JP6160244B2 - 微細セルロース繊維含有材料及びその製造方法、複合材料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細セルロース繊維含有材料及びその製造方法、微細セルロース繊維と樹脂を含有する複合材料及びその製造方法に関する。
車両、航空機、家電製品、電子機器、事務機器等を構成する材料として、マトリクス樹脂に繊維を配合した複合材料を用いることがある。複合材料に使用される繊維として、繊維径がナノメートルオーダーの微細セルロース繊維を用いる研究が盛んになってきている。
微細セルロース繊維としては、リグノセルロースを、ニトロキシラジカル誘導体、臭化アルカリ及び酸化剤を含む分散媒中で処理して得た、カルボキシ基を有する繊維が知られている(特許文献1)。
特開2008−308802号公報
しかし、微細セルロース繊維は樹脂に混合した際に凝集しやすく、樹脂中の分散性が低いため、複合材料の機械的物性(例えば、引張破断強度、引張弾性率等)を充分に向上させることができなかった。
本発明は、樹脂に対する微細セルロース繊維の分散性を向上させて、微細セルロース繊維と樹脂との複合材料の機械的物性を向上させることができる微細セルロース繊維含有材料及びその製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、機械的物性に優れた複合材料及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維と、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットとを含有する微細セルロース繊維含有材料。
[2]平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維と、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットと、樹脂とを含有し、樹脂中に微細セルロース繊維が分散している複合材料。
[3]平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維を、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットにより処理する処理工程を有する微細セルロース繊維含有材料の製造方法。
[4][1]に記載の微細セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練する混練工程を有する複合材料の製造方法。
[5]平均繊維幅が1000nmを超えるセルロース繊維を、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットにより処理してセルロース繊維含有材料を得る処理工程、該セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練する混練工程を有する複合材料の製造方法。
[6]前記混練工程では、セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練しながら脱揮する[4]又は[5]に記載の複合材料の製造方法。
本発明の微細セルロース繊維含有材料によれば、樹脂に対する微細セルロース繊維の分散性を向上させて、微細セルロース繊維と樹脂との複合材料の機械的物性を向上させることができる。
本発明の微細セルロース繊維含有材料の製造方法によれば、上記微細セルロース繊維含有材料を容易に製造できる。
本発明の複合材料は、機械的物性に優れたものである。
本発明の複合材料の製造方法によれば、上記複合材料を容易に製造できる。
「微細セルロース繊維含有材料及びその製造方法」
本発明の微細セルロース繊維含有材料は、微細セルロース繊維と、塩基性を示す含窒素化合物(以下、「塩基性含窒素化合物」という。)とを含有する。
<微細セルロース繊維>
微細セルロース繊維は、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細く且つ短いI型結晶構造のセルロース繊維あるいは棒状粒子である。
微細セルロース繊維がI型結晶構造を有していることは、グラファイトで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を用いた広角X線回折写真より得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の2箇所の位置に典型的なピークを有することで同定することができる。
微細セルロース繊維の、X線回折法によって求められる結晶化度は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。結晶化度が前記下限値以上であれば、耐熱性と低線熱膨張率発現の点でさらに優れた性能が期待できる。
結晶化度については、X線回折プロファイルを測定し、そのパターンから常法により求めることができる(Segalら、Textile Research Journal、29巻、786ページ、1959年)。
(繊維幅)
微細セルロース繊維は、電子顕微鏡で観察して求めた平均繊維幅が2〜1000nmのセルロースである。微細セルロース繊維の平均繊維幅は2〜100nmが好ましく、2〜50nmがより好ましく、2〜30nmがさらに好ましく、2〜15nmが特に好ましい。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記上限値を超えると、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性、樹脂と複合化した際の高分散性、透明性)を得ることが困難になる。微細セルロース繊維の平均繊維幅が前記下限値未満であると、セルロース分子として分散媒に溶解してしまうため、微細セルロース繊維としての特性(高強度や高剛性、高寸法安定性)を得ることが困難になる。
