JP2013018127A - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多種多様な記録媒体に対応可能であるとともに、耐擦過性を有する画像を記録可能なインクジェット記録方法を提供する。さらに、インク受容層を有する記録媒体に画像を記録した場合であっても、光沢ムラを生ずることなく、記録物を得ることができるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】顔料303及び第一の樹脂粒子302を含有するインク301、並びに、第二の樹脂粒子305を含有するコート液306を用いて、記録ヘッドの走査によって記録媒体の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法である。加熱条件下でインクを単位領域に付与する工程と、単位領域へのインクの付与が行われた後に、加熱条件下で単位領域にコート液を付与する工程と、を有し、第一の樹脂粒子の親水性に比して、第二の樹脂粒子の親水性の方が高く、顔料の50%体積平均粒子径に比して、第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の方が大きい。
【選択図】図2

Description

本発明は、インクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法において、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)で記録した画像は、色材として染料を含有するインク(染料インク)で記録した画像と比較して、耐水性、耐光性、及び耐オゾン性などの堅牢性に優れる。一方、顔料インクで記録した画像は、染料インクで記録した画像と比較して、擦りに対する耐性、すなわち耐擦過性が低いという問題がある。特に、屋外に展示されるような、人の手が触れる機会が多い記録物や、施工時に表面が擦られるような記録物においては、耐擦過性の向上は重要である。
耐擦過性の向上という課題に対して、インク中に特定の樹脂粒子を含有するインクが提案されている(特許文献1及び2)。また、樹脂粒子を含有するオーバーコート液を、インクジェット吐出方式により画像に付与することが提案されている(特許文献3及び4)。
特開2005−179679号公報 特開2005−220352号公報 特開2005−271590号公報 特開2005−297567号公報
近年、インクジェット記録方法に用いられる記録媒体は、多種多様になってきている。従来からある多孔質のインク受容層が形成された記録媒体の他に、塩化ビニルなどのフィルムやその他の非多孔質の記録媒体などが挙げられる。そして、多種多様の記録媒体に対応するには、光沢や風合いなど、それぞれの記録媒体の特徴を生かして画像を記録する必要がある。
特許文献1及び2に記載の方法は、特に、非多孔質の記録媒体を用いる場合に着目して提案されている。これらの方法によれば、ポリ塩化ビニルなどの記録媒体への優れた付着性が実現できる。しかしながら、これらの方法で記録された画像を観察すると、光沢が高い部分と光沢が低い部分とが存在し、光沢ムラが生じていることが分かった。特に、記録媒体の種類に対応した光沢となっていないために生じる違和感が大きい。このような光沢ムラは、写真のハイライト部分とシャドウ部分とが隣接するような場合に顕著に目立つ。
このような光沢ムラが生ずる原因を解明すべく、本発明者らは、光沢が低い部分の表面を電子顕微鏡で観察した。その結果、加熱された樹脂粒子は皮膜化されて大部分の顔料を被覆しているが、一部の顔料が表面上に露出した状態で存在しており、顔料が皮膜によって十分に被覆されていないことが判明した。このため、画像に部分的な光沢の違い(光沢ムラ)が生じる。さらに、光沢ムラは、光沢性を有する記録媒体に記録した画像においてより顕著に認識されやすい。すなわち、光沢性を有する記録媒体の表面は平滑性が高いため、記録部(画像)と非記録部との差異も視覚的に影響を及ぼすからである。つまり、インクの吸収性が相違する多種多様な記録媒体に対しても、光沢ムラを生じさせることなく画像を記録する必要性のあることが、本発明者らによって新たに認識された。
また、本発明者らは、特許文献3及び4に記載された、オーバーコート液を画像に付与する方法について検証した。その結果、通常のインクジェット記録に用いられる粒子径や分子量の樹脂粒子を含有するオーバーコート液を用いただけでは、光沢ムラの改善は不十分であることが判明した。また、オーバーコート後に加熱や加圧を行った場合であっても、光沢ムラの改善は不十分であった。その原因を解明すべく、記録部と非記録部のそれぞれの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、非記録部の平滑性に比して、記録部の平滑性が極端に低くなっていることが判明した。また、オーバーコートを行った場合であっても、記録部の一部に顔料が被覆されていない部分が存在していることが判明した。これに対して、オーバーコート量を増加して光沢ムラを解消することを試みたところ、記録された画像の盛り上がりが目立つようになってしまい、記録媒体の風合いが損なわれることが分かった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。そして、本発明の課題は、多種多様な記録媒体に対応可能であるとともに、耐擦過性を有する画像を記録可能なインクジェット記録方法を提供することにある。さらに、本発明の課題は、インク受容層を有する記録媒体に画像を記録した場合であっても、光沢ムラを生ずることなく、記録媒体の風合いを生かした記録物を得ることができるインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料及び第一の樹脂粒子を含有するインク、並びに、第二の樹脂粒子を含有するコート液を用いて、記録ヘッドの走査によって記録媒体の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、加熱条件下で前記インクを前記単位領域に付与する工程と、前記単位領域への前記インクの付与が行われた後に、加熱条件下で前記単位領域に前記コート液を付与する工程と、を有し、前記第一の樹脂粒子の親水性に比して、前記第二の樹脂粒子の親水性の方が高く、前記顔料の50%体積平均粒子径に比して、前記第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の方が大きいことを特徴とするインクジェット記録方法である。
本発明のインクジェット記録方法によれば、多種多様な記録媒体に対応可能であるとともに、耐擦過性を有する画像を記録することができる。さらに、本発明のインクジェット記録方法によれば、インク受容層を有する記録媒体に画像を記録した場合であっても、光沢ムラを生ずることなく、記録媒体の風合いを生かした記録物を得ることができる。
従来のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の一例を示す模式図である。 本発明のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の一例を示す模式図である。 本発明のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の他の例を示す模式図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録装置の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録ヘッドの一例を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明者らは、顔料及び第一の樹脂粒子を含有するインクと、第二の樹脂粒子を含有するコート液とを用いて、画像の光沢の違いに起因する光沢ムラ、特にインク受容層を有する記録媒体において顕著に生じる光沢ムラを抑制するための検討を行った。
