JP6878833B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は高い表面硬度、特に耐擦傷性と鉛筆硬度を両立し、かつ優れた密着性を有する積層体に関する。
従来、フラットパネルディスプレーなどの表面保護(傷付き防止や防汚性付与等)を目的として、合成樹脂等からなる表面層が設けられたプラスチックフィルムが使用されている。これらの表面層には、表面保護の観点で耐傷性が重要な特性として要求されるため、一般的には、非特許文献1に記載のオルガノシラン系や多官能アクリル系などの各種プレポリマー、オリゴマー等を含む塗料組成物を、塗布−乾燥−熱もしくはUV硬化させることによる「高架橋密度材料」や、さらに各種表面修飾フィラーを組み合わせた「有機−無機ハイブリット材料」などを用いた、いわゆる「ハードコート材料」を用いることで耐傷性を付与している。
表面層の耐擦傷性の指標としてよく用いられるものに表面の「硬度」がある。プラスチックフィルムは、JIS K 5600−5−4(1999)に記載の、引っかき硬度(鉛筆法)で評価されることが多く、耐擦傷性の指標として「鉛筆硬度」を用いることが多い。この評価方法は、負荷や擦過速度を規定して、材料の表面を硬さの異なる鉛筆を用いて1回擦過し、傷が残らない限界の鉛筆の硬さを、その表面の硬さの指標とするものである。
耐擦傷性の向上を、この「鉛筆硬度」を高めることで達成しようとした技術としては、例えば特許文献1で、「透明基材フィルムの表面に、下地用硬化性組成物を硬化してなる厚さ5〜15μmの第1ハードコート層を有し、さらにその上に、上地用硬化性組成物を硬化してなる厚さ1〜8μmの第2ハードコート層を有し、前期下地用硬化性組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを主成分とする電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、光重合開始剤を1〜3重量部配合したものであり、前記上地用硬化性組成物が、(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、無機化合物微粒子を10〜200質量部および光重合開始剤を15〜20質量部配合したものであり、かつ、前記上地用硬化性組成物を硬化してなる第2ハードコート層が、前記下地用硬化性組成物を硬化してなる第1ハードコート層よりも硬いことを特徴とするハードコートフィルム。」が開示されている。
また、異なる表面層の耐擦傷性の指標として「耐摩耗性」がある。JIS K 5600−5−8(1999)に記載の研磨紙法や、JIS K 5600−5−9(1999)に記載の摩耗輪法に加えて、より簡易的な手法として「耐スチールウール性」と呼ばれる指標がある。「耐スチールウール性」は、接触面積と負荷を規定した特定の番手のスチールウールで、材料表面を繰り返し擦過し、傷が残らない限界の回数、もしくは特定の回数だけ擦過後の傷の発生状態を評価するものである。
耐擦傷性の向上を、「耐スチールウール性」を高めることで達成しようとした技術としては、例えば特許文献2では「特定のフッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート及びフッ素非含有ビニル系化合物を含むラジカル重合性組成物の硬化物でハードコート層を形成した耐擦傷性に優れるハードコートフィルム。」が開示されている。具体的には「フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート及びフッ素非含有ビニル系化合物を含むラジカル重合性組成物の硬化物で形成されたハードコート層を含むハードコートフィルムであって、前記フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物の鉛筆硬度(500g荷重)が3B以上であり、前記ハードコート層の水接触角が100°以上であり、かつ5kg/cmの荷重をかけてスチールウール♯0000で前記ハードコート層の表面を10回往復摺動しても傷がつかないハードコートフィルム。」が提案されている。
プラスチックハードコート応用技術 株式会社シーエムシー出版 2004年
特開2008−116596号公報 特開2015−138150号公報
本来、耐擦傷性に優れた材料に求められる特性は、1回だけ比較的高い面圧で擦過したときの傷つきにくさに対応する「硬度」の指標か、比較的低い面圧で繰り返しこすったときの傷つきにくさ対応する「耐摩耗性」の指標のどちらか一方に優れているのではなく、両者が優れていることが好ましい。
しかしながら、プラスチックフィルムで高い「鉛筆硬度」を実現する材料は、耐摩耗性が低くなる場合が多い。これは「硬度」が高い材料は、1回の高い面圧での擦過には強いが、その反面、材料としては脆いものになる。この理由として本発明者らは「耐摩耗性」の評価を行うと、複数回の擦過により表面に歪みが蓄積し破壊され、さらに自らの破片が研磨剤となってより傷をつけると考えている。実際に、特許文献1の構成について本発明者らが確認したところ、耐摩耗性評価で表面に傷が入りやすいものであった。
一方で、高い「耐摩耗性」を有する材料は、逆に「硬度」が低くなる場合がある。この理由として本発明者らは、反復磨耗に対する耐久性を高めるには、塗膜の復元性がよいこと、すなわち降伏点ひずみが大きい材料が好ましいが、このような材料は弾性率が低く、結果として硬度が低いものになる。実際に特許文献2に記載の構成について、本発明者らが調査したところ鉛筆硬度はH程度と、満足のいくレベルではないことを確認した。
そこで本発明の目的は、前述の相反する表面の硬度、耐摩耗性および密着性を両立させ、実用条件下で優れた傷の抑制効果を得られる積層体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1.支持基材上の少なくとも一方の面に表面層を有する積層体であって、表面層の厚みを100%としたとき、前記表面層の支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が30体積%以上であり、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
条件1: 表面層表面の押し込み弾性率EaITが、4,000MPa以上、8,000MPa以下
条件2: 式1で表される表面層表面の凝着摩耗パラメータεLが15以下
(式1) ε=EaIT×(πr/F)
ε:凝着摩耗パラメータ
EaIT[MPa=N/mm]:表面層表面の押し込み弾性率
F[mN]:破断の臨界荷重
r[mm]:圧子の曲率
条件3: 積層体の総厚みが10μm以上
