しかしながら、上記特許文献1および2に記載の従来の工法により築造された防潮堤では、被覆工と盛土が一体化されていないため、地震や越流津波に対して被覆工が滑動したり、押し流されやすい。このため、地震力に対しては堤体の勾配をゆるくして、滑りを発生しにくくするような構造が考えられるものの、用地面積を広くとならなければず、コストも増大するという問題がある。また、越流津波に対しては、被覆コンクリートを厚くし、自重により押し流されにくくする構造も考えられるが、盛土との摩擦力を十分確保することができず、不陸(平らでなく不揃いな凹凸)が生じやすい。このため、一定の越流レベルに達すると、容易に押し流されてしまう。すなわち、上記特許文献1に記載の従来の工法では、盛土をコンクリートで被覆した構造を有しているため、堤防の高さを超える津波に襲われると、図22の(A)ないし(C)に示すように、(a)波返し工(コンクリート擁壁)とコンクリートの打ち継ぎ目が剥離したり、(b)揚圧力により天端コンクリートが浮き上がったり、(c)裏側の法部が洗掘されたり、流水圧(揚力)によって裏側法部のコンクリート壁がめくれ上がったり、(d)落下流や漂流物による曲げ破壊が起こったり、(e)地盤が洗掘されたりすることがある。また、特許文献2に記載の護岸被覆工では、(f)引き波時、波返し工(コンクリート擁壁)が転倒したり、(g)基礎が流亡したりするという問題がある。このため、例えば、従来技術で越流に持ちこたえるには、揚力に対しては、自重を増加させるため被覆コンクリートの厚みを増大させなければならない。このため、コストアップを招くという問題がある。また、コンクリートの厚みの増大を抑える代わりに金属ロッドからなるアンカー材を盛土内に打ち込んだ場合、点状にアンカーさせるため、揚力に抵抗させるためには多数のアンカー材を打ち込む必要があり、施工性とコストの面で問題がある。さらに、金属製のアンカーロッドは海岸構造物に使用する際、腐食を考慮すると耐久性の点で問題がある。また、上記特許文献3に記載の従来の工法により築造された土壁構造物では、壁面ブロックをガイドピンにより接続しているので揚力に抵抗しづらいという問題がある。
特に、東日本大震災級の津波に対しては、後背地の被害を軽減させる観点から越流時の侵食に耐えられ、かつ、一定の損傷を受けてもすぐに破堤に至らない堤防の構築技術が求められている。通常の被覆コンクリート形式の防潮堤は、コンクリートが保有する強度に達すると脆性的な破壊を引き起こし、クラックの進展により不連続な面が形成される。東日本大震災級の津波を想定した場合、津波越流時の堤防上の越流水深を10mとすると、落下流によって発生する衝突力は500kN/m2以上にもなり、後ろ法面の被覆コンクリートが曲げ破壊を引き起こすことになる。このため、容易にコンクリートが引き剥がされたり、押し流されたりする。また、その部分を起点として連鎖的な崩壊に発展するため、被害は壊滅的となる。このため、多少の損傷を受けても、堤防としての機能が完全に喪失されないようにすることが極めて重要である。また、従来の工法では、コンクリートとその背面の盛土部分を連結させていないので、盛土や基礎地盤の収縮または沈下によって被覆コンクリートの裏側に空洞が生じる。特に、供用期間中の地盤や盛土の沈下だけでなく、東日本大震災のように、地震によって盛土の揺すり込み沈下や地殻変動による激しい地盤沈下が発生するので、被覆コンクリート裏側の空隙の形成は避けられない。被覆コンクリートは盛土との摩擦力で安定を保っているのみであるため、空洞が形成されている状態で地震力が作用すると、十分な摩擦力が期待できず、被覆コンクリートと盛土の間で滑動したり、亀裂が生じたり、あるいは、目地ずれなど不陸が生じる恐れがある。このような状態で、津波が越流すると、落下流の衝突力によって被覆コンクリートに亀裂が生じたり、亀裂面や不陸部分に大きな流水圧が作用して、被覆コンクリートが引き剥がれたり、押し流されたりする恐れがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、施工上簡素な構成で、しかも、低コストで耐侵食性能を向上させ、たとえ津波等で多少の損傷を受けても、連鎖的な崩壊を回避することができる盛土の補強構造とその築造方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1に係る盛土の補強構造は、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、第1の工程で築造予定地を整地し、第2の工程で整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成し、第3の工程で形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧し、第4の工程でコンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成するとともに、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けることを特徴としている。
本発明の請求項1に係る盛土の補強構造では、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、第1の工程で築造予定地を整地し、第2の工程で整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成し、第3の工程で形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧し、第4の工程でコンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成するとともに、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けるようにしたので、コンクリートブロックによる被覆工と補強材と盛土とが一体化された盛土の補強構造が形成され、耐震性が向上する。津波時、越流が生じ、越流水の遠心力により後ろ法肩部に被覆工を引き剥がす力(揚力)が発生しても、補強材がコンクリートブロックのアンカーとして作用するので、揚力に対抗することができる。
