JP6950330B2 - 積層体、および樹脂フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、耐傷性や様々な機能を他の物品に付与可能な積層体、および樹脂フィルムに関する。
一般的にプラスチックスや金属の表面は、ガラスに比べると傷が付きやすい。そのため、製品として使用される際に、表面の光沢感や透明性を維持することが求められるプラスチックスや金属の成形体においては、表面に耐傷性を付与する層(以下、ハードコート層とする)を設けることがある。さらに、ハードコート層は耐傷性以外の機能、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を成形体付与するために用いられることもある。
このハードコート層は、一般には成形体を構成するプラスチックスや金属の表面に直接塗布、硬化させることで形成したり、あらかじめハードコート層を形成したプラスチックフィルムを貼り付けたり、成形体を構成するプラスチックスや金属と一体化に成形したりすることにより設けられる。また、成形体を構成する材料の耐熱性や加工温度、耐溶剤性から直接塗布が不可能な場合や、耐傷性以外の機能、たとえば光学機能層や、意匠層などと合わせて形成する点から、成形体を構成するとは別の基材フィルム上にハードコート層を形成し、それを成形体表面に転写する方法もある。
また、前述のような成形体の他に、たとえば電子機器やディスプレイなどの用途にて、工程材料の削減、製品の薄膜化、製品形態の自由度向上のため、耐傷性に加え、光学特性、電気特性などのさまざまな機能を有したハードコートフィルムを用いる代わりに、機能を有したハードコート層を転写する工法も検討されている。
このように、基材フィルム上にハードコート層を含む機能層を作成し、基材フィルムから転写する工法としては、特許文献1には「剥離性基材シートの一方の表面に、硬質の電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層と軟質の電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層とをこの記載の順序に積層したことを特徴とするハードコート転写箔。」が提案されている。
また、特許文献2には、ハードコート層などを含む転写物を剥離したときにその転写物にクラック(ひび割れ)現象が発生しない、といった離型特性を有する転写用離型ポリエステルフィルムとして、「二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に(1)軟化点60℃以上105℃以下である変性ワックス、(2)バインダー樹脂成分および(3)架橋成分を含有する離型層を有してなる離型ポリエステルフィルムであり、該離型層に対するハードコート層の剥離力が4.0mN/mm以上20mN/mm以下であることを特徴とする転写用離型ポリエステルフィルム。」が提案されている
特開平3−130199号公報 特開2014−162045号公報
このような機能層を含むハードコート層の転写における本質的な課題は、耐傷性や耐候性などのハードコート層の機能を損ないにくく面内均一に転写することにある。この課題に対し、特許文献1の技術は、確かに転写により成形体に耐擦傷性を付与することができるが、本発明者らが確認したところ、転写前後でハードコート層に求められる他の機能、耐溶媒性や耐移染性などの機能が大幅に低下することがわかった。この原因は、転写時のハードコート層の変形により、目視では不可能だが、電子顕微鏡にて観察できるレベルの微細なクラックが生じるためであった。
また、特許文献2の技術は、確かに剥離時のハードコート層への微細なひび割れ抑制に有効であったが、不完全硬化状態であり必要な耐摩耗性が得られない。また、必要な耐摩耗性を得るには、転写後に再度被着体を含めて加熱して硬化する必要があり、煩雑な作業を必要とする上、被着体の耐熱性を必要とする。さらに本発明者らが確認したところ、剥離前に完全硬化させてから転写すると、特許文献1同様に微細なクラックが生じ、これにより耐溶媒性やバリア性などの機能が大幅に低下することもわかった。以上の点から、従来技術では、機能層を含むハードコート層の転写における本質的な課題の解決は困難な状況にある。
そこで、前述の課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層体であって、以下の条件1および条件2を満たすことを特徴とする、積層体。
条件1:樹脂層の微少硬度計による表面の押し込み弾性率が1GPa以上
条件2:樹脂層と支持基材との180°剥離力をF(N/m)、剥離後の樹脂層のヤング率をE(Pa)、破断伸度をL(−)、樹脂層厚みをT(m)とした場合に、下記式1〜3すべてを満足する
式1 E・L・T/F≧15
式2 5×10−7≦T≦1.8×10−5
式3 F≧1
2.前記樹脂層の支持基材に垂直な断面における厚み方向の弾性率分布において、以下の条件3を満たすことを特徴とする1.に記載の積層体。
条件3:厚み方向の弾性率分布において、弾性率0.5GPaを下回る領域の合計厚みが、樹脂層の総厚みの20%以上80%以下
3.前記支持基材表面の、樹脂層が接していた面(面B)について、原子間力顕微鏡により測定された、3μm角の範囲の弾性率分布の標準偏差が、30MPa以上であることを特徴とする1.または2.に記載の積層体。
4.1.〜3.のいずれかに記載の積層体から、支持基材を剥離してなる樹脂フィルム。
本発明によれば、耐傷性や耐候性などのハードコート層の機能を積層体から損ないにくく、面内均一に転写することができる。
樹脂層の厚み方向弾性率分布の例を示すグラフである。 樹脂層の厚み方向弾性率分布の例を示すグラフである。 樹脂層の厚み方向弾性率分布の例を示すグラフである。 樹脂層の層構成の例を示す断面図である。 樹脂層の層構成の例を示す断面図である。 樹脂層の層構成の例を示す断面図である。 本発明に用いられるダイコート法の一例(多層スライドダイコート)を示す断面図である。 本発明に用いられるダイコート法の一例(多層スロットダイコート)を示す断面図である。 本発明に用いられるダイコート法の一例(ウェット−オン−ウェットコート)を示す断面図である。
本発明者らは、前述の課題を解決するため、支持基材と樹脂層の物性を特定の関係にすることにより、前述の課題を解決できることを見いだした。すなわち、支持基材の少なくとも一方の面に、樹脂層を有する積層体であって、以下の条件1および条件2を満たすことが好ましい。
ここで、条件1は樹脂層の微少硬度計による表面の押し込み弾性率が1GPa以上、条件2は樹脂層と支持基材との180°剥離力をF(N/m)、剥離後の樹脂層のヤング率をE(Pa)、破断伸度をL(−)、樹脂層厚みをT(m)とした場合に、下記式1〜3すべてを満足するというものである。
式1 E・L・T/F≧15
式2 5×10−7 ≦ T ≦1.8×10−5
式3 F≧1。
前述のように樹脂層の微小硬度計による押し込み弾性率は、1GPa以上が好ましく、3GPa以上がより好ましい。また、式1にて、E・L・T/F≧15が好ましく、E・L・T/F≧60がより好ましく、E・L・T/F≧100が特に好ましい。また式2にて、1×10−6≦T≦15×10−6がより好ましい。
微小硬度計による押し込み弾性率、剥離後の樹脂層のヤング率(以下Eとする)、剥離後の樹脂層の破断伸度(以下Lとする)、樹脂層厚み(以下Tとする)、樹脂層と支持基材との180°剥離力(以下Fとする)の測定方法については後述する。
