JP6662287B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は高い表面硬度と可撓性を両立した積層体に関する。
従来、カラーフィルターなどの光学材料やフラットパネルディスプレーなどの表面保護(傷付き防止や防汚性付与等)を目的として、合成樹脂等からなる表面層が設けられたプラスチックフィルムが使用されている。これらの表面層には、表面保護の観点から耐擦傷性が重要な特性として要求される。そのため、一般的には、非特許文献1に記載のオルガノシラン系や多官能アクリル系などの各種プレポリマー、オリゴマー等を含む塗料組成物を、塗布−乾燥−熱もしくはUV硬化させることによる「高架橋密度材料」を用いて耐擦傷性を付与している。また、さらに各種表面修飾フィラーを組み合わせた「有機−無機ハイブリット材料」などを用いて塗膜の表面硬度を高めた、いわゆる「ハードコート材料」を用いることで耐擦傷性を付与している。
一方、近年ではプラスチックフィルムの軽く、柔軟であるという特性を活かし、パソコンやスマートフォンなどの表示面ばかりでなく、筐体面のような「曲面の保護」や、いわゆる「フレキシブルデバイス」と呼ばれるような柔軟性に富む筐体への利用が進みつつある。この様な用途では、表面層の耐擦傷性や打痕耐久性などの「表面硬度」に加えて、屈曲時にもひび割れや剥離などが生じにくいこと、すなわち「可撓性」を両立することが要求されている。
ハードコート材料において、耐擦傷性と可撓性の両立に着目した積層体として、特許文献1および特許文献2では「ハードコート/基材間の密着、フィルム折曲げクラック、カール等を実用的許容範囲内に収めることができ、4H以上の鉛筆硬度値を有するハードコートフィルム」が開示されている。具体的には、「無機質或いは有機質の内部架橋超微粒子を含有する硬化樹脂層を設けた後、さらに無機質或いは有機質の内部架橋超微粒子を含有しないクリア硬化樹脂の薄膜を設けてなる硬化樹脂被膜層」、および「ラジカル重合型樹脂とカチオン重合型樹脂のブレンドから成る硬化樹脂被膜層とラジカル重合型樹脂のみから成る硬化樹脂被膜層をこの順に形成した2層構成から成る硬化樹脂被膜層」が提案されている。
一方、特許文献3には「表面硬度の向上を図るとともに、応力集中によるハードコートフィルムの損傷を防ぎ、傷付きにくいハードコートフィルム」が開示されている。具体的には、「ハードコート層が2層以上に形成されており、透明基材に最も近く形成されたハードコート層の弾性率σmが、表層のハードコート層の弾性率σsよりも高いことを特徴とするハードコートフィルム」が提案されている。
また、特許文献4には「簡便に作製でき、膜密着性に優れ、かつ高い膜強度、耐擦過性に優れたハードコート層付積層体」が開示されている。具体的には、「無機粒子の濃度が異なる二つの層が交互に積層された構造であり、無機粒子濃度が高い層群をA層ユニット、無機粒子濃度が低い層群をB層ユニットとしたとき、該A層ユニットの乾燥膜厚の総和ΣAhと該B層ユニットの乾燥膜厚の総和ΣBhとが、ΣAh≧ΣBhの関係を満たすことを特徴とするハードコート層付積層体」が提案されている。
特開2000−052472号公報 特開2000−071392号公報 特開2000−214791号公報 国際公開第2009/130975号パンフレット
プラスチックハードコート応用技術 株式会社シーエムシー出版 2004年
しかしながら、前記表面層に前記「ハードコート材料」を用いたプラスチックフィルムは、表面硬度、すなわち弾性率が極めて高いために、屈曲時のわずかな変形により大きな応力が発生し、容易にひび割れが発生する。これに対して、特許文献1および特許文献2の構成は、ハードコート層の収縮による「カールの発生」を抑制するものである。特許文献1の構成、すなわち「弾性率が0.5GPaから4.5GPaの範囲のコート層の上に弾性率が1.0GPaから6.0GPaの範囲のコート層を積層してなるハードコートフィルム」、および特許文献2の構成、すなわち「弾性率が1.5GPa 〜4.5GPaの範囲のコート層の上に弾性率が2.0GPa 〜4.5GPaの範囲のコート層を積層してなるハードコートフィルム」について、本発明者らが調査したところ、十分な「屈曲性」を得ることができていない。
一方、特許文献3に提案されている構成は、「基材に最も近く形成されたハードコート層の弾性率σmが、表層のハードコート層の弾性率σsよりも高いこと」である。しかし、これらの構成について本発明者らが確認したところ、逆に最表層の弾性率が高い方が表面硬度には有利であることが判った。
更に特許文献4の構成、すなわち「無機粒子濃度が30.0体積%以上、70.0体積%以下の無機粒子濃度が高い層群と、無機粒子濃度が0体積%以上、40.0体積%以下の無機粒子濃度が低い層群が交互に積層されたハードコート層」においては、表面硬度の向上は見られるものの、樹脂材料は高架橋性の活性光線硬化樹脂から選定されているため、そもそも可撓性が得られる設計になっていない。
そこで本発明の目的は、高い表面硬度と曲面での使用に耐えうる十分な可撓性を両立した積層体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)支持基材上に表面層が積層された積層体であって、前記表面層は弾性率の高い層と弾性率の低い層が交互に積層された多層構造を有し、かつ、前記表面層の厚み方向の弾性率分布において、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い極小値が存在し、前記表面層における支持基材との界面側の弾性率と最表面側の弾性率が、共に支持基材の弾性率よりも高いことを特徴とする積層体。
(2)前記表面層の厚み方向の弾性率分布における最大弾性率が、最小弾性率の100倍以上10,000倍以下であることを特徴とする(1)に記載の積層体。
(3)前記表面層の厚み方向の弾性率分布における最小弾性率が0.1GPa以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の積層体。
(4)前記表面層の厚み方向の弾性率分布において、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い極小値が交互に存在し、弾性率分布から算出される厚みおよび弾性率が、以下の関係を満たすことを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
10≦(Tb[nm]/Ta[nm])×(Ea[MPa])/Eb[MPa])≦1,000・・・(式1)
Ta[nm]:弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値
Tb[nm]:弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値
Ea[MPa]:極大弾性率の平均値
Eb[MPa]:極小弾性率の平均値
(5)前記表面層が以下を満たす異方形状を有する無機粒子を含むことを特徴とする、(1)から(4)のいずれかに記載の積層体。
1.2≦Rl/Rs≦20,000・・・(式2)
1nm≦Rs≦100nm・・・(式3)
Rl[nm]:無機粒子の長直径
Rs[nm]:無機粒子の短直径
(6)前記表面層の支持基材に垂直な断面における、前記異方形状を有する無機粒子の、厚み方向の存在頻度Fが以下の条件を満たすことを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の積層体。
Fa<Fb・・・(式4)
Fa:弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の存在頻度
Fb:弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の存在頻度
本発明によれば、高い表面硬度と可撓性を両立した積層体を提供できる。本発明の積層体は同等の厚みの均質な樹脂層と比較して、優れた表面硬度を有すると同時に、応力集中によるカールの発生や、折り曲げ時のクラックや塗膜の剥がれを抑制することができる。
本発明の積層体の断面模式図と断面における厚み方向の弾性率分布の概念図である。 厚み方向の弾性率分布と最大弾性率、最小弾性率の概念図である。 厚み方向の弾性率分布と極大弾性率、極小弾性率およびそれらの平均値の概念図である。 厚み方向の弾性率分布と弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分、弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の概念図である。 表面層を形成する製造方法の例(多層スライドダイコート)である。 表面層を形成する製造方法の例(多層スロットダイコート)である。 表面層を形成する製造方法の例(ウェット−オン−ウェットコート)である。
上記課題を達成するにあたり、その技術的難点は、硬度すなわち高弾性率と可撓性すなわち低弾性率の両立にある。特許文献1〜4の発明はいずれも、材料の弾性率、樹脂種、もしくは粒子量により、その硬度と可撓性のバランスを調整するものであるが、これらの方法では上記課題を達成できない。その原因は可撓性の付与に使用される材料の弾性率が高すぎることにある。
そこで本発明者らは、まず硬度の点から「鉛筆硬度試験による傷の発生」について詳細に検討した。その結果、鉛筆硬度試験において発生する傷の形態が以下の3つに分類されることを確認した。すなわち、(1)フィルムの最表面に起因する傷、(2)フィルム内において弾性率が不連続に変化する界面に起因する傷、(3)支持基材に起因する傷である。すなわち(1)は表面層の硬度不足に起因する傷であり、(2)は界面の剥離などの層間に起因する傷、(3)は基材の折れ曲がりなどに起因するへこみである。このことから、鉛筆硬度試験による傷の発生を抑制する表面層に要求される特性は、(I)表面層の最表面が高い弾性率を有し、(II)表面層内および支持基材との界面に応力ひずみがなく、(III)基材に伝搬する応力を低減すること、の3点である。
