JP6688513B2 - ジヨードシランの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はヨードシラン、特に電子材料用途の成膜材料として使用されるヨードシランの工業的製造方法に関する。
ヨードシランを含むハロシラン類は半導体製造の際、窒化珪素などのケイ素含有膜を CVD法(化学気相成長法)、やALD法(原子層堆積法)により形成する場合の原材料として広く使用されている。
特にジヨードシランは、その反応性の高さや、蒸気圧の観点から注目されており、近年需要が高まっている。
ジヨードシランの合成方法は古くから知られており、フェニルシランとヨウ素の反応により2段階で生成することが報告されている。
フェニルシランとヨウ素の反応は、固液反応の為に反応が開始し難く、加えて発熱反応であることから、安定的な反応の継続がえられる条件が難しい。特に反応終盤はヨウ素の固体が小さくなり、比表面積が大きくなり、高活性になっているために安定的に反応をコントロールする事が非常に困難になっている。
Keinanらは、この反応を無溶媒で行なっていたが、そのスケールはNMRチューブ内(内径4mm程度)という小さな規模で、−20℃という低温反応で行なっている(下記非特許文献1参照)。Kerriganらは、3Lスケールでの製造方法を提案しているが、反応は
−65℃の低温バスで冷却しながら、−6℃〜+6℃にコントロールし、その後、15時間をかけて注意深く室温まで戻している(下記特許文献1)。このことは、反応終盤にもまだ未反応の原料が残存していることを示している。Kerriganらの製造方法は、Keinanらに比較すればスケールアップされているとはいえ、工業的スケールで行なうには、なお多くの課題が残っている。
米国特許出願公開第2016/0264426号明細書
J.Org.Chem.Vol.52,1987,pp.4846−4851
ジヨードシランを工業的に適した規模で製造するには、最低でも例えば10L以上、好ましくは30L以上、場合によっては100L 又はそれ以上の大きなスケールで製造するなど、大量に原料を仕込んで、しかも、反応時間の短縮ができることなどの条件が採用できることが好ましい。 その際、大量に原料を仕込んで反応させると、急激に発熱し、反応が暴走する可能性が大きく、反応の暴走を抑制するための反応温度のコントロール方法の見直しが必要である。
反応時間の短縮には、ある程度の高めの反応温度で行うことにより、反応の進行を促進する事が知られているが、大量に原料を仕込んで反応させる場合の反応の暴走を抑制できなければ重大な事故につながる恐れがある。
フェニルシランとヨウ素の反応によりジヨードシランを製造する反応は下式のような2段階反応であるが、固液反応である第1段目が律速となり、2段目のヨウ化水素による脱フェニル反応は1段目に比べて素早く進行する。従って、ヨウ化水素の系内への蓄積は少ないと考えられる。しかし、1段目の反応も2段目の反応もいずれも発熱反応であり、第1段の反応が進行すると直ちに1段目と2段目を合わせた発熱が起こるという状況になり、これへの対処は非常に重要である。
Ph−SiH +I→Ph−SiH−I +HI
Ph−SiH−I +HI→I−SiH−I +H−Ph
なお、上記反応化学式中、Phはフェニル基を示す。
発熱反応のコントロールはいかに反応を維持させながら、反応熱を除去して反応の暴走を防止するかが鍵となるが、反応スケールが大きくなるにつれて、発熱する体積は3乗で増加するのに対して、冷却する表面積は2乗でしか増加しないため、冷却方法、温度のコントロールが大変に重要になってくる。
本発明者らは鋭意検討を行なった結果、反応液を少量ずつ温度のコントロールされた配管を連続的に通過させることにより、安全にスケールアップを行うことができることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、フェニルシランとヨウ素を溶媒の存在下で反応させることを特徴とするジヨードシランの製造方法である。
また、特に 好ましくは反応槽中の溶媒とヨウ素の混合物にフェニルシランと触媒を滴下してジヨードシランを製造する方法であって、反応槽中の前記溶媒、ヨウ素、フェニルシラン、触媒ならびに反応生成物とを含む反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を含むことを特徴とするジヨードシランの製造方法である。
本発明により、フェニルシランとヨウ素の反応によるジヨードシランの工業スケールでの製造を安全に効率よく行うことが出来る。
特に、反応槽中の溶媒とヨウ素の混合物にフェニルシランと触媒を滴下してジヨードシランを製造する方法において反応槽中の前記溶媒、ヨウ素、フェニルシラン、触媒ならびに反応生成物とを含む反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を含むことにより、温度上昇により反応速度を速め、しかも、反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送するので、温度上昇により反応速度を速めても、反応温度のコントロールが容易になり、反応が暴走する危険を少なくできる。
また、好ましくは、反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程の温度を+20〜+60℃とする態様を採用することにより、反応速度を速くでき、反応温度のコントロールが容易になり、反応が暴走する危険をより少なくでき、より好ましい。
