[水性表面処理剤]
本発明の水性表面処理剤は、水性成膜成分(A)及び多価金属イオン(B)を含む。
(A)水性成膜成分
水性成膜成分(A)は、界面活性剤(a)、親水性高分子(b)及びシリコーン化合物(c)からなる群より選択された少なくとも1種である。
(a)界面活性剤
界面活性剤は、慣用の界面活性剤を利用でき、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤であってもよいが、塗布性及び帯電防止性の改善効果が大きい点から、非イオン性界面活性剤(a1)、アニオン性界面活性剤(a2)が好ましい。
(a1)非イオン性界面活性剤
非イオン性界面活性剤(a1)は、多価アルコール脂肪酸エステルと、疎水性化合物の活性水素原子にエチレンオキサイドが付加した付加体とに大別できる。なお、本発明では、非イオン性界面活性剤(a1)は、後述する親水性高分子(b)で例示されるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を含まない意味に用いる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−12アルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコール;グリセリン、重合度2〜20程度のポリグリセリン(ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリンなど)、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖類(ショ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビタン、オリゴ糖など)などのポリヒドロキシ化合物(多価アルコール類)などが例示できる。これらの多価アルコールは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
脂肪酸としては、モノカルボン酸及び多価カルボン酸のいずれであってもよく、飽和又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。なお、脂肪酸には、脂肪酸を含む成分、例えば、脂肪酸を主成分として含む(例えば、50重量%以上の割合で含む)成分(例えば、ヤシ油などの油脂など)も含まれる。脂肪酸は、C6−40脂肪酸、好ましくはC8−30脂肪酸(例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸などのC8−26飽和脂肪酸、オレイン酸、エルカ酸などのC8−26不飽和脂肪酸など)、さらに好ましくはC10−22飽和脂肪酸(例えば、C10−20飽和脂肪酸)、特にC10−18飽和脂肪酸(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸又はこれらの混合物(ヤシ油脂肪酸など)、オレイン酸などの不飽和脂肪酸など)などであってもよい。
多価アルコール脂肪酸エステルは、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルから選択される場合が多い。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ラウリン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタラウリン酸エステルなど)、ショ糖パルミチン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタパルミチン酸エステルなど)、ショ糖ステアリン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタステアリン酸エステルなど)、ショ糖ベヘン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタベヘン酸エステルなど)、ショ糖オレイン酸エステル(ショ糖モノ乃至ペンタオレイン酸エステルなど)などのショ糖C8−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(モノ乃至ヘキサエステル類など)、特にショ糖C8−24飽和又は不飽和脂肪酸エステル(モノ乃至テトラエステル類など)などが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、グリセリンカプリル酸エステル(グリセリンモノ乃至ジカプリル酸エステルなど)、グリセリンラウリン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジラウリン酸エステルなど)、グリセリンステアリン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジステアリン酸エステルなど)、グリセリンベヘン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジベヘン酸エステルなど)、グリセリンオレイン酸エステル(グリセリンモノ乃至ジオレイン酸エステルなど)などが挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、重合度2〜16程度のポリグリセリンとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、デカグリセリンカプリル酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカカプリル酸エステルなど)、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル(ヘキサグリセリンモノ乃至ヘキサラウリン酸エステルなど)、デカグリセリンラウリン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカラウリン酸エステルなど)、デカグリセリンステアリン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカステアリン酸エステルなど)、デカグリセリンオレイン酸エステル(デカグリセリンモノ乃至デカオレイン酸エステルなど)などが挙げられる。
ソルビトール脂肪酸エステルとしては、ソルビトールとC8−24飽和又は不飽和脂肪酸とのエステル類、例えば、ソルビトールカプリル酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタカプリル酸エステルなど)、ソルビトールラウリン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタラウリン酸エステルなど)、ソルビトールパルミチン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタパルミチン酸エステルなど)、ソルビトールステアリン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタステアリン酸エステルなど)、ソルビトールオレイン酸エステル(ソルビトールモノ乃至ペンタオレイン酸エステルなど)、これらの脂肪酸エステルに対応するソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
これらの脂肪酸エステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい多価アルコール脂肪酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、特にショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖C8−24飽和脂肪酸エステルなど)などが挙げられる。
疎水性化合物のエチレンオキサイド付加体において、活性水素原子を有する疎水性化合物としては、例えば、高級アルコール(ラウリルアルコールなどのC8−24アルコールなど)、芳香族ヒドロキシ化合物(フェノール類、アルキルフェノール類など)、ヒドロキシル基を有する多価アルコール脂肪酸エステル、ヒドロキシル基を有する油脂(ヒマシ油、硬化ヒマシ油など)などが例示できる。