そして上記の設計指針を基に本発明者らが検討を実施したところ、後述する条件を満たす表面層が、表面の硬度を維持したまま、弾性率が支持基材の弾性率よりも低い材料を組み込むことが可能であることを見出した。すなわち、本発明者らは積層体の表面層として、前述のように優れた表面硬度を有すると同時に、応力集中によるカールの発生や、折り曲げ時のクラックや塗膜の剥がれを抑制する表面層を有する積層体を見出した。以下に図を用いて説明する。
まず、本発明の積層体は、図1に示すように支持基材1の一方の面に表面層2が積層された積層体3である。そして、表面層2は、その厚み方向に不均一な弾性率分布を有している。なお、表面層の弾性率は、後述の条件を満たせば弾性率の異なる複数の層が積層された積層体であってもよいし、同じ1つの層内で厚み方向に弾性率が異なっているような層であってもよい。
また、本発明における「積層体断面の弾性率」は原子間力顕微鏡により測定される。原子間力顕微鏡による弾性率測定は、極微小部分の探針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いを測定する。そのため、ばね定数が既知のカンチレバーを用いて、表面層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を測定する。具体的には積層体を切断し、表面層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を原子間力顕微鏡により測定する。詳細は実施例の項で記載するが、下記に示す原子間力顕微鏡を用い、カンチレバー先端の探針を、表面層の断面に接触させ、55nNの押し付け力によりフォースカーブを測定して求めたカンチレバーの撓み量を測定することができる。またこの時、厚み方向の空間分解能については原子間力顕微鏡のスキャン範囲およびスキャンライン数に依存するが、現実的な測定条件では、概ね50nm程度が下限である。詳細および測定方法については後述する。
原子間力顕微鏡:アサイラムテクノロジー社製 MFP−3DSA−J
カンチレバー:NANOSENSORS製のカンチレバー「R150−NCL−10(材質Si、ばね定数48N/m、先端の曲率半径150nm)。
以下、表面層の弾性率の好ましい形態について説明する。
[支持基材の弾性率と表面層の弾性率]
まず図2に示されるような、表面層の厚みを横軸に、前記の方法で測定した断面の弾性率を縦軸にプロットした「表面層の厚み方向の弾性率分布」において、「支持基材断面の弾性率9と比較して弾性率が高い部分と弾性率が低い部分とが存在すること」が好ましい。前述の弾性率が高い部分を有さない場合には、表面層の弾性率が不足するため、十分な硬度を得ることができない場合がある。また、反対に前述の弾性率が低い部分を有さない場合には、可撓性、特に折り曲げに対するクラックの抑制が不十分となり、課題を達成することができない場合がある。なお「表面層の厚み方向の弾性率分布」は、図2では連続する曲線として表現されているが、現実的には100nm間隔で測定されたデータ点の集合である。100nm未満の間隔での微細な弾性率の変化については、積層体の硬度、もしくは可撓性に与える影響が少ないことから、上記の測定条件で検出されない弾性率変化の影響は現実的には無視することができる。なお「表面層の厚み方向の弾性率分布」の測定方法の詳細については後述する。
[最表面側の弾性率と支持基材との界面側の弾性率]
本発明における最表面側の弾性率と界面側の弾性率は共に支持基材の弾性率よりも高いことが好ましい。ここで、「最表面」とは、表面層の最表面をいう。また、「界面」とは、表面層と支持基材との界面(すなわち、表面層と支持基材との境界線)をいう。最表面側の弾性率が支持基材の弾性率よりも低い場合には、内部に弾性率がより高い部分があっても傷が付きやすくなる場合がある。また界面側の弾性率が支持基材の弾性率よりも低い場合には、支持基材に起因する傷が生じやすくなる場合がある。特に最表面側の弾性率は表面層の中で最も高いことが好ましい。ここで「最表面側の弾性率」とは表面層における最表面の弾性率である。ただし断面における弾性率測定において、真の最表面に位置する図1の4線上の弾性率は正確な表面層の値とはならないことから、現実には最表面から100nm内側の測定点5の値を「最表面側の弾性率」とする。また、「界面側の弾性率」とは、表面層と支持基材との界面における弾性率をいう。ただし、ただし断面における弾性率測定において、真の界面に位置する図1の6線上の弾性率は正確な界面の値とはならないことから、現実には表面層と支持基材との境界線6から100nm表面層側の測定値7を「界面側の弾性率」とする。
[最大弾性率と最小弾性率]
一方、表面層の厚み方向の弾性率分布(図2)において、表面層における弾性率の最大値である「最大弾性率14」と、表面層における弾性率の最小値である「最小弾性率15」の間には好ましい関係が存在する。具体的には最大弾性率が最小弾性率の100倍以上10,000倍以下であることが好ましい。最大弾性率と最小弾性率の関係が前述の範囲にない場合、具体的には100倍よりも小さい場合には、硬度もしくは可撓性のいずれかの物性が不足し、両者の両立が難しくなる場合がある。一方、10,000倍を超える場合には、急激な弾性率変化により表面層内にひずみが生じやすくなり、鉛筆硬度の低下や膜の剥離が起こりやすくなる場合がある。
さらに最小弾性率15には好ましい数値範囲が存在する。具体的には0.1GPa以下であることが好ましく、0.05GPa以下であることがより好ましく、0.01GPa以下であることが特に好ましい。最小弾性率が0.1GPaよりも高い場合には、前述の可撓性が不足しやすくなり、クラックやカールの発生が起こりやすくなる場合がある。
ここで「最大弾性率」とは、後述する方法により測定した表面層の厚み方向の弾性率分布における弾性率の最大値をいう。また、「最小弾性率」とは、後述する方法により測定した表面層の厚み方向の弾性率分布における弾性率の最小値をいう。
[極大弾性率および極小弾性率と厚みの関係]
更に表面層内に、応力に対する変形ひずみを発生させにくくする構造として、弾性率と厚みの間には好ましい関係が存在する。具体的には、表面層の厚み方向の弾性率分布において、図3に示すように、弾性率が支持基材の弾性率9よりも高い極大値(極大弾性率16)と弾性率が支持基材の弾性率9より低い極小値(極小弾性率18)が存在することが好ましい。また、表面層の厚み方向の弾性率分布において、表面層における支持基材との界面側の弾性率と最表面側の弾性率が、共に支持基材の弾性率よりも高いことが好ましい。さらには、表面層の厚み方向の弾性率分布において、図4に示すように、弾性率が支持基材の弾性率9よりも高い極大値(極大弾性率16)と、弾性率が支持基材の弾性率9よりも低い極小値(極小弾性率18)が「交互に」存在し、かつ弾性率が支持基材の弾性率9よりも高い部分の厚み20の平均値と、弾性率が支持基材の弾性率9よりも低い部分の厚み21の平均値が以下の関係式を満たすことがより好ましい。
10≦(Tb[nm]/Ta[nm])×(Ea[MPa])/Eb[MPa])≦1,000
ここでTa[nm]は弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値であり、Tb[nm]は弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値であり、Ea[MPa]は極大弾性率の平均値17であり、Eb[MPa]は極小弾性率の平均値19である。
ここで、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値(極大弾性率16)とは、弾性率が支持基材の弾性率よりも高く、かつ図3に示すように、表面層の厚みと弾性率との関係をグラフ化した場合、極大値(傾きがゼロとなる値)をいう。また、弾性率が支持基材の弾性率より低い極小値(極小弾性率18)とは、弾性率が支持基材の弾性率よりも低く、かつ図3に示すように、表面層の厚みと弾性率との関係をグラフ化した場合、極小値(傾きがゼロとなる値)をいう。
また、表面層の厚み方向の弾性率分布において、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い極小値が交互に存在するとは、実施例の項に記載された方法にて表面層の厚み方向の弾性率分布を測定したとき、以下の(1)〜(4)の要件すべてを満たすことをいう。
(1)極大値と極小値がそれぞれ少なくとも各2個ずつ存在する。
(2)支持基材の弾性率よりも高い弾性率である極小値がない。
(3)支持基材の弾性率よりも低い弾性率である極大値がない。
(4)極大値と極小値を厚み方向に順に並べたとき、(i)極大値−極小値−極大値−極小値または(ii)極小値−極大値−極小値−極大値となる順列が少なくとも1つ存在する。
さらに、「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値」とは、表面層内に存在する弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分それぞれの厚みを平均した値をいう。さらに、「弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値」とは、表面層内に存在する弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分それぞれの厚みを平均した値をいう。
