WO2014109178A1 - 成型材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、光沢感または透明性と実用上必要な耐擦傷性、および成型性を維持しつつ指紋が視認されにくい成型材料を提供することである。 【解決手段】 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記表面層のJIS Z8741(1997年)で規定する60°鏡面光沢度が60%以上で、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であって、前記表面層の破壊伸度が15%以上であり、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張したもの(以下、成型体)の表面層の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であることを特徴とする成型材料。

Description

成型材料
 本発明は、耐指紋性および成型性に優れた成型材料に関する。
 物の表面に人の指が触れることによって指紋(指紋とは、指先の皮膚にある汗腺の開口部が隆起した線(隆線)によりできる紋様、及び前記紋様が物体の表面に付着した跡をいう)が付着すると、指紋が認識されて見た目が汚れたような不快な印象を与えるという問題がある。例えば、携帯電話の筐体を掴むことで指紋が付着し、指紋が目立って清潔感が損なわれるというようなことである。特に最近では指で操作する電子機器が増加しており、例えば、スマートフォン・タッチパネル、キーボード、テレビ・エアコンのリモコン等である。
 更に、画像表示機器の画像表示部、警告灯などの信号表示部、レンズ・鏡の表面等に指紋が付着すると、表示画像、表示信号、反射像における不鮮明感や、指紋が付着している箇所と付着していない箇所の反射率の違いなどによって視認性が悪化するという問題がある。例えば、スマートフォン・テレビ・カーナビゲーション・パソコンの液晶画面、案内・警告・避難誘導のための信号表示灯、メガネ・サングラス・望遠鏡・カメラのレンズ、時計の文字盤の透明カバー、車のバックミラー・ルームミラー等である。これらの機器に一旦指紋が付着すると指紋によって対象物の視認性が低下する。
 また、スマートフォン、テレビ、パソコンのモニターなどの各種ディスプレイでは画像のコントラストを高く見せるため、表面に光沢感のある反射防止部材(アンチリフレクション)が用いられるが、このような反射防止部材は指で触ると指紋が視認されやすいという問題があり、指紋が視認されにくい、または拭き取りやすいことが求められている。(以降、物品表面への指紋が視認されにくい、または拭き取りやすい特性を「耐指紋性」と呼ぶ)。
 さらに近年、各種家電製品や自動車内装部品などにおいて意匠性を高めるため、高光沢、高透明の筐体が求められている。これらの筐体の製作方法には、従来塗装技術が用いられていたが、近年は環境負荷の観点からIMD、IMLなどの加飾成型フィルムを使用した成型方法を用いる場合が増えつつある。そのため前記成型用途に使用されるこれらのフィルムには、成型性の付与のために高い伸度が、製品の耐久性のために耐擦傷性が、意匠性のために高光沢、高透明性に加えて、成型後の製品における耐指紋性が求められている。
 このような問題に対して、指紋の視認されにくい部材として特許文献1では「基材の一方の面上に、光の波長550nmでの屈折率が1.75未満である低屈折率層、または、光の波長550nmでの屈折率が1.75以上である高屈折率層、または、その両方、を少なくとも含む薄膜層を形成してなる光学薄膜フィルムであって、前記薄膜層の面上に、乾燥膜厚が20μmであるオレイン酸を塗布したときに、前記オレイン酸を塗布した前記光学薄膜フィルムと、前記オレイン酸を塗布していない前記光学薄膜フィルムと、のD65光源、5°入射、2°視野、正反射光におけるCIELAB(JIS Z8729に準拠)の色差ΔE ab(={(ΔL+(Δa+(Δb1/2)が5以下であることを特徴とする光学薄膜フィルム。」が提案されている。
 また、指紋を視認されにくくする方法として特許文献2では「ガラス基体の表面の少なくとも一部分がa.シリカ下地層、及びb.ペルフルオロアルキルアルキルシランで処理されていることを特徴とする撥水撥油性被膜を有するガラス基体からなる物品。」が、特許文献3には「炭素数6以上の脂肪酸からなる脂肪酸エステル構造と、ポリアルキレンオキサイド鎖と、アクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)とは異なる活性エネルギー線硬化性化合物(B)と、を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。」が提案されている。