疎水性化合物のエチレンオキサイド付加体としては、例えば、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオクタデシルエーテルなどのポリオキシエチレンC8−26アルキルエーテル(好ましくはポリオキシエチレンC10−20アルキルエーテル)など)、芳香族ヒドロキシ化合物のエチレンオキサイド付加体[例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル(好ましくはポリオキシエチレンC6−10アリールエーテルなど);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(好ましくはポリオキシエチレンC4−26アルキルC6−10アリールエーテルなど)など]、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加体[ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールステアリン酸エステルなどのポリオキシエチレン鎖を有するC8−26脂肪酸エステル(好ましくはポリオキシエチレン鎖を有するC10−20脂肪酸エステルなど)など]、油脂のエチレンオキサイド付加体(ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヤシ油などのヒドロキシル基含有油脂のエチレンオキサイド付加体など)などが含まれる。前記ポリオキシエチレン付加体の数平均分子量は、例えば、150以上(例えば、150〜35,000)、好ましくは200〜20,000、さらに好ましくは200〜10,000程度である。
なお、本発明では、分子量は、ポリスチレン換算で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
疎水性化合物のエチレンオキサイド付加体において、オキシエチレン単位の平均付加モル数は、例えば、2〜100、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜30程度であってもよく、2〜10程度であってもよい。
なお、多価アルコール脂肪酸エステル及びそのエチレンオキサイド付加体において、脂肪酸は単一の脂肪酸に限らず複数の脂肪酸(混合脂肪酸)であってもよい。
非イオン性界面活性剤(a1)は単独で構成してもよく複数(同種又は異種)の界面活性剤を組み合わせて構成してもよい。非イオン性界面活性剤(a1)は、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンC10−20アルキルエーテルなど)から選択された少なくとも一種の成分、特に少なくともショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ラウリン酸エステルなどのショ糖C10−20脂肪酸エステルなど)で構成するのが好ましい。
非イオン性界面活性剤(a1)は、用途に応じて、防曇性などを向上でき、シート化においてロール(特に金属ロール)への転移及び付着や裏移りを抑制できる点から、常温(例えば20〜25℃)で固体であるのが好ましい。非イオン性界面活性剤の融点又は軟化点は、50℃以上(例えば50〜100℃程度)、好ましくは60℃以上(例えば60〜98℃程度)、さらに好ましくは80℃以上(例えば80〜95℃程度)であってもよい。
(a2)アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤(a2)は、スルホン酸塩、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸塩又はリン酸エステル塩などであってもよい。
塩を構成する塩基性物質としては、無機塩基[アンモニア、アルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウムなど)など]、有機塩基[低級アルキルアミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなど)、アルカノールアミン(エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなど)など]などが例示できる。塩は、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルキルアミン塩やアルカノールアミン塩である場合が多い。
スルホン酸塩としては、アルカンスルホン酸塩[ラウリルスルホン酸塩などのC10−20アルカンスルホン酸塩(C10−18アルカンスルホン酸ナトリウムなど)など]、アレーンスルホン酸塩(ベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸塩などのC6−10アレーンスルホン酸塩)、アルキルアレーンスルホン酸塩[オクチルベンゼンスルホン酸塩、ウンデシルナフタリンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩などのC4−20アルキルC6−10アレーンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど)など]、アルキルスルホコハク酸塩[ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸塩などのジC6−20アルキルスルホコハク酸塩(ジ−(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムなど)など]、α−オレフィンスルホン酸塩などが例示できる。
カルボン酸塩としては、飽和カルボン酸塩(オクチル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、アラキジン酸塩、ベヘン酸塩などのC8−26飽和脂肪酸塩など)、不飽和カルボン酸塩(ミリストレイン酸塩、パルミトレイン酸塩、ペトロセリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、リシノール酸塩、エライジン酸塩、ガトレン酸塩、アラキドン酸塩、エルカ酸塩、ブラシジン酸塩などのC8−26不飽和脂肪酸塩など)などが例示できる。
硫酸エステル塩としては、アルキル硫酸エステル塩又はアルケニル硫酸エステル塩(高級アルコール硫酸エステル塩)[ラウリル硫酸エステル塩(ラウリル硫酸エステルナトリウムなど)、オクタデシル硫酸エステル塩などのC10−20アルキル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩などのC10−20アルケニル硫酸エステル塩(オレイル硫酸エステルナトリウムなど)など]、アルキルエーテル硫酸エステル塩(ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン・C10−20アルキルエーテル硫酸エステル塩など)などが例示できる。
リン酸塩又はリン酸エステル塩としては、モノ又はジアルキルリン酸塩[オクチルリン酸エステル塩(オクチルリン酸エステルナトリウムなど)など、ドデシルリン酸エステル塩などのC8−20アルキルリン酸エステル塩など]、ポリオキシエチレン・アルキルリン酸エステル塩(ポリオキシエチレン・アルキルリン酸エステルナトリウムなど)、ポリオキシエチレン・アルキルアリールリン酸エステル塩などのモノ又はジアルキルリン酸塩などが例示できる。
これらのアニオン性界面活性剤(a2)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアニオン性界面活性剤(a2)のうち、アルカンスルホン酸塩、カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、特にC10−20アルカンスルホン酸塩(C10−18アルカンスルホン酸ナトリウムなど)、飽和又は不飽和C10−24カルボン酸塩(オレイン酸カリウムなどのC10−20不飽和カルボン酸塩など)などが好ましい。
