JP6805658B2 - 微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法および微細繊維状セルロース再分散スラリー - Google Patents

微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法および微細繊維状セルロース再分散スラリー Download PDF

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本発明は、高濃度に分散した微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法に関する。本発明はさらに、高濃度に分散した微細繊維状セルロース再分散スラリーに関する。
近年、石油資源の代替及び環境意識の高まりから、再生産可能な天然繊維を利用した材料が着目されている。天然繊維の中でも、繊維径が10〜50μmの繊維状セルロース、特に木材由来の繊維状セルロース(パルプ)は、主に紙製品としてこれまで幅広く使用されてきた。
また、繊維状セルロースとしては、繊維径が1μm以下の微細繊維状セルロースも知られている。微細繊維状セルロースを含有するシートや複合体は、繊維同士の接点が著しく増加することから、引張強度が大きく向上する。また、繊維幅が可視光の波長より短くなることで、透明度が大きく向上する。例えば、特許文献1には、温度条件や波長等に影響を受けることなく、高い透明性が維持され、繊維とマトリクス材料との複合化により様々な機能性が付与された繊維強化複合材料が開示されている。
微細繊維状セルロースを製造するために、機械処理と合わせて化学処理・生物処理により前処理を行うことが有効であることは良く知られている。特に、化学処理により、セルロース表面のヒドロキシ基に親水性の官能基(例えば、カルボキシ基、カチオン基、リン酸基など)を導入すると、イオン同士の電気的な反発力およびイオンが水和することで、特に水系溶媒への分散性が著しく向上する。親水性官能基導入セルロースのイオン同士の電気的な反発力が小さくなるようにして、比誘電率の低い溶媒中でもナノ分散できることが重要である。このための技術として、非特許文献1及び特許文献2には、TEMPO酸化微細繊維状セルロースに、バルキーな4級アンモニウムイオンを導入した繊維状セルロースに微細化処理を行うことが記載されている。
一方、直接、比誘電率の低い溶媒中でナノ分散するのではなく、既にナノ分散した微細繊維状セルローススラリーに有機溶媒を添加する方法(例えば、特許文献3)が知られている。また、既にナノ分散した微細繊維状セルローススラリーから溶媒を取り除き(すなわち、濃縮し)、比誘電率の低い溶媒へ再分散するという考えもある。微細繊維状セルローススラリーの濃縮方法としては、例えば、微細繊維状セルロースに、酸、塩基や、塩、多価イオン、凝集剤、界面活性剤を添加することにより凝集させ、濃縮物を得る方法が知られている。また、その濃縮物をpH調整した水中で再分散させる方法も知られている。
例えば、特許文献4には、平均繊維幅が2nm〜50nmの微細繊維状セルロースと、水及び有機溶剤の少なくとも一方からなる液状化合物とを含有する微細繊維状セルロース凝集物が記載されている。この微細繊維状セルロース凝集物においては、微細繊維状セルロースの含有量が微細繊維状セルロース凝集物全体の質量に対して6〜80質量%であり、液状化合物の含有量は微細繊維状セルロース凝集物全体の質量に対して15質量%以上である。特許文献4では、凝集物の製造に際しては、凝集物を得るために、多価金属の塩、酸/アルカリ、界面活性剤、高分子凝集剤を使用する。また特許文献5及び6には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシラジカル(TEMPO)酸化セルロース微細繊維に関するものであり、有機溶剤や酸を利用して微細繊維状セルロースを濃縮することが記載されている。特許文献7には、バクテリアセルロースの分散性および懸濁安定性向上のために、バクテリアセルロースの水性懸濁液を、いったん所定の濃度にまで濃縮することが記載されている。また特許文献8にはカチオン性のセルロースナノファイバーにアニオン性の高分子や界面活性剤を加え、濾水(濃縮)した後に樹脂中に再分散させることが記載されている。また、非特許文献2には、微細繊維状セルロースを酸で処理してから、溶媒置換を繰り返すことが記載されている。
特開2008−24788号公報 特開2015−101694号公報 WO2011/111612 WO2014/024876 WO2012/107642 WO2013/121086 特開平9−316102 WO2012/124652(特許第5150792号公報)
Biomacromolecules 2014, 15, 1904-1090 Biomacromolecules 2013, 14, 1541-1546
しかし、非特許文献1及び特許文献2に記載されたように対イオンを有機アンモニウム塩とする方法を用いた場合、比誘電率の低い溶媒中でナノ分散はするものの、それに必要な機械処理の回数(すなわち、エネルギー)が多くなる問題があった。また、高濃度での処理では微細化の効率が低下するため、実質的に、非誘電率の低い溶媒中に高濃度、かつ高度に分散した微細繊維状セルローススラリーは存在しなかった。同様に、微細化後に有機溶剤を添加する特許文献3の方法では、微細繊維状セルローススラリーが希釈され、溶媒中に高濃度、かつ高度に分散した微細繊維状セルローススラリーが得られない問題があった。また、既にナノ分散したものから溶媒を取り除き、比誘電率の低い溶媒へ再分散させる方法について、特許文献4〜7は、いずれも水への再分散で実施されており、比誘電率の低い溶媒への分散性や、その効率については記載されていない。しかし、今回本発明者らが検討したところ、既にナノ分散したものから溶媒を取り除いて再分散する場合、比誘電率の低い溶媒への再分散性は乏しかった。特許文献8に記載の方法は、カチオン性のセルロースナノファイバーに限定されており、後述するアルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物の利用ができない。また、後記の通り、本発明者らがアニオン性セルロースナノファイバーにカチオン性の高分子や界面活性剤を添加し、再分散を試みたところ、比誘電率の低い溶媒への再分散性に乏しかった。さらに、非特許文献2の記載から、比誘電率の低い溶媒を用いて溶媒置換を繰り返し行うことも考慮できるが、使用する溶媒の量が極めて多くなるという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明が解決しようとする課題は、エネルギー効率良く比誘電率の低い溶媒にナノ分散した微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法を提供することである。さらに本発明が解決しようとする別の課題は、分散濃度を高濃度に設定し得る微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法を提供することである。さらに本発明が解決しようとする別の課題は、エネルギー効率良く比誘電率の低い溶媒にナノ分散した微細繊維状セルロース再分散スラリーを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、微細繊維状セルローススラリーにアルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を加え、得られた微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種を添加すること試みた。その結果、上記方法により、上記課題を解決した微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法を提供できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 微細繊維状セルローススラリーに、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を加え、微細繊維状セルロース濃縮物を得る第1工程;及び
前記の微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種を添加する第2工程:
を含む、微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法。
(2) 前記第1工程に先立って、25℃における比誘電率が70を超える第1の溶媒中で、アニオン性置換基を有する繊維状セルロースを微細化し、微細繊維状セルローススラリーを得る工程を含む、(1)に記載の製造方法。
(3) 前記アニオン性置換基が、リン酸基又はリン酸基由来の置換基、カルボン酸由来の基及び硫酸由来の基からなる群より選択される1種または2種以上である、(2)に記載の製造方法。
(4) 前記第2工程で得られた微細繊維状セルロースを、25℃における比誘電率が70以下の第2の溶媒中に再懸濁させ、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得る工程を含む(1)から(3)の何れか一に記載の製造方法。
(5) 前記第1工程と前記第2工程の間に、前記微細繊維状セルロース濃縮物を酸で処理する工程をさらに含む、(1)から(4)の何れか一に記載の製造方法。
(6) 前記第1工程と前記第2工程の間に、前記微細繊維状セルロース濃縮物を洗浄する工程をさらに含む、(1)から(5)の何れか一に記載の製造方法。
(7) 前記アルカリ可溶金属又は多価金属が、アルミニウム、亜鉛、鉄及びカルシウムからなる群より選択される1種または2種以上である、(1)から(6)の何れか一に記載の製造方法。
(8) 前記水酸化テトラアルキルオニウムが、水酸化テトラアルキルアンモニウムである、(1)から(7)の何れか一に記載の製造方法。
