JP5734938B2 - 画像形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像形成方法に関する。
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術が知られている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。
インクジェット技術に用いられるインク(インク組成物)としては、顔料を含むインク(顔料インク)が広く用いられている。
顔料インクでは、顔料の表面を種々の方法で修飾したり、顔料の物性を制御することが試みられている。例えば、カーボンブラック、高分子分散剤、水溶性溶剤及び水を主成分とする水系顔料インクにおいて、カーボンブラックの揮発分を9〜25重量%とすることで、高温下での長期保存安定性を向上し、水系顔料インクをインクジェット記録用インクとして用いた場合のフェザリングを防止して印字品質を向上することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、インクジェットインクを、インクジェットヘッドから吐出する際に、インクの吐出性が安定するために、種々の画像形成方法が検討されている。例えば、インクの吐出性を良好にするために、インクジェットヘッド表面に撥水膜を設けることが知られている。しかし、インクの使用状況によっては、撥水膜が劣化して、インクの吐出安定性を維持することができなくなることがあった。
これに対して、インク吐出口面にフッ素系樹脂からなる撥水膜を有する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を用いて印刷しても、インク吐出口面の撥水機能を低下せず、かつ優れた印字濃度を得るために、(1)インク吐出口面にフッ素系樹脂層からなる撥水膜を有する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置用の水系インクであって、チャンネルブラックを含有する架橋ポリマー粒子を含み、かつチャンネルブラックのDBP給油量が120〜180ml/100gである、インクジェット記録用水系インク、及び(2)その水系インクを用いて、インクジェット記録をすることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−60328号公報 特開2010−126602号公報
本発明は、インクジェットヘッド表面に設けられた撥液膜の劣化を防止する画像形成方法を提供することを課題とする。
本発明が解決しようとする課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面に存在する酸素原子数と炭素原子数との割合〔(O/C)×100%原子数比〕が5%以上である酸化処理されたカーボンブラック顔料と、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が10個以上16個以下である水溶性ノニオン性化合物と、水とを含有するインク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出するインク吐出工程を有する画像形成方法である。
<2> インク組成物が、さらに(メタ)アクリルエステル化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性化合物を含有する<1>に記載の画像形成方法である。
<3> インクジェットヘッドは、複数の吐出孔が二次元に配列されたノズルプレートを備え、ノズルプレートの吐出面に撥液膜が形成されている<1>または<2>に記載の画像形成方法である。
<4> 撥液膜が、少なくともフッ素化合物を含む<1>〜<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<5> フッ素化合物が、酸素原子を含む<4>に記載の画像形成方法である。
<6> さらに、インク組成物の吐出後、撥液膜に付着したインク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物を拭き取るメンテナンス工程を有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
本発明によれば、インクジェットヘッド表面に設けられた撥液膜の劣化を防止する画像形成方法を提供することができる。
インクジェットヘッドの内部構造の一例を示す概略断面図である。 ノズルプレートの吐出孔配列の一例を示す概略図である。
<<画像形成方法>>
本発明の画像形成方法は、平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面が5原子%以上の酸素量である酸化処理されたカーボンブラック顔料(以下、「特定酸化処理顔料」ともいう)と、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下である水溶性ノニオン性化合物(以下、「特定化合物」ともいう)と、水とを含有するインク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出するインク吐出工程を有する。
本発明の画像形成方法は、撥液膜に付着したインク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物を拭き取るメンテナンス工程等、必要に応じて他の工程を有していてもよい。
顔料としてカーボンブラック顔料を用いた場合でも、カーボンブラック顔料が特定酸化処理顔料であり、インク組成物が、特定酸化処理顔料と特定化合物と水とを含有することで、インクジェットヘッド表面の撥液膜の劣化を防止することができる。
特許文献2に、チャンネルブラックを用いることで、インクの付着したインクジェットヘッドの撥水膜をワイピング処理操作する際に、インク中の粒子に応力が集中しても、凝集体が解れて応力を弱め、撥水膜を摩耗させにくくすることが記載されている(特許文献2の段落番号[0011])。
しかし、凝集体が解れて応力を弱めても、カーボンブラックが撥水膜に直接接触すると、撥水膜の摩耗を十分に防ぐことができないことがわかった。
カーボンブラック顔料は、表面が酸化処理されることで、酸化処理がなされていないカーボンブラック顔料に比べ、研磨性を弱めることができる。しかし、それでも、カーボンブラックが直接、撥液膜に接触すると、撥液膜を傷つけ、劣化させることがある。
また、顔料は、インク組成物中の分散性安定性を得るために、表面が樹脂被覆されることがある。カーボンブラック顔料が樹脂被覆されていると、樹脂の存在により、カーボンブラック顔料の撥液膜への直接の接触が抑制されることもある。
しかし、カーボンブラック顔料は、一般に、一次粒子が凝集した二次粒子となって、インク組成物に存在していると考えられる。顔料を被覆する樹脂は、通常、カーボンブラック顔料の二次粒子表面に吸着していると考えられる。かかる状況下において、インクジェットヘッドから吐出されたインク組成物がヘッドの吐出口付近に付着すると、撥液膜に付着したインク組成物を拭き取った際に、カーボンブラック顔料の二次粒子が崩れる可能性がある。二次粒子が崩れると、樹脂被覆されていないカーボンブラック顔料の一次粒子が露出し易くなると考えられる。樹脂が被覆されていないカーボンブラック顔料は、表面が酸化処理されていても、研磨性を有すると考えられるため、インクジェットヘッド表面の撥液膜は、削れ易くなると考えられる。
これに対し、本発明におけるインク組成物に含まれるカーボンブラック顔料は、平均一次粒子径が磨耗性の低い25nm以下である。また、本発明におけるカーボンブラック顔料は、表面が酸化処理されて、酸素量が5原子%以上となっているため、研磨性が抑制されていると考えられる。さらに、本発明におけるインク組成物は、特定化合物を含有している。
特定化合物は、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下である水溶性ノニオン性化合物である。特定酸化処理顔料は、既述のように、表面が酸化処理されて、表面の酸素量が5原子%以上である顔料であり、顔料表面に酸素原子を有する。特定化合物が有するエチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方は、特定酸化処理顔料の酸素原子に吸着すると考えられる。
ここで、特定化合物における「エチレンオキシ鎖」は、「−CHCHO−」で表され、以下、「EO」とも表す。「プロピレンオキシ鎖」は、「−CO−」で表され、以下、「PO」とも表す。
特定化合物における「エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下」とは、EOの数mと、POの数nとの和「m+n」が、「3≦m+n≦25」であることを意味する。
3≦m+nとなる量でエチレンオキシ鎖またはプロピレンオキシ鎖を含有することで、特定化合物の、特定酸化処理顔料への吸着性が高くなる。また、m+n≦25であることで、特定化合物が小回りの効く低分子でいられるため、特定化合物がインク組成物中で機敏に動き、特定酸化処理顔料に素早く吸着することができると考えられる。
そのため、インク組成物中の特定酸化処理顔料は、少なくとも、特定化合物で覆われ、露出し難くなると考えら得る。
また、特定酸化処理顔料の二次粒子が樹脂で被覆されているときに、撥液膜の拭き取り等の外的負荷で崩れた場合にも、素早く特定化合物が吸着し、樹脂被覆されていない特定酸化処理顔料が露出しにくくなると考えられる。
その結果、本発明におけるインク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出しても、カーボンブラック顔料に起因する撥液膜の劣化を防止することができると考えられる。
近年、画像の画質を上げ、画像形成の効率を早めるために、インクジェットヘッドが、複数の吐出孔が二次元に配列されたノズルプレートを備え、ノズルプレートの吐出面に撥液膜が形成されているインクジェット装置を用いて画像形成されるようになってきている。
ノズルプレートは、インクジェットヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式で用いられる短尺のシリアルヘッドに比べ、撥液膜の形成面積が大きい。そのため、インク組成物中のカーボンブラック顔料が研磨性を有していると、撥液膜の劣化も大きくなり易い。
しかし、本発明の画像形成方法により、インク組成物を吐出すれば、ノズルプレートを用いたインクジェット記録においても、撥液膜の劣化を防止することができる。
また、一般に、上述のノズルプレートを用いた画像形成(特に、シングルパス方式による画像形成)では、画像形成の速度が上がる結果、画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度も速くなる傾向がある。画像が形成された記録媒体同士が積み重ねられる速度が速くなると、記録媒体上に形成された画像と該画像の上に積まれた別の記録媒体とが接着して画像が損傷を受ける現象が生じやすくなる。この現象は、ブロッキングと呼ばれている。
ブロッキングは、インクの吐出精度が悪い場合(即ち、画像中に、意図しないインクドットの重なりが生じ、局所的にインク量が多い部位が生じている場合)に現れる傾向がある。特に、メンテナンスによって撥液膜が劣化したヘッドを使用した場合、吐出精度が低下しやすいため、ブロッキングが発生しやすい傾向がある。
これに対し、本発明の画像形成方法では、メンテナンスによる撥液膜の劣化の程度を低減できる顔料分散物を含むインク組成物を用いることにより、上記ブロッキングが抑制される(即ち、耐ブロッキング性が向上する)。
このブロッキングが抑制される理由は明らかではないが、平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面が5原子%以上の酸素量である酸化処理されたカーボンブラック顔料(特定酸化処理顔料)と、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下である水溶性ノニオン性化合物(特定化合物)と、水とを含有するインク組成物を使用することで、インクの吐出精度が向上し、意図しないインクドットの重なりが抑制されるためと推測される。
以下、本発明の画像形成方法の詳細について説明する。
<インク吐出工程>
本発明において、インク吐出工程は、本発明におけるインク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出する。
まず、本発明におけるインク組成物の詳細を説明する。
〔インク組成物〕
本発明の画像形成方法で用いるインク組成物は、平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面が5原子%以上の酸素量である酸化処理されたカーボンブラック顔料と、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下である水溶性ノニオン性化合物と、水とを含有する。インク組成物は、必要に応じて、さらに重合性化合物、重合開始剤等を含んでいてもよい。また、インク組成物を、単に「インク」と称することもある。
(特定化合物)
本発明におけるインク組成物は、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下である水溶性ノニオン性化合物(特定化合物)の少なくとも一種を含有する。
既述のとおり、「エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計が3個以上25個以下」とは、EOの数mと、POの数nとの和「m+n」が、「3≦m+n≦25」であることを意味する。