 さらに、樹脂の伸度を向上させる方法として特許文献4では「多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび/または多官能アクリレートオリゴマー(a)、実質的に不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000~200,000であり、ガラス転移温度が20~200℃であるアクリルポリマー(b)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。」が、特許文献5では「JIS K5400(1999年)により測定した時の硬化塗膜の伸び率が80%以上となる紫外線硬化型塗料(a)をフィルム基材(C)上に塗布し、更に、紫外線硬化型塗料(a)上にJIS K5400の手かき法により測定した時の硬化塗膜の鉛筆引っかき値が4H以上となる紫外線硬化型塗料(b)を塗布した後紫外線照射を行い、紫外線硬化型塗料(a)が硬化した硬化塗膜(B)を形成させることを特徴とするハードコートフィルムの作成方法。」が提案されている。
特開2009-122416号公報 特開平10-310455号公報 特開2010-100804号公報 特開2011-84687号公報 特開2005-305383号公報
 本発明が解決しようとする課題は、光沢感、または透明性と実用上必要な耐擦傷性、および成型性を維持しつつ耐指紋性を有する成型材料を提供することにある。上記課題に対し前述の公知技術は次の状況にある。
 まず指紋の視認性に関して、特許文献1ではオレイン酸塗布前後の色差が一定値以下になる光学薄膜フィルムを提案しているが、本発明者らが様々な条件にて指紋の視認性を確認したところ、特許文献1の特性のみでは指紋を目立たなくする効果が不十分である。
 また、特許文献2の方法は、基体表面にアンダーコート層を設け、その上に撥水撥油性被膜を設ける発明であり、特許文献3の方法は、硬化塗膜の屈折率を指紋の成分の屈折率に近似させ、付着した指紋の高さをできるだけ低くすることにより周囲の硬化塗膜との境界線を目立たなくすることを目指した発明である。しかしながら、本発明者ら様々な条件にて指紋の視認性を確認したところ、前者では光沢感が著しく低下し、後者では皮脂の多い指紋で効果が不十分であり、いずれも課題を解決することができない。
 さらに、特許文献4、特許文献5の技術は、成型性の指標である伸度、製品の耐久性、耐擦傷性、意匠性のために高光沢、高透明性はあるが、耐指紋性を確認したところ、不十分であった。
 上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記表面層のJIS Z8741(1997年)で規定する60°鏡面光沢度が60%以上で、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であって、前記表面層の破壊伸度が15%以上であり、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張したもの(以下、成型体)の表面層の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であることを特徴とする成型材料。
2) 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層のオレイン酸の後退接触角θが60°以上であることを特徴とする1)に記載の成型材料。
3) 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層のオレイン酸の前進接触角θ、後退接触角θが下記の式(1)を満たす1)または2)に記載の成型材料。
(θa-θr)≦ 15° ・・・   式(1)
4) 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層に、下記の条件下で模擬指紋を付着した前後のJIS Z8730(2009年)およびJIS Z8722(2009年)で規定する正反射光込みの色差ΔE ab(di:8°)Sb10W10が0.4以下、かつ、正反射光除去の色差ΔE ab(de:8°)Sb10W10が4以下であることを特徴とする1)から3)のいずれかに記載の成型材料。
[模擬指紋付着条件]オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaで付着させたもの。
5) 支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層に、下記の条件下で模擬指紋付着および模擬指紋拭き取り試験を行い、JIS Z8730(2009年)およびJIS Z8722(2009年)に従って求めた模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光込みの色差ΔE ab(di:8°)Sb10W10(以降ΔESCI-2とする)および模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光除去の色差ΔE ab(de:8°)Sb10W10(以降ΔESCE-2とする)が、下記の式(2)を満たすことを特徴とする1)から4)のいずれかに記載の成型材料。
((ΔESCI-2+(ΔESCE-21/2 ≦2.0・・・  式(2)
[模擬指紋付着/模擬指紋拭き取り試験の条件]
模擬指紋付着条件:オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaで付着させたもの。
[模擬指紋拭き取り条件]前記条件で付着した模擬指紋を不織布にて30KPaの圧力、5cm/秒の速度で3回擦る。
 本発明によれば、光沢感、または透明性と実用上必要な耐擦傷性、および成型性を維持しつつ指紋が視認されにくい成型材料を得ることができる。
