JP2020186513A - 反応物繊維及び微細セルロース繊維分散液の製造方法 - Google Patents

反応物繊維及び微細セルロース繊維分散液の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機溶媒中での分散安定性に優れる微細セルロース繊維を含み、プラスチック材料との複合に好適で、高い機械的強度を有する複合材料を提供し得る微細セルロース繊維含有材料を提供すること。【解決手段】本発明の反応物繊維は、微細セルロース繊維分散液の製造方法における中間体であり、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に陽イオン界面活性剤が吸着してなる。前記陽イオン界面活性剤は、第1〜3級アミン化合物であり、前記微細セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基にイオン結合している。【選択図】なし

Description

本発明は、ナノサイズの繊維径をもった微細セルロース繊維を含む微細セルロース繊維含有材料に関し、より具体的には、該微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなる微細セルロース繊維複合体、及び該微細セルロース繊維複合体を有機溶媒中に分散させた微細セルロース繊維分散液に関する。また、本発明は、前記微細セルロース繊維複合体を含有し、高い機械的物性を有する複合材料に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、斯かる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を使った材料が注目されている。例えば非特許文献1〜3には、セルロースナノウィスカーと呼ばれる針状の微細セルロース繊維を、トルエン、シクロヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒中に分散させて分散液を得、この分散液を用いて、ポリ乳酸とセルロースナノウィスカーとの複合材料を得ることが記載されている。
セルロースナノウィスカーは、原料セルロースの非晶部分を硫酸によって加水分解した後、超音波処理することで得られるもので、該加水分解でセルロース構成単位に導入された硫酸基によって水中では安定分散するが、アルコールや非水系溶媒等の有機溶媒中では通常安定分散せずに凝集してしまう。一方、ポリ乳酸の如きプラスチック材料と、セルロースナノウィスカーの如きセルロースナノファイバーとの複合によって、セルロースナノファイバーの特徴を十分に活かした複合材料を得るためには、プラスチック材料が可溶な有機溶媒中にセルロースナノファイバーを安定分散させる必要がある。そこで、非特許文献1〜3に記載の技術では、セルロースナノウィスカーに、フェニル基含有リン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤を作用させ、セルロースナノウィスカーを改質(疎水化)することで、セルロースナノウィスカーの有機溶媒中での安定分散を可能にしている。
また本出願人は、先に、平均繊維径200nm以下且つカルボキシル基含有量0.1〜2mmol/gのセルロース繊維を含むガスバリア用材料を提案した(特許文献1参照)。このセルロース繊維は、木材パルプ等の天然セルロース繊維を、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下、TEMPOとも表記する)触媒の下で酸化処理し、得られた酸化物の分散液をミキサー等で解繊処理することにより得られるもので、セルロースナノウィスカーの如き、従来のナノファイバーと呼ばれるセルロース繊維よりも更に微小な繊維径をもつ微細セルロース繊維である。
L.Heux,et al.,Langmuir,16(21),2000 C.Bonini,et al.,Langmuir,18(8),2002 L.Petersson,et al.,Composites Science and Technology,67,2007
特開2009−57552号公報
前述したように、バイオマス資源の有効利用の観点から、ポリ乳酸の如きプラスチック材料とセルロースナノファイバーとの複合材料に関する技術が種々提案されているが、従来のこの種の複合材料は、機械的強度が十分とは言えず、そのため、例えば容器、電化製品等の各種成形品用途、特に機械的強度が重視される用途には適用し難かった。また、用途によっては、複合材料に高い透明性が求められる場合があるところ、従来のセルロースナノファイバーを複合材料に用いた場合、該複合材料に所定の機械的強度を付与するために必要な量のセルロースナノファイバーを含有させると、得られる複合材料の透明性が低く、高い透明性の要望に応じられなかった。高い機械的強度と透明性とを併せもった環境負荷低減型の複合材料は未だ提供されていない。
特許文献1に記載の微細セルロース繊維は、このような要望に応え得る材料であると考えられるが、本来親水性の高い該微細セルロース繊維は、極性の異なる有機溶媒や樹脂中での分散安定性に乏しく、プラスチック材料との複合に適用し難いものであった。
従って本発明の課題は、有機溶媒や樹脂中での分散安定性に優れる微細セルロース繊維を含み、プラスチック材料との複合に好適で、高い機械的強度を有する複合材料を提供し得る微細セルロース繊維含有材料を提供することにある。また本発明の課題は、実用上十分な機械的強度を持ち、環境に対する負荷の少ない複合材料を提供することにある。
本発明者らは、特許文献1に記載の微細セルロース繊維(平均繊維径200nm以下且つカルボキシル基含有量0.1〜2mmol/gのセルロース繊維)を有機溶媒中で安定分散させる方法について種々検討した結果、該微細セルロース繊維に特定の界面活性剤を化学吸着させることで、該微細セルロース繊維の有機溶媒中での分散安定性が向上することを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなる微細セルロース繊維複合体を提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記微細セルロース繊維複合体及び有機溶媒を含む微細セルロース繊維分散液を提供することにより、前記課題を解決したものである。また本発明は、前記微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、前記微細セルロース繊維の水分散液に前記界面活性剤を添加した後、該水分散液を脱水・濃縮して該微細セルロース繊維を含む固形物を得、該固形物を、前記有機溶媒を含む溶媒中に分散させる工程を有する、微細セルロース繊維分散液の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
また本発明は、前記微細セルロース繊維複合体と成形可能な樹脂とが混合された複合材料を提供することにより、前記課題を解決したものである。また本発明は、前記複合材料の製造方法であって、前記微細セルロース繊維複合体が有機溶媒中に分散した複合体分散液又は粉末状の前記微細セルロース繊維複合体と前記樹脂とを混合して均一混合物を得、該均一混合物を任意の形状に成形する工程を有する、複合材料の製造方法を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明の微細セルロース繊維複合体(微細セルロース繊維含有材料)は、有機溶媒や樹脂中での分散安定性に優れ、プラスチック材料との複合に好適で、高い機械的強度と透明性とを併せもった環境負荷低減型の複合材料を提供することができる。また、前記微細セルロース繊維複合体を含んで構成される本発明の微細セルロース繊維分散液も、同様の効果を奏する。また、本発明の複合材料は、実用上十分な機械的強度を持ち、環境に対する負荷が少ない。
以下、先ず、本発明の微細セルロース繊維分散液(以下、セルロース繊維分散液ともいう)を、該微細セルロース繊維分散液の一成分である本発明の微細セルロース繊維複合体(以下、セルロース繊維複合体ともいう)と共に説明する。本発明の微細セルロース繊維分散液は、1)カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維と、2)界面活性剤と、3)有機溶媒との3成分を必須成分と含有している。