なお、本発明において、プロピレンオキシ鎖(PO)は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。また、プロピレンオキシ鎖が複数のPOで構成される場合、POは同じであっても、異なっていてもよい。
エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の合計(m+n)は、特定酸化処理顔料への吸着性の観点から、3〜22であることが好ましく、3〜16であることがより好ましい。
特定化合物において、水溶性とは、25℃の水に対する特定化合物の溶解度が5質量%以上であることをいう。
特定化合物は、EOおよびPOの合計数が3個以上25個以下であり、水溶性であれば、特に制限されず、種々の化合物が用いられる。例えば、界面活性剤、重合性化合物等として機能する化合物であってもよい。後述する(メタ)アクリルエステル化合物または(メタ)アクリルアミド化合物のうち、EOおよびPOの合計数が3個以上25個以下である化合物を特定化合物として用いてもよい。特定化合物が界面活性剤として機能する場合、特定酸化処理顔料に特定化合物が吸着すると、特定化合物が、特定酸化処理顔料の滑り剤として作用し、特定酸化処理顔料の研磨性をより低下し易くなる。
(メタ)アクリルエステル化合物または(メタ)アクリルアミド化合物のうち、EOおよびPOの合計数が3個以上25個以下である化合物としては、(メタ)アクリルエステル化合物2、(メタ)アクリルエステル化合物4〜6、(メタ)アクリルアミド化合物の具体例である重合性化合物2、重合性化合物21〜23、重合性化合物25〜31が挙げられる。
後述する(メタ)アクリルエステル化合物および(メタ)アクリルアミド化合物以外の化合物としては、EOおよびPOの合計数が3個以上25個以下となるアセチレングリコール系界面活性剤が挙げられ、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、また、モノオクチルエーテルのEOおよびPOの付加物、モノデシルエーテルのEOおよびPO付加物、モノラウリルエーテルのEOおよびPO付加物、セシルエーテルのEOおよびPO付加物等、グリセリルエーテルのEOおよびPO付加物、ジグリセリルエーテルのEOおよびPO付加物、炭素数1〜4のアルキルエーテルのEOおよびPO付加物が挙げられる。具体的には、PEG(6.5)モノデシルエーテル等が挙げられる。
特定化合物は、市販品を用いてもよい。
例えば、日信化学工業社のオルフィンE1010、オルフィンE1020などのEシリーズ等を挙げることができる。
なお、オルフィンE1010は、EOおよびPOの合計数が10個であり、オルフィンE1020はEOおよびPOの合計数が20個である。
インク組成物は、特定化合物を、1種単独で含有していてもよいし、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
インク組成物における特定化合物の含有比率は、特に制限されないが、特定化合物の特定酸化処理顔料への吸着性の観点から、インク組成物の全質量に対し、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.3質量%〜3質量%であることがより好ましい。
(カーボンブラック顔料)
インク組成物は、特定酸化処理顔料の少なくとも一種を含有する。
特定酸化処理顔料は、平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面が5原子%以上の酸素量である酸化処理されたカーボンブラック顔料である。
カーボンブラック顔料が、平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面が酸化処理されて表面の酸素量が5原子%以上である特定酸化処理顔料であることで、インクジェットヘッド表面に設けられている撥液膜の研磨を抑制し易い。
以下、表面の酸素量を「表面酸素量」とも称する。
特定酸化処理顔料の平均一次粒子径は、日本電子(株)社製の透過型電子顕微鏡TEM2010(加圧電圧200kV)を用いて撮影された画像から、任意に選択した一次粒子1000個の粒子径(円相当径)を測定してその算術平均として算出される。
特定酸化処理顔料の平均一次粒子径は、25nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。また、特定酸化処理顔料の平均一次粒子径は、12nm以上であることが好ましい。特定酸化処理顔料の1次粒子径が12nm以上であると、顔料の分散適性を維持し易い。
特定酸化処理顔料において、「表面が5原子%以上の酸素量」とは、カーボンブラック顔料の粒子の表面(X線光電子分光法で検出可能な内部を含む。一般に、X線光電子分光法で検出可能な分析深さは3〜5nmである。)に存在する酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との割合〔(O/C)×100%原子数比〕を意味する。本発明では、酸素量は、X線光電子分光法(XPS;X−ray Photoelectron SpectroscopyまたはESCA;Electron Spectroscopy for Chemical Analysisとも称される)によって、炭素原子を基準として算出する。
特定酸化処理顔料の表面の酸素量は、7原子%以上であることが好ましく、10原子%以上であることがより好ましい。また、特定酸化処理顔料の分散適性の観点から、酸素量は15原子%以下であることが好ましく、13原子%以下であることがより好ましい。
カーボンブラック顔料の酸化処理方法は、酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料を酸化剤と接触させればよい。なお、酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料には、表面が酸化処理されておらず、酸素量が0原子%の未処理のカーボンブラック顔料も含む。
酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、硝酸類、次亜塩素酸類等が挙げられるが、不純物の残存の少ないオゾンや硝酸類が好適である。酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料をオゾンで酸化する場合、酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料とオゾン含有ガスとを常温で接触させるだけでよい。
また、次亜ハロゲン酸塩を用いて酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料を湿式酸化する方法もある。次亜ハロゲン酸塩の具体例には次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウムが挙げられ、反応性の点から次亜塩素酸ナトリウムが特に好ましい。
酸素量が5原子%未満のカーボンブラックの例としては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
具体例としては例えば、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000ULTRAII、Raven 3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190 ULTRAII、Raven1170、Raven1255、Raven1080、Raven1060、Raven700(以上、コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Black Pearls L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、 Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex35、Printex U、Printex V、Printex140U、Printex140V、NIPEX180−IQ、NIPEX170−IQ(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.45、No.47、No.52、No.900、No.2200B、No.2300、No.990、No.980、No.970、No.960、No.950、No.850、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等を挙げることができる。但し、これらに限定されるものではない。
酸素量が5原子%未満のカーボンブラック顔料は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
特定酸化処理顔料のpHは、分散性の観点から、酸性から中性付近の領域であることが好ましく、pH2.0〜pH8.5であることがより好ましく、pH2.5〜pH8.0であることが特に好ましい。
尚、特定酸化処理顔料のpHは、特定酸化処理顔料の水分散物のpH(25℃)として測定される。
特定酸化処理顔料のDBP吸収量は特に制限されないが、色調と印画濃度の観点から、30ml/100g以上200ml/100g以下であることが好ましく、50ml/100g以上150ml/100g以下であることがより好ましい。
尚、DBP吸収量は、JIS K6221 A法によって測定される。
また特定酸化処理顔料のBET比表面積は特に制限されないが、印画濃度と保存安定性の観点から、30m/g以上450m/g以下であることが好ましく、200m/g以上400m/g以下であることがより好ましい。
特定酸化処理顔料は、市販品を用いてもよい。
例えば、special black 6(表面酸素量11原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)、colour black FW200(表面酸素量12原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)、fuji jet black(表面酸素量12原子%、富士色素(株)製)、colour black FW182(表面酸素量12原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)等が挙げられる。
また、表面の酸素量が5原子%に満たないnipex160(表面酸素量2原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)、nipex170(表面酸素量3原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)等の製品をさらに酸化処理して、表面酸素量が5原子%以上となったカーボンブラック顔料を、特定酸化処理顔料として用いてもよい。
インク組成物は、特定酸化処理顔料を1種単独で含有していてもよいし、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
インク組成物における特定酸化処理顔料の含有比率は、特に制限されないが、撥液膜の劣化抑制、並びに画像の耐擦性および印画濃度の観点から、インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜4質量%であることが好ましく、0.8質量%〜2質量%であることがより好ましい。
−着色顔料−
インク組成物は、特定酸化処理顔料に加えて、マゼンタ顔料、シアン顔料およびイエロー顔料から選ばれる少なくとも1種の着色顔料を含んでいてもよい。
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド202、C.I.ピグメント・レッド209、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン顔料としては、例えばC.I.ピグメント・ブルー15:3、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー16等が挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー185等が挙げられる。
本発明において、特定酸化処理顔料および着色顔料の総量に対する着色顔料の含有比率(着色顔料/(特定酸化処理顔料+着色顔料))は特に制限されないが、画像の耐擦性、インクの吐出性の観点から、5質量%〜60質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。
(分散剤)
特定酸化処理顔料(さらに着色顔料を含む場合は、特定酸化処理顔料および着色顔料;なお、以下、両者を合せて「顔料」ということがある)は、分散剤によって水系媒体中に分散されていることが好ましい。分散剤としては、ポリマー分散剤、又は低分子の界面活性剤型分散剤のいずれでもよい。また、ポリマー分散剤は、水溶性の分散剤、又は非水溶性の分散剤のいずれでもよい。
低分子の界面活性剤型分散剤としては、通常用いられる低分子界面活性剤を特に制限なく用いることができる。
ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンアクリル酸等のホモポリマーや、他の親水基を有するモノマーとの共重合体などのように、カルボキシル基が導入された水溶性分散剤が親水性高分子化合物として好ましい。
ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性構成単位と親水性構成単位とを有する水不溶性樹脂を用いることができる。親水性構成単位としては、酸性基を有する構成単位であることが好ましく、カルボキシル基を有する構成単位であることがより好ましい。