先ず、画像の光沢の違いに起因する光沢ムラの発生メカニズムについて説明する。図1は、従来のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の一例を示す模式図である。図1に示すように、記録媒体104に付与されるインク101には、顔料103と樹脂粒子102が含有されている(図1(a))。このインク101を加熱すると樹脂粒子102が溶融して皮膜化し、顔料103を含む皮膜105が形成される(図1(b))。これにより、記録媒体104に画像が記録される。但し、皮膜105によって十分に被覆されない顔料103の一部は、記録された画像の表面上に露出した状態となる。画像の表面上に顔料の一部が露出する現象は、顔料の量に対して樹脂粒子の量が十分であったとしても生じやすいことが、本発明者らにより確認されている。
次に、本発明者らは、記録媒体104に定着した画像(皮膜105)に重なるように、樹脂粒子102と同種の樹脂粒子203を含有するコート液201を付与した(図1(c))。しかしながら、樹脂粒子203により皮膜202が形成されても、皮膜105の表面上に露出した顔料103を十分に被覆できないことが確認された(図1(d))。従来のコート液201中の樹脂粒子203は、顔料103よりも、樹脂粒子102で形成される皮膜105に対して高い親和性を有する。このため、樹脂粒子203で形成される皮膜202は、親和性の高い皮膜105を優先的に被覆してしまい、顔料103を被覆しきれなかったものと推測される。さらに、インク101が記録媒体104に定着し、画像(皮膜105)が形成された後にコート液201を付与したため、コート液201中の樹脂粒子203で形成される皮膜202は、皮膜105をより優先的に被覆しやすかったものと推測される。
以上の推測に基づき、本発明者らはさらなる検討を行った。その結果、(a)インク中の樹脂粒子とコート液中の樹脂粒子との関係、(b)顔料とコート液中の樹脂粒子との関係、(c)インク及びコート液の付与の際の加熱、及び(d)インクとコート液の付与順序が重要であることを見出した。
図2は、本発明のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の一例を示す模式図である。本発明のインクジェット記録方法の一実施形態においては、第一の樹脂粒子302の親水性と、第二の樹脂粒子305の親水性との関係が適切に制御されている(図2(a))。具体的には、第一の樹脂粒子302の親水性に比して、第二の樹脂粒子305の親水性の方が高い。このため、第二の樹脂粒子305で形成される皮膜308は、第一の樹脂粒子302で形成される皮膜307よりも、顔料303を優先的に被覆し、顔料303が画像の表面上に露出し難くなる(図2(b))。さらに、本実施形態では、インク301が付与された後、第一の樹脂粒子302により皮膜307が形成される前に、第二の樹脂粒子305を含有するコート液306を付与する(図2(a))。ここで、第二の樹脂粒子305の粒径は、顔料303の粒径よりも大きい。このため、第二の樹脂粒子305を加熱溶融させて皮膜308を形成する際に、顔料303を容易に被覆することができる(図2(b))。なお、コート液に顔料が含有されている場合を想定すると、第二の樹脂粒子で形成される皮膜によって、コート液中の顔料を完全に被覆することは困難であると考えられる。このため、コート液には顔料が実質的に含有されていないことが好ましい。
<第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子の関係>
顔料を含有するインクで記録された画像の表面に、コート液を付与して被膜を形成するためには、第一の樹脂粒子の親水性に比して、第二の樹脂粒子の親水性を高くすることが重要である。これは、顔料に対する第二の樹脂粒子の親和性が高まることで、第二の樹脂粒子で形成される皮膜によって、顔料をより効果的に被覆できるためであると推測される。
第一の樹脂粒子の親水性と第二の樹脂粒子の親水性は、樹脂の組成が類似している場合には、酸価の大小によって比較することができる。例えば、酸基を有する単量体(酸性単量体)に由来するユニットの含有量が多い樹脂で構成される樹脂粒子は、当該ユニットの含有量が少ない樹脂で構成される樹脂粒子に比して「親水性が高い」ということができる。なお、樹脂粒子の酸価は、樹脂粒子をテトラヒドロフランに溶解した溶液を試料とし、水酸化カリウム−メタノール滴定液を用いた電位差滴定により測定することができる。
また、樹脂粒子の親水性は、樹脂の組成にも依存する。例えば、疎水性の高いスチレンなどに由来するユニットを含有する樹脂で構成される樹脂粒子と、疎水性の低いメチルメタクリレートなどに由来するユニットを含有する樹脂で構成される樹脂粒子とは、酸価が同程度であっても親水性が大きく相違する。また、エチレンオキサイド基のようなノニオン基を有する単量体に由来するユニットを含有する樹脂で構成される樹脂粒子は、酸価が低くても親水性は高い。そこで、樹脂を構成する単量体の溶解度パラメーターから算出される「水素結合項(δh)」によって、樹脂粒子の親水性を規定することも好ましい態様である。
ここで、樹脂の水素結合項(δh)は、Krevelenの提案した、有機分子を原子団として取り扱った原子団総和法により求めることができる。具体的には、モルあたりの分散力パラメーターFdi、モルあたりの極性力パラメーターFpi、及びモルあたりの水素結合力パラメーターFhiから、樹脂の水素結合項(δh)を求めることができる。より具体的には、以下に示すように、溶解度パラメーター(δ)、溶解度パラメーターの分散力項(δd)、及び溶解度パラメーターの極性項(δp)から、溶解度パラメーターの水素結合項(δh)を求めることができる。
水素結合項(δh)を考慮することで、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子の親水性を制御することができる。水素結合項(δh)は水素結合に由来するパラメーターであり、樹脂の水素結合項(δh)が大きいほど、親水化された顔料との親和性が高くなる。このため、水素結合項(δh)が大きい第二の樹脂粒子を用いることで、より効果的に顔料を被覆することができると考えられる。
樹脂粒子の水素結合項(δh)は、以下に示す手法に従って求めることができる。先ず、樹脂粒子を構成する各単量体固有の溶解度パラメーターから、各単量体の水素結合項(δh)を算出する。次いで、算出した水素結合項(δh)に、各単量体の組成(質量)比(合計を1とした組成比)を掛けた値を算出する。そして、算出されたこれらの値を合計することで、樹脂粒子の水素結合項(δh)を求めることができる。この手法により算出された、代表的な単量体の水素結合項(δh)の値を表1に示す。
例えば、スチレン−メチルメタクリレート−アクリル酸(組成(質量)比=28:58:14)の共重合体である樹脂粒子Aを例に挙げて、水素結合項(δh)の求め方を説明する。スチレン、メチルメタクリレート、及びアクリル酸の水素結合項(δh)は、それぞれ0.00cal0.5/cm1.5、3.93cal0.5/cm1.5、及び5.81cal0.5/cm1.5である。したがって、樹脂粒子Aの水素結合項(δh)は、下記式より「3.09cal0.5/cm1.5」と算出される。
δh(cal0.5/cm1.5
=0.00×0.28+3.93×0.58+5.81×0.14=3.09
なお、以降、上述の方法で算出される樹脂粒子の水素結合項(δh)を便宜的に樹脂粒子の「SPh値」と記す。
酸価を基準として樹脂粒子の親水性を判断する場合には、第一の樹脂粒子の酸価に比して、第二の樹脂粒子の酸価の方が10〜90mgKOH/g高いことが好ましい。一方、SPh値を基準にして親水性を判断する場合には、第一の樹脂粒子のSPh値に比して、第二の樹脂粒子のSPh値の方が0.8〜3.0cal0.5/cm1.5高いことが好ましい。第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子の親水性を規定するパラメーターが上記の数値範囲内にあると、耐擦過性に優れ、光沢ムラの極めて少ない画像が記録された、記録媒体の風合いを生かした記録物を得ることができる。上記の酸価及びSPh値の差が上記の数値範囲を超えると、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子との親和性が低くなりすぎてしまい、それぞれの樹脂粒子によって形成される皮膜同士の界面における密着力がやや不十分となる場合がある。なお、先に述べた通り、第一及び第二の樹脂粒子における親水性の大小関係は、構成ユニットが類似している場合には酸価を利用し、酸価が類似している場合にはSPh値を利用して判断することが好ましい。別の態様として、第二の樹脂粒子の酸価が20mgKOH/g以上である場合には酸価を利用して、また、20mgKOH/g未満である場合にはSPh値を利用して、第一及び第二の樹脂粒子における親水性の大小関係を判断してもよい。
