以下、接ぎ木装置の一実施形態について、図1〜図14に基づいて詳細に説明する。
図1には、本実施形態の接ぎ木装置100の概要が示されている。接ぎ木装置100は、図1に示すように、移動部としての回転テーブル20を有しており、時計回り方向に30°ずつ間欠的に回転する回転テーブル20に対して、「(A)穂木・台木の供給」処理、「(B)穂木・台木の切断」処理、「(C)穂木・台木の接合」処理、「(D)接合された苗の排出」処理の4つの処理を順次実行することで、接ぎ木を自動的に実行する装置である。
図2には、接ぎ木装置100のブロック図が示されている。本実施形態では、「(A)穂木・台木の供給」処理は、図2に示す苗供給部12が実行し、「(B)穂木・台木の切断」処理は、苗切断部14が実行し、「(C)穂木・台木の接合」処理は、苗接合部110が実行し、「(D)接合された苗の排出」処理は、苗排出部112が実行する。このとき、「(B)穂木・台木の切断」処理においては、穂木の切断面と台木の切断面を密着させた状態にするまでの工程を行い、その後、穂木と台木は密着した接ぎ木苗の状態で移動する。「(C)穂木・台木の接合」処理では、移動してきた接ぎ木苗の密着した部分を接合資材で覆い、密着面がずれないようにする(以下、「接合」という)。
図3は、接ぎ木装置100を概略的に示す斜視図である。図3に示すように、接ぎ木装置100は、アルミフレーム等で形成された台座部90と、台座部90上に設けられた回転テーブル20と、テープ供給部としてのテープ供給装置31、32と、溶着部43と、把持解除機構51と、コンベア60と、制御装置10(図2参照)と、を備える。なお、図3においては、図2の苗供給部12や苗切断部14等についての図示を省略している。なお、苗供給部12、及び苗切断部14は既存の技術を用いることができる。
回転テーブル20は、上側テーブル26A及び下側テーブル26Bを有する。上側テーブル26Aと下側テーブル26Bは、同一径の円盤状部材であり、上下方向(図3のZ軸方向)に所定間隔をあけた状態で、回転軸120に固定されている。上側テーブル26Aと下側テーブル26Bは、図2に示す回転テーブル駆動装置22により、所定時間間隔で、間欠的に30°ずつ時計回り方向に回転する。
図4には、上側テーブル26A近傍の平面図が示されている。上側テーブル26Aの上面(+Z面)の外周部近傍には、図4に示すように、30°間隔で保持部としての把持機構24が設けられている(図3では図示の便宜上、不図示)。また、下側テーブル26Bの下面(−Z面)の外周部近傍にも、30°間隔で保持部としての把持機構124が設けられている(図6参照)。上側テーブル26Aに設けられた把持機構24は接ぎ木に用いる穂木102を把持し、下側テーブル26Bの把持機構124は台木104を把持する(図6参照)。なお、上側テーブル26Aに設けられた把持機構24と、下側テーブル26Bに設けられた把持機構124は、それぞれ穂木102、台木104を把持し、穂木102、台木104の切断面が密着した状態の接ぎ木苗103になるよう位置が調整されている。すなわち、把持機構24が把持する穂木102の軸心位置(茎の中心位置)と把持機構124が把持する台木の軸心位置(茎の中心軸の位置)が略同一となるように把持機構24及び把持機構124の位置が調整されている。また、接ぎ木苗103は、回転テーブル20の回転とともに移動するので、接ぎ木苗103の移動経路は、回転テーブル20の外周に沿った経路となっている。
図5は、把持機構24近傍を拡大して示す平面図であり、図6は、把持機構24、124、及び溶着機40近傍を示す斜視図である。図5、図6に示すように、把持機構24は、第1把持部29A、第2把持部29B、力作用部34、トーションバネ36、ブロック状部材38、及び軸129を有する。第1把持部29Aは、上側テーブル26Aの上面に固定されている。第2把持部29Bは、上側テーブル26Aの上面に、軸129を介して設けられている。これにより、第2把持部29Bは、軸129を中心として、Z軸回りに回動可能とされている。力作用部34は、第2把持部29Bの軸129近傍に固定されている。
また、図5に示すように、力作用部34と、上側テーブル26Aの上面に固定されたブロック状部材38との間には、トーションバネ36が設けられている。このトーションバネ36の弾性力により、力作用部34及び第2把持部29Bには軸129を中心とした時計回り方向の力が常時付勢されている。これにより、力作用部34に把持解除部50が接触していない状態では、第2把持部29Bと第1把持部29Aとの間で穂木102を保持できる(挟むことができる)ようになっている。逆に把持解除部50から力作用部34に+Y方向の力を受けると、力作用部34及び第2把持部29Bは、軸129を中心に反時計回り方向に回動し、保持していた穂木102を解放する。
把持機構124は、前述した把持機構24と同様の構造を有する。すなわち、把持機構124は、図6に示すように、第1把持部29Aと、第2把持部29Bと、力作用部34と、を有するとともに、把持機構24と同様、トーションバネ(図示せず)、ブロック状部材(図示せず)、軸(図示せず)を有している。
なお、回転テーブル20が停止した状態における把持機構24、124の位置は、図4に示すように、時計の文字盤の数字の位置と対応する。したがって、以下においては、図4の最も+Y側の把持機構24、124の位置を「12時の位置」と呼び、12時の位置から30°時計回り方向にずれた位置を「1時の位置」、1時の位置から30°時計回り方向にずれた位置を「2時の位置」と呼ぶものとする。すなわち、最も−Y側の位置(溶着機40と対向する位置)は、「6時の位置」となる。なお、本実施形態では、一例として、図1に示すように、「(A)穂木・台木の供給」処理は、12時の位置にある把持機構24、124に対して実行され、「(B)穂木・台木の切断」処理は、3時の位置にある把持機構24、124が保持する穂木及び台木に対して実行される。また、「(C)穂木・台木の接合」処理は、6時の位置にある把持機構24、124が保持する穂木及び台木に対して実行され、「(D)苗の排出」処理は、7時の位置にある把持機構24、124に対して実行される。
上側テーブル26Aの上面の把持機構24それぞれの近傍(各把持機構24の時計回り方向前方)には、図4に示すように、テープ引き出し機構39が設けられている。図7は、テープ引き出し機構39を拡大して示す斜視図である。テープ引き出し機構39は、図7に示すように、+Z方向から見て略U字形状を有する固定部材27と、固定部材27が有する揺動軸127に設けられた引き出し部材としてのピン28と、を備える。揺動軸127は、上側テーブル26Aの外周の接線方向に延びる軸である。ピン28は、揺動軸127に設けられることで、矢印B方向(回転テーブル20の半径方向外向き、即ち、外周方向)には揺動可能であるが、その他の方向へは揺動できないようになっている。なお、ピン28は、回転テーブル20の回転とともに移動するので、ピン28が揺動しなければ、ピン28の移動経路は、回転テーブル20の外周に沿った経路となる。