本発明の微細セルロース繊維分散液において、界面活性剤は、微細セルロース繊維と共に該分散液中に分散しているのではなく、微細セルロース繊維に吸着している。即ち、本発明の微細セルロース繊維分散液は、微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなる本発明の微細セルロース繊維複合体、及び有機溶媒を含んでおり、該微細セルロース繊維複合体は、該有機溶媒中に分散している。本発明の微細セルロース繊維複合体において、界面活性剤の微細セルロース繊維への吸着は、ファンデルワールス力による物理吸着あるいは化学吸着であり、特に微細セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基に、アルキルアミン等の界面活性剤が化学吸着している。
本発明の微細セルロース繊維複合体は、後述するように、本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法において中間体として得られ、より具体的には、微細セルロース繊維の水分散液に界面活性剤を添加することによって得られる。界面活性剤の添加後、該水分散液から溶媒(水)を除去することによって、乾燥した粉末状の微細セルロース繊維複合体を得ることができる。以下に、本発明の微細セルロース繊維分散液の前記成分1)〜3)について順次詳細に説明する。
本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは1〜50nmである。平均繊維径が200nmを超えるセルロース繊維を複合材料に用いると、機械的強度の向上効果が十分に得られないおそれがある。平均繊維径は下記測定方法により測定される。
<平均繊維径の測定方法>
固形分濃度で0.0001質量%のセルロース繊維に水を加えて分散液を調製し、該分散液を、マイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さを測定する。そして、セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を5本以上抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出する。一般に高等植物から調製されるセルロースナノファイバーの最小単位は36×36の分子鎖がほぼ正方形の形でパッキングされていることから、AFMによる画像で分析できる高さを繊維の幅と見なすことができる。
また、本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均繊維径が200nm以下であることに加えて更に、カルボキシル基含有量(該微細セルロース繊維を構成するセルロースのカルボキシル基含有量)が0.1〜3mmol/g、特に0.1〜2mmol/g、とりわけ0.4〜2mmol/g、中でも0.6〜1.8mmol/gであることが好ましい。尚、本発明の複合材料には、カルボキシル基含有量が斯かる範囲外であるセルロース繊維が、意図せずに不純物として含まれることもあり得る。
前記カルボキシル基含有量は、平均繊維径200nm以下という微小な繊維径のセルロース繊維を安定的に得る上で重要な要素である。即ち、天然セルロースの生合成の過程においては、通常、ミクロフィブリルと呼ばれるナノファイバーがまず形成され、これらが多束化して高次な固体構造を構築しているところ、本発明で用いる微細セルロース繊維は、後述するように、これを原理的に利用して得られるものであり、天然由来のセルロース固体原料においてミクロフィブリル間の強い凝集力の原動となっている表面間の水素結合を弱めるために、その一部を酸化し、カルボキシル基に変換することによって得られる。従って、セルロースに存在するカルボキシル基の量の総和(カルボキシル基含有量)が多いほうが、より微小な繊維径として安定に存在することができ、また水中においては、電気的な反発力が生じることにより、ミクロフィブリルが凝集を維持せずにばらばらになろうとする傾向が高まり、ナノファイバーの分散安定性がより増大する。前記カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満では、繊維径200nm以下という微小な繊維径をもつ微細セルロース繊維として得られ難くなり、また、水等の極性溶媒中における分散安定性が低下するおそれがある。前記カルボキシル基含有量は下記測定方法により測定される。
<カルボキシル基含有量の測定方法>
乾燥質量0.5gのセルロース繊維を100mlビーカーにとり、イオン交換水を加えて全体で55mlとし、そこに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mlを加えて分散液を調製し、セルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5〜3に調整し、自動滴定装置(AUT−50、東亜ディーケーケー(株)製)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定し、pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、セルロース繊維のカルボキシル基含有量を算出する。
カルボキシル基含有量(mmol/g)=水酸化ナトリウム滴定量×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)/セルロース繊維の質量(0.5g)
本発明で用いる微細セルロース繊維は、平均アスペクト比(繊維長/繊維径)が、好ましくは10〜1000、更に好ましくは10〜500、特に好ましくは100〜350である。平均アスペクト比が斯かる範囲にある繊維は、複合材料中での分散性に優れ、機械強度が高く、特に脆性破壊し難いという特長を有する。平均アスペクト比は下記測定方法により測定される。
<平均アスペクト比の測定方法>
平均アスペクト比は、セルロース繊維に水を加えて調製した分散液(セルロース繊維の質量濃度0.005〜0.04質量%)の粘度から算出する。分散液の粘度は、レオメーター(MCR、DG42(二重円筒)、PHYSICA社製)を用いて20℃で測定する。分散液のセルロース繊維の質量濃度と分散液の水に対する比粘度との関係から、下記式(1)によりセルロース繊維のアスペクト比を逆算し、これを平均アスペクト比とする。下記式(1)は、TheTheory of Polymer Dynamics,M.DOI and D.F.EDWARDS,CLARENDON PRESS・OXFORD,1986,P312に記載の剛直棒状分子の粘度式(8.138)と、Lb2×ρ=M/NAの関係〔式中、Lは繊維長、bは繊維幅(セルロース繊維断面は正方形とする)、ρはセルロース繊維の濃度(kg/m3)、Mは分子量、NAはアボガドロ数を表す〕から導出される。尚、粘度式(8.138)において、剛直棒状分子=セルロース繊維とした。また、下記式(1)中、ηSPは比粘度、πは円周率、lnは自然対数、Pはアスペクト比(L/b)、γ=0.8、ρSは分散媒の密度(kg/m3)、ρ0はセルロース結晶の密度(kg/m3)、Cはセルロースの質量濃度(C=ρ/ρS)を表す。
Figure 2020186513
本発明で用いる微細セルロース繊維は、例えば次の方法により製造することができる。即ち、本発明で用いる微細セルロース繊維は、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、及び該反応物繊維を微細化処理する微細化工程を含む製造方法により得ることができる。以下に各工程について詳細に説明する。
前記酸化反応工程では、先ず、水中に天然セルロース繊維を分散させたスラリーを調製する。スラリーは、原料となる天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、ミキサー等で処理することにより得られる。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。天然セルロース繊維は、叩解等の表面積を高める処理が施されていても良い。
次に、水中においてN−オキシル化合物を酸化触媒として天然セルロース繊維を酸化処理して反応物繊維を得る。セルロースの酸化触媒として使用可能なN−オキシル化合物としては、例えば、TEMPO、4−アセトアミド−TEMPO、4−カルボキシ−TEMPO、4−フォスフォノオキシ−TEMPO等を用いることができる。これらN−オキシル化合物の添加は触媒量で十分であり、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して0.1〜10質量%となる範囲である。
