JP6740018B2 - インクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
1)上記処理液(反応液)を用いることにより、処理液が印刷用紙へもたらすべたつきの影響を抑制することができ、印刷物積載による処理液に起因するブロッキング現象を改善することができる。
2)処理液に起因するブロッキング現象を改善することができることから、処理液凝集性成分、即ち、インク高粘度化成分の高濃度化が可能となり、凝集速度を向上させ、1m/sec以上の高搬送下であっても、画像滲みの少ない高画質な画像を得ることができる。
本発明に用いる処理液は、インクを高粘度化する成分(インク高粘度化成分)と、ポリアルキレングリコールエーテル構造を有する化合物Aとを必ず含む。なお、この化合物Aの1質量%濃度水溶液を用いて測定した曇点は50℃以上である。また、前記処理液は、適量の水及び有機溶剤等の溶媒(又は分散媒)、並びに添加剤等の他の成分を含むこともできる。なお、処理液中には、記録画像を形成するための顔料や染料などの色材は含まないことが好ましい。これにより、全てのインクに対して凝集反応を容易に起こすことができ、減法混色において、広い領域の多色表現をすることができる。
インク高粘度化成分は、記録媒体に画像を形成するために用いられるインク(例えば、アニオン性インク)を凝集及び高粘度化させる凝集剤として作用することができる。ここで、インクの高粘度化とは、インク(インク組成物)とインク高粘度化成分とが接触することによりインク全体の粘度上昇が認められる場合のみならず、インク中の一部の成分が凝集することにより局所的に粘度上昇を生じる場合をも含む意である。
本発明に用いることのできる有機酸は、特に限定されるものではない。しかし、インク中の成分の官能基(例えば、カルボン酸基及びカルボン酸塩基)との反応を考慮すると、有機酸は、pKaが4.5より低い酸であることが好ましい。このpKaが4.5より低い酸としては、例えば、カルボン酸基を有する有機酸(有機化合物)、スルホン酸基を有する有機酸、リン酸基を有する有機酸などが挙げられる。より具体的には、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、プロパントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、メタンスルホン酸及びエタンスルホン酸等を挙げることができる。
また、有機酸は、構造安定性の観点から、融点が100℃以上の固体酸であることがより好ましい。さらに、記録媒体の黄変防止の観点から、有機酸は、多官能ヒドロキシ酸であることが特に好ましい。
以上より、有機酸としては、pKaが4.5より低く、融点が100℃以上の多官能ヒドロキシ酸である、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸を用いることが特に好ましい。これらの有機酸は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。
上記多価金属塩としては、例えば、以下の多価金属イオンと、以下の酸とから構成される塩を挙げることができる。具体的には、多価金属イオンとしては、例えば、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、及び亜鉛イオン等を挙げることができる。また、酸としては、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸及び上述した有機カルボン酸(カルボン酸基を有する有機酸)等を挙げることができる。
上記カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、これらを含む共重合体、及びその塩などの1級アミン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、これらを含む共重合体、及びその塩などの2級アミン樹脂等を挙げることができる。
本発明に用いる化合物Aは、水酸基とポリアルキレングリコールエーテル構造とを有することから、界面活性剤として作用することができる。なお、化合物Aは、1つの水酸基と炭素数6以上のアルキル鎖を有する化合物である。特に、本発明に用いる化合物Aは、ポリアルキレングリコールエーテル構造におけるアルキレンオキシ基を6単位以上有する化合物であることが、以下の曇点を満たす上で好ましい。
一般式(1)
CnH2n+1−[(OCH(CH3)CH2)x(OCH2CH2)y]−OH
なお、一般式(1)中、nは8以上16以下の整数を示し、xは1以上8以下の整数を示し、yは6以上20以下の整数を示す。