前述の微小硬度計による押し込み弾性率の大小は樹脂層表面の硬軟に対応し、ヤング率Eの大小は樹脂層全体を変形させることの難易に対応し、破断伸度Lの大小は樹脂層全体の変形できる範囲の大小に対応し、剥離力Fの大小は樹脂層を引きはがす力の大小に対応する。
樹脂層表面の押し込み弾性率が1GPa未満であると、耐傷性が不十分である場合がある。また、樹脂層表面の押し込み弾性率は高い程好ましいが、現実的には、10GPa程度が限界である
前述の式1において、E、L、Fについては、前述の式1を満たせば特に限定されず、その用途や材料によって適宜選択されるが、現実的な材料の組み合わせから、Eは10×10 7 Paから1×10 10 Pa程度、Lは0.001から10程度が限界である。
上述したヤング率E、破断伸度L、樹脂層厚みTおよび剥離力Fを用いた式1 E・L・T/Fは樹脂層を剥離したときに均一に、クラックなどが入ることなく剥離できるかどうかを表しており、式1にて、E・L・T/Fが15よりも小さいと、剥離時に破れたり、クラックが入ったりして、樹脂層に求められる機能が得られなくなる場合がある。
前述の式2においては、Tが5×10−7mよりも小さくなると耐傷性が不十分になる場合があり、Tが1.8×10−5mよりも大きくなると、樹脂層の成形体表面への追随性が不十分となる場合がある。なお、Tの測定方法については、後述する。
前述の式3においては、Fが1N/mよりも小さくなると、樹脂層と支持基材の密着性が不十分になり、工程内で浮いたり、しわになったりする場合がある。
さらに、前述の樹脂層は、支持基材に垂直な断面における厚み方向の弾性率分布が、特定の範囲で分布を持つことが好ましく、具体的には以下の条件3を満たすことが好ましい。
このように、押し込み弾性率の好ましい範囲および式1〜3すべてを満たすことはすなわち、形状追随性がよく、品位に優れたハードコート層を面内均一に転写することができるということを表している。
樹脂層の厚み方向の弾性率分布は、樹脂層の厚み方向の各点で変形しやすさを測定したものである。樹脂層の厚み方向における弾性率分布において後述するように、弾性率が特定の値を下回る領域の合計厚みが樹脂層の総厚みの特定の範囲内を占めることはすなわち、樹脂層の総厚みにおいて、変形しやすい領域が特定の厚み範囲内を占めることを表しており、この結果、樹脂層が例えば適度な柔軟性や耐傷性を発現することができる。
ここで、条件3は樹脂層の厚み方向における弾性率分布において、弾性率が0.5GPaを下回る領域の合計厚みが、樹脂層の総厚みの20%以上80%以下が好ましく、40%以上70%以下がより好ましいというもので、弾性率0.5MPaを下回る領域の合計厚みが20%よりも小さいと、転写時にクラックを抑制する効果が不十分になる場合があり、80%より大きいと耐傷性が不十分になる場合がある。
ここで、前述の樹脂層の厚み方向の弾性率分布は原子間力顕微鏡により測定した値を指す。この方法は、極微小部分の探針による圧縮試験であり、押し付け力による変形度合いを測定する。そのため、ばね定数が既知のカンチレバーを用いて、樹脂層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を測定する。具体的には積層体を切断し、樹脂層の厚み方向の各位置の断面における弾性率を原子間力顕微鏡により測定する。詳細は実施例の項で記載するが、下記に示す原子間力顕微鏡を用い、カンチレバー先端の探針を、樹脂層の断面に接触させ、55nNの押し付け力によりフォースカーブを測定して求めたカンチレバーの撓み量を測定することができる。またこの時、厚み方向の空間分解能については原子間力顕微鏡のスキャン範囲およびスキャンライン数に依存するが、現実的な測定条件では、概ね50nm程度が下限である。詳細および測定方法については後述する。
原子間力顕微鏡:アサイラムテクノロジー社製 MFP−3DSA−J
カンチレバー:NANOSENSORS製のカンチレバー「R150−NCL−10(材質Si、ばね定数48N/m、先端の曲率半径150nm)。
積層体の樹脂層の弾性率分布は、前述の厚み方向の弾性率分布が、前述の条件3を満たせば、特にその分布形状は限定されないが、耐傷性の面から、好ましくは、図1のように樹脂層の表面側が高く、支持基材側が低いもの、より好ましくは図2のように樹脂層の表面側と基材側が高く、樹脂層の中央部が低いものが好ましい。さらに好ましくは、樹脂層内での応力集中を避ける観点から、図3のように樹脂層の弾性率分布が、厚み方向にゆるやかに変化するものが好ましい。
また、積層体の樹脂層の組成は、前述の厚み方向の弾性率分布が、前述の条件3を満たせば、特にその分布形状は限定されないが、好ましくは厚み方向に樹脂組成が異なることが好ましい。厚み方向の樹脂組成は、図4のように樹脂層が明確な界面を有する複数の層から構成されていてもよく、図5のように1つの層のなかで徐々に組成が変わっていてもよいが、樹脂層内での応力集中を抑制し、樹脂層内での剥離を防ぐ観点から、後者の方が好ましい。層の定義、およびその達成方法については、後述する。
さらに、支持基材における樹脂層に接していた面(以下、面Bとする)は、条件2の式1を好ましい範囲する観点、および前述のFを制御でき、また、樹脂層厚みの面内均一性、品位向上の点から、特定の弾性率分布を持つことが好ましい。面Bの弾性率分布の標準偏差は、面B表面の変形しやすさの分布の広がりの程度であり、大きいほど、面内で変形しやすさが異なることを示している。
具体的には、面Bの原子間力顕微鏡により測定された、3μm角の範囲の弾性率分布の標準偏差が、30MPa以上であることが好ましく、40MPa以上であることがより好ましい。前述の面Bの弾性率分布の測定方法については、後述する。
ここで述べる標準偏差とは、弾性率分布の広がり幅、すなわち、弾性率のばらつきを示し、具体的な算出方法については後述する。標準偏差が大きいほどこの効果は大きい。
積層体の支持基材は、好ましくは樹脂層との組み合わせにより前述の条件2の式1を満たし、より好ましくは面Bの弾性率分布を前述のようにすることができれば、その構成や材料について特に限定されないが、好ましくは面Bに離型層を有する支持基材を用いることが好ましい。支持基材の詳細や離型層の詳細、達成方法については、後述する。
[本発明の形態]
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
[積層体、および樹脂層]
本発明における樹脂層とは、支持基材上に形成された層であって、支持基材上より剥離可能な層を指す。支持基材上に形成された層であっても剥離不可能な層、例えば後述する離型層は、樹脂層に含まれず支持基材の一部とする。この剥離可能、不可能の判断基準は、JIS K5600−5−6:1999に記載のクロスカット法にて評価を行い、分類4以上であるものを剥離可能、分類0から3であるものを剥離不可能とする。前記樹脂層および支持基材を含む全て統合したものを積層体とする。支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が樹脂層となり、支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層を1つの樹脂層とする。
ここで層とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。そのため、樹脂層の厚み方向に組成が変わっていても、その間に前述の境界面がない場合には、1つの層として取り扱う。