前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化剤(例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、過有機酸等)と、共酸化剤(例えば、臭化ナトリウム等の臭化アルカリ金属)とを併用する。酸化剤としては、特に、次亜塩素酸ナトリウムや次亜臭素酸ナトリウム等のアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩が好ましい。酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜100質量%となる範囲である。また、共酸化剤の使用量は、通常、原料として用いた天然セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約1〜30質量%となる範囲である。
また、前記天然セルロース繊維の酸化処理においては、酸化反応を効率良く進行させる観点から、反応液(前記スラリー)のpHは9〜12の範囲で維持されることが望ましい。また、酸化処理の温度(前記スラリーの温度)は、1〜50℃において任意であるが、室温で反応可能であり、特に温度制御は必要としない。また、反応時間は1〜240分間が望ましい。
前記酸化反応工程後、前記微細化工程前に精製工程を実施し、未反応の酸化剤や各種副生成物等の、前記スラリー中に含まれる反応物繊維及び水以外の不純物を除去する。反応物繊維は通常、この段階ではナノファイバー単位までばらばらに分散していないため、精製工程では、例えば水洗とろ過を繰り返す精製法を行うことができ、その際に用いる精製装置は特に制限されない。こうして得られる精製処理された反応物繊維は、通常、適量の水を含浸させた状態で次工程(微細化工程)に送られるが、必要に応じ、乾燥処理した繊維状や粉末状としても良い。
前記微細化工程は、前記精製工程を経た後に行っても構わないし、後述するように、本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法(第2製造方法)において、前記酸化反応工程後に実施される界面活性剤の添加工程を経た後に行っても構わない。
前記微細化工程では、前記精製工程を経た反応物繊維を水等の溶媒中に分散させ微細化処理を施す。この微細化工程を経ることにより、平均繊維径及び平均アスペクト比がそれぞれ前記範囲にある微細セルロース繊維が得られる。
前記微細化処理において、分散媒としての溶媒は通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶な有機溶媒(アルコール類、エーテル類、ケトン類等)を使用しても良く、これらの混合物も好適に使用できる。また、微細化処理で使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。また、微細化処理における反応物繊維の固形分濃度は50質量%以下が好ましい。該固形分濃度が50質量%を超えると、分散に極めて高いエネルギーを必要とするため好ましくない。
前記微細化工程後に得られる微細セルロース繊維の形態としては、必要に応じ、固形分濃度を調整した懸濁液状(目視的に無色透明又は不透明な液)、あるいは乾燥処理した粉末状(但し、微細セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない)とすることもできる。尚、懸濁液状にする場合、分散媒として水のみを使用しても良く、水と他の有機溶媒(例えば、エタノール等のアルコール類)や界面活性剤、酸、塩基等との混合溶媒を使用しても良い。
このような天然セルロース繊維の酸化処理及び微細化処理により、セルロース構成単位のC6位の水酸基がアルデヒド基を経由してカルボキシル基へと選択的に酸化され、前記カルボキシル基含有量が0.1〜3mmol/gのセルロースからなる、平均繊維径200nm以下の微細化された高結晶性セルロース繊維を得ることができる。この高結晶性セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有している。これは、本発明で用いる微細セルロース繊維が、I型結晶構造を有する天然由来のセルロース固体原料が表面酸化され微細化された繊維であることを意味する。即ち、天然セルロース繊維は、その生合成の過程において生産されるミクロフィブリルと呼ばれる微細な繊維が多束化して高次な固体構造を構築しており、そのミクロフィブリル間の強い凝集力(表面間の水素結合)を、前記酸化処理によるアルデヒド基あるいはカルボキシル基の導入によって弱め、更に前記微細化処理を経ることで、微細セルロース繊維が得られる。そして、前記酸化処理の条件を調整することにより、前記カルボキシル基含有量を所定範囲内にて増減させ、極性を変化させたり、該カルボキシル基の静電反発や前記微細化処理により、セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長、平均アスペクト比等を制御することができる。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、有機溶媒を主たる分散媒とするものであり、該分散媒中に前記微細セルロース繊維を安定分散させる目的で、界面活性剤を含有する。前述したように、微細セルロース繊維分散液において、界面活性剤は、微細セルロース繊維と共に該分散液中に分散しているのではなく、微細セルロース繊維に吸着している。界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、特にセルロース繊維に対して吸着性の高い陽イオン界面活性剤が好ましい。本発明で用いる陽イオン界面活性剤としては、例えば、第1級〜3級アミン化合物、第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
前述した界面活性剤の中でも、特に陽イオン界面活性剤が好ましく、とりわけ第4級アンモニウム化合物又は第1〜3級アミン化合物が好ましい。前記界面活性剤の種類は、本発明の微細セルロース繊維分散液の必須成分の一つである、有機溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明で用いる有機溶媒が後述する極性溶媒である場合、前記第4級アンモニウム化合物(陽イオン界面活性剤)としては、炭素数(C数)が1〜40、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜8の第4級アルキルアンモニウム化合物が好ましく、また、前記第1〜3級アミン化合物(陽イオン界面活性剤)としては、第1〜3級アルキルアミン化合物が好ましい。炭素数1〜40の第4級アルキルアンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ココナットアミンが挙げられる。第1〜3級アルキルアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、トリドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミンが挙げられる
本発明で用いる有機溶媒としては、微細セルロース繊維の分散安定性を高める観点から、極性溶媒が好ましい。
本発明で用いる極性溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、アセトン、アセトニトリル、酢酸等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの極性溶媒の中でも特に、コハク酸メチルトリグリコールジエステル、エタノール、DMFが好ましい。
本発明の微細セルロース繊維分散液において、前述した3成分(微細セルロース繊維、界面活性剤、有機溶媒)の含有量は、微細セルロース繊維の特徴の発現と微細セルロース繊維の分散安定性とのバランス等を考慮して、適宜調整することができる。本発明の微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の含有量は、好ましくは0.01〜60質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%であり、界面活性剤の含有量は、好ましくは0.001〜50質量%、更に好ましくは0.01〜10質量%であり、有機溶媒の含有量は、好ましくは10〜99.99質量%、更に好ましくは50〜99質量%である。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、前述した3成分以外に、分散媒として水を含有していても良く、その場合、微細セルロース繊維分散液における分散媒は、有機溶媒と水との混合物である。該混合物において、有機溶媒と水との質量比(有機溶媒/水)は、好ましくは1以上であり、特に1〜1000、更に好ましくは4〜1000である。また、本発明の微細セルロース繊維分散液中の水の含有量は、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。