<インク中の顔料と第二の樹脂粒子の関係>
本発明のインクジェット記録方法においては、インクに含有される顔料の50%体積平均粒子径に比して、コート液に含有される第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の方が大きいことを要する。以下、50%体積平均粒子径(d50)について説明する。
顔料や樹脂粒子の粒子径は、一般的に、多数個の測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の分布(粒度分布)を求め、これを利用することによって表される。存在比率としては、粒子の体積分布をレーザー回折・散乱法により測定し、「メジアン径」と呼ばれる「50%体積平均粒子径(d50)」を測定する。この「50%体積平均粒子径(d50)」とは、粒子群の粒度分布を粒子径で二つに分けた場合に、粒子径の大きい側の粒子の合計体積と、粒子径の小さい側が粒子の合計体積とが等しくなる径を意味する。このため、「50%体積平均粒子径(d50)」は、粒子径がある程度揃った粒子の平均粒子径を評価するのに適しており、本発明においてもこのような前提条件を満たす顔料や樹脂粒子を用いる。なお、粒子径が大きくかけ離れた粒子が同等な量で混合されているような場合には、粒子の平均粒子径を評価するのに「50%体積平均粒子径(d50)」は適していない。以上より、(1)顔料と第二の樹脂粒子の大きさがある程度揃っていること、(2)50%体積平均粒子径(d50)を測定可能であること、及び(3)顔料の50%体積平均粒子径に比して、第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の方が大きいことが、本発明のインクジェット記録方法において重要である。
ここで、上記の「(1)顔料と第二の樹脂粒子の大きさがある程度揃っている」とは、50%体積平均粒子径(d50)の測定値のバラつきの変動係数が小さいことを意味する。本発明においては、顔料と第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径(d50)の測定値のバラつきの変動係数が、それぞれ2%以下であることが好ましい。なお、この「バラつきの変動係数」の算出方法は以下に示す通りである。また、下記式中の「d50」は、「50%体積平均粒子径の測定値」を意味する。
:各累積%点における5回の粒子径の測定値の平均値
:5回の測定値の偏倚(バラツキ)の標準偏差
:5回の測定値の偏倚(バラツキ)の変動係数(%)
以下、「50%体積平均粒子径(d50)」を、便宜上、単に「平均粒子径」とも記す。なお、顔料の平均粒子径は、一次粒子の平均粒子径ではなく、インク中における二次粒子(一次粒子の塊)の平均粒子径を示す。一方、樹脂粒子の平均粒子径は、樹脂粒子の一次粒子(単粒子)自体の平均粒子径を示す。
顔料を十分に被覆するには、顔料の平均粒子径に比して、第二の樹脂粒子の平均粒子径の方が十分に大きいことが好ましい。具体的には、顔料の平均粒子径に対する、第二の樹脂粒子の平均粒子径の比率(第二の樹脂粒子/顔料)が1.7以上であることが好ましい。当該比率が1.7以上であると、第二の樹脂粒子が加熱により溶融して形成される皮膜の嵩が高くなり、より効果的に顔料を被覆することができる。但し、記録ヘッドの吐出口やフィルターの目詰まりが生じない程度の大きさ(平均粒子径)の第二の樹脂粒子を選択することが好ましい。
本発明においては、顔料や樹脂粒子の平均粒子径は、動的散乱法に基づく粒子径測定装置で計測した値を利用することが好ましい。具体的には、マイクロトラックUPA−150(日機装製)、ELS−8000(大塚電子製)、DLS−7000(大塚電子製)などの粒子径測定装置を使用することができる。なお、これらの粒子径測定装置は、測定対象となる顔料や樹脂粒子の種類などに応じて適宜選択すればよい。
本発明においては、インク中の第一の樹脂粒子とコート液中の第二の樹脂粒子の合計の含有量が、インク中の顔料の含有量に対する質量比率で、2.0倍以上10.0倍以下であることが好ましい。なお、この場合の各成分の含有量は、それぞれ、インク又はコート液の全質量を基準とした含有量のことである。当該比率を上記数値範囲内とすることで、インク中の顔料を、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子の両方でより効果的に被覆することができる。さらには、記録媒体本来のもつ光沢感などの風合いを損なうことなく、皮膜を形成可能であるために好ましい。
<インク及びコート液の付与順と加熱のタイミング>
本発明のインクジェット記録方法は、加熱条件下でインクを用いて単位領域の画像を記録した後に、加熱条件下で上記と同じ単位領域にコート液を付与する。
本発明のインクジェット記録方法においては、インク及びコート液のいずれも加熱条件下で記録媒体に付与する。また、単位領域の画像データに基づき、当該単位領域に付与されるべきインクの全てを付与した後に、コート液を前記単位領域に付与する。なお、インクを付与した後、時間を空けた後にコート液を付与するのではなく、加熱条件下でインクを付与し、引き続き加熱条件下でコート液を付与することが好ましい。ここで、本明細書における「単位領域」とは、1画素又は1バンドを意味し、必要に応じて種々の領域として単位領域を設定することができる。1画素とは、記録ヘッドの解像度に対応した1画素のことであり、1バンドとは、記録ヘッドの1回の主走査で記録可能な領域を意味する。
また、本発明においては、記録ヘッドの主走査方向において、該記録ヘッドを複数回走査させることによって単位領域の画像を記録する多パス記録を行うことが好ましい。そして、単位領域にインク及びコート液を付与するための記録ヘッドの主走査の数(パス数)によって、インク及びコート液を付与する順序や配分を制御することが重要である。例えば、インクを付与する同一パスにおいてコート液を付与するのではなく、記録ヘッドの主走査パスの前半にインクの付与を割り振るとともに、インク付与後の所定の時間内にコート液を付与することが好ましい。
図3は、本発明のインクジェット記録方法によって画像が記録される様子の他の例を示す模式図である。記録媒体402に付与されたインクは、加熱部401によって加熱される。これにより、インク中の液体成分が蒸発しはじめる(図3(a))。記録媒体402に付与されたインクの下側から、液体成分の蒸発(すなわち、インクの乾燥)及び第一の樹脂粒子の溶融がはじまる。コート液405が付与された際には、最後のパスで付与されたインクは、完全には乾燥していない状態である。このため、インクとコート液が混ざり合った混合層404が形成される。混合層404においては、最後のパスで付与されたインクと、それに続くパスで付与されたコート液が適度に混和しているため、第二の樹脂粒子による表面のレベリング性が向上する。このため、第二の樹脂粒子で形成される皮膜により、より効果的に顔料407を被覆することができる。
一方、インクが十分に乾燥し、皮膜406が形成された後で、コート液405が付与されると、第二の樹脂粒子で形成される皮膜406による顔料407の被覆は、十分とはならない場合もある(図3(b))。
本発明においては、単位領域に、コート液を付与する際の記録ヘッドの走査回数(Sc)と、インクを付与する際の記録ヘッドの走査回数(Si)が、0.06≦Sc/(Sc+Si)≦0.5の関係を満たすことが好適である。記録ヘッドの主走査の回数(パス数)は、記録スピードと、記録しようとする画像の精細さによって適宜設定される。つまり、単位領域における総パス数(Sc+Si)に対して、コート液を付与するパス数(Sc)は、Sc+Si:Sc=15:1以上とすることが好ましく、また、Sc+Si:Sc=1:1以下とすることが好ましい。これにより、先に付与されたインクが十分に乾燥する前に、十分量のコート液を付与することができる。
インクと同じパスでコート液を付与する場合や、コート液を付与するパス数がインクを付与するパス数よりも多い場合(Sc/(Sc+Si)の値が0.5より大きい場合)には、インクの乾燥が不十分となることがあり、画像に乱れが生ずる場合がある。また、第二の樹脂粒子で形成される皮膜によって、顔料を十分に被覆できない場合がある。