アニオン性界面活性剤(a2)も、用途に応じて、防曇性などを向上でき、ロールへの転移及び付着や裏移りを抑制できる点から、常温(20〜25℃)で固体であるのが好ましい。アニオン性界面活性剤(a2)の融点又は軟化点は、50℃以上(例えば50〜300℃程度)、好ましくは60℃以上(例えば60〜280℃)、さらに好ましくは80℃以上(例えば80〜250℃)程度である。
(b)親水性高分子
親水性高分子(b)は、種々の高分子が使用でき、オキシアルキレン単位(オキシエチレン単位など)を含まない親水性高分子(b1)と、ポリオキシアルキレン重合体(b2)とに大別できる。
オキシアルキレン単位を含まない親水性高分子(b1)には、ポリ(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基又はその塩を有する重合体、エチレンスルホン酸などのスルホン酸基又はその塩を有する重合体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有重合体、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有重合体、ポリビニルピロリドンなどの塩基性窒素原子含有重合体、ビニルエーテル系重合体、セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、天然高分子多糖類などが挙げられる。これらの親水性高分子(b1)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの親水性高分子(b1)のうち、ビニルピロリドン系重合体、ビニルアルコール系重合体、セルロースエーテル類、アルギン酸又はその塩などが好ましい。
ビニルピロリドン系重合体には、ビニルピロリドン又はその誘導体の単独又は共重合体、例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンと共重合性単量体との共重合体[例えば、前記(メタ)アクリル系単量体、酢酸ビニル、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタムなどの共重合性単量体との共重合体(例えば、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体など)など]などが含まれる。ビニルピロリドン系重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ビニルピロリドン系重合体におけるビニルピロリドン又はその誘導体単位の割合は、例えば、30〜100重量%、好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%程度であってもよい。ビニルピロリドン又はその誘導体の割合が、30重量%以上では、防曇性の点で有利である。
ビニルピロリドン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、55〜250℃、好ましくは60〜240℃(例えば63〜230℃)、さらに好ましくは65〜220℃(例えば68〜200℃)程度であってもよい。また、ビニルピロリドン系重合体の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量1×104〜500×104、好ましくは5×104〜300×104、さらに好ましくは10×104〜250×104程度であってもよい。
ビニルアルコール系重合体としては、脂肪酸ビニルエステル系重合体(単独又は共重合体)のケン化物、例えば、ポリビニルアルコール(完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール)、部分アセタール化ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール−エチレンスルホン酸共重合体、ビニルアルコール−マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらのビニルアルコール系重合体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ポリビニルアルコールなどが好ましい。
ビニルアルコール系重合体のケン化度は、特に制限されないが、例えば、60〜100モル%、好ましくは70〜100モル%(例えば、80〜99モル%)、さらに好ましくは85〜100モル%程度であってもよい。ビニルアルコール系重合体の融点又は軟化点は、130〜250℃、好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度であってもよい。ビニルアルコール系重合体の重合度(又は平均重合度)は、例えば、100以上(例えば、100〜5000)、好ましくは200〜4000、さらに好ましくは500〜3000程度であってもよい。
セルロースエーテル類には、メチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキル−C1−4アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシC1−4アルキルセルロースなどが挙げられる。これらのセルロースエーテル類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
アルギン酸は、コンブ、ワカメ、カジメなどの褐藻類植物からの抽出等により得られる直鎖型の高分子多糖類であり、D−マンヌロン酸とL−グルロン酸とを構成ユニットとして含むヘテロポリマーである。アルギン酸の塩としては、アルギン酸と無機塩基との塩が挙げられ、具体的には、アンモニウム塩;カリウム塩、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;銀塩、銅塩などの遷移金属塩などが挙げられる。これらの塩のうち、アンモニウム塩の他、一価金属塩(アルカリ金属塩など)などが好ましい。これらのアルギン酸又はその塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ポリオキシアルキレン重合体(b2)としては、ポリオキシエチレン(又はポリエチレングリコール)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体[例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体(以下、単にPOE−POPブロック共重合体と称する場合がある)など]などのオキシC2−4アルキレン単位(特に、オキシエチレン単位)を有するポリマーが例示できる。これらのポリオキシアルキレン重合体(b2)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、POE−POPブロック共重合体などが好ましい。
POE−POPブロック共重合体中のエチレンオキサイド鎖の含有率は、10〜99重量%、好ましくは15〜95重量%、さらに好ましくは20〜95重量%、特に30〜90重量%程度であってもよい。前記ブロック共重合体のブロック構造は特に制限されず、ジブロック構造、オキシプロピレンブロックの両端にオキシエチレンブロックが結合したトリブロック構造などであってもよい。
POE−POPブロック共重合体は、オキシエチレンブロック−(CH2CH2O)m−とオキシプロピレンブロック−(CH(CH3)CH2O)n−とで構成された共重合体であり、共重合体中のエチレンオキサイド鎖の含有率(m/(m+n)×100)は、10〜99重量%、好ましくは15〜95重量%、さらに好ましくは20〜95重量%、特に30〜90重量%程度であってもよい。前記ブロック共重合体のブロック構造は特に制限されず、オキシエチレンブロックとオキシプロピレンブロックとのジブロック構造、オキシプロピレンブロックの両端にオキシエチレンブロックが結合したトリブロック構造などであってもよい。トリブロック構造の共重合体は、下記式で表すことができる。