本発明の請求項2に係る盛土の補強構造は、コンクリートブロックの外側を外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成し、コンクリートブロックの上端を平坦に形成し、コンクリートブロックの係止部を、平坦な上面と背面部とで形成される角部とコンクリートブロックの壁面から内側に凹陥し前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成するとともに、角部に切り欠き部を係合させた際、上側コンクリートブロックの壁面が下側コンクリートブロックの傾斜面より外側に突出するよう切り欠き部の奥行き長さを設定したことを特徴としている。
本発明の請求項3に係る盛土の補強構造は、コンクリートブロックには、引っ張り補強材が背面部から外部に延出する延出位置がコンクリートブロックが配置される場所に応じて背面部下端部、背面部上下端間の中間部あるいは背面上端部のうち少なくともいずれかに決定されることを特徴としている。
本発明の請求項4に係る盛土の補強構造は、コンクリートブロックに埋設される補強材の埋設端は、曲面または底部に対して傾斜面をなすことを特徴としている。
本発明の請求項5に係る盛土の補強構造は、最上段に設置されるコンクリートブロックは背面の下端部から引っ張り補強材が延出されるか、または、補強材の一端がコンクリートブロック底面に付着され他端が延出されるかして、現場打ちコンクリートにほぼ水平に埋設されて天端工が形成されることを特徴としている。
本発明の請求項6に係る盛土の補強構造は、積み重ねられるコンクリートブロックと盛土との間に非透水性または難透水性の層を形成したことを特徴としている。
本発明の請求項7に係る盛土の補強構造の築造方法は、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、築造予定地を整地する第1の工程と、整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成する第2の工程と、形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧する第3の工程と、コンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成する第4の工程とを有し、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けることを特徴としている。
本発明の請求項7に係る盛土の補強構造の築造方法では、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、築造予定地を整地する第1の工程と、整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成する第2の工程と、形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧する第3の工程と、コンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成する第4の工程とを有し、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けるようにしたので、コンクリートブロックによる被覆工と補強材と盛土とが一体化された盛土の補強構造が形成され、耐震性が向上する。津波時、越流が生じ、越流水の遠心力により後ろ法肩部に被覆工を引き剥がす力(揚力)が発生しても、補強材がコンクリートブロックのアンカーとして作用するので、揚力に対抗することができる。
本発明の請求項8に係る盛土の補強構造の築造方法は、コンクリートブロックの外側を外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成し、コンクリートブロックの上端を平坦に形成し、コンクリートブロックの係止部を、平坦な上面と背面部とで形成される角部とコンクリートブロックの壁面から内側に凹陥し前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成するとともに、角部に切り欠き部を係合させた際、上側コンクリートブロックの壁面が下側コンクリートブロックの傾斜面より外側に突出するよう切り欠き部の奥行き長さを設定し、第4の工程でコンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置することを特徴としている。
本発明の請求項1に係る盛土の補強構造では、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、第1の工程で築造予定地を整地し、第2の工程で整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成し、第3の工程で形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧し、第4の工程でコンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成するとともに、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けるようにしたことにより、被覆工と盛土が一体化し、不陸が発生しにくい。盛土の補強構造が津波を被っても揚力に対して浮き上がりにくく、水圧の回り込みを防止して引き剥がれにくく、コンクリートの曲げ破壊防止性能を向上させることができる。また、ダムや河川、水路護岸等の波浪侵食に対して保護性能を向上させることができる。