耐ブロッキング性の観点から、処理液全質量(100質量%)に対して、ポリアルキレングリコールエーテル構造を有する化合物Aの総含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。さらに、この化合物Aの総含有量は、0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
また、処理液による高速凝集反応の効果の観点から、処理液全質量に対して、インク高粘度化成分である有機酸の総含有量は、30質量%以上99質量%以下が好ましく、40質量%以上70質量%以下がより好ましい。
さらに、本発明に係る効果を考慮すると、有機酸/化合物Aの比率(質量比率)は、5以上200以下であることが好ましく、8以上170以下であることがより好ましい。また、処理液には、有機酸と化合物Aとの組み合わせに加えて、更に、上述した多価金属塩等の他のインク高粘度化成分を含有させることもできる。
・溶媒(又は分散媒)
上述したように、本発明に係る処理液は、適量の水や有機溶剤等の溶媒を含有させても良い。溶媒としては、例えば、水、あるいは、水と有機溶剤(例えば水溶性有機溶剤)との混合溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、具体的には、以下の溶剤等が好適に用いられる。1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルカンジオール類。ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル類。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1以上4以下のアルキルアルコール類。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−イミダゾリジノンなどのカルボン酸アミド類、尿素誘導体類。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン、又は、ケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルキレングリコール類。グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリンエチレングリコール付加誘導体、グリセリンプロピレングリコール付加誘導体、などの多価アルコール類。チオジグリコール、ビスヒドロキシエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、などの含硫黄化合物など。また、有機溶剤は、1種を単独で用いても良いし、2種類以上を選択して混合して用いても良い。しかしながら、ある種の溶剤は、処理液とインクに対して影響を及ぼす場合があるので注意を要することは言うまでもない。
複数の水酸基を有し且つSP値が22.6以上30未満の有機溶剤は、親水性と疎水性を併せもつため、以下の性質を有すると推察している。つまり、これらの有機溶剤は、紙繊維に濡れやすく且つ水分を吸収しやすいため、酸による劣化が進行しやすく、黄変等の紙劣化を助長するのではないかと推察している。
一方で、1つのみ水酸基を有し且つSP値が23以下の有機溶剤は、紙繊維に濡れやすいが、水酸基を紙繊維側に、疎水部を表面側に向けて配向するため、水分を吸収し難くなり、結果的に、紙劣化し難くなるのではないかと推察している。また、多価アルコールであっても、有機溶剤のSP値が30以上であると、親水性が高く、紙繊維に濡れにくくなり、むしろ有機酸の中に有機溶剤が取り込まれるため、紙の劣化に寄与しないのではないかと推察している。
また、処理液は、上述した化合物Aとは別の界面活性剤を更に加えて、その表面張力を適宜調整して用いることができる。この界面活性剤としては、イオン性、非イオン性、カチオン性、アニオン性等の公知の物を必要に応じて適宜選択し使用することができる。但し、ある種の界面活性剤は処理液とインクに対して影響を及ぼし、画像形成に影響を及ぼす場合があるので注意を有することは言うまでもない。
また、処理液は、水素イオン濃度(pH)調整のために中和剤を添加してもよい。この中和剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
また、処理液は、必要に応じて所望の性質を持たせるため、上記の成分の他に、消泡剤、防腐剤、防黴剤などを適宜添加することができる。
本発明に用いるインクは、例えば、色材(例えば、染料または顔料)を含有するアニオン性インクであることができる。インクは、この他に、樹脂粒子及び顔料分散剤を含むことができ、更に、必要に応じて、水溶性樹脂、界面活性剤、及びpH調整剤、並びに、適量の水や有機溶剤などの他の成分を含むことができる。ここで、インク安定性の観点から、インクは、色材としてアニオン性染料またはアニオン性顔料分散体を含むことが好ましい。
なお、アニオン性顔料分散体を含むインクは、アニオン性の官能基(例えば、カルボキシル基)を有する顔料分散剤、及び、アニオン性の官能基を有する自己分散性顔料の少なくとも一方を含むインクであることができる。
