JP5677522B2 - クリアインク、インクジェット記録方法、及び、インクセット - Google Patents

クリアインク、インクジェット記録方法、及び、インクセット Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット用として好適なクリアインク、インクジェット記録方法、及び、インクセットに関する。
近年、インクジェット記録技術の進歩により、一般家庭においても比較的容易かつ安価に、銀塩写真やオフセット印刷で実現されているような高精細で高い光沢性を有する画像を記録することが可能になってきている。インクジェット記録方法において、色材として染料を含有する染料インクを用いると、粒状性が低減された良好な画像が得られるが、一方で、染料インクで記録された画像は、耐光性、耐水性、耐ガス性などの堅牢性に劣るという課題がある。このため、高い堅牢性を実現するために、近年では、色材として顔料を含有する顔料インクが用いられるようになってきている。顔料インクとしては、記録媒体への顔料の定着性や、画像の耐擦過性などを向上させるために、水溶性の樹脂分散剤により顔料が分散されてなる顔料インクが広く使用されるようになっている。
また、近年では、銀塩写真と同等以上の、より高品位な画像を得るために、互いに同一の色相を有し、色材の含有量がそれぞれ異なる複数の顔料インクを用いて画像を記録することが行われている。しかし、顔料の含有量が相対的に高いインク(濃インク)と相対的に低いインク(淡インク)を両方備えているインクセットを用いて画像を記録した場合、濃インクで記録された画像の写像性が、淡インクで記録された画像と比較して低い、という課題がある。
写像性とは、画像の表面に像を写したときの像の鮮鋭度を示す性質をいい、写像性が低い場合は像がぼやけて見え、写像性が高い場合は像がくっきり見える。写像性の低下は、顔料が粒子であることに起因して生じる課題であるので、濃インクの色材の含有量を低くすることで、画像の写像性を高める方法がある。しかし、この場合は、高い発色性を有する画像を記録するという濃インクの本来の目的が達成されなくなるので、適切ではない。また、1,2−アルカンジオールなど、液体の表面張力を下げやすい水溶性有機溶剤を含有するインクに関する提案がある(特許文献1参照)。
また、色材を含有しないクリアインクを利用することについての検討もなされている。例えば、ポリマー微粒子を含有するクリアインクに関する提案がある(特許文献2参照)。また、平均粒径が異なる2種類の樹脂粒子を含有するクリアインクに関する提案がある(特許文献3参照)。さらに、中空の樹脂粒子を含有する油性インクに関する提案がある(特許文献4参照)。
特開2005−194500号公報 特開2003−335058号公報 特開2004−263049号公報 特開2008−248220号公報
しかし、本発明者らの検討の結果、上記で挙げたような従来の技術には以下のような問題があることがわかった。先ず、特許文献1に記載された顔料インクは1,2−アルカンジオールを含有しているため、記録媒体に形成されるインクのドットの平滑性が高まるが、濃インクで記録した画像の写像性や発色性は不十分であった。また、特許文献2に記載された樹脂粒子は記録媒体の表面上に残りにくく、樹脂粒子を使用する効果がほとんど発揮されないため、写像性が得られない。一方、特許文献3に記載された、平均粒径の異なる2種類以上の樹脂粒子を含有するクリアインクを使用すれば、高光沢、すなわち高グロスな画像は得られたものの、濃インクで記録した画像の写像性は不十分であった。また、本発明者らは特許文献4の記載を参考に、中空の樹脂粒子を合成した後、内部の空隙を水溶性有機溶剤で満たした樹脂粒子を調製し、検討を行ったが、濃インクで記録した画像の写像性や発色性は不十分であった。
したがって、本発明の目的は、顔料インクで記録した画像の写像性及び発色性を共に向上することができるクリアインクを提供することにある。より具体的には、顔料の含有量が多いために写像性が低下しやすいインクと組み合わせて用いた場合でも、写像性と発色性に優れた画像が得られるクリアインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記のクリアインクを用いたインクジェット記録方法及びインクセットを提供することにある。
上記の目的は下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるクリアインクは、樹脂粒子を含有するクリアインクであって、前記樹脂粒子は、その平均粒径が220nm以上であり、かつ、Fedors法により求められるSP値が11.0(cal/cm31/2以上15.0(cal/cm31/2以下の水溶性有機溶剤を含むとともに、合成の際に前記水溶性有機溶剤を予め添加して得られたものであり、前記水溶性有機溶剤が、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、及びジエチレングリコールの少なくともいずれかであり、前記樹脂粒子の水分散液を80,000rpm、15時間遠心分離処理して沈降させたものを40℃で3時間乾燥させて得た試料について、以下に示す(1)〜(3)の昇温プログラムで加熱する熱重量分析を行って得た「A−B」の値が、「B−C」の値に対する比率で0.100倍以上であることを特徴とする。
(1)室温から60℃まで10℃/分の速度で昇温し、60℃で30分間維持した後の成分の質量をAとする。
(2)60℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、200℃で30分間維持した後の成分の質量をBとする。
(3)200℃から600℃まで10℃/分の速度で昇温した後の成分の質量をCとする。
本発明によれば、顔料インクで記録した画像の写像性及び発色性を共に向上することができるクリアインクを提供することができる。より具体的には、顔料の含有量が多いために写像性が低下しやすいインクと組み合わせて用いた場合でも、写像性と発色性に優れた画像が得られるクリアインクを提供することができる。また、本発明の別の実施態様によれば、上記のクリアインクを用いたインクジェット記録方法及びインクセットを提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
まず、顔料インクで記録される画像の発色性を向上させるにあたり、本発明者らは顔料インクと染料インクとで、得られる画像の発色性の違いに注目した。色材が記録媒体に浸透して定着する染料インクと異なり、顔料インクでは記録媒体の表面上に100nm程度の粒径を有する顔料粒子が定着して画像が形成される。このため、顔料インクで記録された画像の表面には凹凸が生じやすい。画像表面に光が入射すると、この凹凸により光の散乱が生じ、発色性が低下する。この散乱を抑制し、画像の発色性を向上するための検討を行った結果、本発明者らは、顔料インクと共に、特定の樹脂粒子を含有するクリアインクを用いるのが有効であることを見出した。この理由は、顔料インクで記録された画像表面の凹凸がクリアインク中の樹脂粒子によって埋まり、画像表面の平滑性が高まることで、光の散乱が抑えられ、発色性が向上したためであると考えられる。
本発明者らは、この検討の過程で、発色性を向上するために好適な樹脂粒子の特性を見出した。具体的には、まず、単量体の組成を揃え、平均粒径を異ならせた種々の樹脂粒子を合成し、各樹脂粒子を添加したクリアインクと、顔料インクとを用いて画像を記録し、その発色性について検討を行った。その結果、平均粒径の大きい樹脂粒子を添加したクリアインクを用いた場合の方が、得られる画像の発色性が高くなる傾向があった。この理由を本発明者らは以下のように考えている。平均粒径が大きな樹脂粒子を使用した場合、記録媒体に形成される樹脂層は、密に詰まった構造とならず、樹脂粒子が存在することによって空隙が形成される。その結果、樹脂層の屈折率が下がり、画像の発色性が高くなったと考えられる。
しかし、上記のような樹脂粒子を含有するクリアインクを用いても、得られる画像の写像性のレベルは不十分であった。本発明者らはこの原因についても検討を行った結果、クリアインクの複数のドット間に段差があることが原因で写像性が不十分となっていることがわかった。そこで、本発明者らは、ドット同士の相溶性を高めることにより、ドット間の段差をなくし、樹脂層の表面を平滑にすることを考え、ドット同士の相溶性を高めるための方法について検討を行った。その結果、樹脂粒子として、特定の水溶性有機溶剤をある程度の比率として含むものを用いることで、画像の写像性を向上できることがわかった。