 本発明の成型材料は、支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料である。
 そして、本発明者らは本課題を達成可能な成型材料として、光沢感と成型性を有する成型材料であって、この成型材料自身、およびこの成型材料が実際に成型された製品を想定し、引っ張り試験機で15%伸張したもの(以下、成型体とする)の表面が特定の高さの微細な凹凸構造を、単位面積当たりに一定量設けることが有効であることを見出した。この理由は明確ではないが、微細な凹凸構造を表面に導入することにより付着した指紋の成分が作る油滴を微細化し、光散乱および吸収を低減することにより視認されにくくなるためと推定している。ここで油滴とは、成型材料および成型体表面に付着した指紋および模擬指紋を構成する液体および固体の微視的な凝集物をいう。
 さらに本発明者らは、指紋の液体成分が成型材料表面に付着するときの液体の挙動に着目し、液体成分が成型材料上でなす後退接触角に前述の好ましい範囲があることを見出した。これは、指紋成分が指と成型材料表面との間でどちらに付きやすいかを考えた結果、指紋成分と指、もしくは成型材料表面のなす後退接触角が支配し、成型材料の表面層の後退接触角が特定の範囲を超えると付着しにくいことを見出したためである。
 加えて、光沢感と耐指紋性、特に指紋拭き取り性を両立するには、成型材料が有する表面層の指紋成分の前進接触角と後退接触角の関係に好ましい範囲があることを見出した。これは、指紋拭き取り性が「指紋成分の拭き取る材料への転移しやすさ」と「表面層上での指紋成分の移動しやすさ」の2つの因子によって支配されることに着目し、前者が後退接触角、後者が前進接触角で表すことができ、これらを統合した前述の式(1)を満たせば、付着した指紋を容易に拭き取ることができることを見出したためである。
 また、上記課題を解決することができる成型材料として、前記成型体の表面に前述の実際の指紋の組成に近い模擬指紋を実際の指紋付着と同様に転写によって付着させ、さらに実際の指紋の認識メカニズムを考慮した測定方法、すなわち模擬指紋付着前後の反射色を正反射光込みと正反射光除去の2つの方法で測定方法、により得られる色差を特定の値以下にすることによって、光沢感と指紋の視認性低減効果の両立を達成した。
 これは、人間の目が指紋を光沢感の変化と色味の変化により認識しているという点に着眼し、以下に述べる色差の両方が、それぞれ一定値以下であれば、指紋を視認しにくくなることを見出したためである。つまり、光沢感の変化は、正反射光にて検出されるため、正反射光込みの色差で評価することができる。一方、色味の変化は、拡散反射光にて検出されるため、正反射光除去の色差で評価することができる。したがって、前記色差の両方が一定値以下であれば、指紋は視認されにくくなる。
 以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
 本発明の成型材料、およびこの成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した状態の表面に微細な凹凸を有する層があることが好ましく、特に、特定の凹凸が単位面積当たりに存在する個数には好ましい範囲がある。具体的には、成型材料、およびこの成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超えるピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であることが好ましく、800個以上1,200個以下であることがより好ましい。ピーク数が25μmあたり500個未満または1,500個より多くなると、前述の指紋を構成する油滴の大きさを微細化する効果が不十分になる場合がある。
 ここで、前記2乗平均粗さ(RMS)とは、平均線から測定曲線までの偏差の2乗を平均した値の平方根で、粗さ曲線から求めるものを指し、ピークとは平均線を基準に測定曲線までの距離が前記2乗平均粗さを超えるものを指す。なお、一般的にはJIS R1683(2007年)に基づく算術平均粗さ(Ra)が表面形状の指標として用いられるが、Raは表面全域の平均的な深さ情報を表す数値であり、本発明の成型材料や成型体が有するような局所的な凹凸構造の形状や数を評価する指標としては不向きである。
 さらに、本発明の成型材料の表面層の破壊伸度は15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上が特に好ましい。ここで、表面層の破壊伸度の測定方法の詳細については後述するが、引っ張り試験機にて伸張した際に、目視にて観察されるクラックが生じない限界の伸度を指す。破壊伸度が15%未満では、成型材料を一般的な成型条件にて成型した場合に、透明性、光沢感、触感などの外観品位や耐久性が低下し好ましくない場合がある。破壊伸度の上限については、大きいほど好ましいが、現時点の技術では耐擦傷性と耐指紋性を両立できる材料としては、現実的には50%程度が上限である。
 本発明の成型材料は支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記表面層のJIS Z8741(1997年)で規定する60°鏡面光沢度が60%以上であることが好ましい。