テープ供給装置31、32は、図4において破線で示すように、少なくともピン28や、接ぎ木苗103の移動経路上を横切る状態で熱可塑性樹脂テープ30を供給する。本実施形態では、テンション付加機能を有するテープ供給装置31、32の両方から熱可塑性樹脂テープ30を供給するものとし、ロール状に熱可塑性樹脂テープ30が巻き付けられたものから、連続的にテープを供給する。なお、テープ供給装置31、32は、テンション付加機能により熱可塑性樹脂テープ30にかける張力を調整することができる。例えば、接ぎ木装置100による動作が実行されている間は、テープ供給装置31、32は、熱可塑性樹脂テープ30に対して、2.0N以上の張力(巻き取りテンション)をかけるものとする。なお、テンション付加機能については、本実施形態ではトルクモータをテンション付加装置として用い、テンション付加装置33A、33Bを熱可塑性樹脂テープ30が巻き付けられたロールの軸と連動させることにより熱可塑性樹脂テープ30にテンションをかけることとしている。ただし、これに限定されるものではなく、ロールの軸にテンション付加機能が組み込まれたものを用い、熱可塑性樹脂テープの供給にブレーキをかけることにより、テンションをかけても良い。なお、テープ供給装置31、32の配置の関係でテープ供給方向を途中で変更する場合には、必要に応じてテープ誘導部材を設けることとしてもよい。例えば、図4の例ではテープ誘導部材37をフレーム135に取り付け、当該テープ誘導部材37を介して熱可塑性樹脂テープ30の供給方向を変更している。
なお、熱可塑性樹脂テープ30としては、伸縮性を有する樹脂、例えば、引張強度が300〜700kg/cm2であり、引張伸度が300〜700%である樹脂を採用することができる。また、熱可塑性樹脂テープ30の厚さは例えば0.28mmであり、Z軸方向の幅は例えば10mmであるものとする。なお、テープの厚さやZ軸方向の幅は接合対象の作物により適宜選択可能である。例えば、熱可塑性樹脂テープ30は、厚さが0.4mm程度で、Z軸方向の幅が12mm程度であってもよい。具体的には、熱可塑性樹脂テープ30として、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリウレタン、塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂を用いることができる。これにより、いずれの熱可塑性樹脂テープを用いても接合資材は、粘着テープやC字状チューブ、クリップ等と比べ、1/2〜1/7のコストとすることができる。
回転テーブル20の外周に設けられている把持機構24、124の回転方向前方には、テープ引き出し機構39が設けられている。テープ供給装置31から供給される熱可塑性樹脂テープ30は引き出し部材としてのピン28により把持機構24、124の移動経路に導かれる。ピン28により引き出された熱可塑性樹脂テープ30はピン28を軸にして略U字状になる。ピン28の後方を、接ぎ木苗103を把持した把持機構24、124が移動するので、把持機構24、124が6時の位置に来たとき、接ぎ木苗103は熱可塑性樹脂テープ30の間に挟まれた状態になる。すなわち、ピン28は、熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給部39から引き出し、熱可塑性樹脂テープで接ぎ木苗103(穂木102、台木104の切断面が密着した部分)を挟み込む挟み込み機構としての機能を有する。
溶着部43は、溶着機40、溶着機用電動スライダ42、押し当て部材35を有する。溶着機40は、図4に示すように、回転テーブル20の6時の位置近傍に設けられている。溶着機40は、微細な超音波振動を発生する装置であり、6時の位置にある把持機構24、124に把持された穂木102及び台木104の切断面が密着した部分を熱可塑性樹脂テープ30で接合するために用いられる。溶着機40は、溶着機用電動スライダ42により、Y軸方向に往復移動可能とされている。溶着機40の+Y側には、図6に示すように、上側テーブル26Aと下側テーブル26Bとの間に設けられた押し当て部材35が位置している。なお、溶着機40の具体的な機能や動作等については後述する。なお、溶着機用電動スライダ42の可動方法については、電動に限らない。電動以外にも空気圧、手動等の方法をとることができるが、どの手法を採用するかは、実施者が適宜選択すれば良い。また、本実施形態では押し当て部材35が回転テーブル20の外周外側から延設されたフレーム135に取り付けられているが、押し当て部材35は、上側テーブル26A、または下側テーブル26Bに直接設けられてもよい。
把持解除機構51は、把持解除部50、把持解除用電動スライダ52を有する。把持解除部50は、図4に示す把持解除用電動スライダ52により、Y軸方向に往復移動可能とされている。把持解除部50は、7時の位置にある把持機構24、124の力作用部34に対して、−Y側から接触部56A、56Bを押しつけることで、7時の位置にある把持機構24、124による接ぎ木苗103の把持を解除する。ここで、把持解除部50は、図8(a)に示すように、YZ断面が略U字状(コ字状)の把持解除部材54と、把持解除部材54の+Y端部に設けられた接触部56A、56Bとを有し、接触部56Aは、接触部56Bよりも+Y側に位置している。把持解除部50が+Y方向に移動することで、図8(b)に示すように接触部56Aが上側テーブル26Aに設けられた力作用部34を押すようになっている。そして、把持解除部50が更に+Y方向に移動することで、図8(c)に示すように接触部56Bが下側テーブル26Bに設けられた力作用部34を押すようになっている。なお、把持解除用電動スライダ52の可動方法については、電動に限るものではない。電動以外にも空気圧、手動等の方法をとることができるが、どの手法を採用するかは、実施者が適宜選択すれば良い。なお、接触部56A、56BのY軸方向の位置を同一にし、上側テーブル26Aに設けられた力作用部34と下側テーブル26Bに設けられた力作用部34との位置(図8(a)〜図8(c)ではY軸方向の位置)を異ならせることにより、接触部56Aが上側テーブル26A側の力作用部34を押すタイミングと接触部56Bが下側テーブル26B側の力作用部34を押すタイミングをずらすようにしてもよい。また、接触部56A、56BのY軸方向の位置を異ならせるとともに、上下の力作用部34のY軸方向の位置を異ならせるようにしてもよい。
図3に戻り、コンベア60は、7時の位置にある把持機構24による把持が解除された接ぎ木苗103を受け取り、図3の矢印A方向に搬送する。
制御装置10は、図2に示す接ぎ木装置100の各部の動作を統括的に制御する。また、制御装置10は、入力部70が有するスタートボタンやストップボタンが作業者によって操作されたことを検出すると、該操作に応じて接ぎ木装置100の各部の動作を制御する。
(制御装置10の処理)