また、本発明の請求項7に係る盛土の補強構造の築造方法では、コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側に傾斜面を形成して構成されるとともに、内部に柔軟性を有する引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、コンクリートブロックは、傾斜面の上下端部側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部を形成するとともに、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの外側傾斜面を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させるよう構成され、コンクリートブロックの外側は、外側傾斜面と外側傾斜面の下端に連続して下方に延びる壁面とにより構成され、コンクリートブロックの係止部は、壁面と底面とで形成される角部と、コンクリートブロックの外側傾斜面上端から内側に前記角部に合致して形成され前記角部が係合する切り欠き部とにより構成されるとともに、切り欠き部に角部を係合させた際、壁面の上側が露出するよう切り欠き部の深さを設定し、築造予定地を整地する第1の工程と、整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成する第2の工程と、形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧する第3の工程と、コンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成する第4の工程とを有し、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けるようにしたことにより、被覆工と盛土が一体化し、不陸が発生しにくい。盛土の補強構造が津波を被っても揚圧力に対して浮き上がりにくく、水圧の回り込みを防止して引き剥がれにくく、コンクリートの曲げ破壊防止性能を向上させることができる。また、ダムや河川、水路護岸等の波浪侵食に対して保護性能を向上させることができる。
耐侵食性能を向上させ、たとえ津波等で多少の損傷を受けても、連鎖的な崩壊を防ぐという目的を、角柱状コンクリートブロックを左右方向に接続して列を形成し、このコンクリートブロック列内側に盛土を投入し、コンクリートブロック列の積み上げと盛土の投入を繰り返し、盛土をコンクリートブロックで被覆して築造される盛土の補強構造において、コンクリートブロックは、外側面に傾斜面が形成されるとともに、内部に引っ張り補強材の一端を埋設して他端を背面側または底面側から外部に延出させて構成されるとともに、傾斜面上下端部より内側に、上下に積み重ねられたコンクリートブロック同士を係止して内外方向の変位のうち少なくとも外方向への変位を阻止する係止部が形成され、上側に積み重ねられるコンクリートブロックの係止部の外端を下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出させて形成し、第1の工程で築造予定地を整地し、第2の工程で整地された築造予定地にコンクリートブロックを左右方向に接続して配置しコンクリートブロック列を形成し、第3の工程で形成されたコンクリートブロック列背面側に盛土を投入してコンクリートブロック背面側から延びる引っ張り補強材を盛土に埋設し、転圧高さに達すると、盛土を転圧し、第4の工程でコンクリートブロック列の上側に新たなコンクリートブロックを係止させて配置し上側コンクリートブロック列を形成するとともに、第4の工程後、第3の工程と第4の工程とを繰り返し、築造予定高さに達すると、天端工を設けることにより実現した。
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る盛土の補強構造の築造方法により築造される盛土の補強構造に用いられるプレキャストコンクリートブロックを示す斜視図である。なお、本明細書中、盛土の補強構造とは、壁体を備えた盛土造成構造物であって、壁体の一部を構成する壁体部の構築と盛土の投入とを繰り返して壁体を形成する盛土の補強構造一般をいうものであり、防潮堤や堤防、水路や道路、鉄道の軌道、河川やため池の堤体等のインフラ用構造物だけでなく、住宅の造成地、農地、廃棄物や残滓、火山灰の貯留場所、崖地や崖地崩壊箇所の補強構造等が含まれる。なお、本明細書中で言及する防潮堤は盛土形式の防潮堤をいう。本実施例に係る盛土の補強構造の築造方法により築造される盛土の補強構造2は、図1に示すように、プレキャストコンクリートブロック(以下、被覆ブロックと称する)4が用いられる。この被覆ブロック4は、コンクリートを後述する型枠に投入して成型される。成型時、補強材(引っ張り補強材)5の一端5Aが型枠内に挿入され、硬化脱型後、被覆ブロック4に補強材5の一端5Aが埋設され、補強材5の自由端は被覆ブロック4の盛土側の背面部4i下端から外側に延出部5Bとして延出するようになっている。補強材5の埋設端5Aは、被覆ブロック4の底面4jに対して傾斜面をなすようにしてよいし(図2の(A)参照)、曲面としてもよい(図3(B)参照)。補強材5は、引っ張り補強材であって、補強材5の材質は、金属製帯体、面状に形成された高分子材料のジオグリッド、ジオテキスタイル、ジオシンセティックス、樹脂シートまたは不織布のうち少なくともいずれか1から構成される。これら補強材5は柔軟性を有するものが好ましく、網状に形成してもよい。
被覆ブロック4は、図1に示すように、外側が傾斜した外側傾斜面(傾斜面)6Aとこの傾斜面6Aの下端に連続して下方に延びほぼ垂直に形成された壁面6Bとを有する角柱状に成型される。これら外側傾斜面6Aと壁面6Bとにより被覆ブロックの外側面6が形成される。壁面6Bは高さh1(図2参照)を有し傾斜面6Aの下端と平坦な底面4jとを結び、壁面6Bと傾斜面6Aとの間は湾曲して成型される。この壁面6Aと底面4jとにより角部7が形成される。被覆ブロック4の傾斜面6A上端から内側には、前記角部7に合致して形成されこの角部7が係合する切り欠き部8が形成される。これら角部7と切り欠き部8とにより被覆ブロック4の係止部7、8が構成される。切り欠き部8の深さd1は、被覆ブロック4の積み重ね時、壁面6Bの上側が露出するように壁面6Bの高さh1寸法より小さくなるように設定される(d1<h1)。露出面の高さは、設計プランに応じて決定される。被覆ブロック4の背面部4iは平坦な底面4jに対してほぼ直角、または、直角より僅かに鋭角に形成される。