HO−(CH2CH2O)m1−(CH(CH3)CH2O)n−(CH2CH2O)m2−H
トリブロック共重合体中のエチレンオキサイド鎖の含有率[(m1+m2)/(m1+m2+n)×100]は、前記共重合体中のエチレンオキサイド鎖の含有率(m/(m+n)×100)と同様の範囲から選択できる。
なお、POE−POPブロック共重合体は、単独で用いてもよく、エチレンオキサイド鎖の含有率、ブロック構造、分子量などが相違する共重合体を二種以上組み合わせて用いてもよい。
ポリオキシアルキレン重合体(b2)の融点又は軟化点は、通常、60℃未満(例えば、45〜59℃)、好ましくは48〜59℃、さらに好ましくは50〜58℃程度であってもよい。ポリオキシアルキレン重合体(b2)の重量平均分子量は、特に制限されず、1,000〜1,000,000、好ましくは3,000〜500,000、さらに好ましくは5,000〜400,000(特に10,000〜300,000)程度であってもよい。
(c)シリコーン化合物
シリコーン化合物(c)は、水性であればよく、種々の形態で使用できるが、通常、シリコーンオイルのエマルジョンの形態(シリコーンオイルを乳化分散させたエマルジョン)で使用される。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、トリフルオロプロピルポリシロキサンなどの(ハロ)アルキルポリシロキサン;ジフェニルポリシロキサンなどのアリールポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサンなどのアルキルアリールポリシロキサンなどが挙げられる。シリコーンオイルは、鎖状ポリシロキサンであってもよく、環状ポリシロキサンであってもよい。
さらに、シリコーンオイルは、変性シリコーンオイル、例えば、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC2−4アルキル基など)、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、グリシジル基又はエポキシ基、重合性基(ビニル基、(メタ)アクリロイル基など)などを有するシリコーンオイルであってもよい。
これらのシリコーンオイルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのシリコーンオイルのうち、通常、汎用性の高いジメチルポリシロキサンが使用される。
シリコーン化合物の粘度は特に制限されず、例えば、室温(15〜25℃)でのオストワルド粘度が50〜50000cSt(センチストークス)(0.5×10−4〜500×10−4m2/s)、好ましくは100〜30000cSt(1×10−4〜300×10−4m2/s)、さらに好ましくは150〜25000cSt(1.5×10−4〜250×10−4m2/s)程度であってもよい。
水性成膜成分(A)の割合(複数の成分を組み合わせる場合は合計割合)は、水性表面処理剤全体に対して50重量%以上程度であればよく、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。水性成膜成分の割合が少なすぎると、塗布性が低下する虞がある。
(防曇性表面処理剤)
これらの水性成膜成分(A)は用途に応じて適宜選択できる。本発明の水性表面処理剤が防曇性表面処理剤(防曇性組成物)である場合、防曇性表面処理剤は、通常、前記水性成膜成分(A)のうち、前記非イオン性界面活性剤(a1)を必須成分として含む。防曇性表面処理剤は、非イオン性界面活性剤(a1)に加えて、さらに前記アニオン性界面活性剤(a2)を含んでいてもよい。非イオン性界面活性剤(a1)に対してアニオン性界面活性剤(a2)を組み合わせることにより、塗布後の防曇層において、塵埃などの微粒子の付着を有効に防止できる。
非イオン性界面活性剤(a1)とアニオン性界面活性剤(a2)との重量割合は、前者/後者=99/1〜30/70程度の範囲から選択でき、例えば95/5〜40/60(例えば95/5〜45/55)、好ましくは90/10〜50/50(例えば90/10〜60/40)、さらに好ましくは90/10〜65/35(特に90/10〜70/30)程度である。アニオン性界面活性剤の割合が少なすぎると、防曇層において微粒子の付着を防止する効果が低下し、多すぎると、防曇性が低下する虞がある。
防曇性表面処理剤は、容器成形による防曇性の低下を抑制し、シート巻取りに伴う防曇層転写による防曇性の低下を抑制するために、さらに前記親水性高分子(b)を含んでいてもよい。親水性高分子(b)は、親水性高分子(b1)とポリオキシアルキレン重合体(b2)とを組み合わせてもよく、その場合、両者の重量割合は、前者/後者=99/1〜50/50、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜65/35程度である。両者を組み合わせることにより、防曇層の耐久性を向上できる。
親水性高分子(b)の割合は、界面活性剤(a)100重量部に対して、例えば1〜80重量部、好ましくは5〜60重量部(例えば10〜50重量部)、さらに好ましくは15〜40重量部(特に20〜30重量部)程度である。親水性高分子(b)の割合が多すぎると、防曇性が低下する虞がある。
防曇性表面処理剤は、離型性を向上させるために、さらに前記シリコーン化合物(c)を含んでいてもよい。シリコーン化合物(c)の割合は、界面活性剤(a)及び親水性高分子(b)の合計100重量部に対して、例えば0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、さらに好ましくは3〜25重量部(特に5〜20重量部)程度である。シリコーン化合物の割合が少なすぎると、離型性の向上効果が小さくなり、多すぎると、防曇性などが低下する虞がある。
(離型性表面処理剤)
本発明の水性表面処理剤が離型性表面処理剤(離型性組成物)である場合、離型性表面処理剤は、通常、前記シリコーン化合物(c)を必須成分として含む。離型性表面処理剤は、シリコーン化合物(c)に加えて、さらに界面活性剤(a)(特にアニオン性界面活性剤(a2))を含んでいてもよい。
界面活性剤(a)の割合は、シリコーン化合物(c)100重量部に対して、例えば1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部、さらに好ましくは5〜35重量部(特に8〜30重量部)程度である。界面活性剤(a)の割合が少なすぎると、塗布性や帯電防止性が低下し易く、多すぎると、離型性が低下する虞がある。
(B)多価金属イオン
本発明の水性表面処理剤はさらに多価金属イオン(B)を含む。本発明では、水性表面処理剤に多価金属イオン(B)を配合することにより、水性表面処理剤の塗布性を向上でき、均一な表面を有する被覆層を形成できるとともに、被覆層の表面抵抗率も低減でき、微粒子の付着を抑制できる。さらに、得られた被覆シートを二次加工(熱成形による容器成形など)しても、被覆層の均一性の低下を抑制でき、例えば、防曇シートの場合、二次加工前の防曇性を維持できる。
多価金属イオン(B)としては、例えば、2価金属イオン[例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;マンガン(II)イオンなどの7族金属イオン;鉄(II)イオンなどの8族金属イオン;コバルト(II)イオンなどの9族金属イオン;ニッケル(II)イオンなどの10族金属イオン;銅(II)イオンなどの11族金属イオン;亜鉛イオン、カドミウムイオン、水銀(II)イオンなどの12族金属イオン;スズ(II)イオン、鉛(II)イオンなどの14族金属イオンなど]、3価の金属イオン[例えば、クロム(III)イオンなどの6族金属イオン;鉄(III)イオンなどの8族金属イオン;アルミニウムイオンなどの13族金属イオンなど]、4価の金属イオン[例えば、マンガン(IV)イオンなどの7族金属イオン;スズ(IV)イオンなどの14族金属イオンなど]などが挙げられる。これらの多価金属イオンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの多価金属イオンのうち、塗布外観及び帯電防止性を向上できる点から、2価金属イオンが好ましく、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン(特にマグネシウムイオン)が特に好ましい。
