部から越流しやすくなる。その結果、流木等の捕捉機能を十分に発揮できないだけでなく、越流に備えて堰堤下流側の改良工事が必要となり、コストや時間がかかってしまう。一方で、水通し部の拡幅工事も考えられるが、こちらもコストや時間がかかってしまう。
また、堰堤に腹付部を設ける場合であっても、その工事にコストや時間がかかってしまう。
また、既設の堰堤に新たに捕捉体を固定するために、水通し部のコンクリートをはつってから捕捉体用のコンクリートを打設することになるため、足場の架設等、コストや時間がかかってしまう。
2×D≦L1≦1/2×L ・・・(1)
L2≦(dまたは1/2×Lのうち小さい方の値) ・・・(2)
L3≧La+Lb ・・・(3)
Lb=H×tanΦ ・・・(4)
L4=3×W1 ・・・(5)
L5≧W2+L ・・・(6)
2×D≦L1≦1/2×L ・・・(7)
L2≦(dまたは1/2×Lのうち小さい方の値) ・・・(8)
L3≧La+Lb ・・・(9)
Lb=H×tanΦ ・・・(10)
L4=3×W1 ・・・(11)
L5≧W2+L ・・・(12)
最初に、堰堤構造物の構成について説明する。図1(a)は堰堤構造物の正面図であり、図1(b)は堰堤構造物の側面図である。図2(a)は水通し幅が狭い場合における堰堤構造物の平面図であり、図2(b)は水通し幅が広い場合における堰堤構造物の平面図である。
図1に示すように、堰堤構造物1は、堰堤2と、捕捉体3とを備えている。堰堤構造物1は、上流側に土砂Sが堆積して機能が低下している既存の堰堤2に捕捉体3を新たに設置して流木や岩石の捕捉機能を高めたものである。
図1に示すように、堰堤2は、その底部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向に沿って延在するように構築されている。堰堤2は、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築されている。なお、堰堤2において、河川の上流側又は下流側に面する壁面を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にコンクリートやソイルセメントを充填してもよい。
堰堤2における河川の幅方向に沿った中央近傍の上端部には、周囲よりも上端部が低くなるように切り欠かれた(凹んだ)水通し部21が形成されている。水通し部21は、上流から流れてくる流水を堰堤2の中央近傍に集約して下流に流すために形成されている。
堰堤2は、既存の堰堤であるため、その上流側の壁部には、水通し部21の底部付近まで土砂Sが堆積している。
図1、図2に示すように、捕捉体3は、河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通すものであり、堰堤2の上流側に堆積した土砂Sに設けられている。捕捉体3は、堰堤2の延在方向、すなわち、河川の幅方向に沿って設けられており、その一部が水通し部21に対向する位置に設けられている。捕捉体3は、その河川の幅方向の長さが水通し部21よりも長くなるように構築されている。
捕捉体3は、堰堤2の延在方向に沿って延在する1本の梁部31と、この梁部31の延在方向に沿って所定間隔おきに複数個連結された柱部32と、柱部32を保持する基礎部33と、を備えている。
梁部31と柱部32は、それぞれ鋼管によって形成されている。柱部32は、2本の脚部32a,32bがそれぞれ上方に向かうにつれて互いに近づくように配置され、上部でそれぞれ梁部31に連結されている。上流側の脚部32aは、下流側の脚部32bよりも長く形成されており、上流側の脚部32aは、梁部31から斜め上方に突出している。柱部32(脚部32a,32b)の下端部は、基礎部33内に埋設され、基礎部33に固定されている。柱部32は、河川を流れてくる流木の長さをLとすると、その半分の長さ1/2Lに相当する間隔をあけて梁部31に設けられている。基礎部33は、コンクリートによって形成されており、柱部32を保持している。捕捉体3は、基礎部33のみが土砂Sに埋設されており、梁部31と柱部32は、土砂Sの上面から地表に突出している。