 また、本発明の成型材料は少なくとも一方の面に表面層を有し、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層が、特定の鏡面光沢度で、かつ模擬指紋を付着、次いで一定条件で拭き取りを行い、模擬指紋付着前の反射色を正反射光込みと正反射光除去の2つの方法で測定してこれを基準とし、模擬指紋の拭き取り後に得られた反射色を同様の方法で測定し、それより求めた色差から得られた計算値を特定の値以下にすることが好ましい。
 ここで示す鏡面光沢度はJIS Z8741(1997年)に規定される60°鏡面光沢度の測定による値で、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が特に好ましい。鏡面光沢度が60%未満では光沢感が不十分と感じられる場合がある。なお、鏡面光沢度の上限は高い分には問題がなく、100%であっても問題はない。
 また、前記成型体の表面層のオレイン酸の後退接触角θが、60°以上であることが好ましく、63°以上がより好ましく、65°以上がさらに好ましく、70°以上が特に好ましい。後退接触角の測定方法と意味については後述する。後退接触角は高い分には問題なく、一方で60°よりも低くなると指紋成分が徐々に付着しやすくなり、耐指紋性が低下する場合がある。なお、オレイン酸の後退接触角θの上限は高い分には問題がないが、現実的な上限は85°程度である。
 さらに、前記成型体の表面層のオレイン酸の前進接触角θ、後退接触角θが下記の式(1)を満たすこと、すなわち、式(1)の左辺が15°以下であることが好ましく、12°以下がより好ましく、10°以下が特に好ましい。式(1)の左辺は、0もしくは正の値であれば小さい分には好ましく、一方で式(1)の左辺が15°よりも大きくなると、指紋の拭き取り性が不十分なため、耐指紋性が低下する場合がある。
 (θa-θr)≦ 15° ・・・   式(1)。
 ここで、前述の後退接触角と前進接触角について説明する。固体表面の液体の接触角は本来熱力学的な量であり、系が定まれば1つの値をとるはずである。しかし実際には液体が固体表面を動く場合には、進行方向の接触角と反対側(後退側)の接触角は同じ値をとらないことが多い。このときの進行方法の接触角を前進接触角、反対側の接触角を後退接触角と呼ぶ。
 前進接触角、後退接触角の値には、いくつかの測定方法があるが、転落角法のように原理的に液滴質量の影響を受ける方法は、避けるべきである。ここでは、拡張-収縮法による測定を説明する。拡張-収縮法による前進接触角の値は、表面層上に液体(オレイン酸)を付与して液滴を拡張するとき、液滴の接触角を連続的に複数回測定し、接触角が一定になったところの平均値で表される。同様にして後退接触角の値は、表面層上に液体(オレイン酸)を付与して液体を徐々に吐出して液滴を拡張した後、その液滴を吸引し液滴が収縮する過程で、液滴の接触角を連続的に複数回測定し、接触角が一定になったところの平均値で表される。具体的に、例えば1~50μLの間で液体を吐出-吸引(液滴を拡張収縮)させる場合において、前進接触角は液摘吐出時の1μLから50μLまでの間、後退接触角は液滴吸引時の50μLから1μLまでの間、1μLの間隔で測定し、液体の拡張、もしくは収縮過程において液滴の接触角がほぼ一定になったところの値を求めることにより決定することができる。拡張収縮法における接触角の測定は、例えば、Drop Master(協和界面科学株式会社製)を用いて測定することができる。
 本発明の成型体の表面層は、模擬指紋の付着前後の正反射光込みの色差と正反射光除去の色差が特定の範囲であることが好ましい。
 模擬指紋付着前後の正反射光込みの色差(ΔE ab(di:8°)Sb10W10)は0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.1以下が特に好ましい。また、模擬指紋付着前後の正反射光除去の色差(ΔE ab(de:8°)Sb10W10)は4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。模擬指紋付着前後の正反射光込みの色差と模擬指紋付着前後の正反射光除去の色差がそれぞれ0.4と4を超えると指紋付着痕が明確に視認されるようになる場合がある。なお、模擬指紋付着前後の正反射光込みの色差および模擬指紋付着前後の正反射光除去の色差は、小さければ小さいほど好ましいが、現実的には、それぞれ0.01が下限値である。
 ここで前記模擬指紋とは、オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaで付着させたものを指す。なお、Raは、±1μmの変動は許容でき、オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物のシリコーンゴムの表面への付着量は、±0.1g/mの変動は許容できる。具体的な模擬指紋転写の手順については後述する。
 本発明の成型体の前記模擬指紋の付着量は一定値以下にすることが好ましい。具体的には成型材料の対象とする面に付着させた場合の付着量が0.1g/m以下であることが好ましく、0.05g/m以下であることがより好ましく、0.01g/m以下であることが特に好ましい。
 なお、前記模擬指紋の付着量は小さければ小さいほど好ましいため、下限値はゼロであっても問題ない。
