JP6463198B2 - 斜面構造物の構築方法 - Google Patents
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Description
先ず、図1〜図10を用いて、本発明の実施形態に係る斜面構造物の構築方法で構築する斜面構造物の構成について説明する。図1に示すように、実施形態に係る斜面構造物として、谷(沢)に土石流を防ぐために設けられる砂防堰堤を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る充填材2は、いわゆるソイルセメントであり、現地において掘削等で発生した発生土砂と固化材とが撹拌混合されたうえ、上流側斜面体3と下流側斜面体4の間に充填される。この充填材2は、発生土砂に含まれる水分と固化材のセメント成分との水和反応により水和物が土砂の粒子を包含しつつ固化することで堤体10の所定形状を安定的に維持するとともに、堤体10の大部分の重量を占め土石流にその重量で対抗する機能を有している。
砂防堰堤1の上流側斜面体3は、図3、図4に示すように、外側表面を覆って保護する複数枚の保護パネル30と、これらの保護パネル30の脚部が撓まないように支持する1条の基礎梁31と、この基礎梁31に取り付けられ上流側斜面体3が所定の傾斜角度となるように支持する複数個のアングル材32と、保護パネル30の腹部が撓まないように支持する複数段の腹起し材33と、保護パネル30の上端に沿って設けられる1条の堤冠材34など、から構成されている。
土石流の衝撃荷重に耐え得る強度が要求されることと、人力で運搬取り付けが可能な重量であることなどの理由から、上流側斜面体3に用いられる本実施形態に係る保護パネル30には、図5に示す軽量鋼矢板が採用されている。この軽量鋼矢板は、一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる厚さ4mmの軽量鋼矢板であり、防錆のため外表面に塗装が施されている。
基礎梁31は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる溝形鋼(125×65×6×8)であり、図6等に示すように、後述のアングル材32及び鉄筋コンクリートからなる基礎均しコンクリートF1に固定されている。また、基礎梁31同士の連結は、基礎梁31の端部同士を突き合わせて、それらを山形鋼(L-65×65×6)からなる接合アングルで連結・接合している。
アングル材32は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる山形鋼(L-65×65×6)が三角形状に組み合わされた部材であり、保護パネル30に沿った柱材32aと、基礎均しコンクリートF1に沿って取り付けられるつなぎ材32bと、これら柱材32aとつなぎ材32bとを繋ぐ斜材であるサポート材32cなどから構成されている。また、アングル材32は、つなぎ材32bが基礎均しコンクリートF1にアンカーボルトで固定されることで、上流側斜面体3を基礎均しコンクリートF1上に所定角度で据え付ける機能を有している。
腹起し材33は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる山形鋼(L-75×75×6)からなり、図示形態では、4段に亘って設けられている。この腹起し材33は、保護パネル30を止め付けて、保護パネル30が上流側へ膨らんだり、下流側へ凹んだりすることを防ぐ機能を有している。また、腹起し材33同士の連結は、腹起し材33の端部同士を突き合わせて、それらを厚さ6mmの帯鋼(PL-6×119×513.4)からなる接合プレートで連結・接合している。
また、この腹起し材33には、図4等に示すように、D19の異形鉄筋(SD295)の先端に曲げ加工によりフックが形成されたアンカー材35が、所定間隔毎に充填材2の内部へ向け突設されている。このアンカー材35は、腹起し材33を充填材2に定着させて腹起し材33ごと複数枚の保護パネル30の連結体が外部(上流側)へ膨らむことを防止する機能を有している。
堤冠材34は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる溝形鋼(125×65×6×8)であり、保護パネル30の上端を覆って上流側斜面体3全体の上端の曲げ強度を高める機能を有している。なお、この堤冠材34については、後で詳述する。
砂防堰堤1の下流側斜面体4は、図3、図7に示すように、外側表面を覆って保護する複数枚の保護パネル40と、これらの保護パネル40の左右両端の脚部を所定の傾斜角度に固定する複数個の支持アングル41と、保護パネル40同士を上下に連結する複数個の上下連結材42と、保護パネル40同士を左右に連結する左右連結材である複数枚のペーシー43など、から構成されている。