コート液は、インク中の顔料を、第二の樹脂粒子で形成される皮膜によって効果的に被覆するために付与する。このため、コート液は、少なくともインクを付与する領域には、インクに重なるように付与することが好ましい。第二の樹脂粒子の有無により画像に光沢ムラが生じ易い場合には、インクを付与しない領域(非記録部)にもコート液を付与することが好ましい。また、顔料の種類や量、また、第一の樹脂粒子の種類や量を勘案し、コート液の付与の有無や、コート液の付与量などを調整してもよい。
本発明のインクジェット記録方法では、インクやコート液をインクジェット方式で吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録方法が適用可能な装置を使用する。なかでも、インク及びコート液に熱エネルギーを作用させることによって、インク及びコート液を吐出する記録ヘッドを搭載した装置を使用することがより好ましい。
図4は、本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録装置の一例を模式的に示す斜視図である。図4(a)に示す記録装置では、記録ヘッド501の主走査方向に隣接する位置に加熱部502aが配置されている。この加熱部502aは、インク及びコート液を記録媒体に付与する際に、記録媒体503の所定の箇所を加熱するための部分である。記録ヘッド501の周囲には、熱の影響で記録ヘッド501の吐出口や吐出口が設けられた面でインクが固着するのを抑制すべく耐熱カバーを配置することが好ましい。加熱部502aは、熱風加熱や輻射熱加熱など、各種の加熱方式を選択することができる。
図4(a)に示す記録装置を使用すれば、記録ヘッド501からの記録媒体503へのインクの付与による画像の記録と、加熱部502aによる加熱とを、同時に行うことができる。なお、加熱部502aは、インクやコート液の熱特性、及び加熱による熱効率などを考慮し、記録ヘッド501の片側だけに配置してもよく、両側に配置してもよい。
図4(b)に示す記録装置では、記録ヘッド501の、記録媒体503の排出方向の上流側に加熱部502bが配置されている。この記録装置を用いれば、インクやコート液が付与される直下の部分を加熱することができる。加熱部502bは、記録媒体503の排出方向に直行する方向の端から端まで加熱すべく、輻射熱を発するランプを単独又は複数配置することで構成することができる。
加熱部502a、502bによる加熱温度は、使用するインクや第二の樹脂粒子の特性、記録媒体の種類などによって適宜決定されるが、40〜130℃とすることが好ましい。加熱温度が40℃未満であると、加熱効率が不十分であるため、樹脂粒子の溶融が不十分となる傾向にある。また、インクが記録媒体に付与された際に、適度な乾燥状態とすることが困難になる場合がある。一方、加熱温度が130℃超であると、記録媒体の種類によっては耐熱温度を超える場合があり、記録媒体の変形や貼りつきなどによって搬送トラブルが生じやすくなる傾向にある。
図4(c)に示す記録装置では、図4(b)と同様の加熱部502bの他に、さらに、記録ヘッド501の、記録媒体503の排出方向の上流側と下流側に、前加熱処理部504と後加熱処理部505が配置されている。この記録装置を用いれば、第一の樹脂粒子や第二の樹脂粒子に対して効率的に熱をかけて、皮膜を形成することができる。前加熱処理部504による加熱温度は、加熱部502bによる加熱温度よりも低く設定することが好ましい。さらに、後加熱処理部505による加熱温度は、加熱部502bによる加熱温度よりも高く設定することが好ましい。また、図4の(a)、(b)、(c)のいずれの場合においても、記録ヘッド直下のプラテン部を加熱できるように、記録媒体503の裏面側から加熱可能な補助の加熱部を配置することも好ましい態様である。
図5は、本発明のインクジェット記録方法に用いられる記録ヘッドの一例を示す模式図である。図5に示すように、記録ヘッド601には、ブラックインクの吐出口列601K、シアンインクの吐出口列601C、マゼンタインクの吐出口列601M、イエローインクの吐出口列601Y、及びコート液の吐出口列601CLが配置されている。それぞれの吐出口列は、主走査方向に、1200dpiの密度で配置された1280個の吐出口で構成される。
<インク>
本発明のインクジェット記録方法で使用するインクは、顔料及び第一の樹脂粒子を含有する。
(顔料)
顔料としては、いずれの分散方式のものであっても用いることができる。具体的には、顔料粒子の表面にアニオン性基などの親水性基を直接又は他の原子団を介して結合した自己分散型顔料を好適に用いることができる。また、樹脂分散剤を顔料粒子の表面に物理的に吸着させた樹脂分散顔料、顔料を樹脂によって包含したマイクロカプセル型顔料、及び顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合した改質顔料(樹脂結合型顔料)も好適に用いることができる。なお、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用してもよい。
顔料の平均粒子径は、20nm以上250nm以下であることが好ましく、50以上150nm以下であることがさらに好ましい。顔料の平均粒子径が250nm超であると、記録ヘッドからの吐出安定性が低下するとともに、記録ヘッドの吐出口やフィルターにおいて目詰まりが発生しやすくなる傾向にある。一方、顔料の平均粒子径が20nm未満であると、保存中に顔料が凝集を起こし易くなる傾向にある。
顔料の種類は特に限定されず、公知の無機顔料や有機顔料を用いることができる。顔料の具体例としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料;フタロシアニン、キナクドリン、アゾなどの有機顔料などを挙げることができる。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(第一の樹脂粒子)
第一の樹脂粒子は、加熱によって皮膜化するような熱可塑性樹脂で構成される粒子であることが好ましい。第一の樹脂粒子としては、一般的な樹脂粒子を合成する方法によって合成したものを用いることができる。例えば、酸基を有する酸性単量体と、一種以上の単量体とを重合することによって、酸基を有する第一の樹脂粒子を合成することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合などを利用することができる。第一の樹脂粒子は、その表面に中和された酸基を有することが好ましい。表面の酸基を中和することで、第一の樹脂粒子に表面電荷がもたらされるので、第一の樹脂粒子をインク中で良好な状態で分散させることができる。
第一の樹脂粒子を構成する樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、及びこれらの複数を組み合わせた複合系の樹脂などを挙げることができる。また、樹脂粒子の構造は、単層構造のみならず、コアシェル構造を有するものであってもよい。
なお、記録媒体の特性に応じて、第一の樹脂粒子の親水性を適宜考慮することが好ましい。例えば、塩化ビニル系のフィルム(塩ビフィルム)などの非浸透性の記録媒体は、インク中の水性媒体を浸透させるインク受容層を有しない。このため、非浸透性の記録媒体に記録する場合には、第一の樹脂粒子は、記録媒体に馴染みやすい性質を有することが好ましい。すなわち、第一の樹脂粒子の親水性は極端に高くないことが好ましい。
第一の樹脂粒子の酸価は10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましい。第一の樹脂粒子の酸価が10mgKOH/g未満であると、水に対する第一の樹脂粒子の分散安定性が極端に低下しやすく、保存中に沈殿を生ずる場合がある。一方、第一の樹脂粒子の酸価が50mgKOH/g超であると、塩ビフィルムなどの非浸透性の記録媒体に対する親和性が不十分となる傾向にあり、インクがはじかれてしまう場合がある。また、インク受容層を有する浸透性の記録媒体に記録する場合には、第一の樹脂粒子の親水性が高過ぎると、第一の樹脂粒子の一部がインク受容層に浸透して顔料の下側に潜り込んでしまい、顔料の被覆が不十分となる場合がある。第一の樹脂粒子の酸価が50mgKOH/g超であると、このように顔料の被覆が不十分になりやすい。
第一の樹脂粒子の平均粒子径は、20nm以上500nm以下であることが好ましい。第一の樹脂粒子の平均粒子径が20nm未満であると、インク受容層を有する記録媒体に記録する場合に、第一の樹脂粒子の一部がインク受容層の細孔内に浸透して顔料の下側に潜り込んでしまい、顔料の被覆が不十分となる場合がある。一方、第一の樹脂粒子の平均粒子径が500nm超であると、インク中における第一の樹脂粒子の分散安定性が低下する傾向にある。