 模擬指紋の付着量の詳細な測定方法は後述するが、波長分散型蛍光X線装置により模擬指紋中に含まれるシリカの量を測定することにより求めた値である。模擬指紋の付着量が0.1g/mを超えると指紋の視認性の中でも色味の変化が大きくなる場合がある。
 次に本発明の成型体上の前記模擬指紋を構成する油滴の形状について、その油滴径は小さくなっていることが好ましい。前記成型材料において表面の油滴付着部分の占める面積が増加する程に指紋の視認性が増加することから、油滴の前記成型材料表面方向への投影像を用いて、油滴径の頻度分布にその面積に応じた重み付けを行った面積基準頻度分布で油滴の形状を評価することができる。前記面積基準頻度分布において、その累積頻度が全体のN%となる直径をDと表記する。このうちNが50の直径を特にメジアン径と呼ぶ。本発明においては、面積基準頻度分布から算出されるメジアン径D50が80μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。この値を外れると油滴による光の散乱から指紋が視認されやすくなる。
 なお、前記メジアン径D50は小さければ小さいほど好ましいが現実的には10μmが下限値である。
 本発明の成型体の表面層に下記の条件下で模擬指紋付着/模擬指紋拭き取り試験を行い、JIS Z8730(2009年)およびJIS Z8722(2009年)に従って求めた模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光込みの色差(ΔE ab(di:8°)Sb10W10)=ΔESCI-2と模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光除去の色差(ΔE ab(de:8°)Sb10W10)=ΔESCE-2は下記の式(2)を満たすこと、すなわち式(2)の左辺が2.0以下であることが好ましく、1.7以下がより好ましく、1.5以下が特に好ましい。式(2)の左辺は0もしくは正の値であれば小さい分には問題なく、一方で、式(2)の左辺が2.0よりも大きくなると、指紋の拭き取り性が不十分で、結果として耐指紋性が低下する場合がある。
 ((ΔESCI-2+(ΔESCE-21/2 ≦2.0・・・  式(2)
 ここで「正反射光込みの色差(ΔE ab(di:8°)Sb10W10)=ΔESCI-2)」とは、JIS Z8722(2009年)に記載の、「幾何条件cにて試料からの鏡面反射となる成分を含む条件」で測定された色差を指し、「正反射光除去の色差(ΔE ab(de:8°)Sb10W10)=ΔESCE-2)」とは、幾何条件cにて試料からの鏡面反射となる成分を除く条件」で測定された色差をさす。
 ここで、模擬指紋付着/模擬指紋拭き取り試験の条件は以下のとおりである。
・模擬指紋付着条件:オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ粒子30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaの圧力で付着させる。
・模擬指紋拭き取り条件:前記条件で付着した模擬指紋を不織布にて30kPaの圧力、5cm/秒の速度で3回擦る。
 以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
 [成型材料、および層]
 本発明の成型材料は表面層を有していれば平面状(フィルム、シート、プレート)、3次元形状(成型体)のいずれであってもよい。ここで、本発明における「層」とは、前記成型材料の表面から厚み方向に向かい、隣接する部位とは元素組成、含有物(粒子等)の形状、物理特性が不連続な境界面を有することにより区別でき、有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記成型材料を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(IR、XPS,XRF、EDAX、SIMS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別され、有限の厚さを有する部位を指す。
 前記表面層は、前述の特性を示すため以下の成分を含むことが好ましい。
1)フッ素化合物A
2)バインダー原料
3)粒子
これら成分の詳細については後述する。
 前記表面層は耐指紋性に加えて、反射防止、ハードコート、帯電防止、防汚性、導電性、熱線反射、近赤外線吸収、易接着等の他の機能を有してもよい。
 前記表面層の厚みは特に限定はないが、1nm以上100μm以下が好ましく、5nm以上50μm以下がより好ましい。
 [表面層およびそれを形成するための塗料組成物]
 本発明の成型材料は、支持基材上に後述する塗料組成物を塗工、乾燥、および硬化する一般的な塗工プロセスにより前記「表面層」を形成することが好ましい。この塗料組成物は、常温にて液状の組成物を指し、前述の特性を付与するため以下の成分を含むことが好ましい。
1)フッ素化合物A
2)バインダー原料
3)粒子。
 これら成分の詳細については後述する。さらに塗料組成物はこのほかに溶媒や、光重合開始剤、硬化剤、触媒などの各種添加剤を含んでもよい。また、前記塗料組成物に含まれるフッ素化合物Aとバインダー原料の溶解度の間には好ましい条件が存在する。