本発明の積層体は、前述の物性を示す樹脂層を有していれば平面状態、または3次元形状のいずれであってもよい。前記樹脂層全体の厚みは、0.5μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上、15μm以下がより好ましい。
前記樹脂層は、光沢性、耐指紋性、成型性、意匠性、耐傷性、防汚性、耐溶剤性、反射防止、帯電防止、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、電磁波遮蔽、易接着等の他の機能を有してもよい。
また、前記樹脂層の上に、さらに1つ以上の層を形成してもよく、例えば前述の機能を有する機能層、粘着層、電子回路層、印刷層、光学調整層等や他の機能層を設けてもよい。
[支持基材]
本発明の積層体に用いられる支持基材を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、ホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。支持基材を構成する樹脂は、成形性が良好であれば好ましく、その点から熱可塑性樹脂がより好ましい。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂は、十分な延伸性と追従性を備える樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、強度・耐熱性・透明性の観点から、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、もしくはメタクリル樹脂であることがより好ましい。
本発明におけるポリエステル樹脂とは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であって、酸成分およびそのエステルとジオール成分の重縮合によって得られる。具体例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを挙げることができる。またこれらに酸成分やジオール成分として他のジカルボン酸およびそのエステルやジオール成分を共重合したものであってもよい。これらの中で透明性、寸法安定性、耐熱性などの点でポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
また、支持基材には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。支持基材は、単層構成、積層構成のいずれであってもよい。
前記樹脂層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。また、支持基材の表面は、易接着層、帯電防止層、アンダーコート層、紫外線吸収層などの複数の機能性層をあらかじめ設けることも可能である。
支持基材の表面、すなわち、支持基材において樹脂層と接する面(面B)は、前述のように、特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことが好ましい。その達成方法は前記条件を満たせば特に限定されないが、支持基材の面Bに離型層を有する支持基材を用いることが好ましい。ここで、支持基材のみ(離型層を有さない)の場合は、支持基材の表面が面Bとなり、支持基材上に離型層を有する場合は、当該離型層表面が面Bとなる。離型層の詳細については後述する。
[離型層・離型層の製造方法]
前述の支持基材は、少なくとも一方の面に樹脂層と接する面Bに前述の条件を満たす離型層を有することが好ましい。離型層は、密着性や帯電防止性、耐溶剤性等を付与する観点から複数の層から構成されていてもよい。
離型層の厚みは、樹脂層と接する面Bが、前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば特に限定されないが、離型層の面内均一性、品位、剥離力の面から10〜500nmであることが好ましく、20〜200nmであることがより好ましい。
離型層は、樹脂層と接する面Bが前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば、その材料は特に限定されないが、後述する離型層用樹脂組成物により形成されていることが好ましく、後述する離型層の製造方法により、塗布、乾燥、硬化することにより支持基材の表面に形成することが好ましい。
離型層用樹脂組成物は、樹脂層と接する面Bが前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば、その材料は特に限定されないが、アルキッド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、有機系とシリコーン系の混合もしくは共重合樹脂などが好ましい。
離型層は、樹脂層と接する面Bが、前述の特定の弾性率分布の標準偏差、および平均値を持つことができれば、その製造方法は特に限定されないが、離型層用塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより塗布することにより塗布層を形成することが好ましく、グラビアコート法またはダイコート法が好ましい。
次いで、支持基材等の上に塗布された塗布層を乾燥する。得られる塗布層中から完全に溶媒を除去することに加え、塗膜の硬化を促進する観点からも、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、より好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは130℃以上200℃以下である。
また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000(mW/cm)、好ましくは200〜2,000(mW/cm)、さらに好ましくは300〜1,500(mW/cm)、となる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が、100〜3,000(mJ/cm)、好ましくは200〜2,000(mJ/cm)、さらに好ましくは300〜1,500(mJ/cm)となる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
上述のようにして、支持基材上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより支持基上に離型層を形成することが好ましい。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、支持基材上に前述の条件1,2を満たし、より好ましくは前述の条件3を満たすことができる樹脂層を形成することができれば特に限定されないが、前述の好ましい支持基材の離型層の上に、樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成できる製造方法が好ましい。樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を形成するには、少なくとも2種類以上の塗料組成物を、逐次または同時に塗布し、次いで乾燥、硬化することで樹脂層を形成する、積層体の製造方法であることが好ましく、少なくとも2種類以上の塗料組成物を同時に塗布する積層体の製造方法の方がより好ましい。