水不溶性樹脂としては、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
より具体的には例えば、特開2005−41994号公報、特開2006−273891号公報、特開2009−084494号公報、特開2009−191134等に記載の水不溶性樹脂を本発明においても好適に用いることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を表し、「(メタ)アクリル酸エステル」(「(メタ)アクリレート」)はアクリル酸エステル(アクリレート)又はメタクリル酸エステル(メタクリレート)を表す。
ポリマー分散剤の重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000であり、更に好ましくは5,000〜40,000であり、特に好ましくは10,000〜40,000である。
ポリマー分散剤は、自己分散性、及び後述する処理液が接触したときの凝集速度の観点から、カルボキシル基を有する水不溶性樹脂を含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が100mgKOH/g以下の水不溶性樹脂であることが好ましく、25〜100mgKOH/gの水不溶性樹脂を含むことがより好ましい。特にインク組成物をインク組成物中の成分を凝集させる処理液(詳細は後述)と組み合わせて用いる場合には、カルボキシル基を有し、かつ酸価が25〜100mgKOH/gのポリマー分散剤が有効である。
顔料(p)と分散剤(s)との混合質量比(p:s)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:1の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:0.7である。
本発明においては、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤とが色材粒子を構成していることが好ましく、色材粒子が、顔料と酸性基を有する水不溶性樹脂とを含むことがより好ましく、顔料とカルボキシル基を有する水不溶性樹脂とを含むことが特に好ましい。
また、凝集性の観点から、特定酸化処理顔料及び着色顔料の少なくとも1種は、酸性基を有する水不溶性樹脂(ポリマー分散剤)に被覆された樹脂被覆顔料であることが好ましい。水不溶性樹脂とは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下である樹脂をいい、その溶解量が好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である。溶解量は、水不溶性樹脂の塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
樹脂被覆顔料は、具体的には例えば、
(i)顔料と、水溶性樹脂(分散剤)と、塩基性物質を含む水溶液と、水溶性樹脂を溶解または分散可能な有機溶剤とを混合し分散処理する工程(混合・水和工程)と、
(ii)有機溶剤の少なくとも一部を除く工程(溶剤除去工程)と、
を含む製造方法により製造することができる。
架橋された樹脂被覆顔料は、例えば、工程(i)と工程(ii)の間に、更に、
(iii)分散処理により得られた分散物に架橋剤を加えて加熱し、水溶性樹脂を架橋させる工程(架橋工程)と、
(iv)架橋後の分散物を精製して不純物を除去する工程(精製工程)と、
を含む製造方法により製造することができる。
工程(i)〜工程(iv)により、顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた顔料分散物を作製することができる。
具体的には例えば、特開2009−190379号公報に記載の方法によって顔料表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された顔料分散物を製造することができる。
分散状態での色材粒子の平均粒子径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、40〜150nmがさらに好ましい。平均粒子径は、200nm以下であると色再現性が良好になり、インクジェット法で打滴する際の打滴特性が良好になり、10nm以上であると耐光性が良好になる。また、色材粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ色材粒子を2種以上混合して使用してもよい。
ここで、分散状態での色材粒子の平均粒子径は、インク化した状態での平均粒子径を示すが、インク化する前段階のいわゆる濃縮インク分散物についても同様である。
なお、分散状態での色材粒子の平均粒子径の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定することにより求められるものである。
酸性基(好ましくはカルボキシル基)を有する水不溶性樹脂で被覆された顔料は、例えば、顔料、水不溶性樹脂(分散剤)、および必要に応じて溶媒(好ましくは、有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散処理することで得ることができる。
具体的には例えば、顔料と、水不溶性樹脂(分散剤)と水不溶性樹脂を溶解または分散可能な有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加えて分散処理する工程(混合・水和工程)と、有機溶剤の少なくとも一部を除く工程(溶剤除去工程)とを含む製造方法で、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された顔料分散物を製造することができる。これにより、顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた顔料分散物を作製することができる。
より具体的には例えば、特開平10−140065号公報等に記載の顔料分散物の製造方法によって顔料表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された顔料分散物を製造することができる。
あるいは「顔料表面の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された顔料分散物」を得る方法として、顔料を水溶性もしくは水不溶性の分散剤を用いて分散した後に、架橋剤を用いて分散剤を架橋することにより水溶性の分散剤を水不溶化して顔料分散物を作製する方法もまた好ましい。この方法は、架橋によって強固に顔料2次粒子の表面を分散剤樹脂で覆っていることに起因し、撥液膜の摩耗の観点でもより好ましい。
分散剤としてはポリビニル類、ポリウレタン類、ポリエステル類等が挙げられるが、その中でもポリビニル類が好ましい。
分散剤は、分子内に、架橋剤により架橋可能な官能基を有することが必要である。架橋可能な官能基としては、特に限定されず、カルボキシル基またはその塩、イソシアナート基、エポキシ基等が挙げられるが、分散性向上の観点からカルボキシル基またはその塩を有していることが好ましい。
分散剤としては、共重合成分としてカルボキシル基含有モノマーを用いて得られる共重合体であることが好ましい。カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、中でも、架橋性および分散安定性の観点から、(メタ)アクリル酸やβ−カルボキシエチルアクリレートが好ましい。尚、(メタ)アクリル酸はアクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
共重合成分は疎水性モノマーの少なくとも1種を含むことが好ましい。疎水性モノマーとしては、炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートやフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環基を有する(メタ)アクリレート、ならびに、スチレンおよびその誘導体等を挙げることができる。
分散剤は、共重合成分として、カルボキシル基含有モノマーと、炭素数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートおよび芳香環基を有する(メタ)アクリレートの少なくとも一方とを用いて得られる共重合体であることが好ましい。
分散剤としての共重合体の合成方法は特に限定されないが、ビニルモノマーのランダム重合が分散安定性の点で好ましい。
架橋前の分散剤の酸価は、顔料の分散性の観点から60〜250mgKOH/gが好ましく、65〜150mgKOH/gがさらに好ましい。
また架橋後の分散剤の酸価は25〜100mgKOH/gが、安定性、インク凝集性の観点で好ましい。
また架橋前の分散剤の重量平均分子量は特に制限されないが、顔料の分散性の観点から3,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜60,000であることがより好ましく、10,000〜50,000がさらに好ましい。
架橋剤は分散剤と反応する部位を2つ以上有している化合物であれば、特に限定されないが、中でもカルボキシル基との反応性に優れている点から、好ましくは2つ以上のエポキシ基を有している化合物(2官能以上のエポキシ化合物)である。
具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルが好ましい。
架橋剤としては市販品を用いることもできる。
市販品としては、例えば、Denacol EX−321、EX−821、EX−830、EX−850、EX−851〔以上、ナガセケムテックス(株)製〕等を用いることができる。
架橋剤の架橋部位と分散剤の被架橋部位のモル比は、架橋反応速度、架橋後の分散液安定性の観点から、1:1.1〜1:10が好ましく、1:1.1〜1:5がより好ましく、1:1.1〜1:3が最も好ましい。
本発明において顔料としては、少なくとも特定酸化処理顔料が用いられ、必要に応じて着色顔料の少なくとも1種が用いられる。インク組成物が着色顔料をさらに含む場合、特定酸化処理顔料および着色顔料は、混合状態でのような分散処理されてもよく、また、それぞれ別々に分散処理されてもよい。
(水)
本発明におけるインク組成物は水を含む。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
インク組成物中の水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、インク組成物の安定性および吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全質量に対し、10質量%〜99質量%であことが好ましく、30質量%〜80質量%であることがより好ましく、50質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
(重合性化合物)
インク組成物は、画像形成により得られる画像の耐擦性を向上する観点から、重合性化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。
インク組成物が重合性化合物を含有することで、インク組成物は、活性エネルギー線(例えば、放射線もしくは光、又は電子線など)が照射されることにより重合し、硬化する。
また、本発明の画像形成方法で用いるインク組成物は、溶媒として水を含有するため、重合性化合物は、水溶性であることが好ましい。
ここで、重合性化合物が水溶性であるとは、25℃の水に対する重合性化合物の溶解度が5質量%以上であることをいい、25℃の水に対する重合性化合物の溶解度は10質量%以上であることが好ましい。また重合性化合物は、水性のインク組成物中に(望ましくは均一に)溶解し得るものであることが好ましい。また後述する水溶性有機溶剤を添加することにより溶解度が上昇してインク組成物中に(望ましくは均一に)溶解するものであってもよい。
重合性化合物としては、(メタ)アクリルエステル化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリルアミド化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。
−(メタ)アクリルエステル化合物−
(メタ)アクリルエステル化合物は、水溶性であって、分子内に(メタ)アクリルエステル基を有する重合性化合物であれば限定されない。
(メタ)アクリルエステル化合物は、下記一般式(M−1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(M−1)中、Qはi価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、iは1以上の整数を表す。
一般式(M−1)で表される化合物において、「[ ]」で囲われている基が(メタ)アクリルエステル基である。すなわち、一般式(M−1)で表される化合物は、分子内にi個の(メタ)アクリルエステル基を有する。
一般式(M−1)で表される化合物は、不飽和単量体がエステル結合により連結基Qに結合したものである。Rは、水素原子、またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数iに制限はないが、2以上であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
また、連結基Qは(メタ)アクリルエステル基な基であれば特に制限はないが、一般式(M−1)で表される化合物が前述の水溶性を満たすことを可能にするような連結基から選択されることが好ましい。具体的には以下の化合物群Xから1以上の水素原子またはヒドロキシル基が除去された残基を挙げることができる。
