JP6784265B2 - 麺様食品およびその製造法 - Google Patents
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Description
本発明は上記の問題を改良し、小麦粉を原料とする麺類に近い品質を有し、ダイエット食品として利用することもできる、低カロリーの麺様食品を提供することを課題とするものである。
(1)熱不可逆性の多糖類ゲルによって少なくとも麺線が形成されており、不溶性食物繊維及び豆乳クリームが該麺線中に含まれることを特徴とする、麺様食品、
(2)熱不可逆性の多糖類ゲルの原料がこんにゃく又はグルコマンナンである、前記(1)記載の麺様食品、
(3)不溶性食物繊維がオカラである、前記(1)又は(2)記載の麺様食品、
(4)豆乳クリームの脂質/蛋白質比が質量換算で1以上である、前記(1)〜(3)の何れか1項記載の麺様食品、
(5)麺様食品がパスタ様食品である、前記(1)〜(4)の何れか1項記載の麺様食品、
(6)a)熱不可逆性のゲルを形成する多糖類、豆乳クリーム、不溶性食物繊維及び水を混合する工程、
b)前記混合物とアルカリを混合し、凝固物を形成させる工程、
c)前記凝固物を成形して、麺線を形成させる工程、及び、
d)該麺線を茹で加熱して熱不可逆性の多糖類ゲルを形成させる工程
を含むことを特徴とする、麺様食品の製造法、
(7)工程a)が、該多糖類、豆乳クリーム及び水を混合してゼリー状にした後に、不溶性食物繊維を混合する工程で行われる、前記(6)記載の麺様食品の製造法、
(8)該多糖類、豆乳クリーム及び水の混合を起泡させて行う、前記(7)記載の麺様食品の製造法、
(9)該多糖類、豆乳クリーム及び水の混合を起泡させることなく行う、前記(7)記載の麺様食品の製造法、
(10)該不溶性食物繊維と該多糖類との混合比率が質量換算で1:99〜20:80である、前記(6)〜(9)の何れか1項記載の麺様食品の製造法、
(11)麺線を黄色系に着色させてパスタ様に着色加工する、前記(6)〜(10)の何れか1項記載の麺様食品の製造法、
(12)前記d)工程の後に麺線を油で炒める工程を含む、チルドタイプである前記(6)〜(11)の何れか1項記載の麺様食品の製造法、
(13)前記d)工程の後に麺線を油で炒めた後、水通しし、さらに炒める工程を含む、チルドタイプである前記(6)〜(11)の何れか1項記載の麺様食品の製造法、
(14)前記d)工程の後に麺線を冷凍する工程を含む、冷凍タイプである前記(6)〜(11)の何れか1項記載の麺様食品の製造法。
本発明の麺様食品の用語は、一般的な小麦粉や米粉等の穀粉を主原料とする麺類と同様の外観を有する食品を意味する。麺類としては、パスタ、中華麺、うどん、そば、ひやむぎ、素麺、マカロニ、ラグマン、ビーフン、クイティアオ、フォー等が挙げられる。本発明の麺様食品では、食感の点で特にパスタ様とするのが好ましい。
麺様食品は生麺タイプ、茹で麺タイプ、冷凍麺タイプ、油揚げ麺タイプ、乾麺タイプ、フリーズドライ麺タイプ等、いずれの製品形態であってもよい。
本発明の麺様食品は、熱不可逆性の多糖類ゲルによってその麺線の構造が形成されている。熱不可逆性の多糖類ゲルを形成するための原料の多糖類や該多糖類を含む素材としては、こんにゃく粉やその主成分であるグルコマンナン、カードラン、アルギン酸、アルギン酸塩、低メトキシルペクチン、ローカストビーンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、ジェランガム等が挙げられる。これらのうち、特に麺様食品を小麦粉のパスタ様にした際に、弾力の強さやコシをより付与できる点で、こんにゃく粉やこれを精製したグルコマンナンが好ましい。
本発明の麺様食品は、豆乳クリームが該麺線中に含まれることを一つの特徴とする。
豆乳クリームは豆乳よりも脂質含量の高いものであり、「大豆乳化組成物」と称することもができる。一般に生クリームは牛乳から遠心分離機で分離して製造されるが、一態様として、それと同様に豆乳クリームも例えば、丸大豆から得た豆乳をさらに遠心分離することにより生成する低比重の油分に富むクリーム層を回収して得たものを使用することができるが、特にその製法は限定されるものではない。別の態様として、市販の豆乳、油脂、必要により乳化剤を加えて大豆乳化組成物としたものも麺線中に含めることができる。この場合、豆乳クリームは、各原料の混合段階で予め調製しておくことができるが、かかる工程は必須ではなく、本発明の効果が奏する限り、各原料の混合段階において、例えば豆乳と油脂を熱不可逆性の多糖類や不溶性食物繊維等の他の原料と一緒に混合することにより、混合後には豆乳クリームが含まれているのと同様の組成となる態様であっても良い。
本発明の麺様食品は、不溶性食物繊維が該麺線中に含まれることを一つの特徴とする。不溶性食物繊維が含まれることにより、麺線を高密な咀嚼感のある食感に仕上げることができる。不溶性食物繊維としては、大豆等の豆類のオカラ、キトサン、セルロース、ヘミセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グルカン、リグニン、小麦ふすま、小麦胚芽、オートミール、コーンミール等が挙げられる。これらのうち、特に豆乳クリームとの相性が良く風味が良好となる点で、オカラが好ましい。