(9) 微細繊維状セルロース、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物または/およびその塩、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種または/およびその塩を含む、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物。
(10) アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物または/およびその塩の含有量が、下記(式1)を満たし、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種または/およびその塩の含有量が、下記(式2)を満たす、(9)に記載の微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物。
0.1×A×B×C/D≦E≦10×A×B×C/D (式1)
式中、
A:セルロースに導入された官能基量[mmol/g]
B:官能基の価数[-]
C:供試したセルロース量[g]
D:アルカリ可溶金属イオンの価数[-]
E:アルカリ可溶金属を含む化合物または/およびその塩の量[mmol]
である。
0.01×E≦F≦100×E (式2)
式中、
アルカリ可溶金属を含む化合物または/およびその塩の量E[mmol]
水酸化テトラアルキルオニウムまたは/およびその塩の量F[mmol]
である。
(11)微細繊維状セルロースと、25℃における比誘電率が70以下の溶媒とを含み、前記溶媒中に微細繊維状セルロースが分散している微細繊維状セルロース再分散スラリーであって、微細繊維状セルロース再分散スラリー全体に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が0.5質量%のとき、溶液ヘーズが30%以下である、微細繊維状セルロース再分散スラリー。
(12)微細繊維状セルロースと、25℃における比誘電率が70以下の溶媒とを含み、前記溶媒中に微細繊維状セルロースが分散している微細繊維状セルロース再分散スラリーであって、微細繊維状セルロース再分散スラリー全体に対する前記微細繊維状セルロースの含有量が3質量%以上である、微細繊維状セルロース再分散スラリー。
本発明による微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法によれば、エネルギー効率が良く、比誘電率の低い溶媒に微細繊維状セルロースがナノ分散させることができる。本発明による微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法においては、分散濃度を高濃度に設定することができる。また本発明による微細繊維状セルロース再分散スラリーにおいては、エネルギー効率良く、比誘電率の低い溶媒に微細繊維状セルロースがナノ分散している。
図1は、繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度との関係を示す。 図2は、カルボキシル基を有する繊維原料に対するNaOH滴下量と電気伝導度の関係を示すグラフである。
「部」および「%」は、特に記載した場合を除き、質量に基づく割合(質量部、質量%)を表す。セルロース等の繊維の質量に関する値は、特に記載した場合を除き、絶乾質量(固形分)に基づく。また数値範囲「X〜Y」は、特に記載した場合を除き、両端の値を含む。「Aまたは/およびB」は、特に記載した場合を除き、AとBの少なくとも一方であることを指し、Aのみであってもよく、Bのみであってもよく、AとBとの双方であってもよいことを意味する。
本発明による微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法は、以下の第1工程及び第2工程を含む方法である。
微細繊維状セルローススラリーに、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を加え、微細繊維状セルロース濃縮物を得る第1工程;及び
前記の微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種を添加する第2工程:
<繊維状セルロース原料>
繊維状セルロースを得るための繊維状セルロース原料としては特に限定されないが、入手しやすく安価である点から、パルプを用いることが好ましい。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプから選ばれる。木材パルプとしては例えば、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)、ソーダパルプ(AP)、未晒しクラフトパルプ(UKP)、酸素漂白クラフトパルプ(OKP)等の化学パルプ等が挙げられる。また、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグラウンドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)等の機械パルプ、等が挙げられるが、特に限定されない。非木材パルプとしてはコットンリンターやコットンリント等の綿系パルプ、麻、麦わら、バガス等の非木材系パルプ、ホヤや海草等から単離されるセルロース、キチン、キトサン等が挙げられるが、特に限定されない。脱墨パルプとしては古紙を原料とする脱墨パルプが挙げられるが、特に限定されない。本実施態様のパルプは上記1種を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。上記パルプの中で、入手のしやすさという点で、セルロースを含む木材パルプ、脱墨パルプが好ましい。木材パルプの中でも化学パルプはセルロース比率が大きいため、繊維微細化(解繊)時の微細繊維状セルロースの収率が高く、またパルプ中のセルロースの分解が小さく、軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースが得られる点で好ましいが、特に限定されない。中でもクラフトパルプ、サルファイトパルプが最も好ましく選択されるが、特に限定されない。この軸比の大きい長繊維の微細繊維状セルロースを含有するシートは高強度が得られる。
<アニオン性置換基の導入>
本発明の方法は、前記第1工程に先立って、25℃における比誘電率が70を超える第1の溶媒中で、アニオン性置換基を有する繊維状セルロースを微細化し、微細繊維状セルローススラリーを得る工程を含む方法でもよい。アニオン性置換基を有する繊維状セルロースは、繊維状セルロースにアニオン性置換基を導入することにより製造することができる。繊維状セルロースにアニオン性置換基を導入する方法は、特に限定されないが、例えば、酸化処理、又はセルロース中の官能基と共有結合を形成し得る化合物による処理などが挙げられる。
酸化処理とは、セルロース中のヒドロキシ基をアルデヒド基やカルボキシ基に変換する処理である。酸化処理としては、例えばTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化処理や各種酸化剤(亜塩素酸ナトリウム、オゾンなど)を用いた処理が挙げられる。酸化処理の一例としては、Biomacromolecules 8、2485−2491、2007(Saitoら)に記載されている方法を挙げることができるが、特に限定されない。
化合物による処理は、乾燥状態または湿潤状態の繊維原料に、該繊維原料と反応するような化合物を混合することにより、繊維原料に上記置換基を導入することにより実施できる。導入時の反応を促進するため、加熱する方法が特に有効である。置換基の導入における加熱処理温度は特に限定されないが、該繊維原料の熱分解や加水分解等が起こりにくい温度帯であることが好ましい。例えば、セルロースの熱分解温度の観点から、250℃以下であることが好ましく、セルロースの加水分解を抑える観点から、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。
繊維原料と反応する化合物としては、微細繊維を得ることができ、かつアニオン性置換基を導入するものである限り、特に限定されない。
アニオン性置換基を導入する場合、繊維原料と反応する化合物としては、例えば、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有する化合物、カルボン酸由来の基を有する化合物、硫酸由来の基を有する化合物、スルホン酸由来の基を有する化合物等が挙げられる。取扱いの容易さ、繊維との反応性から、リン酸基又はリン酸基由来の置換基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物が好ましい。これらの化合物が繊維とエステルまたは/およびエーテルを形成することがより好ましいが、特に限定されない。
アニオン性置換基導入繊維における置換基の導入量(滴定法による)は特に限定されないが、繊維1g(質量)あたり0.005α〜0.11αが好ましく、0.01α〜0.08αがより好ましい。置換基の導入量が0.005α以上であれば、繊維原料の微細化(解繊)が容易になり、置換基の導入量が0.11α以下であれば、繊維の溶解が抑制できる。ただし、αは繊維材料と反応する化合物が反応しうる官能基、例えばヒドロキシル基やアミノ基が繊維材料1gあたりに含まれる量(単位:mmol/g)である。
なお、繊維表面の置換基の導入量(滴定法)の測定は、特に記載した場合を除き、次の方法で行うことができる:
絶乾質量で0.04g程度の固形分を含む微細繊維含有スラリーを分取し、イオン交換水を用いて50g程度に希釈する。この溶液を撹拌しながら、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下した場合の電気伝導度の値の変化を測定し、その値が極小となる時の0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量を、滴定終点における滴下量とする。セルロース表面の置換基量XはX(mmol/g)=0.01(mol/l)×V(ml)/W(g)で表される。ここで、V:0.01N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(ml)、W:微細繊維状セルロース含有スラリーが含む固形分(g)である。