 具体的にはヒルデブランドの溶解度パラメーターを、分散項σ,極性項σ,水素結合項σの3成分に分割した、ハンセンの溶解度パラメーターを用いて、条件を表すことができる。分散項σは無極性相互作用による効果、極性項σは双極子間力による効果、水素結合項σは水素結合力の効果を示すものである。
 フッ素化合物Aのハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσ、極性項をσ、水素結合項をσとし、バインダー原料のハンセンの溶解度パラメーターの分散項をσBd、極性項をσBp、水素結合項をσBhとしたとき、下記の条件を満たすことが好ましい。
 ・条件1 R=[(σ-σBd+(σ-σBp+(σ-σBh1/2により定義されるパラメーターRが3(MPa)1/2以上、12(MPa)1/2以下の値を有する。
 さらに、条件1はパラメーターRが3(MPa)1/2以上8(MPa)1/2以下の値を有することがより好ましく、4(MPa)1/2以上、6(MPa)1/2以下の値を有することが特に好ましい。このパラメーターRは、ハンセンの溶解度パラメーターの分散項、極性項、および水素結合項を軸とした3次元座標軸における、フッ素化合物Aの座標点(σ、σ、σ)とバインダー原料の座標点(σBd、σBp、σBh)の距離に対応する。そして、この距離が遠いほど両者の混合は困難となり、近いほど両者は容易に混ざり合う。従って、パラメーターRが12(MPa)1/2を超える場合にはフッ素化合物Aとバインダー原料が十分に混ざり合わず、透明性や光沢感が低下する場合があり、一方パラメーターRが3(MPa)1/2に満たない場合にはフッ素化合物Aとバインダー原料が完全に混ざり合い、層の形成が困難となり、指紋付着量が増加する場合がある。
 またフッ素化合物Aのハンセンの溶解度パラメーターの分散項σとバインダー原料のハンセンの溶解度パラメーターの分散項σBdについては以下の条件2の関係を満たすことが望ましい。
 ・条件2 σ<σBd
 前述のフッ素化合物Aの表面層の最表面への分離、層形成はファンデルワールス相互作用による効果であり、すなわち分散項に由来すると考えられる。従って上記条件を満たさない場合には、前記模擬指紋の付着量を一定値以下にする層を最表面に構成することが困難となり、指紋付着量が増加する場合がある。
 なお、多くの溶媒や一部の樹脂についてハンセンの溶解度パラメーターの値が調べられており、例えば“Polymer Handbook(fourth Edition)”,J.BRANDRUPら編(JOHN WILEY & SONS)にその値が記載されている。一方、上記のようなデータベースに溶解度パラメーター値が記されていない前述のフッ素化合物Aおよびバインダー原料については、溶解度パラメーターの値が類似するもの同士が溶け合いやすいという性質の下、実施例に示した方法によりパラメーター値が既知である溶媒への溶けやすさを規定することで、Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP)ver.3.1.03(http://www.hansen-solubility.com/index.php?id)を用いて各パラメーターを計算することができる。
 [フッ素化合物A]
 フッ素化合物Aは、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基およびフルオロオキシアルカンジイル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む部位と反応性部位を有する化合物を指す。
 ここで、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基とはアルキル基、オキシアルキル基、アルケニル基、アルカンジイル基、オキシアルカンジイル基が持つ水素の一部、あるいは全てがフッ素に置き換わった置換基であり、いずれも主にフッ素原子と炭素原子から構成される置換基であり、構造中に分岐があってもよく、これらの部位を有する構造が複数連結したダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマー構造を形成していてもよい。
 また、反応性部位とは、熱または光などの外部エネルギーにより他の成分と反応する部位を指す。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。なかでも、反応性、ハンドリング性の観点から、ビニル基、アリル基、アルコキシシリル基、シリルエーテル基あるいはシラノール基や、エポキシ基、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましく、ビニル基、アリル基、アクリロイル(メタクリロイル)基がより好ましく、アクリロイル(メタクリロイル)基が特に好ましい。また表面エネルギー低減の効果と、拭き取り時に布巾により擦られることによる成型材料表面の変化への耐久性である拭き取り耐久性とを両立させるには、特に前期の反応性部位を2つ以上5つ以下有することが特に好ましい。指紋拭き取り時の前記表面層の耐久性の観点から、フッ素化合物Aが反応性部位を多く有することが望ましいが、一方で反応性部位が分子中に6以上となると表面エネルギーを低下させる効果が十分に得られない場合がある。
 フッ素化合物Aの一例は次の化学式で表される化合物である。