ここで「逐次に塗布する」もしくは「逐次塗布」とは、1種類の塗料組成物を塗布して塗布層を形成後、乾燥−硬化し、次いで異なる種類の塗料組成物を同様に、塗布−乾燥−硬化することで、複数の層からなる樹脂層を形成することを意図しているものである。塗布方法は、特に限定されないが、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などから適宜、選択できる。この「逐次塗布」において形成される樹脂層は、用いる塗料組成物の種類、数を適宜選択することにより、樹脂層内の厚み方向に樹脂組成の異なる樹脂層を形成することができる。乾燥、硬化方法については後述する。
また、「同時に塗布する」もしくは「同時塗布」とは、2種類以上の塗料組成物を支持基材上に塗布して、2層以上の塗布層を有する塗膜を支持基材上に形成し、次いで、乾燥、硬化することにより形成する方法である。2層以上の塗布層を有する塗膜を支持基材上に形成できれば、塗布方法は特に限定されないが、2種類以上の塗料組成物をダイコート法により、支持基材上にして塗布し、2層以上の塗布層を有する塗膜を形成する方法が好ましい。
ここで塗布層とは、支持基材上に塗布された個々の塗料組成物により形成された「液体の層」を指し、「塗膜」とは支持基材上に形成された塗布層全体を指し、塗膜が前述の乾燥・硬化工程を経て、液体から固体になることにより、前述の樹脂層が形成される。塗料組成物の定義については後述する。
前述の同時塗布が可能なダイコート法には、各塗料組成物がダイのスロットを経て層状に吐出し、スライド面上で積層させてから塗布することで、複数層の塗布層からなる塗膜を形成する「多層スライドダイコート」(図7)や、複数のスロットを有するダイに複数の塗料組成物を供給することで、基材上に塗布と同時に複数の塗布層からなる塗膜を形成する「多層スロットダイコート」(図8)、支持基材上に1層の塗布層を形成後、未乾燥の状態でもう1層の塗布層を積層させて塗膜を形成する「ウェット−オン−ウェットコート」(図9)等があり、いずれの方法を用いてもよい。
以下、各種ダイコート法および塗布層の例について、図面を用いて説明する。
図7は、多層スライドダイコートの一例で、4層同時塗布の断面図を示す。各塗布層を形成する塗料組成物は、4層スライドダイ44の最も上流側のスロット45、上流側から2番目のスロット46、上流側から3番目のスロット47、最も下流側のスロット48に供給され、スライド面49上に吐出される。スライド面49は傾斜しているため、吐出された各塗料組成物はスライド面上を流下する過程で積層される。支持基材は上流側51から下流側52に向かって搬送され、ダイリップ50にてスライド面49を流下してきた塗料組成物が支持基材上に塗布され、支持基材上に4つの塗布層を有する塗膜が形成される。
図8は、多層スロットダイコートの一例で、2層同時塗布の断面図である。各塗布層を形成する塗料組成物は、2層スロットダイ53の上流側のスロット54と、下流側のスロット55に供給される。これらの塗料組成物は、スロットから吐出された後、ダイリップ部56で合流する。
支持基材は、上流側57から下流側58に向かって搬送される、ダイリップ部56で支持基材上に塗布され、2つの塗布層を有する塗膜が形成される。
図9は、ウェット−オン−ウェットコートの一例を示す断面図である。この例では、上流側単層スロットダイ59、下流側単層スロットダイ60に、各塗布層を形成する塗料組成物を供給する。まず、上流側単層スロットダイ59より吐出された塗料組成物は、上流側61から支持基材の下流側62に向かって搬送される支持基材上に塗布されて、1層の塗布層を有する塗膜が形成される。次いで下流側単層スロットダイ60より吐出された塗料組成物が、上記単層スロットダイ59より塗布された塗膜上に塗布されて、2層の塗布層を有する塗膜が形成される。
乾燥では、支持基材等の上に塗布された塗膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去することに加え、乾燥工程では塗膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥工程における加熱方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などの方法が挙げられる。この中でも、精密に幅方向も乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方法が好ましい。
乾燥工程に続いて、熱または活性エネルギー線を照射することによる、さらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。
活性エネルギー線としては、汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)が好ましい。紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化することがより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が弱くなり、靭性が低くなる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いる場合、紫外線の照度が好ましくは100〜3,000mW/cm、より好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。紫外線の積算光量は、好ましくは100〜3,000mJ/cm、より好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[樹脂層用塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、本発明の積層体は、前述の支持基材の少なくとも一方に塗料組成物を塗布し、必要に応じて乾燥・硬化する工程を経て得ることができる。
ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の支持基材上に塗布し、溶媒を乾燥する工程で揮発、除去、硬化することにより樹脂層を形成可能な材料を指す。ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質の種類が一部でも異なる液体を指す。この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを前駆体と呼ぶ)、粒子、および重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
[塗料組成物]
本発明の積層体の製造方法に用いられる塗料組成物は、支持基材上に前述の製造方法にて塗布され、前述の樹脂層を形成することができる液体であれば特に限定されるものではないが、樹脂組成が厚み方向に異なる樹脂層を、前述の製造方法にて形成するには、少なくとも2種類以上の塗料組成物を用いることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法に用いられる2種類以上の塗料組成物のうち、少なくとも1種類は、溶媒、バインダー原料、光重合開始剤、粒子分散物、その他添加剤等を含むことが好ましく、それぞれの材料種、物性、添加量により制御することで機能を達成することが可能になる。
[バインダー原料]