上記の通り、リン酸基の繊維原料への導入量は、伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図1に示した曲線を与える。最初は、急激に電気伝導度が低下する(以下、「第1領域」という)。その後、わずかに伝導度が上昇を始める(以下、「第2領域」という)。さらにその後、伝導度の増分が増加する(以下、「第3領域」という)。なお、第2領域と第3領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。すなわち、3つの領域が現れる。このうち、第1領域で必要としたアルカリ量が、滴定に使用したスラリー中の強酸性基量と等しく、第2領域で必要としたアルカリ量が滴定に使用したスラリー中の弱酸性基量と等しくなる。リン酸基が縮合を起こす場合、見かけ上弱酸性基が失われ、第1領域に必要としたアルカリ量と比較して第2領域に必要としたアルカリ量が少なくなる。一方、強酸性基量は、縮合の有無に関わらずリン原子の量と一致することから、単にリン酸基導入量(またはリン酸基量)、または置換基導入量(または置換基量)と言った場合は、強酸性基量のことを表す。
また、カルボキシル基の繊維原料への導入量も、伝導度滴定法により測定することができる。伝導度滴定では、アルカリを加えていくと、図2に示した曲線を与える。この曲線は、電気伝導度が減少した後、伝導度の増分(傾き)がほぼ一定となるまでを第1領域、その後、伝導度の増分(傾き)が増加する第2領域に区分される。なお、第1、第2領域の境界点は、伝導度の2回微分値、すなわち伝導度の増分(傾き)の変化量が最大となる点で定義される。図2に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とする。
導入される置換基が、リン酸基又はリン酸基由来の置換基、カルボン酸由来の基および硫酸由来の基からなる群より選択される少なくとも1種である場合、置換基導入量は、特に限定されないが、0.001〜5.0mmol/gとすることができる。0.005〜4.0mmol/gとしてもよく、0.01〜2.0mmol/gとしてもよい。
繊維原料と反応するような化合物として、リン酸基又はリン酸基由来の置換基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸あるいはこれらの塩またはエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、扱いやすく、また、繊維原料にリン酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、リン酸基を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
リン酸基を有する化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸のリチウム塩であるリン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸三リチウム、ピロリン酸リチウム、ポリリン酸リチウムが挙げられる。更にリン酸のナトリウム塩であるリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムが挙げられる。更にリン酸のカリウム塩であるリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、ポリリン酸カリウムが挙げられる。更にリン酸のアンモニウム塩であるリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ピロリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
これらのうち、リン酸基導入の効率が高く、工業的に適用しやすい観点から、リン酸、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩、リン酸のアンモニウム塩が好ましく、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムがより好ましいが、特に限定されない。
また、反応の均一性およびリン酸基又はリン酸基由来の置換基の導入効率が高いことから化合物は水溶液として用いることが好ましいが、特に限定されない。化合物の水溶液のpHは特に限定されないが、リン酸基導入の効率が高いことから7以下であることが好ましい。繊維の加水分解を抑える観点からpH3〜7が特に好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、カルボン酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物およびそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
カルボキシ基を有する化合物としては特に限定されないが、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸等のジカルボン酸化合物やクエン酸、アコニット酸等トリカルボン酸化合物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物としては特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の誘導体としては特に限定されないが、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物としては特に限定されないが、マレイミド、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のジカルボン酸化合物のイミド化物が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体としては特に限定されない。例えば、ジメチルマレイン酸無水物、ジエチルマレイン酸無水物、ジフェニルマレイン酸無水物等の、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の少なくとも一部の水素原子が置換基(例えば、アルキル基、フェニル基等)で置換されたものが挙げられる。
上記カルボン酸由来の基を有する化合物のうち、工業的に適用しやすく、ガス化しやすいことから、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸が好ましいが、特に限定されない。
繊維原料と反応するような化合物として、硫酸由来の基を有する化合物を用いる場合、特に限定されないが、無水硫酸、硫酸ならびにこれらの塩およびエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの中でも、低コストであり、また、繊維原料に硫酸基を導入して微細化(解繊)効率をより向上できることから、硫酸が好ましいが、特に限定されない。
<繊維状セルロースの微細化処理>
微細繊維状セルローススラリーは、繊維状セルロースを微細化(解繊)処理に供することによって製造することができる。
微細化処理に際し、繊維状セルロースは溶媒に分散される。ここで使用する溶媒の種類は、特に限定されないが、25℃における比誘電率が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは70以上、特に好ましくは75以上である溶媒を使用することができる。溶媒の比誘電率の上限値は特に限定されないが、例えば150以下のものを用いることができる。なお、比誘電率の値を示すときは、特に記載した場合を除き、25℃における値である。比誘電率は、誘電率の電気定数(真空の誘電率)に対する比である。純粋な溶媒の誘電率および比誘電率はよく知られている。混合溶媒の誘電率は、液体用誘電率計等の公知の方法で測定することができる。混合溶媒のおよその誘電率および比誘電率としては混合比に基づく比例計算で求めた値を参考としてもよい。
溶媒の具体例としては、水(25℃における比誘電率78)、有機溶媒単独、並びに水と有機溶媒との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、意図した比誘電率を確保できる限り特に限定されない。例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の中でも好ましくは、溶媒は水である。
溶媒中の繊維状セルロースの分散濃度は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましいが、特に限定されない。分散濃度が0.1質量%以上であれば、解繊処理の効率が向上し、20質量%以下であれば、解繊処理装置内での閉塞を防止できるからである。
解繊処理装置としては特に限定されない。例えば、高速解繊機、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、クレアミックス、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーが挙げられる。また、二軸混練機、振動ミル、高速回転下でのホモミキサー、超音波分散機、ビーター等、湿式粉砕する装置等を適宜使用することができる。
微細化処理により、微細繊維状セルローススラリーが得られる。得られる微細繊維状セルロースの平均繊維幅は特に限定されないが、例えば1〜1000nmとすることができ、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜500nm、さらに好ましくは3〜100nmである。微細繊維の平均繊維幅が1nm以上であると、分子の水への溶解が抑えられるため、微細繊維としての物性(強度や剛性、寸法安定性)が十分に発現される。一方、平均繊維幅が1000nm以下であれば、微細繊維としての特長(高透明、高弾性率、低線膨張係数、フレキシブル性)が発揮されやすくなる。なお、得られた微細繊維状セルロース分散液は、繊維幅が1000nmを超える繊維状セルロースを含んでいてもよいが、繊維幅が1000nmを超える繊維状セルロースを含まないほうが好ましい。