多価金属イオン(B)は、通常、ハロゲン化物(特に塩化物)や無機塩(特に硫酸、硝酸などの無機酸塩)の形態で使用でき、例えば、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどの金属塩化物や、硫酸マグネシウムや硝酸マグネシウムなどの無機酸塩などの形態で使用できる。これらのうち、金属に対する腐食性が問題とならない点から、塩素を含まない形態、例えば、硫酸マグネシウムや硝酸マグネシウムなどの無機酸塩が好ましい。また、塗布液の濡れ性を向上し、高度に塗布性を向上できる点から、硫酸マグネシウムなどの硫酸塩が好ましい。一方、少量で被覆層の表面抵抗率を低減できる点からは、塩化マグネシウムなどの金属塩化物が好ましい。
多価金属イオン(B)は、前記水性成膜成分(A)のうち、帯電防止性の改善効果が大きい点から、界面活性剤(a)、親水性高分子(b)に対して配合するのが好ましく、塗布性及び帯電防止性の双方の改善効果が大きい点から、非イオン性界面活性剤(a1)及びアニオン性界面活性剤(a2)に対して配合するのが特に好ましい。
なかでも、アニオン性界面活性剤には、アルカリ金属塩が多く、従来の技術常識では、多価金属イオンを添加することは界面活性能を低下させるため、配合することは想定されていなかった。これに対して、本発明では、多価金属イオンとの組み合わせにより、アニオン性界面活性剤の塗布性が向上することを見出したため、本発明の技術的意義は特に大きい。
多価金属イオン(B)の割合は、水性成膜成分(A)1gに対して、例えば0.01〜50mmol程度の範囲から選択でき、好ましくは0.02〜30mmol(例えば0.04〜10mmol)、さらに好ましくは0.03〜20mmol(特に0.05〜10mmol)程度である。特に、塗布方法の種類を問わず、容易に均一な表面を形成でき、かつ二次加工による被覆層の均一性の低下を抑制できる点から、多価金属イオン(B)の割合は、水性成膜成分(A)1gに対して、例えば0.08〜50mmol(例えば0.1〜50mmol)、好ましくは0.09〜30mmol(例えば0.2〜30mmol)、さらに好ましくは0.1〜20mmol(例えば0.3〜20mmol)、特に0.11〜10mmol(例えば0.5〜10mmol)程度であり、諸特性のバランスの点から、例えば0.2〜7mmol(例えば0.02〜5mmol)程度であってもよく、好ましくは0.3〜5mmol(例えば0.3〜3mmol)、さらに好ましくは0.4〜2mmol(特に0.5〜1mmol)程度である。さらに、帯電防止性が要求される用途では、多価金属イオン(B)の割合は、水性成膜成分(A)1gに対して、例えば0.3〜50mmol(例えば0.5〜50mmol)、好ましくは0.5〜30mmol(例えば1〜30mmol)、さらに好ましくは1〜20mmol(例えば3〜20mmol)程度であり、特に2〜5mmol程度であってもよい。
水性成膜成分(A)がアニオン性界面活性剤(a2)を含む場合、多価金属イオン(B)の割合は、アニオン性界面活性剤(a2)1gに対して0.05〜200mmol(特に0.3〜200mmol)程度であってもよく、例えば0.5〜50mmol、好ましくは1〜10mmol、さらに好ましくは1.5〜5mmol(特に2〜3mmol)程度である。
多価金属イオンの割合が少なすぎると、塗布性及び帯電防止性の向上効果が小さくなり、多すぎると、防曇層に利用した場合、防曇層の機械的特性が低下する虞がある。
水性表面処理剤は、金属に対する耐腐食性が要求される用途では、前記耐腐食性を向上できる点から、塩素イオン濃度が低いのが好ましく、処理剤全体に対して100ppm以下であってもよく、50ppm以下が好ましく、10ppm以下が特に好ましい。そのため、塩素を含む金属塩(例えば、塩化マグネシウム)を使用する場合、多価金属イオン(B)の割合は、前記合計1gに対して、例えば0.01〜0.2mmol(例えば0.01〜0.1mmol)、好ましくは0.02〜0.18mmol(例えば0.02〜0.08mmol)、さらに好ましくは0.03〜0.15mmol(例えば0.03〜0.05mmol)程度であり、特に0.04〜0.12mmol程度であってもよい。なお、多価金属イオン(B)の割合がこの範囲にあると、多価金属イオン(B)を高濃度で含む水性表面処理剤に比べて、均一な表面を形成するための塗布性(表面外観)が低下するが、塗布方法を調整する方法(例えば、ロールコーターを使用する方法など)により塗布性を改善できる。
(C)他の添加剤
水性表面処理剤は、さらに1価の金属イオンを含んでいてもよい。1価の金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン;銀イオン、銅(I)イオンなどの11族金属イオンなどが挙げられる。これらの1価金属イオンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの1価金属イオンのうち、塗布外観及び帯電防止性を向上できる点から、アルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン(特にナトリウムイオン)が特に好ましい。1価金属イオンは、通常、ハロゲン化物(特に塩化物)や無機塩(特に硫酸、硝酸などの無機酸塩)の形態で使用でき、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの金属塩化物や、硫酸ナトリウムや硝酸ナトリウムなどの無機酸塩などの形態で使用できる。
1価金属イオンの割合は、水性成膜成分(A)1gに対して、例えば0.1〜50mmol、好ましくは0.15〜10mmol、さらに好ましくは0.2〜5mmol(特に0.3〜1mmol)程度である。1価金属イオンと2価金属イオン(B)とのモル比は、前者/後者=90/10〜1/99、好ましくは80/20〜10/90、さらに好ましくは70/30〜20/80程度であってもよい。
水性表面処理剤は、慣用の種々の添加剤、例えば、他の離型剤(鉱物系ワックス、植物系ワックス、合成ワックスなど)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、防腐剤、粘度調整剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤などを含んでいてもよい。他の添加剤の割合は、特に限定されないが、処理剤全体に対して10重量%以下(例えば0.1〜10重量%)程度である。
水性表面処理剤は、通常、塗布液(ドープ)や含浸液の形態で使用でき、通常、水性溶媒を含む水性組成物として利用される。なお、水性溶媒は、水を含むのが好ましく、水単独であってもよく、水と親水性溶媒(特に水混和性溶媒)[例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、ケトン類(アセトンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類など]との混合溶媒であってもよい。水を使用する場合は、純水(又はイオン交換水)、飲料水のいずれであってもよい。
本発明の水性表面処理剤の固形分濃度は、例えば0.1〜10重量%程度の範囲から選択でき、例えば0.1〜7重量%、好ましくは0.3〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜3重量%程度である。水性表面処理剤の粘度は、定常流粘度測定法により測定したとき、例えば、温度20℃で、10cps(=0.01Pa・s)以下、好ましくは1.1〜5cps(例えば1.2〜3cps)、さらに好ましくは1.3〜2cps程度であってもよい。
(水性表面処理剤の製造方法)
本発明の水性表面処理剤は、慣用の混合攪拌機や混合分散機を用いて、水性成膜成分(A)と多価金属イオン(B)とを混合する混合工程を経て調製できる。