2×D≦L1≦1/2×L ・・・(1)
ここで、理論上の計画掃流力(水平力)による礫の移動現象は、礫の投影面積当りに作用する掃流力が礫の水中自重による鉛直力を上回った時に生じる。移動限界粒径Dとは、計画掃流力に対して移動可能な投影面積を有する礫の最大粒径をいう。
L2≦(dまたは1/2×Lのうち小さい方の値) ・・・(2)
L4=3×W1 ・・・(3)
ここで、捕捉体3は、その延在方向の中央と水通し部21の幅方向の中央とが河川の流れ方向に沿って直線状に並ぶように配置されている。したがって、捕捉体3は、水通し部21の開口面全域が捕捉体3と上流側で重なるように配置されている。
L5≧W2+L ・・・(4)
ここで、捕捉体3は、その延在方向の中央と水通し部21の幅方向の中央とが河川の流れ方向に沿って直線状に並ぶように配置されている。したがって、捕捉体3は、水通し部21の開口面全域が捕捉体3と上流側で重なるように配置されている。また、捕捉体3は、その各端部が、水通し部21の幅方向における各端部からそれぞれ1/2L(柱部32が1個分)ずつ外側に張り出すように構築されている。
次に、既存の堰堤2の近傍に捕捉体3を設けて堰堤構造物1を構築する際の捕捉体3の設置方法について説明する。
既存の堰堤2の上流側に堆積した土砂Sを堰堤2の延在方向に沿って掘削し、掘削した穴にコンクリートを打設する。打設したコンクリートが固化するまでに捕捉体3を形成する柱部32の下端部をコンクリートに埋設し、コンクリートが固化するまで養生する。コンクリートが固化することにより、柱部32はコンクリートに一体化され、土砂Sに固定される。固化したコンクリートは、基礎部33となって捕捉体3の一部を形成する。
ここで、捕捉体3は、それぞれ鋼管からなる梁部31と柱部32とを予め溶接等にて接合しておき、クレーン等で吊しながら柱部32の下端部を固化する前のコンクリートに埋設する。なお、捕捉体3が小さくてすむ場合には、予め工場等で梁部31、柱部32、基礎部33を一体に形成してトラック等で施工現場まで運搬し、土砂Sに埋設してもよい。
具体的に、河川の掃流区間、すなわち、河川の勾配が1/30以下の緩勾配で、流される流木と土砂とが分離するような場所に捕捉体3を設ける場合には、河川の流れ方向に沿った水通し部21から捕捉体3までの距離L1が、移動限界粒径Dの2倍以上、かつ、流木長Lの半分以下となるように捕捉体3を土砂Sに設置する。
一方、河川の土石流区間、すなわち、河川の勾配が1/30よりも急勾配で、流される流木と土砂とが分離せずに混ざった状態で流れるような場所に捕捉体3を設ける場合には、河川の流れ方向に沿った水通し部21から捕捉体3までの距離L2が、流れてくる岩石の最大礫径dまたは流木長Lの半分の長さのうち、小さい方の値以下となるように捕捉体3を土砂Sに設置する。
以上の工程をもって、既設の堰堤2の近傍に捕捉体3を設置することができ、既設の堰堤2と併せて堰堤構造物1が構築される。
以上のように、上流側に土砂Sが堆積することにより、堰堤としての機能が低下した既設の堰堤2の上流側に捕捉体3を設けることにより、流木や土砂等の捕捉機能を付加することができ、堰堤構造物1としての機能を向上させ、土砂災害を抑えることができる。
図3は、河川の掃流区間において、(a)は図1の堰堤において流木のみを捕捉して水を通過させる状態を説明する堰堤の正面図であり、(b)はその堰堤の側面図であり、(c)は平面図である。図4は、河川の土石流区間において、(a)は図1の堰堤において流木及び土砂を捕捉して水を通過させる状態を説明する堰堤の正面図であり、(b)はその堰堤の側面図であり、(c)は平面図である。