土石流の直撃は考えにくいこと、及び下流域からも常に見渡せる面であることなどの理由から、下流側斜面体4に用いられる本実施形態に係る保護パネル40には、意匠性の高い図8に示すコンクリートパネルが採用されている。このコンクリートパネルは、厚さ150mmの鉄筋コンクリート製の立面視横長な矩形(幅1495×高さ1020)の平板パネルであり、裏面の四隅付近に後述のアンカー材44を掛け止めるフック40aが設置されている。
支持アングル41は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる山形鋼(L-125×75×7)が三角形状に組み合わされた部材であり、保護パネル40に沿った長さ480mmの柱材41aと、基礎均しコンクリートF2に沿って取り付けられる長さ480mmの底辺材41bと、これら柱材41aと底辺材41bとを繋ぐ長さ600mmの斜材41cなどから構成されている。また、図7に示すように、支持アングル41は、底辺材41bが基礎均しコンクリートF2にアンカーボルトで固定されることで、1段目の保護パネル40を鉄筋コンクリート製の基礎均しコンクリートF2上に所定角度で据え付ける機能を有している。
上下連結材42は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)製の山形鋼(L-125×75×7)からなる、長さ810mmの部材であり、図7に示すように、保護パネル40の裏面に埋設されたインサートにボルト止めされることで、上下の保護パネル40同士を連結する機能を有している。なお、インサートは、回転防止のためパネル毎に2か所ずつ埋設されている。
左右連結材であるペーシー43は、防錆のため外表面に塗装が施された一般構造用圧延鋼材(SS400)からなる厚さ4.5mmの平鋼(4.5×60×280)であり、図7に示すように、保護パネル40の裏面に埋設されたインサートにボルト止めされることで、左右の保護パネル40同士を連結する機能を有している。
アンカー材44は、D16の異形鉄筋(SD295)からなり、両端に曲げ加工によりフックが形成されている部材である。このアンカー材44は、一方のフックが保護パネル40のフック40aに掛け止められ、他方のフックが充填材2内に挿置されることにより、保護パネル40を充填材2に定着させて複数枚の保護パネル40の連結体が外部(上流側)へ膨らむことを防止する機能を有している。
次に、図11〜図19を用いて、本発明の実施形態に係る斜面構造物の構築方法について説明する。図11〜図13に示すように、斜面構造物として前述の砂防堰堤1と同様の砂防堰堤1’を築造する場合で説明する。なお、砂防堰堤1と同一構成は同一符号を付し説明を省略する。図11が、砂防堰堤1’の上流側斜面を主に示す上流側立面図であり、図12が、砂防堰堤1’の下流側斜面を主に示す下流側立面図であり、図13が、砂防堰堤1’の鉛直断面図である。要するに、砂防堰堤1’と砂防堰堤1とは、保護パネルの組合せ形と堤体10’と堤体10の形状が相違するだけである。
図14に示すように、先ず、地山Gを砂防堰堤1’の設計に合わせて、図15、図16に示す所定形状に掘削する。
そして、測量等で上流側斜面体3及び下流側斜面体4の位置を出し、仮枠を設置して、所定の異形鉄筋を配筋したうえ、その仮枠内にコンクリートを打設して、上流側斜面体3及び下流側斜面体4のぞれぞれの下方に前述の基礎均しコンクリートF1,F2を打設する(図15、図16参照)。その後、仮枠を撤去する。
次に、コンクリートF1,F2上に、アングル材32や支持アングル41をセットし、保護パネル30,40を馬貼り状に互い違いに並設して取り付け、上流側斜面体3及び下流側斜面体4の1段目を組み立てていく(図6、図10も参照)。このとき、保護パネル30は、クレーンや重機でまとめて堤体10の頂部付近に揚重した後は、軽量であるため作業員が人力で設置することができる。なお、保護パネル40は重いため設計法勾配に合わせた吊り冶具やクレーン等の揚重装置を利用して設置する。
次に、砂防堰堤1’の築造現場とは、別ヤードで発生土砂と固化材とを混ぜ合わせた前述のソイルセメントからなる充填材2をダンプトラック等で搬入して、充填材2をアンカー材35,44の高さまで充填し、ブルドーザやバックホーなどで敷き均す。
また、本実施形態に係る斜面構造物の構築方法では、充填材充填工程と並行して、次工程で金網6を上流側斜面体3と略直交する方向に立設するため、図11に示す段状に並設された保護パネル30の各段の側端Xにおいて、図17〜図19に示すように、地山Gと上流側斜面体3の延長線の外側との間に形成される隙間空間Yに合わせて金網6を逆台形状(図17の一点鎖線、図19参照)に切断する。