次に、本実施形態における制御装置10の処理(「(C)穂木・台木の接合」処理と「(D)苗の排出」処理)について、図9のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。なお、図9の処理の前提として、図9の処理が開始されると、回転テーブル20の12時の位置においては「(A)穂木・台木の供給」処理が実行され、回転テーブル20の3時の位置においては、「(B)穂木・台木の切断」処理が実行されるようになっている。なお、本実施形態では、説明の便宜上、図9の処理が開始される段階で、12時の位置、1時の位置、2時の位置には切断前の穂木102及び台木104がセットされており、3時の位置、4時の位置、5時の位置には、切断後の穂木102及び台木104がセットされているものとする。なお、切断後の穂木102と台木104は、それぞれの切断面が密着して、接ぎ木苗103の状態となっている。
図9の処理では、まず、ステップS10において、制御装置10は、スタートボタンが押されるまで待機する。
制御装置10は、作業者によって入力部70のスタートボタンが押されたことを検出すると、ステップS12に移行し、装置の原点あわせを実行する。すなわち、制御装置10は、回転テーブル駆動装置22を制御して、回転テーブル20の各把持機構24、124が規定位置に来るように回転テーブル20の角度を調整する。また、制御装置10は、溶着機用電動スライダ42と把持解除用電動スライダ52の位置を初期位置(−Y端部)に位置決めする。
次いで、ステップS14では、制御装置10は、テンション付加装置33A、33Bのテープ張力調整をONにするとともに、コンベア60をONにする。すなわち、制御装置10は、テープ供給装置31、32に連動するテンション付加装置33A、33Bを制御して、例えば熱可塑性樹脂テープ30に対して、2.0N以上の張力をかける。また、制御装置10は、コンベア60の上面が図3の矢印A方向に動くようにコンベア60を制御する。
次いで、ステップS16では、制御装置10は、回転テーブル駆動装置22を制御して、回転テーブル20を30°だけ時計回り方向に回転させる。
ここで、ステップS16の処理を実行する前の状態が、図10(a)に模式的に示されている。図10(a)の状態では、5時の位置にある把持機構24、124の時計回り方向前方に位置するピン28に熱可塑性樹脂テープ30が引っ掛かった状態となっている。そして、ステップS16の処理を実行すると、図10(b)に示すような状態となる。この場合、図10(b)に示すように、回転テーブル20の30°回転に伴って、把持機構24、124に把持された接ぎ木苗103が時計回り方向に移動するとともにピン28が移動し、熱可塑性樹脂テープ30を引き出す。なお、図10(b)の状態では、図11に示すように、接ぎ木苗103の密着した部分は、熱可塑性樹脂テープ30によってY軸方向両側から挟まれた状態となっている。なお、熱可塑性樹脂テープ30のうち、図11において接ぎ木苗103の+Y側に位置する部分を「第1部分130A」と呼ぶものとし、熱可塑性樹脂テープ30のうち第1部分130Aに対向する部分を「第2部分130B」と呼ぶものとする。
次いで、ステップS18では、制御装置10は、溶着機用電動スライダ42を前方(+Y方向)に移動するとともに、把持解除用電動スライダ52を前方(+Y方向)に移動する。このような溶着機用電動スライダ42の移動により、図12(a)に示すように、溶着機40と押し当て部材35とが近接する。ここで、押し当て部材35は、図12(a)に示すようにゲタ歯状の形状を有しているため、押し当て部材35の隙間部分に接ぎ木苗103の密着した部分が入り込む。そして、熱可塑性樹脂テープ30(第1部分130Aと第2部分130B)のうち、溶着機40と押し当て部材35とに挟まれた部分には、微細な超音波振動と圧力が掛けられる。これにより、熱可塑性樹脂テープ30(第1部分130A、第2部分130B)の間に生じる摩擦力で熱可塑性樹脂テープ30同士が瞬時に溶融し、溶着され、更に溶着した部分の一部で熱可塑性樹脂テープ30が溶断される(ステップS20)。なお、押し当て部材35の−Y端部は、角度や形状、そして超音波照射時間を変更することにより、熱可塑性樹脂テープ30の溶着・溶断の状態を変更可能とすることができる。ここで、熱可塑性樹脂テープ30は、引張荷重が掛けられた状態で溶着・溶断されるため、溶断されたタイミングで収縮する。この収縮により、熱可塑性樹脂テープ30は、接ぎ木苗103の密着した部分に密着するため、図13に示すように、穂木102と台木104が密着した状態(各切断面が密着した状態)で維持することが可能となる。このとき、溶着・溶断された熱可塑性樹脂テープ30のテープ供給部側の熱可塑性樹脂テープ30は溶着され、繋がった状態となっている。また、前述のように、把持解除部50も+Y方向に移動しているが、最初の接ぎ木苗103が熱可塑性樹脂テープ30により接合された時点では7時の位置に苗が存在していないので、「(D)苗の排出」処理は行われない。
次いで、ステップS22では、制御装置10が、溶着機用電動スライダ42を後方(−Y方向)に移動させるとともに、把持解除用電動スライダ52を後方(−Y方向)に移動させる。図12(b)には、溶着機用電動スライダ42を後方(−Y方向)に移動させたことに伴い、溶着機40が−Y方向に移動した状態が示されている。なお、図12(b)におけるピン28の周囲に残留した熱可塑性樹脂テープ30は、この後、自然に落下する。そして、テープ供給装置31、32は、テンション付加装置33A、33Bにより熱可塑性樹脂テープ30に張力(巻き取りテンション)を付与しているため、溶着・溶断され繋がった状態になっている熱可塑性樹脂テープ30は図12(b)の矢印方向に移動し(巻き取られ)、図14(a)の状態に遷移する。図14(a)の状態では、5時の位置に来ている把持機構24、124の時計回り方向前方に位置するピン28に熱可塑性樹脂テープ30が引っ掛かった状態となる。
次いで、ステップS24では、制御装置10は、ストップボタンが押されたか否かを判断する。このステップS24の判断が否定された場合には、ステップS16に戻る。そして、ステップS16において、制御装置10が回転テーブル駆動装置22を介して回転テーブル20を30°回転させると、図14(b)に示すような状態となる。そして、ステップS18に移行すると、制御装置10は、溶着機用電動スライダ42を前方(+Y方向)に移動するとともに、把持解除用電動スライダ52を前方(+Y方向)に移動する。これにより、溶着機40が押し当て部材35に押し当てられるので、ステップS20において、熱可塑性樹脂テープ30が溶着・溶断され、接ぎ木苗103の接合が行われる。また、ステップS18により、把持解除部50の接触部56A、56Bが図8(a)〜図8(c)のように把持機構24(7時の位置)の力作用部34に押し当てられる。これにより、7時の位置に位置する把持機構24、124による接合後の接ぎ木苗103の把持が解除される。なお、本実施形態では、図8(a)〜図8(c)のように、接触部56A、56Bが力作用部34を押すタイミングをずらしているので、穂木102と台木104が確実に接合された状態で把持機構24、124による苗の把持を解除することができる。すなわち、台木104の把持が先に解除されると台木104だけが落下してしまうことがあるが、上記のように先に穂木102の把持を解除することで、台木104のみが落下する可能性を確実に低減することができる。ステップS18の結果、接ぎ木後の苗はコンベア60上に落下するので、落下した苗はコンベア60により図3の矢印A方向に搬送されるようになっている。