−化合物群X−
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール,2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、チオグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらの縮合体、低分子ポリビニルアルコール、または糖類などのポリオール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンジアミン、などのポリアミン類。
さらに連結基Qとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基等の炭素数4以下の置換又は無置換のアルキレン鎖、更にはピリジン環、イミダゾール環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などの飽和もしくは不飽和のヘテロ環を有する官能基などを例示することができる。
連結基Qとしては、これらの中でも、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を含むポリオール類の残基であることが好ましく、オキシアルキレン基(好ましくは、オキシエチレン基)を3以上含むポリオール類の残基であることが特に好ましい。
水溶性の(メタ)アクリルエステル化合物の具体例としては、例えば以下に示す(メタ)アクリルエステル化合物1〜6を挙げることができるが、本願はこれに限定されない。

また、(メタ)アクリルエステル化合物としては、ポリオール化合物から誘導される1分子中に2以上のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルも用いることができる。ポリオール化合物としては、例えば、グリコール類の縮合物、オリゴエーテル、オリゴエステル類等や、単糖類、2糖類などの2以上の水酸基を有するポリオール化合物が挙げられる。
またトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、トリスヒドロキシアミノエタン等との(メタ)アクリル酸エステル等も好適である。
さらに、水溶性の(メタ)アクリルエステル化合物(M−1)の具体例としては、例えば以下に示すカチオン性化合物を挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。

構造において、Rは、ポリオール化合物の残基を表す。また、Xは、H又はCHを表し、AはCl、HSO 又はCHCOOを表す。ポリオール化合物としては、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、脂環型ビスフェノールA及びこれらの縮合物等を挙げることができる。さらに、カチオン基を有する重合性化合物として以下の構造(カチオン性化合物1〜11)も挙げることができる。


−(メタ)アクリルアミド化合物−
(メタ)アクリルアミド化合物は、分子内に(メタ)アクリルアミド基を有する重合性化合物であれば限定されない。
(メタ)アクリルアミド化合物は、下記一般式(M−2)で表される化合物であることが好ましい。(メタ)アクリルアミド化合物が、式(M−2)の構造を有することで、後述する一般式(1)で表される化合物と重合性化合物との相溶性が向上し、硬化感度等を高めることが可能となるため好ましい。
一般式(M−2)中、Qはj価の連結基を表し、Rは水素原子またはメチル基を表す。また、jは1以上の整数を表す。
一般式(M−2)で表される化合物において、「[ ]」で囲われている基が(メタ)アクリルアミド基である。すなわち、一般式(M−2)で表される化合物は、分子内にj個の(メタ)アクリルアミド基を有する。
一般式(M−2)で表される化合物は不飽和単量体が、アミド結合により連結基Qに結合したものである。Rは、水素原子、またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。連結基Qの価数jに制限はないが、2以上であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
また、連結基Qは(メタ)アクリルアミド基と連結可能な基であれば特に制限はない。連結基Qの詳細は連結基Qと同様であり、好ましい態様も同様である。
水溶性の(メタ)アクリルアミド化合物の具体例としては、例えば以下に示す重合性化合物1〜重合性化合物32を挙げることができる。





重合性化合物以外にも、例えば、下記に代表されるマレイミド構造を有する化合物、スルファミド構造を有する化合物又はN−ビニルアセトアミド構造を有する化合物等も使用することができる。

重合性化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
重合性化合物のインク組成物中における含有量としては、インク組成物全質量に対して、3質量%〜50質量%が好ましく、10質量%〜30質量%がより好ましく、15質量%〜25質量%がさらに好ましい。
(重合開始剤)
インク組成物は、重合開始剤の少なくとも1種を含むが、重合開始剤は水溶性の重合開始剤の少なくとも1種であることが好ましい。ここで重合開始剤における水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。水溶性の重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
水溶性の重合開始剤としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物や、特開2005−307198号公報に記載の化合物等を挙げることができる。中でも、画像の耐擦性の観点から、下記一般式(1)で表される水溶性の重合開始剤であることが好ましい。
一般式(1)中、mおよびnはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、m+nは0〜3の整数を表すが、mが0〜3であってnが0または1であることが好ましく、mが0または1であってnが0であることがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
一般式(1)で表される化合物は、特開2005−307198号公報等の記載に準じて合成した化合物であっても、市販の化合物であってもよい。一般式(1)で表される市販の化合物としては例えば、イルガキュア2959(m=0、n=0)を挙げることができる。
インク組成物における重合開始剤の含有量は、固形分換算で0.1質量%〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%の範囲であることがより好ましく、1.0質量%〜15質量%の範囲であることがさらに好ましく、1.0質量%〜5.0質量%の範囲であることが最も好ましい。
(コロイダルシリカ)
インク組成物は、コロイダルシリカの少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。コロイダルシリカを含むことで吐出安定性が向上すると共にインクジェットヘッド部材における撥液性の低下を抑制できる。特にインクジェットヘッド部材の少なくとも一部にシリコンが使用されている場合に、特にその効果が大きい。
これは例えば、コロイダルシリカを含むことでインク成分の加水分解が効果的に抑制され、インク組成物の安定性が向上することにより、インクジェット記録装置上でインク組成物の吐出を止めて一定の時間放置し、その後吐出を再開した場合でも吐出安定性(放置回復性)において優れた効果が得られ、かつ画像の耐擦性も両立できるものと考えられる。さらに、コロイダルシリカがインクジェットヘッド部材の表面に適度に吸着して、インク成分による表面の侵食を緩和することにより、撥液性の低下を防止できるものと推察される。
コロイダルシリカは、平均粒子径が数100nm以下のケイ素を含む無機酸化物の微粒子からなるコロイドである。主成分として二酸化ケイ素(その水和物を含む)を含み、少量成分としてアルミン酸塩を含んでいてもよい。少量成分として含まれることがあるアルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが挙げられる。
またコロイダルシリカには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム等の無機塩類やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機塩類が含まれていてもよい。これらの無機塩類および有機塩類は、例えば、コロイドの安定化剤として作用する。
コロイダルシリカの分散媒としては特に制限はなく、水、有機溶剤、およびこれらの混合物のいずれであってもよい。有機溶剤は水溶性有機溶剤であっても非水溶性有機溶剤であってもよいが、水溶性有機溶剤であることが好ましい。具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール等を挙げることができる。
コロイダルシリカの製造方法には特に制限はなく、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、四塩化ケイ素の熱分解によるアエロジル合成や水ガラスから製造することができる。あるいは、アルコキシドの加水分解といった液相合成法(例えば、「繊維と工業」、Vol.60、No.7(2004)P376参照)などによっても製造することができる。
コロイダルシリカに含まれる粒子の平均粒子径としては特に制限はないが、好ましくは1nm〜25nm、より好ましくは3nm〜20nmであり、さらに好ましくは3nm〜15nmであり、特に好ましくは5nm〜10nmである。
平均粒子径が25nm以下であることで、インクジェットヘッドを構成する部材、例えば、基材、保護膜、撥液膜等に対するインクによるダメージ(例えば、撥液性の低下等)をより効果的に抑制することができる。これは例えば、平均粒子径が小さいことで、粒子の総表面積が大きくなり、インクジェットヘッドを構成する部材に対するダメージを、より効果的に抑制するためと考えることができる。またさらに、インク組成物の吐出性、粒子による研磨剤効果の観点からも、粒子の平均粒子径は25nm以下であることが好ましい。また、1nm以上の平均粒子径であることで、生産性が向上し、また性能のバラツキの少ないコロイダルシリカを得ることができる。
本発明においてコロイダルシリカの平均粒子径は、分散粒子の一般的な測定である光散乱法、レーザー回折法などの手法により測定できるが、本発明では、より直接的な手法として、TEM(透過型電子顕微鏡)撮影法により300個のコロイダルシリカ粒子の粒径を実測し、その平均値を平均粒子径とした。
またコロイダルシリカの形状は、インクの吐出性能を妨げない限り、特に限定されない。例えば、球状、長尺の形状、針状、数珠状のいずれであってもよい。中でも、インクの吐出性の観点から、球状であることが好ましい。
コロイダルシリカは、既述の製造方法で製造されたものであっても、市販品であってもよい。市販品の具体例としては例えば、 Ludox AM、Ludox AS、Ludox LS、Ludox TM、Ludox HSなど(以上、E.I.Du Pont de Nemouvs & Co製);スノーテックスS、スノーテックスXS、スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスOなど(以上、日産化学社製);Syton C−30、Syton ZOOなど(以上、Monsanto Co製);Nalcoag−1060 、Nalcoag−ID21〜64(以上、Nalco Chem Co製);メタノールゾル、IPAゾル、MEKゾル、およびトルエンゾル(以上、扶桑化学工業社製);Cataloid−S、Cataloid−F120、Cataloid SI−350、Cataloid SI−500、Cataloid SI−30、Cataloid S−20L、Cataloid S−20H、CataloidS−30L、Cataloid S−30H、Cataloid SI−40、OSCAL−1432(イソプロピルアルコールゾル)など(以上、日揮触媒化成製);アデライト(旭電化社製);数珠状のコロイダルシリカとして、例えば、スノーテックスST−UP、同PS−S、同PS−M、同ST−OUP、同PS−SO、同PS−MO(以上、日産化学社製)などの商品名で市販されているものを挙げることができ、これらは容易に入手することが出来る。
市販のコロイダルシリカ分散液のpHは、酸性またはアルカリ性に調整されているものが多い。これは、コロイダルシリカの安定分散領域が酸性側またはアルカリ性側に存在するためであり、市販のコロイダルシリカ分散液をインク組成物中に添加する場合は、コロイダルシリカの安定分散領域のpHとインク組成物のpHとを考慮して添加する必要がある。
インク組成物におけるコロイダルシリカの含有量には特に制限はないが、好ましくはインク組成物総量の0.005質量%〜0.5質量%であり、より好ましくはインク組成物総量の0.005質量%〜0.1質量%であり、特に好ましくはインク組成物総量の0.01質量%〜0.1質量%である。インク組成物中の含有量が上限値以下であることで、インク組成物の吐出性がより向上し、またシリカ粒子の研磨剤効果によるインクジェットヘッドへの影響をより効果的に抑制できる。また下限値以上であることで、インクジェットヘッド表面の撥液膜の撥液性の低下をより効果的に抑制できる。