2.表面層の厚みを100%としたとき前記表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が体積%以上20体積%以下、かつ前記表面層の支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が30体積%以上50体積%以下であることを特徴とする1.に記載の積層体。
3.表面層の厚みを100%としたとき前記表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲に含まれる粒子(以下粒子Aとする)の、JIS 8827−1(2008)に基づく最大フェレー径の長さ平均粒子径が50nm以上200nm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の積層体
4.前記粒子Aがαアルミナ、γアルミナ、擬ベーマイトおよびベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つの粒子であることを特徴とする3.に記載の積層体。
本発明によれば、表面の硬度、耐摩耗性および密着性を両立させ、実用条件下で優れた傷の抑制効果を発現する積層体が得られる。
表面層を形成する製造方法の例(多層スライドダイコート)である。 表面層を形成する製造方法の例(多層スロットダイコート)である。 表面層を形成する製造方法の例(ウェット−オン−ウェットコート)である。 粒子の連鎖構造である。 ナノインデンテーション測定により得られるデータの例である。
まず、本発明者らは耐擦傷性に対する従来技術の分類およびそのメカニズムについて詳細に検討した。まず、研磨紙法などの耐摩耗性評価が対応するのは、日常生活での様々なものによる繰り返し擦過に起因する傷の形成である。この傷の形成は、数秒スケールの長い時間変化で変形が起こるため、応力が面内方向に分散される。そのため、表面を形成する「材質の硬度」や「滑り性」や「せん断方向への応力」などの寄与が大きい反面、積層体全体で一定の剛性が維持される場合には、表面層の表面部が影響し、表面層の内部、基材と表面層の界面、基材の弾性率、基材の厚み、裏面などの影響は受けにくい。
また、鉛筆硬度試験などの硬度評価が対応するのは、偶発的に起こる擦過に起因する傷である。この傷の形成は、大きな面圧で短時間に起こるため、変形量をできるだけ低くする必要がある。そのため、積層体の中で大きな割合を占める部分、即ち支持基材種、支持基材の厚み、表面層の全体の組成、厚みが影響する。一方で、最表面については、下部構造に外力による負荷をうまく伝達することができれば、必ずしも高い弾性率が必要でなく、厚み方向に機能を分担する積層体を発明した。
具体的には、表面側は優れた耐摩耗性に優れ、かつ支持基材側に負荷を伝播しやすい特性を有し、支持基材側には硬度に優れた特性を有する表面層を設けるものである。
ここで、本発明における「表面層」とは、支持基材上に形成された層をいう。すなわち、支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が「表面層」となる。また、例えば支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層すべてを1つの「表面層」というものとする。
本発明の課題、即ち硬度と耐摩耗性を両立して、プラスチックスフィルムに実用的な耐擦傷性を付与するため、本発明者らは、前述の3つの条件を満たすことが好ましいことを見出した。
条件1: 表面層表面の押し込み弾性率EaITが、4,000MPa以上、8,000MPa以下
条件2: 式1で表される表面層表面の凝着摩耗パラメータεが15以下
(式1) ε=EaIT×(πr/F)
ε:凝着摩耗パラメータ
EaIT[MPa=N/mm]:表面層表面の押し込み弾性率
F[mN]:破断の臨界荷重
r[mm]:圧子の曲率。
1つ目の条件は、表面層の押し込み弾性率EaITで、最大荷重0.5mN条件での厚み方向へのナノインデンテーション測定における、表面層表面の押し込み弾性率に相当する。
表面層表面の押し込み弾性率EaITの好ましい範囲は、具体的には4,000MPa以上、8,000MPa以下である。押し込み弾性率EaITが4,000MPa未満の場合には、押し込み、摩耗いずれの場合も歪み量が大きくなり、表面層表面に傷が付きやすくなる場合がある。一方、押し込み弾性率が8,000MPaを超える場合には、表面層が脆くなり、フィルムの打ち抜き加工時に割れが生じたり、支持基材への密着性が低下したりする場合がある。
2つ目の条件は、前述の式1で表される表面層表面の凝着摩耗パラメータで、前述のナノインデンテーション測定における、表面層表面の押し込み弾性率EaITと、マイクロスクラッチテスタ測定による破断の臨界荷重Fと、マイクロスクラッチテスタ測定における圧子の曲率rを組み合わせたパラメータである。
具体的には、Fはダイヤモンド製、バネ定数:100(g/mm)、圧子の曲率(スタイラス径):5(μm)の圧子によるマイクロスクラッチテスタ測定における破断の臨界荷重(mN)であり、rはスライラス半径5μmをそれぞれ表す。ナノインデンテーション測定およびマイクロスクラッチテスタ測定の詳細な条件は後述する。
ナノインデンテーションは微小な圧子を用いて表面を垂直方向に押し込み、その硬さを測定する手法であり、押し込み深さを調整することで、表面層表面の弾性率情報を選択的に抽出することができる。一方、マイクロスクラッチテスタは圧子に時間増加する垂直負荷を与えながら、積層体の表面を摩耗し、破壊に対応する表面の変位を抽出する測定である。摩耗の際に絶えず圧子を振動させているため、時間増加する動摩擦力により、膜が破壊される挙動を追うことができる。
ここで、凝着摩耗パラメータεの分母は、摩耗により膜が破壊される際の垂直抗力と、その時の圧子の接触面積から算出される、摩耗に対する耐久性を表すパラメータであり、その次元は弾性率と同じく[MPa=N/mm]である。すなわち凝着摩耗パラメータεLは表面の硬さが、垂直方向と面内方向のいずれの破壊に対して強いものかを示す指標であり、この数値が大きい場合には押し込み方向に硬く、小さい場合には水平摩耗に対して硬いことを意味する。一方、荷重を一定に置いた場合、弾性率と歪み量は反比例の関係にあることから、凝着摩耗パラメータεが大きい場合には摩耗に対する歪み量が相対的に大きく、小さい場合には押し込みに対する歪み量が相対的に大きいことを意味する。
凝着磨耗パラメータεは、15以下であることが好ましい。凝着摩耗パラメータεが15を超えると、反復摩耗時に表面にひずみが残りやすくなり、表面層表面に傷が付きやすくなる場合がある。
3つ目の条件は積層体の総厚みで、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上が特に好ましい。低カール性の観点からは積層体の総厚みは厚い方がより好ましいが、300μmを超える場合には、後加工時のハンドリング性が困難となる場合がある。一方で、前記表面層全体の厚みは特に限定はないが、表面層は5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。
