JP2009296953A - タンパク質粉末とデンプン粉末からなる粉末素材を用いた焼き菓子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】タンパク質粉末として予備加熱してリポキシゲナーゼやトリプシンインヒビターを失活させた大豆微粉末と、デンプン粉末として好ましくは片栗粉とを、重量比にして好ましくは95:5〜50:50の割合で配合し、必要に応じてバニラ香料およびチョコレートチップを添加することにより、雑味・質感が改善されたパウンドケーキ等の焼き菓子とする。
【選択図】なし
Description
この点、特開2003−79309号公報において、小麦粉に代わり、低変性で、NSIが40%以上等の条件を満たした大豆タンパク質で全置換した生地を焼成して得られる焼成食品が開示されており、上記欠点も克服した加工食品の提供を試みている。しかし、これは、材料としての低変性脱脂大豆をエタノール洗浄し、乾燥後、分級する工程を要し、手間という点において迅速・簡便性を欠く。更に、生大豆の微粉末の加工食品への利用については、青臭さの原因成分を生成させるリポキシゲナーゼや消化不良を引き起こすタンパク質成分であるトリプシンインヒビターの活性も問題である。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
[1]小麦由来ではないタンパク質粉末およびデンプン粉末を含む、焼き菓子の材料として用いられる粉末素材;
[2]タンパク質粉末が大豆微粉末である、上記[1]に記載の粉末素材;
[3]デンプン粉末が片栗粉である、上記[2]に記載の粉末素材;
[4]大豆微粉末と片栗粉の配合比が、重量比にして95:5〜50:50である、上記[3]に記載の粉末素材;
[5]大豆微粉末が、予備加熱されている、上記[2]〜[4]のいずれか1つに記載の粉末素材;
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の粉末素材を含む、焼き菓子;
[7]焼き菓子がパウンドケーキである、上記[6]に記載の焼き菓子;
[8]更に添加物を含む、上記[7]に記載のパウンドケーキ;
[9]添加物が、バニラ香料およびチョコレートチップである、上記[8]に記載のパウンドケーキ;
[10]大豆微粉末および片栗粉を含む粉末素材を材料として含む、パウンドケーキの製造方法;
[11]粉末素材における、大豆微粉末と片栗粉の配合比が、重量比にして95:5〜50:50であることを特徴とする、上記[10]に記載の製造方法;
[12]大豆微粉末が、予備加熱されている、上記[10]または[11]に記載のパウンドケーキの製造方法;
[13]更に添加物を含む、上記[10]〜[12]のいずれか1つに記載のパウンドケーキの製造方法;
[14]添加物が、バニラ香料およびチョコレートチップである、上記[13]に記載のパウンドケーキの製造方法;
等を提供する。
本発明におけるタンパク質粉末には、例えば、大豆タンパク質、ホエータンパク質、卵タンパク質およびカゼイン、トウモロコシタンパク質(ゼインまたはツェイン)、家畜・魚介類コラーゲン・ゼラチン、魚肉タンパク質、藻類・クロレラタンパク質、微生物(酵母、カビ等)タンパク質、またはこれらのタンパク質の2種類以上を混合したタンパク質粉末等が挙げられるが、小麦に含まれるアレルギーの原因となるタンパク質(アレルゲン)(例えば、グルテンなど)を含まないことが好ましい。
例えば、本発明の焼き菓子には、パウンドケーキ、クッキー、スポンジ系のケーキ類(カステラ、タルト、ロールケーキ、ショートケーキなど)等が代表的なものとして挙げられる。本発明の焼き菓子は、好ましくは、パウンドケーキである。
さらに、本発明の焼き菓子には、例えば、焼成工程の代わりに「揚げる」、「蒸す」、または「茹でる」等の工程を含む菓子も含まれる。「揚げる」工程を含む菓子の例としては、ドーナツ、かりんとうなど、「蒸す」工程を含む菓子の例としては、饅頭など、「茹でる」工程を含む菓子の例としては、団子などが挙げられる。
60分間、例えば、オーブンで焼成することにより、焼き上げることができる。
生大豆微粉末はマエダ・スーパー・テクノ社製の製品を用いた。大豆微粉末を、ウォーターオーブン「ヘルシオ」(シャープ社製)を用いて、ロースト設定で140℃で15分間加熱処理した。次いで、室温に冷ました後、卓上型粉砕機(ミルサー)(山本電気(株)製)で1分30秒間粉砕処理し、以下の実施例において使用した。