その後は、ステップS16〜S24の処理・判断を、ステップS24の判断が肯定されるまで(ストップボタンが押されるまで)繰り返す。これにより、接ぎ木作業を連続的に自動的に実行することが可能となる。
ステップS24の判断が肯定されると、ステップS26に移行し、制御装置10は、テープ供給装置31、32のテンション付加装置33A、33Bによるテープ張力調整をOFFにするとともに、コンベア60の動作をOFFにする。以上により、図9の全処理が終了する。
ここで、テープ引き出し機構39は把持機構24、124の移動経路から一時的にピン28を退避させる退避機能を有する。ピン28は、固定部材27が有する揺動軸127に揺動可能に取り付けられているため、フレーム135等が移動経路上にある場合は、回転テーブル20の外周方向へ揺動することによりフレーム135等を避けることができる。図14(b)等に示すように、回転テーブル20を回転させるためには、7時の位置付近で、押し当て部材35を保持するフレーム135やテープ供給装置31から溶着部に向けて供給されている熱可塑性樹脂テープ30をピン28が乗り越える必要があるため、本実施形態では、図4や図7に示すようにフレーム135、及びテープ供給装置31から供給されている熱可塑性樹脂テープ30の上をカバーするようにカバー部材198を設けている。
カバー部材198は、フレーム135の上面及びテープ供給装置31から供給される熱可塑性樹脂テープ30を上方から覆う平面部と、フレーム135から−Y方向に所定勾配で傾斜するとともに、−X方向に向けて次第に幅が狭くなる略三角形状の斜面98からなる。さらに、斜面98の+X側端部は上側テーブル26Aと下側テーブル26Bの間に入り込み、−X側端部が回転テーブル20から横方向に突出するように配置されている。そのため、回転テーブル20の回転に伴ってピン28が回転軸120を中心に回転すると、まずピン28の軸部側面と斜面98の下端が当接する。そしてさらに回転が進行するに従って、斜面98の下端と当接するピン28の軸部側面位置が先端方向に移動し、遂にはピン28の先端部が斜面98に乗り上げ、カバー部材198の平面部上に案内される。なお、ピン28が押し当て部材35が取り付けられているフレーム135や、テープ供給装置31から溶着部に向けて供給されている熱可塑性樹脂テープ30を乗り越えるために設けられているカバー部材198は、図4や図7の形状に限定されるものではなく、他の形状であっても、ピン28をガイドできる形状であればよい。例えば、カバー部材198には、斜面98がなくてもよい。
なお、上記説明では、作業者がスタートボタンを押す時点で12時の位置、1〜5時の位置に穂木102や台木104がセットされている場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、穂木102や台木104がセットされていない状態で、スタートボタンが押されてもよい。この場合、穂木102と台木104が6時の位置に来るまでの間は、6時の位置においては、熱可塑性樹脂テープ30の溶着・溶断のみが行われるようになっている。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、回転テーブル20は、穂木102の切断面と台木104の切断面とを密着した状態の接ぎ木苗103を所定方向(時計回り方向)に移動させ、テープ供給装置31、32は、接ぎ木苗103の移動経路上に熱可塑性樹脂テープ30を引き出し可能に配置する。また、ピン28は、接ぎ木苗103に先行して移動経路上を移動することで、熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給装置31、32から引き出し、熱可塑性樹脂テープ30で接ぎ木苗103の密着部分を挟む。そして、溶着機40は、熱可塑性樹脂テープ30(第1部分130Aと第2部分130B)を溶着して、接ぎ木苗103の密着した部分の周囲を熱可塑性樹脂テープ30で覆う。このように、ピン28が接ぎ木苗103に先行して移動して、熱可塑性樹脂テープ30を引き出すので、接ぎ木苗103が直接熱可塑性樹脂テープ30を引き出す必要がなくなる。これにより、接ぎ木の際の穂木102と台木104の接合面の位置のズレの発生を抑制し、接ぎ木苗103に負担がかかり難くなり、確実な接ぎ木苗の接合が可能となるので、接ぎ木の効率(歩留まり)を向上することができる。また、本実施形態によれば、テープを超音波溶着して接ぎ木する場合に、シンプルな構成で接ぎ木の自動化を実現することが可能となる。特に、本実施形態によれば、低コストな接合資材を用いたテープの超音波溶着による接ぎ木苗の接合において、シンプルな構成で効率のよい接ぎ木作業の自動化を実現することが可能となる。
また、本実施形態では、超音波溶着による熱可塑性樹脂テープ30を用いた接ぎ木の接合を行うことで、接ぎ木苗103の接合状態を適切な状態に維持することが可能となる。具体的には、超音波溶着では摩擦熱を利用するため、接合資材として粘着剤を利用したテープを用いる場合と比べ、周辺の温度条件や、接ぎ木苗103周辺の毛や水分による影響されずに、接ぎ木苗の接合を行うことができる。また、超音波溶着では、接合資材として熱収縮性プラスチックを用いる場合のようにプラスチックを収縮させる大量の熱を必要としないため、接ぎ木苗103への熱的な影響もなく、また、溶着に要する時間を短く(例えば1秒以下)することができる。また、超音波溶着では、接ぎ木後の高湿度下での管理中においても、粘着剤を用いたテープのように湿度の影響を受けて簡単に剥離することがなく、接合状態を安定して維持することができる。また、接合資材としてチューブを用いる場合には、様々な直径(軸径)の穂木や台木に対応すべく、複数種類のサイズのチューブを用意し、適切なサイズのチューブを選択する必要があったが、本実施形態では、熱可塑性樹脂テープ30を用いることで様々な太さの穂木や台木に対応することが可能となっている。また、熱可塑性樹脂テープ30は軽量であるため、接合資材としてクリップを用いる場合と比べ、接合資材の自重による接ぎ木苗103への影響を抑えることができる。更に、熱可塑性樹脂テープ30で、接ぎ木苗103の密着部分を覆うことで、接合資材として通気性や保水性を有する不織布を用いる場合のように、穂木側から自根が発生して接ぎ木が活着しないという事態の発生を抑制することができる。また、従来、接ぎ木装置で用いられているクリップに比べ、接合資材のコストが低いため、接ぎ木装置による接ぎ木苗の価格を抑えることができる。
また、本実施形態では、溶着機40は、熱可塑性樹脂テープ30を溶着した部分を、溶着と同時に切断(溶断)できるので、熱可塑性樹脂テープ30を切断する装置を別途用意しなくてもよい。また、熱可塑性樹脂テープ30を溶着と同時に切断することで、接ぎ木作業に要する時間を短縮することができる。ただし、溶着機40においては必ずしも熱可塑性樹脂テープ30を溶断しなくてもよい。この場合、例えば、7時の位置などにおいて、熱可塑性樹脂テープ30を所定の切断機構により切断すればよい。具体的には、ハンダごてや超音波等を用いて熱により熱可塑性樹脂テープ30を切断してもよいし、ニッパやハサミなどを用いてせん断力により熱可塑性樹脂テープ30を切断してもよい。また、溶着機40の先端に切断刃を取り付けて溶着とともに切断してもよい。なお、いずれの場合でも切断後のテープ供給部側の熱可塑性樹脂テープ30は溶着により繋がった状態である。