本発明の微細セルロース繊維分散液には、前述した3成分及び水以外に、必要に応じ、他の成分、例えば粘土鉱物、無機物、金属物等を含有させることができる。本発明の微細セルロース繊維分散液中のこれら他の成分の含有量は、好ましくは0〜50質量%以下である。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、例えば次の方法により製造することができる。即ち、本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法(第1製造方法)は、微細セルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維)の水分散液に界面活性剤を添加した後、該水分散液を脱水・濃縮して該微細セルロース繊維を含む固形物を得、該固形物を、有機溶媒を含む溶媒中に分散させる工程を有する。
本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法においては、先ず、水中に微細セルロース繊維を分散させた水分散液を調製する。この水分散液は、原料となる微細セルロース繊維(絶対乾燥基準)に対して約10〜1000倍量(質量基準)の水を加え、分散機等で処理することにより得られ、常温において透明である。水分散液の固形分濃度(微細セルロース繊維の濃度)は、分散を容易にする観点から、50質量%以下とすることが好ましい。また、分散体の調製に使用する分散機としては、例えば、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。
次に、前記水分散液に界面活性剤を所定量添加する。このとき、水分散液は前記分散機等により攪拌しておくことが好ましい。水分散液に添加された界面活性剤は、前述したように、該水分散液中の微細セルロース繊維の表面に化学吸着し、これにより該微細セルロース繊維は疎水化(低親水性化)され、前記微細セルロース繊維複合体(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなるもの)が生成される。尚、水分散液中に界面活性剤を添加すると、通常、生成した微細セルロース繊維複合体は沈殿し、これにより当初透明であった水分散液は白濁するが、界面活性剤を添加し微細セルロース繊維複合体が生成されても、このような沈殿・白濁が生じない場合もある。
次に、界面活性剤が添加された水分散液を脱水・濃縮して、微細セルロース繊維複合体の固形物を得る。該固形物は、実質的に水を含まない乾燥した粉末状であっても良く、あるいは少量の水を含んでいても良い。該固形物の含水率は、好ましくは90質量%以下である。水分散液を脱水・濃縮する方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、加熱乾燥等を用いることができる。
尚、界面活性剤の添加後で脱水・濃縮の前に、水分散液中の微細セルロース繊維複合体を水で洗浄しても良い。洗浄方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
次に、得られた微細セルロース繊維複合体の固形物を、有機溶媒を含む溶媒中に分散させる。より具体的には、原料となる固形物に対して、有機溶媒を含む溶媒を所定量加え、分散機等で処理する。ここで、有機溶媒を含む溶媒としては、通常、有機溶媒のみを用いるが、必要に応じ、有機溶媒と水との混合物を用いることができる。有機溶媒と水との質量比は、前述した通りである。こうして、微細セルロース繊維複合体が有機溶媒中に分散した、本発明の微細セルロース繊維分散液が得られる。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液は、例えば次の方法により製造することができる。即ち、本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法(第2製造方法)は、前述した微細セルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維)の製造方法、即ち、天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程、及び該反応物繊維を微細化処理する微細化工程を含む製造方法において、酸化反応工程を経て得られ且つ微細化工程で処理される前の反応物繊維(酸化処理された天然セルロース繊維)の懸濁液(水分散液)に、界面活性剤を添加した後、該懸濁液を脱水・濃縮し、得られた固形物(界面活性剤が吸着した反応物繊維)を所定量の溶媒(有機溶媒又は水)中に分散させて微細化処理し、微細化処理された固形物(微細セルロース繊維複合体)を、有機溶媒を含む溶媒中に分散させる工程を有する。
本発明の微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維複合体の分散性は、該分散液の透明性及び粘度によって評価することができる。微細セルロース繊維分散液の透明性が高いほど、また、微細セルロース繊維分散液の粘度が高いほど、当該分散液中における微細セルロース繊維の分散性が高く、当該分散液中において微細セルロース繊維複合体が安定分散していると評価できる。
微細セルロース繊維分散液の透明性は、光線透過率で評価することができる。光線透過率の数値が大きいほど、当該分散液の透明性が高く、微細セルロース繊維が安定分散していると評価できる。本発明の微細セルロース繊維分散液の光線透過率は、好ましくは5〜99.9%%、更に好ましくは30〜99.9%、特に好ましくは50〜99.5である。微細セルロース繊維分散液の光線透過率は、UV・可視分光分析装置(U−3310、日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、光路長1cm、660nmにおいて測定される。
また、本発明の微細セルロース繊維分散液の液温23℃での粘度は、好ましくは1〜10000mP・s、更に好ましくは100〜1000mP・sである。微細セルロース繊維分散液の粘度は、E型粘度計(VISCONIC、TOKIMEC製)を用い、23℃、回転数5rpmで測定される。
微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維複合体の分散性(微細セルロース繊維分散液の透明性及び粘度)は、該分散液中の各種成分の含有量を調整することで実施することができる。例えば、微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維複合体の含有量が増加すると、該分散液の透明性(光線透過率)は減少、粘度は増加し、該含有量が減少すると、該分散液の透明性(光線透過率)は増加し、粘度は減少する。
本発明の微細セルロース繊維分散液は、プラスチック材料との複合に好適であり、そのまま分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から分散媒を除去して、乾燥した粉末状の微細セルロース繊維複合体を得、これを使用することもできる。ここでいう、粉末状とは、微細セルロース繊維複合体が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。粉末状の微細セルロース繊維複合体としては、例えば、前記微細セルロース繊維分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記微細セルロース繊維分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記微細セルロース繊維分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記微細セルロース繊維分散液を気中で噴霧し乾燥させる方法である。粉末状の微細セルロース繊維複合体は、後述する本発明の複合材料の如き高分子材料(樹脂複合材料)の充填材として特に有用である。