また、好ましくは、反応槽中の溶媒とヨウ素の混合物が−20℃〜−100℃の低温にて反応槽に仕込まれる態様を採用することにより、フェニルシランと触媒を滴下した場合に、反応温度が急上昇し、反応が暴走するのを防止でき、より好ましい。
また、好ましくは、溶媒が、ジヨードシランと反応せず、ジヨードシランと沸点の差があるアプロティック溶媒である態様を採用することにより、蒸留により、目的のジヨードシランを容易に、収率良く採取でき、より好ましい。
また、好ましくは、溶媒を、クロロホルムとすることにより、反応終了後、蒸留により、溶媒とベンゼンを除去し、ジヨードシランを精製する場合に、目的のジヨードシランを容易に、且つ、収率良く採取でき、より好ましい。
本発明のジヨードシランを製造するための反応装置の一例の概略図。 本発明のジヨードシランを製造するための反応装置の別の一例の概略図。 本発明のジヨードシランを製造するための反応装置の更に別の一例の概略図。
本発明のジヨードシランの工業的な製造方法は、フェニルシランとヨウ素を溶媒の存在下で反応させるのであるが、この際用いる反応槽の大きさは特に限定するものではないが、工業的な製造のためには、反応槽の内容積が10L以上、好ましくは30L以上、より好ましくは40L以上で、上限は特に規制されないが、あまりに大きくなると反応槽内の温度を反応が暴走しないように、例えば、ヨウ素と溶媒の導入された反応槽にフェニルシランと触媒を滴下して反応を開始させる場合や、その後、反応を続行する際の反応槽内の温度を比較的低い温度に保つのに、多大のエネルギーが必要になるので200L以下、好ましくは100L以下が望ましい。
反応は、反応開始時は、ヨウ素と溶媒を反応槽に仕込む。反応槽の温度は−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃の低温が保てるよう、チラーの冷媒を反応槽のジャケットに循環して温度を調整する。その後反応槽中に、通常は室温のフェニルシランと触媒を滴下して反応を開始するが、この際は、反応槽内の温度が上昇するが、フェニルシランと触媒の滴下時においては、反応槽内の温度は−100℃〜+30℃にコントロールされていることが好ましい。
フェニルシランと触媒の滴下終了後は、反応槽内の温度は、−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に保つことが好ましい。このようにして反応を開始するが、本発明においては反応槽中の前記溶媒、ヨウ素、フェニルシラン、触媒ならびに反応生成物とを含む反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を含むことが好ましい。かかる昇温移送工程を経ても、なお反応が完結していない場合には、この反応混合物を、同じ反応槽に戻すか、別の反応槽に導入し、当該反応槽から反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を反応が終了するまで繰り返すが、この場合の反応槽内の温度は、−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に保つことが好ましい。
更に本発明のジヨードシランの製造方法の説明を続行していくに当たり、使用する反応装置の一例を引用しながら本発明を説明するが、反応装置を引用して説明するのは、本発明の理解を容易にするためであり、本発明は、これら図示した装置の使用にのみ限定されるものではない。
本発明で用いる反応装置の一例の概略図を図1に示した(得られたジヨードシランと副生成物ベンゼン、溶媒などより、ジヨードシランを分離するには通常、蒸留により分離するが、蒸留装置は図示していない。他の図面においても同様である。)。
図1中、1が側面と下面に冷却用の恒温ジャケットが設けられた反応槽、2がモーター駆動の攪拌機、3が恒温ジャケットの冷媒の温度を制御するためのチラー、4はコンデンサ(冷却用熱交換器)、5は圧力解放弁、6は排気管、7は窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス供給器(ボンベでも可)、8はバルブ(不活性ガス供給用)、9は滴下漏斗、10はバルブ(反応混合物移送用)、11は循環ポンプ、12はパイプ状配管(この例ではスタティックミキサーが内臓)、13は反応槽で低温に保たれた反応混合物の反応を促進するための所望の温度(例えば+20〜+30℃)に温度を高めて保つための恒温槽、14は反応を鎮静化するための所望の温度(例えば‐50〜+10℃)に温度を低めて保つための恒温槽、15はバルブ(未反応物を含む反応混合物を反応槽に入れるためのバルブ[図1の場合には反応槽1に戻すためのバルブ])、16は原料投入口(溶媒とヨウ素を投入。なお、蓋が閉められるようになっている。)17は反応終了時点で反応混合物を取り出すためのバルブ(ただし、バルブ10や15を三方バルブとして、反応終了時点で反応混合物を取り出してもよい。)である。上記において、恒温槽14は、図面では図示されているが、恒温槽13で昇温された反応混合物の温度があまり高くならないような条件で運転する場合には、存在しなくてもよい(図2や図3の恒温槽14a、14b、14cも同様である。)。