従来、クリアインクには水溶性有機溶剤を含有させてきた。このようなクリアインクを記録媒体に付与すると、ドットが形成される際に、水溶性有機溶剤の大部分が記録媒体に短時間で吸収され、それによってドットが急速に定着する。それに対し、本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、当該樹脂粒子が特定の水溶性有機溶剤を含んだ状態となっている。このため、前記樹脂粒子を添加したクリアインクが記録媒体に付与され、ドットが形成される際に、クリアインク中の水溶性有機溶剤は記録媒体に浸透するが、ドットの乾燥は、樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の作用によって抑制される。その結果、ドットが定着するまでにかかる時間を延ばすことができ、複数のドット同士が重なった際の相溶性が高まる。このようにして、表面が平滑な樹脂層が形成され、画像の写像性が向上するものと考えられる。
本発明のクリアインクは、その平均粒径が220nm以上であり、かつ、SP値が11.0以上15.0以下の水溶性有機溶剤を当該樹脂粒子の固形分の質量に対する比率で0.100倍以上含む樹脂粒子を含有させる。かかる構成のクリアインクにより、顔料インクで記録した画像の発色性及び写像性を向上することができる。
<クリアインク>
以下、本発明のクリアインクを構成する各成分について説明する。本発明のクリアインクは、無色、乳白色、ないしは白色であることが好ましい。特には、純水で50倍(質量倍)に希釈したクリアインクの吸光スペクトルが、400nm乃至800nmの範囲においてピークを有さず、かつ400nm乃至800nmの範囲におけるabs値が1.0以下であることが好ましい。また、本発明のクリアインクは、記録媒体に付与された際に無色透明の膜を形成できることが好ましく、具体的には、染料や顔料などの色材を含有しないことが好ましい。
(樹脂粒子)
本発明のクリアインクには、その平均粒径が220nm以上であり、かつ、SP値が11.0以上15.0以下の水溶性有機溶剤を当該樹脂粒子の固形分の質量に対する比率で0.100倍以上含む樹脂粒子を含有させる。クリアインク中の樹脂粒子の固形分の含有量(質量%)は、クリアインク全質量を基準として、0.2質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。樹脂粒子の固形分の含有量が0.2質量%未満であると、十分な量の樹脂粒子を記録媒体の表面上に存在させることができず、画像の写像性をより高める効果が十分に得られない場合がある。一方、樹脂粒子の固形分の含有量が5.0質量%超であると、クリアインク中の樹脂粒子の固形分の含有量が多くなりすぎ、クリアインクを記録媒体に付与した際に形成されるドットが高くなるため、画像の写像性をより高める効果が十分に得られない場合がある。加えて、インクジェット用のクリアインクとして必要となる吐出安定性が高いレベルで十分に得られない場合がある。
本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、平均粒径が220nm以上であることを要する。平均粒径は、220nm以上400nm以下であることが好ましく、220nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。平均粒径が220nm未満であると、クリアインク中の樹脂粒子により形成される樹脂層中に空隙が存在しにくくなるため、樹脂層の屈折率を下げることができず、画像の発色性が得られない。また、平均粒径が400nm超であると、インクジェット用のクリアインクとして必要となる吐出安定性が高いレベルで十分に得られない場合がある。なお、本発明における樹脂粒子の平均粒径とは、樹脂粒子について動的光散乱法(DLS)で測定した体積基準の平均粒径(D50)を意味する。後述する実施例では、樹脂粒子を含有する水分散液を用いて平均粒径を測定したが、クリアインクを用いても同様に平均粒径を測定することができる。
また、本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、SP値が11.0以上15.0以下の水溶性有機溶剤を含み、樹脂粒子中の該水溶性有機溶剤の含有量の比率が、前記樹脂粒子の固形分の質量に対する比率で0.100倍以上であることを要する。樹脂粒子中の上記水溶性有機溶剤の含有量の比率は、0.100倍以上0.250倍以下であることが好ましく、0.100倍以上0.200倍以下であることがさらに好ましい。上記含有量の比率が0.100倍未満であると、クリアインクが記録媒体に付与されて、ドットが形成される際に、ドットが定着するまでにかかる時間を延ばすことができない。このため、複数のドット同士が重なった際の相溶性が高められないので、画像の写像性が得られない。
本発明においては、樹脂粒子として、当該粒子中に特定の水溶性有機溶剤を特定の比率で含むものを用いる。樹脂粒子を構成する樹脂の分子鎖は立体的に絡み合っているため、いわばスポンジのような構造を有する。このスポンジのような構造を有する樹脂粒子は、液体成分を含浸した状態で保持することができ、本発明のクリアインクには、このような状態として特定の水溶性有機溶剤が含まれる樹脂粒子を用いる。樹脂粒子に含まれる特定の水溶性有機溶剤は、樹脂成分との相互作用も生じ、また、毛管力によって含浸された状態が保たれるので、クリアインク中に溶出することはないと考えられる。
本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、SP値が11.0以上15.0以下である水溶性有機溶剤を含むことを要する。水溶性有機溶剤のSP値が11.0未満の場合、その水溶性が低いため、樹脂粒子中に水溶性有機溶剤を含ませることはできるが、樹脂粒子中における水溶性有機溶剤の分布状態が不均一となりやすく、ミクロドメイン構造のようになっていると推測される。そのため、上記したような、樹脂粒子に含まれている水溶性有機溶剤の作用によって、ドットの乾燥を抑制することができず、写像性を向上することができない。一方、水溶性有機溶剤のSP値が15.0超であると、その水溶性が高すぎるため、樹脂粒子を構成する樹脂と水溶性有機溶剤との相互作用が小さくなり、樹脂粒子中に水溶性有機溶剤を十分に含ませることが困難となる。また、その結果、220nm以上という大きな粒径の樹脂粒子を得ることも非常に困難となり、画像の写像性や発色性を向上することができない。画像の写像性をより高いレベルとすることができるため、水溶性有機溶剤のSP値は14.0以下であることが好ましく、そのような水溶性有機溶剤の中でも、1,2−ヘキサンジオールや2−ピロリドンを用いることが特に好ましい。
本発明において水溶性有機溶剤の規定に利用するSP値(δ)[単位:(cal/cm31/2]は、Fedors法により求められる値である。SP値は「溶解性パラメーター」とも呼ばれる値であり、溶質のSP値と、溶媒のSP値との差が小さいほど、溶媒への溶質の親和性が大きくなる傾向にある。具体的には、下記式(1)によって水溶性有機溶剤のSP値(δ)を算出することができる。下記式(1)中、ΔEvapは水溶性有機溶剤のモル蒸発熱(cal/mol)を示し、Vは25℃における水溶性有機溶剤のモル体積(cm3/mol)を示す。なお、水溶性有機溶剤のモル蒸発熱(ΔEvap)と、25℃における水溶性有機溶剤のモル体積(V)は、いずれも分子中の原子や基に帰属する一定値の足し合わせで求められる。なお、SP値の単位はcalを利用するのが一般的であるが、SI単位系に換算する際には、(cal/cm31/2=2.046×103(J/m31/2の関係を利用すればよい。以下の記載においては、SP値の単位は省略することがあるが、SP値は(cal/cm31/2の単位で表される値である。
Figure 0005677522
SP値[単位:(cal/cm31/2]が11.0以上15.0以下である水溶性有機溶剤の具体例としては、括弧内にSP値を示すと、ジエチレングリコール(15.0)、1,5−ペンタンジオール(14.2)、トリエチレングリコール(13.6)、1,6−ヘキサンジオール(13.5)、1,2−ヘキサンジオール(13.4)、N、N−ジメチルホルムアミド(11.6)、n−ブタノール(11.3)、2−ピロリドン(11.2)などが挙げられる。本発明においては、SP値が11.0以上15.0以下である水溶性有機溶剤の中でも、25℃における蒸気圧が水よりも低いものを用いることが特に好ましい。なお、参考までに、SP値が15.0超、又は、11.0未満の水溶性有機溶剤としては、括弧内にSP値を示すと、グリセリン(20.0)、エチレングリコール(17.8)、1,2,6−ヘキサントリオール(16.0)、t−ブタノール(10.9)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(10.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(10.3)、N−メチル−2−ピロリドン(10.1)、アセトン(9.1)、メチルエチルケトン(9.0)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(8.2)、テトラヒドロフラン(7.3)などが挙げられる。