次に、本発明の複合材料について説明する。本発明の複合材料は、微細セルロース繊維複合体(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなるもの)と樹脂とが混合されたものであり、樹脂複合材料である。即ち、本発明の複合材料は、微細セルロース繊維複合体と樹脂とが該複合材料全体に略均一に分散したものであり、両成分は何れも実質的に偏在しておらず、微細セルロース繊維複合体を主体とする層や樹脂を主体とする層を有していない。
本発明の複合材料の材料として用いる微細セルロース繊維複合体は、微細セルロース繊維複合体が有機溶媒中に分散した複合体分散液(前記微細セルロース繊維分散液)の形態であっても良く、粉末状の形態であっても良い。粉末状の微細セルロース繊維複合体を複合材料に用いると、該複合材料(複合材料中で微細セルロース繊維複合体と共に併用される樹脂)中で微細セルロース繊維複合体が均一分散(ナノ分散)するため、比較的少量(含有量10質量%以下)の微細セルロース繊維複合体の使用で、実用上十分な機械的強度が得られる。
本発明の複合材料で微細セルロース繊維複合体と共に用いる樹脂は、成形可能なものであれば良い。ここで、成形可能な樹脂とは、樹脂単独あるいは樹脂と他の材料との混合物に必要な加工を施して得られた、所定形状の物体が、その所定形状を一定時間以上保持し得る場合の、その樹脂を意味する。例えば、通常のプラスチック成形に使用可能な化石資源由来の樹脂は、「成形可能な樹脂」に含まれる。成形可能な樹脂は、必要な加工(樹脂をその本来の形態とは異なる形態にするための処理)を経て所定形状の物体とすることができるものであり、具体的には、熱可塑性を有するもの、熱硬化性を有するもの、有機溶媒に溶解するもの、有機溶媒に分散するもの、水に溶解するもの、水に分散するもの等が挙げられる。成形可能な樹脂を用いることで、本発明の複合材料は、フィルムやシート等の薄状物あるいは箱やボトル等の立体容器、情報家電の筐体、自動車等のボディ等に成形することができる。
本発明の複合材料で用いる樹脂としては、例えば、a)バイオマス由来の高分子及びb)石油由来の高分子が挙げられる。バイオマス由来の高分子は、生物から得られる有機性高分子で化石資源を除いたものであり、前記微細セルロース繊維と同様に生分解性を有するものも含まれる。バイオマス由来の高分子として好ましいものとして、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、バイオポリエチレン、バイオポリプロピレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリカーボネート等の熱可塑性のものが挙げられる。また、石油由来の高分子は、化石資源から得られる有機性高分子であり、例えば、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メタクリル樹脂、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の複合材料における微細セルロース繊維複合体の含有量は、機械的強度と透明性とのバランスの観点から適宜設定することができる。一般に、機械的強度の向上の観点からは、微細セルロース繊維複合体の含有量が多いことが好ましいが、微細セルロース繊維複合体の含有量が多すぎると、透明性(複合材料において微細セルロース繊維複合体と共に含有される樹脂が本来持っている、透明性)が低下するおそれがある。このような観点から、複合材料における微細セルロース繊維複合体の含有量は、複合材料の全質量に対して、好ましくは0.01〜60質量%、更に好ましくは0.05〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。
また、本発明の複合材料における樹脂の含有量は、複合材料に高い機械的強度及び透明性を付与する観点から、複合材料の全質量に対して、好ましくは40〜99.99質量%、更に好ましくは90〜99.95質量%、特に好ましくは95〜99.9質量%である。
本発明の複合材料は、必要に応じ、これら2成分(微細セルロース繊維複合体、樹脂)以外の他の成分、例えば、ガラスやコンクリートに代表される、粘土鉱物、無機物、金属物等の無機材料を含んでいても良い。これらの無機材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の複合材料は、軟質化剤や結晶核剤等の添加剤を含んでいても良い。
本発明の複合材料は任意の形状に成形可能であり、例えばフィルムやシート等の薄状物、直方体や立方体等のブロック状その他の立体形状として提供される。例えば薄状物の複合材料とする場合、その厚みは特に制限されないが、通常0.05〜50mmである。
本発明の複合材料は、微細セルロース繊維複合体と前記樹脂とを混合して均一混合物を得、該均一混合物を任意の形状に成形することによって製造することができる。即ち、本発明の複合材料の製造方法は、微細セルロース繊維複合体が有機溶媒中に分散した複合体分散液又は粉末状の微細セルロース繊維複合体と前記樹脂とを混合して均一混合物を得、該均一混合物を任意の形状に成形する工程を有する。一例として、加熱されて溶融状態の前記樹脂に、前記複合体分散液又は粉末状の微細セルロース繊維複合体を添加し、該樹脂が溶融状態を維持しているうちにこれらを混錬し、こうして得られた均一混合物を成形する方法(以下、溶融混錬法ともいう)により、本発明の複合材料を製造することができる。その場合、混練装置としては、例えば単軸軸混練押出機、二軸混練押出機、加圧ニーダー等の公知の装置が使用できる。
より具体的には、例えば、前記樹脂としてポリ乳酸の如き熱可塑性樹脂を用いる場合、前記複合体分散液又は粉末状の微細セルロース繊維複合体を、溶融状態の該熱可塑性樹脂中に添加した後、二軸混錬機を用いて前記複合体を該熱可塑性樹脂中に均一分散させて樹脂ペレットを得、該樹脂ペレットを加熱圧縮することにより、シート状の複合材料が得られる。あるいは、公知のプラスチック成形法、具体的には射出成形、注形成形、押出成形、ブロー成形、延伸成形、発泡成形等を利用して、ブロック状その他の立体形状を有する複合材料を得ることができる。
また、溶融混錬法以外の複合材料の製造方法として、キャスト法が挙げられる。キャスト法は、溶媒中に微細セルロース繊維複合体及び前記樹脂を分散又は溶解させた混合流動物を、基材上に流延塗布し、溶媒を除去して膜を得、必要に応じて該膜に熱プレスをかけて、薄膜状の複合材料を得る方法である。例えば、有機溶媒中に溶解させた前記樹脂に、前記複合体分散液又は粉末状の微細セルロース繊維複合体を添加し混合流動物を得、該混合流動物からキャスト法によって複合材料の膜状あるいはシート状物を得ることができる。
キャスト法において、基材上に流延塗布された混合流動物から溶媒を除去する方法としては、例えば、基材として液透過性基材(例えば、厚み方向に貫通する液透過孔を多数有する多孔性基材)を用いる方法が挙げられる。この方法では、混合流動物を液透過性基材上に塗布することにより、該混合流動物中の溶媒は多孔性基材を透過して除去され、固形分(微細セルロース繊維複合体及び樹脂)は多孔性基材上にこし取られる。また、別の溶媒除去法として、混合流動物を基材上に流延塗布した後、該混合流動物を自然乾燥又は熱風乾燥等の乾燥法により乾燥する方法が挙げられる。また、キャスト法において、溶媒除去後に得られた膜に対して実施する熱プレスは、例えば、金属板を用いた押圧式、ロータリー式等公知の装置を用いて行うことができる。
本発明の複合材料は、実用上十分な機械的強度を有していることが好ましい。より具体的には、本発明の複合材料は、引張弾性率及び引張降伏強度が、何れもベースポリマーに対して1.1倍以上、好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.5倍以上である。ここで、ベースポリマーとは、微細セルロース繊維複合体と共に本発明で併用される前記樹脂である。前述した方法で得られた複合材料は、引張弾性率及び引張降伏強度がそれぞれベースポリマーに対して前記範囲にあり、実用上十分な機械的強度を有している。引張弾性率及び引張強度は、それぞれ下記方法により測定される。
<引張弾性率及び引張降伏強度の測定方法>
下記A法又はB法によって測定する。尚、後述する実施例及び比較例のサンプル(複合材料)の引張弾性率及び引張降伏強度の測定において、実施例1〜11及び比較例1〜5については下記A法を利用し、実施例12〜16及び比較例6については下記B法を利用した。