上記図1に示した反応装置を使用する場合、窒素ガスや、アルゴンガス(好ましくは窒素ガス)などの不活性ガスを不活性ガス供給器7からバルブ8を開いて、反応装置内に充填した後、溶媒とヨウ素を原料投入口16より反応層1に仕込む。反応槽の温度は−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃の低温が保てるよう、チラーの冷媒を反応槽のジャケットに循環して温度を調整する。その後フェニルシランと触媒を滴下漏斗9より滴下して反応を開始するが、反応開始時においては、反応層の温度は上昇する傾向にあるが、前述したように、フェニルシランと触媒の滴下時においては、反応槽内の温度は−100℃〜+30℃にコントロールされていることが好ましい。フェニルシランと触媒の滴下終了後は、反応槽内の温度は−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃の低温が保てるよう、チラーの冷媒を反応槽のジャケットに循環して温度を調整する。この際、反応槽内は、常時攪拌機2で撹拌しておくことが好ましい。
反応に使用するヨウ素は固体状で使用し、乾燥した不活性気体中で細粒化したものが好ましい。固形粒状のヨウ素は、球状の粒形のものが、配管12などを流れやすく好ましい。粒径も特に限定されるものではないが、あまりに大きいと、比表面積が小さくなり反応が遅くなるし、仕込み時から粉末状の粒度のあまりに細かいものを用いると、反応により急速に温度が上昇する恐れがあるので、粒径(最長直径)が0.1〜10mmのものが好ましく、より好ましくは0.1〜5mm、更に好ましくは0.1〜3mmのものを用いることが好ましい。
溶媒としてはジヨードシランと共沸しないアプロティック溶媒(aprotic solvent)が用いられ、反応生成物と沸点差があるものであればよく、沸点差は常圧の場合で、例えば+1〜+100℃、好ましくは+20〜+100℃、より好ましくは+60〜+100℃のものが好ましく、ジヨードシランの沸点140℃より高いものでも低いものでもよい。また、アプロティック溶媒としては、特に限定するものではないが、沸点範囲が常圧の場合の沸点で、+50〜+120℃のものがより好ましい。
溶媒の具体例としては、炭化水素系溶媒の他、ハロゲン化炭化水素系溶媒などが用いられ、例えば、クロロホルム(沸点61℃)、ジクロロメタン(沸点40℃)、ヘプタフルオロヘキサン(沸点71℃)、デカフルオロペンタン(沸点55℃)などが挙げられ、特にクロロホルムが沸点差、引火性、ヨウ素の溶解性、ジヨードシランと共沸しない点
及びコストの観点から好ましい。なお、アプロティック溶媒は、通常、ヨウ素に対してあまり溶解性がないが、ハロゲン系溶媒の場合は若干の溶解性が見られる。粒状のヨウ素を使用するのは攪拌性を良くするためである。
溶媒の使用量は特に限定するものではないが、好ましくはヨウ素の重量に対し、50〜500重量%、より好ましくは100〜200重量%である。
反応槽の温度は−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃の低温が保てるよう、チラーの冷媒を反応槽のジャケットに循環して温度を調整する。
次にフェニルシランと触媒を滴下ロート9より滴下して攪拌機2で撹拌し、反応を開始させるが、反応槽内の温度は上述したようにフェニルシランと触媒を滴下時は、温度が上昇するが、反応槽内の温度を、−100〜+30℃に保つことが好ましく、滴下終了後の反応を熟成させる工程においては、撹拌しながら反応槽内の温度を、−100〜+10℃好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に保つことが好ましい。
用いる触媒としては、特に限定されるものではないが、酢酸エチル、酢酸パラジウム(II)、トリフェニルホスフィンオキシド、塩化パラジウムなどが挙げられ、酢酸エチルが好ましい。
フェニルシランとヨウ素の使用割合は、通常、フェニルシランのモル数に対してヨウ素のモル数が80〜150%、好ましくは90〜120%、より好ましくは100〜110%の範囲である。
触媒の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、好ましくは、フェニルシランの重量に対して5〜10重量%程度である。
撹拌機2の撹拌速度は、特に限定するものではないが、通常、100〜500rpm程度である。
反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程は、好ましくは、反応槽に付設された反応混合物を移送する配管中で行われる工程であり、前記反応混合物を移送、昇温する工程を行う配管が
(a)2つ以上の反応槽を用い、隣接する反応槽間を連結する配管中で行われる工程(一方通行:例、図3参照、ただし図3は3つの反応槽を用いた場合の例示)、
(b)前記(a)工程において、最終の反応槽より前記反応混合物を前記反応槽のいずれかに戻し、前記最終の反応槽より反応混合物を取り出すまで各配管中で反応混合物を移送、昇温する工程を繰り返して行う工程、(繰り返し運転:例、図2参照、ただし図2は2つの反応槽を用いた場合の例示)又は、
(c)一つの反応槽を用いて、前記反応槽より反応混合物を取り出し、再び前記反応槽に戻す配管中で反応混合物を移送、昇温する工程を繰り返して行う工程、(循環運転:例、図1参照)
のいずれかが好ましい。
また、いずれの工程においても、最終の反応槽より反応混合物を取り出すための配管中で、さらなる反応混合物の移送、昇温する工程を行っても良い。
反応のスケールにもよるが、反応初期は熟成工程として反応槽内の温度-20℃以下での低温撹拌を数時間継続してもよい。
次に、更に図面を引用しながら各工程をより具体的に説明する。