バインダー原料とは溶媒に可溶で、塗料組成物に含むことができ、溶媒の揮発、およびそれ自身の重合、架橋反応により塗膜を硬化可能な材料を指し、硬膜後の状態をバインダーとよぶ。本発明の積層体の製造方法に用いられる2種類以上の塗料組成物のうち、少なくとも1種類は、バインダー原料を含むことが好ましく、前記2種類上の塗料組成物のすべてがバインダー原料を含むことがより好ましい。前記バインダー原料は、特に限定されるものではないが、一種類であってもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、前述の本発明の積層体の製造方法において、バインダー原料は、活性エネルギー線により、それ自身もしくは活性エネルギー線により開裂可能な光重合開始剤を併用することで重合し、塗膜を硬化可能な材料が好ましい。
具体的には、活性エネルギー線として紫外線を用い、光重合開始剤を併用する場合に好ましいバインダー原料は、多官能(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシラン加水分解物、(メタ)アクリル基を有するアルコキシシランオリゴマー、(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するウレタン系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するエポキシ系ポリマー、(メタ)アクリル基を有するシリコーン系ポリマーである。
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
(メタ)アクリル基を有するアクリル系ポリマーとしては、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコーン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。また、各種ポリマーは、不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000〜200,000で、ガラス転移温度が20〜200℃のものを用いることができる。
[粒子材料、粒子成分]
本発明の積層体の樹脂層は、粒子成分を含んでもよい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐傷性の観点から無機粒子が好ましい。
無機粒子の種類数としては、1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO2)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZnおよびOのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
ここで、本発明にて用いられる塗料組成物中に存在する粒子を「粒子材料」、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記樹脂層に存在する粒子を「粒子成分」という。
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO)である。
[溶媒]
本発明の積層体の製造方法に用いる塗料組成物は溶媒を含んでもよく、塗膜を面内に均一に形成し、また1つの層のなかで徐々に組成をかえていくためには、溶媒を含む方が好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下、特に好ましくは1種類以上4種類以下である。
ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
さらに、溶媒を含む場合には以下の特性を示す溶媒であることが好ましい。
[塗料組成物中のその他の成分]
また、塗料組成物は、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、樹脂層の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。また、ウレタン結合の形成反応を促進させる架橋触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどが挙げられる。
また、前記塗料組成物は、アルコキシメチロールメラミンなどのメラミン架橋剤、3−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸などの酸無水物系架橋剤、ジエチルアミノプロピルアミンなどのアミン系架橋剤などの他の架橋剤を含むことも可能である。
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン形化合物の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2−フェニル−2−オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、樹脂層を形成するために用いる塗料組成物にレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を加えてもよい。これにより、樹脂層はレベリング剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等を含有することができる。レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系、フッ素系のレベリング剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などの金属塩が挙げられる。
上述のようにして、支持基材上または離型層上に形成した塗布層を乾燥、硬化することにより樹脂層を形成することが好ましい。
[用途]
本発明の積層体は耐傷性、表面形状への追従性等を活かし、例えばプラスチックスや金属で構成された成型体に好適に用いることができる。さらに、本発明の積層体から支持基材を剥離してなる樹脂フィルムは、例えば成型体の保護フィルムとして好適に用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[支持基材]
[離型層用塗料組成物の作成]
[離型層用塗料組成物A]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の離型層用塗料組成物Aを得た。
(X62−9201A:信越化学工業株式会社製) 70質量部
(X62−9201B:信越化学工業株式会社製) 30質量部。
[離型層用塗料組成物B]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の離型層用塗料組成物Bを得た。
(X62−9201A:信越化学工業株式会社製) 50質量部
(X62−9201B:信越化学工業株式会社製) 50質量部。
[離型層用塗料組成物C]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の離型層用塗料組成物Cを得た。
(Syl−Off LTC752 Coating:東レ・ダウコーニング株式会社製) 100質量部
(Syl−Off BY 24−850 Additive:東レ・ダウコーニング株式会社製) 5質量部。
[離型層用塗料組成物D]
以下の材料を混合し、n−ヘプタン/トルエン混合溶媒(質量混合比50/50)を用いて希釈し、固形分濃度2質量%の離型層用塗料組成物Dを得た。
(テスファイン305:日立化成株式会社製 固形分濃度50質量%)。
[離型層付き支持基材a〜eの作成]
厚み50μmポリエステルフィルム(東レ(株)製商品名“ルミラー”(登録商標)R60)に、離型層用塗料組成物A〜Dを、乾燥後の塗布厚みが0.1(μm)となるようにグラビアコートで塗布し、120℃で30秒乾燥硬化して支持基材a〜dを得た。