〔樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の分析方法〕
本発明のクリアインクに用いる樹脂粒子は水溶性有機溶剤を含むものである。ある樹脂粒子が水溶性有機溶剤を含むものか否か、また、樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の含有量の比率は、例えば、熱重量分析法(TGA)によって知ることができる。なお、水溶性有機溶剤の種類は、LC/MSなどの常法によって分析することができる。
本発明のクリアインクに用いる樹脂粒子の熱重量分析を行う場合、まず、樹脂粒子を含有する液体を、80,000rpm、15時間遠心分離処理を行うことにより、液体中の樹脂粒子を沈降させる。その後、40℃で3時間乾燥させることで、液体成分(樹脂粒子に含まれるもの以外)を除去したものを熱重量分析の試料として用いる。そして、以下のような昇温プログラムで試料を加熱した際の重量変化により、樹脂粒子が水溶性有機溶剤を含むものであるか否かを確認することができる。
(1)室温から60℃まで10℃/分の速度で昇温し、60℃で30分間維持した後の成分の質量をAとする
(2)60℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、200℃で30分間維持した後の成分の質量をBとする
(3)200℃から600℃まで10℃/分の速度で昇温した後の成分の質量をCとする
「B−C」が樹脂粒子の固形分の質量を示し、「A−B」が樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の質量を示す。水溶性有機溶剤を含まない樹脂粒子であれば「A−B」が0となる。樹脂粒子の固形分の質量(「B−C」)に対する水溶性有機溶剤(「A−B」)の質量の比率X(%)は、X={(A−B)/(B−C)}の式から求めることができる。なお、樹脂粒子の固形分の質量(「B−C」)は、樹脂粒子の合成に用いた単量体の質量の和から求めることもできる。後述する実施例では、樹脂粒子を含有する水分散液を用いて上記の分析を行ったが、クリアインクから適切な方法により樹脂粒子を分取し、水中に分散した液体を用いても同様に分析を行うことができる。
本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子を構成する樹脂の酸価は、110mgKOH/g以上170mgKOH/g以下であることが好ましく、120mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂の酸価が110mgKOH/g未満であると、樹脂粒子の疎水性が高くなるため分散安定性が十分に得られない。結果として、当該樹脂粒子を含有するクリアインクにおいて、インクジェット用のクリアインクとして必要となる吐出安定性が十分に得られない場合がある。また、樹脂粒子の疎水性が高くなるため、記録媒体にクリアインクが付与された際に、樹脂粒子が広がって存在しにくくなり、写像性をより向上する効果が十分に得られない場合がある。一方、樹脂粒子を構成する樹脂の酸価が170mgKOH/gを超えると、発色性をより向上する効果が十分に得られない場合がある。樹脂の酸価が高いと、クリアインクを構成する水性媒体中での樹脂粒子の分散状態が安定化されるが、このような樹脂粒子を含有するクリアインクを記録媒体に付与すると、記録媒体の内部に浸透する樹脂粒子の割合が増えることになる。したがって、記録媒体の表面上に残存する樹脂粒子の割合は減るため、発色性をより高いレベルにまで向上する効果が十分に得られなくなる場合があると考えられる。
〔合成方法〕
本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子の合成方法は、特定の水溶性有機溶剤を特定の比率で含む樹脂粒子が得られるものであればいずれの方法であってもよい。例えば、中空の樹脂粒子を合成し、水溶性有機溶剤を注入する方法(特許文献4に記載の方法)や、樹脂粒子の合成の際に特定の水溶性有機溶剤を予め添加しておく方法などがある。本発明においては、樹脂粒子の合成の際に特定の水溶性有機溶剤を予め添加しておく方法を用いることが好ましい。このような合成方法によれば、特定の水溶性有機溶剤と樹脂成分との相互作用が強く働き、多くの水溶性有機溶剤を樹脂粒子に含浸した状態で含ませることができる。さらに、このような方法で合成された樹脂粒子は、クリアインクに添加した際に、当該樹脂粒子に取り込まれた水溶性有機溶剤がクリアインク中へ溶出することなく、樹脂粒子内に水溶性有機溶剤を安定に存在させることができる。
一方、中空の樹脂粒子を合成し、水溶性有機溶剤を注入する方法では、樹脂粒子の合成の際に特定の水溶性有機溶剤を予め添加しておく方法と比較して、得られた樹脂粒子中の水溶性有機溶剤の分布が均一とならない。この方法により合成された樹脂粒子は、いわば粒子を構成する樹脂成分と水溶性有機溶剤とがミクロドメイン構造(海島構造)をとっている。このため、このような樹脂粒子を含有するクリアインクを記録媒体に付与してもドットの乾燥を十分に抑制することができず、写像性を十分なレベルにまで向上することが難しい場合があるため最良の方法とは言えない。
本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、後述する特定の重合方法により得られたコアシェル構造を有する形態であることが好ましい。樹脂粒子がコアシェル構造を有することで、コア部分とシェル部分とで明確に機能分離される。このようなコアシェル構造を有する樹脂粒子は、単層構造の樹脂粒子と比較して、より多くの機能をクリアインクに付与することができるという利点があり、画像の写像性を高いレベルで得ることができる。本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、シェルポリマーと、前記シェルポリマーの存在下で重合して形成されたコアポリマーとを備えたコアシェル構造を有するものであることがさらに好ましい。本発明において、このような合成方法により得られたコアシェル構造を有する樹脂粒子が好ましいのは、以下のような理由による。上記の合成方法においては、水溶性が相対的に高いシェルポリマーの内部に、水溶性が相対的に低いコアポリマーが選択的に取り込まれながら重合が進む。このため、コア成分の仕込み単量体に由来するユニットが内側に、また、シェル成分の仕込み単量体に由来するユニットが外側に配置され、コアポリマーがシェルポリマーに被覆された、コアシェル構造を有する樹脂粒子を合成することができる。さらに、このような方法を用いることで、所望のコア/シェルの比率を有する樹脂粒子を容易に合成することもできる。この場合、シェルポリマーとコアポリマーとの水溶性の差を大きくすることにより、コアシェル比をより的確にコントロールして樹脂粒子を合成することができるため、特に好適である。
具体的には、本発明のクリアインクに含有させるコアシェル構造を有する樹脂粒子は、以下のように合成することが好ましい。先ず、シェルポリマーの合成のため、有機溶剤中で単量体の溶液重合を行い、生成物を減圧下で乾燥させて脱溶剤した後、アルカリ剤で生成物を中和することで、シェルポリマーの水溶液又は水分散液を得る。次に、このようにして得られたシェルポリマーの存在下で、コアポリマーとなる単量体を重合させることで、コアシェル構造を有する樹脂粒子を得る。本発明においては、特定の水溶性有機溶剤を含む樹脂粒子を得るために、シェルポリマーと特定の水溶性有機溶剤の存在下で、コアポリマーとなる単量体を重合させることが特に好ましい。なお、シェルポリマーの合成方法は上記の方法に限られず、得られる樹脂粒子が本発明の規定を満足するものであればどのような方法により合成されたものであってもよい。