被覆ブロック4は、まず一段目となる被覆ブロック4Aが、図2に示すように、地盤3上の被構築場所に左右両端面を整合させて左右方向に接続して配置され、列を形成するようになっている。地盤3は、整地された地盤であっても未整地の地盤であってもよい。また、本実施例では、盛土の補強構造2を平坦な地盤3上の被構築場所に構築するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、堤体や崖に沿った地盤上に構築するようにしてもよい。以下、同一符号は同一または相当部分を示す。
これら一段目の被覆ブロック4Aの列に対して内側に盛土9が転圧高さ(一段目となる被覆ブロック4A列のほぼ上面)まで盛土が達し、転圧が行われると、二段目となる上側被覆ブロック4Bが、角部7を下側被覆ブロック4Aの切り欠き部8に係合させて配置されるようになっている。上下の被覆ブロック列4A、4Bは、角部7と切り欠き部8を係合させてほぼ水平に配置されると、外側傾斜面6Aは上下の被覆ブロック列4A、4Bで高さが異なる同一傾斜角度の法面となるようになっている。こうして、二段目の被覆ブロック4Bの列が形成されると、盛土9の投入と転圧とを行い、さらに、上段に被覆ブロック4C、4D、・・・の列を形成し、所望の高さまで築造するようになっている。
一段目の被覆ブロック列4Aに、盛土9が投入される際には、被覆ブロック4の背面部4i下端から外側に延出した補強材5の延出部5Bは地盤3に敷設された後、この補強材5の延出部5B上に盛土9が投入されるようになっている。二段目以降の被覆ブロック列4B、列4C・・の各列では、補強材5の延出部5Bは盛土の転圧面に敷設され、盛土9内に埋設されるようになっている。盛土9は、転圧高さまで達すると、図示しない転圧機により上面が転圧され、転圧済み平坦面が形成されると、上段の被覆ブロック4が配置されるようになっている。
なお、被覆ブロック4による被覆工は、防潮堤では堤体両面に形成されるが、用途に応じて堤体の一面にのみ形成してもよい。盛土9は、例えば、現場の掘削土、固化処理土、セメント固化処理土、山土、真砂土、砂利、バラスト、粘性土、土壌改良材、破砕材、火山灰、火山礫、鉱滓または残渣のうちいずれかまたはこれらを混合して用いられる。盛土の補強構造を防潮堤とする場合、図3の(A)に示すように、盛土9と被覆ブロック4との間にセメント改良土9Sの層を形成することが好ましい。この場合、吸い出しを防止し、かつ、被覆ブロック4により構成される被覆工に高い支持力が確保でき、越流水による衝突力に対し変形や破壊を防止することができる。さらに、セメント改良土は、母材よりも透水性が低くなるために法面からの越流水が内部に浸透しない。このため、間隙水圧が上昇しにくい。その結果、ジオテキスタイル等の補強材5に作用する有効応力は保持され、所要の引き抜き抵抗力を維持することができる。なお、セメント改良土9Sの層は非透水性を有していたり難透水性を有しているが、セメント改良土に限らず、非透水性または難透水性を有する材料であれば、他の材料を用いてもよいことはいうまでもない。また、上記実施例では、角部7の壁面6Bとこの壁面6Bに当接する切り欠き部8の立壁部8Aとをほぼ垂直に形成しているがこれに限られるものではなく、切り欠き部8の立壁部8Aを平坦な載置面8Bに対してわずかに鋭角となるよう傾斜させて形成し、角部7の壁面6Bもその角度に合致させて形成するようにしてもよい。また、図3の(C)に示すように、被覆ブロック84(図12参照)側に裏込めコンクリートCrを打設し、被覆ブロック84側から裏込めコンクリートの層Crとセメント改良土の層9Sを形成するようにし、海側の前面法面を非透水性、非通気性、難透水性または難通気性を有する面とするとともに被覆ブロック84間の隙間を埋めるようにしてもよい。さらに、基礎工にも補強材5tを埋設するようにしてもよい。
最上段に設置される被覆ブロック4Nは、補強材5の延出部5Bが背面部4iの下端部から延出されるようになっている。最上段の被覆ブロック4N列まで積み重ねられ、現場打ちコンクリートにより天端工が形成される際には、図3の(B)に示すように、補強材5の延出部5Bは現場打ちコンクリートにほぼ水平に埋設または付着されるようになっている。
次に、上記実施例に係る盛土の補強構造の作用について、築造方法に基づいて説明する。まず、施工プランに基づいて地盤3の築造予定地を整地する(第1の工程S1)。次に、地盤3上の整地された被構築場所に一段目となる被覆ブロック4Aを左右方向に接続して配置し、一段目の被覆ブロック4A、4A・・・の列を形成する(第2の工程S2)。次に、補強材5の延出部5Bを被覆ブロック4の内側に敷き延ばして地盤3上に敷設する。そして、敷設された延出部5B上に盛土9を転圧高さに達するまで投入し、転圧高さに達すると、図示しない転圧機により盛土9の上面を転圧する(第3の工程S3)。転圧が終わると、二段目の上側被覆ブロック4Bの角部7を、下側被覆ブロック4Aの切り欠き部8に係合させて配置し、上側被覆ブロック4B列を形成する(第4の工程S4)。上下側の被覆ブロック4A、4B列は、角部7と切り欠き部8とを係合させてほぼ水平に配置されると、傾斜した法面は上下の被覆ブロック4A、4Bで高さが異なるほぼ同一傾斜角度の法面となるようになっている。こうして、二段目の被覆ブロック4Bの列が形成されると、第4の工程S4後、第3の工程S3と第4の工程S4とを繰り返し、盛土9の投入と転圧とを行い、さらに、上段に被覆ブロック4C、4D、・・・の列を形成し、所望の築造予定高さに達すると、現場打ちコンクリートで天端工を設け、築造を完了するようになっている。本実施例に係る盛土の補強構造の築造方法では、上述の如く構成されているので、コンクリートブロックによる被覆工と補強材と盛土とが一体化された盛土の補強構造が形成され、耐震性が向上する。津波時、越流が生じ、越流水の遠心力により被覆工を引き剥がす力(揚力)が発生しても、補強材により揚力に対抗することができ、しかも、補強材5が被覆ブロック4のアンカーとして作用するので、安定化される。被覆ブロック4は上下で互いに係止部7、8により抜け出しが阻止されているので、外部からの力に対して滑動抵抗が向上する。このように本実施例に係る盛土の補強構造2では、コンクリートブロックは互いに係止部により少なくとも外方向への変位が規制されているので、外部からの力に対して滑動抵抗が向上する。また、上側コンクリートブロックの係止部外端が下側コンクリートブロックの外側傾斜面より突出しているので、越流時、不陸による流水抵抗を受けにくい。