前述の硬度と耐摩耗性を両立するのに好ましい押し込み弾性率と凝着摩耗パラメータを達成するには、表面層は粒子を含み、さらに厚み方向の粒子の充填率分布を特定の範囲にすることが好ましい。具体的には、表面層の厚みを100%としたとき表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率を0体積%以上20体積%以下、かつ表面層の支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率を20体積%以上50体積%以下にすることがより好ましい。
表面層に含まれる粒子径は、本発明の目的の1つが透明性、もしくは光沢感が求められる支持基材(例えば、プラスチックフィルム)への耐擦傷性の付与であるため、それが得られる範囲であれば、特に限定されず、適宜選択できるが、一般的に、数10nmから200nmの範囲の粒子を用いることが好ましい。粒子の種類については、後述する。
ここで粒子充填率とは、単位体積あたりに占める粒子の割合を指すもので、透過電子顕微鏡による表面層の断面観察像の画像解析から求める。粒子充填率の算出方法については後述する。
表面層の厚みを100%としたとき表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が20体積%を超える場合、表面層の降伏点ひずみが小さくなるため、凝着磨耗パラメータが大きくなり、反復擦過時に歪みが残りやすくなり、耐摩耗性が低下する場合がある。表面層の厚みを100%としたとき表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲では、粒子を含んでも、含まなくてもよいが、表面の易滑性による効果が期待できない場合には、粒子を含む方が好ましい。
表面層の厚みを100%としたとき支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が20体積%に満たない場合には、表面層の支持基材に近い部分で弾性率の高い粒子の割合が減るため、押し込み弾性率が低下し、結果として硬度が低下する場合がある。また、塗膜の硬化収縮による内部応力が強くなるため、積層体のカールが大きくなり、貼合などの後加工性に支障が生じる場合がある。一方で、粒子充填率が50体積%を超える場合には表面層の靭性が低下や表面層と基材界面の密着性が低下し、フィルムの後工程にて裁断、打ち抜きなどを行った際に塗膜の割れや剥がれが発生する場合がある。
硬度と耐摩耗性を両立するのに好ましい前述の押し込み弾性率、凝着摩耗パラメータを達成するには、前述の表面層の厚み方向の粒子の充填率分布を特定の範囲にすることに加えて、表面層の粒子の存在状態を特定の形態にすることが好ましい。具体的には、表面層の厚みを100%としたとき表面層の表面側、即ち表面層の表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲において、粒子の存在状態が、図4のように粒子が連なった連鎖状に粒子が存在していることが好ましい。これにより、粒子の割合が少なくても応力を伝播することが可能になり、耐摩耗性が向上する。このような連鎖状の粒子の存在状態は、画像解析法による粒子径解析の規格である、JIS 8827−1(2008)に基づき求められた最大フェレー径の「長さ平均粒子径」を好ましくは50nm以上200nm以下、より好ましくは75nm以上150nm以下にすることにより達成される。
ここで、最大フェレー径とは、1つの粒子について2本の平行線で挟まれた粒子図形の最大の距離を示すもので、表面層の透過電子顕微鏡像から求められる。最大フェレー径は、前述の粒子充填率の範囲内では、連鎖状に複数個の粒子が連なった粒子群を、一つの粒子として認識するため、塗膜中で連鎖状構造が発達すると、個々の粒子径よりも最大フェレー径が大きくなり、適正な連鎖構造をとると前述の好ましい範囲になる。一方で、最大フェレー径が好ましい範囲の200nmより大きくなると、粒子が表面層内で連鎖構造ではなく凝集状態になる。凝集状態になると表面層内で応力の伝播が困難になり、耐摩耗性が低下する場合がある。
前述の表面層の表面側、即ち表面層の厚みを100%としたとき表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲の粒子の充填状態を連鎖状にする方法として、特定の粒子(粒子A)を用いることが好ましい。表面層が含む粒子は、すべてこの粒子Aであってもよいし、表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%よりも支持基材側の領域で異なる粒子を用いてもよいが、前述の表面層の物性を達成するためには、表面側と支持基材側で異なる種類の粒子を用いる方が好ましい。
粒子Aは、粒子自身の硬さ、形状、分散性の観点から、αアルミナ、γアルミナ、擬ベーマイトおよびベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つの粒子であることが好ましい。αアルミナ、γアルミナは酸化アルミニウム(Al)の結晶構造違いである。ベーマイトはアルミナの1水和物であり、擬ベーマイトとは、ベーマイトとアルミナの中間組成、即ちアルミナの0水和物以上1水和物以下の中間組成を指し示すものである。
さらに粒子Aは、表面に反応性部位が導入されていることが好ましい。これは表面層を形成するバインダー成分、および溶媒との相互作用により、連鎖構造を形成するためである。例えば、樹脂、樹脂前駆体としてアクリル系モノマー、オリゴマーを使用する場合には、表面修飾としてはアルケニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基などが必要最低限、粒子の表面に導入されていることが好ましい。
表面層は、前述のように表面側と支持基材側で異なる粒子充填率の塗膜を形成することが好ましい。その方法は特に限定されないが、粒子濃度の異なる2種類以上の塗料組成物を用い、以下の2つの方法で支持基材上に塗布、乾燥、硬化させる方法が好ましい。ここで2種類の塗料組成物を用いる場合に、表面側を形成するのに適した塗料組成物を塗料組成物A、支持基材側を形成するのに適した塗料組成物を塗料組成物Bとする。
1つの方法は2種類以上の塗料組成物を支持基材上に「逐次に」塗布、乾燥、硬化することにより形成する方法である。ここで「逐次に塗布する」とは、1種類の塗料組成物を塗布−乾燥−必要に応じて硬化した後、次いで異なる種類の塗料組成物を、塗布−乾燥−硬化することにより表面層を形成することを意図している。
前述の塗料組成物を逐次に塗布する場合には、塗布方法は、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい
もう1つの製造方法としては、2種類以上の塗料組成物を支持基材上に「同時に」塗布、乾燥、硬化することにより形成する方法である。塗料組成物の種類の数は2種類以上であれば特に制約はない。ここで「同時に塗布する」とは塗布工程において、支持基材上に2種類以上の液膜を形成後、乾燥、硬化することを意図しており、これを満たせば手法については特に限定されないが、代表的なものとして、2種類以上の塗料組成物を塗布前の状態で液膜を順に積層後塗布する「多層スライドダイコート」(図1)や、基材上に塗布と同時に積層する「多層スロットダイコート」(図2)、支持基材上に1層の液膜を形成後、未乾燥の状態でもう1層を積層させる「ウェット−オンーウェットコート」(図3)等がある。これらの塗布方式および塗料組成物の詳細については後述する。以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[積層体、および表面層]
本発明における「表面層」とは、支持基材上に形成された層をいい、前記表面層および支持基材を含む一連の層を全て統合したものを「積層体」と呼ぶ。すなわち、支持基材上に層が1層のみ形成されている場合は、当該1層が「表面層」となる。また、例えば支持基材上に層が2層以上形成されている場合は、支持基材を除いた当該2層以上の層すべてを1つの「表面層」というものとする。
ここで「層」とは、積層体の表面側から厚み方向に向かって、厚み方向に隣接する部位と境界面を有することにより区別でき、かつ有限の厚みを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体の断面を電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、不連続な境界面の有無により区別されるものを指す。本発明の積層体は、前述の物性を示す表面層を有していれば平面状態、または成型された後の3次元形状のいずれであってもよい。
前記積層体は本発明の課題としている耐擦傷性、特に反復擦過耐性のほかに、成型性、防汚性、反射防止性、帯電防止性、防汚性、導電性、熱線反射性、近赤外線吸収性、電磁波遮蔽性、易接着等の他の機能を有する層を有してもよく、これらの機能が前記表面層に付与されていてもよい。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、少なくとも後述する塗料組成物Aと塗料組成物Bを、逐次または同時に前述の支持基材上に塗布−乾燥−硬化することにより形成する製造方法を用いることが好ましい。塗布方法については前述のとおりで、逐次塗布、同時塗布により適宜、適切な塗布方式を選択できる。
次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から溶媒を除去することに加え、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、塗料組成物Aおよび塗料組成物Bを用い、熱で硬化する場合には、室温から200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、80℃以上200℃以下がより好ましく、前述の平滑な表面層を形成するためには80℃以上100℃以下であることが特に好ましい。
また、活性エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、最表面については酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となる場合がある。一方、表面層の内部を形成する層においては、反対に酸素阻害を促すことで、次の塗工層が浸透しやすくなり、前述の中間的な物性を有する混在層を形成しやすくなるため好ましい。
また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が好ましくは100〜3,000mW/cm、より好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが良く、紫外線の積算光量が好ましくは100〜3,000mJ/cm、より好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが良い。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
[支持基材]
本発明の積層体は、前記表面層を設けるため支持基材を必要とする。支持基材に特に限定はなく、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、金属シート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
プラスチックフィルム、プラスチックシートを支持基材に使用する場合の例としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロオレフィン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが挙げられる。これらの中でも特にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロオレフィンが好ましい。
支持基材の表面には、前記表面層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましい。

[塗料組成物A、塗料組成物B]
本発明の積層体は、支持基材上に後述する積層体の製造方法を用いて、塗料組成物を塗布、乾燥、硬化することで、前述の物性を達成可能な構造を持つ表面層を形成することができる。ここで「塗料組成物」とは、溶媒と溶質からなる液体であり、前述の支持基材上に塗布し、溶媒を乾燥工程で揮発、除去、硬化することにより表面層を形成可能な材料を指す。
ここで、塗料組成物の「種類」とは、塗料組成物を構成する溶質、溶媒の種類、量が他とは異なる常温にて液体のものを指す。
この溶質は、樹脂もしくは塗布プロセス内でそれらを形成可能な材料(以降これを前駆体と呼ぶ)基本とし、必要に応じて粒子と重合開始剤、硬化剤、触媒、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤からなる。
本発明の表面層は、本発明の構成により達成するため、2種類以上の塗料組成物(以下塗料組成物A、塗料組成物Bとする)を用い、支持基材上に前述の逐次に塗布、または同時塗布することにより形成することが好ましい。
[樹脂、樹脂前駆体]
塗料組成物A、Bは支持基材上に塗布、乾燥、硬化することにより、弾性率が高く、表面硬度が高い材料を形成可能な液体で、表面層の支持基材側を形成するのに適した樹脂、または樹脂前駆体を含む。