微細セルロース繊維の電子顕微鏡観察による平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。微細セルロース繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、40000倍、50000倍あるいは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する繊維、直線Yに交錯する繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を平均して平均繊維幅を求める。この平均繊維幅は数平均繊維径と等しい。
(繊維長)
微細セルロース繊維の平均繊維長は、0.1〜100μmが好ましい。平均繊維長が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際に機械的物性をより向上させることができる。平均繊維長が前記上限値以下であれば、微細セルロース繊維を樹脂に配合した際の混合性がより良好となる。
平均繊維長は、カヤーニオートメーション社のカヤーニ繊維長測定器(FS−200形)を用い、長さ加重平均繊維長を測定することにより求める。
また、微細化を進めた場合、得られた繊維は幅が細く、長さが短くなり、カヤーニ繊維長測定器では測定できなくなることがある。そこで、繊維の長さに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)を適宜選択し、繊維長を観察・測定する。繊維長は、得られた写真から20本以上を選択し、測定する。
(極性基)
微細セルロース繊維は、アニオン性の極性基(例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基等)あるいはカチオン性の極性基(例えば、アミノ基、アンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基等)を有して表面電荷が正あるいは負となっていてもよい。
微細セルロース繊維が極性基を有する場合、その含有量は、0.1〜2.0mmol/gであることが好ましく、0.1〜1.5mmol/gであることがより好ましく、0.2〜1.2mmol/gであることがさらに好ましい。極性基の含有量が前記範囲であれば、微細セルロース繊維の水和性が高くなり過ぎず、スラリー化した際の粘度が低くなる。極性基の含有量が前記上限値を超えると、水和性が高くなりすぎて微細セルロース繊維が溶解するおそれがある。
なお、セルロースは、カルボキシ基を導入する処理を施さなくても、少量(具体的には0.1mmol/g未満)のカルボキシ基を有している。
カルボキシ基の含有量は、米国TAPPIの「Test Method T237 cm−08(2008):Carboxyl Content of pulp」の方法に準じて測定することができる。
(微細セルロース繊維の製造方法)
微細セルロース繊維は、セルロース繊維原料を微細化処理することにより得られる。微細化処理の前には、微細化促進のために、極性基及び嵩高基の少なくとも一方からなる置換基を含有させる化学処理を施してもよい。
化学処理としては、カルボン酸系化合物による処理、リン原子を含むオキソ酸またはその塩による処理、オゾンによる処理、酵素による処理、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(以下、「TEMPO」と表記する。)による処理等が挙げられる。
微細セルロース繊維の原料となる、セルロースを含む繊維原料としては、製紙用パルプ、コットンリンターやコットンリントなどの綿系パルプ、麻、麦わら、バガスなどの非木材系パルプ、ホヤや海草などから単離されるセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、入手のしやすさという点で、製紙用パルプが好ましい。製紙用パルプとしては、広葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)など)、針葉樹クラフトパルプ(晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(NOKP)など)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、楮、三椏、麻、ケナフ等を原料とする非木材パルプ、古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられる。これらの中でも、より入手しやすいことから、クラフトパルプ、脱墨パルプ、サルファイトパルプが好ましい。
セルロース繊維原料は1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
<塩基性含窒素化合物>
塩基性含窒素化合物とは、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミンおよびこれらの塩、4級アンモニウム塩、アミド、イミド、尿素およびその誘導体、ヒドラジンおよびその誘導体、アゾ化合物、ジアゾ化合物、含窒素複素環、生体アミン類等の官能性窒素を有する物質のことである。なお、塩基性とは、pHが7超のことである。
また、塩基性含窒素化合物は、分子量が1000以下の低分子化合物であることが好ましい。