図1において、原料投入口16より溶媒とヨウ素を反応層に仕込み、−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に保つ。滴下漏斗9よりフェニルシランと触媒の混合液を滴下すると、反応が開始され、温度が上昇するが、前述したようにフェニルシランと触媒を滴下時は、温度が上昇するが、反応槽内の温度を、−100〜+30℃に保つことが好ましく、その後は、上記範囲内の温度に保たれた反応混合物が1の反応槽内部で攪拌熟成されている。バルブ10を開いて、間欠的に又は連続的に反応混合物を循環ポンプ11を作動させて、パイプ状配管12に少量ずつ流し、恒温槽13で所望の温度に高め反応を加速する。通常、この恒温槽13においての配管内温度は+20℃〜+60℃、好ましくは+20℃〜+50℃、より好ましくは+20℃〜+30℃に保つことが好ましい。温度のコントロールされた配管は、恒温槽13に浸漬させた径の細いパイプ状の配管であっても熱交換器を利用しても良い。場合によっては配管内部の温度勾配をなくすようなスタティックミキサーに代表されるような内部構造があってもよい。スタティックミキサーは、駆動部のない静止型混合器(ラインミキサー)であり、ミキサー内に入った流体は、エレメントにより順次撹拌混合される機能を有している。
なお、ここで「反応混合物」という用語は原料混合物(触媒も含む)から、反応が進行して反応が完了するまでの反応系内に存する物質を意味し、反応状況によりその内容や組成は変わってくる。すなわち反応開始時は、原料と溶媒の混合物が主体であり、若干の反応生成物が含まれ、反応が進行して反応完了時に近づくにつれて、原料のままの割合が少なくなり、溶媒と反応生成物の割合が増加し、最終的に反応完了時点では、収率によって異なるが、反応系内に存する物質は反応生成物と溶媒などが大部分となる。これら各段階も含めて「反応混合物」という用語は原料混合物から、反応が進行して反応が完了するまでの間の反応系内の存する物質を意味している。
配管12の材質は、ガラス、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、セラミック、SUS、チタン、ハステロイ(Ni/Cr/Mo/Fe合金)等反応混合物と反応が生じない不活性な材質のものが好ましく、配管12の太さは、反応槽の大きさにもよるので、特に限定するものではないが、通常、内径で2mm〜30mm、好ましくは3mm〜20mmであることが好ましく、あまりに細すぎると、生産性が低下する傾向になり、あまりに太すぎると、温度の制御性が低下する傾向になる。場合によっては、細管を複数並列に並べたり、類似の形態の熱交換器を使用しても良い。配管の長さは特に限定するものではないが10cm〜10m とし、内部に撹拌効率を向上させるような内部構造、例えば前述したスタティックミキサーなどを持っていてもよい。
その後、反応混合物はバルブ15を経て再び反応槽に戻される。前述したように、図1やその他の図には恒温槽14や14a、14b、14cなどが図示されているが、冷却の必要性が低い場合には、これらの恒温槽14や14a、14b、14cは、不要である。
反応混合物を少量ずつ +20℃〜+60℃の恒温槽13により恒温に保たれた配管12を通過させる工程は、連続的に行なっても良いし、恒温槽13の温度上昇具合を確認しながら断続的に行ってもよい。
反応混合物を少量ずつ +20℃〜+60℃の恒温に保たれた配管を通過させる工程は、2つ以上の反応槽間を通過させながら行なっても良いし(例:図3参照)、場合によっては2つ以上の反応槽間を繰り返して通過させてもよい(例:図2参照)。また1つの反応槽で、反応混合物をリサイクルさせても良い(例:図1参照)。連続的に昇温させながら配管内を移送する工程の温度範囲は+20〜+60℃、好ましくは、+20℃〜+50℃、より好ましくは+20℃〜+30℃である。反応が十分に進行していない段階では、反応槽に反応混合物を戻す前に上述した反応槽内の温度と同様な温度、すなわち−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に冷却する工程を恒温槽14などにより設けても良い。
反応混合物を少量ずつ恒温に保たれた配管を通過させる工程における通過速度は、特に限定するものではないが、反応混合物総量に対して通常0.1〜50重量%/min、好ましくは1〜30重量%/min、より好ましくは5〜20重量%/min程度が好ましい。
また、流速は特に限定するものではないが、反応混合物を毎分 100ml〜50L (但し、上記の反応混合物総量に対して通常0.1〜50重量%/min、好ましくは1〜30重量%/min、より好ましくは5〜20重量%/min程度と矛盾しない範囲)で流すことができる。
反応の完了は、固形のヨウ素が反応槽からなくなった時点であり、バルブ17を開いて反応混合物を採取するが、前述したように、バルブ10やバルブ15などを三方バルブにしておいてそこから採取するなど、採取できる場所があれば、特に限定されない。そのため、固形のヨウ素が反応槽からなくなったか否かは、目視で確認するので、反応槽或いは配管の少なくとも一部は透明なガラス製或いはPFA製であることが好ましい。ガラス製あるいはガラスライニング製の反応槽は、用いる原料や生成物とも反応しないので好ましい。
得られた反応混合物は、ジヨードシランを溶媒と副生成物であるベンゼンと分離して精製するため通常、蒸留で分離する。より高純度のジヨードシランを得るには、2段階蒸留が好ましい。