弾性率が高く、表面硬度が高い樹脂、または樹脂前駆体としては、具体的には多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコーン系ポリマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アクリル系ポリマーがより好ましい。
多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社:(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社:(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社:(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社:(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社:(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社:(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社:(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
アクリル系ポリマーとしては、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコーン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。また、各種ポリマーは、不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000〜200,000で、ガラス転移温度が20〜200℃のものを用いることができる。
[粒子材料、粒子成分]
本発明の積層体の表面層は粒子成分を含むことが好ましく、その製造に用いる塗料組成物A、塗料組成物Bは粒子材料を含むことが好ましい。ここで、本発明にて用いられる塗料組成物中に存在する粒子を「粒子材料」、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記表面層に存在する粒子を「粒子成分」という。
粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐久性の観点から無機粒子が好ましい。
無機粒子の種類数としては、1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、1種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZnおよびOのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
また、本発明の表面層を形成するのに適した塗料組成物中に含まれる粒子材料は、塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理において、熱や電離放射線などによりその表面状態を変化させた形で、前記表面層に含まれることが好ましい。
無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)(αアルミナ、γアルミナ等)、ベーマイト(AlOOH)、擬ベーマイト(Al−AlOOH)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。
表面層の表面側を形成するのに用いられる塗料組成物Aは、適正な弾性率を有し、かつ表面層の表面側にて、粒子同士で連鎖構造を作ることが好ましく、αアルミナ、γアルミナ、擬ベーマイトおよびベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つの粒子が好ましい。αアルミナ、γアルミナは酸化アルミニウム(Al)の結晶構造違いである。ベーマイトはアルミナの1水和物であり、擬ベーマイトとは、ベーマイトとアルミナの中間組成、即ちアルミナの0水和物以上1水和物以下の中間組成を指し示すものである。
塗料組成物Bに好適に用いられる粒子材料には前述の様な制限はないが、後述する表面処理の設計が容易な点から、シリカ(SiO)を用いることが好ましい。
[溶媒]
前記塗料組成物A、塗料組成物Bは溶媒を含むことが好ましい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。ここで「溶媒」とは、塗布後の乾燥工程にて、ほぼ全量を蒸発させ、塗膜から除去することが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2−プロパノールと、n−プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
[添加剤]
前記塗料組成物Aおよび前記塗料組成物Bは、重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。重合開始剤および触媒は、表面層の硬化を促進するために用いられる。重合開始剤としては、塗料組成物に含まれる成分をアニオン、カチオン、ラジカル重合反応等による重合、縮合または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
重合開始剤、硬化剤および触媒は種々のものを使用できる。また、重合開始剤、硬化剤および触媒はそれぞれ単独で用いてもよく、複数の重合開始剤、硬化剤および触媒を同時に用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。
光重合開始剤としては、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましい。アルキルフェノン系化合物の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2−フェニル−2−オキソ酢酸)オキシビスエチレン、およびこれらの材料を高分子量化したものなどが挙げられる。
なお、熱重合開始剤や光重合開始剤による重合反応の進行状態は、加える熱量もしくは光量で制御可能であり、逐次塗布により表面層を形成する場合には、重合の進行を不完全な状態で次の層を塗布することにより、明確な界面を形成せずに、中間的な物性を有する混在層を作ることが可能である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、表面層を形成するために用いる塗料組成物A、塗料組成物Bにレベリング剤、易滑性添加剤、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を加えてもよい。特に、逐次塗布にて表面層を形成する場合には塗料組成部Bにレベリング剤を、塗料組成物Aには易滑性添加剤と界面活性剤を、同時塗布にて表面層を形成する場合には、塗料組成物Aにレベリング剤と易滑性添加材、界面活性剤を含むことが好ましい。