また、極大弾性率の平均値とは、表面層内に存在する支持基材の弾性率より高い弾性率を有する極大値の平均値であり、極小弾性率の平均値とは、表面層内に存在する支持基材の弾性率より低い弾性率を有する極小値の平均値である
前述のような弾性率を実現する表面層の構成としては、弾性率の高い層、すなわち硬い層と弾性率の低い層、すなわち軟らかい層が交互に積層された「多層構造」や、もしくは明確な界面が存在しない一体の層でありながら、粒子、樹脂などの構成成分の偏りにより弾性率に分布を有するような「傾斜構造」などが挙げられる。表面層の構造、およびその製造方法の詳細については[積層体の製造方法]の項に後述する。
前述の関係式は、表面層を構成する成分の弾性率と厚みの比率を基に規定した積層体の「可撓性」を表すパラメータである。このパラメータが大きくなることは、Tbすなわち「弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚み」が相対的に大きくなる、もしくはEbすなわち「極小弾性率」が相対的に小さくなることに対応しており、いずれも積層体が軟らかくになることに相当する。反対にこのパラメータが小さくなることは、積層体の硬度が増すことに相当する。
具体的には前述の関係式が10よりも小さい場合には表面層全体としての可撓性が不足しやすくなり、クラックやカールの発生が起こりやすくなる場合がある。一方で、1,000よりも大きい場合には表面層全体として硬度が不足しやすくなり、特に界面での剥離や鉛筆硬度の低下が引き起こされる場合がある。
前述の関係式を弾性率の高い成分Aと弾性率の低い成分Bに分解すると、「Ea/Ta」および「Eb/Tb」すなわち「(弾性率)/(塗膜厚み)」に分解することができる。一方、バネに働く合力を考える際に、「バネの長さ」は「バネ定数」と反比例の関係にある値であり、一般に長さが増すほどにバネ定数の値は小さくなる。ここで厚み方向への押し込みを考える際に、「塗膜の厚み」は、すなわち「バネの長さ」に相当する値であり、厚みが厚いほどそのバネ定数を低く見積もる必要がある。従って、前述の関係式は「塗膜厚みで補正したバネ定数」の好ましい数値範囲と考えることができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[積層体、および表面層]
本発明における「表面層」とは、支持基材上に形成された層をいい、前記表面層および支持基材を含む一連の層を全て統合したものを「積層体」と呼ぶ。すなわち、支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が「表面層」となる。また、例えば支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層すべてを1つの「表面層」というものとする。
ここで「層」とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。本発明の積層体は、前述の物性を示す表面層を有していれば平面状態、または成型された後の3次元形状のいずれであってもよい。前記表面層全体の厚みは特に限定はないが、1μm以上50μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましい。
前記積層体は本発明の課題としている耐擦傷性、特に反復擦過耐性と成型性の両立のほかに、防汚性、反射防止性、帯電防止性、防汚性、導電性、熱線反射性、近赤外線吸収性、電磁波遮蔽性、易接着等の他の機能を有する層を有してもよく、これらの機能が前記表面層に付与されていてもよい。
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材を構成する材料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。より好ましくは、支持基材を構成する樹脂は、成型性の点から熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6およびナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、ポリエステル樹脂、もしくはポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂であることがより好ましく、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中でも透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
また、支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
支持基材の表面には、前記表面層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
また、支持基材の表面には、本発明の表面層とは別に易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層などの機能性層をあらかじめ設けることも可能であり、特に易接着層を設けることが好ましい。
なお、本発明における支持基材の弾性率とは、後述する方法で測定した支持基材の弾性率のことをいう。ここで、弾性率分布を持たない支持基材であっても、厚み方向に弾性率分布を有する支持基材であっても後述する方法で測定した弾性率を支持基材の弾性率という。
[塗料組成物]
本発明の積層体は、支持基材上に後述する積層体の製造方法を用いて、塗料組成物を塗布、乾燥、硬化することで、前述の物性を達成可能な構造を持つ表面層を形成することができる。ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の支持基材上に塗布し、溶媒を乾燥工程で揮発、除去、硬化することにより表面層を形成可能な材料を指す。ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
本発明の表面層は、前述の「支持基材断面の弾性率と比較して弾性率が高い部分」を形成可能な塗料組成物Aと「弾性率が低い部分」を形成可能な塗料組成物Bの、少なくとも2種類の塗料組成物を用い、支持基材上に逐次塗布、もしくは同時塗布することにより形成することが好ましい。
[塗料組成物A]
塗料組成物Aとしては、高弾性率の塗布層を形成するハードコート塗材を好適に用いることができる。塗布層単層膜の弾性率としては6GPa〜200GPaの弾性率を有することが好ましい。具体的な構成成分としては、反応性部位を多数含む高架橋性のバインダー成分と、弾性率付与のための粒子成分を有することが好ましい。特に高い弾性率を有するハードコート層を形成可能な塗材としては、有機−無機ハイブリッド塗材と呼ばれる、有機材料と無機材料の複合塗材を用いることが好ましい。有機−無機ハイブリッド塗材の例としては、「大成ファインケミカル株式会社;(有機-無機ハイブリッドコート材“STR-SiA”)」や「東亞合成株式会社;(商品名“光硬化型SQシリーズ”)」や「東洋インキ株式会社;(商品名“リオデュラス”(登録商標))」などが挙げられ、これらの材料を好適に使用することが可能である。なお有機−無機ハイブリッド塗材の代表的な形態としては、高弾性率の無機粒子と有機化合物から成る高架橋性のバインダーを含むことが好ましい。好ましい粒子成分およびバインダー成分については後述する。
[塗料組成物B]
塗料組成物Bとしては柔軟性や成形性に富む樹脂塗材を好適に用いることができる。塗布層単膜の弾性率としては1MPa〜100MPaの弾性率を有することが好ましい。具体的には、擦傷修復性塗材や、成形性HC(Hard Coating:ハードコート)塗材もしくは粘着剤として市販されているものを好適に使用することができる。またその一部に粒子材料を含んでもよい。
擦傷修復性の塗材や成形性HC塗材の例としては「中国塗料株式会社;(商品名“フォルシード”シリーズ)」や「アイカ工業株式会社;(商品名“アイカアイトロン”シリーズ)」などが挙げられる。また粘着剤の例としてはアクリル系粘着剤としては「東亞合成株式会社;“アロンタック”シリーズ」、「綜研化学株式会社;“SKダイン”(登録商標)シリーズ」などが、シリコーン粘着剤としては「東レダウコーニング株式会社」、「信越シリコーン株式会社」の粘着剤がそれぞれ挙げられる。なお好ましい塗料成分については後述する。
[粒子材料、粒子成分]
本発明の積層体が有する表面層は粒子成分を含むことが好ましく、特に本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物Aは粒子を含むことが好ましい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐久性の観点から無機粒子が好ましい。
無機粒子の種類数としては、1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZnおよびOのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
また、本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物中に含まれる粒子は、塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理において、熱や電離放射線などによりその表面状態を変化させた形で、前記表面層に含まれる。ここで、本発明にて用いられる塗料組成物中に存在する粒子を「粒子材料」、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記表面層に存在する粒子を「粒子成分」という。
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO)である。