本発明において、「樹脂粒子」とは、粒径を有する状態で分散媒中に分散して存在することができる樹脂を意味する。本発明において、樹脂粒子の50%累積体積平均粒径(D50)は、インクジェット吐出性の観点から、10nm以上1,000nm以下であることが好ましく、40nm以上500nm以下であることがより好ましい。なお、本発明において樹脂粒子のD50は、以下の方法で測定することができる。即ち、測定対象の樹脂粒子を純水で50倍(体積基準)に希釈し、UPA−EX150(商品名、日機装製)を使用して、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5の測定条件で測定する。
アクリル樹脂粒子に使用可能なモノマーとしては具体的に、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、アンゲリカ酸、イタコン酸、フマル酸などのα,β−不飽和カルボン酸及びその塩;エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノブチル、イタコン酸ジメチルなどのα,β−不飽和カルボン酸のエステル化合物;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、マレイン酸モノアミド、クロトン酸メチルアミドなどのα,β−不飽和カルボン酸のアルキルアミド化合物;スチレン、α−メチルスチレン、フェニル酢酸ビニル、ベンジル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのアリール基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物;エチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートなどの多官能アルコールのエステル化合物などが挙げられる。なお、例えば、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸及びアクリル酸のいずれか一方、又は、両方を意味する。
ウレタン樹脂粒子は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であるポリイソシアネートと、2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物であるポリオール化合物を反応させて合成する樹脂粒子である。ウレタン樹脂粒子としては、上記樹脂粒子の条件を満たすものであれば、公知のポリイソシアネート化合物と公知のポリオール化合物とを反応させて得られるウレタン樹脂粒子をいずれも用いることができる。
樹脂粒子の構造としては、単層構造の樹脂粒子と、コアシェル構造などの複層構造の樹脂粒子とが挙げられる。本発明においては、複層構造の樹脂粒子を用いることが好ましい。特に、コアシェル構造を有する樹脂粒子を用いることがより好ましい。樹脂粒子がコアシェル構造を有することで、コア部分とシェル部分とで明確に機能分離される。このようなコアシェル構造を有する樹脂粒子は、単層構造の樹脂粒子と比較して、より多くの機能をインクに付与することができるという利点がある。即ち、樹脂粒子としては、コアシェル型アクリル樹脂粒子及びコアシェル型ウレタン樹脂粒子の少なくとも一方を用いることが好ましい。
インクは、色材として顔料を含むことが好ましい。本発明に用いることのできる顔料としては、特に限定されず、公知の黒色顔料や、公知の有機顔料を用いることができる。具体的には、C.I.(カラーインデックス)ナンバーで表される顔料を用いることができる。また、黒色顔料としては、隠ぺい性の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。なお、後述する顔料分散剤を用いずに、顔料自体を表面改質して分散可能とした、所謂自己分散性顔料を用いることも本発明において好適である。自己分散性顔料としては、例えば、アニオン性の官能基を有する自己分散性顔料が挙げられ、アニオン性の官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などを挙げることができる。
インク中の顔料の含有量は、着色性の観点から、インク全質量に対して0.2質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましい。