蒸留は反応槽より内容物を蒸留釜に移送して行ってもよいし、反応槽より直接単蒸留を行なっても良い。反応槽から内容物を蒸留釜に移送する際は、反応層下部にあるバルブ17より取り出してもよいし、バルブ10あるいはバルブ15を3方バルブにしてそこから取り出しても良い。
次に、図2に示した本発明で用い得る更に別の実施形態例の反応装置の例を説明する。
図2に示した反応装置は、反応混合物を少量ずつ配管を通過させる工程が、2つ以上の反応槽(第1反応槽1a、第2反応槽1b)間を通過させながら行なうルート(10aバルブ、11a循環ポンプ、12aパイプ状配管、13a温度を高めて保つための恒温槽、14a反応を鎮静化するための所望の温度に温度を低めて保つための恒温槽(通常、温度を低下させる必要がない場合は不要)、15aはバルブ(未反応物を含む反応混合物を第2の反応槽1bに導入するためのバルブ)と、第2の反応槽1bより前記反応混合物を第1の反応槽1aに戻すルート(10bバルブ、11b循環ポンプ、12bパイプ状配管、13b温度を高めて保つための恒温槽、14b反応を鎮静化するための所望の温度に温度を低めて保つための恒温槽(通常、温度を低下させる必要がない場合は不要)、15bはバルブ(未反応物を含む反応混合物を第1の反応槽1aに戻すためのバルブ)の2つの配管ルートを有している。図面中の図1と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略している。また、アルファベット符号を除いた同じ数字符号は、上述で説明した点を除いて、図1に示した同じ数字符号を付した部材とほぼ同じ機能を有する部材であり、この場合も配管中の温度や反応槽の温度条件などの各種条件は図1を用いて上述した前述の実施形態例と同様であるので説明を省略している。図1の場合と同様に反応が十分に進行していない段階では、反応槽に反応混合物を戻す前に上述した反応槽内の温度と同様な温度、すなわち−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に冷却する工程を恒温槽14a及び14bなどにより設けても良い。
尚、第2の反応槽には滴下漏斗9及び原料投入口16は存在しないが、滴下漏斗や原料投入口16があってもよい。
また、反応槽の数は、図示したものより必要に応じて増やしてもよい。尚、複数の反応槽のうち第1反応槽以外の反応槽には、滴下漏斗や原料投入口は通常なくてもよい。
次に、図3に示した別の実施形態例の反応装置について説明する。
図3に示した反応装置は、反応混合物を少量ずつ配管を通過させる工程が、2つ以上の反応槽間を通過させながら行なう場合の一例の装置であり、図1と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略している。
図3において、第1の反応槽1aの配管12aを通過した反応混合物は、第1の反応槽1aに戻されるのではなく、別の第2の反応槽1bにバルブ15aを通して導入される。この場合の配管中(12a、13a)の温度や反応槽1a、1bの温度条件などの各種条件は図1を用いて上述した前述の実施形態例と同様であるので説明を省略している。第2の反応槽1bの配管中(12b、13b)を通過した反応混合物は、別の第3の反応槽1cにバルブ15bを通して導入される。この場合も配管中の温度や反応槽の温度条件などの各種条件は図1を用いて上述した前述の実施形態例と同様であるので説明を省略している。そして、最終的に反応が完了した反応混合物を第3の反応槽1cのバルブ17から取り出すか、場合により第3の反応槽1cの配管中(12c、13c)を通過させて採取する。図1、図2の場合と同様に反応が十分に進行していない段階では、反応槽に反応混合物を戻す前に上述した反応槽内の温度と同様な温度、すなわち−100〜+10℃、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜−10℃に冷却する工程を恒温槽14a及び14bなどにより設けても良い。14a、14b、14cは反応を鎮静化する必要がある場合に上述の所望の温度に温度を低めて保つための恒温槽であるが、通常、温度を低下させる必要がない場合は不要である。
この図では3つの反応槽を通過させて反応を完了させているが、反応が完了しない場合には、更に反応槽と配管を増設する設計としてもよい。あるいは、第3の反応槽から第2の反応槽に戻したり、さらに第2と第3の反応槽の間で反応混合物を循環させても良い。連続生産の場合には、この図3のタイプが好適であるが、コストがかかる。
図3に示した反応装置においても、図面中の図1と同じ部材については同じ符号を付して説明を省略している。また、アルファベット符号を除いた同じ数字符号は、上述で説明した点を除いて、図1に示した同じ数字符号を付した部材とほぼ同じ機能を有する部材であり、この場合も配管中の温度や反応槽の温度条件などの各種条件は図1を用いて上述した前述の実施形態例と同様であるので説明を省略している。
尚、複数の反応槽のうち第1番目の反応槽以外の反応槽には滴下漏斗9や原料投入口16は存在しないが、滴下漏斗および原料投入口があってもよい。
以下実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