この混合工程は、通常、前記水性溶媒の存在下で行われるが、水性成膜成分(A)がアニオン性界面活性剤(a2)及び他の成分を含む場合、混合工程は段階的に行ってもよい。
詳しくは、アニオン性界面活性剤(a2)及び他の成分を含む水性表面処理剤では、予めアニオン性界面活性剤(a2)を水性溶媒で希釈する予備希釈工程、水性溶媒の存在下、予備希釈工程で得られた希釈液と他の成分(特に非イオン性界面活性剤(a1))とを混合する本混合工程を含む方法で調製するのが好ましい。
予備希釈工程において、溶媒としては、水性表面処理剤を構成する溶媒(特に水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒)を利用できる。水は純水(又はイオン交換水)、飲料水のいずれであってもよい。この溶媒は、アニオン性界面活性剤(a2)の濃度が、例えば1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%、さらに好ましくは5〜35重量%程度となるように添加してもよい。
攪拌速度は、例えば400〜1200rpm、好ましくは500〜1000rpm、さらに好ましくは600〜900rpm程度である。攪拌時間は、例えば10分〜10時間、好ましくは20分〜5時間、さらに好ましくは30分〜3時間(特に45分〜2時間)程度である。
多価金属イオン(B)は予備希釈工程や本混合工程で添加できる。溶媒としては、水性表面処理剤を構成する溶媒(特に水、又は水と親水性溶媒との混合溶媒)を利用できる。水は純水(又はイオン交換水)、飲料水のいずれであってもよい。多価金属イオン(B)は、金属塩を固体のまま使用してもよく、水溶液の形態で使用してもよい。水溶液の濃度は、多価金属イオン(B)が0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%程度となるように添加してもよい。
本混合工程では、処理剤の濃度を調整するために、適宜溶媒を添加した後、予備混合工程で得られた混合物と、非イオン性界面活性剤(a1)などの他の成分とを混合してもよい。
攪拌速度は、例えば100〜2000rpm、好ましくは200〜1500rpm、さらに好ましくは300〜1000rpm程度である。攪拌時間は、例えば5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間、さらに好ましくは20分〜1時間程度である。
なお、非イオン性界面活性剤(a1)などの他の成分も、それぞれ予め水性溶媒の存在下で混合して調製した液状組成物の状態で、予備混合工程の混合物と混合してもよい。
[被覆シート]
本発明の被覆シートは、熱可塑性樹脂を含む基材層の一方の面に、前記水性表面処理剤で形成された被覆層が積層されている。
(基材層)
基材層は、成形加工性を有する樹脂シート、特に疎水性合成樹脂シート、例えば、オレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)、ポリエステル系樹脂(特にポリエチレンテレフタレート系樹脂)、スチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂で構成できる。特に、成形加工性の高い樹脂シート、例えば、スチレン系樹脂シートが好ましい。
スチレン系樹脂には、芳香族ビニル単量体(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)を構成成分として含む単独重合体、芳香族ビニル単量体と共重合性単量体との共重合体およびこれらの混合物が含まれる。より具体的には、スチレン系樹脂としては、例えば、非ゴム強化スチレン系樹脂[一般用ポリスチレン(GPPS)、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など]、ゴム含有スチレン系樹脂[ゴム強化ポリスチレン(ハイインパクトポリスチレン:HIPS)、スチレン−ジエンブロック共重合体又はその水素添加物(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体など)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ゴム成分X(アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)にアクリロニトリルAとスチレンSとがグラフト重合したAXS樹脂など]が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は単独で又は二種以上混合して使用できる。なお、スチレン系樹脂シートは、透明性の高いスチレン系樹脂シート(例えば、GPPSなどの非ゴム強化スチレン系樹脂で構成された非ゴム強化スチレン系樹脂シート、スチレン系樹脂とスチレン−ジエンブロック共重合体又はその水素添加物とで構成されたスチレン系樹脂シート)であってもよく、ゴム強化スチレン系樹脂シートであってもよい。
基材層は、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、結晶核成長剤、炭化水素系重合体、可塑剤、ミネラルオイル、充填剤、着色剤などを含んでいてもよい。
基材層は、慣用の方法、例えば、T−ダイ法又はインフレーション法などの慣用の成膜方法で得ることができる。基材層は、未延伸であってもよいが、延伸されているのが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであってもよいが、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。また、必要に応じて、延伸フィルムは熱処理(熱固定処理)してもよい。延伸法としては、慣用の延伸法、例えば、ロール延伸、圧延延伸、ベルト延伸、テンター延伸、チューブ延伸や、これらを組合せた延伸法などが挙げられる。延伸倍率は、所望するシートの特性に応じて適宜設定でき、例えば1.2〜20倍、好ましくは1.5〜15倍、さらに好ましくは2〜10倍程度であってもよい。
基材層の表面には、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、高周波処理などを施してもよい。特に、被覆層が防曇層である場合、基材層の表面をコロナ放電処理し、コロナ放電処理面に防曇層を形成するのが好ましい。なお、基材層の表面張力は、シートの種類により異なるので一概に決定できないが、JIS K6768「ポリエチレン及びポリプロピレンフィルムのぬれ試験方法」に準拠して測定したとき、30〜65dyn/cm(30×10−5〜65×10−5N/cm)程度である。スチレン系樹脂シートの場合、表面張力は40〜62dyn/cm(40×10−5〜62×10−5N/cm)、好ましくは42〜62dyn/cm(42×10−5〜62×10−5N/cm)、さらに好ましくは45〜60dyn/cm(45×10−5〜60×10−5N/cm)程度である。
基材層表面の表面張力が高すぎると、基材層表面が活性化され過ぎるためか、ブロッキングし易くなる。そのため、ロール状に巻いたシートを巻き戻すのが困難となったり、成形した複数の容器を積み重ねて打ち抜くと、容器同士が密着し、容器を剥離して内容物を収納する作業効率が低下し易い。
(被覆層)
被覆層は、前記水性表面処理剤で形成されているが、微粒子(特に塵埃や成形シートの打ち抜き工程で生成する切粉など)の付着を防止できる点から、表面抵抗率が2×1013Ω以下であってもよく、例えば1×107〜1×1013Ω(特に1×108〜8×1012Ω)程度である。なお、本発明では、表面抵抗率は、JIS K6911に準拠し、後述する実施例に記載された方法で測定できる。
被覆層は、前記防曇性表面処理剤で形成された防曇層であってもよく、防曇層の表面抵抗率は、例えば1×107〜1×1013Ω、好ましくは1×108〜8×1012Ω、さらに好ましくは1×108〜1×1012Ω程度であってもよい。