[樹脂層用塗料組成物の作成]
[ウレタン(メタ)アクリレートA1の合成]
トルエン50質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井化学株式会社製 “タケネート”(登録商標)D−170N)50質量部、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業株式会社製 プラクセルFA5)76質量部、ジブチル錫ラウレート0.02質量部、およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を混合し、70℃で5時間保持した。その後、トルエン79質量部を加えて固形分濃度50質量%のウレタン(メタ)アクリレートA1のトルエン溶液を得た。
[ウレタン(メタ)アクリレートC1の合成]
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体(三井化学株式会社製 “タケネート”(登録商標)D−170N、イソシアネート基含有量:20.9質量%)50質量部、ポリエチレングリコールモノアクリレート(日油株式会社製 “ブレンマー”(登録商標)AE−150、水酸基価:264(mgKOH/g))53質量部、ジブチルスズラウレート0.02質量部およびハイドロキノンモノメチルエーテル0.02質量部を仕込んだ。そして、70℃で5時間保持して反応を行った。反応終了後、反応液にメチルエチルケトン(以下MEKということもある)102質量部を加え、固形分濃度50質量%のウレタン(メタ)アクリレートC1のメチルエチルケトン溶液を得た。
[樹脂層用塗料組成物A]
以下の材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、固形分濃度30質量%の樹脂層用塗料組成物Aを得た。
・ウレタンアクリレートC1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 90質量部
・トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 5質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
[樹脂層用塗料組成物B]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の樹脂層用塗料組成物Bを得た。
・ポリマーアクリレート樹脂の固形分濃度50質量% 酢酸ブチル/酢酸エチル溶液 90質量部
(“ユニディック” V−6850 DIC株式会社 固形分濃度50質量%)
・光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
[樹脂層用塗料組成物C]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の樹脂層用塗料組成物Cを得た。
・多官能アクリレートモノマー 25質量部
(“KAYARAD”(登録商標) PET−30 日本化薬株式会社製)
・シリカ粒子分散液 50質量部
(MEK−AC−2140Z 日産化学工業株式会社製 固形分濃度46質量%)
・アルミナ粒子分散液 5質量部
(NANOBYK−3601 ビックケミー・ジャパン株式会社製 固形分濃度97質量%)
・光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
[樹脂層用塗料組成物D]
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度30質量%の樹脂層用塗料組成物Dを得た。
・ウレタン(メタ)アクリレートA1の固形分濃度50質量%−トルエン溶液 50質量部
・ウレタン(メタ)アクリレートC1の固形分濃度50質量%−メチルエチルケトン溶液 50質量部
・光ラジカル重合開始剤 1.0質量部
(“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社製)。
[積層体の作成]
[積層体の作製方法1]
単層スロットダイコーターを有する連続塗布装置を用い、表1に記載の支持基材と塗料組成物の組み合わせについて、表1に記載の塗布層厚みになるようにスロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで乾燥、硬化を行った。乾燥、硬化条件は以下の通りである。
(乾燥条件)
送風温湿度 : 温度:80℃、相対湿度:1%以下
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
乾燥時間 : 2分間
(硬化条件)
照射出力 : 400W/cm
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 0.1体積%以下。
[積層体の作製方法2]
図8に記載の2層スロットダイコーターを有する連続塗布装置を用い、表1に記載の支持基材と2種類の塗料組成物の組み合わせについて、表1に記載の2層の塗布層厚みになるように、上流側、下流側の各スロットからの吐出流量を調整して塗布し、次いで乾燥、硬化を行った。乾燥、硬化の条件は、積層体の作成方法1と同じである。
以上の方法により実施例1〜10、比較例1〜の積層体を作成した。各実施例、比較例に対応する上記積層体の作成方法、および塗布層の厚みは、表1に記載した。
Figure 0006950330
[積層体の物性評価]
実施例1〜10および比較例1〜で作製した積層体について、以下に示す物性評価を実施し、得られた結果を表2にまとめた。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。さらに物性評価結果に基づき、算出された式1〜3について表2に記載した。
Figure 0006950330
[微小硬度計による樹脂層表面の押し込み弾性率の測定]
樹脂層表面の押し込み弾性率測定は、(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いた。積層体の樹脂層が設けられた面とは反対側に、東亞合成株式会社製「“アロンアルファ”(登録商標) プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介して積層体を専用のサンプル固定台に固定して測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理され、押し込み弾性率(GPa)を測定した。
測定モード:負荷−除荷試験
最大荷重:100mN
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:10mN/sec。
[樹脂層の厚み(T)]
樹脂層の厚みは、電子顕微鏡(SEM)を用いて断面を観察することにより測定した。積層体の切片をSEMにより3,000倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ)にて各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を、樹脂層の厚みの測定値とした。
[樹脂層の弾性率:E、破断伸度:L]