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂テープ30には、所定の張力が付加されているので、溶着機40により熱可塑性樹脂テープ30を溶着し、溶断することで、熱可塑性樹脂テープ30の収縮により、熱可塑性樹脂テープ30を接ぎ木苗103に密着させることができ、接合後の穂木と台木のずれを抑制することが可能となる。この場合、穂木や台木が少々曲がっている場合や、穂木と台木の直径に差がある場合などにおいて特に有効である。
また、本実施形態では、回転テーブル20は、上側テーブル26Aに穂木102を把持する把持機構24を固定し、下側テーブル26Bに台木104を把持する把持機構124を固定し、一体として回転するので、回転テーブル20の回転という、簡易な動作により、接ぎ木苗103を回転テーブル20の外周に沿って移動することが可能である。また、切断面を密着した穂木102と台木104を回転テーブル20の外周沿いに一緒に回転させて溶着部まで移動し、熱可塑性樹脂テープを接ぎ木苗103の周囲に覆うように溶着するので、効率的に接ぎ木作業を行うことができる。
また、本実施形態では、回転テーブル20の外周部に設置した把持機構24の回転方向前方にピン28を設けているので、ピンを駆動するための特別な機構を設けなくても、ピン28を接ぎ木苗103に先行して移動させることができる。
また、本実施形態では、ピン28を接ぎ木苗103の移動経路から一時的に退避させる退避機構(カバー部材198や、固定部材27の揺動軸127でピン28を支持する構造を含む機構)を有している(図7参照)。これにより、ピン28がフレーム135や熱可塑性樹脂テープ30と接触して、回転テーブル20の回転を妨げるのを防止することができる。また、本実施形態では、ピン28が、上側テーブル26Aの外周の接線方向に延びる揺動軸127に対して揺動可能に取り付けられており、カバー部材198には、回転テーブル20の回転によりピン28が所定の位置で持ち上がるように、ピン28をガイドする斜面98を有している。これにより、モータ等によりピン28を駆動しなくても、簡易な構成により、ピン28を退避させることができる。
また、本実施形態によると、回転テーブル20は、外周部において接ぎ木苗103を保持し、回転軸120を中心に回転し、テープ供給部は、接ぎ木苗103の移動経路上に熱可塑性樹脂テープ30を引き出し可能に配置する。そして、ピン28は、回転テーブル20の回転に伴って、熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給装置31、32から引き出し、熱可塑性樹脂テープ30で接ぎ木苗103の密着した部分を挟み込む。更に、溶着機40は、熱可塑性樹脂テープ30を超音波溶着して、接ぎ木苗103の密着した部分の周囲を熱可塑性樹脂テープ30で覆う。回転テーブル20の回転と、溶着機40による超音波溶着により、接ぎ木苗103に熱の影響を与えること無く、短時間で熱可塑性樹脂テープ30による接ぎ木苗103の接合を行うことができる。また、熱収縮プラスチックによる接合と比べ、プラスチックを収縮させるために使用するエネルギよりも少ないエネルギで接合が可能となる。
また、本実施形態では、熱可塑性樹脂テープ30が透明であるので、作業者は、穂木102と台木104とが適切に密着した状態となっているかを熱可塑性樹脂テープ30越しに視認することができる。
なお、上記実施形態では、把持機構24、124を30°間隔で配置する場合について説明したが、これに限らず、その他の角度間隔で把持機構24、124を配置するようにしてもよい。この場合、図9のステップS16では、把持機構24、124を配置した間隔(角度)だけ回転テーブル20を回転すればよい。
なお、上記実施形態の把持機構24、124や把持解除部50の構成は一例である。例えば、把持機構24、124の把持動作や把持解除動作をモータ制御等により実現することとしてもよい。
なお、上記実施形態では、ピン28が、カバー部材198の斜面98によりガイドされ、揺動する(持ち上がる)場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ピン28をモータ等の駆動機構により揺動させたり、駆動機構によりピン28を上下方向(Z軸方向)へスライド移動させたりしてもよい。
なお、上記実施形態では、ピン28が、上側テーブル26Aに設けられている場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ピン28が下側テーブル26Bに設けられてもよい。あるいは、図15に示すように、テープ引き出し機構を、ピン28、ベルトコンベア41で構成しても良く、ベルトコンベア41に固定した複数のピン28をX軸方向に沿って移動することとしてもよい。この場合、把持機構24、124が5時の位置から6時の位置に移動する間に、把持機構24、124に先立ってピン28が−X方向に移動するように、ベルトコンベア41を駆動する。このようにすることで、上記実施形態と同様、ピン28により熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給装置31、32から引き出すことが可能となる。
なお、上記実施形態では、上側テーブル26Aと下側テーブル26Bとを同一の回転軸120に設ける場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図16(a)、図16(b)に示すように、上側テーブル26Aと下側テーブル26Bとを、異なる回転軸120A、120Bに設けることとしてもよい。この場合、上側テーブル26Aと下側テーブル26Bとを逆方向(図16(b)の矢印方向)に回転することで、図16(b)の位置Qにおいて、上記実施形態の6時の位置と同様の状態(接ぎ木苗103を熱可塑性樹脂テープ30で挟んだ状態)を作り出すことができる。したがって、位置Qおいて溶着機40を押し当て部材35に押し当てることで、上記実施形態と同様に、接ぎ木作業を行うことが可能となる。
なお、上記実施形態では、テープ供給装置31、32の両方から熱可塑性樹脂テープ30を供給する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、一つのテープ供給装置から熱可塑性樹脂テープ30を供給し、熱可塑性樹脂テープ30の先端を固定することとし、テープ供給装置には逆回転可能なテンション付加装置を設ける構成としてもよい。
また、例えば、図17(a)に示すように、テープ供給装置131から供給される熱可塑性樹脂テープ30の一端をチャック機構111により把持することで、ピン28と接ぎ木苗103の移動経路上に熱可塑性樹脂テープ30を配置することとしてもよい。この場合、ピン28と接ぎ木苗103とが図17(b)のように移動することで、上記実施形態の図10(b)と同様の状態にすることができる。そして、図18(a)に示すように、溶着機40で熱可塑性樹脂テープ30を溶着・溶断した後、図18(b)に示すようにテープ供給装置131のテンション付加装置133により、熱可塑性樹脂テープ30を+Y方向に引っ張ることで、熱可塑性樹脂テープ30を再度、ピン28と穂木102及び台木104の移動経路上に配置する。このようにすることで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、溶着・溶断後において、溶断されたテープ供給装置131側の熱可塑性樹脂テープ30と、チャック機構111に把持された熱可塑性樹脂テープ30は溶着され、繋がった状態となっている。