(10L反応槽 クロロホルム溶媒による合成)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットした10000mlフラスコに合成溶媒としてクロロホルム溶媒3000mlとヨウ素3012.5g(11.87mol)を仕込み、チラーからの冷媒で反応槽内を−30℃に冷却し、撹拌機で攪拌しながらフェニルシラン1214.0g(11.22mol)と酢酸エチル40mlの混合液を140分かけて滴下した。滴下中に液温が−10℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。滴下終了後、反応混合液をポンプで+30℃に保った恒温槽中を通る配管の中に設置したスタティックミキサー中を300ml/minの速度で通過させ、次いで、−30℃の恒温槽中を通る配管中を通した後、反応槽に戻すという操作を6時間継続した。ヨウ素の消失を確認した後、反応槽の冷却を停止するとともに、改めて+20℃に保った恒温槽13を通して反応混合液の温度が室温以上に上昇しないことを確認して反応を停止した。なお、この装置では図1の符号14で示したような反応を鎮静化するための恒温槽は存在しないケースである。採取した液体の2段階の減圧蒸留(濃縮温度45℃(51.3kPa)、蒸留温度60℃(6.9kPa))を行い、2277.3g(収率=72%)のジヨードシランが得られた。
(実施例2)
(50L反応槽 クロロホルム溶媒による合成)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットし窒素ガスを充填した図1に記載の50L反応槽に合成溶媒としてクロロホルム溶媒15Lとヨウ素15.08kg(59.42mol)を仕込み、チラーからの冷媒で反応槽内を−30℃に冷却し、攪拌しながらフェニルシラン6.07kg(56.09mol)と酢酸エチル200mlの混合液を300分かけて滴下した。滴下中に液温が0℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。滴下終了後、反応混合液をポンプで30℃に保った恒温槽13中を通る配管の中に設置したスタティックミキサー中を1L/min の速度で通過させ、次いで、−30℃の恒温槽14中を通る配管中を通した後、反応槽に戻すという操作を12時間継続した。ヨウ素の消失を確認した後、反応槽の冷却を停止するとともに、改めて20℃に保った恒温槽13及び20℃に保った恒温槽14中を通る配管中を通した後、反応混合液の温度が室温以上に上昇しないことを確認して反応を停止した。 採取した液体の減圧蒸留(実施例1と同様の条件)を行い、11.62kg(収率=73%)のジヨードシランが得られた。
(比較例1)
(NEAT無溶媒合成)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却。コンデンサ上部にArガス風船設置)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットした500mlフラスコにヨウ素118.2g(0.47mol)を仕込み、−78℃に冷却(ドライアイス/メタノール浴)、攪拌しながらフェニルシラン46.5g(0.43mol)を滴下した。フェニルシランが凍結したことを確認後、酢酸エチル1.2mlを滴下し室温まで攪拌を継続した。攪拌中に−20℃付近で急激な温度上昇が認められ40℃近くまで上昇したが、徐々に温度が低下した(−5℃まで)。この時、風船が徐々に膨張した。室温まで攪拌を継続、室温になってから更に24時間攪拌を継続し攪拌を停止した。採取した液体の減圧蒸留(蒸留温度60℃(6.9kPa))を行い、59.5g(収率=49%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、少量しか製造できず、収率も悪く、工業的生産には不向きであった。
(比較例2)
(クロロホルム溶媒による合成 500ml反応槽)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却。コンデンサ上部にArガス風船設置)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットした500mlフラスコに合成溶媒としてクロロホルム100mlとヨウ素103.7g(0.41mol)を仕込み、−76℃に冷却(ドライアイス/メタノール浴)、攪拌しながらフェニルシラン44.4g(0.41mol)と酢酸エチル3.0mlの混合液を20分かけて滴下した。攪拌中に急激な温度上昇は認められず、攪拌を室温まで継続した。室温になってから更に24時間攪拌を継続し攪拌を停止した。採取した液体の減圧蒸留(実施例1と同様の条件)を行い、70.0g(収率=60%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、溶媒を使用し、比較例1よりスケールをアップしたが、長時間かかった割には、比較的少量しか製造できず、収率も悪く、工業的規模での生産には不向きであった。
(比較例3)
(クロロホルム溶媒による合成 3000ml反応槽)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットした3000mlフラスコに窒素ガスを充填し、合成溶媒としてクロロホルム溶媒1400mlとヨウ素1518.4g(5.98mol)を仕込み、チラーからの冷媒で反応槽内を−30℃に冷却し、攪拌しながらフェニルシラン611.6g(5.65mol)と酢酸エチル24.0mlの混合液を−30℃で130分かけて滴下した。滴下中に液温が−10℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。滴下終了後、1℃/minで5℃ずつ昇温、その温度で10分保持し、室温まで攪拌を継続した。室温になってから更に24時間攪拌を継続し攪拌を停止した。採取した液体の減圧蒸留(実施例1と同様の条件)を行い、1220.1g(収率=76%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、溶媒を使用し、比較例2より更にスケールをアップしたが、極めて長時間かかった割には、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。