なお、不溶性食物繊維としてオカラを用いる場合には、一般的な豆乳や分離大豆蛋白を製造する際に副産物として生ずるオカラを用いることができる。
また前記豆乳クリームの製造時に分離したオカラや、前記豆乳クリームからオカラを分離する前の、オカラ入り豆乳クリームを用いることもできる。これにより麺線がふんわりとした食感となり、さらに前記の一般的なオカラを用いた場合に感じる特有の臭気を低減することができ、小麦粉パスタに近い好ましい風味の麺様食品を得ることができる。
熱不可逆性のゲルを形成する多糖類、豆乳クリーム、不溶性食物繊維及び水を混合する。これらの原料の混合順序は特に限定されないが、好ましい態様として、該多糖類、豆乳クリーム及び水を混合してゼリー状になるまで混練した後、該混練物に不溶性食物繊維を混合する。該多糖類、豆乳クリーム及び水を混合する際は、泡立て器で強く撹拌し、起泡させつつ行っても良いし、緩く撹拌して起泡させることなく行っても良い。起泡させないタイプではより咀嚼感が強い麺様食品が得られる。この際、不溶性食物繊維と該多糖類との混合比率は、質量換算で1:99〜20:80が好ましく、2:98〜10:90がより好ましい。
前記a)工程で得られた混合物とアルカリを混合し、凝固物を形成させる。混合後は3〜5分程度静置しておくと凝固物の物性がまとまり、多糖類ゲルの弾性(こんにゃく質)が強くなり、麺線のコシを出すことができる。アルカリは液状で混合するのが好ましく、アルカリとしてはカルシウムやマグネシウム等の2価金属イオンの水酸化物が挙げられ、一般的には水酸化カルシウムが好ましい。
前記b)工程で得られた凝固物を成形して、麺線を形成させる。成形方法は特に限定されず、得ようとする麺様食品の種類に応じて適切な成形方法を選択できる。例えばパスタ様食品を得たい場合には、押出法を用いればよいし、中華麺様食品やうどん様食品を得たい場合には、切出法を用いればよい。
前記c)工程で得られた麺線を茹で加熱して、麺線中に熱不可逆性の多糖類ゲルを形成させる。茹で時間は適宜調整することができ、例えば1〜10分間とすることができる。
本発明の麺様食品では、麺線を黄色系に着色させてパスタ様又は中華麺様に着色加工することができる。例えば工程a)においては、その他の原料として黄色色素を添加して麺線に黄色みを付与してパスタ様又は中華麺様の色調に着色加工することができる。黄色色素としてはマリーゴールドやクチナシ等の着色料を用いることができる。また、色素を用いない方法として、例えば前記c)工程で得られた麺線を玉ねぎと一緒に茹で加熱することにより着色加工することもできる。
工程a)においては、その他の原料として香料や調味原料等の添加により適宜所望の風味に調味加工することができる。調味原料としては、糖類、食塩等の塩類、酸味料、粉末だし等の調味料、バター等の加工油脂等が挙げられる。
本発明の麺様食品では、前記d)工程の後に麺線を油で炒めることにより、チルドタイプの麺様食品に加工することができる。またさらに、前記d)工程の後に麺線を油で炒めた後、水通しし、さらに炒める工程を付加することができる。
このように麺線を油で炒めることにより、麺線を油脂コーティングして麺線どうしのくっつきを防止でき、また麺肌が引き締まって食感を硬くすることができる。そして、水通ししてさらに水分を蒸発させる程度に油で軽く炒めることにより、油っぽさを低減することができる。これにより、麺線のくっつきが少ない食感の良好なチルドタイプの麺様食品に加工することができる。
本発明の麺様食品では、前記d)工程の後に麺線を冷凍する工程を付加することができる。これにより、冷凍タイプの麺様食品に加工することができる。
豆乳クリームとして「濃久里夢」(不二製油(株)製、固形分:20%、蛋白質含量:5.5%、油脂/蛋白質比:質量換算で2.2)を用いた。乾燥オカラとして豆腐製造時に副生するオカラを乾燥した製品を用いた。
熱不可逆性の多糖類ゲルとしてのこんにゃく粉5部に、湯90部と豆乳クリーム30部、粉末食用黄色色素0.1部を合わせてゼリー状になるまで泡立て器で起泡させつつ混合した。1時間静置した後、該混合物125部に不溶性食物繊維としての乾燥オカラ5部を加えてゴムべらで混和した。その後に水酸化カルシウム液25部(水:水酸化カルシウム=1:100(質量比)の液)を添加し、素早くゴムベラで練り上げた後、3〜5分程度該混合物を寝かせ、凝固物を形成させた。
次に、該凝固物を押出製麺機で成形し、沸騰した湯で茹でた。茹で上がったら水を切り、オリーブ油をひいたフライパンで油炒めし、油を落とすために水通しし、さらに軽く水をとばす程度に炒めた。得られた麺線を冷蔵して小麦粉パスタ風の麺様食品を得た。
実施例1において、こんにゃく粉、湯および豆乳クリームの混合に泡立て器を使用する代わりにゴムべらを使用し、起泡させることなく混合する以外は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加する代わりに、豆乳クリーム製造時に副生するオカラ(不二製油(株)より入手)の乾燥品5部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