第一の樹脂粒子のガラス転移温度は、室温(25℃)よりも高いことが好ましい。また、種々の記録媒体に対する密着性を高めるべく、より強固な皮膜を形成するには、第一の樹脂粒子のガラス転移温度をより高くすることが好ましい。具体的には、第一の樹脂粒子のガラス転移温度は、50℃以上100℃以下であることが好ましく、50℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。第一の樹脂粒子のガラス転移温度が50℃未満であると、皮膜の柔軟性は向上するが硬さが不十分となる傾向にある。一方、第一の樹脂粒子のガラス転移温度が100℃超であると、皮膜の硬さは向上するが脆くなる傾向にある。また、記録媒体の種類によっては高温での加熱ができない場合がある。このため、第一の樹脂粒子のガラス転移温度が100℃超であると、加熱による皮膜化が不十分になる場合がある。なお、第一の樹脂粒子のガラス転移温度は、第一の樹脂粒子を形成する樹脂を構成する単量体の種類や組成比を選択することにより、適宜設定することができる。第一の樹脂粒子のガラス転移温度は、熱重量測定(TG)、示差走査熱量測定(DSC)、示差熱分析法(DTA)などによって測定することができる。
第一の樹脂粒子のポリスチレン換算の重量平均分子量は、5,000以上200,000以下であることが好ましい。第一の樹脂粒子の重量平均分子量が上記の数値範囲内であると、より強固な皮膜を形成することができる。第一の樹脂粒子の重量平均分子量が5,000未満であると、十分に強固な皮膜が形成できない場合がある。一方、第一の樹脂粒子の重量平均分子量が200,000超であると、吐出安定性がやや低下する場合がある。
第一の樹脂粒子の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。以下、本明細書における重量平均分子量の測定方法について説明する。なお、フィルター、カラム、標準ポリスチレン試料、及びその分子量などの測定条件は、以下に示すものに限定されない。
先ず、測定対象となる試料をテトラヒドロフランに入れて数時間静置して溶解させ、溶液を調製する。調製した溶液を、ポアサイズ0.45μmの耐溶剤性メンブランフィルター(例えば、商品名:TITAN2 Syringe Filter、PTFE、0.45μm;SUN−SRi製)でろ過して試料溶液を得る。なお、試料溶液は、測定対象である試料の含有量が0.1〜0.5質量%になるように調製する。
GPCにはRI検出器を用いる。また、103乃至2×106の分子量の範囲を正確に測定するために、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせて用いることが好ましい。例えば、Shodex KF−806M(昭和電工製)を4本組み合わせて用いることや、これに相当するものを用いることができる。40.0℃のヒートチャンバー中で安定化したカラムに、移動相としてテトラヒドロフランを流速1mL/分で流し、上記の試料溶液を約0.1mL注入する。
試料の重量平均分子量は、標準ポリスチレン試料で作成した分子量検量線を用いて決定する。標準ポリスチレン試料は、分子量が102乃至107程度のもの(例えば、Polymer Laboratories製)を用いることができる。なお、少なくとも10種程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適切である。
インク中の第一の樹脂粒子の含有量は、顔料の種類、顔料の含有量、各種記録媒体における耐擦過性、及びインクの吐出安定性などを鑑みて決定することができる。なお、顔料を十分に被覆すべく、第一の樹脂粒子の含有量は、顔料の含有量よりも多いことが好ましい。具体的には、第一の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として0.2質量%以上10.0質量%であることが好ましく、1.0質量%以上7.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
インクには、通常、水性媒体が含有される。水性媒体としては、例えば、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶媒を用いることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。本発明においては、水性媒体として水を少なくとも含有する、水性インクとすることが特に好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、インクジェット用のインクに一般的に使用される公知のものをいずれも用いることができる。これらの水溶性有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性有機溶剤の具体例としては、1価又は多価のアルコール類、アルキレン基の炭素数が1〜4程度のアルキレングリコール類、数平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などが挙げられる。なお、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
インク受容層を有しないフィルムなどの記録媒体に記録する場合には、これらの水溶性有機溶剤の中でも、沸点の低いものを用いることが好ましい。このような水溶性有機溶剤としては、2−ピロリドンなどの含窒素溶剤、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの2価アルコール類、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール類を挙げることができる。なお、グリセリンなど沸点の高い水溶性有機溶剤は、インクに少量だけ含有させるか、又は含有させないことが好ましい。
(その他の成分)
インクには、必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの常温で固体の有機化合物や、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物を含有させてもよい。さらに必要に応じて、インクには、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
界面活性剤は、インクの表面張力を調整するとともに、記録媒体に対するインクの濡れ性を制御可能な成分であるために重要である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤などを用いることができる。なかでも、水に可溶な界面活性剤を用いることが好ましい。また、インク受容層を有しない記録媒体に記録する場合には、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤をインクに含有させることが好ましい。
<コート液>
本発明のインクジェット記録方法で使用するコート液は、第二の樹脂粒子を含有する。この第二の樹脂粒子は、通常、分散安定化した状態でコート液中に含有されている。なお、コート液には、顔料などの色材が実質的に含有されていないことが好ましい。なお、コート液に含有させる第二の樹脂粒子以外の成分については、前述のインクに含有させる成分と同様のものから選択することができる。本発明においては、水性媒体として水を少なくとも含有する、水性コート液とすることが特に好ましい。
(第二の樹脂粒子)
第二の樹脂粒子は、第一の樹脂粒子と同様、加熱によって皮膜化するような熱可塑性樹脂で構成される粒子であることが好ましい。第二の樹脂粒子としては、前述の第一の樹脂粒子と同様に合成したものを用いることができる。例えば、酸基を有する酸性単量体と、一種以上の単量体とを重合することによって、酸基を有する第二の樹脂粒子を合成することができる。第二の樹脂粒子は、その表面に中和された酸基を有することが好ましい。表面の酸基を中和することで、第二の樹脂粒子に表面電荷がもたらされるので、第二の樹脂粒子をコート液中で良好な状態で分散させることができる。第二の樹脂粒子を構成する樹脂の具体例や樹脂粒子の構造は、第一の樹脂粒子と同様のものから選択することができる。