パウンドケーキの基本的分量
本発明におけるパウンドケーキ材料の基本的な分量は表1に示したとおりである。
本発明のパウンドケーキの作製方法(生地作り)としては、以下の3種の作製方法を実施し、主には共立て法を用いた。
(1)共立て法
作業1.大豆微粉末と片栗粉を混ぜ合わせて2回ふるっておく。
作業2.バターのみをクリーム状になるまで混ぜる。
作業3.砂糖を入れ、白っぽくなるまで混ぜる。
作業4.ときほぐした全卵を加えて混ぜる。
作業5.作業1の粉末素材を半量ずつ加え、底から持ち上げるようにして混ぜる。
(2)別立て法
作業1.前日から卵白と卵黄を分け、卵白は冷やしておく。
作業2.バターと分量の70%の砂糖をクリーム状になるまで混ぜる。
作業3.卵黄のみを混ぜる。
作業4.分量の15%の砂糖を卵白に入れて泡立て、メレンゲを作る。
作業5.作業4に続いて、残りの砂糖(分量の15%)を加えてしっかりとしたメレンゲを作る。(つのが高さの1/3まで垂れるくらいのかたさ)
作業6.作業3に続けて、作業5のメレンゲの1/3を加えて途中まで混ぜ、粉末素材を全量加えて底からすくいながらさっくり混ぜる。
作業7.作業6に続けて残りのメレンゲを加えてヘラで大きく混ぜる。
(3)卵の起泡性を生かした方法
作業1.全卵をときほぐし、砂糖を加えて混ぜる。
作業2.次いで、湯煎にかけながら混ぜる。
作業3.45℃になったら湯煎からはずし、室温になるまで一気に泡立てる。
作業4.粉末素材を加えてヘラで大きく混ぜる。
作業5.次いで、溶かしバターを少しずつ垂らしこんでヘラで大きく合わせる。
パウンドケーキの焼き上げ方法としては、上記のいずれかの方法で出来た生地をパウンドケーキ型に流し込み、ウォーターオーブン「ヘルシオ」(シャープ社製)を用いて、オーブン設定で160℃、45分〜1時間焼き上げる方法を用いた。
他の材料・分量は変えずに粉末素材として、小麦粉100g、大豆微粉末50gおよび片栗粉50g、ならびに大豆微粉末50gおよびタピオカデンプン50gを使用して、パウンドケーキを作製し、テキソグラフ(株式会社ユービーエム製)でCW・F(固さ)、CM(脆さ)およびRS(弾力性)の測定を行った(図1)。テキソグラフの操作は、該装置に添付の操作方法説明書に記載の方法に従った。タピオカデンプンを併用した場合は、一般のパウンドケーキから外れ、片栗粉を併用した場合は粉末素材として小麦粉のみを使用したパウンドケーキに近いことが示された。
官能検査に用いたパウンドケーキ試料は、粉末素材として大豆微粉末のみ70g、ならびに大豆微粉末80%および片栗粉20%で配合したもの70gをそれぞれ使用して作製した。パウンドケーキの作製方法としては、上記記載の共立て法に従って作製した。SD法(評点法)を用いて図2に示す項目について評価した。
その結果、粉末素材として大豆微粉末のみを使用したパウンドケーキよりも大豆微粉末80%および片栗粉20%の比で配合を行った粉末素材を使用したパウンドケーキの方が断面の色、口どけの良さ、渋みがないかという項目において高い評価を得た(図3)。また、食感は軽く、しっとり感もあり、よりパウンドケーキらしいという評価を得た。
嗜好調査に用いたパウンドケーキ試料は、粉末素材を小麦粉100%(小麦粉100g)としてレモン香料を添加したもの、粉末素材を大豆微粉末(50g)と片栗粉(50g)とし、レモン香料、シナモンパウダー、キャラメル香料、ならびにバニラ香料およびチョコチップをそれぞれに添加し、5種類を作製した。パウンドケーキの作製方法としては、実施例2に記載の共立て法に従って作製した。作製後3日経過したものを風味嗜好調査に供し、総合的な嗜好について5段階(好ましい、まあまあ好ましい、どちらともいえない、あまり好ましくない、好ましくない)で評価した。結果を図4に示す。
図4に示したように、嗜好調査から、チョコチップとバニラ香料を添加したパウンドケーキが最も高評価であった。これは20代から60代まで、年齢による偏りのない評価結果であり、チョコレート風味は世代に関わらず好まれることが分かった。シナモンパウダーが入ったパウンドケーキは好みが大きく分かれた。また、大豆微粉末と片栗粉で作製したパウンドケーキと小麦粉パウンドケーキの評価の差はあまり感じられず、調査対象者の「2つの違いが分からない」という評価も多かったことから、小麦粉に代わって、大豆微粉末と片栗粉を粉末素材として用いることは、風味嗜好の点からは、可能であることが分かった。