なお、上記実施形態では、移動部として回転テーブル20の外周に穂木102及び台木104を把持する把持機構24、124を設け、回転テーブル20の回転で穂木102及び台木104を移動したが、これに限定するものでは無い。例えば1組の把持装置を用い、穂木102及び台木104を把持し、穂木102及び台木104の切断面を密着した状態の接ぎ木苗103を図17(a)の+X方向から−X方向に移動させ、その後テープ引き出し機構39のピン28により接ぎ木苗103の負荷をかけない状態でテープ供給部から熱可塑性樹脂テープを引き出し、溶着部において超音波溶着してもよい。
なお、上記実施形態では、ピン28により熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給装置31、32から引き出す場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図19(a)に示すように、熱可塑性樹脂テープ30の一部を保持するチャック機構111Dが、接ぎ木苗103に先行して移動するようにしてもよい。この場合、上記実施形態において、回転テーブル20に設置したテープ引き出し機構の引き出し部材(ピン28)を、熱可塑性樹脂テープを挟むチャック機構111Dに置き換えて、回転テーブル20の回転に合わせ把持機構の回転方向前方に位置した状態で回転する。そして、図19(b)、図19(c)に示すように、接ぎ木苗103が6時の位置に来て、溶着機40により溶着・溶断が行われる直前に、密着した接ぎ木苗の後ろに位置するチャック機構111Dが、テープ供給装置31、32から供給される熱可塑性樹脂テープ30を、2本一緒に挟み、熱可塑性樹脂テープ30が溶着・溶断される。その後、回転テーブル20の回転に伴い、接合した接ぎ木苗の後に位置するチャック機構111Dがテープを引き出し、次の接ぎ木苗が熱可塑性樹脂テープ30の間に挟まれた状態となる。この動作を繰り返すことにより、自動で接ぎ木苗の接合が可能となる。なお、チャック機構111Dは、熱可塑性樹脂テープ30を機械的に把持(挟持)してもよいし、熱可塑性樹脂テープ30を真空吸着保持してもよい。また、チャック機構111Dは、静電気や磁気を利用して熱可塑性樹脂テープ30を吸着保持してもよい。この場合、熱可塑性樹脂テープ30を帯電させたり、熱可塑性樹脂テープ30に磁性体を付着させたりすればよい。なお、この場合、チャック機構111Dが挟み込み機構となる。
なお、図19(a)の例においては、溶着機40において、溶断まで行わなくてもよい。例えば、チャック機構111Dで熱可塑性樹脂テープ30を引っ張った後に、7時の位置に位置する接ぎ木苗103と接ぎ木苗103前後のチャック機構111Dとの間を切断するようにしてもよい。この場合、電動ニッパやエアニッパなどの切断機構を有していればよい。
なお、上記実施形態では、ピン28等を用いて熱可塑性樹脂テープ30をテープ供給装置31、32から引き出すことにより、接ぎ木苗103にダメージを与えないようにする場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、穂木102や台木104が樹木である場合には、茎が堅いため、穂木102や台木104で熱可塑性樹脂テープ30を引き出してもダメージは少ない。この場合、把持機構24、124により把持した樹木の接ぎ木苗103が回転テーブル20の回転によって、テープ供給部から供給されている熱可塑性樹脂テープを引き出し、6時の位置に移動する。次に溶着部により熱可塑性樹脂テープ30でU字状に覆われている接ぎ木苗103の回転方向後側を溶断・溶着することにより接ぎ木苗103の接合が可能となる。したがって、このような場合には、ピン28等を設けないようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、制御装置10は、各装置の動作をシーケンシャルに制御する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、接ぎ木装置100の必要箇所にセンサを設け、センサの検出結果に基づいて各装置の動作を制御するようにしてもよい。
なお、上記実施形態では、熱可塑性樹脂テープ30が透明である場合について説明したが、これに限らず、不透明、半透明であってもよい。
なお、上記実施形態では、溶着機40の先端部の左右(図6におけるX軸方向の一側と他側)の突出量、及び/又は、押し当て部材35の左右(X軸方向の一側と他側)の突出量を異ならせてもよい。このようにすることで、溶着機40と押し当て部材35の接触力(押し当て力)が弱い側を溶着し、接触力が強い側を溶着かつ切断することが可能となる。したがって、例えばピン28と接ぎ木苗103の間(接ぎ木苗の−X側)の溶着部分の押し当て力を弱くし、他方を強くすれば、図20(a)に示すように、ピン28の周囲の熱可塑性樹脂テープ30が接ぎ木苗103を覆う熱可塑性樹脂テープ30につながった状態で残るようになる。この場合、図20(b)に示すように、ピン28の周囲の熱可塑性樹脂テープ(リング状部分)は、苗排出部112における排出後も接ぎ木苗103を覆う熱可塑性樹脂テープにつながったままとなるため、リング状部分に支柱を差し込むことで、支柱に接ぎ木を支持させることが可能となる。また、ピン28の周囲を覆っていた熱可塑性樹脂テープ30がピン28から抜け落ちて、苗接合部110近傍に散乱するのを防止することができる。
(変形例1)
図21には、変形例1に係る接ぎ木装置200の一部が斜視図にて示されている。また、図22には、図21から熱可塑性樹脂テープ30と接ぎ木苗103(穂木102、台木104)を省略した状態が斜視図にて示されている。
図21、図22に示すように、本変形例1においては、ピン28の所定高さ位置に規制部としての円環状部材28aが設けられている。この場合の所定高さ位置は、ピン28が熱可塑性樹脂テープ30を略水平に引き出した状態で、熱可塑性樹脂テープ30の上端とほぼ接する位置である。また、押し当て部材35の近傍には、規制部としてのガイド部材206A,206Bが設けられている。