一般に、コアシェル構造を有する樹脂粒子の合成方法としては、上記で説明した方法の他に、以下のような方法もある。先ず、乳化剤の存在下でコア成分の単量体を重合することで、核となるコア粒子を合成した後、さらにシェル成分の単量体を重合することでコアシェル構造を有する樹脂粒子を合成する方法が挙げられる。しかし、この合成方法では、コア部分とシェル部分との境界において樹脂が相互作用を起こしやすく、コア部分とシェル部分が十分に機能分離されていない樹脂粒子となる場合がある。また、重合性を有する乳化剤などを用いても、同様にコア部分とシェル部分との境界においてポリマーが相互作用を起こしやすくなる。このため、例えば、コアポリマーを意図的に架橋させる、ないしはシェルポリマーを意図的に架橋させるなどの工夫を行わない限り、結果的に意図したコアシェル構造を有する樹脂粒子とはならない場合が多くなる。
本発明においては、コアシェル構造を有する樹脂粒子が、シェルポリマーと、シェルポリマー及び水溶性有機溶剤の存在下で、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体(b)を重合して形成されたコアポリマーとを備えたコアシェル構造を有することが好ましい。そして、前記シェルポリマーが、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体(a)に由来するユニットと、α,β−エチレン性不飽和親水性単量体から選ばれる単量体に由来するユニットと、を少なくとも有する共重合体であることが好ましい。シェルポリマーと水溶性有機溶剤の存在下でコアポリマーを重合することで、水溶性が相対的に高いシェルポリマーの内部に、水溶性が相対的に低いコアポリマーが選択的に取り込まれながら重合が進む。このため、コア成分の仕込み単量体に由来するユニットが内側に配置され、シェル成分の仕込み単量体に由来するユニットが外側に配置され、コアポリマーがシェルポリマーに被覆された、コアシェル構造を有する樹脂粒子を合成することができる。また、この合成方法によれば、コアポリマーにも十分に水溶性有機溶剤を含ませることができ、画像の写像性を高いレベルで得ることができる。
画像の写像性を高いレベルで得ることができるため、本発明のクリアインクにおいては、当該クリアインクに含有される樹脂粒子が、ソープフリー法で合成されたものであることが好ましい。コアシェル構造を有する樹脂粒子についても、シェルポリマーとコアポリマーの両方をソープフリー法で合成することが好ましい。なお、ソープフリー法とは、乳化剤や界面活性剤を用いないで樹脂を合成する方法をいう。
コアシェル構造を有する樹脂粒子における、シェルポリマーの酸価は、150mgKOH/g以上350mgKOH/g未満であることが好ましい。また、コアポリマーとシェルポリマーとの比率が、質量基準で、コア/シェル=0.33以上1.5以下であることが好ましい。さらに、シェルポリマーの重量平均分子量が3,000以上50,000以下であることが好ましい。
〔単量体〕
本発明のクリアインクに含有させる樹脂粒子を構成するための単量体ユニットとしては、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体、及びα,β−エチレン性不飽和親水性単量体、に由来するユニットが好適に用いられる。以下、本発明においては、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのことを示す。
重合により疎水性ユニットとなる単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの直鎖状構造の飽和アルキル基含有単量体;(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチルなどの分岐鎖状構造の飽和アルキル基含有単量体;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;アルキルビニルエーテル、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、酢酸ビニルなどのビニル化合物類;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香族含有不飽和単量体;イタコン酸ベンジルなどのイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチルなどのマレイン酸エステル;フマール酸ジメチルなどのフマール酸エステル;アクリロニトリル;メタクリロニトリルなどの、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体が挙げられる。
また、重合により親水性ユニットとなる単量体(メタ)アクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのカルボキシ基を有する単量体及びその誘導体;スチレンスルホン酸、スルホン酸−2−プロピルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、アクリルアミド−t−ブチルスルホン、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体及びその誘導体;2−ホスホン酸エチル(メタ)アクリル酸エステル、ビニルホスホン酸などのリン酸基を有する単量体及びその誘導体などのアニオン性基を有する単量体やその塩などの、α,β−エチレン性不飽和親水性単量体が挙げられる。アニオン性基を有する単量体の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。さらに、本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない限り、上記で挙げたようなモノマー以外にも、一般的なモノマーを使用することができる。
(水性媒体)
本発明のクリアインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明のクリアインクは、水性媒体として少なくとも水を含む、水性のクリアインクであることが好ましい。クリアインク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、クリアインク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この水溶性有機溶剤の含有量は、クリアインク中に溶解した状態で含有されるものについての値であり、樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の含有量は含まない。水溶性有機溶剤は、インクジェット用のクリアインクに用いることができる水溶性有機溶剤がいずれも使用できる。具体的には、1価アルコール類、多価アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤類、含硫黄極性溶剤類などが挙げられる。また、水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。クリアインク中の水の含有量(質量%)は、クリアインク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の樹脂)
本発明のクリアインクには、上記で説明した樹脂粒子の他にも、別の樹脂を添加することができる。このような樹脂は、水性媒体中に樹脂粒子をさらに安定して分散させるための分散剤として用いても、又は画像の耐擦過性を向上させるなどの他の目的でクリアインクに添加してもよい。
樹脂粒子の他に使用することができる樹脂は、どのような樹脂であってもよい。例えば、上記のように樹脂粒子に使用される単量体ユニットを含んで構成されるアクリル酸系樹脂などが挙げられる。本発明においては、具体的には、上記で挙げたような、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体と、α,β−エチレン性不飽和親水性単量体から選ばれる単量体とを少なくとも用いて合成された樹脂を用いることが好ましい。中でも、芳香族基含有不飽和単量体などの疎水性単量体と、カルボキシ基を有する単量体及びその誘導体などの親水性単量体とを少なくとも用いて合成された樹脂が特に好ましい。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。また、ロジン、シェラック、デンプンなどの天然樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であることが好ましい。
クリアインク中の上記樹脂粒子以外の樹脂の含有量(質量%)は、クリアインク全質量を基準として、5.0質量%以下であることが好ましい。また、樹脂の重量平均分子量は、1,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂の酸価は、40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