レベリング剤の例としては、アクリル共重合体またはシリコーン系が用いられる。易滑性添加剤としては、シリコーン系、フッ素系があるが、耐久性の面からフッ素系が好ましく、特に樹脂前駆体と反応可能な反応性部位を有する材料が好ましい。界面活性剤は各種材料が使用可能であるが、有機溶媒系で十分な効果を得るにはフッ素系材料が好ましい。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シュウ酸アニリド系、トリアジン系およびヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が挙げられる。帯電防止剤の例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩、π電子共役系、オニウム塩、スルホン酸系添加剤が挙げられる。
[用途例]
本発明の積層体は、優れた表面硬度と耐擦傷性を有するため、面を有する部材、例えばディスプレイの他、電化製品や自動車の内装部材、建築部材等に幅広く用いることができる。
一例を挙げると、メガネ・サングラス、化粧箱、食品容器などのプラスチック成型品、スマートフォンの筐体、タッチパネル、キーボード、テレビ・エアコンのリモコンなどの家電製品、建築物、ダッシュボード、カーナビ・タッチパネル、ルームミラーなどの車両内装品、および種々の印刷物のそれぞれの表面などを保護する目的で好適に用いることができる。
また、本発明の積層体は密着性にも優れているため、表面層に粘着剤付きフィルム(粘着フィルム)を貼り付けた粘着フィルム付き積層体としても用いることができる。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、以下では実施例6、9、12を参考例6、9、12と読み替えるものとする。
<積層体の製造方法>
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている厚み188μm、100μmおよび50μmの“ルミラー”(登録商標)U40(東レ株式会社製、以下基材フィルムA)を用いた。なお各実施例・比較例に対応する上記積層体の作成方法、使用する塗料組成物、各層の膜厚を表2に記載した。
「逐次塗布」
支持基材上に塗料組成物A、Bをワイヤーバー、アプリケーター等を用い、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるように番手を調整して塗布し、次いで下記の条件で乾燥工程、硬化工程を行った。これらの一連の塗布、乾燥、硬化を順次繰り返すことにより、支持基材の一方の面に、表面層をそれぞれ形成した。
「同時塗布」
前述の逐次塗布と同様に支持基材上に塗料組成物Aを塗布、乾燥、硬化したのち、支持基材の他方の面に、塗料組成物Bを「多層スロットダイコート」(図2)を用い、乾燥後の表面層の厚みが指定の膜厚になるように塗出量を調整して塗布し、次いで下記の条件で乾燥工程、硬化工程を行うことにより、支持基材上の一方の面に表面層をそれぞれ形成した。
「逐次塗布の最下層および支持基材から2層目の乾燥工程」
送風温湿度 : 温度:100℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側・反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 2分間
「逐次塗布の最下層および支持基材から2層目の硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 大気雰囲気。
「逐次塗布の最表面および同時塗布の乾燥工程」
送風温湿度 : 温度:80℃
風速 : 塗布面側:5m/秒、反塗布面側:5m/秒
風向 : 塗布面側:基材の面に対して平行、反塗布面側:基材の面に対して垂直
滞留時間 : 3分間
「逐次塗布の最表面および同時塗布の硬化工程」
積算光量 : 120mJ/cm
酸素濃度 : 200ppm以下
以上の方法により実施例1〜13、比較例1〜3の積層体を作成した。各実施例・比較例に対応する上記積層体の作成方法、使用する塗料組成物、各層の膜厚を表2に記載した。
<塗料組成物の製造方法>
<樹脂、樹脂前駆体>
樹脂、樹脂前駆体としてそれぞれ下記の材料を使用した。樹脂、樹脂前駆体と、その他材料の組み合わせについては表1に記載する。
樹脂、樹脂前駆体1:ウレタンアクリレート(“ニューフロンティアMF−101”第一工業製薬株式会社製)
樹脂、樹脂前駆体2:ウレタンアクリレート(“EBECRYL 8254”ダイセルオルネクス株式会社製)
樹脂、樹脂前駆体3:ポリマー型アクリレート(“ユニディック V−6850”DIC株式会社製)。
<添加剤>
添加剤としてそれぞれ下記の材料を使用した。フッ素添加剤と、その他材料の組み合わせについては表1に記載する。
添加剤1:防汚性添加剤(MEGAFACE“RS−75” DIC株式会社)。
添加剤2:光ラジカル重合開始剤 (“イルガキュア”(登録商標)184 BASFジャパン株式会社)。
<粒子材料>
粒子材料としてそれぞれ下記の材料を使用した。粒子材料とその他材料の組み合わせについては表1に記載する。
粒子材料1:アルミナ分散物(“NANOBYK−3602”ビックケミー・ジャパン株式会社製)
粒子材料2:ベーマイト粒子分散物(”BYK−LPX21192“ビックケミー・ジャパン株式会社製)
粒子材料3:シリカ粒子分散物(“MEK−AC−2140Z” 日産化学工業株式会社)。
<塗料組成物A、塗料組成物Bの調合>
上記の材料を表1に記載の組み合わせで、下記の比率で混合し、塗料組成物A(A1〜A9)、塗料組成物B(B1〜B5)を得た。
[塗料組成物A1]
・樹脂、樹脂前駆体1 30.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 9.1質量部
・メチルエチルケトン 56.7質量部。
[塗料組成物A2]
・樹脂、樹脂前駆体2 30.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 9.1質量部
・メチルエチルケトン 56.7質量部。
[塗料組成物A3]
・樹脂、樹脂前駆体1 38.8質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・メチルエチルケトン 57.0質量部。
[塗料組成物A4]
・樹脂、樹脂前駆体2 30.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 9.1質量部
・メチルエチルケトン 59.7質量部。
[塗料組成物A5]