A法:引張圧縮試験機((株)オリエンテック社製 RTA−500)を用いて、JIS K7113に準拠して、複合材料の引張弾性率及び引張降伏強度をそれぞれ引張試験によって測定した。3号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離80mmでセットし、クロスヘッド速度10mm/minで測定した。
B法:引張圧縮試験機(Orientic Corporation社製 テンシロンUTC−100)を用いて、JIS K7113に準拠して、複合材料の引張弾性率及び引張降伏強度をそれぞれ引張試験によって測定した。2号ダンベルで打ち抜いたサンプルを支点間距離40mmでセットし、クロスヘッド速度50mm/minで測定した。
また、本発明によれば、透明性の高い複合材料を提供することが可能である。特に、前記樹脂としてポリ乳酸を用いた場合には、比較的少量(含有量5質量%以下)の微細セルロース繊維複合体で高い機械的強度を発現させることができるため、ポリ乳酸が本来有する高い透明性を殆ど損なわずに、実用上十分な機械的強度を有する複合材料が得られる。ここでいう高い透明性とは、具体的には、複合材料を厚み約0.5mmのシートに成形した場合に、そのシート状の複合材料の全光線透過率が50%以上(好ましくは80%以上)又はヘイズ値が50%以下(好ましくは30%以下)である場合をいう。複合材料の全光線透過率及びヘイズ値は、それぞれ下記方法により測定される。
<複合材料の全光線透過率及びヘイズ値の測定方法>
全光線透過率は、JIS K7361−1に準拠して測定し、ヘイズ値は、JIS K7105に準拠して測定する。これらの測定には市販のヘイズメーターを用いる。尚、後述する実施例及び比較例のサンプル(複合材料)に関し、実施例1〜11及び比較例1〜5については、ヘイズメーターとしてNDH5000(日本電色工業株式会社製)を用い、実施例12〜16及び比較例6については、ヘイズメーターとしてHM−150(村上色彩技術社製)を用いた。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
前述した第2製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造し、これを実施例1のサンプルとした。即ち、原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ14.2質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、イオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行い、反応物繊維(酸化パルプ)を得た。
尚、こうして得られた反応物繊維を、別途、イオン交換水にて固形分濃度1質量%に調整して水分散液を得、該水分散液300gをミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪ケミカル(株)製)にて10分間微細化処理して前記微細セルロース繊維を得、該微細セルロース繊維の平均繊維径及びカルボキシル基含有量を、それぞれ前記方法により測定した。その結果を下記表1に示す。こうして得られる微細セルロース繊維の平均繊維径及びカルボキシル基含有量は、下記工程を経て得られる微細セルロース繊維複合体の平均繊維径及びカルボキシル基含有量と実質的に同じである。
次いで、前記反応物繊維を固形分換算で2gとイオン交換水400gとを混合し、界面活性剤として10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH、和光純薬工業(株)製)を10.8g添加して、24時間攪拌した。その後、ガラスフィルターによって固形物をろ過し、イオン交換水による洗浄、アセトンによる洗浄を行い、微細セルロース繊維複合体を得た。
次いで、得られた微細セルロース繊維複合体を固形分濃度約30%まで脱溶媒した後、該微細セルロース繊維複合体を固形分換算で0.4gと、軟質化剤(分散媒)としてのコハク酸メチルトリグリコールジエステル((MeEO3)A1010、特開2007−16092号公報を参考に合成)20gとを混合して、超音波攪拌機(UP200H,hielscher社製)にて3分間攪拌する。この攪拌処理は、前述した本発明の第2製造方法における微細化処理に相当する。こうして、微細セルロース繊維複合体及び有機溶媒を含む、微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2質量%)を製造し、これを実施例1のサンプルとした。
〔実施例2〕
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.2gに変更して、微細セルロース繊維分散液における微細セルロース繊維複合体の含有量を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例2のサンプルとした。
〔実施例3〕
界面活性剤として、TBAHに代えて、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH、和光純薬工業(株)製)6.0gを用いた以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2質量%)を製造し、これを実施例3のサンプルとした。
〔実施例4〕
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.2gに変更して、微細セルロース繊維分散液における微細セルロース繊維複合体の含有量を下記表1のように変更した以外は実施例3と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例4のサンプルとした。
〔実施例5〕
界面活性剤として、TBAHに代えて、コータミンD86P(花王(株)製、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド)3.2gを用いた以外は実施例2と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造し、これを実施例5のサンプルとした。
〔実施例6〕
前述した第1製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造し、これを実施例6のサンプルとした。即ち、前記反応物繊維(酸化パルプ)をイオン交換水にて固形分濃度1質量%に調整して水分散液を得、該水分散液300gをミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪ケミカル(株)製)にて120分間微細化処理し、そうして得られた微細セルロース繊維懸濁液に、イオン交換水にて5質量%に希釈したファーミン08D(花王(株)製、オクチルアミン)水溶液(塩酸にてpH4.5に調整)を80g添加して、24時間攪拌した。その後、該混合液を遠心分離によってイオン交換水及びアセトンで十分に洗浄して、微細セルロース繊維複合体を得た。
次いで、得られた微細セルロース繊維複合体を固形分換算で0.4gと、エタノール/イオン交換水混合液(混合比70/30)100gとを混合して、超音波攪拌機(UP200H,hielscher社製)にて1分間攪拌し、微細セルロース繊維分散液(固形分濃度0.4質量%)を製造し、これを実施例6のサンプルとした。
〔実施例7〕
分散媒として、エタノールと水との混合溶媒に代えて、エタノールとDMFと水との混合溶媒(混合比30/60/10)を用いた以外は実施例6と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度0.4質量%)を製造し、これを実施例7のサンプルとした。
〔比較例1〕
界面活性剤を未添加とした以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例1のサンプルとした。
〔比較例2〕
界面活性剤を未添加とした以外は実施例2と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例2のサンプルとした。
〔比較例3〕
前記酸化反応工程(天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る工程)を実施しなかった以外は比較例1と同様にしてセルロース繊維分散液を製造し、これを比較例3のサンプルとした。酸化反応工程を実施しないことにより、セルロース繊維分散液中のセルロース繊維は、前記微細セルロース繊維(カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gのセルロース繊維)とは異なる繊維である(以下、非微細セルロース繊維ともいう)。