顔料を分散させる顔料分散剤としては、従来公知のインクジェット記録方法に用いられるものであれば、いずれのものも使用することができる。しかしながら、顔料への吸着と顔料分散性の観点から、化学構造中に、親水性部と疎水性部とを併せ持つ水溶性の顔料分散剤を用いることが好ましい。特に、少なくとも、親水性のモノマーと疎水性のモノマーとを用いて得られる共重合体(樹脂)からなる顔料分散剤を好ましく用いることができる。ここで用いる各モノマーについては特に制限はなく、従来公知のものが好適に用いられる。具体的には、疎水性モノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、親水性モノマーとしては、アニオン性の官能基(例えば、カルボキシル基)を有する、アクリル酸、メタクリル酸、及び、マレイン酸等が挙げられる。
上述したように、インクは、上記成分以外にも、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂、水溶性樹脂の中和剤、塩などの、種々の添加剤を含有してもよい。また、インクは、必要に応じて界面活性剤を加えてインクの表面張力を適宜調整して用いることも好ましい。界面活性剤としては、インクの保存安定性等を低下させる影響を及ぼさないものであれば良く、特に限定されない。界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール類、アセチレングリコール類等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤として、これらの中から、2種以上を適宜選択して使用することもできる。更に、インクには、水や有機溶剤(例えば、グリセリンなど)を含むことができる。
本発明のインクジェット記録方法に用いることのできる記録媒体は、特に限定されない。記録媒体としては、例えば、通常のインクジェット印刷が可能なインクジェット記録方法の分野や電子写真の分野、インクジェット印刷適性の無い、例えばオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の印刷の分野で公知のものを適宜用いることができる。より具体的には、記録媒体として、例えば、オフセット印刷用紙の難吸収性媒体としてキャストコート紙、コート紙、吸収媒体として上質紙等を挙げることができる。
また、記録媒体は中間転写体であってもよい。記録媒体として中間転写体を用いた場合、本発明のインクジェット記録方法において、中間転写体上には、後述の処理液付与工程及びインク付与工程によって画像(「中間画像」とも称する)が形成される。そして、その中間画像が、第一の記録媒体である中間転写体から、紙などの第二の記録媒体に転写されることで画像が形成される。
本発明のインクジェット記録方法(画像形成方法)は、特定の処理液を記録媒体上に付与する工程(処理液付与工程)と、インクを記録媒体上に付与する工程(インク付与工程)とを有する。これにより、記録媒体表面において、処理液とインクとを互いに接触させ、記録媒体上に画像を形成する。なお、この処理液及びインクには、上述した処理液とインクとのセットを用いることができる。また、本発明では、処理液付与工程の後に処理液が記録媒体表面に留まった状態でインク付与工程を行っても良いし、処理液付与工程とインク付与工程とを並行して(同時に)行っても良いし、インク付与工程の直後(インクが乾燥する前)に処理液付与工程を行っても良い。しかしながら、インク付与工程後に処理液付与工程を行う場合には、記録媒体上でインクドットが重なる前に処理液が付与されることが好ましい。なお、本発明では、これらの工程(処理液付与工程及びインク付与工程)を複数回行っても良いし、上述した複数の組み合わせを組み合わせても良い。例えば、記録媒体上に、処理液と、インクとを順次付与した後に、更に、処理液を付与し、インクの凝集をより確実に行っても良い。しかしながら、本発明の目的に鑑みれば、インクジェット記録方法において、処理液付与工程の後にインク付与工程を行う操作を少なくとも含むことが好ましい。
処理液付与工程では、上述したインク高粘度化成分及び化合物Aを含む処理液を、記録媒体に付与する。処理液の付与方法としては、例えば、インクジェット方式の記録ヘッドから処理液を吐出させて記録媒体に付与する方法や、ローラーなどで処理液を記録媒体に塗布する方法などを用いることができる。なお、処理液は、記録媒体において、少なくともインクが付与される部分に付与すれば良いが、他の部分に付与しても良く、例えば記録媒体の片面(インクを付与する面)全面に処理液を付与することができる。
インク付与工程では、上述したインクを、記録媒体(例えば上記処理液が付与された記録媒体)に付与する。この際、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出させて記録媒体に付与する方法を用いることができる。インクは、前記処理液を付与した領域と少なくとも一部が重複するように付与される。
本発明では、処理液付与工程後にインク付与工程を設け、インク付与前後に記録媒体を加熱することが好ましい。具体的には、記録媒体に処理液を付与した直後からインクを付与するまでの間に、記録媒体(上の処理液)を、好ましくは30℃以上80℃以下、より好ましくは40℃以上60℃以下に加熱する。さらに、記録媒体にインクを付与した直後に、記録媒体を、好ましくは30℃以上80℃以下、より好ましくは40℃以上60℃以下に加熱する。これらの加熱工程を行うことにより、凝集速度が向上することで、さらに良好な画像を形成できる。