パウンドケーキの作製方法のうち、卵の起泡性を生かした方法と従来用いている共立て法とを比較した場合、テクスチャーにどのような影響を与えるかテキソグラフを用いて調べた(図5)。卵の起泡性を生かした方法は粉末素材として小麦粉のみを使用したパウンドケーキのテクスチャー範囲からかなり外れたものであった。
大豆微粉末と片栗粉の配合比を変えてパウンドケーキを作製し、テクスチャーにどのように影響するのかクリープメータ(株式会社山電製)で破断歪率および破断エネルギーを測定した。クリープメータの操作は、該装置に添付の操作方法説明書に記載の方法に従った。作製した粉末素材の大豆微粉末と片栗粉の配合比を表2に示した。
また図7に示すように、デンプンの添加量が多くなると固くなり、破断エネルギーが増す傾向がある。ここで、破断エネルギーとは、試料を破断させるのに要したエネルギーをいう。破断エネルギーが相対的に小さくなることは、試料が柔らかくなったことを示し、破断エネルギーが相対的に大きくなることは、試料が固くなったことを示す。
片栗粉の添加量が粉末素材の全体の35%以下であると、2日後以降、テクスチャーが安定した状態となる傾向がある。従って、テクスチャーにおける経日的な変化が小さい、即ち、崩れやすさ及び固さにおいて経日的変化を最小限に留めるという観点からは、片栗粉の添加量は、好ましくは、粉末素材全体に対して重量にして35%以下であり、より好ましくは、粉末素材全体に対して重量にして、10%または35%である。
バター100g、砂糖100g、全卵100gに対して、大豆微粉末と片栗粉の配合比(重量比にして大豆微粉末:片栗粉=4:1)を変えず、粉末素材全体の分量が70gの場合と100gの場合それぞれについてパウンドケーキを作成した。各々についてクリープメータで破断歪率および破断エネルギーを測定し、結果を比較した。破断歪率、破断エネルギーについては、図8、図9に示すように、いずれも2日後に増加がみられたが、粉末素材全体の分量が70gの場合のパウンドケーキの方が、100gの場合のパウンドケーキに比べてより低い程度の増加がみられた。従って、テクスチャーにおける経日的な変化が小さいという観点からは、70gの場合のパウンドケーキの方が、100gの場合のパウンドケーキよりも好ましい。
Claims (14)
- 小麦由来ではないタンパク質粉末およびデンプン粉末を含む、焼き菓子の材料として用いられる粉末素材。
- タンパク質粉末が大豆微粉末である、請求項1に記載の粉末素材。
- デンプン粉末が片栗粉である、請求項2に記載の粉末素材。
- 大豆微粉末と片栗粉の配合比が、重量比にして95:5〜50:50である、請求項3に記載の粉末素材。
- 大豆微粉末が、予備加熱されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の粉末素材。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末素材を含む、焼き菓子。
- 焼き菓子がパウンドケーキである、請求項6に記載の焼き菓子。
- 更に添加物を含む、請求項7に記載のパウンドケーキ。
- 添加物が、バニラ香料およびチョコレートチップである、請求項8に記載のパウンドケーキ。
- 大豆微粉末および片栗粉を含む粉末素材を材料として含む、パウンドケーキの製造方法。
- 粉末素材における、大豆微粉末と片栗粉の配合比が、重量比にして95:5〜50:50であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
- 大豆微粉末が、予備加熱されている、請求項10または11に記載のパウンドケーキの製造方法。
- 更に添加物を含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載のパウンドケーキの製造方法。
- 添加物が、バニラ香料およびチョコレートチップである、請求項13に記載のパウンドケーキの製造方法。
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