・樹脂、樹脂前駆体1 24.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 15.3質量部
・メチルエチルケトン 56.5質量部。
[塗料組成物A6]
・樹脂、樹脂前駆体1 20.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 19.4質量部
・メチルエチルケトン 56.7質量部。
[塗料組成物A7]
・樹脂、樹脂前駆体1 36.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料2 2.9質量部
・メチルエチルケトン 56.9質量部。
[塗料組成物A8]
・樹脂、樹脂前駆体3 60.0質量部
・添加剤1 3.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料1 9.1質量部
・メチルエチルケトン 26.7質量部。
[塗料組成物A9]
・樹脂、樹脂前駆体2 30.0質量部
・添加剤2 1.2質量部
・粒子材料3 19.6質量部
・メチルエチルケトン 56.7質量部。
[塗料組成物B1]
・樹脂、樹脂前駆体1 42.0質量部
・添加剤2 1.8質量部
・粒子材料3 40.0質量部
・メチルエチルケトン 16.2質量部。
[塗料組成物B2]
・樹脂、樹脂前駆体1 36.0質量部
・添加剤2 1.8質量部
・粒子材料3 53.3質量部
・メチルエチルケトン 8.9質量部。
[塗料組成物B3]
・樹脂、樹脂前駆体1 48.0質量部
・添加剤2 1.8質量部
・粒子材料3 26.7質量部
・メチルエチルケトン 23.5質量部。
[塗料組成物B4]
・樹脂、樹脂前駆体1 33.0質量部
・添加剤2 1.8質量部
・粒子材料3 60.0質量部
・メチルエチルケトン 5.2質量部。
[塗料組成物B5]
・樹脂、樹脂前駆体1 54.0質量部
・添加剤2 1.8質量部
・粒子材料3 13.3質量部
・メチルエチルケトン 30.9質量部。
<積層体の評価>
作成した積層体について、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表3〜4に示す。特に断らない場合を除き、測定は各実施例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて5回測定を行い、その平均値を用いた。
[ナノインデンターによる押し込み弾性率の測定]
測定には(株)エリオニクス製のナノインデンター「ENT−2100」を用いた。積層体の測定面とは反対側に、東亞合成株式会社製「“アロンアルファ”(登録商標) プロ用耐衝撃」を1滴塗布し、瞬間接着剤を介して積層体を専用のサンプル固定台に固定して、表面層表面を測定面として測定を行った。測定には稜間角115°の三角錐ダイヤモンド圧子(Berkovich圧子)を用いた。測定データは「ENT−2100」の専用解析ソフト(version 6.18)により処理され、押し込み弾性率EaIT(MPa)を測定した。
測定モード:負荷−除荷試験
最大荷重:100mN
最大荷重に達した時の保持時間:1秒
荷重速度、除荷速度:10mN/sec。
[マイクロスクラッチ試験による破断の臨界荷重の測定]
始めに測定原理を簡単に説明する。マイクロスクラッチ試験では、一定の曲率半径を持った圧子をサンプルに接触させる。この圧子がスクラッチ方向に対して垂直かつサンプル面に対して水平に、一定の周波数で励振しながらスクラッチする。このときサンプル面に対して垂直方向に徐々に荷重を印加していくと、圧子とサンプルとの間に生じる摩擦力により、励振に遅れが生じる。この遅れにより、圧子と連動する磁石と、装置内部のコイルとの位置関係に変化が生じ、圧子とサンプルとの間に生じる摩擦力に相当する電気信号をセンサー出力として検出することができる。実際の測定では、横軸の測定距離に対して、以下の3つのグラフが得られる。
G1:測定距離に対して直線的に増加する印加荷重のグラフ
G2:センサー出力のグラフ
G3:ノイズ成分低減のため、センサー出力をフーリエ変換し、周波数成分に分解後、偶数次成分のみ累積して、測定距離に対して出力したグラフ(フーリエ変換解析グラフ)
具体的な操作方法を以下に示す。
まず作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、表面層の最表面に対して、マイクロスクラッチテスタ(株式会社RHESCA製Nano−Layer Scratch Tester CSR−2000)を用い、表面層の最表面側から測定した破断の臨界荷重を測定した。
次いで2次元計測ソフトウェアArtMeasure(株式会社アートレイ製 ver1.3.8.2)を起動し、校正用ゲージを用いて、試料観察画面のスケール校正を行った。次に装置標準の測定解析用ソフトウェアCSR−2000 Data Analyzing System(ver3.6.0)を起動し、圧子針(スタイラス)を取り付け、サンプルをステージ中心に吸引固定した。針洗浄液(株式会社ナガオカトレーディング製ハイクリーン801)をスタイラスに塗布して洗浄後、下記の条件にて測定を実施した。測定により得られたG3中のピークトップの位置におけるG1の印加荷重を破断の臨界荷重とした。
ここでArtMeasureにおいて、破断開始点と終了点の2点間の距離、すなわち破断痕の長さ(L1)を測定し、G3中のピークトップの位置と測定終了点との間の距離(L2)とL1の妥当性を以下の式2にて検証した。
|(L1−L2)/L1|≦0.05 ・・・ (式2)
式2を満たす場合には、上述したG3中のピークトップの位置におけるG1の印加荷重を破断の臨界荷重とした。一方、式2を満たさない場合には、測定終了印加荷重を100mNずつ下げ、式2を満たすまで前述の操作を繰り返し、はじめて式2を満たす印加荷重におけるG3中のピークトップの位置におけるG1の印加荷重を破断の臨界荷重とした。以上の手順を5回繰り返し、その平均値を破断の臨界荷重F[mN]として採用した。
測定装置 : 株式会社RHESCA製 Nano−Layer Scratch Tester CSR−2000
スタイラス : 株式会社RHESCA製 交換針(材質:ダイヤモンド、バネ定数:100(g/mm)、スタイラス径:5(μm))
測定雰囲気 : 23℃・大気中
スクラッチ速度 : 10(μm/s)
励振レベル : 100(μm)
励振周波数 : 45(Hz)
測定終了時間 : 60(sec)
測定終了印加荷重: 1,000(mN)。
[凝着摩耗パラメータεの算出]
前述の測定から得られた押し込み弾性率EaIT[MPa=N/mm]、破断の臨界荷重F[mN]、および圧子の曲率(スタイラス径)5[μm]=0.005[mm]を用いて、前述の(式1)にしたがって凝着摩耗パラメータεを算出した。
[積層体の総厚み]