図4の(A)ないし(D)はそれぞれ、上記第1の実施例に係る盛土の補強構造に用いられる被覆ブロックの変形例を示すもので、それぞれ抜け出しを阻止する係止部の構造が異なる外は、上記被覆ブロックの構造と実質的に同一である。図4の(A)に示す被覆ブロック4−1は、被覆ブロック4の第1の変形例を示すもので、外側傾斜面6A−1の上端から内側に平坦な上面4k−1が形成される。この上面4k−1と背面部4i−1とにより角部7−1が形成される。外側傾斜面6A−1の下端には、壁面6B−1がこの傾斜面6A−1の下端に連続しほぼ垂直に形成される。この壁面6B−1と底面4j−1との間には、内側に後退し被覆ブロック4−1の上面4k−1が載置される切り欠き部8−1が形成される。これら角部7−1と切り欠き部8−1とにより被覆ブロック4−1の係止部7−1、8−1が構成される。切り欠き部8−1は垂直な壁面部8A−1と平坦に形成された上面部8B−1とを有して構成される。上面部8B−1の内外方向寸法l1は、被覆ブロック4−1の上面4k−1の内外方向寸法L1より長くなっている(l1>L1)。このため、下側被覆ブロック4−1Aの角部7−1に上側被覆ブロック4−1Bの切り欠き部8−1を係止し、切り欠き部8−1の壁面部8A−1を下側被覆ブロック4−1の平面部4i−1に当接させて積み重ねると、上側被覆ブロック4−1Bの壁面6B−1が下側被覆ブロック4−1Aの外側傾斜面6A−1から外側に突出し、切り欠き部8−1の上面部8B−1の外側部分が露出するようになっている。このように、第1の変形例に係る被覆ブロック4−1は、盛土側から外方向への力が加えられても、これら係止部7−1、8−1と補強材5とにより抜け止めを図るようになっている。
図4の(B)に示す被覆ブロック4−3は、被覆ブロック4の第3の変形例を示すもので、上記第2の変形例に係る被覆ブロック4−2が、V字状溝8−2の内側傾斜面8A−2とV字状突部7−2の内側傾斜面7A−2とを合致させ、かつ、V字状溝8−2の外側傾斜面8B−2の内外方向寸法l2をV字状突部7−2の外側傾斜面7B−2の内外方向寸法L2より長くし、壁面6B−2だけでなくV字状溝8−2の外側傾斜面8B−2の外側部分も露出させるようにしているのに対し、V字状突部7−3の内外両傾斜面7A−3、7B−3をV字状溝8−3の内外両傾斜面8A−3、8B−3と合致させ、壁面6B−3のみを下側被覆ブロック4−3Aの外側傾斜面6A−3から突出させるようにしている。このように、第3の変形例に係る被覆ブロック4−3は、盛土側から内外方向への力が加えられても、これら係止部7−3、8−3と補強材5とにより抜け止めを図るようになっている。
図4の(C)に示す被覆ブロック4−4は、被覆ブロック4の第4の変形例を示すもので、上記第3の変形例に係る被覆ブロック4−3が、係止部をV字状突部7−3とV字状溝8−3とにより構成しているのに対し、V字状突部7−3をほぞ状突部7−4に、V字状溝8−3を断面コ字状溝8−4にそれぞれ代えて構成した点が異なっている。すなわち、第4の変形例に係る被覆ブロック4−4は、外側傾斜面6A−4の下端にこの傾斜面6A−4に対して垂直に形成された壁面6B−4を有し、底面4J−4の外側には、ほぞ状突部7−4が形成される。外側傾斜面6A−4の上端から内側は平坦な上面4k−4が形成されるとともに、この上面4k−1には、ほぞ状突部7−4に合致して断面コ字状溝8−4が形成される。このため、下側被覆ブロック4−4Aの溝8−4に上側被覆ブロック4−4Bの突部7−4を嵌め入れて積み重ねると、壁面6B−4が下側被覆ブロック4−4Aの外側傾斜面6A−4から突出するようになっている。このように、第4の変形例に係る被覆ブロック4−4は、盛土側から内外方向への力が加えられても、これら係止部7−3、8−3と補強材5とにより抜け止めを図るようになっている。
図4の(D)に示す被覆ブロック4−5は、被覆ブロック4の第5の変形例を示すもので、上記第1の変形例に係る被覆ブロック4−1が、係止部を角部7−1と切り欠き部8−1とにより構成しているのに対し、底面4j−5の外端近傍から壁面6B−5の下端に向かって傾斜して立ち上がる傾斜面7−5と、被覆ブロック4−5の外側傾斜面6A−5の上端から内側に上記傾斜面7−5と底面4j−5と合致して形成された切り欠き部8−5とにより構成される点が異なっている。すなわち、第5の変形例に係る被覆ブロック4−5は、下側被覆ブロック4−5Aの切り欠き部8−5の傾斜面8B−5に上側被覆ブロック4−5Bの傾斜面7−5を当接させて係止し、積み重ねると、上側被覆ブロック4−5Bの壁面6B−5が下側被覆ブロック4−5Aの外側傾斜面6A−5から外側に突出するようになっている。このように、第5の変形例に係る被覆ブロック4−5は、盛土側から外方向への力が加えられても、これら係止部7−5、8−5と補強材5とにより抜け止めを図るようになっている。
次に、本発明の第2の実施例に係る盛土の補強構造12に用いられる被覆ブロック14について説明する。第2の実施例に用いられる被覆ブロック14は、図5ないし図8に示すように、上記第1の実施例およびその変形例に用いられる被覆ブロック4、4−1〜4−5では、ブロック本体の両側面を底面に対して直角にかつ平坦に形成しているのに対し、ブロック本体の左右両側面に、上下の被覆ブロック14A、14Bを接続するための溝が形成されている点が異なっている。