(比較例4)
(クロロホルム溶媒による合成 3000ml 滴下温度=−20℃)
フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下時の反応槽(フラスコ)内の温度を−20℃に変更した以外は、比較例3と同様の合成を行った。滴下中、液温が0℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。減圧蒸留後(実施例1と同様の条件)、1211.3g(収率=75%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、フェニルシランと酢酸エチルの滴下温度を比較例3より高い温度にしてみたが、得られるジヨードシランの量は、比較例3の場合とあまり変わらず、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。
(比較例5)
(クロロホルム溶媒による合成 3000ml 滴下温度=−10℃)
フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下時の反応槽(フラスコ)内の温度を−10℃に変更した以外は、比較例3と同様の合成を行った。滴下中、液温が0℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。減圧蒸留後(実施例1と同様の条件)、1219.1g(収率=76%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、フェニルシランと酢酸エチルの滴下温度を比較例4より更に高い温度にしてみたが、得られるジヨードシランの量は、比較例3や、比較例4の場合とあまり変わらず、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。フェニルシランと酢酸エチルの滴下温度の上昇は生産量向上にあまり寄与しないことがわかった。
(比較例6)
(クロロホルム溶媒による合成 フェニルシラン滴下時間の短縮)
フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下時間を60minに変更した以外は比較例3と同様の合成を行った。滴下中、液温が10℃程度まで徐々に上昇。急激な温度上昇は見られなかったが、さらに上がっていく傾向がみられたため滴下を停止、液温が低下したところを確認後、さらに滴下を続けた。減圧蒸留後(実施例1と同様の条件)、1250.1g(収率=78%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、フェニルシランと酢酸エチルの滴下時間を比較例3より短縮すると、反応系内温度が上昇する危険性が察知され、生産にかなり長時間かかる割には、得られるジヨードシランの量は、比較例3の場合とあまり変わらず、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。フェニルシランと酢酸エチルの滴下速度の上昇(滴下時間の短縮)は生産量向上に寄与しないことがわかった。
(比較例7)
(クロロホルム溶媒による合成 フェニルシラン滴下時間の増加)
フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下時間を240minに変更した以外は比較例3と同様の合成を行った。滴下中、液温はほぼ一定、急激な温度上昇は見られなかった。減圧蒸留後(実施例1と同様の条件)、1220.1g(収率=76%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、フェニルシランと酢酸エチルの滴下時間を比較例3より長くしても、反応系内温度が上昇する危険性は緩和されるが、生産にかなり長時間かかる割には、得られるジヨードシランの量は、比較例3の場合とあまり変わらず、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。フェニルシランと酢酸エチルの滴下速度の低下(滴下時間の増加)は生産量向上に寄与しないことがわかった。
(比較例8)
(クロロホルム溶媒による合成 室温での攪拌時間の増加)
フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下後、室温になってからの攪拌時間を48時間に変更した以外は比較例3と同様の工程を行い、1253.6g(収率=78%)のジヨードシランが得られた。
この結果から明らかなように、上記の攪拌時間を比較例3より長く2倍にしても、生産時間が極めて長時間かかる割には、得られるジヨードシランの量は、比較例3の場合とあまり変わらず、工業生産に向くほどの量の生産物が得られず、工業的規模での生産には不向きであった。反応系内が室温になってからの攪拌時間を長くしても生産量向上に寄与しないことがわかった。
(比較例9)