本発明の表面層を形成する塗料組成物の粒子成分としては、シリカがバインダー原料の良溶媒中で安定して分散するのに必要な表面修飾がなされていることが特に好ましい。例えば、バインダー原料としてアクリル系モノマー、オリゴマーを使用する場合には、表面修飾としては炭素数1〜5以内のアルキル基、アルケニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基などが必要最低限、粒子成分の表面に導入されていることが好ましい。
ここで無機粒子の数平均粒子径は、JIS Z8819−2(2001年)に記載の個数基準算術平均長さ径を意味する。粒子成分、粒子材料のいずれにおいても走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等を用いて一次粒子を観察し、各一次粒子の外接円の直径を粒子径とし、その個数基準平均値から求めた値を指す。積層体の場合には、表面、または断面を観察することにより数平均粒子径を求めることが可能であり、また、塗料組成物の場合には、溶媒で希釈した塗料組成物を滴下、乾燥することによりサンプルを調製して観察することが可能である。
[異方形状を有する無機粒子]
更に本発明の積層体が有する表面層は異方形状を有する無機粒子を含むことが特に好ましい。また本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物は異方形状を有する無機粒子を含むことが好ましく、特に塗料組成物Bに異方形状を有する無機粒子を含むことが好ましい。ここで異方形状を有する無機粒子とは、その形状が真球状ではなく偏りを持った粒子であることを意味し、具体的には、針状や板状もしくは球状粒子が連鎖状に結合した数珠状の粒子を意味する。前記表面層に含まれる無機粒子が前述のような異方形状を有することで、積層体全体の可撓性を維持したまま表面層の硬度を付与することが出来る。可撓性と硬度の両立の原因は明らかではないが、異方形状を有する無機粒子を添加することで、押し込み方向への応力が維持されたまま、せん断方向への応力のみが増加することが確認されており、積層膜のずりによる破壊を抑制できるものと推定している。
前記異方形状を有する無機粒子には好ましい形状が存在する。具体的には無機粒子の長直径Rlと短直径Rsの比率であるRl/Rsが1.2以上、20,000以下であることが好ましく、1.5以上、10,000以下であることがより好ましい。Rl/Rsが1.2よりも小さい場合には、前述の押し込み応力とせん断応力の差異が生じにくくなり、表面層の可撓性が低下する場合がある。一方、Rl/Rsが高くても積層体の性能を直ちに低下させることはないが、Rl/Rsが20,000を超える場合には、塗材にチキソ性が生じるため均一な塗工を行うことが困難となる場合がある。
一方、短直径Rsは1nm以上100nm以下であることが好ましく、3nm以上50nm以下であることが特に好ましい。Rsが1nmに満たない場合には、積層体に占める無機粒子の体積比が小さくなり、十分な硬度向上効果が得られない場合がある。一方、Rsが100nmを上回る場合には、前述の押し込み応力への寄与が大きくなり、表面層の可撓性が低下する場合がある。長直径Rlと短直径Rsの測定方法については後述する。
また前述の押し込み応力とせん断応力の差異については、後述するバインダー成分が柔軟性バインダーである時に特に顕著に見られることから、前記異方形状を有する無機粒子は前記積層体の弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分に多く存在することが特に好ましい。具体的には後述する異方形状を有する無機粒子の存在頻度が(式4)を満たすこと、すなわち前記積層体の弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分よりも前記積層体の弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分に多いことが好ましい。前記積層体の弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の異方形状を有する無機粒子の存在頻度が大きい場合には、前述の積層膜のずりによる破壊を抑制する効果が十分に得られなくなる、もしくは塗膜の屈曲性が低下するため、積層体の可撓性と硬度の両立が困難となる場合がある。
異方形状を有する無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくは酸化アルミニウム(Al)もしくはその前駆体となる酸化アルミニウム水和物(AlOOH)である。
[バインダー材料、バインダー成分]
本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物はバインダー原料を含有することが好ましい。ここでバインダーとは反応性部位を有する化合物、もしくはその反応により形成された高次化合物を指す。ここで本発明にて用いられる塗料組成物中に存在するバインダーを「バインダー材料」、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記表面層に存在するバインダーを「バインダー成分」という。また反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位を指す。このような反応性部位のうち好ましいものとして、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。なお本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物Aは後述する「高架橋性バインダー」を、塗料組成物Bは後述する「柔軟性バインダー」を少なくとも含有することが好ましく、これらのバインダーを同時に含有してもよい。
[高架橋性バインダー]
高架橋性バインダーは主に塗料組成物Aのバインダー成分として好適に使用できるほか、密着性や造膜性向上の観点から塗料組成物B中に含まれる場合もある。1分子中に2以上、20以下の反応性部位を有する材料が好ましい。また熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂のいずれでもよく、2種類以上のブレンドであってもよい。
高架橋性バインダーに好適な熱硬化型樹脂は、水酸基を含有する樹脂とポリイソシアネート化合物からなり、水酸基を含有する樹脂としてアクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ウレタンポリオール等が挙げられ、これらは1種類、もしくは2種類以上のブレンドであってもよい。水酸基を含有する樹脂の水酸基価は1〜200mgKOH/gの範囲であれば、塗膜とした時の耐久性、耐加水分解性、密着性の観点から好ましい。水酸基価が1より小さい場合は塗膜の硬化がほとんど進まず、耐久性や強度が低下する場合がある。一方、水酸基が200より大きい場合は、硬化収縮が大きすぎるために、密着性を低下させる場合がある。
本発明における水酸基を含有するアクリルポリオールとは、例えば、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを成分として重合して得られる。この様なアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを成分として、必要に応じて(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル酸基含有モノマーを共重合することで容易に製造することができる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。この様な水酸基を含有するアクリルポリオールとしては、例えば、DIC株式会社;(商品名“アクリディック”(登録商標)シリーズなど)、大成ファインケミカル株式会社;(商品名“アクリット”(登録商標)シリーズなど)、株式会社日本触媒;(商品名“アクリセット”(登録商標)シリーズなど)、三井化学株式会社;(商品名“タケラック”(登録商標)UAシリーズ)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における水酸基を含有するポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコールと、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、スベリン酸、アゼライン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸との必須原料成分として反応させた脂肪族ポリエステルポリオールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコールと、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族二塩基酸とを必須原料成分として反応させた芳香族ポリエステルポリオールが挙げられる。