剥離後の樹脂層の弾性率Eと破断伸度Lは、積層体を10mm幅×150mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、支持基材から樹脂層を剥離して試験片とした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度300mm/minに設定し、測定温度23℃で引張試験を行った。
チャック間距離がa(mm)のときに、厚みT(m)サンプルにかかる荷重b(N)を読み取り、以下の式から、ひずみ:x(%)と応力:y(Pa)を算出し、応力−歪み曲線を作成した。
ひずみ:x=((a−50)/50)×100
応力 : y=b/(T×10×10−3)。
樹脂層の弾性率:E(Pa)は、前述の応力歪み曲線からその直線領域(歪み:x〜x、応力:y〜y)を確認し、下記の式から求めた。
弾性率: E=(y−y2)/(x−x2)×100
破断伸度Lは、前述の応用歪み曲線において、応力が0になった時の歪みを用いた。
[樹脂層と支持基材との180°剥離力:F]
積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD−S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで、10mm幅×150mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、粘着フィルムのもう一方の面のセパレーターを剥がして気泡が入らないように、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付けた。
長手方向が引っ張り試験機の引っ張り方向と一致するように、PETフィルムの樹脂層が貼り付けられていない部分を引張試験機で固定し、さらに引っ張り試験器にPETフィルムを固定している側の積層体の支持基材の一部を剥がして、180°曲げて引っ張り試験器のもう一方に固定した。次いで、23℃65%RH環境下にて、引張試験機を用いて300(mm/分)の速度で180度剥離した時の抵抗値(N)を測定した。抵抗値(N)を支持基材および樹脂層の幅(m)で除して、180°剥離力F(N/m)に換算した。
[樹脂層の厚み方向の弾性率分布の測定]
実施例1〜10および比較例1〜で作製した積層体について、電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し硬化させた後、凍結ミクロトーム法により断面を切り出し、当該断面を測定面として専用のサンプル固定台に固定した。アサイラムテクノロジー製のAFM「MFP−3DSA−J」とNANOSENSORS製のカンチレバー「R150−NCL−10(材質Si、ばね定数48N/m、先端の曲率半径150nm)」を用い、樹脂層および支持基材の断面に対して、Contactモードでフォースカーブ (カンチレバーの移動速度2μm/s、最大押し込み荷重2μN)を測定した。
フォースカーブから得られたForce−Ind曲線からAFM装置付属のソフト「IgorPro 6.22A MFP3D101010+1313」に付属のHertzの理論に基づいた解析を行わせることで厚み方向の弾性率分布を求めた。なお、Tip Geometry=Sphere、Radius=150nm、Select=Fused Silica、νTip=0.17、ETip=74.9GPa、νSample=0.33、ForceタブのLow=10%、ForceタブのHigh=90%で計算した。
前述の方法で用意した積層体断面に対して、Tappingモード、分解能512×512pixelsにて表面像の測定を実施した。次いで、得られた表面像から樹脂層の厚みが視野角内に収まるように倍率を調整した。この時、樹脂層−支持基材界面は、樹脂層と支持基材の境界部分の弾性率の不整合から輝線または暗線として観察され、この輝線または暗線の中央を樹脂層の厚み方向の測定基準線とした。また最表面についても同様に、樹脂層と包埋樹脂との弾性率不整合により生じる輝線または暗線の中央を樹脂層の厚み方向の測定基準線とした。以下の測定においては、「最表面からの距離」という場合は、前述の最表面における輝線または暗線の中央をからの距離をいい、同様に、「樹脂層−支持基材界面からの距離」という場合は、前述の界面における輝線または暗線の中央をからの距離をいう。
前述の樹脂層−支持基材界面と最表面との距離を樹脂層の総厚みとした。次いで分解能512×512の格子点状の測定点から、樹脂層を縦断する直線上のデータ群を選択した。更に、前述のデータ群が属する樹脂層を縦断する直線と積層体の法線のなす角から、各データ点の樹脂層−支持基材界面からの厚み方向の距離を算出し、樹脂層の総厚みに対して、最低8点以上の測定点が得られるように厚み方向の測定間隔を調整し、前述の方法で弾性率の測定を実施することで、厚み方向の弾性率分布を得た。
この時、樹脂層−支持基材界面からの厚み方向の距離が50nm未満になる点、および最表面からの距離が50nm未満になる点は、界面および表面の影響を受けやすいため測定から除外した。
[支持基材の面Bの弾性率の測定、および弾性率分布の標準偏差の算出]
面Bの弾性率の測定は、AFM(Burker Corporation製 DimensionIcon)を用い、PeakForceQNMモードにて測定を実施し、得られたフォースカーブから付属の解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」を用いて、JKR接触理論に基づいた解析を行い、弾性率分布を求めた。
具体的にはPeakForceQNMモードのマニュアルに従い、カンチレバーの反り感度、バネ定数、先端曲率の構成を行った後、下記の条件にて測定を実施し、得られたDMT ModulusチャンネルのデータをB面の弾性率として採用した。なお、バネ定数および先端曲率は個々のカンチレバーによってバラつきを有するが、測定に影響しない範囲として、バネ定数0.3(N/m)以上0.5(N/m)以下、先端曲率半径15(nm)以下の条件を満たすカンチレバーを採用し、測定に使用した。測定条件は下記に示す。
測定装置 : Burker Corporation製原子間力顕微鏡(AFM)
測定モード : PeakForceQNM(フォースカーブ法)
カンチレバー: ブルカーAXS社製SCANASYST−AIR
(材質:Si、バネ定数K:0.4(N/m)、先端曲率半径R:2(nm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
測定範囲 : 3(μm)四方
分解能 : 512×512
カンチレバー移動速度: 10(μm/s)
最大押し込み荷重 : 10(nN)。
次いで得られたDMT Modulusチャンネルのデータを解析ソフト「NanoScopeAnalysis V1.40」にて解析し、Roughnessにて処理することにより得られた、ResultsタブのImage Raw Meanの値を、面Bの弾性率とした。更に得られた弾性率のヒストグラムの各階級値および観測頻度を表計算ソフト「Microsoft Office Excel 2010」に取り込み、STDEVP関数を用いることで、弾性率分布の標準偏差を算出した。
[積層体の特性評価]
積層体および樹脂層について、次に示す特性評価を実施し、得られた結果を表3に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回評価し、その平均値を求め、少数第一位を四捨五入した。
Figure 0006950330
[樹脂層表面の耐擦傷性の評価]