本発明においては、高速印刷に対応するために、インク付与工程後に、インクが付与された記録媒体を乾燥する乾燥工程を設けることが好ましい。記録媒体を乾燥する際には、以下の手段(方法)を用いることができる。ヒータ等の公知の加熱手段;ドライヤ等の送風を利用した送風手段;記録媒体上の余剰の液体成分を他の媒体等へ転写、吸引などする方法;これらを組み合わせる方法。なお、上述した加熱工程が乾燥工程を兼ねても良い。乾燥温度としては、例えば、30℃以上220℃以下とすることができる。
本発明においては、耐擦性や耐ブロッキング性などの画像堅牢性を付与するために、また、光沢写真画質が必要な場合に光沢性を付与するために、乾燥工程の後に、インクで構成される画像を記録媒体に定着させる定着工程を設けることが好ましい。画像を記録媒体に定着させる方法としては、加熱手段及び加圧手段のいずれか一方又は両方を用いることができる。しかしながら、定着方法として、加熱手段と共に加圧手段を用いることが好ましい。加圧手段を併用することにより、加圧操作により熱伝導性が上がり、また、記録媒体への画像の密着性もより向上する。
本発明のインクジェット記録方法を行うための装置は、特に限定されないが、例えば、インクジェット記録装置や、インクジェット記録装置に処理液の塗布機構を設けたものが挙げられ、インクジェット記録方法の分野で公知の装置をいずれも採用することができる。インクジェット記録装置に搭載される記録ヘッドには、力学的エネルギーや熱エネルギーの作用により液体を吐出させる方式の記録ヘッドがある。本発明においては、高密度記録の観点から、特に、熱エネルギーの作用により液体を吐出させる方式の記録ヘッドを用いることが好ましい。また、本発明のインクジェット記録装置は、中間転写体を有する転写型のインクジェット記録装置であってもよい。
(処理液の調製)
まず、下記表1に組成を示す処理液1を調製した。なお、この処理液1の合計質量は100gになるようにした。実施例1では、特定の化合物Aとして、アデカ社製、商品名:アデカトールLB103(前記一般式(1)中のnが12、xが3、yが10である化合物)を用いた。この化合物Aの1質量%濃度水溶液の曇点は60℃であった。なお、処理液1中の有機酸の含有量は、この化合物Aの含有量に対し、質量比(有機酸/化合物A)で40倍であった。
以下の原料を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを200部充填し、水冷しつつ、5時間分散処理を行い、分散液を得た。
・原料
顔料[カーボンブラック(商品名:モナク1100、キャボット社製)] 10部
樹脂水溶液(顔料分散剤) 15部
(樹脂:スチレン−アクリル酸エチル−アクリル酸共重合体、酸価:150mgKOH/g、重量平均分子量:8,000、固形分20質量%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)、
純水 75部
次に、この分散液を遠心分離機にかけて粗大粒子を除去した後、顔料濃度が10質量%のブラック顔料分散液を得た。なお、このブラック顔料分散液は、後述するブラックインクの顔料分散液として用いた。
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3を用いた以外はブラック顔料分散液と同様に調製し、顔料濃度が10質量%のシアン顔料分散液を得た。なお、このシアン顔料分散液は、後述するシアンインクの顔料分散液として用いた。
水溶性樹脂液1として、[水溶性樹脂:スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、酸価:121mgKOH/g、重量平均分子量:7,000、固形分20質量%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム]を用意した。
メチルメタクリレート18部、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2部、n−ヘキサデカン2部を混合し、0.5時間攪拌した。この混合物を、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体(酸価:130mgKOH/g、重量平均分子量:7,000)の6質量%濃度水溶液78部に滴下して、0.5時間攪拌した。次に、得られた混合液に、超音波照射機で超音波を3時間照射した。続いて、窒素雰囲気下、80℃で4時間重合反応を行い、室温(25℃)まで冷却後にろ過して、樹脂の含有量が40.0質量%である樹脂粒子分散体1を調製した。樹脂粒子の重量平均分子量は250,000、平均粒径(D50)は200nmであった。また、MFTを観察したところ80℃であった。