微細繊維に透明性が求められる用途においては、平均繊維幅が30nm以下であれば、可視光の波長の1/10に近づき、マトリクス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折および散乱が生じにくく、透明性が高いものが得られる傾向がある。そのため、平均繊維幅は特に限定されないが、2nm〜30nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。前記のような微細繊維から得られる複合体は、一般的に緻密な構造体となるために強度が高く、可視光の散乱が少ないため高い透明性も得られる。
平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。濃度0.05〜0.1質量%の微細繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストしてTEM観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面のSEM像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍あるいは50000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線と垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の繊維が交差する。
上記条件を満足する観察画像に対し、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を目視で読み取る。こうして少なくとも重なっていない表面部分の画像を3組以上観察し、各々の画像に対して、直線X、直線Yと交錯する繊維の幅を読み取る。このように少なくとも20本×2×3=120本の繊維幅を読み取る。平均繊維幅とはこのように読み取った繊維幅の平均値である。
繊維長は特に限定されないが、0.1μm以上が好ましい。繊維長が0.1μm以上であれば、後述のシートを製造した際、シートの引裂強度が十分である点で好ましい。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。上記繊維長は、微細繊維の30質量%以上を占める繊維長である。
繊維の軸比(繊維長/繊維幅)は特に限定されないが、20〜10000の範囲であることが好ましい。軸比が20以上であれば微細繊維含有シートを形成しやすい点で好ましい。軸比が10000以下であればスラリー粘度が低くなる点で好ましい。
微細化処理により、微細繊維状セルローススラリーが得られる。ここでの微細繊維状セルロースの濃度は、例えば0.1〜20質量%であり、また0.5〜10質量%であり得る。
<微細繊維状セルロース濃縮物>
本発明における第1工程においては、細繊維状セルローススラリーに、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を加え、微細繊維状セルロース濃縮物を得る。
アルカリ可溶金属としては、鉄、アルミニウム、亜鉛、スズ、又は鉛などが挙げられるが特に限定されない。なお、アルミニウム、亜鉛、スズ、又は鉛は、両性金属と称される金属である。アルカリ可溶金属としては、アルミニウム、亜鉛及び鉄からなる群より選択される1種または2種以上を使用することが好ましい。
アルカリ可溶金属を含む化合物としては、特に限定されないが、アルカリ可溶金属と酸との塩などが挙げられ、例えば、硫酸鉄(II)(FeSO4)、硫酸鉄(III)(Fe2(SO43)、塩化鉄(II)(FeCl2)、塩化鉄(III)(FeCl3)、硫酸アルミニウム(Al2(SO42)、塩化アルミニウム(AlCl3)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、塩化亜鉛(ZnCl2)、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
多価金属としては、アルミニウム、カルシウム、又はマグネシウムなどが挙げられるが特に限定されない。多価金属イオンを含む化合物は、多価金属の塩として使用することができる。多価金属の塩としては、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等を挙げることができるが、特に限定されない。
アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物の添加量Eは、好ましくは(式1)で規定する範囲内であり、より好ましくは(式1A)で規定する範囲内であり、さらに好ましくは(式1B)で規定する範囲内であるが、特に限定されない。
0.1×A×B×C/D≦E≦10×A×B×C/D (式1)
0.2×A×B×C/D≦E≦5×A×B×C/D (式1A)
0.5×A×B×C/D≦E≦2×A×B×C/D (式1B)
式中、
A:変性セルロースに導入された官能基量[mmol/g]
B:官能基の価数[-]
C:供試した変性セルロース量[g]
D:アルカリ可溶金属イオン又は多価金属イオンの価数[-]
E:アルカリ可溶金属イオン又は多価金属イオンの量[mmol]
である。
アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物の添加は、常法により行うことができ、微細繊維状セルローススラリーを撹拌しながら、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を添加し、さらに撹拌を続けることにより凝集した微細繊維状セルロース濃縮物を得ることができる。アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を添加する際の形態は、固体または/および溶液の状態を適宜選択することができる。撹拌時間は特に限定されないが、例えば、1分間〜120分間、好ましくは10分間〜90分間撹拌することにより、微細繊維状セルロース濃縮物を得ることができる。
上記で得られる凝集した微細繊維状セルロース濃縮物は、常法により回収することができる。例えば、微細繊維状セルロース濃縮物を、ろ紙上に流し込み、アスピレーター等で減圧ろ別を行うことにより、微細繊維状セルロース濃縮物を回収することができる。
<微細繊維状セルロース濃縮物の酸処理>
上記の第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物は、そのまま第2工程に供してよいが、第1工程と第2工程の間に、第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物を酸で処理する工程を含めてもよい。
上記した酸で処理する工程を行うことにより、アルカリ可溶金属又は多価金属などの金属成分を洗浄することができる。即ち、酸処理工程は、金属成分(濃縮剤)を除去するための酸洗浄工程であってもよい。
酸処理工程では、例えば、無機酸(硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等)、有機酸(ギ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、セバシン酸、ステアリン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸等)を用いて処理を行うことが好ましい。具体的には、上述した工程で得られた濃縮物を上記の酸性液に浸漬することが好ましい。使用する酸性液の濃度は特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。酸性液の濃度を上記範囲とすることにより、セルロースの分解による劣化を抑制することができる。
さらに酸処理工程の後には、濾過を行うことが好ましい。この濾過処理工程では、さらに圧縮工程等の脱液工程を行ってもよい。
<微細繊維状セルロース濃縮物の洗浄>
上記の第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物は、そのまま第2工程に供してよいが、第1工程と第2工程の間に、第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物を洗浄する工程を含めてもよい。
洗浄は、例えば、水(イオン交換水など)を用いて行うことができる。具体的には、第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物をイオン交換水に再懸濁した後、減圧ろ別を行う操作を1回又は2回以上行うことにより、洗浄を行うことができる。
<乾燥工程>
上記の第1工程によりで得られた微細繊維状セルロース濃縮物は、そのまま第2工程に供してよいが、第1工程と第2工程の間に、第1工程で得られた微細繊維状セルロース濃縮物を乾燥する工程を設けてもよい。乾燥工程を設ける場合は、酸処理工程の後に設けることが好ましい。乾燥工程は、オーブン乾燥工程であることが好ましく、例えば、30〜70℃に設定をしたオーブンで、1〜60分間乾燥を行うことが好ましい。
<微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物>
本発明における第2工程においては、微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種を添加する。これにより、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物が得られる。