ガイド部材206Aは、押し当て部材35の+X側かつ−Y側に設けられた不図示の支柱に設けられており、Y方向ガイド部材214A,214Bと、Z方向ガイド部材216A,216Bとを有する。Z方向ガイド部材216A,216Bは、支柱に設けられたY方向ガイド部材214Bにねじ止めにより固定されている。ただし、これに限らず、Z方向ガイド部材216A,216Bは、Y方向ガイド部材214Aに固定されてもよいし、Y方向ガイド部材214A,214Bの両方に固定されてもよい。また、一方のZ方向ガイド部材が一方のY方向ガイド部材に固定され、他方のZ方向ガイド部材が他方のY方向ガイド部材に固定されてもよい。また、固定方法は、ねじ止め以外の固定方法であってもよい。Y方向ガイド部材214A,214Bは、Y軸方向に所定間隔をあけて設けられており、隙間215を形成している。この隙間215に熱可塑性樹脂テープ30が通されることで、熱可塑性樹脂テープ30がZ方向ガイド部材216A,216Bの間に導かれるようになっている。Z方向ガイド部材216A,216Bは、熱可塑性樹脂テープ30の幅とほぼ同一の間隔をあけて配置されているため、Z方向ガイド部材216A,216Bは、Y方向ガイド部材214A,214Bにより導かれた熱可塑性樹脂テープ30のZ方向(鉛直方向)への移動を規制している。なお、本実施形態では、Z方向ガイド部材216A,216BがY方向ガイド部材214A,214Bよりも−X側(ピン28に近い位置)に設けられている。これにより、Z方向ガイド部材216A,216Bの位置がピン28の軌道に近い位置に設定されるため、ピン28が熱可塑性樹脂テープ30を引っ張るときの熱可塑性樹脂テープ30の上下位置を安定させることができる。
ガイド部材206Bは、押し当て部材35の+X側に隣接して配置されている。ガイド部材206Bは、上端と下端が−Y側に張り出したコ字状(U字状)の形状を有し、−Y側に張り出した部分において熱可塑性樹脂テープ30を上下から挟み、熱可塑性樹脂テープ30のZ方向(鉛直方向)への移動を規制している。
これら円環状部材28aやガイド部材206A,206Bにより、ピン28によって引き出された熱可塑性樹脂テープ30の引き出し方向が規制される。これにより、熱可塑性樹脂テープ30の鉛直方向へのずれが抑制されるので、穂木102と台木104の適切な位置を熱可塑性樹脂テープ30で覆うことができる。すなわち、円環状部材28a、ガイド部材206A,206Bにより、接ぎ木苗103の密着した部分を挟んで上下に略均等な幅で密着した部分を覆うように、熱可塑性樹脂テープ30の上端及び下端を案内することができる。したがって、接合後の穂木102と台木104のずれを効果的に抑制することが可能となる。なお、円環状部材28aは、図21に示すように、熱可塑性樹脂テープ30の上側に位置しているため、ピン28の周囲に残留した熱可塑性樹脂テープ30の自然落下が円環状部材28aによって妨げられることはない。なお、ピン28に円環状部材28aを設ける場合に限らず、例えば、ピン28の中央部近傍よりも下端部側の径を小さくし、上端部側の径を大きくしてもよい。
ここで、図21では、不図示であるが、Y方向ガイド部材214A,214Bの間の隙間215は、アクチュエータによって開閉できるようにしてもよい。この場合、Y方向ガイド部材214A、214Bを互いにY軸方向逆向きに駆動してもよいし、いずれか一方をY軸方向に駆動してもよい。ただし、熱可塑性樹脂テープ30の安定供給の観点からすれば、Y方向ガイド部材214Bを駆動するのが好ましい。なお、隙間215を開閉できるようにする場合、Z方向ガイド部材216Aは、Y方向ガイド部材214A,214Bのいずれかに固定するようにし、Z方向ガイド部材216Bについても、Y方向ガイド部材214A,214Bのいずれかに固定するようにすればよい。制御装置10は、アクチュエータを制御して、回転テーブル20の回転中は隙間215を広くし、回転テーブル20が停止したと同時に隙間215を狭くして、Y方向ガイド部材214A、214Bの間で熱可塑性樹脂テープ30を把持するようにする。これにより、回転テーブル20の回転時には所定のテンションをかけながらピン28によって熱可塑性樹脂テープ30を引っ張り出せるようにし、回転テーブル20の停止時には、熱可塑性樹脂テープ30のテンションを維持することができる。したがって、回転テーブル20が停止した状態で、溶着機40による超音波溶着が行われ、押し当て部材35の隙間に接ぎ木苗103が押し込まれる際に、接ぎ木苗103の接合状態を維持するために必要なテンションを熱可塑性樹脂テープ30に確実にかけることができる。なお、Y方向ガイド部材214A、214Bそれぞれが対向する面にスポンジやゴム等の弾性部材を設けることで、熱可塑性樹脂テープ30を把持する際の滑りを抑制することもできる。
なお、ガイド部材206Aの支柱に対する上下位置(Z方向位置)を調整できるようにしてもよい。ガイド部材206Aの上下位置を調整することで、接ぎ木苗103の−Y側に位置する熱可塑性樹脂テープ30と、+Y側に位置する熱可塑性樹脂テープ30との上下位置を合わせることができる。
また、本変形例1においては、図22に示すように、押し当て部材35の隙間(接ぎ木苗103の密着した部分が入り込む箇所)に付勢部材としてのバネ部材208が設けられている。バネ部材208は、略L字状の金属部材である。本変形例1においては、上記実施形態と同様、押し当て部材35の隙間に穂木102、台木104が入り込んだ状態で、熱可塑性樹脂テープ30が押し当て部材35と溶着機40とにより挟まれ、溶着、溶断される。この場合、接合された接ぎ木苗103が押し当て部材35の隙間に位置することになるが、本変形例1のようにバネ部材208を設けておくことで、バネ部材208の弾性力により、接合後の接ぎ木苗103が押し当て部材35から離間する方向に付勢される。これにより、接合後の接ぎ木苗103が押し当て部材35の隙間に嵌った状態で回転テーブル20が回転し、接ぎ木苗103に過度な力がかかるのを防止することができる。
なお、図22では、押し当て部材35の隙間にバネ部材208を設ける場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図23に示すように、付勢部材として、押し当て部材35の上側近傍及び下側近傍にねじりバネ308A、308Bを設けてもよい。ねじりバネ308A,308Bは、押し当て部材35と同様、フレーム135(図4参照)に固定された保持部材310に設けられている。ねじりバネ308A、308Bは、バネ部材208と同様、弾性力により、接合後の接ぎ木苗103を押し当て部材35から離間する方向に付勢する。これにより、接合後の接ぎ木苗103が押し当て部材35の隙間に嵌った状態で回転テーブル20が回転し、接ぎ木苗103に過度な力がかかるのを防止することができる。
なお、ねじりバネ308A,308Bに代えて、図24に示すように、針金をコの字状(U字状)に折り曲げて、一端部近傍及び他端部近傍にねじりバネを形成した弾性部材308を付勢部材として用いることとしてもよい。この場合、弾性部材308の一部が押し当て部材35の隙間に入るようにし、当該弾性部材308の一部(押し当て部材35の隙間に入る部分)にロール部材309を設けるようにする。このようにロール部材309を設けることで、弾性部材308の弾性力を接ぎ木苗103に対して効果的に伝達することができるようになる。
更に、本変形例1においては、図21、図22に示すように、上側テーブル26Aに設けられた把持機構24の力作用部34には、押し出し板202が設けられ、下側テーブル26Bに設けられた把持機構124の第2把持部29Bには、押し出し棒204が設けられている。なお、力作用部34と押し出し板202は、別部材でもよいが、押し出し板202と力作用部34とを一体成型してもよい。