すなわち、被覆ブロック14は、前側垂直面16Bと、この前側垂直面16Bと底面14jとを結ぶ下側傾斜面16Cと、前側垂直面16Bと上面の外側傾斜面16Aとを結ぶ面取り部16Dとが形成される。被覆ブロック14の上面には、前側垂直面16Bの面取り部16Dと接続され傾斜して形成された外側傾斜面16Aとこの外側傾斜面16Aと後側の切り欠き部18とを結ぶ上側傾斜面とが形成される。被覆ブロック14は、外側面16がこれら下側傾斜面16Cと前側垂直面16Bと面取り部16Dと外側傾斜面16Aとにより形成される。被覆ブロック14の後面14i、すなわち、盛土側面は垂直に形成される。被覆ブロック14の底面14jは、平坦面14fとこの平坦面14fと接続され、接続される補強材(ジオテキスタイル)5の厚さ分上方に後退した後退面14gとが形成される。補強材5は、この後退面14gに付着されて接続され、盛土側に延出される。
被覆ブロック14は、本体の外側面16側の左右両側面19A、19Bと本体の切り欠き部18側の左右両側面20A、20Bとにそれぞれ、断面半円状の溝21A、21B、22A、22Bが上下方向に形成され、外側の断面弧状溝21A、21Bは上方に拡開し、内側の断面弧状溝22A、22Bは下方に拡開して形成される。このため、被覆ブロック14は左右に両側面19A、20Aと19B、20Bを付き合わせて列を構成すると、図6に示すように、上下の列毎に上下で拡開方向が異なるジョイント孔(孔)21A−21B、22A−22Bが形成されるようになっている。このジョイント孔21A−21B、22A−22Bにコンクリートを打設し、上下の段の被覆ブロック14A、14Bを接続するようにしている。すなわち、第4の工程S4で上段のブロック列14Bが積み上げられると、隣り合う被覆ブロック14、14間にジョイント孔21A−21B、22A−22Bが形成され、このジョイント孔21A−21B、22A−22Bは上下で拡開方向が異なっているので、この中にコンクリートが打設されると、抜け止めが図られるようになっている。
次に、本発明の第3の実施例に係る盛土の補強構造32に用いられる被覆ブロック34について説明する。第3の実施例に用いられる被覆ブロック34は、図9ないし図12に示すように、上記第2の実施例に用いられる被覆ブロック14が、ブロック本体の両側面の内外側にそれぞれ断面半円状の溝21A、21B、22A、22Bを拡開する方向を異ならせて形成しているのに対し、ブロック本体の左右両側面にそれぞれ傾斜させて断面半円状の溝を形成し、積み上げ時、これら溝が同一径の半円状溝となるよう構成し、上下の被覆ブロック34A、34Bを接続するようにした点が異なっている。
被覆ブロック34は、概略四角柱状に形成される。被覆ブロック34の前面には、傾斜面36Aと、この傾斜面36Aと底面34jとを結ぶ面取り部36Bとが形成される。被覆ブロック34の上面には、前面の傾斜面36Aと接続され平坦面36Cを備えた突出部35と、この突出部35と傾斜面38Aを介して接続される平坦部38Bとが形成される。これら傾斜面38Aと平坦部38Bとで切り欠き部38が形成される。面取り部36Bと突出部35の傾斜面38Aとは同一傾斜角度でかつ同一高さを有し、面一致となっている。このため、上下に積み重ねられた際には、これら下側被覆ブロック34Aの傾斜面36Aに上側被覆ブロック34Bの面取り部36Bが合致し、上側被覆ブロック34Bの傾斜面36Aが下側被覆ブロック34Aの平坦面36Cから露出するようになっている。被覆ブロック34の後面、すなわち、盛土側背面34iは垂直に形成される。被覆ブロック34の底面34jは、平坦面34fとこの平坦面34fと接続され、接続される補強材5の厚さ分上方に後退した後退面34gとが形成される。補強材5は、この後退面34gで接続され、盛土9側に延出される。
被覆ブロック34は、左右両側面39A、39Bにそれぞれ、断面半円状の溝33A、33Bが上下方向に傾斜して形成される。被覆ブロック34の積み上げ時、上下の被覆ブロック34A、34Bによりこれら溝が接続されてが同一径の半円状溝となるよう構成される。このため、被覆ブロック34は左右に側面39A、39B同士を付き合わせて列を構成すると、上下の列毎に上下で傾斜したジョイント孔(孔)38A−38Bが形成されるようになっている。このジョイント孔38A−38Bにコンクリートを打設し、上下の段の被覆ブロック34A、34Bを接続するようにしている。すなわち、第4の工程S4で上段のブロック列34Bが積み上げられると、隣り合う被覆ブロック34、34間に傾斜したジョイント孔38A−38Bが形成されるので、この中にコンクリートが打設されると、抜け止めが図られるようになっている。
図13の(A)、(B)はそれぞれ、上記第1の実施例に係る盛土の補強構造2の変形例を示すもので、この変形例に係る盛土の補強構造42は、第1の実施例に係る盛土の補強構造2に用いられる被覆ブロック4が、壁面6Aと底面4jとにより角部7を形成し、切り欠き部8に角部7を係合させた際、外側傾斜面6Aを上下の被覆ブロック4A、4Bで高さが異なる同一傾斜角度の法面となるように構成しているのに対し、平坦な同一傾斜面となるようにした点が異なっている。
この変形例に係る盛土の補強構造42に用いられる被覆ブロック44は、概略四角柱状に形成される。被覆ブロック44の前面には、傾斜面46Aと、この傾斜面46Aと底面44jとの間に下側切り欠き部46Bとが形成される。被覆ブロック44の上面には、傾斜面46Aと接続され平坦面46Cを備えた突出部45と、この突出部45と垂直面48Aを介して接続される平坦部48Bとが形成される。これら垂直面48Aと平坦部48Bとで上側切り欠き部48が形成される。下側切り欠き部46Bは下側の被覆ブロック44Aに上側の被覆ブロック44Aが積み重ねられると、突出部45に係合し、平坦な同一傾斜面46Aを形成するようになっている。被覆ブロック44は外側傾斜面46Bの地盤3に対する傾斜角度αを、例えば90〜130度程度とする急勾配の法面を形成するようになっている。