さらにインク組成物は、インクジェットヘッド表面の撥液膜の撥液性低下抑制とインク吐出性の観点から、平均粒子径(TEM撮影法)が3nm〜25nmのコロイダルシリカをインク組成物総量の0.005質量%〜0.5質量%含有することが好ましく、3nm〜15nmのコロイダルシリカをインク組成物総量の0.005質量%〜0.1質量%含有することがより好ましい。
また、インク組成物における重合性化合物に対するコロイダルシリカの含有比(コロイダルシリカ/重合性化合物)は、質量基準で0.0001〜0.1であることが好ましく、0.001〜0.05であることがより好ましい。
重合性化合物に対するコロイダルシリカの含有比が0.0001以上であることで、インクジェットヘッド表面の撥液膜の撥液性の低下がより効果的に抑制される。また0.1以下であることで吐出性がより向上する。
(界面活性剤)
インク組成物は、界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、特定化合物以外のノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
界面活性剤(表面張力調整剤)をインク組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット方式によりインク組成物の吐出を良好に行う観点から、インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有するのが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
界面活性剤のインク組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
(水溶性有機溶剤)
インク組成物は、水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。水溶性有機溶剤は、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(樹脂粒子)
インク組成物は、必要に応じて樹脂粒子を含有することができる。
また樹脂粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた記録媒体上の領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは2万以上、20万以下である。
また樹脂粒子の平均粒径は、1nm〜1μmの範囲が好ましく、1nm〜200nmの範囲がより好ましく、1nm〜100nmの範囲が更に好ましく、1nm〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
樹脂粒子の添加量はインク組成物に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
(その他の成分)
インク組成物は、の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、又はキレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤の含有量はその用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、インク組成物中に各々0.02質量%〜1.00質量%程度とすればよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインク組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
(インク組成物の物性)
インク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m〜60mN/mであることが好ましい。より好ましくは、20mN/m〜45mN/mであり、更に好ましくは、25mN/m〜40mN/mである。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
また、インク組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s〜15.0mPa・sであることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
〔インク組成物の吐出方法〕
インク吐出工程では、インク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出する。
インク組成物の吐出は、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出すること以外には特に限定はなく、通常のインクジェット法を用いて行うことができる。
インクジェット法によるインクの吐出は、例えば、エネルギーを供与することにより、所望の記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等にインクを吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクの吐出方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法には特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
尚、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
また、インクジェット法で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。
また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。
尚、インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
インクジェット法によるインク吐出としては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺(幅方向の一辺)の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。
ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明では、ライン方式の中でも、記録媒体の1回の走査で画像を形成する、シングルパス方式を用いることが好ましい。
インク吐出工程では、ライン方式による場合に、インク組成物を1種のみ用いるのみならず2種以上のインク組成物を用い、先に吐出するインク組成物(第n色目(n≧1)、例えば第2色目)とそれに続いて吐出するインク組成物(第n+1色目、例えば第3色目)との間の吐出(打滴)間隔を1秒以下にして好適に記録を行なうことができる。
また、インクジェットヘッドは、複数の吐出孔が二次元に配列されたノズルプレートを備えていてもよい。ラインヘッドの吐出面側にノズルプレートが設けられ、ノズルプレートには、記録素子に対応する位置に吐出孔が設けられていてもよい。
ノズルプレートは、インクジェットヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式で用いられる短尺のシリアルヘッドに比べ、撥液膜の形成面積が大きい。そのため、インク組成物中のカーボンブラック顔料が研磨性を有していると、撥液膜の劣化も大きくなり易い。
しかし、本発明の画像形成方法により、インク組成物を吐出すれば、ノズルプレートを用いたインクジェット記録においても、撥液膜の劣化を防止することができる。
インクジェットヘッドから吐出されるインク組成物の液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5pl(ピコリットル)〜6plが好ましく、1pl〜5plがより好ましく、2pl〜4plであることが更に好ましい。
(撥液膜)
本発明の画像形成方法で用いるインクジェットヘッドの表面には、撥液膜が設けられている。
撥液膜は、インク組成物を弾いてインクジェット表面に付着し難くし、また、吐出時には、インク組成物の切れをよくして、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出性を向上することができる。
撥液膜の構成材料は特に制限されないが、インク組成物の切れを良好にし、インク組成物を安定して吐出する観点から、フッ素化合物を含むことが好ましい。
インクの切れ性をより向上させる観点から、沖津法によって計算された撥液膜のSP値は、16.00MPa1/2以下が好ましく、15.00MPa1/2以下がより好ましく、13.00MPa1/2以下が特に好ましい。
撥液膜に含まれるフッ素化合物としては、例えば、フッ化アルキル基を有する化合物を好適に用いることができる。
撥液膜は、例えば、フッ化アルキルシラン化合物を用いて作製された撥液膜であることが好ましい。
フッ化アルキルシラン化合物としては、下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物を好適に用いることができる。下記一般式(F)で表されるフッ化アルキルシラン化合物は、シランカップリング化合物である。
2n+1−C2m−Si−X … 一般式(F)
一般式(F)において、nは1以上の整数を表し、mは0又は1以上の整数を表す。Xは、アルコキシ基、アミノ基、又はハロゲン原子を表す。なお、Xの一部がアルキル基で置換されていてもよい。
フッ化アルキルシラン化合物の例としては、C17SiCl(「1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシラン」や「FDTS」とも呼ばれている)、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン、CF(CFSi(OCHや、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシランなどのフルオロアルキルアルコキシシラン、等を挙げることができる。
一般式(F)の中では、撥液性および撥液膜の耐久性の点で、nが1〜14の整数であって、mが0又は1〜5の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましく、更には、nが1〜12の整数であって、mが0〜3の整数であって、Xがアルコキシ基又はハロゲン原子である場合が好ましい。
中でも、C17SiClが最も好ましい。
また、撥液膜を構成するフッ素化合物は、酸素原子を含むことが好ましい。酸素原子を含むフッ素化合物を用いて撥液膜を構成することで、より撥液膜の劣化をよくせいすることができる。酸素原子を含むフッ素化合物としては、含酸素フッ化アルキル化合物が好ましく、パーフルオロポリエーテル(PFPE)基(−CF−O−CF−)を有する化合物を用いることが好ましい。
また、市販品を用いることもできる。
具体的には、オプツール〔ダイキン工業(株)製〕、デュラサーフ〔(株)ハーベス製〕、ノベックEGC1720〔住友3M(株)製〕、フルオロリンクS−10〔ソルベイソレクシス(株)製〕、ナノス〔(株)ティーアンドケイ製〕、サイフェルKY−100〔信越化学工業(株)製〕、サイトップMタイプ〔旭硝子(株)製〕などのシランカップリング剤が挙げられる。
フッ素化合物を含む撥液膜の厚みとしては、特に制限はないが、0.2nm〜30nmの範囲が好ましく、0.4nm〜20nmの範囲がより好ましい。撥液膜の厚みは、30nmを超える範囲でも特に問題はないが、30nm以下であると膜の均一性の点で有利であり、0.2nm以上であるとインクへの撥水性が良好である。
フッ素化合物を含む撥液膜としては、例えば、フッ化アルキルシラン化合物の単分子膜(SAM膜)や、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜を用いることができる。ここで、フッ化アルキルシラン化合物の積層膜には、フッ化アルキルシラン化合物が重合せずに積まれている膜のほか、フッ化アルキルシラン化合物の重合膜も含まれる。
フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、特開2011−111527号公報の段落0114〜0124に記載された方法によって形成することができる。
具体的には、フッ素化合物を含む撥液膜は、例えば、化学気相蒸着法による蒸着、フッ素樹脂のコーティング、フッ素系高分子等との共析メッキ、フッ素シラン処理、アミノシラン処理、フッ化炭素プラズマ重合等によって形成することができる。
フッ素化合物を含む撥液膜の形成方法として、より具体的には、下記の方法が挙げられる。
第1の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランを基材と反応させて、撥水性の単分子膜や重合膜を形成する方法が挙げられる(例えば、特許第2500816号、特許第2525536号参照)。
化学式において、CF(CF−がフルオロアルキル基であり、−SiClがトリクロロシリル基である。
この方法では、活性水素が表面に存在する基材をフルオロアルキルトリクロロシランが溶解した溶液にさらし、クロロシリル基(−SiCl)と活性水素とを反応させて基材とSi−O結合を形成する。この結果、フルオロアルキル基はSi−Oを介して基材に固定される。ここで、フルオロアルキル基が膜に撥液性を付与する。膜の形成条件によって、撥液膜は単分子膜や重合膜となる。
第2の例として、CF(CFSi(OCHなどのフルオロアルキルアルコキシシランなどのフルオロアルキル基を含む化合物を含浸した多孔質性の基体を真空中で加熱し、化合物を蒸発させて基材表面を撥水性にする方法が挙げられる(例えば、特開平6−143586号公報参照)。
この方法では、撥液膜と基材との密着性を高めるために、二酸化珪素などの中間層を設けてもよい。