水酸化テトラアルキルオニウムとしては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、及び水酸化テトラアルキルホスホニウムなどが挙げられる。上記の中でも、水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウムなどが挙げられる。水酸化テトラアルキルホスホニウムとしては、水酸化テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム、水酸化テトラプロピルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、水酸化トリエチルメチルホスホニウムなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、
メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン(ペンチルアミン)、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、ノニルアミン、アミノデカン、アミノウンデカン、ドデシルアミン、アミノトリデカン、テトラテシルアミン、アミノペンタデカン、ヘキサデシルアミン、アミノヘプタデカン、ステアリルアミン、アミノノナデカン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどのモノアルキルアミン;
ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジ−n−オクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミンなどのジアルキルアミン;
トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、ジエチルジ−n−オクチルアミン、ジデシルメチルアミン、N,N−ジドデシルメチルアミンなどのトリアルキルアミン:
などが挙げられるが、特に限定されない。
水酸化テトラアルキルオニウム又はアルキルアミンの添加量Fは、好ましくは式(式2)で規定する範囲内であり、より好ましくは(式2A)で規定する範囲内であり、さらに好ましくは(式2B)で規定する範囲内であるが、特に限定されない。
0.01×E≦F≦100×E (式2)
0.1×E≦F≦ 50×E (式2A)
1×E≦F≦ 10×E (式2B)
式中、
アルカリ可溶金属イオンの添加量E[mmol]
水酸化テトラアルキルオニウム又はアルキルアミンの添加量F[mmol]
である。
但し、多価金属イオンを使用し、酸で洗浄した場合には、 水酸化テトラアルキルオニウム又はアルキルアミンの添加量Fは、好ましくは式(式3)で規定する範囲内であり、より好ましくは(式3A)で規定する範囲内であり、さらに好ましくは(式3B)で規定する範囲内であるが、特に限定されない。
0.01×A×B×C≦F≦100×A×B×C (式3)
0.1×A×B×C≦F≦50×A×B×C (式3A)
0.5×A×B×C≦F≦5×A×B×C (式3B)
A、B、C及びFの定義は、本書中上記の通りである。
水酸化テトラアルキルオニウム又はアルキルアミンの添加は、常法により行うことができ、微細繊維状セルロース濃縮物を撹拌しながら、水酸化テトラアルキルオニウム又はアルキルアミンの溶液を添加することにより、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物を得ることができる。
上記した微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物は、微細繊維状セルロース、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物または/およびその塩、並びに水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種または/およびその塩を含む。
上記の微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物が、アルカリ可溶金属を含む化合物または/およびその塩を含むか否かは、必要に応じて灰化・酸抽出などの適切な前処理を行った後に、イオンクロマトグラフィー、ICP質量分析法、ICP発行分光分析法、原子吸光分析法などにより測定することができる。
上記の微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物が、水酸化テトラアルキルオニウムまたは/およびその塩を含むか否かは、イオンクロマトグラフィーによる測定のほか、水酸化テトラアルキルアンモニウムの場合は、微量窒素分析法、水酸化テトラアルキルホスホニウムの場合は、モリブデンブルー法などにより測定することができる。
<微細繊維状セルロース再分散スラリー>
本発明においては、前記第2工程で得られた微細繊維状セルロースを、溶媒に再懸濁させることによって微細繊維状セルロース再分散スラリーを得ることができる。再分散スラリーを得る工程としては、前記第2工程で得られた微細繊維状セルロースを、25℃における比誘電率が70以下の溶媒中に再懸濁させ、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得る工程でもよい。
再分散スラリーを得るために使用する溶媒の種類は、特に限定されないが、25℃における比誘電率が、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは40以下である溶媒を使用することができる。溶媒の具体例としては、水(25℃における比誘電率78)、有機溶媒単独、並びに水と有機溶媒との混合物を挙げることができる。有機溶媒としては、意図した比誘電率を確保できる限り特に限定されない。例えば、アルコール類、多価アルコール類、ケトン類、エーテル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル等が挙げられる。有機溶媒は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。上記の中でも、溶媒は、好ましくは、アルコール類と水との混合物、エーテル類と水との混合物、又はDMSOと水との混合物である。
アルコール類と水との混合物における混合比率は、上記した比誘電率を達成できる比率であることが好ましく、例えば、アルコール:水=40〜80:20〜60である。
エーテル類と水との混合物における混合比率は、上記した比誘電率を達成できる比率であることが好ましく、例えば、エーテル類:水=40〜80:20〜60である。
DMSOと水との混合物における混合比率は、上記した比誘電率を達成できる比率であることが好ましく、例えば、DMSO:水=80〜95:20〜5である。
微細繊維状セルロースの再分散は常法により行うことができる。例えば、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物に、上記した溶媒を添加して微細繊維状セルロース含有液を調製する工程と、この微細繊維状セルロース含有液中の微細繊維状セルロースを分散させる工程により、再分散を行うことができる。
微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物に溶媒を添加して微細繊維状セルロース含有液を調製する際、微細繊維状セルロース含有液の微細繊維状セルロース含有量を微細繊維状セルロース含有液に対して0.1質量%〜10質量%にすることが好ましい。微細繊維状セルロース含有液の微細繊維状セルロース含有量を微細繊維状セルロース含有液に対して0.2質量%〜3質量%にすることがより好ましい。含有量が0.1質量%以上であれば、微細繊維状セルロースの分散安定性が高くなり、含有量が10質量%以下であれば、微細繊維状セルロースの粘性が高くなりすぎず、ハンドリングが比較的容易になる。
微細繊維状セルロース含有液の微細繊維状セルロース含有量は、溶媒の添加量によって調整でき、溶媒の添加量を多くする程、微細繊維状セルロース含有量が低くなる。
微細繊維状セルロース含有液中の微細繊維状セルロースを分散させる工程に用いる分散装置としては、上記の<繊維状セルロースの微細化処理>において記載した解繊処理装置と同様のものを使用することができる。
上記により得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーにおいては、微細繊維状セルロース再分散スラリー全体に対する微細繊維状セルロースの含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。微細繊維状セルロースの含有量の上限は特に限定されないが、一般的には、50質量%以下である。微細繊維状セルロースの含有量を上記の範囲内にすることにより、微細繊維状セルロース再分散スラリーの比誘電率を低く設定できる。
分散性は、ホモディスパー等による分散処理を施し、その直後の液を目視で観察して、沈殿や粗大な凝集物が認められるか否かで評価することができる。
上記により得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーは、25℃における比誘電率が70以下の溶媒中で、微細繊維状セルロース再分散スラリー全体に対する微細繊維状セルロースの含有量が0.5質量%のとき、溶液ヘーズが好ましくは30%以下である。上記の溶液ヘーズは、より好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。
<その他の工程>
本発明においては、上記により得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーをさらに、イオン交換樹脂による処理(例えば、陰イオン交換樹脂による処理、及び/又は陽イオン交換樹脂による処理)に供してもよい。上記処理により、微細繊維状セルロース再分散スラリー中の微細繊維状セルロース純度をさらに高めることができる。
陰イオン交換樹脂としては、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられ、例えば、ジメチルアミノ基やモノメチル基などをイオン交換基として含有するスチレン-ジビニルベンゼン架橋重合体などが挙げられる.