(その他の成分)
本発明のクリアインクは、上記成分の他に、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。クリアインク中のこれらのような水溶性有機化合物の含有量(質量%)は、クリアインク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて所望の物性値を有するクリアインクとするために、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有してもよい。
<顔料インク>
本発明のクリアインクは、顔料インクと組み合わせてクリアインクとのインクセットとしても用いることができる。以下、本発明のクリアインクと共に使用可能な顔料インクを構成する各成分について説明する。
(顔料)
顔料インクに用いる色材は、当該技術分野で公知のカーボンブラックなどの無機顔料や有機顔料が挙げられる。顔料の分散方式としては、顔料粒子の表面に親水性基や樹脂を結合させた自己分散顔料とすることのほか、樹脂分散顔料、マイクロカプセル顔料とすることなどの公知の分散方式を使用することができる。顔料インク中の顔料の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、顔料インクとして、互いに同じ色相を有し、色材の含有量がそれぞれ異なる複数のインクを用いる場合、上記の含有量の範囲内において、各インクにおける顔料の含有量が段階的に異なるように適宜決定すればよい。例えば、濃インクとする場合、顔料インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上6.0質量%以下であることがさらに好ましい。淡インクとする場合には、濃インクとする場合よりも顔料の含有量を少なくすればよい。具体的には、淡インクとする場合、顔料インク中の顔料の含有量は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%以上1.5質量%未満であることが特に好ましい。顔料の平均粒径(動的光散乱法で測定した体積基準の平均粒径)は50nm以上150nm以下、さらには80nm以上130nm以下であることが好ましい。
(樹脂成分)
顔料インクには、上記で説明した樹脂分散顔料とする場合に分散剤として使用する樹脂の他に、さらに別の樹脂を添加することができ、また、自己分散顔料やマイクロカプセル顔料とする場合にもさらに樹脂を添加することができる。このような樹脂は、水性媒体中に顔料をさらに安定して分散させるためとして用いても、又は画像の耐擦過性や記録媒体への顔料の定着性を向上させるなどの他の目的でインクに添加してもよい。
顔料インクに添加する樹脂は、どのような樹脂であってもよい。例えば、上記で説明したような、本発明のクリアインクに使用する樹脂粒子や、該樹脂粒子に使用される単量体ユニットを含んで構成されるアクリル酸系樹脂などが挙げられる。本発明においては、具体的には、上記で挙げたような、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体と、α,β−エチレン性不飽和親水性単量体から選ばれる単量体とを少なくとも用いて合成された樹脂を用いることが好ましい。中でも、芳香族基含有不飽和単量体などの疎水性単量体と、カルボキシ基を有する単量体及びその誘導体などの親水性単量体とを少なくとも用いて合成された樹脂が特に好ましい。顔料インクに添加することができる樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。これらの樹脂は、塩基を溶解した水溶液に可溶なアルカリ可溶型樹脂であることが好ましい。
顔料インク中の樹脂の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、樹脂の重量平均分子量は、1,000以上15,000以下であることが好ましい。樹脂の酸価は、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下、さらには90mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
顔料インクに添加する樹脂は、本発明のクリアインクに添加する樹脂粒子と同じものであっても、又は、異なるものであってもよい。しかし、本発明においては、記録媒体における顔料インクとクリアインクとの相溶性の観点から、クリアインクに含有させる樹脂粒子と同じものを顔料インクにも含有させることが特に好ましい。クリアインク及び顔料インクの両方に同じ種類の樹脂粒子を含有させることでインク同士の相溶性が高まり、画像の発色性を高いレベルで得ることができる。また、顔料インクとして、互いに同じ色相を有し、色材の含有量がそれぞれ異なる複数のインクを用いる場合、全ての顔料インク、又は、一部の顔料インクにのみ、樹脂粒子を含有させてもよい。さらに、色相が異なる複数のインクを用いる場合にも、全ての顔料インク、又は、一部の顔料インクにのみ、樹脂粒子を含有させてもよい。例えば、光沢均一性をより高いレベルで達成するために一部のインクにのみ樹脂粒子を含有させてもよく、また、耐ブロンズ性などを向上させるために、全てのインクに樹脂粒子を含有させてもよい。さらに、上記の複数のインクに樹脂粒子を含有させる場合は、各インクに使用する樹脂粒子は同じものであっても、又は、異なるものであってもよい。しかし、本発明においては、記録媒体における顔料インクとクリアインクとの相溶性の観点から、全ての顔料インクに同じ樹脂粒子を含有させることが好ましい。さらには、インクセットを構成するクリアインク及び全ての顔料インクが同じ樹脂粒子を含有することが特に好ましい。
(水性媒体及びその他の成分)
顔料インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。顔料インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、クリアインクに使用可能なものとして挙げた水溶性有機溶剤と同様のものを使用することができる。水は脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。顔料インク中の水の含有量(質量%)は、顔料インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、顔料インクには、上記のクリアインクに使用可能なものとして挙げたその他の成分と同様のものを使用することができる。
<記録媒体>
本発明のクリアインクを付与する記録媒体はどのようなものであってもよいが、顔料インク中の顔料やクリアインク中の樹脂粒子を記録媒体の表面上に存在させることができるような記録媒体を用いることが好ましい。このような記録媒体としては、例えば、膨潤型や吸収型の記録媒体が挙げられる。このため、本発明のクリアインクを付与する場合、表面に光沢を有する記録媒体を用いることが好ましい。具体的には、記録媒体表面の20°グロスの値が10以上であるような記録媒体を用いることが好ましい。なお、20°グロスの値は、例えば、マイクロヘイズメーター(BYKガードナー製)を用いて測定することができる。
このような特性を有する記録媒体としては、例えば、以下のものを挙げることができる。キヤノン写真用紙・光沢 ゴールドGL−101、キヤノン写真用紙・光沢 プロフェッショナルPR−201(以上、キヤノン製)。写真用紙クリスピア 高光沢、写真用紙光沢(以上、エプソン製)。画彩写真仕上げPro、画彩写真仕上げHi(以上、富士フイルム製)。勿論、本発明のクリアインクを付与することができる記録媒体はこれらに限られるものではない。
<インクジェット記録方法>
本発明のクリアインクは、クリアインクを記録媒体に付与する本発明のインクジェット記録方法に用いる。また、本発明の別のインクジェット記録方法は、クリアインクと少なくとも1種の顔料インクとを用いるインクジェット記録方法であって、以下の工程を有することを特徴とする。すなわち、前記顔料インクを用いて記録媒体に記録を行う工程(I)、及び、前記クリアインクを記録媒体に付与する工程(II)、を有する。そして、クリアインクとして上記で説明した本発明のクリアインクを用いる。これらの工程(I)及び工程(II)は、例えば、工程(I)の後に工程(II)を行う場合、工程(II)の後に工程(I)を行う場合、さらにはこれらを組み合わせる場合などが考えられ、どのような順序で行ってもよい。しかし、本発明においては、顔料インクで記録した画像の上にクリアインクを付与することで顔料を樹脂で保護することができるため、前記記録媒体の少なくとも一部の領域において、前記工程(I)を行った後に、前記工程(II)を行うことが特に好ましい。特に、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を好ましく用いることができる。以下、この方式を中心に説明する。