〔比較例4〕
界面活性剤を未添加とした以外は実施例6と同様にして微細セルロース繊維分散液を製造し、これを比較例4のサンプルとした。
〔評価1〕
実施例及び比較例のサンプル(セルロース繊維分散液)について、光線透過率及び粘度をそれぞれ前記測定方法により測定した。これらの結果を下記表1に示す。
Figure 2020186513
実施例1〜5及び比較例1〜3は、何れも、前述した第2製造方法に準拠した製造方法によって得られたセルロース繊維分散液である。表1に示す結果から明らかなように、実施例1〜5は、カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に界面活性剤が吸着してなる微細セルロース繊維複合体を含んでいるものであるところ、高い光線透過率(透明性)と粘度を示し、良好な分散性を有する微細セルロース繊維複合体の分散液であった。特にセルロース繊維含有量1質量%で比較したとき、界面活性剤として第4級アンモニウム化合物であるTBAH(C数4)及びTEAH(C数2)を用いた実施例2及び4は、光線透過率50%以上の高い透明性を有し、高い分散性を示した。一方、比較例1及び2は、界面活性剤が未添加であり、また、比較例3は、カルボキシル基含有量が0.1mmol/g未満であるところ、何れも光線透過率が0%で透明性が低く、分散性も低かった。また、比較例1〜3は、何れもセルロース繊維がフロックを形成し、完全に分離した非分散の状態であったため、粘度を測定できなかった。
また、実施例6及び7並びに比較例4は、何れも、前述した第1製造方法に準拠した製造方法によって得られた微細セルロース繊維分散液である。表1に示す結果から明らかなように、特に、分散媒がエタノール及び水の混合溶媒である実施例6は、光線透過率が高く、高い透明性を有していた。一方、比較例4は、界面活性剤が未添加のため、微細セルロース繊維の分散性に乏しく、分散媒(エタノール及び水の混合溶媒)中で微細セルロース繊維が凝集してしまい、その結果、比較例4の光線透過率及び粘度は、何れも実施例6に比べて低かった。
〔実施例8〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いて、前述した溶融混練法によりシート状の複合材料を製造し、これを実施例8のサンプルとした。具体的には、成形可能な樹脂としてPLA(NW4032D、Nature works製)を用い、混練機(ラボプラストミル、東洋精機(株)製)を用いて、PLA50g、実施例1の微細セルロース繊維分散液5gを順次添加し、回転数50rpm、180℃で10分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(ラボプレス、東洋精機(株)製)を用いて、180℃、低圧(5Kg/cm2)3分、その後、高圧(200Kg/cm2)で1分、熱プレス後、さらに20℃、低圧(5Kg/cm2)3分、高圧(200Kg/cm2)で1分冷却プレスし、厚さ約0.5mmのシート状の複合材料を製造し、これを実施例8のサンプルとした。
〔実施例9〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例2の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例9のサンプルとした。
〔実施例10〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例4の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例10のサンプルとした。
〔実施例11〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて、実施例5の微細セルロース繊維分散液を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例11のサンプルとした。
〔比較例5〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いない代わりに、該微細セルロース繊維分散液と同量のコハク酸トリメチルグリコールジエステル(分散媒)を用いた以外は実施例8と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを比較例5のサンプルとした。比較例5のサンプルは、セルロース繊維複合体を含んでおらず、実施例8〜11の複合材料におけるベースポリマー(PLA)のみからなる成形体である。
〔評価2〕
実施例及び比較例のサンプル(複合材料)について、引張弾性率、引張降伏強度、全光線透過率をそれぞれ前記測定方法により測定すると共に、無荷重下における厚みを測定した。これらの結果を下記表2に示す。
Figure 2020186513
表2に示す結果から明らかなように、実施例8〜11の複合材料は、何れも、引張弾性率及び引張降伏強度がベースポリマー(比較例5)に対して1.1倍以上あって実用上十分な機械的強度を持ち、且つ全光線透過率が80%以上であって透明性が高いものであった。これらの実施例の結果から、比較的少量(含有量5質量%以下)の微細セルロース繊維複合体の使用で、引張弾性率及び引張降伏強度がベースポリマーに対して大幅に向上することが認められた。これは微細セルロース繊維複合体のナノ分散効果に由来するものであり、また、PLAの官能基であるカルボキシル基、水酸基と微細セルロース繊維複合体表面のカルボキシル基、水酸基間の高い相互作用によって、高い界面強度がもたらした結果であると考えられる。また、微細セルロース繊維複合体の使用量がこのように少量であるため、本来透明性(全光線透過率)の高いPLAの全光線透過率はほとんど低下せず、これらの実施例の複合材料は、該樹脂本来の高い透明性を維持していた。これは微細セルロース繊維複合体が樹脂中でナノ分散していることを示唆している(但し、現在のナノ分析技術では、斯かるナノ分散は観察不可能)。一方、比較例5の複合材料は、主として前記微細セルロース繊維(微細セルロース繊維複合体)を使用しなかったため、機械的強度の点で実施例に劣る結果となった。
〔実施例12〕
実施例1の微細セルロース繊維分散液を用いて、前述した溶融混練法によりシート状の複合材料を製造し、これを実施例12のサンプルとした。具体的には、成形可能な樹脂としてPLA(NW4032D、Nature works製)を用い、混練機(ラボプラストミル、東洋精機(株)製)を用いて、PLA50g、実施例1の微細セルロース繊維分散液5g、結晶核剤〔スリパックスH(エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、日本化成(株)製〕0.15gを順次添加し、回転数50rpm、180℃で10分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(ラボプレス、東洋精機(株)製)を用いて、180℃、低圧(5Kg/cm2)3分、その後、高圧(200Kg/cm2)で1分、熱プレス後、さらに80℃、低圧(5Kg/cm2)で3分、高圧(200Kg/cm2)で1分冷却プレスし、厚さ約0.5mmのシート状の複合材料を製造し、これを実施例12のサンプルとした。
〔実施例13〕
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で0.6gに変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度3質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を、実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて用いたこと以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例13のサンプルとした。
〔実施例14〕
微細セルロース繊維複合体の使用量を固形分換算で1.0gに変更した以外は実施例1と同様にして微細セルロース繊維分散液(固形分濃度5質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を、実施例1の微細セルロース繊維分散液に代えて用いたこと以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例14のサンプルとした。
