JP6746671B2 - 反応物繊維及び微細セルロース繊維複合体の製造方法 - Google Patents
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Description
固形分濃度で0.0001質量%のセルロース繊維に水を加えて分散液を調製し、該分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の
繊維高さを測定する。そして、セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。一般に高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は36×36の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析できる高さを繊維の幅と見なすことができる。
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、セルロース繊維のカルボキシル基含有量を算出する。
カルボキシル基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
平均アスペクト比は、セルロース繊維に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の質量濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。下記式(1)は、The Theory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。尚、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
下記A法又はB法によって測定する。尚、後述する実施例及び比較例のサンプル(複合材料)の引張弾性率及び引張降伏強度の測定において、実施例1〜11及び比較例1〜5については下記A法を利用し、実施例12〜16及び比較例6については下記B法を利用した。
A法:引張圧縮試験機((株)オリエンテック社製 RTA−500)を用いて、JIS K7113に準拠して、複合材料の引張弾性率及び引張降伏強度をそれぞれ引張試験によって測定した。3号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。
B法:引張圧縮試験機(Orientic Corporation社製 テンシロンUTC−100)を用いて、JIS K7113に準拠して、複合材料の引張弾性率及び引張降伏強度をそれぞれ引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離40mmでセットし、クロスヘッド速度50mm/minで測定した。
全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定し、ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定する。これらの測定には市販のヘイズメーターを用いる。尚、後述する実施例及び比較例のサンプル(複合材料)に関し、実施例1〜11及び比較例1〜5については、ヘイズメーターとしてNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用い、実施例12〜16及び比較例6については、ヘイズメーターとしてHM−150(村上色彩技術社製)を用いた。
前述した第2製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造し、これを実施例1のサンプルとした。即ち、原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ14.2質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、イオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行い、反応物繊維(酸化パルプ)を得た。
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.2gに変更して、微細セルロース繊維分散液における微細セルロース繊維複合体の含有量を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例2のサンプルとした。
界面活性剤として、TBAHに代えて、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH、和光純薬工業(株)製)6.0gを用いた以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2質量%)を製造し、これを実施例3のサンプルとした。
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.2gに変更して、微細セルロース繊維分散液における微細セルロース繊維複合体の含有量を下記表1のように変更した以外は実施例3と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例4のサンプルとした。
界面活性剤として、TBAHに代えて、コータミンD86P(花王(株)製、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド)3.2gを用いた以外は実施例2と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例5のサンプルとした。
前述した第1製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造し、これを実施例6のサンプルとした。即ち、前記反応物繊維(酸化パルプ)をイオン交換水にて固形分濃度1質量%に調整して水分散液を得、該水分散液300gをミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪ケミカル(株)製)にて120分間微細化処理し、そうして得られた微細セルロース繊維懸濁液に、イオン交換水にて5質量%に希釈したファーミン08D(花王(株)製、オクチルアミン)水溶液(塩酸にてpH4.5に調整)を80g添加して、24時間攪拌した。その後、該混合液を遠心分離によってイオン交換水及びアセトンで十分に洗浄して、微細セルロース繊維複合体を得た。
分散媒として、エタノールと水との混合溶媒に代えて、エタノールとDMFと水との混合溶媒(混合比30/60/10)を用いた以外は実施例6と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度0.4質量%)を製造し、これを実施例7のサンプルとした。
界面活性剤を未添加とした以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例1のサンプルとした。
界面活性剤を未添加とした以外は実施例2と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例2のサンプルとした。
前記酸化反応工程(天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る工程)を実施しなかった以外は比較例1と同様にしてセルロース繊維分散液を製造し、これを比較例3のサンプルとした。酸化反応工程を実施しないことにより、セルロース繊維分散液中のセルロース繊維は、前記微細セルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維)とは異なる繊維である(以下、非微細セルロース繊維ともいう)。
界面活性剤を未添加とした以外は実施例6と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例4のサンプルとした。
実施例及び比較例のサンプル(セルロース繊維分散液)について、光線透過率及び粘度をそれぞれ前記測定方法により測定した。これらの結果を下記表1に示す。
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いて、前述した溶融混練法によりシート状の複合材料を製造し、これを実施例8のサンプルとした。具体的には、成形可能な樹脂としてPLA(NW4032D、Nature works製)を用い、混練機(ラボプラストミル、東洋精機(株)製)を用いて、PLA50g、実施例1の微細セルロース繊維分散液5gを順次添加し、回転数50rpm、180℃で10分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(ラボプレス、東洋精機(株)製)を用いて、180℃、低圧(5Kg/cm2)3分、その後、高圧(200Kg/cm2)で1分、熱プレス後、さらに20℃、低圧(5Kg/cm2)3分、高圧(200Kg/cm2)で1分冷却プレスし、厚さ約0.5mmのシート状の複合材料を製造し、これを実施例8のサンプルとした。