一方、堰堤2が設けられている捕捉体3の施工箇所が河川の土石流区間であれば、水通し部21から捕捉体3までの距離L2が、最大礫径dまたは流木長Lの半分の長さのうち、小さい方の値以下となるように捕捉体3を土砂Sに設置することにより、図4に示すように、捕捉体3で流木41及び土砂43を捕捉し、流水42は捕捉体3を通過して水通し部21に導かれる。これにより、流木41及び土砂43が水通し部21の開口部に堆積して水の流れを阻害し、水嵩の上昇による袖部からの越流を防止することができ、堰堤2を嵩上げする必要がなくなる。よって、既設の堰堤2に手を加えることなく、流木41及び土砂43を効果的に捕捉できるよう、捕捉体3を設置することができ、工事にかかるコストや時間を抑えることができる。
また、捕捉体3を設ける際には、既に堆積した土砂S上の広いスペースを使って施工することになるため、従来のように足場を架設して高所作業で水通し部に捕捉体を設ける必要がなくなり、作業効率を改善することができる。
次に、堰堤構造物及び捕捉体の設置方法の変形例について説明する。なお、上記の実施の形態と同じ構成については、同一符号を付して説明を省略する。図5は、既に堆積している土砂の土圧及び水圧に加えて、捕捉体を介して堰堤にさらに作用する土圧を説明する図である。図6(a)は捕捉体を介して堰堤にさらなる土圧が作用しないように捕捉体を設ける位置を求める方法を説明する図であり、図6(b)はそのときの捕捉体の平面図である。
本変形例は、河川の土石流区間に捕捉体3を設置する場合において、図5に示すように、堰堤2の上流側に堆積した土砂Sの土圧p1に加えて、捕捉体3で堰き止めた土砂による土圧p2が土砂Sを介して堰堤2に加わることにより、堰堤2として十分な強度を発揮できない場合に、捕捉体3にかかる土圧p2も考慮した捕捉体3の設置方法を提案するものである。
L3≧La+Lb ・・・(5)
ここで、捕捉体3は、土圧及び水圧の作用面F1から捕捉体3の下流側端部までの距離Lbが、堆積した土砂Sの内部摩擦角をΦ、堰堤2の底面F2から捕捉体3の底面F3までの高さをHとしたときに、以下の式(6)の関係を満たすように設置されている。
Lb=H×tanΦ ・・・(6)
すなわち、既設の堰堤2に捕捉体3の地盤反力の影響が及ばないように捕捉体3の位置決めを行っている。
このような構成を採用することにより、捕捉体3が流木や土砂を捕捉し、捕捉体3により捕捉した土砂の土圧が既設の堰堤2にさらに作用することはないので、既設の堰堤2の安定性を確保することができる。また、捕捉体3は、河川の幅全域にわたって設けられているので、流木や土砂の捕捉効果を一層高めることができる。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られるものではない。例えば、捕捉体3の構造は、流木や土砂を捕捉できる機能を有していれば自由に変更可能である。また、捕捉体3を土砂Sに固定する方法も自由に変更可能であり、上述した条件を満たす位置に配置されていればよい。
基礎部34は、各柱部32の下端部に連結されて柱部32を支持し、捕捉体3Aの土台となるものである。
基礎部34は、図8(a)に示すように、例えば、H形鋼を枠状に組み立てて構成した、所定の間隔をおいて河川の幅方向に設置されている単体構造をなす複数の底部35を有する。当該底部35は、フランジ面が水平方向に沿うようにコンクリート内に埋設されている。底部35は、土石流の流れ方向に沿った複数の横材35aと、この横材35a同士を連結する複数の縦材35bとを備えている。土石流の流れ方向における縦材35bの設置間隔は自由に設定可能である。
基礎部34は、柱部32との連結部位を中心としてみた場合に、上流側に長く延在するように形成されている。これは、捕捉体3Aに作用する土砂Sの重量を増やして捕捉体3Aに鉛直下方向に押す力を発生させ、捕捉体3Aを安定させるためである。