下記表2の組成からなるインクをそれぞれ調製した。具体的には、下記表2の成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過することにより調製した。
図1に示す画像形成装置を用いて印刷を行い、記録媒体上に画像を形成した。具体的には、記録媒体1として、王子製紙製のキャストコート紙(商品名:ミラーコート)を用意した。次いで、この記録媒体上に、処理液塗布装置であるローラー4を用いて、処理液を塗布した。続いて、処理液を塗布した記録媒体上に、インクジェットデバイス5(ノズル配列密度:1200dpi、吐出量:4pl)にて、上記シアンインク及びブラックインクを用いて、所望のパターンを有する画像を形成した。なお、処理液は、記録媒体1の片面全面に塗布し、各インクは、その処理液が塗布された面(記録媒体の記録面)に付与した。その際、処理液の塗布直後から、加熱ヒータ2を用いて、記録媒体1を50℃に加熱した。また、画像を形成する際、第一の着弾インクをシアンインク、第二の着弾インクをブラックインクとし、各インク間の着弾時間差は70msecとした。なお、記録媒体の搬送ステージ3における搬送速度は1.0m/secであった。
印刷画像形成直後に、加熱乾燥装置6による90℃の温風で、得られた記録媒体に対して、4秒間乾燥処理を施した。さらに、乾燥処理後の記録媒体を、120℃に加熱された一対の定着ローラー7の間に通過させ、ニップ圧0.4MPaにて定着処理を施し、印刷物を得た。なお、この定着ローラーとしては、内部に加熱ヒータを備えたアルミニウム製の円筒体の表面に2mm厚、デュロメーターD硬さ20のシリコーンゴムで被覆された加熱ロールと、この加熱ロールに圧接する対向ロールとで構成されたものを用いた。
(1)画質評価
得られた印刷物に対して、光学顕微鏡で滲みの有無と、文字品位の鮮明さを観察し、以下の基準に基づき画像品質の評価を行った。なお、文字品位については、記録媒体上に形成された画像(3ポイントの文字画像)を用いて評価を行った。
・評価基準
AA:滲みが無く、文字品位が鮮明。
A:滲みが少なく、文字が明確に判別できる。
B:滲みがややあり、文字がやや判別しづらい。
C:滲みが有り、文字が判別できない。
画質評価では、3ポイントの文字が判別できるBレベル以上を高画質と判断した。
得られた印刷物の未描画部(処理液のみが付与された記録媒体の表面部分)におけるブロッキング評価を下記の条件で行った。具体的には、得られた印刷物を2部、温度23℃、相対湿度50%の環境で、30分間放置した。続いて、これらの印刷物の処理液が付与された未描画部の面同士が接触するように、2部の印刷物を重ねた。そして、これらの印刷物の上に、128g/m2の紙を500枚積層する条件を想定して、64kg/m2の荷重をかけ、上記環境下で24時間放置した。放置後、重なり合う印刷物(サンプル)の状態を観察し、下記の基準に基づき評価した。
・評価基準
0:サンプル同士が全くくっつき合わない。
−1:サンプル同士は触るだけで分離する。
−2:逆さにしてもサンプル同士は分離しないが、上サンプルを固定して振ることで簡単に分離する。
−3:サンプル同士が振っても分離しないが、静かに剥がすことができる。
−4:サンプル同士が分離しにくく、剥がす時に音がする。
−5:処理液やインクの塗布面が裏移りしたり、用いた記録媒体の基材(紙や塗工層)が剥がれたりする。
処理液1の調製に用いる有機溶剤を1,5−ペンタンジオールに換えた以外は実施例1と同様な方法で、下記表3に組成を示す処理液2を調製した。
処理液1において、上述した特定の化合物Aを添加せず、水の含有率を50質量%に変更した以外は実施例1と同様な方法で、下記表4に組成を示す処理液3を調製した。
処理液1において、上述した特定の化合物Aの代わりに、水酸基を2つ有するノニオン性界面活性剤アセチレノールE100(商品名、川研ファインケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様な方法で、下記表5に組成を示す処理液4を調製した。
処理液1に用いた特定の化合物Aを、前記一般式(1)中のn、x及びyが下記表6に示す値である化合物(化合物A)に変更した以外は、実施例1と同様な方法で処理液5〜11を調製した。なお、処理液5〜11に用いたこれらの化合物はいずれも、1質量%濃度水溶液における曇点が50℃以上であった。
さらに、処理液1に用いた特定の化合物Aを、前記一般式(1)中のn、x及びyが下記表6に示す値である化合物(化合物A)に変更した以外は、実施例1と同様な方法で処理液12及び13を調製した。なお、処理液12及び13に用いたこれらの化合物はいずれも、1質量%濃度水溶液における曇点が50℃未満であった。