陽イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂が挙げられ、例えば、スルホン酸基やカルボキシル基などをイオン交換基として含有するスチレン-ジビニルベンゼン架橋重合体などが挙げられる。
イオン交換樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、一つの樹脂に陽イオン部分と陰イオン部分を併せもつ両イオン交換樹脂も用いることもできる。イオン交換樹脂の形状は、特に限定されず、ゲルタイプ、ポーラスタイプ等が挙げられる。
イオン交換樹脂の市販品としては、以下のものが挙げられるが特に限定されない。
ダイヤイオン(登録商標、以下同じ)SK104、SK110、SK112等のゲル型強酸性陽イオン交換樹脂;
ダイヤイオンPK208、PK212、PK216、PK218、PK220、PK228等のポーラス型強酸性陽イオン交換樹脂;
ダイヤイオンUBK08、UBK10、UBK12等のゲル型均一粒径強酸性陽イオン交換樹脂;
ダイヤイオンSA10A、SA12、NSA100等のゲルI型強塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンSA20A、SA21A等のゲルII型強塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンPA306S、PA308、PA312、PA316、PA318L等のポーラスI型強塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンWA10等のアクリル系弱塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンWA20、WA21J等のスチレン系ポリアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンWA30等のスチレン系ジメチルアミン型弱塩基性陰イオン交換樹脂;
ダイヤイオンAMP03等の両性イオン交換樹脂(以上、三菱化学社製);
Dowex(登録商標、以下同じ)50W×8等の強酸性陽イオン交換樹脂;
Dowex1×2、1×4、1×8等の強塩基性陰イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル社製);
アンバーライト(登録商標、以下同じ)IR120B、IR124等の強酸性陽イオン交換樹脂;
アンバーライトIRA400J、IRA411等の強塩基性陰イオン交換樹脂(以上、オルガノ社製):
<他の成分>
微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物、又は微細繊維状セルロース再分散スラリーには、界面活性剤が含まれてもよい。界面活性剤を含めることにより、表面張力が低下して、工程基材に対する濡れ性を高めることができ、微細繊維状セルロース含有シートをより容易に形成できる。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を使用することができる。セルロースがアニオン性である場合、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が好ましく、セルロースがカチオン性である場合、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。
微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物、又は微細繊維状セルロース再分散スラリーは、微細繊維状セルロース以外の繊維(以下、「追加繊維」という)を少なくとも1種以上混合して調製することもできる。追加繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、合成繊維等、半合成繊維、再生繊維が挙げられるが、特に限定されない。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、岩石繊維、金属繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。有機繊維としては、例えば、セルロース、炭素繊維、パルプ、キチン、キトサン等の天然物由来の繊維等が挙げられるがこれらに限定されない。合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリエステル、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン、アクリル、ポリ塩化ビニル、アラミド等が挙げられるがこれらに限定されない。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックス等が挙げられるがこれらに限定されない。再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ、ポリノジックレーヨン、リヨセル、テンセル等が挙げられるがこれらに限定されない。前記追加繊維は、必要に応じて化学的処理、解繊処理等の処理を施すことができる。追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施す場合、微細繊維と混合してから化学的処理、解繊処理等の処理を施すこともできるし、追加繊維に化学的処理、解繊処理等の処理を施してから微細繊維と混合することもできる。追加繊維を混合する場合、微細繊維と追加繊維の合計量における追加繊維の添加量は特に限定されないが、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。特に好ましくは20質量%以下である。
微細繊維状セルロース濃縮物、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物、又は微細繊維状セルロース再分散スラリーには、親水性高分子を添加してもよい。親水性高分子としては、特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース等)、カゼイン、デキストリン、澱粉、変性澱粉等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール等)が挙げられる。さらにポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸塩類、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキルエステル共重合体、ウレタン系共重合体等が挙げられる。
また親水性高分子の代わりに親水性の低分子化合物を用いることもできる。親水性の低分子化合物としては、特に限定されない。例えば、グリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール等が挙げられる。親水性高分子、または親水性の低分子化合物を添加する場合の添加量は、特に限定されない。例えば、微細繊維の固形分100質量部に対し、1〜200質量部、好ましくは1〜150質量部、より好ましくは2〜120質量部、さらに好ましくは3〜100質量部である。
<用途>
本発明による微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物または/および微細繊維状セルロース再分散スラリーの用途は特に限定されない。一例としては、微細繊維状セルロース再分散スラリーを用いて製膜し、各種フィルムとして使用することができる。別の例としては、微細繊維状セルロース再分散スラリーは、増粘剤として各種用途に使用することができる。さらに、樹脂やエマルションと混合し補強材としての用途にしようすることもできる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
(製造例1)リン酸化パルプ(H型)の製造
・リン酸基の導入
針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93% 米坪208g/m2シート状 離解してJIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプの絶乾質量として100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム49質量部、尿素130質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを105℃の乾燥機で乾燥し、水分を蒸発させてプレ乾燥させた。その後、140℃に設定した送風乾燥機で、10分間加熱し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化パルプを得た。
・リン酸化パルプの洗浄
得られたリン酸化パルプの絶乾質量として100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、リン酸化パルプの脱水シートAを得た。
・複数回リン酸化
得られたリン酸化パルプの脱水シートAを原料にし、先と同様にして、リン酸基を導入する工程、濾過脱水する工程をさらに2回繰り返して(リン酸化および濾過脱水の合計回数は3回)、リン酸化パルプの脱水シートBを得た。
・導入された置換基量
上記リン酸化パルプの脱水シートBは、後記する滴定法で求められるリン酸基の導入量が1.435mmol/gであった。
・リン酸化パルプの塩型変換 H型
リン酸化パルプの脱水シートBの絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、1N塩酸を少しずつ添加し、pHが2〜3のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の塩酸を十分に洗い流し、リン酸化パルプ(H型)を得た。
(製造例2)リン酸化パルプ(TBA型)の製造
製造例1で得られたリン酸化パルプ(H型)の絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を少しずつ添加し、pHが10〜12のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を十分に洗い流し、リン酸化パルプ(TBA型)(対イオンの炭素数16)を得た。