第二の樹脂粒子は、前述のように、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子との関係や、顔料と第二の樹脂粒子との関係を考慮して選択することが好ましい。例えば、第二の樹脂粒子としては、その親水性が第一の樹脂粒子の親水性に比して高いものを用いる。酸価を基準にすると、第二の樹脂粒子の酸価は、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。第二の樹脂粒子の酸価が20mgKOH/g未満であると、第一の樹脂粒子の親水性との差が十分に大きくならない場合がある。一方、第二の樹脂粒子の酸価が100mgKOH/g超であると、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子との親和性が低下してしまい、皮膜化後の界面の密着力が不十分となる場合がある。また、第一の樹脂粒子の酸価に比して、第二の樹脂粒子の酸価の方が10〜90mgKOH/g高いことが好ましい。
第二の樹脂粒子の平均粒子径は、インクに含有される顔料の平均粒子径よりも大きいことを要する。具体的には、第二の樹脂粒子の平均粒子径は100nm以上500nm以下であることが好ましい。第二の樹脂粒子の平均粒子径が100nm未満であると、小さ過ぎるために、顔料を十分に被覆することが困難になる場合がある。一方、第二の樹脂粒子の平均粒子径が500nm超であると、記録ヘッドからの吐出安定性が低下するとともに、記録ヘッドの吐出口やフィルターにおいて目詰まりが発生しやすくなる場合がある。
第二の樹脂粒子のガラス転移温度は、前述の第一の樹脂粒子のガラス転移温度と同様であればよい。また、第二の樹脂粒子のポリスチレン換算の重量平均分子量は、前述の第一の樹脂粒子のポリスチレン換算の重量平均分子量と同様であればよい。なお、第二の樹脂粒子のガラス転移温度が室温(25℃)以下であると、形成される皮膜の表面が柔らかくなってしまい、擦りに対する耐性が不十分となる傾向にある。
インク中の顔料及び第一の樹脂粒子の有無、並びにコート液中の第二の樹脂粒子の有無については、インクやコート液を遠心分離して得られる沈降物と上澄み液を分析することで確認することができる。以下、第一の樹脂粒子と第二の樹脂粒子を併せて、単に「樹脂粒子」ともいう。
通常、顔料は水溶性有機溶剤に不溶である。一方、樹脂粒子は水溶性有機溶剤で抽出されうる。このため、水溶性有機溶剤を用いて、顔料と樹脂粒子を分離することもできる。顔料が含有されたインクの状態であっても、以下に示す分析操作を行うことができる。但し、顔料を分離して樹脂粒子を抽出することにより、分析精度が向上する。なお、コート液には顔料が実質的に含まれていないので、顔料と第二の樹脂粒子とを分離させる必要がない。
インクやコート液を50,000rpmで遠心分離して上澄み液を取り出す。取り出した上澄み液を100,000rpmで遠心分離して樹脂粒子を沈殿させ、樹脂粒子と、水溶性樹脂などの水溶性成分とを分離する。樹脂粒子の含有量を計算するとともに、沈殿した樹脂粒子を熱分解GC/MSにより測定して有効成分を算出した後、ICP発光分光分析を行う。さらに、沈殿物(樹脂粒子)をクロロホルムに溶解し、核磁気共鳴法(NMR)により分析することで、樹脂粒子の組成、分子量などを確認することができる。また、遠心分離して得られた顔料や樹脂粒子を水中に再分散させ、粒子径測定装置を使用してそれぞれの50%体積平均粒子径(d50)を測定する。
沈殿させた樹脂粒子を乾燥させた後、テトラヒドロフランに溶解させて得られた試料について、水酸化カリウム−エタノール滴定液を用いた電位差滴定を行うことで、樹脂粒子の酸価を測定することができる。以上の分析方法及び測定方法の組み合わせにより、第一の樹脂粒子及び第二の樹脂粒子の構造を確認することができるとともに、分子量、含有量、及び酸価を測定することができる。さらには、顔料、第一の樹脂粒子、及び第二の樹脂粒子のそれぞれの粒子径及び含有量を測定することができる。
<記録媒体>
記録媒体は、加熱可能なものであることが必要である。このため、インク受容層が膨潤性の樹脂によって形成されているものや、熱によって容易に変性するものは、本発明のインクジェット記録方法に適用することは困難である。本発明のインクジェット記録方法に適用可能な記録媒体の具体例としては、普通紙、また、マット紙、光沢紙、半光沢紙、微光沢紙、アート紙などの紙基材にインク受容層が設けられたものなどを挙げることができる。また、樹脂などの基材にインク受容層が設けられた記録媒体も用いることができる。
インク受容層は、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウムなどの白色顔料と、ポリビニルアルコールやカチオン性樹脂などのバインダーとを主成分として含有し、界面活性剤などの添加剤を必要に応じてさらに含有する。
光沢紙、半光沢紙、及び微光沢紙は、非常に微細な細孔が形成されたインク受容層を有する記録媒体である。一方、マット紙やアート紙のインク受容層は、粒径の大きい白色顔料を用いて形成されている。このため、マット紙やアート紙は、比較的大きな細孔が形成されたインク受容層を有する記録媒体である。このように、インク受容層に形成された細孔の大きさの相違により、付与されたインクの吸収速度や吸収容量が異なる。
本発明においては加熱条件下で記録が行われるため、インク受容層を有しない樹脂性の各種フィルムを記録媒体として用いることができる。インク受容層を有しない記録媒体の代表例としては、一般的に「塩ビフィルム」と呼ばれる塩化ビニル製のフィルムがある。また、ポリエチレンフィルムなども、インク受容層を有しない記録媒体として用いることができる。本発明のインクジェット記録方法によれば、一般的に光沢ムラが生じやすい光沢を有する記録媒体として用いた場合であっても、記録される画像に光沢ムラが生じ難い。また、本発明のインクジェット記録方法によれば、半光沢又は微光沢の記録媒体を用いた場合であっても、記録される画像に光沢ムラが生じ難いことが視覚的に十分認識されうる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<樹脂粒子1〜21の合成>
表2−1に示す配合の各種単量体と水を混合するとともに、得られる樹脂粒子の粒径を調整するための界面活性剤を適量添加して乳化物を得た。水を入れた反応器を用意し、90℃に加熱した過硫酸カリウム水溶液を反応器に滴下した後、上述の乳化物をさらに滴下した。反応系の温度を90℃に維持して反応させた後、室温まで冷却した。適量の水と水酸化カリウムを添加して反応液のpHを約8.5に調整して、樹脂粒子を含有する分散液を得た。得られた分散液の樹脂粒子の含有量は10.0%であった。また、得られた樹脂粒子の酸価、SPh値、平均粒子径、ガラス転移温度、及び重量平均分子量を表2−2に示す。
樹脂粒子の平均粒子径は、マイクロトラックUPA−150(日機装製)を使用して測定した。また、樹脂粒子のガラス転移温度は、DSCQ1000(TAインスツルメンツ製)を使用して測定した。さらに、樹脂粒子の重量平均分子量は、GPC101(昭和電工製)を使用して測定した。なお、表2−1中の単量体を示す略記号の意味は、表1に示す通りである。
<顔料分散液1の調製>
顔料としてのC.I.ピグメントブルー15:3を10.0部、グリセリン6.0部、樹脂分散剤5.0部、及び水79.0部を混合して混合物を得た。0.6mm径のジルコニアビーズを充填率70%となるように充填したサンドミル(金田理化工業製)を使用し、得られた混合物を1,500rpmで5時間分散させた。5,000rpmで10分間遠心分離を行って凝集成分を除去した後、メンブランフィルターを用いて粗大粒子を除去した。適量の水を添加して、顔料の含有量が10.0%、樹脂分散剤の含有量が5.0%である顔料分散液1を調製した。なお、樹脂分散剤としては、スチレン−アクリル酸メチル−アクリル酸ランダム共重合体(共重合比=53:29:18(質量比)、重量平均分子量8,000、酸価120mgKOH/g)を、酸価と当量の水酸化カリウムで中和したものを用いた。また、マイクロトラックUPA−150(日機装製)を使用して測定した、顔料分散液1中の顔料の平均粒子径は100nmであった。
<顔料分散液2〜4の調製>