塩基性含窒素化合物のうち低分子化合物としては、尿素、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、シクロヘキシルアミン、アニリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム等が挙げられる。
特に、分子中に塩基性を示す官能基を複数有する多官能性の化合物は、セルロース繊維の膨潤効果が高く、また、セルロース繊維間あるいはセルロースと樹脂間を化学架橋する場合もあるため、より好ましい。加えて、分子の全末端に塩基性を示す官能基を有する化合物であることが特に好ましい。
また、塩基性含窒素化合物は、上記化合物の誘導体であってもよい。塩基性含窒素化合物の誘導体としては、例えば、チオ尿素、アミノ基を有する化合物の一部の水素原子がアルキル基等により置換された化合物等が挙げられる。
上記塩基性含窒素化合物は1種単独を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記塩基性含窒素化合物の中でも、得られる複合材料の機械的強度をより高くできることから、尿素又は尿素の誘導体が好ましい。尿素の誘導体としては、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)により置換された化合物、ビウレットが挙げられる。
微細セルロース繊維含有材料において、塩基性含窒素化合物の含有量は、微細セルロース繊維100質量部に対し、0.1〜100質量部であることが好ましく、0.5〜80質量部であることがより好ましく、1〜60質量部であることがさらに好ましい。
塩基性含窒素化合物の含有量が前記下限値以上であれば、複合材料の機械的物性をより向上させることができ、前記上限値以下であれば、塩基性含窒素化合物が樹脂中に過剰に混入するのを防ぐことができる。
<第1の樹脂>
微細セルロース繊維含有材料は、第1の樹脂を含有してもよい。なお、微細セルロース繊維含有材料が第1の樹脂を含有しても、微細セルロース繊維は第1の樹脂中に分散していない。
第1の樹脂としては特に限定されないが、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等であってもよい。
微細セルロース繊維含有材料における第1の樹脂の含有量は、微細セルロース繊維100質量部に対して0.1〜1000質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましく、10〜100質量部であることがさらに好ましい。第1の樹脂が前記下限値以上であれば、微細セルロース繊維含有材料を第1の樹脂とは異なる第2の樹脂中に混合した際の微細セルロース繊維の分散性をより向上させることができ、前記上限値以下であれば、セルロースの含有比率が高くなるため、第1の樹脂とは異なる第2の樹脂中に混合した際のセルロースによる樹脂補強効果が高くなる。
<他の成分>
微細セルロース繊維含有材料には、必要に応じて、一般的な紙と同様に、サイズ剤、紙力増強剤、填料などが含まれても構わない。
<坪量>
微細セルロース繊維含有材料の坪量は15g/m以上であることが好ましく、25g/m以上であることがより好ましい。坪量が前記下限値以上であれば、充分な厚みを確保できる。一方、微細セルロース繊維含有材料の坪量は、生産性の点から、150g/m以下であることが好ましく、100g/m以下であることがより好ましい。
<微細セルロース繊維含有材料の製造方法>
本発明の微細セルロース繊維含有材料の製造方法は、微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物により処理する処理工程を有する方法である。
微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物により処理する方法としては、塩基性含窒素化合物を含む水溶液に微細セルロース繊維を浸漬させ、次いで、前記水溶液から引き上げた後、乾燥させる方法が挙げられる。浸漬後、必要に応じて、微細セルロース繊維に含まれる塩基性含窒素化合物の水溶液を、マングル、プレス機等で絞り取っても構わない。
乾燥方法としては、加熱したシリンダーに巻き付けて乾燥する方法、熱風を吹き付けて乾燥する方法、赤外線を照射して乾燥する方法等を適用することができる。
上記の方法では、塩基性含窒素化合物を含む水溶液の濃度、塩基性含窒素化合物を含む水溶液に微細セルロース繊維を浸漬させる浸漬時間、浸漬後に絞り取る程度によって、塩基性含窒素化合物の添加量を調整することができる。例えば、塩基性含窒素化合物を含む水溶液の濃度を薄くする程、浸漬時間を短くする程、浸漬後に絞り取る量が多い程、塩基性含窒素化合物の添加量は少なくなる。
また、微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物により処理する方法としては、微細セルロース繊維に塩基性含窒素化合物を添加し、攪拌装置により攪拌した後、乾燥させる方法も挙げられる。攪拌装置としては、アジテーター、ホモミキサー、パイプラインミキサーなどを使用することができる。
塩基性含窒素化合物により処理する際の微細セルロース繊維の形態としては特に制限はなく、微細セルロース繊維を抄紙したシートであってもよいし、微細セルロース繊維の綿状物であってもよいし、微細セルロース繊維を分散媒に分散させたスラリー状であってもよい。生産性の点からは、微細セルロース繊維を抄紙したシートが好ましい。
第1の樹脂を含有する微細セルロース繊維含有材料を製造する場合には、第1の樹脂を含むエマルション又はスラリーを、塩基性含窒素化合物の処理前又は処理後に、微細セルロース繊維に添加し、エマルション又はスラリーの分散媒を除去すればよい。
<作用効果>