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例2の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例9のサンプルとした。
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例4の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例10のサンプルとした。
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例5の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例11のサンプルとした。
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いない代わりに、該微細セルロース繊維分散液と同量のコハク酸トリメチルグリコールジエステル(分散媒)を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを比較例5のサンプルとした。比較例5のサンプルは、セルロース繊維複合体を含んでおらず、実施例8〜11の複合材料におけるベースポリマー(PLA)のみからなる成形体である。
実施例及び比較例のサンプル(複合材料)について、引張弾性率、引張降伏強度、全光線透過率をそれぞれ前記測定方法により測定すると共に、無荷重下における厚みを測定した。これらの結果を下記表2に示す。
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いて、前述した溶融混練法によりシート状の複合材料を製造し、これを実施例12のサンプルとした。具体的には、成形可能な樹脂としてPLA(NW4032D、Nature works製)を用い、混練機(ラボプラストミル、東洋精機(株)製)を用いて、PLA50g、実施例1の微細セルロース繊維分散液5g、結晶核剤〔スリパックスH(エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、日本化成(株)製〕0.15gを順次添加し、回転数50rpm、180℃で10分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(ラボプレス、東洋精機(株)製)を用いて、180℃、低圧(5Kg/cm2)3分、その後、高圧(200Kg/cm2)で1分、熱プレス後、さらに80℃、低圧(5Kg/cm2)で3分、高圧(200Kg/cm2)で1分冷却プレスし、厚さ約0.5mmのシート状の複合材料を製造し、これを実施例12のサンプルとした。
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.6gに変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度3質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を、実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて用いたこと以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例13のサンプルとした。
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で1.0gに変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度5質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を、実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて用いたこと以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例14のサンプルとした。
前述した第1製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造した。即ち、原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ 製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ14.2質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、イオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行い、反応物繊維(酸化パルプ)を得た。
実施例15と同様にして得られた微細セルロース繊維複合体を固形分換算で0.4gと、軟質化剤(分散媒)としてのコハク酸メチルトリグリコールジエステル((MeEO3)A1010、特開2007−16092号公報を参考に合成)20gとを混合して、超音波攪拌機(UP200H,hielscher社製)にて3分間攪拌する。こうして、微細セルロース繊維複合体及び有機溶媒を含む、微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を用いて、実施例15と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例16のサンプルとした。
微細セルロース繊維分散液を用いない代わりに、該微細セルロース繊維分散液と同量のコハク酸トリメチルグリコールジエステル(分散媒)を用いた以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを比較例6のサンプルとした。比較例6のサンプルは、微細セルロース繊維複合体を含んでおらず、実施例12〜16の複合材料におけるベースポリマー(PLA)のみからなる成形体である。
実施例及び比較例のサンプル(複合材料)について、引張弾性率、引張降伏強度、全光線透過率、ヘイズ値をそれぞれ前記測定方法により測定した。これらの結果を下記表3に示す。
Claims (8)
- 平均繊維径200nm以下の微細セルロース繊維を含む微細セルロース繊維複合体の製造中間体であって、
カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの前記微細セルロース繊維に陽イオン界面活性剤が吸着してなり、
前記陽イオン界面活性剤は、前記微細セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基にイオン結合しており、
前記陽イオン界面活性剤が第1〜3級アミン化合物である、反応物繊維。 - 前記反応物繊維は、反応物繊維(ただし、平均繊維径が200nm以下のものを除く)である、請求項1に記載の反応物繊維。
- 請求項1又は2に記載の反応物繊維を溶媒中に分散させて微細化処理する工程を有する、微細セルロース繊維複合体の製造方法。
- 前記微細化処理する工程において、前記反応物繊維を溶媒中で分散させる分散機として、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサーのいずれか1以上を用いる、請求項3に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
- 前記溶媒として、有機溶媒又は水を用いる、請求項3又は4に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
- 前記微細化処理する工程において、前記反応物繊維の固形分濃度を50質量%以下とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の微細セルロース繊維複合体の製造方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた微細セルロース繊維複合体を乾燥する工程を有する、乾燥した粉末状微細セルロース繊維複合体の製造方法。
- 請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた微細セルロース繊維複合体又は、請求項7に記載の製造方法によって得られた粉末状微細セルロース繊維複合体と、成形可能な樹脂とが混合された複合材料。
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