このような水酸基を含有するポリエステルポリオールとしては、DIC株式会社;(商品名“ポリライト”(登録商標)シリーズなど)、株式会社クラレ;(商品名“クラレポリオール”(登録商標)シリーズなど)、武田薬品工業株式会社;(商品名“タケラック”(登録商標)Uシリーズ)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における水酸基を含有するポリオレフィン系ポリオールとしては、ブタジエンやイソプレンなどの炭素数4から12個のジオレフィン類の重合体および共重合体、炭素数4から12のジオレフィンと炭素数2から22のα−オレフィン類の共重合体のうち、水酸基を含有している化合物である。水酸基を含有させる方法としては、特に制限されないが、例えば、ジエンモノマーを過酸化水素と反応させる方法がある。さらに、残存する二重結合を水素添加することで、飽和脂肪族化してもよい。このような水酸基を含有するポリオレフィン系ポリオールとしては、日本曹達株式会社;(商品名“NISSO−PB”(登録商標)Gシリーズなど)、出光興産株式会社;(商品名“Poly bd”(登録商標)シリーズ、“エポール”(登録商標)シリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における水酸基を含有するポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸ジアルキルと1,6−ヘキサンジオールのみを用いて得たポリカーボネートポリオールを用いることができる。より結晶性が低い点で、ジオールとして、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールとを共重合させて得られるポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
このような水酸基を含有するポリカーボネートポリオールとしては、共重合ポリカーボネートポリオールである旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“T5650J”、“T5652”、“T4671”、“T4672”など)、宇部興産株式会社;(商品名“ETERNACLL”(登録商標)UMシリーズなど)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
本発明における水酸基を含有するウレタンポリオールとは、例えば、ポリイソシアネート化合物と1分子中に少なくとも2個の水酸基を含有する化合物とを、水酸基がイソシアネート基に対して過剰となるような比率で反応させて得られる。その際に使用されるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。また、1分子中に少なくとも2個の水酸基を含有する化合物としては、多価アルコール類、ポリエステルジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカーボネートジオール等が挙げられる。
本発明における熱硬化型樹脂に用いられるポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を含有する樹脂や、イソシアネート基を含有するモノマーやオリゴマーを指す。イソシアネート基を含有する化合物は、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンイソシアネートのビューレット体などの(ポリ)イソシアネート、および上記イソシアネートのブロック体などを挙げることができる。この様な熱硬化型樹脂に用いられるポリイソシアネート化合物としては、三井化学株式会社;(商品名“タケネート”(登録商標)シリーズなど)、日本ポリウレタン工業株式会社;(商品名“コロネート”(登録商標)シリーズなど)、旭化成ケミカルズ株式会社;(商品名“デュラネート”(登録商標)シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“バーノック”(登録商標)シリーズなど)が挙げられる。
一方、高架橋性バインダーにおける好適な紫外線硬化型樹脂としては、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマーが挙げられる。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、日本合成化学工業株式会社;(商品名“SHIKOH”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
[柔軟性バインダー]
柔軟性バインダーは主に塗料組成物Bのバインダー成分として好適に使用することができる。1分子中に4以下の反応性部位を有する材料が好ましく、アクリルポリマーのように、活性な反応性部位が失活した形態であってもよい。柔軟性バインダーの好ましい材料を以下に例示する。
塗料組成物Bの好ましい形態として「擦傷修復性の樹脂層を形成する塗料組成物」、破断伸度5〜50%程度を有する「成形性HC塗材」および「粘着剤」が挙げられる。
擦傷修復性の樹脂層を形成する塗料組成物としては、溶質に(1)ポリカプロラクトンセグメント、ポリカーボネートセグメントおよびポリアルキレングリコールセグメントからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むセグメント、(2)ウレタン結合のセグメントを含む樹脂もしくは前駆体を含むことが特に好ましい。これら各セグメントについては、TOF−SIMS、FT−IR等により確認することできる。
一方、粘着剤としては、最も汎用なゴムと粘着付与剤による「ゴム系粘着剤」、アクリルポリマーの共重合体で様々な機能付与が可能である「アクリル系粘着剤」、優れた温度特性、耐薬品性を有する反面、高コストな「シリコーン系粘着剤」のいずれも好適に使用することが可能であるが、高弾性率層との相溶性およびコストの観点から、「アクリル系粘着剤」を用いることが特に好ましい。
[溶媒]
前記塗料組成物A、塗料組成物Bは溶媒を含むことが好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にて、ほぼ全量を蒸発させ、塗膜から除去することが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[他の添加剤]
前記塗料組成物Aと塗料組成物Bは、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、表面層の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン系化合物の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2−フェニル−2−オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
なお、熱重合開始剤や光重合開始剤による重合反応の進行状態は、加える熱量もしくは光量で制御可能であり、逐次塗布により表面層を形成する場合には、重合の進行を不完全な状態で次の層を塗布することにより、明確な界面を形成せずに、中間的な物性を有する混在層を作ることが可能である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、表面層を形成するために用いる塗料組成物A、塗料組成物Bにレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、表面層はレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、少なくとも前述の塗料組成物Aと塗料組成物Bを、逐次または同時に前述の支持基材上に塗布−乾燥−硬化することにより形成する製造方法を用いることがより好ましい。
ここで「逐次に塗布する」もしくは「逐次塗布」とは、1種類の塗料組成物を塗布−乾燥−硬化後、次いで種類の異なる塗料組成物を、塗布−乾燥−硬化することにより表面層を形成することを意図している。「逐次塗布」において形成される表面層は、用いる塗料組成物の種類、数を適宜選択することにより、表面側−基材側の弾性率の大小や勾配、基材と表面層の弾性率の大小を制御することができる。「逐次塗布」により形成される表面層は、通常、複数の界面を有する「多層構造」となるが、塗料組成物の種類、組成、乾燥条件、硬化条件を適宜選択することにより、塗布層間の材料種の分離・拡散を制御し、疑似的な傾斜構造を形成することも可能である。前述のような層構造により、表面層内の弾性率分布を段階的、もしくは連続的に変化させることができる。
もう1つの製造方法としては、2種類以上の塗料組成物を支持基材上に「同時に」塗布、乾燥、硬化することにより形成する方法である。塗料組成物の種類の数は2種類以上であれば特に制約はない。ここで「同時塗布する」もしくは「同時塗布」とは塗布工程において支持基材上に、2種類以上の液膜を塗布後、乾燥、硬化することを意図している。「同時塗布」において形成される表面層は、明確な界面を有さない「傾斜構造」を形成する。
本製造方法において、塗布方法は、前述の塗料組成物を逐次に塗布する場合には、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい
また、前述の2種類以上の塗料組成物を同時塗布する場合には、塗布前の状態で液膜を順に積層後塗布する「多層スライドダイコート」(図5)や、基材上に塗布と同時に積層する「多層スロットダイコート」(図6)、支持基材上に1層の液膜を形成後、未乾燥の状態でもう1層を積層させる「ウェット−オンーウェットコート」(図7)等のいずれでもよい。
次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、塗料組成物Aおよび塗料組成物Bを用い、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、80℃以上200℃以下がより好ましく、前述の中間的な物性を有する混在層を形成するためには80℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。