塩基性含窒素化合物を含有する本発明の微細セルロース繊維含有材料では、微細セルロース繊維同士の結合力が弱くなる。そのため、複合材料を製造するために樹脂を配合した際には、微細セルロース繊維同士の間に樹脂が入り込みやすくなっており、樹脂に対する微細セルロース繊維の分散性を向上させることができる。これにより、微細セルロース繊維と樹脂との複合材料の機械的物性を向上させることができる。
また、塩基性含窒素化合物は水と比べて疎水性樹脂との相溶性が高いため、樹脂が疎水性樹脂である場合でも、微細セルロース繊維の分散性を向上させることができる。
「複合材料及びその製造方法」
本発明の複合材料は、微細セルロース繊維と塩基性含窒素化合物と樹脂(以下、「第2の樹脂」という。)とを含有し、第2の樹脂中に微細セルロース繊維が分散したものである。塩基性含窒素化合物は第2の樹脂中の位置に存在している。
この複合材料には、塩基性含窒素化合物が含まれるが、その含有量は0.001〜50質量%であることが好ましく、0.001〜40質量%であることがより好ましく、0.001〜30質量%であることがさらに好ましい。塩基性含窒素化合物の含有量が前記下限値以上の複合材料は、微細セルロース繊維の分散性がより高くなって機械的物性がより高くなる。しかし、前記上限値を超えると、複合材料が着色するおそれがある。
複合材料は、押出成形、射出成形、プレス成形等によって成形することができ、シートや各種三次元の成形体にすることができる。
<第2の樹脂>
第2の樹脂は、複合材料におけるマトリクス樹脂の主成分である。
第2の樹脂としては、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂を用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂などが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
上記樹脂のうちでも、オレフィン系樹脂が好ましい。また、上記樹脂は、1種単独でもよいし、2種以上の併用でもよい。
上記微細セルロース繊維含有材料が上記第1の樹脂を含有する場合、第1の樹脂と第2の樹脂の種類は同じであってもよいし、異なってもよい。
<微細セルロース繊維の含有割合>
該複合材料は、複合材料全体に対する微細セルロース繊維の含有量が0.1〜90質量%になるように、微細セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを含有することが好ましい。複合材料における微細セルロース繊維の含有量は1〜70質量%であることがより好ましく、5〜50質量%であることがさらに好ましい。複合材料における微細セルロース繊維の含有量が前記下限値以上であれば、複合材料の機械的強度を充分に向上させることができる。ただし、前記上限値を超えると、微細セルロース繊維の凝集物が発生しやすくなるため、機械的強度が低下するおそれがある。
<作用効果>
本発明における複合材料は、第2の樹脂中の微細セルロース繊維の分散性が高いため、引張破断強度や引張弾性率等の機械的物性に優れる。
「複合材料の製造方法」
(第1実施形態)
本発明の複合材料の製造方法の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の複合材料の製造方法は、上記微細セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混練する混練工程を有する方法である。
具体的には、微細セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混合し、その混合物を、押出機を用いて混練する。前記混合の前には、微細セルロース繊維含有材料をあらかじめ粉砕して粉砕物にしておいても構わない。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機のいずれも使用できる。また、押出機は、シリンダー内を真空引きして脱揮する脱揮手段を備えた脱揮押出機が好ましい。脱揮押出機を用いて、微細セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混練しながら脱揮すると、複合材料における塩基性含窒素化合物の含有量を容易に少なくできる。
混練の際には、微細セルロース繊維の分散性をより高めることから、加熱することが好ましく、具体的には、押出機温度を300℃以下の範囲内で、第2の樹脂に応じて適宜設定することが好ましい。
本実施形態の複合材料の製造方法では、微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物によって処理した微細セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混練するため、微細セルロース繊維同士の間に第2の樹脂が入り込みやすくなっている。そのため、得られる複合材料における微細セルロース繊維の分散性が高くなる。したがって、機械的強度に優れた複合材料を容易に製造できる。
(第2実施形態)
本発明の複合材料の製造方法の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の複合材料の製造方法は、平均繊維幅が1000nmを超えるセルロース繊維(以下、「非微細セルロース繊維」という。)を塩基性含窒素化合物により処理してセルロース繊維含有材料を得る処理工程、該セルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混練する混練工程を有する方法である。
本実施形態において、非微細セルロース繊維としては、微細セルロース繊維の原料となる上記セルロース繊維原料が使用される。