上記インクジェット記録を行う場合、1ページの記録媒体において、上記工程(I)により顔料インクが記録媒体に付与される領域と、上記工程(II)によりクリアインクが記録媒体に付与される領域とが、少なくとも一部で重なるようにすることが好ましい。本発明の目的のひとつは、顔料インクで記録された画像の発色性を高めることにある。したがって、上記工程(I)により顔料インクが記録媒体に付与される領域を含むように、上記工程(II)によりクリアインクを付与する領域を決定することが特に好ましい。
なお、本発明のクリアインクを記録媒体に付与する方法は特に限定されるものではない。しかし、本発明のインクジェット記録方法においては、クリアインク及び顔料インクをいずれもインクジェット方式により吐出して記録媒体に記録を行うことが特に好ましい。このようなインクジェット記録方法は、顔料インクで記録した画像を少なくとも含む領域など、意図した領域にクリアインクを的確に付与することができ、また、クリアインクの付与量も適切に調整することができるためである。なお、インクジェット方式による顔料インク及びクリアインクの付与量は、記録デューティなどを適切に決定することで調節できる。
<インクセット>
本発明のクリアインクは、少なくとも1種の顔料インクと組み合わせて、クリアインクと顔料インクとを有するインクセットとして用いることができる。顔料インクの色相は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、グリーン、及びブルーなどの各インクから1種又は2種以上を選択することができる。また、インクセットを構成する顔料インクとして、上記のインクと互いに同じ色相を有し、顔料の含有量がそれぞれ異なる複数のインクを用いてもよい。このような複数のインクの組み合わせとしては、ブラック、淡ブラック、グレー、及び淡グレーなどのブラックの色相を有するインクが挙げられる。また、濃シアン、中シアン、及び淡シアンなどのシアンの色相を有するインク、さらには、濃マゼンタ、中マゼンタ、及び淡マゼンタなどのマゼンタの色相を有するインクが挙げられる。勿論、本発明はこれらの色相のインクに限られるものではなく、また、濃、中、淡などのインクの名称もこれらに限られるものではない。本発明においては、インクセットを構成する顔料インクの少なくとも1種に、クリアインクに含有させるものと同じ樹脂粒子を含有させることが特に好ましい。勿論、インクセットを構成する複数の顔料インクに、上記樹脂粒子を含有しない顔料インクが含まれていてもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。なお、文中「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<樹脂粒子の合成>
(樹脂粒子P1〜P10及びP13〜P20)
以下の手順にしたがって、ソープフリー法によりコアシェル構造を有する樹脂粒子P1〜P10及びP13〜P20を合成した。先ず、シェルポリマーS1〜S3を合成した。具体的には、撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部のエチレングリコールモノブチルエーテル(溶媒)を添加した後、フラスコ内の反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で表1に示す反応温度に昇温させた。このフラスコに、表1に示す種類及び組成比(単位:部)の各単量体の混合物と、表1に示す使用量(単位:部)のt−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)を含むエチレングリコールモノブチルエーテル溶液を3時間かけて滴下した。その後、エージングを2時間行い、さらにエチレングリコールモノブチルエーテルを減圧下で除去して、固形の樹脂を得た。このようにして得られた樹脂を、その酸価と当量の水酸化カリウム及び適量のイオン交換水を加えて80℃で中和溶解して、シェルポリマー(固形分)の含有量が30.0%であるシェルポリマーの水溶液を得た。このようにして得られたシェルポリマーS1〜S3の酸価及び重量平均分子量の値を表1に示した。
Figure 0005677522
次いで、シェルポリマーの存在下でコアポリマーを重合し、コアシェル構造を有する樹脂粒子P1〜P10及びP13〜P20を合成した。具体的には、撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、上記で得られた各シェルポリマーの水溶液を樹脂の固形分が表2に示す使用量(単位:部)となるように添加した。さらに、樹脂粒子に含浸させるための表2に示す種類及び使用量(単位:部)の水溶性有機溶剤を添加した。その後、フラスコ内の反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で表2に示す反応温度に昇温させた。このフラスコに、表2に示す種類及び使用量(単位:部)の各単量体の混合物(単量体の略記号は表1と同様である)と、水16.7部に表2に示す使用量の過硫酸カリウム(重合開始剤)を溶解した液体とを3時間かけて滴下した。そして、エージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、コアシェル構造を有する樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%であるコアシェル構造を有する樹脂粒子の水分散液を得た。このようにして得られた樹脂粒子P1〜P10及びP13〜P20は、コアポリマーがシェルポリマーに被覆された構造を有していた。また、樹脂粒子P1〜P10及びP13〜19は、特定の水溶性有機溶剤を含浸した状態で含有するものであった。なお、樹脂微粒子P13〜P20は比較例のクリアインクに使用したものである。
Figure 0005677522
上記で得られたP1〜P10及びP13〜P20の各樹脂粒子の組成比(単位:%)を表3に示した。なお、表3中の単量体の略記号は表1及び表2と同様である。
Figure 0005677522
(樹脂粒子P11)
以下の手順にしたがって、乳化剤を使用して(非ソープフリー法)コアシェル構造を有する樹脂粒子P11を合成した。水50.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)0.6部、アクリル酸−2−エチルヘキシル15.2部、メタクリル酸メチル13.6部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.5部を混合し、単量体の乳化物Aを調製した。また、水50.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)0.3部、アクリル酸−2−エチルヘキシル22.8部、メタクリル酸メチル20.4部、アクリル酸16.8を混合し、単量体の乳化物Bを調製した。
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部の水、15.0部の1,2−ヘキサンジオールを添加した後、フラスコ内の反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で80℃に昇温させた。このフラスコに、単量体の乳化物Aと5%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。その後、エージングを2時間行い、コアポリマーとなる樹脂粒子を合成した。その後、同じフラスコに、単量体の乳化物Bと5%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。さらにエージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、コアシェル構造を有する樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%である樹脂粒子P11の水分散液を得た。
(樹脂粒子P12)