捕捉体3Aにおいては、土砂Sを掘削して形成した凹部に底部35を収容し、凹部にコンクリート(モルタル、ソイルセメントでもよい)を流し込むことによってコンクリート内に底部35を埋設した状態とし、底部35はコンクリートと一体化している。
このような基礎部34を備えることで土砂43への抵抗力をさらに強化することができる。
基礎部37は、図7に示した構成と異なってコンクリートによって形成された部分を有しておらず、地盤に埋設されている。基礎部37は、各柱部32の下端部に連結されて柱部32を支持し、捕捉体3Bの土台となるものである。
基礎部37は、例えば、H形鋼を枠状に組み立てて構成したものであり、フランジ面が水平方向に沿うように土砂S内に埋設されている。基礎部37は、図10(a)に示すように、単体構造であり、所定の間隔をおいて河川の幅方向に複数設置されている。基礎部37は、土石流の流れ方向に沿った複数の横材37aと、この横材37a同士を連結する複数の縦材37bと、横材37a又は縦材37bに連結され、横材37a又は縦材37bから土砂Sの内部に向けて下方に延びる杭部37cと、を備えている。また、縦材37bは、図10(a)に示すように、太さの異なる2種類の縦材37bを有する。図示の構成においては、太い縦材37bを土石流の流れ方向において所定の間隔(自由に設定可能)で配置し、その間に細い縦材37bが配置されている。なお、縦材37bは同じ太さのものを用いてもよい。
基礎部37は、柱部32との連結部位を中心としてみた場合に、上流側に長く延在するように形成されている。これは、捕捉体3Bに作用する土砂Sの重量を増やして捕捉体3Bに鉛直下方向に押す力を発生させ、捕捉体3Bを安定させるためである。
杭部37cは、土砂Sの表面に対して直交する方向に延びるように土砂S内に埋設されており、土石流に対する抵抗力を増やしている。
捕捉体3Bは、土砂Sを掘削してコンクリートを打設することができない場合に有効な捕捉体であり、基礎部37を土砂Sに埋設するだけで土石流等に対して十分な抵抗力を有する構造となっている。なお、捕捉体3Bを土砂Sに埋設する際に、地盤改良しながら基礎部37を埋設してもよい。
次に、捕捉体3を上記のような配置にしたことによる効果について、捕捉体3を堰堤2に接近させて配置した場合と対比しながら説明する。
図11に示すように、河川の流下方向に沿った堰堤2の基礎幅Bbを9.64m、堰堤2の天端幅Btを2.50m、堰堤2の高さ(土砂の堆積深さ)Hを10.20m、堰堤2の上流側の勾配mを0.50、堰堤2の下流側の勾配nを0.20とする。また、捕捉体3の高さhを3.00mとし、捕捉体3の下流側の先端部と堰堤2の上流側の基礎の端部とが垂直線上に並ぶように捕捉体3を堰堤2に接近させて配置した場合について考える。
このような形状の堰堤2において、各部の自重W1〜W4は、以下のように求めることができる。
下流側の傾斜部2aの自重W1は、コンクリートの単位体積重量をγc=22.56kN/m3とすると、
W1=1/2×2.04×10.20×22.56=234.71kN/m
となる。
天端がある平坦部2bの自重W2は、
W2=2.50×10.20×22.56=575.28kN/m
となる。
上流側の傾斜部2cの自重W3は、
W3=1/2×5.10×10.20×22.56=586.79kN/m
となる。
また、上流側の傾斜部2cの上面に堆積する土砂Sの自重W4は、土砂の単位体積重量をγs=17.64kN/m3とすると、
W4=1/2×5.10×10.20×17.64=458.82kN/m
となる。
次に、堰堤2において、各自重W1〜W4の作用点距離L1〜L4は、以下のように求めることができる。
下流側の傾斜部2aの自重W1の作用点距離L1は、
L1=2/3×2.04=1.36m
となる。
天端がある平坦部2bの自重W2の作用点距離L2は、