また、活性エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、最表面については酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となる場合がある。一方、表面層の内部を形成する層においては、反対に酸素阻害を促すことで、次の塗工層が浸透しやすくなり、前述の中間的な物性を有する混在層を形成しやすくなるため好ましい。
また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm、好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm、好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[用途例]
本発明の積層体は、優れた表面硬度と可撓性を両立するため曲面を有する部材、例えば電化製品や自動車の内装部材、建築部材等に幅広く用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成型品、スマートフォンの筐体、タッチパネル、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーなどの車両内装品、および種々の印刷物のそれぞれの表面などに好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
<塗料組成物Aの調合>
[塗料組成物A1]
下記材料を混合し、酢酸エチルを用いて希釈し、塗料組成物A1を得た。
・有機−無機ハイブリッドHC塗材 80.0質量部
(“アイカアイトロン” Z−729−18 アイカ工業株式会社)
・酢酸エチル 20.0質量部。
[塗料組成物A2]
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 18.8質量部
・粒子添加剤C1(シリカ粒子分散物) 44.4質量部
(“MEK−AC−2140Z” 日産化学工業株式会社)
・酢酸エチル 35.6質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.2質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物A3]
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 38.8質量部
・酢酸エチル 60.0質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.2質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物A4]
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 36.8質量部
(“アイカアイトロン” Z−729−18 アイカ工業株式会社)
・粒子添加剤C3 2.0質量部
・酢酸エチル 60.0質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.2質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
<塗料組成物Bの調合>
<ウレタンアクリレートの合成>
[ウレタンアクリレート1のトルエン溶液]
トルエン50質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井化学株式会社製 タケネートD−170N)50質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製 プラクセルFA5)76質量部、ジブチル錫ラウレート0.02質量部、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン79質量部を加えて固形分濃度50質量%のウレタンアクリレート1のトルエン溶液を得た。
[ウレタンアクリレート2のトルエン溶液]
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(三井化学株式会社製 タケネートD−170N、イソシアネート基含有量:20.9質量%)50質量部、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油株式会社製 ブレンマーAE−150(水酸基価:264(mgKOH/g))53質量部、ジブチルスズラウレート0.02質量部及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を仕込んだ。そして、70℃で5時間保持して反応を行った。反応終了後、反応液にメチルエチルケトン(以下、MEKという)102質量部を加え、固形分濃度50質量%のウレタンアクリレート2のトルエン溶液を得た。
[塗料組成物B1]
下記材料を混合し、酢酸エチルを用いて希釈し、塗料組成物B1を得た。
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.9質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.9質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B2]
下記材料を混合し、酢酸エチルを用いて希釈し、塗料組成物B2を得た。
・自己修復性塗料 7.1質量部
(“フォルシード” NO.521C 中国塗料株式会社)
・酢酸エチル 92.86質量部。
[塗料組成物B3]
下記材料を混合し、酢酸エチルを用いて希釈し、塗料組成物B3を得た。
・アクリル系粘着剤 16.7質量部
(“SKダイン”1439U 綜研化学株式会社)
・酢酸エチル 83.26質量部
・硬化剤 0.08質量部
(硬化剤E−50C 綜研化学株式会社)。
[塗料組成物B4]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C2 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B5]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C3 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B6]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C4 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B7]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C5 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B8]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C6 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B9]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C7 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
[塗料組成物B10]
・ウレタンアクリレート1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・ウレタンアクリレート2の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 4.85質量部
・粒子添加剤C8 0.1質量部
・酢酸エチル 90.05質量部
・光ラジカル重合開始剤 0.15質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
<粒子添加剤C>
粒子添加剤Cとしてそれぞれ下記の粒子分散物を使用した。なお各粒子成分の形状の詳細については表1に記載する。
粒子添加剤C1:シリカ粒子分散物(“MEK−AC−2140Z” 日産化学工業株式会社)
粒子添加剤C2:ベーマイト分散物(柱状ベーマイトゾル 川研ファインケミカル株式会社製)
粒子添加剤C3:ベーマイト分散物(柱状ベーマイトゾル 川研ファインケミカル株式会社製)
粒子添加剤C4:層状珪酸塩(“ルーセンタイトSPN”コープケミカル)1wt%IPA分散液
粒子添加剤C5:連鎖状シリカ粒子分散物(“MEK−ST−UP”日産化学工業株式会社)
粒子添加剤C6:ベーマイト分散物(繊維状ベーマイトゾル 川研ファインケミカル株式会社製)
粒子添加剤C7:シリカ粒子分散物(“MEK−ST−L” 日産化学工業株式会社)
粒子添加剤C8:シリカ粒子分散物(“MEK−ST−2040” 日産化学工業株式会社)
<積層体の製造方法>
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている厚み50μmの“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製)を用いた。支持基材上に塗料組成物AおよびBをワイヤーバーを用い、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるように番手を調整して塗布し、次いで下記の条件で乾燥工程、硬化工程を行った。これらの一連の塗布、乾燥、硬化を順次繰り返すことにより、支持基材上に表面層を形成した。
なお各実施例・比較例に対応する上記積層体の作成方法、使用する塗料組成物、各層の理論膜厚を表1に記載した。
「UV硬化1の乾燥工程」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