以下の手順にしたがって、乳化剤を使用して(非ソープフリー法)単層の樹脂粒子P12を合成した。水100.0部、ラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)0.3部、アクリル酸−2−エチルヘキシル30.8部、メタクリル酸メチル52.4部、アクリル酸16.8部を混合し、単量体の乳化物を調製した。撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、100.0部の水、15.0部の1,2−ヘキサンジオールを添加した後、フラスコ内の反応系に窒素ガスを導入し、撹拌下で70℃に昇温させた。このフラスコに、単量体の乳化物と5%の過硫酸カリウム水溶液10.0部を3時間かけて滴下した。その後、エージングを2時間行った後、適量のイオン交換水で固形分を調整し、単層の樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%である樹脂粒子P12の水分散液を得た。
(樹脂粒子P21)
以下の手順にしたがって、比較例のクリアインクに使用した、水溶性有機溶剤を含有しない樹脂粒子P21を合成した。具体的には、特許文献2のエマルションAの記載にしたがって合成を行い、適量のイオン交換水で固形分を調整し、樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%である樹脂粒子P21の水分散液を得た。
(樹脂粒子P22)
以下の手順にしたがって、比較例のクリアインクに使用した、水溶性有機溶剤を含有しない樹脂粒子P22を合成した。具体的には、特許文献3のエマルションAの記載にしたがって合成を行い、適量のイオン交換水で固形分を調整し、樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%である樹脂粒子P22の水分散液を得た。
(樹脂粒子P23)
以下の手順にしたがって、比較例のクリアインクに使用した樹脂粒子P23を合成した。樹脂粒子P23は、中空の樹脂粒子中の空隙をジエチレングリコールジエチルエーテルで満たしたものである。具体的には、特許文献4の中空樹脂エマルション1の記載にしたがって合成を行った。その後、遠心分離処理を行い、樹脂粒子から水分を分離し、次いで、40℃で3日間減圧乾燥を行うことで、さらに水分を除去した。その後、得られた樹脂粒子を丸底フラスコに移し、樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%となるようにジエチレングリコールジエチルエーテルを添加した。この液体を超音波分散しながらアスピレーターで8時間減圧脱気処理することで、中空の樹脂粒子中の空隙をジエチレングリコールジエチルエーテルで満たした。この液体を遠心分離処理して、樹脂粒子中に含まれている以外のジエチレングリコールジエチルエーテルを除去し、樹脂粒子を適量の水に分散することで、樹脂粒子の固形分の含有量が25.0%である樹脂粒子P23の水分散液を得た。
(樹脂粒子P1〜P23の主特性)
上記で得られたP1〜P23の各樹脂粒子の主特性を表4に示す。樹脂粒子に含まれる水溶性有機溶剤の含有量の比率は、樹脂粒子の固形分の質量に対する比率(単位:倍)であり、前述した熱重量分析により測定した。また、樹脂粒子の平均粒径は、純水で50倍(体積基準)に希釈した樹脂粒子について、UPA−EX150(日機装製)を使用して、SetZero:30s、測定回数:3回、測定時間:180秒、屈折率:1.5の測定条件で測定した体積平均粒径である。
Figure 0005677522
<クリアインクの調製>
表5−1、5−2、及び5−3に示す各成分(単位:%)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)にて加圧ろ過することで、クリアインク1〜23を調製した。イオン交換水の使用量は、成分の合計量が100.0%となる含有量とした。このようにして得られた各クリアインクは無色、乳白色、ないしは白色であり、色材を含有しないものである。また、各クリアインクは、純水で50倍(質量倍)に希釈して吸光度を測定した際に、400nm乃至800nmの範囲においてピークを有さず、かつ400nm乃至800nmの範囲におけるabs値が1.0以下であった。なお、ポリエチレングリコールは平均分子量1,000のものを用いた。また、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤であり、オルフィンE1010は日信化学工業製の界面活性剤である。上記で得られたクリアインク1〜20をそれぞれカートリッジに充填した。
Figure 0005677522
Figure 0005677522
Figure 0005677522
<顔料分散液の調製>
(ブラック顔料分散液の調製)
先ず、顔料20.0部、樹脂水溶液60.0部、及び水20.0部を、0.3mm径のジルコニアビーズの充填率を80%としたビーズミル(LMZ2;アシザワファインテック製)に入れ、回転数1,800rpmで5時間分散した。なお、顔料としては、カーボンブラック(商品名:プリンテックス90;デグサ製)を用いた。また、樹脂水溶液としては、スチレン−アクリル酸共重合体であるジョンクリル678(ジョンソンポリマー製)を、酸価と当量の水酸化カリウムで中和したものを含む、樹脂(固形分)の含有量が20.0%である水溶液として用いた。その後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離を行うことにより凝集成分を除去し、さらにイオン交換水で希釈することで、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるブラック顔料分散液を得た。
(マゼンタ顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタE02;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるマゼンタ顔料分散液を得た。
(シアン顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントブルー15:3(商品名:トナーシアンBG;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるシアン顔料分散液を得た。
(レッド顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントレッド149(商品名:PVFastRedB;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるシアン顔料分散液を得た。
(イエロー顔料分散液の調製)
顔料をC.I.ピグメントイエロー74(商品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX;クラリアント製)に変更した。それ以外は、上記のブラック顔料分散液の調製と同様の手順により、顔料の含有量が15.0%、水溶性樹脂(分散剤)の含有量が9.0%であるイエロー顔料分散液を得た。
<顔料インクの調製>
表6の上段に示す各成分(単位:%)を混合した後、ポアサイズが1.2μmであるメンブレンフィルター(HDCIIフィルター;ポール製)にて加圧ろ過することで、顔料インク1〜6をそれぞれ調製した。イオン交換水の使用量は、成分の合計量が100.0%となる含有量とした。なお、ポリエチレングリコールは平均分子量1,000のものを用いた。また、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。表6の下段には、顔料インク中の顔料の含有量(単位:%)を示した。このようにして得られた顔料インク1〜6をそれぞれカートリッジに充填した。
Figure 0005677522
<評価>
上記で得られた各クリアインク及び各顔料インクをそれぞれ充填したカートリッジを、熱エネルギーの作用により吐出を行うインクジェット記録装置(商品名:PIXUS Pro9500;キヤノン製)に搭載した。このインクジェット記録装置は、縦解像度600dpi×横解像度600dpiの単位領域に、1滴当たりの質量が3.5ng(ナノグラム)であるインク滴を8滴付与する場合を、記録デューティ100%とするものである。なお、実施例の各クリアインクを記録媒体に付与した結果、これらのクリアインクはいずれも無色透明の膜を形成できるものであった。
(吐出安定性の評価)