被覆層は、前記離型性表面処理剤で形成された離型層であってもよく、離型層の表面抵抗率は、例えば1×107〜1×1013Ω、好ましくは1×108〜1×1012Ω、さらに好ましくは1×108〜5×1011Ω(特に1×108〜1×1011Ω)程度であってもよい。
未塗布のスチレン系樹脂シートに対する被覆層塗工液の接触角は50°以下であってもよく、例えば30〜50°、好ましくは32〜48°、さらに好ましくは35〜46°程度であってもよい。接触角が高すぎると、濡れ性が低下するためか、塗布性が低下する虞がある。特に、未塗布のスチレン系樹脂シートに対する防曇層塗工液の接触角は、例えば40〜50°、好ましくは41〜49°、さらに好ましくは42〜48°程度であってもよい。未塗布のスチレン系樹脂シートに対する離型層塗工液の接触角は、例えば30〜45°、好ましくは32〜43°、さらに好ましくは35〜40°程度であってもよい。
[被覆シートの製造方法]
本発明の被覆シートは、基材層の少なくとも一方の面に水性表面処理剤を塗布することにより製造できる。水性表面処理剤(塗布液)の塗布には、慣用の塗布手段、例えば、スプレー、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、ナイフコーター、ディップコーターなどが利用できる。これらのうち、ロールコーターやバーコーターなどが汎用される。なお、必要であれば、前記塗布液は、複数回に亘り塗布してもよい。前記塗布液を基材層に塗布した後、通常、塗布層を乾燥後、ロール(例えば、ガイドロールなどの金属ロール)に掛け渡され、巻き取りロールに巻き取られる。
水性表面処理剤の塗布量(乾燥後の塗布量)は、例えば1〜200mg/m2程度の広い範囲から選択でき、通常、2〜150mg/m2、好ましくは3〜100mg/m2、さらに好ましくは5〜50mg/m2程度であってもよい。
さらに、本発明では、基材層の一方の面に、前記防曇性表面処理剤を塗布することにより防曇層を積層すると共に、他方の面に、前記離型性表面処理剤を塗布することにより離型層を積層してもよい。防曇層と離型層とを積層した被覆シートは、ロールを汚染することなく巻き取ることができるため、巻き芯部のシートにおいても、防曇成分の転移(裏移り)を大きく抑制でき、長期間に亘り高い防曇性を維持できる。また、白化を抑制でき、樹脂シートの透明性、光沢などを損なうことがない。そのため、種々の用途、例えば、カバーシート(又はフィルム)、食品包装などの包装用シート(又はフィルム)などに利用できる。
防曇性表面処理剤の塗布量(乾燥後の塗布量)は、例えば2〜150mg/m2(例えば3〜100mg/m2)程度の広い範囲から選択でき、通常、5〜60mg/m2(例えば7〜50mg/m2)、好ましくは10〜40mg/m2程度であってもよい。
離型層の塗布量(乾燥後の塗布量)は、例えば1〜200mg/m2(例えば5〜100mg/m2)程度の広い範囲から選択でき、通常、2〜100mg/m2、好ましくは3〜50mg/m2(例えば5〜30mg/m2)、さらに好ましくは5〜25mg/m2程度であってもよい。
被覆シートは、後処理工程(容器成形工程など)に連続的に供してもよいが、通常、ロール状に巻き取り、後処理工程に供する場合が多い。本発明の被覆シートは、二次加工性が高く、容器などの成形加工に適している。容器は、被覆シートを、慣用の熱成形法により容器を成形する場合が多い。熱成形法としては、例えば、吹き込み成形法、真空成形法、圧空成形法(熱板加熱式圧空成形法、輻射加熱式圧空成形法などの加熱圧空成形法)、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法、マッチドモールド成形法などが利用できる。延伸樹脂シートを用いる場合、通常、熱板加熱式圧空成形法を利用する場合が多い。
特に、防曇層及び離型層を積層した防曇シートは、このような熱成形に供しても高い防曇性及び透明性を維持できる。さらに、防曇シートは、微粒子の付着を防止できるため、打ち抜き加工を製造工程に含む方法により得られるシートであってもよい。例えば、食品などの収容部(トレイ部)を、縦及び/又は横方向に隣接させて連続的に成形した後、得られた成形シートを連続的に打ち抜き加工により各収容部を備えた容器を分離(切断)する方法に好適に使用できる。打ち抜き加工では、複数枚のシートを積層して打ち抜き加工に供してもよく、このような方法では、切粉が発生し易いため、切粉の付着を抑制できる防曇シートが有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で使用した成分の詳細は以下の通りであり、実施例及び比較例で得られた防曇シートを以下の項目で評価した。
[用いた成分]
非イオン性界面活性剤1(a1−1):ショ糖脂肪酸エステル、理研ビタミン(株)製「リケマールA」、融点90℃、固形分濃度40重量%
非イオン性界面活性剤2(a1−2):ポリグリセリン脂肪酸エステル、理研ビタミン(株)製「ポエムJ−0021」
非イオン性界面活性剤3(a1−3):ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、三洋化成工業(株)製「プロファン128エキストラ」
非イオン性界面活性剤4(a1−4):ポリエチレンオキサイド付加ソルビタン脂肪酸エステル、花王(株)製「レオドールスーパーTW−L120」
アニオン性界面活性剤1(a2−1):アルカンスルホン酸ナトリウム、三洋化成工業(株)製「KTN−8006」、固形分濃度35重量%
アニオン性界面活性剤2(a2−2):オレイン酸カリウム、花王(株)製「FR−14」、固形分濃度20重量%
親水性高分子1(b−1):ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、第一工業製薬(株)製「エパンU108」、融点57℃、重量平均分子量18000、エチレンオキサイド含有率80%
親水性高分子2(b−2):ポリビニルピロリドン、BASF社製「ソカランK90P」、ガラス転移温度180℃、重量平均分子量90×104〜150×104
親水性高分子3(b−3):ポリビニルアルコール、(株)クラレ製「PVA−505」
離型剤(c−1):シリコーンエマルジョン、東レダウコーニング(株)製「SM7025EX」、固形分濃度33重量%
金属塩1(B−1):塩化マグネシウム六水和物(Mg2+)、ナカライテスク(株)製
金属塩2(B−2):塩化カルシウム二水和物(Ca2+)、ナカライテスク(株)製
金属塩3(B−3):塩化ナトリウム(Na+)、ナカライテスク(株)製
金属塩4(B−4):硫酸マグネシウム七水和物(Mg2+)、ナカライテスク(株)製。
[塗布外観(塗布斑)]
黒色の粘着シートの上に塗布面が上になるように被覆シートを載置し、被覆シートの被覆層の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
3:塗布斑がない
2:目を凝らすと、光の当り具合によって塗布斑が認識できる
1:塗布斑が目立つ。
[塗布外観(白点)]
被覆シートの被覆層の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
3:白点がない
2:細かな白点が認識できる
1:実用上使用できないレベルで白点が目立つ。
[表面抵抗率及び帯電防止性]
JIS K6911に準拠し、被覆シートを5cm×10cmにカットし、抵抗計(三菱化学(株)製「Hiresta−up MCP−HT450」)によって、温度23℃、湿度50%RHの条件で、500Vの電圧を負荷したときの表面抵抗率を測定した。表中「over」は1×1014Ωを超える値を意味する。
さらに、実施例で得られた被覆シートについて、金属塩(金属イオン)を添加しない比較例に対する改善効果(帯電防止性)を以下の基準で評価した。なお、1×1014Ωを超えた比較例は、1×1014Ωとして算出した。
◎:金属塩未添加と比べて表面抵抗率が103オーダー以上低下している
○:金属塩未添加と比べて表面抵抗率が102オーダー低下している
△:金属塩未添加と比べて表面抵抗率が101オーダー低下している
×:金属塩未添加と比べて表面抵抗率が同一のオーダーである。
[接触角]