第3の例として、CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシランなどの化合物を用いて、基材表面にフルオロアルキルシランを化学気相蒸着法により形成する方法が挙げられる(例えば、特開2000−282240号公報参照)。
第4の例として、ジルコニアやアルミナなどの酸化物微粒子を基材表面に形成した後、その上にフルオロアルキルクロロシランやフルオロアルキルアルコキシシランなどを塗布する方法が挙げられる(例えば、特開平6−171094号公報参照)。
第5の例として、フルオロアルキルアルコキシシランに金属アルコキシドを加えた混合溶液を加水分解・脱水重合させた後に、この溶液を基材に塗布して焼成することにより、金属酸化物中フルオロアルキル鎖を有する分子が混合した撥液膜を形成する方法が挙げられる(特許第2687060号、特許第2874391号、特許第2729714号、特許第2555797号参照)。
この方法は、フルオロアルキル鎖が膜に撥水性を付与し、金属酸化物が膜に高い機械的強度を付与する。
以上の形成方法の中でも、第3の例として挙げた化学気相蒸着法が好ましい。
化学気相蒸着法の態様としては、テフロン(登録商標)製などの密閉容器の中にフッ化アルキルシラン化合物を入れた容器とノズルプレート(例えば、シリコン基板製のノズルプレート)を入れ、この密閉容器全体を電気炉中に置く等して昇温することでフッ化アルキルシラン化合物を蒸発させることにより、ノズルプレートの表面にフッ化アルキルシラン化合物の分子を堆積させる態様が挙げられる。
このようにして、化学気相蒸着法により例えばフッ化アルキルシラン化合物の単分子膜をノズルプレート上に形成することができる。この場合、ノズルプレートの蒸着面は親水化されていることが好ましい。具体的には、例えばシリコン基板製のノズルプレートの表面を、紫外光(波長172nm)を用いて洗浄することで、有機不純物が除去されて清浄表面が得られる。このとき、シリコン表面は自然酸化してSiO膜で覆われているため、表面に直ちに大気中の水蒸気が吸着して表面がOH基で覆われ親水性の表面となる。
化学気相蒸着法の別の態様として下記の方法が挙げられる。
即ち、低圧力でCF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物及び水蒸気をCVDリアクタの中に導入することによって、シリコン基板の表面に撥液膜を堆積することができる。
CF(CFSiClなどのフルオロアルキルトリクロロシラン化合物の分圧は、0.05〜1torr(6.67〜133.3Pa)の間(例えば0.1〜0.5torr(13.3〜66.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.1〜2torr)とすることができる。
堆積温度は、室温と摂氏100度との間とすることができる。コーティングプロセスは、例えば、Applied Micro Structures, Inc.からのMolecular Vapor Deposition(MVD)TMマシンを用いて実施することができる。
(ノズルプレート)
ノズルプレートは、複数の吐出孔が二次元に配列された構成を有するものである。複数の吐出孔の数には特に限定はなく、画像形成の高速化等を考慮し、適宜選択できる。
ノズルプレートとしては、シリコンを含むノズルプレート(以下、「シリコンノズルプレート」ともいう)が好適である。
シリコンとしては、単結晶シリコン又はポリシリコンを用いることができる。
また、シリコンノズルプレートとしては、例えば、シリコン基板上に、金属酸化物(酸化シリコン、酸化チタン、酸化クロム、酸化タンタル(好ましくはTa)等)、金属窒化物(窒化チタン、窒化シリコン等)、金属(ジルコニウム、クロム、チタン等)などの膜が設けられたものを用いることもできる。
ここで、酸化シリコンは、シリコン基板の表面の全部又は一部が酸化されて形成されたSiO膜であってもよい。
また、シリコンノズルプレートは、シリコンの一部をガラス(例:硼珪酸ガラス、感光性ガラス、石英ガラス、ソーダ石灰ガラス)に置き換えて構成されたものであってもよい。
のうち、特に、五酸化タンタル等をはじめとする酸化タンタルからなる膜は、インクに対して非常に優れた耐インク性を有し、特にアルカリ性のインクに対して良好な耐侵食性が得られる。
酸化シリコンからなる膜(SiO膜)を形成する方法の一態様を述べる。
例えば、化学蒸着法(CVD)リアクタにシリコン基板を収容し、SiCl及び水蒸気を導入することによって、シリコン基板上にSiO膜を形成できる。
このとき、SiClの分圧は、0.05〜40torr(6.67〜5.3×10Pa)の間(例えば0.1〜5torr(13.3〜666.5Pa))とすることができ、HOの分圧は0.05〜20torrの間(例えば0.2〜10torr)とすることができる。堆積温度は、一般には室温と摂氏100度との間である。
また、他の態様として、シリコン基板上にスパッタリングすることによりSiO膜を形成することができる。
いずれの態様においても、SiO膜が形成されるべきシリコン基板表面は、SiO膜を形成する前に(例えば、酸素プラズマを当てることによって)洗浄されることが好ましい。
(ノズルプレートを備えたインクジェットヘッド)
図1は、ノズルプレートを備えたインクジェットヘッドの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、インクジェットヘッド100は、吐出孔(ノズル)を有するノズルプレート11と、ノズルプレートの吐出方向と反対側に設けられたインク供給ユニット20とを備えている。ノズルプレート11には、インクを吐出する複数の吐出孔12が設けられている。ノズルプレート11の吐出面側には、フッ素化合物を含む撥液膜13が設けられている。
図2は、ノズルプレート11の吐出面(撥液膜13形成面)を概念的に示す斜視図である。
ノズルプレート11は、図2に示すように、複数の吐出孔(ノズル)が2次元配列されて設けられている。吐出孔の数には限定はなく、画像形成の高速化等を考慮して適宜選択でき、例えば、32×60個とすることができる。
このノズルプレート11は、前述のシリコンを含むノズルプレート(シリコンノズルプレート)を用いることができ、例えば、少なくともノズル口内壁及びインク吐出方向側のプレート面にシリコンが露出した構造のシリコンノズルプレートが好ましい。
なお、図示しないが、ノズルプレート11は、シリコン基板とシリコン基板上に設けられた酸化シリコン膜とからなるシリコンノズルプレートであってもよい。この場合、酸化シリコン膜は、シリコン基板とフッ素化合物を含む撥液膜13との間に配置される。
インク供給ユニット20は、ノズルプレート11の複数の吐出孔12のそれぞれとノズル連通路22を介して連通する複数の圧力室21と、複数の圧力室21のそれぞれにインクを供給する複数のインク供給流路23と、複数のインク供給流路23にインクを供給する共通液室25と、複数の圧力室21のそれぞれを変形する圧力発生手段30とを備えている。
インク供給流路23は、ノズルプレート11と圧力発生手段30の間に形成されており、共通液室25に供給されたインクが送液されるようになっている。このインク供給流路23には、圧力室21との間を繋ぐ供給調整路24の一端が接続されており、インク供給流路23から供給されるインク量を所要量に絞って圧力室21に送液することができる。供給調整路24は、インク供給流路23に複数設けられ、このインク供給流路23を介して圧力発生手段30に隣接して設けられた圧力室21にインクが供給される。
このように、複数の吐出孔にインクを多量に供給することが可能である
圧力発生手段30は、圧力室21側から振動板31、接着層32、下部電極33、圧電体層34、上部電極35を順に積み重ねて構成されており、外部から駆動信号を供給する電気配線が接続されている。画像信号に応じて圧電素子が変形することで、インクがノズル連通路22を介してノズル12から吐出される。
また、吐出孔12の近傍には、循環絞り41が設けられており、常時インクが循環路42へ回収されるようになっている。これにより、非吐出時の吐出孔近傍のインクの増粘を防止することができる。
(記録媒体)
インク吐出工程において、インク組成物は、記録媒体に吐出される。
記録媒体としては特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明の画像形成方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しらおい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
記録媒体は、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体であることが好ましく、0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であることがより好ましく、0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体であることがさらに好ましい。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明の画像形成方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
<メンテナンス工程>
本発明の画像形成方法は、撥液膜に付着したインク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物を拭き取るメンテナンス工程を有することが好ましい。
インク組成物が未処理のカーボンブラック顔料を含んでいたり、特定酸化処理顔料を含んでいても、特定化合物を含んでいない場合には、カーボンブラック顔料により、撥液膜が研磨されて、劣化し易い。特に、インク組成物またはインク組成物に由来するインク固着物(以下、「インク組成物等」ともいう)が付着した撥液膜を拭き、インク組成物を拭き取ることで、撥液膜がより研磨され、劣化し易くなる。
このような場合でも、インク組成物として、本発明の画像形成方法で用いるインク組成物を使用すれば、未処理のカーボンブラック顔料や、特定酸化処理顔料が露出し難いため、撥液膜の劣化を防止することができる。
メンテナンス工程においては、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等によって、インク組成物またはインク組成物に由来する固着物を除去する。
またメンテナンス工程は、メンテナンス液をインクジェットヘッド周辺(例:インク流路等;以下、ヘッド等ともいう。)に付与することを含んでいてもよい。メンテナンス液をヘッド等に付与することにより、ノズル面のインク由来のインク固着物は溶解、又は膨潤等してさらに除去し易くなる。
メンテナンス液の付与は、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭等の前であっても後であってもよい。好ましくは、メンテナンス液を付与後にワイパブレードを用いてノズル面を擦り(ワイピング)、インク固着物を掻き落とす方法、風圧やメンテナンス液等の液圧等により取り除く方法、及び布・紙類で払拭する方法が挙げられる。中でも、ワイパブレードによる掻き取り、布や紙類での払拭が好ましい。
ワイパブレードの材質は弾性を有するゴムが好ましく、具体的な材質としては、ブチルゴム、クロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。ワイパブレードに撥インク性を付与するためにフッ素樹脂等によりコーティングしてあるワイパブレードを用いても構わない。
<処理液付与工程>
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に、インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な凝集剤を含む処理液を付与する処理液付与工程を有することが好ましい。
本処理液付与工程では、インク組成物と接触することで凝集体を形成可能な処理液(処理液)を記録媒体に付与し、処理液をインク組成物と接触させて画像化する。この場合、インク組成物中の特定酸化処理顔料のほか、必要に応じてインク組成物に含まれる樹脂粒子などの分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。これにより、画像形成を高速化することができ、更に、画像形成を高速化しても、画像濃度および解像度の高い画像が得られる。
なお、処理液における各成分の詳細及び好ましい態様については後述する。
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法によって行なうことができる。インクジェット法の詳細については、既述の通りである。
処理液付与工程は、インク吐出工程の前又は後のいずれに設けてもよい。
本発明においては、処理液付与工程で処理液を付与した後に、インク吐出工程を設けた態様が好ましい。すなわち、記録媒体上に、インク組成物を吐出する前に、予めインク組成物中の色材(樹脂被覆キナクリドン系顔料)を凝集させるための処理液を付与しておき、記録媒体上に付与された処理液に接触するようにインク組成物を吐出して画像化する態様が好ましい。これにより、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
処理液の付与量としては、インク組成物を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分(例えば、2価以上のカルボン酸又はカチオン性有機化合物)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2g/m〜0.8g/mである。凝集成分の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行し、1.0g/m以下であると光沢度が高くなり過ぎず好ましい。