「UV硬化1硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下。
「UV硬化2の乾燥工程」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
「UV硬化2の硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 大気雰囲気。
「熱硬化1の乾燥・硬化工程」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
以上の方法により実施例1〜19、比較例1〜6の積層体を作成した。
<積層体の評価>
作成した積層体について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2〜4に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルにつき場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[原子間力顕微鏡による弾性率の測定]
実施例1〜19、比較例1〜6の積層体を電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し硬化させた後、凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面を測定面として専用のサンプル固定台に固定した。アサイラムテクノロジー製のAFM「MFP−3DSA−J」とNANOSENSORS製のカンチレバー「R150−NCL−10(材質Si、ばね定数48N/m、先端の曲率半径150nm)」を用い、表面層および支持基材の断面に対して、Contactモードでフォースカーブ (カンチレバーの移動速度2μm/s、最大押し込み荷重2μN)を測定した。
フォースカーブから得られたForce−Ind曲線からAFM装置付属のソフト「IgorPro 6.22A MFP3D101010+1313」に付属のHertzの理論に基づいた解析を行わせることで厚み方向の弾性率分布を求めた。なお、Tip Geometry=Sphere、Radius=150nm、Select=Fused Silica、νTip=0.17、ETip=74.9GPa、νSample=0.33、ForceタブのLow=10%、ForceタブのHigh=90%で計算した。
[断面厚み方向の弾性率分布の測定]
前述の方法で用意した積層体断面に対して、Tappingモード、分解能512×512pixelsにて表面像の測定を実施した。次いで、得られた表面像から表面層の厚みが視野角内に収まるように倍率を調整した。この時、表面層−支持基材界面は、表面層と支持基材の境界部分の弾性率の不整合から輝線または暗線として観察され、この輝線または暗線の中央を表面層の厚み方向の測定基準線とした。また最表面についても同様に、表面層と包埋樹脂との弾性率不整合により生じる輝線または暗線の中央を表面層の厚み方向の測定基準線とした。以下の測定においては、「最表面からの距離」という場合は、前述の最表面における輝線または暗線の中央をからの距離をいい、「最表面までの距離」という場合は、前述の最表面における輝線または暗線の中央までの距離をいう。同様に、「表面層−支持基材界面からの距離」という場合は、前述の界面における輝線または暗線の中央をからの距離をいい、「表面層−支持基材界面までの距離」という場合は、前述の界面における輝線または暗線の中央までの距離をいう。
前述の表面層−支持基材界面と最表面の距離を表面層の総厚みとした。次いで分解能512×512の格子点状の測定点から、表面層を縦断する直線上のデータ群を選択した。更に、前述のデータ群が属する表面層を縦断する直線と積層体の法線のなす角から、各データ点の表面層−支持基材界面からの厚み方向の距離を算出し、厚み方向の距離が概ね100nm間隔となるように前述の方法で弾性率の測定を実施することで、厚み方向の弾性率分布を得た。この時、表面層−支持基材界面からの厚み方向の距離が100nm未満になる点(図1の符号10)、および最表面からの距離が100nm未満になる点(図1の符号11)は、界面および表面の影響を受けやすいため測定から除外した。なお上記の方法で測定を実施した場合、現実的に設定可能な各測定点間の距離の下限は、表面層の厚みと分解能から決定される。具体的には表面層の厚みの概ね500分の1程度であり、例えば表面層の厚みが50μmであれば、その空間分解能は概ね100nm程度となる。装置の設定上は更に分解能を高めることも可能であるが、カンチレバーの曲率や測定点の数などから前述の100nm程度が現実的に測定可能な数値となる。
次いで、最表面側および界面側の弾性率として、表面層において最表面から100nm内側の位置(図1の符号5)および界面から100nm内側の位置(図1の符号7)に存在する点から無作為に選定し、それぞれ5箇所での測定結果の平均値を最表面側および界面側の弾性率とした。
[支持基材の弾性率の測定]
支持基材についても同様に断面の弾性率を測定した。測定位置については支持基材において、支持基材と表面層との界面から支持基材側に100nmの距離の点(例えば、図1の符号8)から支持基材の厚み方向(表面層が存在する方向とは逆の方向)に100nm間隔で弾性率を測定した。支持基材と表面層との界面から、表面層と同一の厚みに相当する距離まで測定を行い(例えば、表面層の厚みが3μmであれば、支持基材と表面層との界面から3μmの距離まで100nm間隔で弾性率測定を行う)、その平均値を支持基材の弾性率とした。
[厚み方向の弾性率分布からのパラメータの算出]
前述の方法で得られた厚み方向のパラメータを基に最大弾性率、最小弾性率、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値(Ta)、弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値(Tb)、極大弾性率の平均値(Ea)および極小弾性率の平均値(Eb)の算出をそれぞれ以下の方法で実施した。
まず得られた弾性率のうち、その厚み方向の測定位置が表面層内に属する測定点のうち、弾性率が最大の値を最大弾性率、弾性率が最小の値を最小弾性率とした。次いで、表面層内に属する測定点から弾性率が極大となる点を抽出し、更にこれらの極大値から支持基材の弾性率よりも大きい値のものを全て抽出し、その平均値としてEaを得た。Ebについても、極大値の代わりに極小値を抽出し、支持基材の弾性率よりも小さい値を使用すること以外は同様にして算出した。
次いで、厚み方向の弾性率分布と支持基材の弾性率により、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分を算出した。その概念は図3に示しているが、具体的には「支持基材の弾性率」の数値と「厚み方向の弾性率分布」の交点の座標を下記の方法で算出した。前述の通り「厚み方向の弾性率分布」は100nm間隔の離散的なデータ点の集合であることから、「一方の弾性率が支持基材の弾性率よりも低く、かつ他方の弾性率が支持基材の弾性率よりも高い」条件を満たす隣接する2点を抽出し、前記条件を満たす2点を結ぶ直線と支持基材の弾性率を示す直線との交点の座標(以下、交点の座標という)を算出した。そして、算出した各交点の座標から交点間の厚み方向の距離を算出し、「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み」および「弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚み」とした。なお、支持基材との界面側の厚みは、表面層−支持基材界面(図4の符号13)から最も距離が短い交点の座標(図4の符号22)までの距離を「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み」とした。また、最表面側の厚みは、最表面(図4の符号12)から最も距離が短い交点(図4の符号23)までの距離を「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み」とした。さらに算出した弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みおよび弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの値をそれぞれ平均して、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値(Ta)および弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値(Tb)を算出した。
[異方形状を有する無機粒子の形状測定]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、表面層断面に含まれる無機粒子の形状を測定した。無機粒子の形状は、以下の方法に従い測定した。まず積層体の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した。続いて画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整、さらに無機粒子の境界が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いでソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、前述の境界を境に画素の2値化を行い、Analize Particles(粒子解析)機能により個々の無機粒子のなす領域を抽出し、そこから該当領域の面積をFit Ellipseにて楕円形近似したときのMajorの値を長直径、Minorの値を短直径として求めた。前述の解析を個々の無機粒子計50個に対して実施し、長直径の最大値を長直径Rl、短直径の最小値を短直径Rsとした。