非微細セルロース繊維の塩基性含窒素化合物による処理方法は、微細セルロース繊維を非微細セルロース繊維に置き換えた以外は上述した微細セルロース繊維含有材料の製造方法と同様である。本実施形態における処理工程によれば、非微細セルロース繊維と塩基性含窒素化合物とを含有するセルロース繊維含有材料が得られる。
第2実施形態における混練工程は、微細セルロース繊維含有材料を上記セルロース繊維含有材料に置き換えた以外は第1実施形態における混練工程と同様である。
本実施形態の複合材料の製造方法では、非微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物によって処理したセルロース繊維含有材料と第2の樹脂とを混練するため、非微細セルロース繊維同士の間に第2の樹脂が容易に入り込む。また、混練の際に、非微細セルロース繊維を微細化して微細セルロース繊維にすることができる。そのため、第2の樹脂中に微細セルロース繊維を分散できると共に、得られる複合材料における微細セルロース繊維の分散性を高くできる。したがって、機械的強度に優れた複合材料を容易に製造できる。
以下に実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例における「%」は「質量%」、「部」は「質量部」のことである。
(製造例1)
針葉樹晒クラフトパルプ(王子エフテックス製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)に、濃度4%になるように水を加えた。次いで、ダブルディスクリファイナーを用いて変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250ml、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解して、パルプスラリーを得た。
このパルプスラリーをさらにリファイナーで50回微細化処理して、上記変則CSFが325ml、平均繊維長が0.66mmの微細セルロース繊維を含む微細セルロース繊維スラリーAを得た。
(製造例2)
針葉樹晒クラフトパルプ(王子エフテックス製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)に、濃度4%になるように水を加えた。次いで、ダブルディスクリファイナーを用いて変則CSF(平織り80メッシュ、パルプ採取量を0.3gとした以外はJIS P8121に準ずる)が250ml、平均繊維長が0.68mmになるまで叩解して、パルプスラリーを得た。
このパルプスラリーを固形分2%なるように調整し、クレアミックスCLM−11S(エムテクニック社製)を用いて2時間微細化処理して、平均繊維長が0.45mmの微細セルロース繊維を含む微細セルロース繊維スラリーBを得た。
(製造例3)
上記微細セルロース繊維スラリーAを、日本フィルコン社製の二重織りのプラスチックワイヤー上で脱水濾過した後に、120℃に加熱したシリンダードライヤーを用いて乾燥して、微細セルロース繊維シートAを得た。
(製造例4)
上記微細セルロース繊維スラリーBを、日本フィルコン社製の二重織りのプラスチックワイヤー上で脱水濾過した後に、120℃に加熱したシリンダードライヤーを用いて乾燥して、微細セルロース繊維シートBを得た。
(製造例5)
王子エフテックス社製微細セルロース繊維とポリエチレンエマルション(商品名MC−M1118、エチレン−メチルメタクリレート−無水マレイン酸共重合体、中央理化社製)とを混抄して、微細セルロース繊維コンポジットシートC(セルロース約80部、ポリエチレン約20部)を得た。
(実施例1)
上記微細セルロース繊維シートAを、50%尿素水溶液中に数分含浸した後、卓上マングルで余剰の尿素水溶液を絞り取った。その後、120℃に加熱したシリンダードライヤーを用いて乾燥して、セルロース繊維含有シートを得た。
(実施例2)
微細セルロース繊維シートAの代わりに微細セルロース繊維シートBを用いた以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有シートを得た。
(実施例3)
微細セルロース繊維シートAの代わりに微細セルロース繊維コンポジットシートCを用いた以外は実施例1と同様にして、セルロース繊維含有シートを得た。
[塩基性含窒素化合物含有量]
上記実施例におけるセルロース繊維含有シートの塩基性含窒素化合物含有量を以下のように測定した。
すなわち、塩基性含窒素化合物溶液に含浸する前のシートと塩基性含窒素化合物溶液に含浸し乾燥した直後のシートの質量を各々測定し、塩基性含窒素化合物溶液に含浸処理してから乾燥した直後のシートの質量を測定した。そして、含浸処理前のシートの絶乾質量に対しての質量増加分を塩基性含窒素化合物含有量とみなした。測定結果を表1に示す。
(比較例1)
微細セルロース繊維シートAそのものをセルロース繊維含有シートとした。
(比較例2)
微細セルロース繊維シートBそのものをセルロース繊維含有シートとした。
(比較例3)
微細セルロース繊維コンポジットシートCそのものをセルロース繊維含有シートとした。
<評価>
各実施例及び各比較例のセルロース繊維含有シートの引張試験をJIS P 8113:1998に準じておこない、破断伸度を測定した。その際、スパン長は100mm、引張速度は10mm/分とした。測定結果を表1に示す。破断伸度が大きい程、樹脂への分散性が高くなる。
Figure 0006160244
微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物で処理した実施例1〜3のシートは破断伸度が大きいため、樹脂と混合した際には、微細セルロース繊維の分散性が高くなると推測される。