各クリアインクを用いて、上記のインクジェット記録装置により、記録媒体(OHPフィルム CG3410;住友スリーエム製)に、記録デューティが50%であるA4サイズのベタ画像を連続して20枚分記録した。そして、目視で確認した1枚目と20枚目の画像における記録ヨレの状態から、吐出安定性の評価を行った。吐出安定性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表7に示す。本発明においては、下記の評価基準でAA、A及びBが許容できるレベル、Cが許容できないレベルとした。なお、本評価においては、クリアインクにより形成された無色透明の膜を観察しやすくするため、記録媒体としてOHPフィルムを用いたが、本発明のクリアインクを適用可能な記録媒体はこれに限られるものではない。
AA:20枚分の記録が可能であり、20枚目の画像に記録ヨレがなかった。
A:20枚分の記録が可能であり、20枚目の画像にわずかな記録ヨレがあった。
B:20枚分の記録が可能であったが、1枚目の画像と比べて20枚目の画像に記録ヨレが目立った。
C:20枚分の記録ができなかった。
Figure 0005677522
(発色性の評価)
顔料インクとクリアインクとを表8に示すように組み合わせてインクセットとした。そして、上記のインクジェット記録装置により、記録媒体(キヤノン写真用紙・光沢 ゴールド;キヤノン製)に以下の画像を記録し、記録物を作製した。顔料インクの記録デューティを10%から100%まで10%刻みに段階的に変化させた顔料インクのベタ画像と、クリアインクの記録デューティを40%デューティ(一定)としたベタ画像とが重なるように、10種のベタ画像を含むパターンを記録した。ベタ画像のサイズは、それぞれ2cm×2cmとした。この際、顔料インク及びクリアインクは、カートリッジホルダーのマゼンタインク及びグリーンインクのポジションにそれぞれセットし、顔料インクを付与した後にクリアインクを重なるように付与して、8パス片方向で記録を行った。
上記で得られた記録物を常温で24時間保存した後、分光光度計(Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて以下のように測色し、発色性の評価を行った。ブラックインクを用いた場合は画像の光学濃度を測定し、10種の画像のうちの最大値により発色性の評価を行った。また、カラーインク(シアン、マゼンタ、イエローの各インク)を用いた場合は画像の彩度を測定し、10種の画像のうちの最大値により発色性の評価を行った。なお、彩度C*は、CIEL***表示系に基づくa*及びb*を測定し、C*={(a*2+(b*21/2の式により算出した値である。発色性の評価基準は以下の通りである。結果を表8に示す。本発明においては、下記の評価基準でAA、A及びBが許容できるレベル、Cが許容できないレベルとした。
〔ブラックインクの場合の評価基準〕
AA:光学濃度が2.20以上であった。
A:光学濃度が2.15以上2.20未満であった。
B:光学濃度が2.10以上2.15未満であった。
C:光学濃度が2.10未満であった。
〔カラーインクの場合の評価基準〕
AA:彩度が72以上であった。
A:彩度が70以上72未満であった。
B:彩度が68以上70未満であった。
C:彩度が68未満であった。
(写像性の評価)
写像性の評価に用いたものと同様の記録物を作製し、常温で24時間保存した。その後、写像性測定器ICM−1T(スガ試験機製)を用いて、測定角度:60°、光学くし幅:2.0mmの条件で、光沢値C(%)を測定し、10種の画像のうちの最低値により写像性の評価を行った。写像性の評価基準は以下の通りである。結果を表8に示す。本発明においては、下記の評価基準でAAA、AA、A及びBが許容できるレベル、Cが許容できないレベルとした。
AAA:光沢値が65%以上であった。
AA:光沢値が60%以上65%未満であった。
A:光沢値が50%以上60%未満であった。
B:光沢値が40%以上50%未満であった。
C:光沢値が40%未満であった。
Figure 0005677522
比較例2−8のクリアインク20と、実施例2−1のクリアインク1は、使用している水溶性有機溶剤の種類や、インク中に含まれる当該水溶性有機溶剤の合計の含有量が同じである。しかし、比較例2−8のクリアインク20は、1,2−ヘキサンジオールが樹脂粒子中でなく、クリアインク中に存在するものである。このため、比較例2−8は、実施例2−1と比較して発色性及び写像性が劣っていた。

Claims (12)

  1. 樹脂粒子を含有するクリアインクであって、
    前記樹脂粒子は、その平均粒径が220nm以上であり、かつ、Fedors法により求められるSP値が11.0(cal/cm31/2以上15.0(cal/cm31/2以下の水溶性有機溶剤を含むとともに、合成の際に前記水溶性有機溶剤を予め添加して得られたものであり、
    前記水溶性有機溶剤が、1,2−ヘキサンジオール、2−ピロリドン、及びジエチレングリコールの少なくともいずれかであり、
    前記樹脂粒子の水分散液を80,000rpm、15時間遠心分離処理して沈降させたものを40℃で3時間乾燥させて得た試料について、以下に示す(1)〜(3)の昇温プログラムで加熱する熱重量分析を行って得た「A−B」の値が、「B−C」の値に対する比率で0.100倍以上であることを特徴とするクリアインク。
    (1)室温から60℃まで10℃/分の速度で昇温し、60℃で30分間維持した後の成分の質量をAとする。
    (2)60℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温し、200℃で30分間維持した後の成分の質量をBとする。
    (3)200℃から600℃まで10℃/分の速度で昇温した後の成分の質量をCとする。
  2. 前記樹脂粒子を構成する樹脂の酸価が、110mgKOH/g以上170mgKOH/g以下である請求項1に記載のクリアインク。
  3. 前記樹脂粒子が、コアシェル構造を有する請求項1又は2に記載のクリアインク。
  4. 前記樹脂粒子が、ソープフリー法で合成されたものである請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクリアインク。
  5. 前記樹脂粒子が、シェルポリマーと、前記シェルポリマーの存在下でα,β−エチレン性不飽和疎水性単量体(b)を重合して形成されたコアポリマーとを備えたコアシェル構造を有し、
    前記シェルポリマーが、α,β−エチレン性不飽和疎水性単量体(a)に由来するユニットと、α,β−エチレン性不飽和親水性単量体から選ばれる単量体に由来するユニットと、を少なくとも有する共重合体である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクリアインク。
  6. 前記水溶性有機溶剤が、25℃における蒸気圧が水よりも低いものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクリアインク。
  7. 前記水溶性有機溶剤が、1,2−ヘキサンジオール及び2−ピロリドンの少なくとも一方である請求項6に記載のクリアインク。
  8. インクジェット用である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクリアインク。
  9. クリアインクを記録媒体に付与するインクジェット記録方法であって、
    前記クリアインクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリアインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  10. クリアインクと少なくとも1種の顔料インクとを用いるインクジェット記録方法であって、
    前記顔料インクを用いて記録媒体に記録を行う工程(I)、及び、前記クリアインクを記録媒体に付与する工程(II)、を有し、
    前記クリアインクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリアインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  11. 前記記録媒体の少なくとも一部の領域において、前記工程(I)を行った後に、前記工程(II)を行う請求項10に記載のインクジェット記録方法。
  12. クリアインクと顔料インクとを有するインクセットであって、
    前記クリアインクが、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリアインクであることを特徴とするインクセット。
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