(製造例3)リン酸化パルプ(Na型)の製造
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、1N NaOH水溶液を用いた以外は製造例2と同様にして、リン酸化パルプ(Na型)(対イオンの炭素数0)を得た。
(製造例4)リン酸化パルプ(TPA型)の製造
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた以外は製造例2と同様にして、リン酸化パルプ(TPA型)(対イオンの炭素数12)を得た。
(製造例5)リン酸化パルプ(TEA型)の製造
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた以外は製造例2と同様にして、リン酸化パルプ(TEA型)(対イオンの炭素数8)を得た。
(製造例6)TEMPO酸化パルプ(H型)の製造
・TEMPO酸化反応
乾燥質量100質量部相当の未乾燥の針葉樹晒クラフトパルプとTEMPO1.25質量部と、臭化ナトリウム12.5質量部とを水10000質量部に分散させた。次いで、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1.0gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が8.0mmolになるように加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10〜11に保ち、pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なした。
・TEMPO酸化パルプの洗浄
その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、5000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。
・導入された置換基量
滴定法により測定される置換基(カルボキシ基)の導入量は1.502mmol/gであった。
さらに、得られた脱水シートに、5000質量部のイオン交換水を加えて希釈した。次いで、攪拌しながら、1N塩酸を少しずつ添加し、pHが2〜3のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の塩酸を十分に洗い流し、TEMPO酸化パルプ(H型)を得た。
(製造例7)TEMPO酸化パルプ(Na型)の製造
得られたTEMPO酸化パルプ(H型)の絶乾質量として100質量部に5000質量部のイオン交換水を加え、希釈した。次いで、攪拌しながら、1N NaOH水溶液を少しずつ添加し、pHが10〜12のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた。次いで、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰のNaOH水溶液を十分に洗い流し、TEMPO酸化パルプ(Na型)(対イオンの炭素数0)を得た。
以下の実施例において、濃縮(工程B)が、微細繊維状セルローススラリーにアルカリ可溶金属を含む化合物を加え、微細繊維状セルロース濃縮物を得る第1工程に相当する。また、アルカリの添加(工程C)が、微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウムを添加する第2工程に相当する。
(実施例1)
・微細化前希釈(工程A)
得られたリン酸化パルプ(Na型)を、含有量が2.0質量%となるように、イオン交換水で希釈し、微細化前スラリーAを得た。また、微細化前スラリーA中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以上であることを確認した。
・微細化
得られた微細化前スラリーAを、防爆式高圧ホモジナイザーを用いて、操作圧力1500MPaで2パス処理を行い、微細繊維状セルローススラリーAを得た。
・濃縮(工程B)
得られた微細繊維状セルローススラリーA100gを分取し、撹拌しながら0.39gの硫酸アルミニウムを添加した。さらに30分撹拌を続けたところ、微細繊維状セルロースの凝集物が認められた。
なお、添加した硫酸アルミニウム中に含まれるアルミニウム量E1[mmol]は1.2×A1×B1×C1/D1であった。
ここで
1:変性セルロースに導入されたリン酸基量[mmol/g]
1:リン酸基の価数[-]
1:供試した変性セルロース量[g]
1:アルミニウムイオンの価数[-]
である。他の実施例及び比較例においても同様である。なお、リン酸基以外の官能基を有する変性セルロースを試用する場合には、リン酸基の価数は、当該官能基の価数に読み替えるものとする。また、アルミニウム以外の金属を使用する場合には、アルミニウム量及びアルミニウムイオンの価数は、当該金属量及び当該金属イオンの価数に読み替えるものとする。
・濃縮物の回収
凝集物が生じた微細繊維状セルローススラリーを、フィルターホルダーに装着した定性ろ紙(ADVANTEC、φ90mm、No.2)上に流し込み、アスピレーターで減圧ろ別を行い、微細繊維状セルロース凝集物(洗浄前)を回収した。
・濃縮物の洗浄
得られた微細繊維状セルロース凝集物(洗浄前)を、イオン交換水で微細繊維状セルロースの含有量が2.0質量%となるよう再懸濁した。その後、再び減圧ろ別を行う操作を3回繰り返し、微細繊維状セルロース濃縮物(濃縮物全体に対する微細繊維状セルロースの含有量が5.2質量%)を得た。
・アルカリの添加(工程C)
得られた微細繊維状セルロース濃縮物に、撹拌しながら10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液を21.8g添加し、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物を得た。
なお、テトラブチルアンモニウムの添加量F1[mmol]は4.0×E1であった。
ここで
1:添加した硫酸アルミニウム中に含まれるアルミニウム量[mmol]
である。
・再分散(工程D)
得られた微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物に、イソプロパノール(IPA)/水質量比率が60/40、微細繊維状セルロースの含有量が0.5質量%となるようイソプロパノール、およびイオン交換水を添加した。その後、ホモディスパー(特殊機化工業製 8000rpm 1分)処理で微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。また、微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。
・評価
下記表に、微細化時の溶媒の比誘電率、再分散時の溶媒の比誘電率、再分散性、再分散後のスラリーのヘーズを記載した。なお、ヘーズ、および再分散性は、後記の方法で評価した。
(実施例2)
0.39gの硫酸アルミニウムの代わりに、0.47gの塩化亜鉛を添加した以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例3)
0.39gの硫酸アルミニウムの代わりに、0.46gの硫酸鉄(III)を添加した以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例4)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液21.8gの代わりに、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPA)水溶液17.1gを添加した以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例5)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液の代わりに、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEA)水溶液12.4gを添加した以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例6)
再分散前の溶媒添加に際し、イソプロパノール(IPA)/水質量比率が70/30となるようにした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例7)
再分散前の溶媒添加に際し、ジメチルスルホキシド(DMSO)/水質量比率が90/10となるようにした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例8)
再分散前の溶媒添加に際し、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル(EG−tBE)/水質量比率が60/40となるようにした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例9)
リン酸化パルプ(Na型)の代わりにTEMPO酸化パルプ(Na型)を用いた以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例10)
・高濃度濃縮物の回収
実施例1と同様に濃縮物の回収を行った後、濃縮物を角型プレスに掛け、さらに濃縮を進め、微細繊維状セルロースの高濃度濃縮物(濃縮物全体に対する微細繊維状セルロースの含有量が30質量%)を得た。
・アルカリの添加(工程C)
得られた微細繊維状セルロースの高濃度濃縮物に、撹拌しながら40%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液5.45gを添加し、微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物を得た。
・再分散(工程D)
得られた微細繊維状セルロース濃縮物のアルカリ添加物に、イソプロパノール(IPA)/水質量比率が60/40、微細繊維状セルロースの含有量が5質量%となるようイソプロパノール、およびイオン交換水を添加した。その後、竪型ニーダー(井上製作所、トリミックス)で5分間攪拌し、再分散させ、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーは、溶媒を吐き出すことなく、また、目視での凝集塊も観察されず、再分散性は良好であった。