この実施例に係る盛土の補強構造42の築造方法は、まず、第1の工程S11で地盤3の築造予定地を整地し、第2の工程S12で整地された被構築場所に一段目となる被覆ブロック44Aを左右方向に接続して配置し、一段目の被覆ブロック44A、44A・・・の列を形成する。次に、第3の工程S13で、補強材5の延出部5Bを被覆ブロック44の内側に敷き延ばして地盤3上に敷設する。そして、敷設された延出部5B上に盛土9を転圧高さに達するまで投入し、転圧高さに達すると、盛土9の上面を転圧する。転圧が終わると、第4の工程S14で、二段目となる上側被覆ブロック44Bの下側切り欠き部46Bを下側被覆ブロック44Aの突出部45に係止させて配置し、上側被覆ブロック44B列を形成する。上下側の被覆ブロック44A、44B列は、下側の傾斜面46Aと上側傾斜面46Aとがほぼ同一傾斜角度の平坦な法面となっている。こうして、二段目の被覆ブロック44Bの列が形成されると、第4の工程S14後、第3の工程S13と第4の工程S14とを繰り返し、盛土9の投入と転圧とを行い、さらに、上段に被覆ブロック44C、44D、・・・の列を形成し、所望の築造予定高さに達すると、現場打ちコンクリートで天端工を設け、築造を完了するようになっている。このように、切り欠き部46Bと突出部45とを付け合わせるだけで位置決めを容易に行うことができ、被覆ブロックの滑動を防止するだけでなく、被覆ブロックの据え付け正確かつ容易に行うことができる。
図14の(A)ないし(D)はそれぞれ、被覆ブロックの変形例を示す斜視図である。図14の(A)に示す被覆ブロックは、本体が四角柱形状に形成され外側傾斜面がほぼ垂直に近い急角度の傾斜面を有し、上下面に傾斜した連通孔が穿設されている。そして外側傾斜面上端には、係止部が形成されている。図14の(B)に示す被覆ブロックは、図14の(A)に示す被覆ブロックに対し、緩やかな外側傾斜面とこの外側傾斜面上端部と連続する切り欠き部とが形成されている。図14の(C)は、図14の(B)に示す上段側被覆ブロックと連通孔の位置を異ならせて形成され上段側被覆ブロックと組み合わせて用いられる下段側被覆ブロックを示す。図14の(D)は、図14の(B)、(C)に対して、連通孔を備えていない点が異なる他は、上面に緩やかな傾斜部とこの傾斜部に連続する切り欠き部を形成している点が共通している。
図15は、補強材5をジオテキスタイルで構成し、型枠にジオテキスタイル5の埋設端を埋設した状態を示している。型枠M3の背面部を成型する枠151の内側中央にジオテキスタイル5の埋設端5Aを接続し、枠151の底面側一端からジオテキスタイル5を外側に延出させるようにしている。ジオテキスタイル5の剛性を利用して埋設端5Aを円弧状にして埋設している。
図16の(A)は、被覆ブロックの変形例を示すもので、上記第1の実施例および変形例に係る盛土の補強構造に用いられる被覆ブロック4、4−1〜4−5、14、34、44が、補強材(ジオテキスタイル)5を被覆ブロックの盛土側背面から延出させているのに対し、被覆ブロック54の底面54jから盛土側に延出させた点が異なっている。すなわち、補強材5の一端を被覆ブロック54内に埋設し,被覆ブロック54の底面54jのほぼ中央から外部に露出させ盛土側に延ばすようになっている。図16の(B)ないし(D)はそれぞれ、補強材5が延出される部位を背面側とした場合(図16の(B)、(C)参照)と、この変形例に係る被覆ブロック54のように、延出される部位を底面側とした場合(図16の(D)参照)とで、各変形例のコンクリートブロックを用いて築造された盛土の補強構造において背面盛土が沈下した時の補強材の挙動を示す比較して示す説明図である。図16の(B)、(C)に示すように、背面側から延出させた場合、盛土の沈下により補強材5がせん断変形して局所的な伸びにより破断する虞があるのに対し、図16の(D)に示すように、底面54jから延出させた場合、背面盛土の沈下に対して補強材5が引っ張られる長さが長くなるので、局所的に補強材5が伸びるのを防止することができる。このような構成により盛土9が多少沈下しても破断を回避することができる。
図17ないし図19はそれぞれ、揚力による法肩ブロックの引き剥がれ現象を実験により再現した説明図、堤防越流時における裏法肩付近への負圧の作用を説明する説明図および法肩ブロックと天端コンクリートを連結した構造のモデルにより作用する力を説明する説明図である。また、図20および図21はそれぞれ、従来の防潮堤モデルを用いて越流実験を行い、導かれた越流水深と法肩ブロックの起き上がりに対する安全率との関係を示すグラフおよび本願発明に係る防潮堤モデルを用いて越流実験を行い、導かれた越流水深と法肩ブロックの起き上がりに対する安全率との関係を示すグラフである。図17ないし図21に基づいて、上記実施例および各変形例に係る盛土の補強構造に用いられる被覆ブロックと天端コンクリートの接続構造とその作用について説明する。
高速の越流水が堤防天端を通過して陸側法肩から下流法面に向かって流下する際、越流水は法肩から剥離して外側に飛び出そうとする。この際、越流水と法面の間に空気が供給されず、越流水が法面から剥離しない場合、越流水の遠心力によって揚力が法面に作用する。越流水深が深くなると、法肩ブロックに負圧が作用し、法面外側へ強く引っ張られる。そして、ある一定以上の負圧が発生すると、図17のようにブロックが引き剥がされる。図18は、津波越流時に堤防裏法肩付近に発生する負圧の作用図である。負圧の大きさと負圧の作用範囲は、流速の二乗に比例する項と越流水深に比例する項の和で表せる。図18は、従来の堤防を示す。被覆ブロックと天端コンクリートが連結されていないので、図18中、A点を起点として法肩ブロックが単独で起き上がる。一方、被覆ブロックと天端コンクリートが連結した堤防では、図19中、A点を起点とした法肩ブロックの起き上がりに伴って、ジオテキスタイルで法肩ブロックに連結された天端コンクリートも図19のB点を起点として持ち上がる。天端コンクリート底面に非透水性又は難透水性の盛土材を配置していれば、天端コンクリート底面に水圧が回り込むことを防止できるので、法肩ブロックの起き上がりに対する抵抗として天端コンクリートの気中重量Wcとその上の越流水をカウンターウェイトWwとして見込むことができる。なお、図19は法肩ブロックが起き上がった状態を示しているが、上記のカウンターウェイトを見込めるのは、天端コンクリート底面に水圧が回り込まず、起き上がっていない状態であることに注意が必要である。