L2=2.04+1/2×2.50=3.29m
となる。
上流側の傾斜部2cの自重W3の作用点距離L3は、
L3=2.04+2.50+1/3×5.10=6.24m
となる。
上流側の傾斜部2cの上面に堆積する土砂Sの自重W4の作用点距離L4は、
L4=2.04+2.50+2/3×5.10=7.94m
となる。
次に、堰堤2の上流側に堆積した土砂の土圧Ps1及び捕捉体3に堆積した土砂の土圧Ps2は、土圧係数Caを0.33、土石流の単位体積重量ρdを15.88kN/m3、捕捉体3に堆積した土砂の単位体積重量γを17.64kN/m3、堰堤2に既に堆積した土砂の単位体積重量γsを17.64kN/m3、土石流の波高hdを0.63mとすると、以下のように求めることができる。
Ps1=1/2×17.64×0.33×10.202=302.82kN/m
Ps2=(15.88×0.63+17.64×(3.00−0.63))×0.33×10.20=174.40kN/m
次に、堆積土砂の各土圧の作用点距離Hs1及びHs2は、以下のように求めることができる。
Hs1=1/3×10.20=3.40m
Hs2=1/2×10.20=5.10m
上記の荷重(自重)又は土圧と作用点距離とに基づき、各モーメントを図12に示すように算出することができる。
次に、堰堤2の滑動に関する検討を行う。堰堤2の滑動は、安全率Fsによって確認することができる。
安全率Fsは、自重W1〜W4の合計(単位幅あたりの断面に作用する鉛直力)をΣV、堰堤2のコンクリートと地盤とのすべり摩擦係数をf、堆積した土砂の土圧の合計(単位幅あたりの断面に作用する水平力)をΣHとした場合に、以下の式で求めることができる。
Fs=f×ΣV/ΣH
なお、安全率Fsは、1.2以上であることが求められる。
ここで、摩擦係数f=0.60とし、図10の値を代入すると、
Fs=1855.60×0.60/477.22=2.33≧1.2
となり、滑動に関する安全基準を満たしている。
次に、堰堤2の転倒に関する検討を行う。堰堤2の転倒は、偏心距離Eによって確認することができる。
偏心距離Eは、以下の式で求めることができる。
E=Bb/2−D
ここで、Dは、鉛直力のモーメントの合計をΣMV、水平力のモーメントの合計をΣMHとした場合に、以下の式で求めることができる。
D=(ΣMV−ΣMH)/ΣV
なお、偏心距離Eは、E≦Bb/6であることが求められる。
図10の値を代入すると、
D=(9516.48−1919.03)/1855.60=4.09m
E=9.64/2−4.09=0.73m≦9.64/6=1.61m
となり、転倒に関する安全基準を満たしている。
次に、基礎地盤の支持力に関する検討を行う。支持力は、基礎地盤に作用する最大荷重強度が地盤の許容支持力Q1、Q2以下になっているかどうかによって確認することができる。
許容支持力Q1、Q2は、以下の式で求めることができる。
Q1=ΣV/Bb×(1+6E/Bb)
Q2=ΣV/Bb×(1−6E/Bb)
なお、許容支持力Q1、Q2は、ともに、Q1、Q2≦400kN/m2であることが求められる。
ここで、図12の値を代入すると、
Q1=1855.60/9.64×(1+6×0.73/9.64)=279.95≦400kN/m2
Q2=1855.60/9.64×(1−6×0.73/9.64)=105.03≦400kN/m2
となり、許容支持力以下となっている。
図13は、捕捉体3を堰堤2に接近させて配置した場合と、堰堤2から上記の条件を満たす距離をおいて捕捉体3を配置した場合における堰堤2の安定条件を比較したものである。
図13に示すように、捕捉体3を堰堤2に接近させて配置すると、堰堤2の滑動に関する安全率Fs、転倒に関する偏心距離E、許容支持力Q1、Q2の全てにおいて、堰堤2だけを設けた場合に比べて堰堤としての性能が低下することがわかる。これは、捕捉体3に堆積した土砂の影響によるものである。