こんにゃく粉および水酸化カルシウムを原料とした市販の糸状のこんにゃく(いわゆる「白滝」)を用意し、下記の品質評価に供した。
実施例1において、豆乳クリーム30部を添加する代わりに湯の全量を120部とし、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、豆乳クリーム30部を添加する代わりに市販の豆乳30部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。市販の豆乳は固形分9%、蛋白質含量4.7%、油脂/蛋白質比が質量換算で0.66であった。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加せずに、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加する代わりに、オートミール5部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加する代わりに、コーンミール5部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加する代わりに、小麦胚芽5部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1において、乾燥オカラ5部を添加する代わりに、小麦ふすま5部を加え、他は実施例1と同様にして麺様食品を得た。
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られた麺様食品についての食感(麺のコシ)、口当たり(まろやかさ)、風味、喫食時の満足感を評価項目として官能評価を行った。評価基準は、
A:非常に良好, B:良好, C:許容範囲, D:やや不良、 E:不良
として、5段階で評価付けを行い、C以上を合格とした。
食感については、コシがあって強い咀嚼感を感じるものを「非常に良好」と評価した。
口当たりについては、非常にまろやかさを感じるものを「非常に良好」と評価した。
風味については、こんにゃく臭を抑えられ小麦粉パスタに近い香りを感じるものを「非常に良好」と評価した。
喫食時の満足感については、喫食したときに上記3つの評価項目を総合し、小麦粉パスタと同様で非常に満足感を得られるものを「非常に良好」と評価した。
この評価結果を表1にまとめた。また、実施例1〜7および比較例1〜4で得られた麺様食品の外観写真を図1に示した。
また実施例、特に実施例1〜3については多糖類であるこんにゃく特有の臭いがマスキングされ、小麦粉パスタのような穀物由来のリッチな風味が付与されることが示された。
そしてこれらの効果が相俟って総合的に喫食時の満足感が高い麺様食品が得られることが示された。
また別の効果として、実施例では麺類に通常つなぎ材として使用される卵を配合しなくとも目的の麺様食品を得ることができており、本発明では卵の使用が不要であることが示された。
実施例1〜7及び比較例1の麺様食品をそれぞれ皿に盛り、その上に市販のパスタソースをかけて食した。その結果、比較例1の麺様食品を食していると徐々にパスタソースの風味が水っぽくなってしまった。これは該麺様食品中のこんにゃく由来の水分がパスタソースに徐々に移行したためと考えられる。一方で実施例の麺様食品では何れもこのような事象は生じず、経時的な変化なくパスタソースの風味を維持することができていた。
Claims (10)
- 熱不可逆性の多糖類ゲルによって少なくとも麺線が形成されており、不溶性食物繊維(熱不可逆性の多糖類ゲルを除く)及び脂質/蛋白質比が質量換算で1以上である豆乳クリームが該麺線中に含まれることを特徴とする、麺様食品。
- 熱不可逆性の多糖類ゲルの原料がこんにゃく又はグルコマンナンである、請求項1記載の麺様食品。
- 不溶性食物繊維がオカラである、請求項2記載の麺様食品。
- 麺様食品がパスタ様食品である、請求項3記載の麺様食品。
- a)熱不可逆性のゲルを形成する多糖類、脂質/蛋白質比が質量換算で1以上である豆乳クリーム、不溶性食物繊維(熱不可逆性の多糖類ゲルを除く)及び水を混合する工程、
b)前記混合物とアルカリを混合し、凝固物を形成させる工程、
c)前記凝固物を成形して、麺線を形成させる工程、及び、
d)該麺線を茹で加熱して熱不可逆性の多糖類ゲルを形成させる工程
を含むことを特徴とする、麺様食品の製造法。 - 工程a)が、該多糖類、豆乳クリーム及び水を混合してゼリー状にした後に、不溶性食物繊維を混合する工程で行われる、請求項5記載の麺様食品の製造法。
- 麺線を黄色系に着色させてパスタ様に着色加工する、請求項5記載の麺様食品の製造法。
- 前記d)工程の後に麺線を油で炒める工程を含む、チルドタイプである請求項5記載の麺様食品の製造法。
- 前記d)工程の後に麺線を油で炒めた後、水通しし、さらに炒める工程を含む、チルドタイプである請求項5記載の麺様食品の製造法。
- 前記d)工程の後に麺線を冷凍する工程を含む、冷凍タイプである請求項5記載の麺様食品の製造法。
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