図20は、図18の理論的関係に基づいて計算された越流水深と被覆ブロックの引き剥がれに対する安全率の関係を示したものである。従来の2.0tonで厚さ0.50mの被覆ブロックは、5.7m付近で安全率1.0であり、水理実験で引き剥がれるときの越流水深と一致している。一方、図21の被覆ブロックと天端コンクリートを連結した堤防は、越流水深16.0m以上でも安全率1.0以上を確保しており、越流水深16.0mを発生させた場合の津波の水理実験において引き剥がれを防止できたという実験的事実と整合している。
以上のように、本発明は、図22の(A)に示すような従来のコンクリート3面張りの盛土の補強構造では、(1)浮き上がりや引き剥がしに弱く、(2)連鎖的な崩壊に発展しやすく、(3)落下流・漂流物に対して被覆コンクリートが損傷しやすいという課題に対し、背面部からジオテキスタイル(補強材)を延出させた被覆ブロックを係止部により係止させて積み上げ盛土の補強構造を構築した(図3参照)ので、(1)揚力に対して浮き上がりを防止することができ、(2)不陸の発生による抗力の増加を防止することができる。このため、地震に強く、浮き上がりやめくれ上がりに強く、落下流・漂流物の損傷にも強く、しかも損傷しても連鎖的な崩壊に至りにくいという効果を奏する。
さらに、本発明では、盛土築造工程中に法面部に、被覆ブロックを設置するため、法面整形の作業が省略できる。また、ジオテキスタイルを被覆ブロックのアンカーにしているため、引き剥がれに強い構造となる。さらに、盛土(背面土)にセメント改良土を用いることにより、吸い出しを防止することができる。かつ、被覆ブロックに高い支持力が確保でき、越波や越水による衝突力に対する変形や破壊を防止できる。また、一般にセメント改良土は、透水性が低いために、法面からの越流水が浸透しない。このため、間隙水圧が上昇しにくい。その結果、ジオテキスタイルに作用する有効応力は保持され、所要の引抜き抵抗力を維持することができる。さらに、後ろ法肩部では、越流水の遠心力によって、被覆工を引き剥がす力(揚力)が作用する。図22に示す従来の補強構造では、揚力に対しては、コンクリートの自重でしか抵抗できないのに対し、本発明では、被覆ブロックと天端コンクリートまたはその背面のセメント改良土をジオテキスタイルによって一体化させることができるので、より大きな抵抗モーメントを得ることができる。すなわち、セメント改良土や盛土材に敷設されたジオテキスタイルによって揚力に対する安定性を向上させることができる。また、上側被覆ブロックの外側傾斜面を下側被覆ブロックの外側傾斜面に対して高くするようにしているので、たとえ、不陸が発生しても抗力が発生しにくく、盛土の変形に対しても耐侵食性の低下を阻止することができる。さらに、ジオテキスタイルにより盛土を補強でき、高い耐震性が確保できる。また、セメント改良土を併用することにより被覆工と背面土の一体化が進み、不陸が発生しにくい。ダムや河川、ため池、水路護岸等の波浪や洪水時の越流侵食の保護工としても利用可能である。
ところで、従来のプレキャストコンクリートブロックを用いた被覆構造では、コンクリートブロック同士の接合部に隙間を有しているため、構造的に遮水性を確保することが困難である。このため、積極的に透水性や透気性を高めた構造にし、波浪作用時における揚圧力や残留水圧を消散する構造にしている。従って、コンクリートブロックの背面に作用する揚圧力や残留水圧に対しては、コンクリートブロックの自重で安定性を確保する一方、粒子間の接触力が高く間隙が大きい割栗石と開口率の大きいコンクリートブロックを用いることで、速やかに陽圧や残留水圧を消散し、残留水圧による構造的な不安定化を防ぐようにしている。コンクリートブロックの隙間よりも大きな粒径の割栗石を用いることで、盛土材の吸い出しを防止するねらいもある。一方、裏込め材に砂などを用いた場合では、残留水圧によって有効応力が低下しやすく、裏込め材の流動化が引き起こされやすい。さらに、間隙水が堤体外へ排出される際に吸い出しが生じやすい。津波作用時は、コンクリートブロック間の隙間を通じて、コンクリートブロックの背面に水圧が伝播し、裏法側の被覆ブロックや天端工に揚圧力が作用する。一定の揚圧力に達すると、浮き上がりが生じることになる。このため、(a)揚圧力を低下させることと、(b)揚圧力に対する抵抗力を向上させることが重要になる。本発明では、前者について、(i)コンクリートブロックに係止部を設けた構造とすることにより被覆工全体の透水性や通気性を小さくし、コンクリートブロック背面に発生する揚圧力を減少させるようにしている。また、(ii)コンクリートブロック背面の裏込め材に固化処理土の層を形成し、裏込め材の透水性や透気性を低くし、揚圧力の発生領域が小さくなるようにしている。後者については、(iii)コンクリートブロックの自重を大きくし、(iv)コンクリートブロック同士の連結を確実にして連結強度を確保し、(v)引っ張り補強材をアンカー材として用い、引っ張り補強材によりコンクリートブロックを盛土に固定するようにしている。
さらに、従来のプレキャストコンクリートブロックを用いた被覆構造では、コンクリートブロックの自重を大きくして安定性を確保することしかできなかったため、緩勾配の法面(例えば、1:1.5〜1:4)にしか適用することができない。さらに、地震力に対してはコンクリートブロックの底面摩擦でしか安定性を保てないので、耐震性を向上させることが困難であった。これに対し、地震力に対して盛土と被覆構造の安定性が大幅に向上する。さらに、本発明では、引っ張り補強材を用いたアンカー補強、コンクリートブロック間の係止構造や連結構造および遮水性および固結力を有する固化処理土を裏込め材として用いることにより、急勾配の法面(例えば、垂直〜1:1)を形成することができる。
このように上記各実施例に係る本発明では、津波が堤防に衝突し、越流した時に懸念される被覆ブロック剥離と下流ののり先の地盤の穿堀による被覆ブロックの不安定化から始まる堤体の侵食破壊に対する抵抗力を大幅に向上させ、たとえ、損傷を受けても連鎖的な崩壊を回避することができる。また、同時に地震力に対する堤防と被覆土の安定性を大幅に向上させることができる。
なお、上記各実施例および変形例では、盛土形式の防潮堤について述べているが、これに限られるものではなく、堤体以外にも建築や復旧工事など盛土構造一般に適用できることはいうまでもない。