しかし、捕捉体3を上記のような条件を満たすように堰堤2から一定の距離をおいて配置することにより、捕捉体3に堆積した土砂の影響を受けることなく、堰堤2としての性能を維持することができ、捕捉体3を設けたことで流木を捕捉する機能、土石流に含まれる岩石や土砂を捕捉する機能を付加することができる。
すなわち、堰堤2としての性能を低下させることなく捕捉体3を設けることができるので、流木や土砂の捕捉機能だけを既存の堰堤2に付加することができる。これにより、上流側の壁部に土砂が堆積した堰堤2であっても、堰堤2の性能を向上させることができる。
なお、上記の比較例との対比についての説明は、捕捉体3A,3Bについても当てはまる。
2 堰堤
3,3A,3B 捕捉体
5 浸食抑制体
21 水通し部
31 梁部
32 柱部
32a 脚部
32b 脚部
33,34,37,38 基礎部
41 流木
42 流水
43 土砂
S 土砂
Claims (14)
- 流水を通す水通し部を有し、上流側に土砂が堆積した堰堤の近傍に河川の上流から流れてくる流木を捕捉する捕捉体を河川の掃流区間に設置する捕捉体の設置方法であって、
河川の流れ方向に沿った前記水通し部から前記捕捉体までの距離をL1、流木長をL、移動限界粒径をDとしたときに、以下の式(1)の関係を満たすように、前記捕捉体を前記水通し部の開口面全域に対向する位置で前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設置することを特徴とする捕捉体の設置方法。
2×D≦L1≦1/2×L ・・・(1) - 流水を通す水通し部を有し、上流側に土砂が堆積した堰堤の近傍に河川の上流から流れてくる土砂及び流木を捕捉する捕捉体を河川の土石流区間に設置する捕捉体の設置方法であって、
河川の流れ方向に沿った前記水通し部から前記捕捉体までの距離をL2、流木長をL、最大礫径をdとしたときに、以下の式(2)の関係を満たすように、前記捕捉体を前記水通し部の開口面全域に対向する位置で前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設置することを特徴とする捕捉体の設置方法。
L2≦(dまたは1/2×Lのうち小さい方の値) ・・・(2) - 流水を通す水通し部を有し、上流側に土砂が堆積した堰堤の近傍に河川の上流から流れてくる土砂及び流木を捕捉する捕捉体を河川に設置する捕捉体の設置方法であって、
河川の流れ方向に沿った前記水通し部の上流側端部から前記捕捉体の下流側端部までの距離をL3、河川の前記流れ方向に沿った前記水通し部の前記上流側端部から前記堰堤の最深部までの距離をLa、土圧及び水圧の作用面から前記捕捉体の下流側端部までの距離をLbとしたときに、以下の式(3)の関係を満たすように、前記捕捉体を前記水通し部の開口面全域に対向する位置で前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設置することを特徴とする捕捉体の設置方法。
L3≧La+Lb ・・・(3) - 前記捕捉体は、土圧及び水圧の作用面から前記捕捉体の下流側端部までの距離Lbが、堆積した土砂の内部摩擦角をΦ、前記堰堤の底面から前記捕捉体の底面までの高さをHとしたときに、以下の式(4)の関係を満たすように設置することを特徴とする請求項3に記載の捕捉体の設置方法。
Lb=H×tanΦ ・・・(4) - 前記捕捉体の長さをL4、前記水通し部の幅をW1としたときに、以下の式(5)の関係を満たすように前記捕捉体を構築することを特徴とする請求項1又は2に記載の捕捉体の設置方法。
L4=3×W1 ・・・(5) - 前記捕捉体の長さをL5、前記水通し部の幅をW2、流木長をLとしたときに、以下の式(6)の関係を満たすように前記捕捉体を構築することを特徴とする請求項1又は2に記載の捕捉体の設置方法。