微細セルロース繊維を塩基性含窒素化合物で処理しなかった比較例1〜3のシートは破断伸度が小さいため、樹脂と混合した際には、微細セルロース繊維の分散性が低くなると推測される。
<第2の樹脂との混練による複合材料の製造>
(実施例4)
実施例3で得られたセルロース繊維含有シートをシュレッダーおよび家庭用ミキサーを用いて数mm角程度に粉砕した。
得られたシートの粉砕物と、線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG)とを、ラボプラストミルのミキサー(株式会社東洋精機製作所製、ローラミキサR60)を用い、表2に示した配合で混練した。その際の混練条件は、設定温度100℃、回転速度50回転/分で10分間混練後、設定温度を140℃にしてから回転速度50回転/分で10分間混練する条件(混練条件A)とした。混練終了後、ミキサーから、得られた複合材料を回収した。
(実施例5)
混練前にシートの粉砕物を150℃のオーブンで1時間乾燥し、乾燥した粉砕物をポリエチレンに混ぜ、混練条件を設定温度140℃、回転速度50回転/分で10分間混練する条件(混練条件B)とした以外は実施例4と同様にして、複合材料を得た。
(比較例4)
実施例3で得られたセルロース繊維含有シートの代わりに製造例5で得られた微細セルロース繊維コンポジットシートCを用い、混練条件を混練条件Bとした以外は実施例4と同様にして、複合材料を得た。
(比較例5)
実施例3で得られたセルロース繊維含有シートの代わりに製造例3で得られた微細セルロース繊維シートAを用い、混練条件を混練条件Bとした以外は実施例4と同様にして、複合材料を得た。
(比較例6)
上記線状低密度ポリエチレンのみの例である。
[評価]
・引張試験
得られた複合材料を、油圧成形機(東邦プレス製)を用いて寸法150mm×150mm、厚さ1mmの板に成形した。その板から、成形板を用い、JIS K7162 5A型ダンベル試験片を打ち抜いた。得られた試験片を用い、JIS K7162 5Aに準じて引張試験を行った。試験装置としては、5582型万能材料試験機(インストロン社製)を用い、引張速度は2mm/min、標線間距離は20mmとした。引張弾性率と引張降伏強度の測定結果を表2に示す。
・分散性
ロータリーミクロトーム(株式会社日本ミクロトーム研究所製)にダイヤモンドナイフを取り付け、成形板を厚み約10μmの薄切片に加工した。その後、該薄切片を濃度0.05mol/lのよう素液(関東化学株式会社製)で染色した。染色によりセルロースのみが着色した。染色した薄切片をスライドグラス上に、流動パラフィン(関東化学株式会社製)およびカバーグラスを用いて固定した。スライドグラス上に固定された薄切片を、対物レンズ10倍、接眼レンズ10倍のレンズを取り付けた光学顕微鏡で観察し、590μm×1050μm程度の視野の写真を撮影して下記の評価を行った。
○:幅が60μm以上の繊維状凝集物がほとんど観察されない
△:幅60μm以上、長さ300μm以上を共に満たす繊維状凝集物が観察される
×:幅および長さが同時に300μm以上の凝集物が観察される
・着色
得られた複合材料を目視により観察し、下記基準により着色の程度を評価した。
○:乳白色〜黄色の着色
△:黄色〜茶褐色の着色
×:茶褐色〜黒色の着色
Figure 0006160244
塩基性含窒素化合物(尿素)を含む微細セルロース繊維含有シートと樹脂とを混練して得た実施例4,5の複合材料は、微細セルロース繊維の分散性が高く、機械的物性に優れていた。混練条件を混練条件Aとした実施例4では、塩基性含窒素化合物(尿素)添加の効果を充分に揮発させることができ、複合材料の着色が抑えられていた。
尿素を含まない微細セルロース繊維含有シートと樹脂とを混練して得た比較例4,5の複合材料は、分散性が低く、機械的物性が劣っていた。

Claims (6)

  1. 平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維と、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットとを含有する微細セルロース繊維含有材料。
  2. 平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維と、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットと、樹脂とを含有し、樹脂中に微細セルロース繊維が分散している複合材料。
  3. 平均繊維幅が1000nm以下の微細セルロース繊維を、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットにより処理する処理工程を有する微細セルロース繊維含有材料の製造方法。
  4. 請求項1に記載の微細セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練する混練工程を有する複合材料の製造方法。
  5. 平均繊維幅が1000nmを超えるセルロース繊維を、尿素、チオ尿素、尿素のアミノ基の水素原子がメチル基、エチル基、プロピル基若しくはブチル基に置換された化合物、又はビウレットにより処理してセルロース繊維含有材料を得る処理工程、該セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練する混練工程を有する複合材料の製造方法。
  6. 前記混練工程では、セルロース繊維含有材料と樹脂とを混練しながら脱揮する請求項4又は5に記載の複合材料の製造方法。
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