また、本発明においては、処理液付与工程後にインク吐出工程を設け、処理液を記録媒体上に付与した後、インク組成物が吐出されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程を更に設けることが好ましい。インク吐出工程前に予め処理液を加熱乾燥させることにより、滲み防止などのインク着色性が良好になり、色濃度及び色相の良好な可視画像を記録できる。
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
〔処理液〕
処理液は、インク組成物と接触したときに凝集体を形成できる水性組成物であり、具体的には、インク組成物と混合されたときに、インク組成物中の樹脂被覆キナクリドン系顔料などの分散粒子を凝集させて凝集体を形成可能な凝集成分を少なくとも含み、必要に応じて、他の成分を含んで構成することができる。
インク組成物と共に処理液を用いることで、インクジェット記録を高速化でき、高速記録しても濃度、解像度の高い画像が得られる。
−凝集成分−
処理液は、インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集成分の少なくとも1種を含有する。インクジェット法で吐出されたインク組成物に処理液が混合することにより、インク組成物中で安定的に分散している樹脂被覆キナクリドン系顔料等の凝集が促進される。
処理液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体組成物が挙げられる。このとき、処理液のpH(25℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜6であることが好ましく、1.2〜5であることがより好ましく、1.5〜4であることが更に好ましい。この場合、吐出工程で用いるインク組成物のpH(25℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)であることが好ましい。
中でも、本発明においては、画像濃度、解像度、及びインクジェット画像形成の高速化の観点から、インク組成物のpH(25℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25℃)が3〜5である場合が好ましい。
凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
処理液は、凝集成分として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて構成することができる。
酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物であることが更に好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
処理液は、酸性化合物に加えて、水系溶媒(例えば、水)を更に含んで構成することができる。
処理液が酸性化合物を含む場合、処理液中における酸性化合物の含有量としては、凝集効果の観点から、処理液の全質量に対し、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
また、高速凝集性を向上させる処理液の好ましい一例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液も挙げることができる。
多価金属塩あるいはポリアリルアミンとしては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩、及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
処理液が多価金属塩を含む場合、処理液中における多価金属塩の含有量としては、処理液の全質量に対し、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mであることが好ましく、20〜45mN/mであることがより好ましく、25〜40mN/mであることがさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
<加熱定着工程>
本発明の画像形成工程は、インク吐出工程の後、インク組成物の付与により形成されたインク画像に加熱面を接触させて加熱定着する加熱定着工程を有することが好ましい。
加熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプなどで加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、200mm/秒〜700mm/秒の範囲が好ましく、より好ましくは300mm/秒〜650mm/秒であり、更に好ましくは400mm/秒〜600mm/秒である。
<その他の工程>
本発明の画像形成方法は、必要に応じ、乾燥工程、硬化工程等のその他の工程を有していてもよい。
(硬化工程)
本発明の画像形成方法は、インク組成物が重合性化合物を更に含有する場合には、更に、インク吐出工程により形成された画像に対して活性エネルギー線を照射して画像を硬化する硬化工程を有していてもよい。
これにより、形成される画像の耐擦性や、画像と記録媒体との密着性がより向上する。
活性エネルギー線としては、重合性化合物を重合可能なものであれば、特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。また、活性エネルギー線の発生源として、例えば、紫外線照射ランプ(ハロゲンランプ、高圧水銀灯など)、レーザー、LED、電子線照射装置などが挙げられる。
紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5000mW/cmであることが好ましい。
紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いてもよく、特に紫外線照射ランプが好適である。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、UV-LED光源等が好適である。水銀灯、UV−LEDの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色されたインク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できる点で適している。水銀灯には、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されている。発光波長領域として範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
なお、以下に示す実施例のうち、実施例5〜8、及び12〜15は、本発明の参考例である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。また、条件としては、試料濃度を0.35/min、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μl、測定温度を40℃とし、RI検出器(Refractive Index検出器;示差屈折率検出器)を用いて行なった。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作製した。
<水不溶性樹脂(ポリマー分散剤)P−1の合成>
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸13g、及びメチルメタクリレート37gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は過剰量のヘキサンに2回再沈殿させ、析出した樹脂を乾燥させて、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量%比]=50/37/13)共重合体(水不溶性樹脂P−1)96.5gを得た。
得られた水不溶性樹脂P−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は49400であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法により、この水不溶性樹脂の酸価を求めたところ、84.8mgKOH/gであった。
≪樹脂分散剤P−2の合成≫
下記に従って合成した。
モノマー供給組成物を、メタクリル酸(172部)、メタクリル酸ベンジル(828部)、及びイソプロパノール(375部)を混合することにより調製した。開始剤供給組成物を、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)およびイソプロパノール(187.5部)を混合することにより調製した。
次に、イソプロパノール(187.5部)を窒素雰囲気下、80℃に加温した中に、上記モノマー供給組成物及び上記開始剤供給組成物の混合物を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に4時間、80℃に保った後に、25℃まで冷却した。
冷却後、溶媒を減圧除去することにより、重量平均分子量約50000の樹脂分散剤P−2を得た。
<特定酸化処理顔料の用意>
特定酸化処理顔料として、次のカーボンブラック顔料を用意した。また、各顔料の平均一次粒子径(カタログ値)を、表1の「CB顔料」の「粒径(nm)」欄に示した。
・special black 6(表面酸素量11原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
・special black 4(表面酸素量6原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
・colour black FW200(表面酸素量12原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
・fuji jet black(表面酸素量12原子%、富士色素(株)製)
・colour black FW182(表面酸素量12原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
・nipex160(表面酸素量2原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
・nipex160(表面酸素量2原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)の酸化処理品
・nipex170(表面酸素量3原子%、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社)
nipex160酸化処理品は、nipex160を次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理することにより酸化した顔料である。
また、カーボンブラック顔料の表面酸素量の定量は、次のようにして行った。
<カーボンブラック顔料の表面酸素量の定量>
まず、後述する方法で調製した顔料分散物を、アセトンで10倍に希釈した。得られた希釈液を、ベックマン遠心機で80000rpm×30分間の条件で遠心分離した。固形分が沈殿した希釈液の上澄みを除去し、沈殿物を回収した。「遠心分離により得られた沈殿物を回収し、沈殿物をアセトンで希釈し、希釈液を再度同じ条件で遠心分離する」という操作を3回繰り返した。
その後、沈殿物を回収し、IR吸収(Infrared Absorption spectrometry;赤外吸収)スペクトルで分散剤ポリマー由来の吸収ピークがないことを確認した。
次いで、沈殿物を乾燥し、インジウム板上に乗せ、沈殿物をIR用錠剤成型機で圧着固定し、錠剤状に成型した。成型した錠剤を島津製作所製のAXIX−HSiでESCA測定した。ESCA測定に当たっては、アノードがAlのモノクロ化X線銃を使用し、レンズモードはHybridを使用した。また、中和銃を使用した。
なお、「表面が5原子%以上の酸素量」とは、カーボンブラック顔料の粒子の表面(深さ方向3〜5nmまでの内部を含む)に存在する酸素原子数(O)と炭素原子数(C)との割合〔(O/C)×100%原子数比〕を意味する。本発明では、カーボンブラック顔料の表面酸素量は、ESCA測定によって、炭素原子を基準として算出した。
<インク組成物の調製>
画像形成に用いるインク組成物として、黒色のインク組成物であるインク組成物1〜インク組成物19を調製した。
以下、詳細を説明する。
(顔料分散物1の調製)
カーボンブラック顔料(special black 6、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製)10.0部と、ポリマー分散剤P−1を4.8部と、メチルエチルケトン18部と、1mol/L NaOH水溶液16.8部と、イオン交換水59.4部とを混合し、0.1mmφジルコニアビーズを用いてビーズミルにより、3時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去した後、更に、高速遠心冷却機7550(久保田製作所製)を用いて、50mL遠心菅を使用し、8000rpmで30分間遠心処理を行い、沈殿物以外の上澄み液を回収した。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、カーボンブラック濃度が12.0質量%の樹脂被覆顔料粒子(カプセル化顔料)の分散物として、顔料分散物1を得た。
ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒子径を測定したところ、92nmであった。
(顔料分散物2〜6、および8〜10の調製)
顔料分散物1の調製において、カーボンブラック顔料(special black 6、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製)を、表1の「CB顔料」欄に示すカーボンブラック顔料に変更したほかは同様にして、顔料分散物2〜顔料分散物6、および、顔料分散物8〜顔料分散物10を調製した。
なお、fuji jet blackは、顔料濃度が15質量%の顔料分散液であるため、fuji jet blackをそのまま顔料分散物3として用いた。
(顔料分散物7の調製)
上記で得られた樹脂分散剤P−2(150部)を、水酸化カリウム水溶液を用いて、樹脂分散剤中のメタクリル酸量の0.8当量を中和し、さらにイオン交換水を加えて、樹脂分散剤の濃度が20質量%となるように樹脂分散剤水溶液を調製した。
この樹脂分散剤水溶液(135部)と、カーボンブラック顔料〔Colour Black FW182、オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製〕(60部)と、イオン交換水(204.5部)、1mol/l KOH水溶液(100.5部)とを混合し、ビーズミル〔0.1mmφジルコニアビーズ〕で所望の体積平均粒子径を得るまで分散し、顔料濃度12%の樹脂被覆ブラック顔料粒子の分散物N1(未架橋分散物)を得た。
得られた分散物N1(208部)に対してイオン交換水(42部)、Denacol EX−321(1.1部)、および、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4%水溶液、12.2部)を添加し、50℃にて5時間半反応後、25℃に冷却した。さらに、得られた架橋分散物を、攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC社製)及び限外ろ過フィルター〔分画分子量5万、Q0500076Eウルトラフィルター、ADVANTEC(株)製〕を用いて、イオン交換水を加えて限外ろ過を行った。限外ろ過により分散物中のジプロピレングリコール濃度が顔料の総重量に対して1%以下となるように精製した後、顔料濃度12質量%となるまで濃縮して顔料分散物7を得た。
また、得られた顔料分散物7を0.1部と、イオン交換水を19.9部とを混合し、混合物を得た。得られた混合物を用いてナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150〔日機装(株)製〕によって、カーボンブラック顔料の2次粒子の体積平均粒子径を測定したところ、95nmであった。
<重合性化合物2の合成>
攪拌機を備えた1Lの三口フラスコに4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン40.0g(182mmol)、炭酸水素ナトリウム37.8g(450mmol)、水100g、テトラヒドロフラン300gを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド35.2g(389mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でテトラヒドロフランを留去した。次に水層を酢酸エチル200mlで4回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物2の固体を35.0g(107mmol、収率59%)得た。
(黒色インク組成物1の調製)
顔料分散物1と、重合性化合物2と、コロイダルシリカ(スノーテックスXS、平均粒子径5nm、日産化学工業(株)製)とを用い、下記インク組成になるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、黒色インク組成物1を調製した。
〜インク組成〜
・顔料分散物1 ・・・・・15.8%
・重合性化合物2(重合性化合物) ・・・・・・・18%
・エクアミドB100(水溶性有機溶剤) ・・・・・・5.2%
(アミド系有機溶剤)〔出光興産株式会社製〕
・コロイダルシリカ(固形分) ・・・・・0.05%
〔スノーテックスXS、固形分濃度20%、日産化学工業社製〕
・オルフィンE1010(特定化合物)〔日信化学工業社製〕・・・・・・・・1%
・イルガキュア2959(重合開始剤)〔BASF・ジャパン社製〕・・・2.7%
・イオン交換水 ・・・・・・・・・・・・・全量で100質量%となる量〔%〕
(黒色インク組成物2〜黒色インク組成物19の調製)
黒色インク組成物1の調製において、顔料分散物1を表1の「顔料分散物種」に示す顔料分散物に変更し、オルフィンE1010を表1の「ノニオン化合物種」に示す化合物に変更した他は、同様にして、黒色インク組成物2〜黒色インク組成物19を調製した。
なお、インク組成物12および14の調製に用いたノニオン化合物「E1020」は日信化学工業社のオルフィンE1020であり、インク組成物19の調製に用いたノニオン化合物「PEG−1540」は三洋化成株式会社製である。
黒色インク組成物3の調製においては、fuji jet blackをそのまま用い、黒色インク組成物3中の固形分量が1.9%となるようにfuji jet blackを混合した。
なお、「CB顔料」欄の「添加量」に示す数値は、インク組成物の全質量に対する固形分量である。例えば、インク組成物1は、インク組成物1の全質量に対して、special black 6を固形分量で、1.90%含有する。
<画像形成>
(処理液1の調製)
下記組成の成分を混合して、処理液1を調製した。処理液1の粘度、表面張力、及びpH(25℃)は、粘度2.5mPa・s、表面張力40mN/m、pH1.0であった。表面張力は協和界面科学(株)製 全自動表面張力計CBVP−Zを用いて測定し、粘度はブルックフィールドエンジニアリング社製、DV-III Ultra CPを用いて測定した。pHは、東亜ディーケーケー(株)製PHメーター、HM−30Rを用いて測定した。
また、下記洗浄液1の組成の成分を混合して、洗浄液1を調製した。
〜処理液1の組成〜
・マロン酸〔和光純薬工業社製〕 ・・・・・・・・・・・・・ ・・25.0%
・ジエチレングリコールモノメチルエーテル〔和光純薬工業社製〕・・・20.0%
・エマルゲンP109〔花王社製、ノニオン性界面活性剤〕 ・・・・・・1.0%
・イオン交換水 ・・・・・・・・・・・・・・・・54.0%
〜洗浄液1の組成〜
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・・・・・20.0%
・ジエチレングリコール ・・・・・・・10.0%
・イオン交換水 ・・・・・・・70.0%
シリコンノズルプレートを備えたインクジェットヘッドを用意し、これに繋がる貯留タンクに上記で得た黒色インク組成物1〜19を詰め替えた。なお、シリコンノズルプレートには、フッ化アルキルシラン化合物〔(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン〕を用いて撥液膜が予め設けられている。記録媒体として王子製紙(株)製の「OKトップコート+」(坪量104.7g/m)をA5サイズにカットし、500mm/秒で所定の直線方向に移動可能なステージ上に固定し、ステージ温度を30℃に保持した。これに上記で得た処理液1をバーコーターで約1.2μmの厚みとなるように塗布し、塗布直後に50℃で2秒間乾燥させた。
その後、インクジェットヘッドを、ステージの移動方向(副走査方向)と直交する方向に対して、ノズルが並ぶラインヘッドの方向(主走査方向)が75.7度傾斜するように固定配置し、記録媒体を副走査方向に定速移動させながらインク液滴量2.8pL、吐出周波数25.5kHz、解像度1200dpi(dot per inch)×1200dpiの吐出条件にてライン方式で、記録媒体の全面にインクを吐出してベタ画像とした。画像を記録した後、インク着滴面の裏側(背面)から赤外線ヒータで加熱しながら、送風器により120℃、5m/secの温風を記録面に15秒間あてて乾燥させた。画像乾燥後、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ 最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射して画像を硬化して印画サンプルを得た。
なお、実施例2および実施例6においては、シリコンノズルプレートは、含酸素フッ化アルキルシラン化合物〔信越化学工業(株)製のサイフェルKY−100〕を用いて設けられた撥液膜を有するシリコンノズルプレートを用いた。
<評価>
得られたインク組成物について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
〔メンテナンス性〕
メンテナンス用の布地(東レ社製のトレシー)をφ40mmの回転機構を有するゴム製のローラーに巻きつけ、撥液膜テストピースとの接触圧が40kPaとなるように調整した。前記撥液膜テストピースを、インク組成物1〜19を、洗浄液1で希釈したもの〔洗浄液97.0%/インク組成物3.0%〕を染み込ませた布地で擦り、擦った後の撥液膜の接触角を測定4回の平均値として算出した。接触角が60°を切るメンテナンスの回数(ローラー回転回数)を、撥液膜の寿命とした。接触角が60°を切るメンテナンスの回数となるローラー回転回数によって、各インク組成物の撥液膜の劣化防止性を評価した。
実用上問題あるレベルは、ローラー回転回数が80回転未満となる場合である。
<耐ブロッキング性>
上記画像形成で得られた2枚の評価サンプルを4cm×4cmのサイズに裁断し、裁断された2枚の評価サンプルをベタ画像同士が接するようにして重ね、更にプレス機で1.0MPaの圧力を10秒間かけて2枚の評価サンプルをプレスした。
その後、2枚の評価サンプルを剥がし、このときの剥がれ易さ及び剥がした後の画像の損傷を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
耐ブロッキング性の評価は、プレス時のベタ画像の温度が25℃である条件ついて行った。
〜耐ブロッキング性の評価基準〜
A: 2枚の評価サンプルを剥がすときに、貼り付き感無く自然に剥がれ、互いの紙への色移りも見られなかった。
B: 2枚の評価サンプルを剥がすときにわずかな貼り付き感があるものの、画像の損傷は見られなかった。
C: 2枚の評価サンプルを剥がすときに貼り付き感があり、画像の損傷がわずかに見られた。
D: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が強く、画像の損傷が顕著であり、実用上問題があるレベルであった(但し、下記Eに該当する場合を除く)。
E: 2枚の評価サンプルを剥がすときの貼り付き感が非常に強く、画像及びコート層が損傷し、Dよりも劣るレベルであった。
なお、耐ブロッキング性の評価基準において、実用上問題があるのはD以下の場合である。
表1に示すように、特定酸化処理顔料と特定化合物とを併用した実施例のインク組成物は、撥液膜の劣化防止性に優れた。また、実施例9および実施例10の評価結果からわかるように、同じ特定酸化処理顔料を用いても、架橋工程を有する製法で製造した顔料分散物7を含むインク組成物10(実施例10)の方が、撥液膜の接触角が60度未満となるローラーの回転回数が大きかった。このことから、顔料分散物は、架橋分散物である方が、撥液膜の摩耗劣化を抑制し易いと考えられる。
実施例のインク組成物を用いて得られた印画サンプルは、いずれも高解像度の画像が形成されていた。実施例のインク組成物は、表1に示すように、撥液膜を劣化し難いため、ノズルプレートからのインク組成物の吐出が安定しているためと考えられる。
11 ノズルプレート
12 吐出孔
13 撥液膜
100 インクジェットヘッド

Claims (6)

  1. 平均一次粒子径が25nm以下であり、かつ、表面に存在する酸素原子数と炭素原子数との割合〔(O/C)×100%原子数比〕が5%以上である酸化処理されたカーボンブラック顔料と、エチレンオキシ鎖およびプロピレンオキシ鎖の少なくとも一方を有し、前記エチレンオキシ鎖および前記プロピレンオキシ鎖の合計が10個以上16個以下である水溶性ノニオン性化合物と、水とを含有するインク組成物を、吐出面に撥液膜を有するインクジェットヘッドから吐出するインク吐出工程を有する画像形成方法。
  2. 前記インク組成物が、さらに(メタ)アクリルエステル化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性化合物を含有する請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 前記インクジェットヘッドは、複数の吐出孔が二次元に配列されたノズルプレートを備え、前記ノズルプレートの吐出面に前記撥液膜が形成されている請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
  4. 前記撥液膜が、少なくともフッ素化合物を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  5. 前記フッ素化合物が、酸素原子を含む請求項4に記載の画像形成方法。
  6. さらに、前記インク組成物の吐出後、前記撥液膜に付着した前記インク組成物または前記インク組成物に由来するインク固着物を拭き取るメンテナンス工程を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
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