積層体をカッター刃で切り出し、電顕用エポキシ樹脂(日新EM社製Quetol812)で包埋し、60℃のオーブン中で48時間かけて該エポキシ樹脂を硬化させた後、ウルトラミクロトーム(ライカ社製Ultracut S)にて、厚み約100nmの超薄切片を作製した。
作製した超薄断面切片を応研商事社製100メッシュのCuグリッドに搭載して、日立製透過型電子顕微鏡H−7100FAを使用し、加速電圧100kV、倍率200倍にて観察した。得られた画像から表面層および支持基材の厚みを確認し、その合計厚みを積層体の総厚みとした。
[粒子充填率の算出]
本発明における粒子充填率は、以下の方法で決定した。積層体の断面を、上記と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察し、倍率700倍で、表面層全体が写る範囲で撮影した。次いで、表面層の厚みを100%とし、得られた画像の表面層の最表面から表面層の厚みの10%の範囲内および支持基材側表面から表面層の厚みの10%の範囲内を、倍率2万倍でランダムにそれぞれ5視野撮影し、得られた画像を処理ソフトEasyAccess Ver6.7.1.23 にて、画像をグレースケールに変換し、ホワイトバランスを最明部と最暗部が8bitのトーンカーブに収まるように調整、さらに粒子形状が明確に見分けられるようにコントラストを調節した。次いでソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))を用いて、粒子成分の界面を境に2値化を行い、Analize Particles(粒子解析)機能により、表面層の最表面から表面層の厚みの10%もしくは支持基材側表面から表面層の厚みの10%の範囲内での粒子部分の占める面積比を算出した。そして5つの画像から得られた値の平均値を粒子充填率とした。
[最大フェレー径の長さ平均粒子径]
本発明における最大フェレー径の長さ平均粒子径は、以下の方法で決定した。積層体の断面を、上記と同様に透過型電子顕微鏡を用いて観察し、倍率700倍で、表面層全体が写る範囲で撮影した。次いで、表面層の厚みを100%とし、得られた画像の表面層の最表面から表面層の厚みの10%の範囲内を、倍率2万倍でランダムに5視野撮影し、得られた画像をJIS 8827−1(2008)に記載の静的画像解析法に従い、画像中のすべての粒子それぞれについて最大フェレー径を算出した。得られた個々の粒子における最大フェレー径より、1画像における「長さ平均粒子径」を算出した。そして5つの画像から得られた値の平均値を最大フェレー径の「長さ平均粒子径」とした。
[表面層の表面硬度]
実施例1〜13、比較例1〜3で作製した積層体を温度20℃で12時間放置した後、同環境にてJIS K 5600−5−4(1999)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に従い、表面層の表面硬度を測定した。
5点: 表面硬度5H以上
4点: 表面硬度4H
3点: 表面硬度3H
2点: 表面硬度2H
1点: 表面硬度H以下。
[表面層の耐摩耗性]
作成した積層体を常態下(23℃湿度50%)で12時間放置した後、10cm×10cmの試験片を切り出し、表面層を有する面に対して、以下の条件でJIS K 7204(1999)に準拠した磨耗試験を実施した。
装置:東洋精機製作所製 ロータリーアブレージョンテスター
荷重:1,000g重
磨耗回転数:60rpm 10回
磨耗輪:CS−10
5点:0本
4点:1本以上 5本未満
3点:5本以上 10本未満
2点:10本以上 20本未満
1点:20本以上。
[表面層の密着性]
作成した積層体を常態下(24℃、相対湿度65%)で12時間放置した後、表面層を有する面に対して1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製“セロテープ”(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、表面層の残存した個数により5段階評価(5:96個〜100個、4:81個〜95個、3:71個〜80個、2:61個〜70個、1:0個〜60個)した。
Figure 0006878833
Figure 0006878833
Figure 0006878833
Figure 0006878833
1 :多層スライドダイ
2、9 :最も上流側のスロット
3、 :上流側から2番目のスロット
4 :上流側から3番目のスロット
5、10 :最も下流側のスロット
6、11、15:支持基材の搬送方向の上流側
7、12、16:支持基材の搬送方向の下流側
8 :多層スロットダイ
13、14 :単層スロットダイ
17 :粒子A
18 :粒子の連鎖構造
19 :負荷工程
20 :除荷工程

Claims (4)

  1. 支持基材上の少なくとも一方の面に表面層を有する積層体であって、表面層の厚みを100%としたとき、前記表面層の支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が30体積%以上であり、以下の条件を満たすことを特徴とする積層体。
    条件1: 表面層表面の押し込み弾性率EaITが、4,000MPa以上、8,000MPa以下
    条件2: 式1で表される表面層表面の凝着摩耗パラメータεが15以下
    (式1) ε=EaIT×(πr/F)
    ε:凝着摩耗パラメータ
    EaIT[MPa=N/mm]:表面層表面の押し込み弾性率
    F[mN]:破断の臨界荷重
    r[mm]:圧子の曲率
    条件3: 積層体の総厚みが10μm以上
  2. 表面層の厚みを100%としたとき前記表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が体積%以上20体積%以下、かつ前記表面層の支持基材側表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲における粒子充填率が30体積%以上50体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
  3. 表面層の厚みを100%としたとき前記表面層表面から厚み方向に表面層の厚みの10%の厚み範囲に含まれる粒子(以下粒子Aとする)の、JIS 8827−1(2008)に基づく最大フェレー径の長さ平均粒子径が50nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記粒子Aがαアルミナ、γアルミナ、擬ベーマイトおよびベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも1つの粒子であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
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