自動接触角計(協和界面科学(株)製「型式CA−Z」)を使用し、被覆層用塗工液の接触角を測定した。詳しくは、実施例18〜31及び比較例10〜19の接触角については、未塗布の二軸延伸ポリスチレンシートのコロナ放電処理面(54dyn/cm)に対し、約1.5μLの各液の着滴後1秒後の接触角を10点測定して平均した。一方、実施例32〜36及び比較例20〜22の接触角については、未塗布の二軸延伸ポリスチレンシートのコロナ放電未処理面に対し、約1.5μLの離型層用塗工液を着滴後1秒後の接触角を10点測定して平均した。
[防曇性(シート)]
60℃の熱水を入れた容器の開口部に、防曇シートの防曇層を向けてシートを載せ、常温環境下で2分間放置した。次いで、シートの蒸気接触部分を、紙に印刷したフォントサイズの異なる文字の上に載せ、シートの曇りの程度を以下の基準に従って目視にて評価した。
○:フォントサイズ5の文字がくっきりと読み取れる
△:フォントサイズ18の文字が読み取れる
×:文字が判別できない。
[防曇性(二次加工品)]
60℃の熱水を入れた容器の開口部に、防曇シートの二次加工品(延伸倍率1.6倍、延伸倍率=シート厚み/二次加工後のシート厚み)を、防曇層を開口部側に向けてシートを載せ、常温環境下で2分間放置した。次いで、二次加工品の蒸気接触部分を、紙に印刷したフォントサイズの異なる文字の上に載せ、シートの曇りの程度を以下の基準に従って目視にて評価した。
○:フォントサイズ5の文字がくっきりと読み取れる
△:フォントサイズ18の文字が読み取れる
×:文字が判別できない。
実施例1〜10及び比較例1〜4
(非イオン性界面活性剤(a1)を含む塗布液の調製)
各成分の固形分比率(各成分の乾燥後の重量比率)が表1に示す割合(重量部)となるように、各成分に水(イオン交換水)を加えて攪拌混合し、固形分濃度0.6重量%の被覆層を形成するための塗工液を調製した。
(被覆シートの製造)
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートの一方の面を54dyn/cm以上にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量20mg/m2で被覆層用塗工液をNo.5メイヤーバーにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、被覆層を形成した。
得られた被覆シートの塗布外観及び表面抵抗率を評価した結果を表1に示す。なお、以下の全ての表中の組成の単位は、金属塩(Mg2+、Ca2+)以外は重量部であり、金属塩は、固形分1gに対する金属イオンのmmol数である。
表1の結果から明らかなように、実施例で得られた被覆シートは、非イオン性界面活性剤を主成分とする水性表面処理剤で形成されているにも拘わらず、塗布外観及び帯電防止性に優れている。
実施例11及び比較例5
非イオン性界面活性剤(a1)の代わりにアニオン性界面活性剤(a2)を用いて、表2に示す割合で実施例1と同様にして塗工液を調製した後、実施例1と同様の方法で被覆シートを製造した。得られた被覆シートの塗布外観及び表面抵抗率を評価した結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、実施例で得られた被覆シートは、アニオン性界面活性剤を主成分とする水性表面処理剤で形成されているにも拘わらず、塗布外観及び帯電防止性に優れている。
実施例12〜16及び比較例6〜8
非イオン性界面活性剤(a1)の代わりに親水性高分子(b)を用いて、表3に示す割合で実施例1と同様にして塗工液を調製した後、実施例1と同様の方法で被覆シートを製造した。得られた被覆シートの塗布外観及び表面抵抗率を評価した結果を表3に示す。
表3の結果から明らかなように、実施例で得られた被覆シートは、親水性高分子を主成分とする水性表面処理剤で形成されているにも拘わらず、塗布外観及び帯電防止性に優れている。
実施例17及び比較例9
(離型剤(c)を含む塗布液の調製)
各成分の固形分比率(各成分の乾燥後の重量比率)が表4に示す割合(重量部)となるように、各成分に水(イオン交換水)を加えて攪拌混合し、固形分濃度0.3重量%の被覆層を形成するための塗工液を調製した。
(被覆シートの製造)
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートの一方の面を、コロナ放電処理せずに、乾燥後の塗布量18mg/m2で離型層用塗工液をNo.5メイヤーバーにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、被覆層を形成した。
得られた被覆シートの塗布外観及び表面抵抗率を評価した結果を表4に示す。
表4の結果から明らかなように、実施例で得られた被覆シートは、離型剤を主成分とする水性表面処理剤で形成されているにも拘わらず、塗布外観及び帯電防止性に優れている。
実施例18〜36及び比較例10〜22
(複数の水性成膜成分を組み合わせた塗布液の調製)
各成分の固形分比率(各成分の乾燥後の重量比率)が表5及び6に示す割合(重量部)となるように、各成分に水(イオン交換水)を加えて攪拌混合し、固形分濃度0.6重量%の被覆層を形成するための塗工液を調製した。なお、実施例27及び比較例18については、固形分濃度0.3重量%に調製した。
(被覆シートの製造)
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートの一方の面を54dyn/cm以上にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量20mg/m2で被覆層用塗工液をNo.5メイヤーバーにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、被覆層を形成した。
なお、実施例32〜36及び比較例20〜22については、二軸延伸ポリスチレンシートの一方の面を、コロナ放電処理せずに、乾燥後の塗布量18mg/m2で離型層用塗工液をNo.5メイヤーバーにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、被覆層を形成した。
得られた被覆シートの塗布外観及び表面抵抗率を評価した結果を表5及び6に示す。
表5及び6の結果から明らかなように、実施例で得られた被覆シートは、複数の水性成膜成分を組み合わせているにも拘わらず、塗布外観及び帯電防止性に優れている。なお、実施例35及び36は、帯電防止性の改善効果はなかったものの、実用上問題ないレベルであり、実施例30及び31と同様に、接触角が小さく、高度に塗布性が改善された。
実施例37〜40及び比較例23
(塗布液の調製)
各成分の固形分比率(各成分の乾燥後の重量比率)が表7に示す割合(重量部)となるように、各成分に水(イオン交換水)を加えて攪拌混合し、固形分濃度0.64重量%の防曇層を形成するための塗工液(防曇層用塗工液)及び固形分濃度1.08重量%の離型層用塗工液を調製した。なお、表7中の組成の単位は、金属塩(Mg2+)以外は重量部であり、金属塩は、固形分1gに対する金属イオンのmmol数である。
(塗布シートの製造)
シート厚み0.25mmの二軸延伸ポリスチレンシートの一方の面を54dyn/cm以上にコロナ放電処理し、このコロナ放電処理面に乾燥後の塗布量20mg/m2で防曇層用塗工液をロールコーターにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、防曇層を形成した。さらに、二軸延伸ポリスチレンシートの他方の面を、コロナ放電処理せずに、乾燥後の塗布量18mg/m2で離型層用塗工液をロールコーターにて塗布し、80℃の熱風乾燥機で2分間乾燥することにより、離型層を形成した。得られた塗布シートの摩擦帯電電位、表面抵抗率、防曇性(シート及び二次加工品)、塗布外観及び金属腐食性を評価した結果を表7に示す。
表7の結果から明らかなように、実施例で得られた塗布シート及び成形品は、摩擦帯電電位がマイナス電位であり、表面抵抗率が低い。また、防曇シート及びその二次加工品ともに防曇性が優れている。さらに、塗布外観も優れている。