次に、各々の処理液を用いた以外は実施例1と同様にして印刷物を作製し、得られた各印刷物に対して画質評価とブロッキング評価を行った。各実施例及び各比較例に用いた処理液No.、並びに、評価結果を表6に示す。
処理液1中の特定の化合物Aの含有率を変更し、それに伴い、処理液全体が100質量%になるように水の含有率を変更した以外は、実施例1と同様な方法で処理液14〜18を調製した。次に、各々の処理液を用いた以外は実施例1と同様にして印刷物を作製し、得られた各印刷物に対して画質評価とブロッキング評価を行った。下記表7に、各実施例に用いた処理液No.、各処理液中の特定の化合物A及び水の含有率(質量%)、処理液中の特定の化合物Aに対する有機酸(クエン酸)の質量比、並びに、評価結果を示す。
下記表8に示す組成の処理液19〜23を実施例1と同様の方法で調製した。
下記表10に示す組成の処理液24〜27を実施例1と同様の方法で調製した。
下記表12に示す組成の処理液28〜31を実施例1と同様の方法で調製した。
2 加熱ヒータ
3 搬送ステージ
4 処理液塗布装置
5 インクジェットデバイス
6 加熱乾燥装置
7 定着ローラー
Claims (14)
- インクを高粘度化する成分と、
ポリアルキレングリコールエーテル構造を有し、且つ、水酸基を1つのみ有する下記一般式(1)で表される化合物Aと
一般式(1)
C n H 2n+1 −[(OCH(CH 3 )CH 2 ) x (OCH 2 CH 2 ) y ]−OH
(一般式(1)中、nは8以上16以下の整数を示し、xは1以上8以下の整数を示し、
yは6以上20以下の整数を示す)。
を含有する処理液を、記録媒体上に付与する工程、及び、
インクを、記録媒体上に付与する工程、
を有し、
該化合物Aの1質量%濃度水溶液を用いて測定した曇点が50℃以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。 - さらに、前記記録媒体上に付与されたインクを乾燥する工程を有する請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- さらに、前記記録媒体上に付与されたインクを定着する工程を有する請求項1または2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクを高粘度化する成分は、多価金属塩、カチオン性ポリマー、及び有機酸からなる群から選択される少なくとも1つである請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理液は、前記化合物Aを前記処理液全質量に対して0.1質量%以上10質量%以下、前記インクを高粘度化する成分としての有機酸を前記処理液全質量に対して30質量%以上99質量%以下で含む請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理液は、さらに多価金属塩を前記処理液全質量に対して2質量%以上90質量%以下で含む請求項5に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理液は、さらに水と有機溶剤を含む請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記有機溶剤は、水酸基を有さない水溶性有機溶剤、1つのみ水酸基を有し且つSP値が23以下の有機溶剤及びSP値が30以上の多価アルコールから選択される請求項7に記載のインクジェット記録方法。
- 前記処理液を記録媒体上に付与する工程の後、前記処理液が前記記録媒体上に留まった状態で前記インクを記録媒体上に付与する工程を行う、請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクを記録媒体上に付与する工程の後に、前記インクが乾燥する前に前記処理液を記録媒体上に付与する工程を行う、請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記化合物Aの1質量%濃度水溶液を用いて測定した曇点が50℃以上100℃以下である請求項1から10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクは、色材を含有する請求項1から11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記色材が顔料である請求項12に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクはアクリル樹脂粒子またはウレタン樹脂粒子からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1から13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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