顔料として、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントイエロー155、カーボンブラック(比表面積220m2/g、DBP吸油量130mL/100g)をそれぞれ用いたこと以外は、前述の顔料分散液1と同様にして顔料分散液2〜4を調製した。なお、分散の際の撹拌回転数、分散時間、ビーズ径、ビーズ充填率などを適宜変更して、顔料分散液2〜4中の顔料の平均粒子径が100nmとなるように調整した。
<インクの調製>
表3に示す配合で各成分を混合して十分撹拌した後、ポアサイズ5.0μmのフィルター(製品名:HDCII;ポール製)で加圧ろ過して、C1、M1、Y1、及びK1のインクを調製した。また、調製した各インクを組み合わせてインクセット1を得た。なお、表1中の「アセチレノールE100」は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤であり、「ゾニールFSO−100」は、デュポン製のフッ素系界面活性剤である。
また、表3に示す「樹脂粒子1の分散液」を、樹脂粒子3、8、9又は10の分散液にそれぞれ変更したこと以外は、前述のインクセット1の場合と同様にしてインクセット2〜5を得た。また、各色の顔料の平均粒子径がいずれも、138nm、112nm、60nmである顔料分散液にそれぞれ変更したこと以外は、前述のインクセット1の場合と同様にしてインクセット6〜8を得た。
さらに、表3に示す「樹脂粒子1の分散液」に代えて、ブチルアクリレート−メタクリル酸共重合体の10.0%水溶液を用いたこと以外は、前述のインクセット1の場合と同様にしてインクセット9を得た。なお、上記のブチルアクリレート−メタクリル酸共重合体は、酸価90mgKOH/g、SPh値3.85cal0.5/cm1.5、ガラス転移温度55℃、重量平均分子量6,000の水溶性樹脂である。
<コート液1〜21の調製>
以下に示す各成分を混合して十分撹拌した後、ポアサイズ5.0μmのフィルター(HDCII;ポール製)で加圧ろ過して、コート液1〜21を調製した。なお、コート液1〜21の番号は、用いた分散液に含有される樹脂粒子の番号に対応している。
・1,2−ヘキサンジオール 2.0部
・2−ピロリドン 10.0部
・2−メチル1,3−プロパンジオール 5.0部
・ポリエチレングリコール 3.0部
(数平均分子量600)
・ゾニールFSO−100 0.5部
(フッ素系界面活性剤;デュポン製)
・アセチレノールE100 0.1部
(ノニオン性界面活性剤;川研ファインケミカル製)
・各樹脂粒子の分散液 10.0部
・水 79.4部
<コート液22の調製>
樹脂粒子1の分散液に代えて、ブチルアクリレート−メタクリル酸共重合体の10.0%水溶液を用いたこと以外は、前述のコート液1の場合と同様にしてコート液22を調製した。なお、上記のブチルアクリレート−メタクリル酸共重合体は、酸価90mgKOH/g、SPh値3.85cal0.5/cm1.5、ガラス転移温度55℃、重量平均分子量6,200の水溶性樹脂である。
(実施例1〜19、比較例1〜11)
上記のインクセットを構成する各インク及びコート液を、表4−1に示す組み合わせでインクカートリッジに充填した。このインクカートリッジをインクジェット記録装置(商品名:image PROGRAF iPF5000;キヤノン製)を改造したものにセットした。なお、画像の記録中に加熱処理するため、インクジェット記録装置の記録ヘッドの直下に近赤外線が照射されるように近赤外線ヒーター(アンデックス製)を配設した。また、温度コントローラーによって、記録媒体の温度が80℃となるように加熱処理の温度を制御した。この記録装置では、解像度が600dpi×600dpiであり、1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に、1滴当たりの質量が4.5ngであるインク滴を1滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。
記録媒体としては、(1)光沢紙(商品名:プレミアム光沢紙・薄口;キヤノン製)と、(2)塩ビフィルム(商品名:塩ビフィルム2;桜井製)の二種類を用いた。画像の記録条件は表4−2に示す通りとし、「総パス数」の値で片方向記録を行い、インクによる記録とコート液による記録を分割した。さらに、「インクの付与パス数」の値でブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクで記録を行い、「コート液の付与パス数」の値でコート液を付与するように制御した。なお、インクによる記録デューティを最大150%、コート液による記録デューティを50%として、以下の画像1〜3を含む記録物をそれぞれ作製した。
[画像1]:C、M、Y、K、R、G、Bを16階調の色濃度分割したパッチとした。カラーにはブラックを入れず、16階調目を150%デューティとした1cm×1cmの正方形のチャートパターンと、16階調目のパッチが別途5cm×10cmのベタ部とから構成される画像を記録した。
[画像2]:C、M、Y、K、R、G、Bを16階調に色分割した。カラーにブラックを入れて明度を下げていき、16階調目を150%デューティで明度が最も低くなるような階調とした1cm×1cmの正方形のチャートパターンと、16階調目のパッチが別途5cm×10cmのベタ部とから構成される画像を記録した。
[画像3]:背景が青空であり、中央に木がある画像を記録した。
<評価>
以下、各項目の評価基準で「C」を許容できないレベル、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベルとした。評価結果を表5に示す。画像1には基本色(C、M、Y、K)の1次色画像と2次色画像(R、G、B)が含まれており、画像2及び3には多次色画像が含まれている。これらの3種の画像について評価を行うことで、1色ないしは複数色のインクと、コート液とを併用した場合の効果を確認することができる。
(光沢紙に記録した画像の評価)
(1)光沢ムラ
画像1〜3を目視観察し、光沢ムラの有無を確認した。光沢ムラがあったものについては、走査型電子顕微鏡S−4000(日立製)を使用して最も光沢が低かった画像を観察し、顔料の被覆が十分であるか否かを確認した。そして、以下に示す基準に従って光沢ムラを評価した。
AA:画像1〜3の全てにおいて光沢ムラがなかった。
A:画像1及び3には光沢ムラがなかったが、画像2において階調の違いの一部のみ光沢ムラがあった。
B:画像1には光沢ムラがなかったが、画像2において階調の違いの一部と画像3の木と背景の境界で光沢ムラがあった。
C:画像1〜3の全てにおいて光沢ムラがあった。
(2)風合い
画像2を目視観察し、以下に示す基準に従って風合いを評価した。なお、画像2は、ブラックインクを併用して記録されたカラー画像であるため、画像の凹凸が生じやすい条件である。このような画像2を利用して評価を行うことで、本発明の効果を適切に確認することができる。
A:記録部に凹凸がなく、非記録部(記録媒体の表面)と記録部とで風合いの違いがなかった。
B:記録部に凹凸があったが、非記録部(記録媒体の表面)と記録部とで風合いの違いがなかった。
C:記録部に凹凸があり、非記録部(記録媒体の表面)と記録部とで風合いの違いがあった。
(塩ビフィルムに記録した画像の評価)
(1)光沢ムラ
画像1〜3を目視観察し、光沢ムラの有無を確認した。光沢ムラがあったものについては、走査型電子顕微鏡S−4000(日立製)を使用して最も光沢が低かった画像を観察し、顔料の被覆が十分であるか否かを確認した。そして、以下に示す基準に従って光沢ムラを評価した。
AA:画像1〜3の全てにおいて光沢ムラがなかった。
A:画像1及び3には光沢ムラがなかったが、画像2において階調の違いの一部のみ光沢ムラがあった。
B:画像1には光沢ムラがなかったが、画像2及び3において光沢ムラがあった。
C:画像1〜3の全てにおいて光沢ムラがあった。
(2)耐擦過性
画像1及び2のベタ画像をそれぞれ切り出した。摩擦子に白色綿布をセットした学振式磨耗試験機(スガ試験機製)を使用して、荷重500g加えて画像1及び2のベタ画像の表面を100回擦った。その後、ベタ画像を目視観察し、以下に示す基準に従って耐擦過性を評価した。
A:画像1及び2のいずれにおいても記録媒体の表面が見えなかった。
B:画像1及び2のいずれかのみにおいて、記録媒体の表面が見える部分がわずかにあったが、幅5mm以上で見えている部分はなかった。
C:画像1及び2の少なくとも一方で、記録媒体の表面が幅5mm以上で見えている部分があった。
(吐出安定性の評価)