(実施例11)
微細繊維状セルロースの含有量が7質量%となるようイソプロパノール、およびイオン交換水を添加した以外は実施例10と同様にして微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。得られた微細繊維状セルロース再分散スラリーは、溶媒を吐き出すことなく、また、目視での凝集塊も観察されず、再分散性は良好であった。
(実施例12)
<濃縮物の回収>と<濃縮物の洗浄>の間に後述する<酸処理工程>を行い、さらに、10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の添加量を17.9gとした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
酸処理工程
<濃縮物の回収>により得られた微細繊維状セルロース濃縮物を0.1N塩酸に30分間浸漬後、濾過を行い、再度微細繊維状セルロース濃縮物を回収した。
(実施例13)
0.39gの硫酸アルミニウムの代わりに、0.47gの塩化亜鉛を添加した以外は、実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例14)
0.39gの硫酸アルミニウムの代わりに、0.38gの塩化カルシウムを添加した以外は、実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例15)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の代わりに、10%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPA)水溶液14.0gを加えた以外は実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例16)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の代わりに、10%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEA)水溶液10.1gを加えた以外は実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例17)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の代わりに、10%ドデシルアミン-イソプロピルアルコール溶液12.8gとtween60 0.1gの混合物を加えた以外は実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例18)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の代わりに、10%ジドデシルアミン-イソプロピルアルコール溶液24.4gとtween60 0.1gを加えた以外は実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(実施例19)
10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBA)水溶液の代わりに、10%ジドデシルメチルアミン-イソプロピルアルコール溶液25.3gとtween60 0.1gを加えた以外は実施例12と同様にして微細繊維状セルロース濃縮物を得た。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(比較例1)
硫酸アルミニウムの代わりに、硫酸を用いて濃縮し、再分散時のホモディスパー処理を8000rpm 30分とした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(比較例2)
硫酸アルミニウムの代わりに、塩化ジデシルジメチルアンモニウムを用いて濃縮し、再分散時のホモディスパー処理を8000rpm 30分とした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(比較例3)
硫酸アルミニウムの代わりに、ポリアクリルアミド(PAM;荒川化学製 FS−614)を用いて濃縮し、再分散時のホモディスパー処理を8000rpm 30分とした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(比較例4)
工程Cにおいて10%テトラブチルアンモニウムヒドロキシド21.8gの代わりに、10%NaOH3.4gを加え、再分散時のホモディスパー処理を8000rpm 30分とした以外は実施例1と同様にして、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得た。微細繊維状セルロース再分散スラリー中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(参考例1)
リン酸化パルプとしてリン酸化パルプ(TBA型)を用い、微細化前希釈における溶媒がイソプロパノール(IPA)/水質量比率が60/40であり、リン酸化パルプ(TBA型)の含有率が2.0%となるように希釈して微細化前スラリーBを得た。得られた微細化前スラリーBを、防爆式高圧ホモジナイザーを用いて、操作圧力150MPaで9パス処理を行い、微細繊維状セルローススラリーBを得た。また、微細繊維状セルローススラリーB中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(参考例2)
リン酸化パルプ(TBA型)の代わりにリン酸化パルプ(TPA型)を用いた以外は参考例1と同様にしたところ、微細繊維状セルローススラリーCを得た。また、微細繊維状セルローススラリーC中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
(参考例3)
リン酸化パルプ(TBA型)の代わりにリン酸化パルプ(TEA型)を用いた以外は参考例1と同様にしたところ、微細繊維状セルローススラリーDを得た。また、微細繊維状セルローススラリーD中に含まれる溶媒の25℃における比誘電率が70以下であることを確認した。さらにヘーズの測定及び再分散性の評価を行った。結果を表に記載した。
〔評価〕
[置換基導入量(リン酸基導入量、カルボキシル基導入量)の測定]
リン酸基導入量は、繊維原料へのリン酸基の導入量であり、この値が大きいほど、多くのリン酸基が導入されている。置換基導入量は、対象となる微細繊維状セルロースをイオン交換水で含有量が0.2質量%となるように希釈した後、イオン交換樹脂による処理、アルカリを用いた滴定によって測定した。イオン交換樹脂による処理では、0.2質量%繊維状セルロース含有スラリーに体積で1/10の強酸性イオン交換樹脂(アンバージェット1024;オルガノ株式会社、コンディショング済)を加え、1時間振とう処理を行った。その後、目開き90μmのメッシュ上に注ぎ、樹脂とスラリーを分離した。アルカリを用いた滴定では、イオン交換後の繊維状セルロース含有スラリーに、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を加えながら、スラリーが示す電気伝導度の値の変化を計測した。すなわち、図1に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
カルボキシル基導入量は、図2(カルボキシル基)に示した曲線の第1領域で必要としたアルカリ量(mmol)を、滴定対象スラリー中の固形分(g)で除して、置換基導入量(mmol/g)とした。
[ヘーズの測定]
測定対象のスラリーの固形分濃度を0.5質量%とし、光路長1cmの液体用ガラスセル(藤原製作所製、MG−40、逆光路)に充填する。このスラリーが充填されたガラスセルを試験片として用いる以外は、JIS K 7136に準拠して測定した。なお、ゼロ点測定は、同ガラスセルに入れたイオン交換水で行った。
[再分散性の評価]
上述のようにホモディスパー(特殊機化工業製 8000rpm 1分)処理で再分散処理した直後液を、目視により評価した。
・再分散濃度が0.5%のとき
良好:沈殿が認められない。
不良:沈殿が認められる。
・再分散濃度が3%以上のとき
良好:溶媒を吐き出さず、目視での凝集塊が認められない。
不良:溶媒が流失する。目視での凝集塊が認められる。
Figure 0006805658
Figure 0006805658

Claims (6)

  1. 微細繊維状セルローススラリーに、アルカリ可溶金属及び多価金属イオンから選ばれる少なくとも一種を含む化合物を加え、微細繊維状セルロース濃縮物を得る第1工程;及び
    前記の微細繊維状セルロース濃縮物に、水酸化テトラアルキルオニウム及びアルキルアミンから選ばれる少なくとも一種を添加する第2工程:
    を含み、前記第1工程と前記第2工程の間に、前記微細繊維状セルロース濃縮物を酸で処理する工程、及び/又は、前記微細繊維状セルロース濃縮物を洗浄する工程をさらに含む、微細繊維状セルロース再分散スラリーの製造方法。
  2. 前記第1工程に先立って、25℃における比誘電率が70を超える第1の溶媒中で、アニオン性置換基を有する繊維状セルロースを微細化し、微細繊維状セルローススラリーを得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記アニオン性置換基が、リン酸基又はリン酸基由来の置換基、カルボン酸由来の基及び硫酸由来の基からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記第2工程で得られた微細繊維状セルロースを、25℃における比誘電率が70以下の第2の溶媒中に再懸濁させ、微細繊維状セルロース再分散スラリーを得る工程を含む請求項1から3の何れか一項に記載の製造方法。
  5. 前記アルカリ可溶金属又は多価金属が、アルミニウム、亜鉛、鉄及びカルシウムからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1からの何れか一項に記載の製造方法。
  6. 前記水酸化テトラアルキルオニウムが、水酸化テトラアルキルアンモニウムである、請求項1からの何れか一項に記載の製造方法。
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