[異方形状を有する無機粒子の存在頻度測定]
続いて同様の透過型電子顕微鏡(TEM)の断面観察から、無機粒子の存在頻度の算出を実施した。まず積層体の断面の超薄切片をTEMにより5万倍の倍率で撮影した。次いで画像処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて、画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整した。さらに無機粒子の境界が明確に見分けられるようにコントラストを調節し、表面層−支持基材界面(図4の符号13)が水平となるように回転・トリミング加工を施した。次いで前述の[厚み方向の弾性率分布からのパラメータの算出]の項の方法にて得られた、「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み」および「弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚み」の値に沿って、画像を界面に平行な方向に短冊状に細分化した。次にソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、前述の境界を境に画素の2値化を行い、Analize Particles(粒子解析)機能により個々の無機粒子のなす領域を抽出し、そこから該当領域の面積を算出した。同様にして、切り出した短冊状の画像の成す面積を算出し、短冊中に占める無機粒子の面積比を、無機粒子の存在頻度として算出した。以上のようにして算出した存在頻度のうち、「弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み」の成す短冊から求められる値の平均値を弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の存在頻度Faとし、「弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚み」の成す短冊から求められる値の平均値を弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の存在頻度Fbとした。
[表面層の鉛筆硬度試験法による表面硬度測定]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、同環境にてJIS K 5600−5−4(1999年)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に従い、表面層の表面硬度を測定した。
[表面層の耐擦傷性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、表面層を有する面に対して、1,000g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、5cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し、下記のクラス分けを行った。
5点:0本
4点:1本以上 5本未満
3点:5本以上 10本未満
2点:10本以上 20本未満
1点:20本以上。
[積層体の屈曲性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、同環境にてJIS K 5600−5−1(1999年)に記載の耐屈曲性(円筒形マンドレル法)のタイプ1により評価を実施した。マンドレルとして直径2、3、4、5mmのものを使用し、目視による判定でクラックおよび塗膜の剥がれが観測されない最小直径により下記のようにクラス分けを行った。なお同様の評価を、表面層を有する面が外側になるように折る(山折り)条件と表面層を有する面が内側になるように折る(谷折り)条件にてそれぞれ実施した。
5点:2mmφ クラック、剥がれなし
4点:2mmφ クラック、剥がれあり、3mmφ クラック、剥がれなし
3点:3mmφ クラック、剥がれあり、4mmφ クラック、剥がれなし
2点:4mmφ クラック、剥がれあり、5mmφ クラック、剥がれなし
1点:5mmφ クラック、剥がれあり。
[積層体のカール性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、10cm四方の正方形状に切り出し、水平面上に静置した。次いで積層体の4隅点と水平面の距離を計測し、その数値の平均により5段階に分類した。
5点:1mm未満
4点:1mm以上、10mm未満
3点:10mm以上、20mm未満
2点:20mm以上
1点:筒状となり計測不可。
[表面層の密着性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、表面層を有する面に対して1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製“セロテープ”(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、導電層の残存した個数により5段階評価(5:96個〜100個、4:81個〜95個、3:71個〜80個、2:61個〜70個、1:0個〜60個)した。
Figure 0006662287
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Figure 0006662287
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本発明に係る積層体は、プラスチック成型品、家電製品、建築物や車両内装品および種々の印刷物のそれぞれの表面に同様の機能を付与するためにも用いることができる。
1 支持基材
2 表面層
3 積層体
4 表面層の最表面
5 最表面側の弾性率の測定点
6 表面層と支持基材の界面
7 界面側の弾性率の測定点
8 支持基材の弾性率測定開始点
9 支持基材の弾性率
10 支持基材の影響から測定を行わない領域
11 表面の影響から測定を行わない領域
12 表面層の最表面の位置
13 表面層−支持基材界面の位置
14 最大弾性率
15 最小弾性率
16 極大弾性率
17 極大弾性率の平均値
18 極小弾性率
19 極小弾性率の平均値
20 厚み方向の弾性率分布と弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚み
21 厚み方向の弾性率分布と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚み
22 支持基材と表面層の弾性率が等しくなる点の中で、表面層と支持基材の界面に最も近い点
23 支持基材と表面層の弾性率が等しくなる点の中で、最表面に最も近い点
24 多層スライドダイ
25 多層スロットダイ
26 単層スロットダイ

Claims (6)

  1. 支持基材上に表面層が積層された積層体であって、前記表面層は弾性率の高い層と弾性率の低い層が交互に積層された多層構造を有し、かつ、前記表面層の厚み方向の弾性率分布において、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い極小値が存在し、前記表面層における支持基材との界面側の弾性率と最表面側の弾性率が、共に支持基材の弾性率よりも高いことを特徴とする積層体。
  2. 前記表面層の厚み方向の弾性率分布における最大弾性率が、最小弾性率の100倍以上10,000倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 前記表面層の厚み方向の弾性率分布における最小弾性率が0.1GPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記表面層の厚み方向の弾性率分布において、弾性率が支持基材の弾性率よりも高い極大値と弾性率が支持基材の弾性率よりも低い極小値が交互に存在し、弾性率分布から算出される厚みおよび弾性率が、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
    10≦(Tb[nm]/Ta[nm])×(Ea[MPa])/Eb[MPa])≦1,000・・・(式1)
    Ta[nm]:弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の厚みの平均値
    Tb[nm]:弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の厚みの平均値
    Ea[MPa]:極大弾性率の平均値
    Eb[MPa]:極小弾性率の平均値
  5. 前記表面層が以下を満たす異方形状を有する無機粒子を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
    1.2≦Rl/Rs≦20,000・・・(式2)
    1nm≦Rs≦100nm・・・(式3)
    Rl[nm]:無機粒子の長直径
    Rs[nm]:無機粒子の短直径
  6. 前記表面層の支持基材に垂直な断面における、前記異方形状を有する無機粒子の、厚み方向の存在頻度Fが以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
    Fa<Fb・・・(式4)
    Fa:弾性率が支持基材の弾性率よりも高い部分の存在頻度
    Fb:弾性率が支持基材の弾性率よりも低い部分の存在頻度
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