光沢紙を用いて作製した記録物における画像にスジやムラが生じたか否かを目視観察した。そして、画像にスジやムラが多くあったものについては、記録ヘッドの吐出口を光学顕微鏡で観察し、以下に示す基準に従って吐出安定性を評価した。
A:スジやムラがなかった。
B:スジやムラがあったが軽微であった。
C:スジやムラが多くあり、吐出口に異物が生じていた。
(比較例12)
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下漏斗を備えたフラスコに、イオン交換水100mL及び過硫酸カリウム0.1gを入れ、窒素雰囲気下で撹拌しながらフラスコ内の温度が70℃になるまで加熱した。また、別途、反応容器にイオン交換水100mL、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0g、スチレン30g、2−エチルヘキシルアクリレート70g、及びメタクリル酸5gを入れ、3時間撹拌して乳化物を調製した。調製した乳化物を、滴下漏斗を用いてフラスコ内に少しずつ滴下し、撹拌時間を変えることで、平均粒子径が異なる樹脂粒子をそれぞれ含有する二種類の分散液を調製した。一方の分散液に含まれる樹脂粒子22の平均粒子径は70nmであった。また、他方の分散液に含まれる樹脂粒子23の平均粒子径は270nmであった。なお、いずれの樹脂粒子のガラス転移温度も−5℃であった。二種類の樹脂粒子を2.5部ずつ、グリセリン18部、エチレングリコール5部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル5部、オレフィンE1010(ノニオン性界面活性剤)1部、及び残りを水としてコート液23を調製した。
インクセット1及びコート液23を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして画像1〜3を含む記録物をそれぞれ作製して評価した。なお、コート液23に含まれる樹脂粒子の平均粒子径をマイクロトラックUPA−150(日機装製)を使用して測定しようとしたところ、測定値の変動係数が4%以上となり、安定して測定することができなかった。
(比較例13)
特許文献3の表3及び表4を参考に、各色のインクとオーバーコート液を調製した。ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの顔料をそれぞれ3〜4部、樹脂粒子24(ラテックス固形物)3〜3.7部、エトキシ化グリセリン3部、2−ピロリジノン5部、グリセリン4部、1,2−ヘキサンジオール4部、非イオン性界面活性剤1.9部、及び残部を水(合計100部)としてインクセット10を調製した。また、スチレンアクリルコポリマー0.4部、エトキシ化グリセロール3部、2−ピロリジノン5部、グリセリン4部、1,2−ヘキサンジオール4部、非イオン性界面活性剤1.8部、及び残部を水(合計100部)としてコート液24を調製した。インクセット10にて画像を記録した後、コート液24で記録した。次いで、金属ローラーを使用し、毎分37フィート(約11.3m)の速度で、圧力1750psi(約1.2×107Pa)を負荷するとともに52℃で加熱してカレンダ処理を行った。これにより、画像1〜3を含む記録物をそれぞれ作製して、前述の実施例1と同様にして評価した。
(比較例14)
特許文献4の表3及び表4を参考に、各色のインクとオーバーコート液を調製した。ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの顔料をそれぞれ3部、エトキシ化グリセリン1.5部、2−ピロリジノン7部、アルキルジオール4部、サーフィノール61(ノニオン性界面活性剤;エアープロダクツ製)1部、フッ素系界面活性剤0.2部、及び残部を水(合計100部)としてインクセット11を調製した。また、アニオン性ポリマー(Neocryl QX−26−B;楠本化成製)を4部、非アニオン性ポリマー4部、エトキシ化グリセリン3部、2−ピロリドン6部、グリセリン0.5部、アルキルジオール4部、ネオペンチルアルコール0.75部、サーフィノール61(ノニオン性界面活性剤)0.75部、フッ素系界面活性剤0.2部、及び残部を水(合計100部)としてコート25を調製した。上記インクセット11にて画像を記録し、その後コート液25で記録した。次いで、金属ローラーを使用し、毎分37フィート(約11.3m)の速度で、圧力1750psi(約1.2×107Pa)を負荷するとともに52℃で加熱してカレンダ処理を行った。これにより、画像1〜3を含む記録物をそれぞれ作製して、前述の実施例1と同様にして評価した。
(比較例15)
実施例1で記録ヘッドの直下に近赤外線が照射されるように配置した近赤外線ヒーターを、記録ヘッドから記録媒体が搬送される上流側30cmの位置に照射されるように設置した以外は前述の実施例1と同様にして画像1〜3を含む記録物を作製して評価した。この評価に利用した記録装置では、インク及びコート液の付与中ではなく、付与後に加熱が行われる。得られた塩ビフィルムの記録物の画像を観察したところ滲みが発生していた。
(比較例16)
実施例1でインクを付与する記録ヘッドから記録媒体が搬送される上流側30cmの位置に別の記録ヘッドを配置してコート液を付与した以外は前述の実施例1と同様にして画像1〜3を含む記録物を作製して評価した。この評価に利用した記録装置では、インクの付与中には加熱が行われるが、コート液の付与中には加熱が行われない。
(比較例17)
実施例1でコート液を付与する記録ヘッドから記録媒体が搬送される上流側30cmの位置に別の記録ヘッドを配置してインクを付与した以外は前述の実施例1と同様にして画像1〜3を含む記録物を作製して評価した。この評価に利用した記録装置では、インクの付与中には加熱が行われないが、コート液の付与中には加熱が行われる。得られた塩ビフィルムの記録物の画像を観察したところ滲みが発生していた。
101,301:インク
102,203:樹脂粒子
103,303,407:顔料
104,402,503:記録媒体
105,202,307,308,403,406:皮膜
201,306,405:コート液
302:第一の樹脂粒子
305:第二の樹脂粒子
401,502a,502b:加熱部
404:混合層
501,601:記録ヘッド
504:前加熱処理部
505:後加熱処理部
601K:ブラックインクの吐出口列
601C:シアンインクの吐出口列
601M:マゼンタインクの吐出口列
601Y:イエローインクの吐出口列
601CL:コート液の吐出口列

Claims (5)

  1. 顔料及び第一の樹脂粒子を含有するインク、並びに、第二の樹脂粒子を含有するコート液を用いて、記録ヘッドの走査によって記録媒体の単位領域に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    加熱条件下で前記インクを前記単位領域に付与する工程と、前記単位領域への前記インクの付与が行われた後に、加熱条件下で前記単位領域に前記コート液を付与する工程と、を有し、
    前記第一の樹脂粒子の親水性に比して、前記第二の樹脂粒子の親水性の方が高く、
    前記顔料の50%体積平均粒子径に比して、前記第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の方が大きいことを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記単位領域に、前記コート液を付与する際の記録ヘッドの走査回数(Sc)と、前記インクを付与する際の記録ヘッドの走査回数(Si)が、0.06≦Sc/(Sc+Si)≦0.5の関係を満たす請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記第一の樹脂粒子と前記第二の樹脂粒子が、いずれも、その表面に中和された酸基を有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第一の樹脂粒子の酸価に比して、前記第二の樹脂粒子の酸価の方が10〜90mgKOH/g高い請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記顔料の50%体積平均粒子径に対する、前記第二の樹脂粒子の50%体積平均粒子径の比率が1.7以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
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