L5≧W2+L ・・・(6) - 前記捕捉体を河川の幅方向全域にわたって構築し、前記捕捉体の両端部に岸壁の浸食を抑制する浸食抑制体を構築することを特徴とする請求項3又は4に記載の捕捉体の設置方法。
- 流水を通す水通し部を有する堰堤を備え、前記堰堤の上流側に土砂が堆積した堰堤構造物であって、
少なくとも一部が前記水通し部に対向し、前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられ、河川の上流から流れてくる流木を捕捉して流水を通す捕捉体を備え、
前記捕捉体は、河川の掃流区間に設けられる場合において、
河川の流れ方向に沿った前記水通し部から前記捕捉体までの距離をL1、流木長をL、移動限界粒径をDとしたときに、以下の式(7)の関係を満たすように前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられていることを特徴とする堰堤構造物。
2×D≦L1≦1/2×L ・・・(7) - 流水を通す水通し部を有する堰堤を備え、前記堰堤の上流側に土砂が堆積した堰堤構造物であって、
少なくとも一部が前記水通し部に対向し、前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられ、河川の上流から流れてくる土砂及び流木を捕捉して流水を通す捕捉体を備え、
前記捕捉体は、河川の土石流区間に設けられる場合において、
河川の流れ方向に沿った前記水通し部から前記捕捉体までの距離をL2、流木長をL、最大礫径をdとしたときに、以下の式(8)の関係を満たすように前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられていることを特徴とする堰堤構造物。
L2≦(dまたは1/2×Lのうち小さい方の値) ・・・(8) - 流水を通す水通し部を有する堰堤を備え、前記堰堤の上流側に土砂が堆積した堰堤構造物であって、
少なくとも一部が前記水通し部に対向し、前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられ、河川の上流から流れてくる土砂及び流木を捕捉して流水を通す捕捉体を備え、
前記捕捉体は、河川の流れ方向に沿った前記水通し部の上流側端部から前記捕捉体の下流側端部までの距離をL3、河川の前記流れ方向に沿った前記水通し部の前記上流側端部から前記堰堤の最深部までの距離をLa、土圧及び水圧の作用面から前記捕捉体の下流側端部までの距離をLbとしたときに、以下の式(9)の関係を満たすように前記堰堤の上流側に堆積した土砂に設けられていることを特徴とする堰堤構造物。
L3≧La+Lb ・・・(9) - 前記捕捉体は、土圧及び水圧の作用面から前記捕捉体の下流側端部までの距離Lbが、堆積した土砂の内部摩擦角をΦ、前記堰堤の底面から前記捕捉体の底面までの高さをHとしたときに、以下の式(10)の関係を満たすことを特徴とする請求項10に記載の堰堤構造物。
Lb=H×tanΦ ・・・(10) - 前記捕捉体は、その長さをL4、前記水通し部の幅をW1としたときに、以下の式(11)の関係を満たすことを特徴とする請求項8又は9に記載の堰堤構造物。
L4=3×W1 ・・・(11) - 前記捕捉体は、その長さをL5、前記水通し部の幅をW2、流木長をLとしたときに、以下の式(12)の関係を満たすことを特徴とする請求項8又は9に記載の堰堤構造物。
L5≧W2+L ・・・(12) - 前記捕捉体は河川の幅方向全域にわたって設けられており、
前記捕捉体の両端部には、岸壁の浸食を抑制する浸食抑制体が設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の堰堤構造物。
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