把持解除部50は、上記実施形態と同様、7時の位置(図1の(D)の位置)にある把持機構24、124の力作用部34に対して−Y側から接触部56A、56Bを押しつけ、把持機構24、124による接ぎ木苗103の把持を解除する。この場合、把持機構24の力作用部34の姿勢変化により、押し出し板202の姿勢も変化し、押し出し板202が穂木102を把持機構24の外側に押し出す。また、把持機構24の第2把持部29Bが開くことで、押し出し棒204の姿勢が変化し、押し出し棒204が台木104を把持機構124の外側に押し出す。これにより、接合後の接ぎ木苗103は、7時の位置において、コンベア60上に落下しやすくなる。また、把持機構24側には、押し出し板202を設けているため、押し出し板202の把持機構24の上方に位置する部分が、穂木102の葉を含む全体を外側に効果的に押すことができる。これにより、接ぎ木苗103の排出の際に、穂木102や穂木102の葉が把持機構24に引っかかるのを抑制することができる。ただし、把持機構24の押し出し板202に代えて、押し出し棒204と同様の押し出し棒を設けるようにしてもよい。なお、図25に示すように、押し出し板202に、穂木102の葉の広がりを抑制する板状部材320を設けてもよい。これにより、板状部材320の把持機構24側とは反対側(接触部56Aが当接する位置)に穂木102の葉が広がらないようになる。したがって、接ぎ木苗103の排出の際に、押し出し板202と把持解除部50の接触部56Aとの間に穂木102の葉が挟まれ、接ぎ木苗103が損傷するのを抑制することができる。本変形例1のように、押し出し板202を設けておくことにより、手作業で穂木を把持機構24にセットする際には、作業者は穂木102を保持した手で押し出し板202を押すことで、把持機構24を容易に開くことができるという効果もある。
なお、変形例1の接ぎ木装置200は、上述した円環状部材28a、バネ部材208、ねじりバネ308A,308B、押し出し板202、押し出し棒204の少なくとも1つを備えていなくてもよい。
(変形例2)
図26は、変形例2に係る接ぎ木装置300の一部(6時の位置(図1の(C)の位置)及び7時の位置の近傍)を示す平面図であり、図27は、変形例2に係る接ぎ木装置300の一部(7時の位置の近傍)を示す斜視図である。図27に示すように、変形例2においては、上側テーブル26Aに設けられた把持機構24の力作用部34の上面に、軸部材210Aを介して回転体212Aが設けられ、下側テーブル26Bに設けられた把持機構124の力作用部34の下面に、軸部材210Bを介して回転体212Bが設けられている。回転体212A,212Bは、軸部材210A,210Bを中心としたZ軸回りに回転自在となっている。また、7時の位置近傍には、回転体212Aが接触する接触部材294Aと、回転体212Bが接触する接触部材294Bと、が設けられている。接触部材294A,294Bは、ローラ状の形状を有し、支持部材296(図26参照)により支持されている。接触部材294A,294Bの位置は回転体212A,212B以外とは接触しない位置に固定された状態となっている。なお、接触部材294A、294Bの表面には、回転体212A,212Bに接触した回転体212A,212BがZ軸回りに回転しやすくなるように、摩擦係数の高い材料(例えばゴムなど)を設けておいてもよい。
本変形例2では、図26に示すように、把持機構24に設けられた回転体212Aは、7時の位置近傍で、接触部材294Aに接触する。そして、回転体212Aは、接触部材294Aの外周に沿って回転しながら移動するため、把持機構24の力作用部34が押され、把持機構24による接ぎ木苗103の把持が解除される。また、把持機構124に設けられた回転体212Bは、7時の位置近傍で、接触部材294Bに接触する。そして、回転体212Bは、接触部材294Bの外周に沿って回転しながら移動するため、把持機構124の力作用部34が押され、把持機構124による接ぎ木苗103の把持が解除される。なお、本変形例2においても、把持機構24の把持解除のタイミングが、把持機構124による把持解除のタイミングよりも早くなるように、接触部材294A,294Bの位置を調整することができる。
本変形例2によれば、上記実施形態の把持解除機構51のように把持解除用電動スライダ52などの駆動機構を用いなくても、把持機構24,124の把持を適切なタイミングで解除することができる。この場合、把持機構24,124の把持を解除するために、電動モータ等を用いなくてもよいため、コスト削減を図ることができる。なお、接触部材294A,294Bは、ローラ形状である場合について説明したが、これに限らず、回転体212A,212Bと接触するのであれば、他の形状(例えば板状)であってもよい。
なお、上記変形例1と変形例2を適宜組み合わせることも可能である。
なお、図5においては、トーションバネ36の弾性力により、力作用部34及び第2把持部29Bに軸129を中心とした時計回り方向の力を付勢する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図28に示すように、引っ張りコイルバネ236の弾性力により、力作用部34及び第2把持部29Bに軸129を中心とした時計回り方向の力を付勢するようにしてもよい。図28の例では、引っ張りコイルバネ236の一端を、第2把持部29Bに接続し、引っ張りコイルバネ236の他端を、上側テーブル26Aの上面に固定された固定台238に接続するようにしている。この場合、固定台238に長孔239を形成しておき、固定台238を上側テーブル26Aに固定するために用いるネジ243と、長孔239との位置関係を変更することにより固定台238の固定位置を調整するようにする。これにより、引っ張りコイルバネ236による付勢力を調整することができる。なお、引っ張りコイルバネ236による付勢力を調整する必要がない場合には、固定台238に長孔239を設けなくてもよい。また、引っ張りコイルバネ236の一端を上側テーブル26Aに直接接続するようにしてもよい。なお、下側テーブル26B側についても同様の構成を採用することができる。
なお、上記実施形態及び変形例では、把持機構24の第1把持部29Aを省略し、テープ引き出し機構39の固定部材27に、第1把持部29Aとしての機能を持たせるようにしてもよい。すなわち、固定部材27と第2把持部29Bとにより穂木102を把持するようにしてもよい。
なお、図29に示すように、テープ引き出し機構39の固定部材27の下面に断面L字状でブロック状のストッパ部材243を設けることとしてもよい。このストッパ部材243により、ピン28が垂直位置より回転テーブル20の奥側に回転するのを防止することができる。これにより、回転テーブル20の回転の際や熱可塑性樹脂テープ30の溶着の際にピン28が回転テーブル20の奥側へ揺動するのを防止することができる。なお、図29では、ストッパ部材243が固定部材27に設けられている場合を図示しているが、ストッパ部材243は、例えば、上側テーブル26Aに固定されてもよい。
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。