そして、図19、図18に示すように、逆台形状に切断した金網6を保護パネル30の各段の側端X(図11等参照)において上流側斜面体3の斜面と略直交する方向に立設して、外部充填材2’の捨て枠とする。ここで、略直交とは、上流側斜面体3の斜面と平行又は斜面に沿って金網6を立て付けるのではなく、斜面と立設する金網6の面が直交するように交わる方向に設置することを意味し、厳密に垂直であることを意味していない。
次に、本実施形態に係る斜面構造物の構築方法では、金網立設工程で立設した金網6を捨て枠として、上流側斜面体3の斜面外部となっている隙間空間Y(図19等参照)に金網6まで外部充填材2’を充填する。
次に、敷き均した充填材2及び外部充填材2’の上を振動ローラで走行したり、ブルドーザで走行したりして充填材2を転圧して締め固める。勿論、転圧機やランマ等で転圧してもよい。
次に、転圧して締め固めた充填材2の上に、アンカー材35,44を載置(セット)し、一端を保護パネル30,40に取り付ける。なお、図17に示すように、保護パネル40と、保護パネル30のアンカー材35,44の設置高さが違うため、複数回に分けて、充填材2を充填することとなるが、前述の転圧工程は、アンカー材設置の全てのタイミングにおいて行う必要はない。転圧して締め固めるために必要な回数は、充填材2の厚みや粘度等から適宜判断すればよい。
そして、図18等に示すように、保護パネル30の各段の下方に設置される中間基礎均しコンクリートF3の高さまで外部充填材2’の充填がされた場合は、基礎均しコンクリートF1と同様に仮枠を設置し、所定の異形鉄筋を配筋して鉄筋コンクリートからなる中間基礎均しコンクリートF3のコンクリートを打設する。
その後、最上段の保護パネル組立工程→充填材充填工程→斜面外部充填工程→転圧工程→アンカー材設置工程を行い、保護パネル30(40)の上端に沿って上方へ延伸する天端コンクリート5の型枠を設置する。なお、上流側斜面体3には、上面に平面を有する堤冠材34が設置されているので、その堤冠材34の平面に直角の角を有する型枠の設置作業を効率よく行うことができる。このため、型枠設置作業を短時間で行うことができる。
次に、前工程で設置した型枠内にコンクリートを打設して、充填材2の天端を雨水の浸食から保護する天端コンクリート5を構築する。
次に、天端コンクリート5の型枠及び仮設足場などの仮設材を撤去して斜面構造物である砂防堰堤1’の構築が終了する。
10,10’ :堤体
11,11’ :越流部
2 :充填材
2’ :外部充填材
3 :上流側斜面体
30 :保護パネル
31 :基礎梁
32 :アングル材
33 :腹起し材
34 :堤冠材
PL :平鋼板
35 :アンカー材
4 :下流側斜面体
40,40’ :保護パネル
40a,40a’ :フック
41 :支持アングル
42 :上下連結材
43 :ペーシー(左右連結材)
44 :アンカー材
5 :天端コンクリート
6 :金網
7 :支持棒
F1,F2 :基礎均しコンクリート
F3 :中間基礎均しコンクリート
G :地山
X :保護パネルの側端
Y :隙間空間
Claims (5)
- 複数の保護パネルを並設して斜面を形成するとともに、その斜面を形成する前記保護パネル内に充填材を充填して斜面を有する構造物を構築する斜面構造物の構築方法であって、
段状に並設された前記保護パネルの各段の側端と前記斜面構造物を設置する地山との間の前記斜面外側に形成される隙間空間に合わせて金網を切断する金網切断工程と、切断した前記金網を前記側端において前記斜面と略直交する方向に立設する金網立設工程と、立設した前記金網まで前記斜面の外側に外部充填材を充填する斜面外部充填工程と、を備えること
を特徴とする斜面構造物の構築方法。 - 前記斜面外部充填工程では、前記外部充填材として前記保護パネル内に充填した充填材と同じ充填材を前記斜面の外側に充填すること
を特徴とする請求項1に記載の斜面構造物の構築方法。 - 前記斜面外部充填工程で充填した前記外部充填材の上に、前記保護パネルを据え付ける基礎となる基礎均しコンクリートを打設する中間基礎均しコンクリート打設工程を有すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の斜面構造物の構築方法。 - 前記保護パネルとして、曲げ剛性を強化するため屈曲加工されたスチールパネルが使用されていること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の斜面構造物の構築方法。 - 前記充填材及び/又は前記外部充填材として、土砂に固化材を混ぜ合わせたソイルセメントが使用されていること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の斜面構造物の構築方法。
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