〔実施例15〕
前述した第1製造方法に準拠した次の製造方法により、前記微細セルロース繊維分散液(前記複合体分散液)を製造した。即ち、原料となる天然セルロース繊維として針葉樹晒しクラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ 製、CSF650ml)を用い、酸化触媒としてTEMPO(ALDRICH製、Free radical、98%製)を用い、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Cl:5%製)を用い、共酸化剤として臭化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を用いた。天然セルロース繊維100gにイオン交換水9900gを加えて十分に攪拌してスラリーを得、該スラリーに、TEMPOを対パルプ1.25質量%、臭化ナトリウムを対パルプ14.2質量%、次亜塩素酸ナトリウムを対パルプ28.4質量%、それぞれこの順で添加し、更にpHスタッドを用い、0.5Mの水酸化ナトリウムの滴下にてスラリーのpHを10.5に保持し、温度20℃で酸化反応を行った。120分間の酸化時間で水酸化ナトリウムの滴下を停止し、イオン交換水にて十分に洗浄し、脱水処理を行い、反応物繊維(酸化パルプ)を得た。
こうして得られた反応物繊維を、イオン交換水にて固形分濃度1質量%に調整して水分散液を得、該水分散液300gをミキサー(Vita−Mix−Blender ABSOLUTE、大阪ケミカル(株)製)にて120分間微細化処理して前記微細セルロース繊維を得、該微細セルロース繊維の平均繊維径及びカルボキシル基含有量を、それぞれ前記方法により測定した。この微細セルロース繊維の平均繊維径は3.1nm、平均アスペクト比は240、カルボキシル基含有量は1.2mmol/gであった。
次いで、前記微細セルロース繊維を固形分換算で2gとイオン交換水400gとを混合し、界面活性剤として10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH、和光純薬工業(株)製)を10.8g添加して、24時間攪拌した。その後、過剰量のアセトンを注いで凝集物を得て、ガラスフィルターによってろ過し、イオン交換水による洗浄、アセトンによる洗浄を行い、微細セルロース繊維複合体を得た。
次いで、得られた微細セルロース繊維複合体を固形分濃度約10%まで脱溶媒した後、該微細セルロース繊維複合体を固形分換算で0.2gと、軟質化剤(分散媒)としてのコハク酸メチルトリグリコールジエステル((MeEO3)A1010、特開2007−16092号公報を参考に合成)20gとを混合して、超音波攪拌機(UP200H,hielscher社製)にて3分間攪拌する。こうして、微細セルロース繊維複合体及び有機溶媒を含む、微細セルロース繊維分散液(固形分濃度1質量%)を製造した。
前記微細セルロース繊維分散液を用いて、前述した溶融混練法によりシート状の複合材料を製造し、これを実施例15のサンプルとした。具体的には、成形可能な樹脂としてPLA(NW4032D、Nature works製)を用い、混練機(ラボプラストミル、東洋精機(株)製)を用いて、PLA50g、実施例1の微細セルロース繊維分散液5g、結晶核剤〔スリパックスH(エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、日本化成(株)製〕0.15gを順次添加し、回転数50rpm、180℃で10分混練して均一混合物を得た。該均一混合物を、プレス機(ラボプレス、東洋精機(株)製)を用いて、180℃、低圧(5Kg/cm2)3分、その後、高圧(200Kg/cm2)で1分、熱プレス後、さらに80℃、低圧(5Kg/cm2)3分、高圧(200Kg/cm2)で1分冷却プレスし、厚さ約0.5mmのシート状の複合材料を製造し、これを実施例15のサンプルとした。
〔実施例16〕
実施例15と同様にして得られた微細セルロース繊維複合体を固形分換算で0.4gと、軟質化剤(分散媒)としてのコハク酸メチルトリグリコールジエステル((MeEO3)A1010、特開2007−16092号公報を参考に合成)20gとを混合して、超音波攪拌機(UP200H,hielscher社製)にて3分間攪拌する。こうして、微細セルロース繊維複合体及び有機溶媒を含む、微細セルロース繊維分散液(固形分濃度2質量%)を製造した。この微細セルロース繊維分散液を用いて、実施例15と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを実施例16のサンプルとした。
〔比較例6〕
微細セルロース繊維分散液を用いない代わりに、該微細セルロース繊維分散液と同量のコハク酸トリメチルグリコールジエステル(分散媒)を用いた以外は実施例12と同様にしてシート状の複合材料を製造し、これを比較例6のサンプルとした。比較例6のサンプルは、微細セルロース繊維複合体を含んでおらず、実施例12〜16の複合材料におけるベースポリマー(PLA)のみからなる成形体である。
〔評価3〕
実施例及び比較例のサンプル(複合材料)について、引張弾性率、引張降伏強度、全光線透過率、ヘイズ値をそれぞれ前記測定方法により測定した。これらの結果を下記表3に示す。
Figure 2020186513
表3に示す結果から明らかなように、実施例12〜16の複合材料は、何れも、引張弾性率及び引張降伏強度がベースポリマー(比較例6)に対して1.1倍以上あって実用上十分な機械的強度を持ち、且つ全光線透過率が80%以上(更にはヘイズ値が50%以下)であって透明性が高いものであった。特に、実施例15においては微細セルロース繊維含有量0.1質量%であり、透明性(全光線透過率、ヘイズ値)が比較例6からほとんど変化していないにも関わらず、引張弾性率が比較例6の1.5倍と高い機械的強度を示した。実施例15は、前述した第1製造方法(微細化工程後に反応系に界面活性剤を添加)に準拠して製造された微細セルロース繊維分散液を用いているのに対し、実施例12〜14は、前述した第2製造方法(微細化工程前に反応系に界面活性剤を添加)に準拠して製造された微細セルロース繊維分散液を用いている。この製造方法の違いから、実施例15では、前記微細セルロース繊維複合体の樹脂中での分散性が向上し、微細セルロース繊維含有量が低いながらも高い機械強度が得られたものと考えられる。
本発明の微細セルロース繊維複合体、微細セルロース繊維分散液及び複合材料は、各種日用品包装用フィルム(パウチ、ピロー)、シート(ブリスターパック)、成形部材(ボトル、キャップ、スプーン、ハブラシのハンドル等)への用途展開に利用でき、特に機械的強度が重視される用途(例えば、自動車、情報家電等)に好適に利用できる。

Claims (3)

  1. カルボキシル基含有量0.1〜3mmol/gの微細セルロース繊維に陽イオン界面活性剤が吸着してなり、
    前記陽イオン界面活性剤は、前記微細セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基にイオン結合しており、
    前記陽イオン界面活性剤が第1〜3級アミン化合物である反応物繊維。
  2. 前記反応物繊維は、反応物繊維(ただし、平均繊維径が200nm以下のものを除く)である請求項1に記載の反応物繊維。
  3. カルボキシル基含有量0.6〜1.8mmol/gの微細セルロース繊維に陽イオン界面活性剤が吸着してなり、
    前記陽イオン界面活性剤は、前記微細セルロース繊維におけるセルロース構成単位のC6位のカルボキシル基に化学吸着しており、
    前記陽イオン界面活性剤が、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラブチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される1種以上の第4級アンモニウム化合物である微細セルロース繊維複合体と、
    有機溶媒とを含む、微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、
    天然セルロース繊維を酸化して反応物繊維を得る工程と、
    前記反応物繊維に前記界面活性剤を吸着させた後、溶媒中に分散した状態の該反応物繊維を微細化処理する工程とを有する、微細セルロース繊維分散液の製造方法。
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