実施例1〜10および比較例1〜で作製した積層体について、#0000のスチールウールを用い、平面摩耗試験機(株式会社大栄科学精器製作所製 PA−300A)を用いて、荷重250kg/cmにて、樹脂層の表面を10往復摩擦し、傷の発生の有無を目視により観察し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:0本
7点:1本以上、5本未満
4点:5本以上、10本未満
1点:10本以上。
[樹脂層の剥離性の評価]
積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD−S1 25μm品)の一方のセパレーターを剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで粘着フィルムのセパレーターを剥がして、PETフィルム(188μm 東レ(株)“ルミラー”(登録商標) T60)に貼り付けた。
支持基材と樹脂層を予め端部から少し剥離しておき、剥離した樹脂層を180度方向に剥離し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:剥離速度10,000mm/minでも面内均一に剥がすことができる。
7点:剥離速度10,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、1,000mm/minでは面内均一にはがすことができる。
4点:剥離速度1,000mm/minでは面内均一に剥がすことができず、300mm/minでは面内均一にはがすことができる。
1点:300mm/minで面内均一に剥がすことができない。
[樹脂層の品位の評価]
実施例1〜10および比較例1〜で作製した積層体について、光源を樹脂層表面に映り込ませた状態で、50mを目視にて検査し、そのうち直径1mm以上の変形(ハジキ、異物)が観察された個数について、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:1個以下
7点:2個以上5個以下
4点:6個以上10個以下
1点:11個以上。
[樹脂層の形状追随性の評価]
積層体の樹脂層の表面に、粘着フィルム(パナック株式会社 パナクリーンPD−S1 25μm品)の一方のセパレーター剥がした面を気泡が入らないように貼合し、次いで、90mm幅×90mm長の矩形に、端部にクラックが入らない方法で切り出し、もう一方の面のセパレーターを剥がして、直径30mmの円筒に貼り付け、このときの樹脂層の状態を観察し、以下の基準に則り判定を行い、平均点4点以上を合格とした。
10点:樹脂層をクラックや浮きが発生せず、均一に貼り付けることができる
7点:樹脂層の端部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
4点:樹脂層の端部や中央部に微細なクラックが見られるが、それ以外は均一に貼り付けることができる
1点:樹脂層の中央部にクラックや浮きが入り、均一に貼り付けることができない。
[樹脂層の浮きの評価]
実施例1〜10および比較例1〜で作製した積層体を、100×200mm角にカッターナイフで切断し、直径30mmの円筒に巻き付けた時に切断部の端部を観察し、以下の基準に則り判定を行い、4点以上を合格とした。
10点:カッターナイフで切断した時の端部、および円筒に巻き付けたときの端部のいずれも、浮きが発生しない。
7点:カッターナイフで切断した時の端部は浮きが発生せず、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
4点:カッターナイフで切断した時の端部はわずかに浮きが発生し、円筒に巻き付けたときにわずかに端部に浮きが発生する。
1点:カッターナイフで切断した時の端部に浮きが発生し、円筒に巻き付けたときには、端部全体に浮きが発生する。
1,8,15:弾性率
2,9,16:高弾性率側
3,10,17:低弾性率側
4,11,18:樹脂層の厚み方向における位置
5,12,19:表面側
6,13、20:支持基材側
7,14,21:厚み方向の各位置における弾性率
22,28,35:積層体
23,29,36:支持基材
24,30,37:樹脂層
25,31,38:離型層
26,33:低弾性率層
27,32,34:高弾性率層
41:低弾性率部
39,43:高弾性率部
40,42:組成傾斜部
44:多層スライドダイ
45,54:最も上流側のスロット
46,55:上流側から2番目のスロット
47:上流側から3番目のスロット
48:最も下流側のスロット
49:スライド面
50,56:ダイリップ
51,57,61:支持基材の搬送方向の上流側
52,58,62:支持基材の搬送方向の下流側
53:多層スロットダイ
59,60:単層スロットダイ
本発明の積層体は、耐傷性、薄膜での搬送性、表面形状への追従性に優れ、また、たとえば耐候性やガスバリア性、ブロッキング防止性などの機能を有する層を転写するといった利点を活かし、プラスチックスや金属を始めとする成型体に好適に用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成形品、水槽、展示用などのショーケース、スマートフォンの筐体、タッチパネル、カラーフィルター、フラットパネルディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、フレキシブルデバイス、ウェアラブルデバイス、センサー、回路用材料、電気電子用途、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、ミラー、窓ガラス、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーやウインドウなどの車両部品、および種々の印刷物、医療用フィルム、衛生材料用フィルム、医療用フィルム、農業用フィルム、建材用フィルム等、それぞれの表面材料や内部材料や構成材料や製造工程用材料に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 支持基材の少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層体であって、以下の条件1および条件2を満たすことを特徴とする、積層体。
    条件1:樹脂層の微少硬度計による表面の押し込み弾性率が1GPa以上
    条件2:樹脂層と支持基材との180°剥離力をF(N/m)、剥離後の樹脂層のヤング率をE(Pa)、破断伸度をL(−)、樹脂層厚みをT(m)とした場合に、下記式1〜3すべてを満足する
    式1 E・L・T/F≧15
    式2 5×10−7≦T≦1.8×10−5
    式3 F≧1
  2. 前記樹脂層の支持基材に垂直な断面における厚み方向の弾性率分布において、以下の条件3を満たすことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
    条件3:厚み方向の弾性率分布において、弾性率0.5GPaを下回る領域の合計厚みが、樹脂層の総厚みの20%以上80%以下
  3. 前記支持基材表面の、樹脂層が接していた面(面B)について、原子間力顕微鏡により測定された、3μm角の範囲の弾性率分布の標準偏差が30MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の積層体から、支持基材を剥離してなる樹脂フィルム。
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