(クロロホルム溶媒による合成 10000ml反応槽)
温度計、コンデンサ(−40℃で冷却)、滴下漏斗、モーター攪拌機をセットし、窒素ガスを充填した10000mlフラスコに合成溶媒としてクロロホルム溶媒3000mlとヨウ素3012.5g(11.87mol)を仕込み、チラーからの冷媒で反応槽内を−30℃に冷却し、攪拌しながらフェニルシラン1214.0g(11.22mol)と酢酸エチル40mlの混合液を140分かけて滴下した。滴下中に液温が−10℃程度まで徐々に上昇したが、急激な温度上昇は認められなかった。滴下終了後、1℃/minで5℃ずつ昇温、その温度で10分保持し、室温まで攪拌を継続した。この時、液温が15℃付近にて約30℃まで一気に温度上昇が見られた。チラーの温度を0℃まで低下させると液温は低下したので、0℃にて1時間攪拌を継続させてから1℃/minで5℃まで昇温、1時間攪拌を行った。この時、液温は10℃を示しチラー温度(5℃)と明確な差が見られた。その後、1℃/minで20℃まで昇温、更に24時間攪拌を継続し攪拌を停止した。採取した液体の減圧蒸留(実施例1と同様の条件)を行い、1834.5g(収率=58%)のジヨードシランが得られた。
実施例1とほぼ同様の規模で製造したが、比較例9は、反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を有しないので、実施例1と比べて、工程時間も長く、収量も少なく収率も悪く、工業的生産には不向きであった。
(比較例10)
(クロロホルム溶媒による合成 10000ml反応槽 温度コントロールして室温まで攪拌)
比較例9と同様の工程を行い、フェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下を終了させた。フェニルシラン滴下後の室温まで昇温、攪拌させる工程で、1℃/minで5℃ずつ昇温、その温度で10分保持し、0℃まで昇温、5時間保持した。その後、1℃/minで5℃まで昇温、2時間保持後、1℃/minで10℃まで昇温、1時間保持した。そこから1℃/minで20℃まで昇温、20℃になってから24時間攪拌を継続した。この時、液温がチラー温度を超えて温度上昇することはなかった。それ以外は比較例9と同様の工程を行い、1819.4g(収率=57%)のジヨードシランが得られた。
比較例9に比べて、より段階的に室温にまで戻すことはできたが、工程時間が長くなり、また、実施例1と同様の装置を用いているが、実施例1に比べて収量も少なく収率も悪く、工業的生産には不向きであった。
Figure 0006688513
注)表中、「理論収量」とは、投入した原料が全部100%反応したと仮定した場合の収量であり、実際には全部100%は反応しないので、収率も考慮する必要がある。
表中の備考欄の「滴下」とはフェニルシランと酢酸エチルの混合液の滴下を意味する。
本発明のジヨードシランの製造方法は、半導体製造の際、窒化珪素などのケイ素含有膜をCVD法(化学気相成長法)、やALD法(原子層堆積法)により形成する場合の原材料となるジヨードシランの製造工程時間の短縮にも寄与でき、工業的な製造に有用に適用できる。
1 反応槽
1a 第1反応槽
1b 第2反応槽
1c 第3反応槽
2 攪拌機
3 チラー
4 コンデンサ(冷却用熱交換器)
5 圧力解放弁
6 排気管
7 不活性ガス供給器
8 バルブ
9 滴下漏斗
10、10a、10b、10c バルブ
11、11a、11b、11c 循環ポンプ
12、12a、12b、12c 配管
13、13a、13b、13c 恒温槽
14、14a、14b、14c 恒温槽
15、15a、15b、15c バルブ
16 原料投入口
17 バルブ







Claims (4)

  1. 反応槽中の溶媒とヨウ素の混合物にフェニルシランと触媒を滴下してジヨードシランを製造する方法であって、反応槽中の前記溶媒、ヨウ素、フェニルシラン、触媒ならびに反応生成物とを含む反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程を含むことを特徴とするジヨードシランの製造方法。
  2. 反応混合物を反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程が、反応槽に付設された反応混合物を移送する配管中で行われる工程であり、前記反応混合物を移送、昇温する工程が、下記(a)、(b)、(c)のいずれかから選ばれた工程である請求項1に記載のジヨードシランの製造方法。
    (a)2つ以上の反応槽を用い、隣接する反応槽間を連結する配管中で行われる工程、又は、
    (b)前記(a)工程において、最終の反応槽より前記反応混合物を前記反応槽のいずれかに戻し、前記最終の反応槽より反応混合物を取り出すまで各配管中で反応混合物を移送、昇温する工程を繰り返して行う工程、又は、
    (c)一つの反応槽を用いて、前記反応槽より反応混合物を取り出し、再び前記反応槽に戻す配管中で反応混合物を移送、昇温する工程を繰り返して行う工程。
  3. 反応槽中より少量ずつ連続的に又は間欠的に取り出して昇温させながら移送する工程の温度を+20〜+60℃とする請求項1又は2に記載のジヨードシランの製造方法。
  4. 用いる溶媒がジヨードシランと共沸しせず、反応生成物と沸点差があるアプロティック溶媒である請求項1〜3のいずれか1項に記載のジヨードシランの製造方法。
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