f1-R-D             ・・・化学式(1)
(Rf1はフルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基を含む部位を、Rはアルカンジイル基、アルカントリイル基、およびそれらから導出されるエステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、トリアジン構造を、Dは反応性部位を示す)。
 化学式(1)の化合物の例としては2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフロオロプロピルアクリレート、2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-3-メトキシブチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルアクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2-パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2-パーフルオロ-3-メチルブチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-3-メチルブチル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-5-メチルヘキシルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-5-メチルヘキシル-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-パーフルオロ-7-メチルオクチルエチルメタクリレート、3-パーフルオロ-6-メチルオクチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1-トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリアクリロイル-ヘプタデカフルオロノネニル-ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
 また、フッ素化合物Aには好ましい材料があり、一つは前記化学式(1)にて、Rf1部として複数のフルオロアルキル基を、Dの部分で複数のアクリロイル(メタクリロイル)基を有し、Rの部分が多分岐構造になった、いわゆる含フッ素デンドリマーであり、もう一つは、前記化学式(1)にて、Rf1部としてのフルオロオキシアルキル基とフルオロオキシアルカンジイル基からなるフルオロポリエーテル部位を、Rの部分でアルカンジイル基を、Dの部分でアクリロイル(メタクリロイル)基を有する、いわゆるフルオロポリエーテル部位を有する材料である。
 ここで、含フッ素デンドリマーとは、フルオロアルキル基、フルオロオキシアルキル等の基、フルオロアルケニル基、フルオロアルカンジイル基、フルオロオキシアルカンジイル基を含むデンドリマーを指す。デンドリマーとは、例えば、Hawker,et.al.J.Chem.Soc.,Chem. Commun.1990,(15),1010-1013.、D.A.Tomalia,et.al.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29,138-175(1990).、J.M.J.Frechet,Science,263,1710.(1994)、柿本雅明;化学,50巻,608頁(1995年)等に記載されている規則的な樹枝状分岐を有する分岐高分子の総称であり、このような分子は、分子の中心から規則的な分岐をした高分子構造を有するため、例えばD.A.Tomalia,et.al.Angew.Chem.Int. Ed.Engl.,29,138-175 (1990).に解説されているように、高分子量化するにつれて生じる分岐末端の極度の立体的込み合いにより球状の分子形態をとるようになる。
 含フッ素デンドリマーの重量平均分子量(以下Mwと略記)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で好ましくは1,000~200,000、さらに好ましくは2,000~100,000、最も好ましくは5,000~60,000である。
 また、前記フルオロポリエーテル部位とは、フルオロアルキル基、オキシフルオロアルキル基、オキシフルオロアルカンジイル基などからなる部位で、化学式(2)、(3)に代表される構造である。
CFn1(3-n1)-(CFn2(2-n2)kO-(CFn3(2-n3)mO-・・・化学式(2)
-(CFn4(2-n4)pO-(CFn5(2-n5)sO-      ・・・化学式(3)
ここで、n1は1~3の整数、n2~n5は1または2の整数、k、m、p、sは0以上の整数でかつp+sは1以上である。好ましくはn1が2以上、n2~n5は1または2の整数であり、より好ましくはn1は3、n2とn4は2、n3とn5は1または2の整数である。
 このフルオロポリエーテル部位の鎖長には好ましい範囲があり、炭素数が4以上12以下が好ましく、4以上10以下がより好ましく、6以上8以下が特に好ましい。炭素数が、3以下では表面エネルギーが十分に低下しないため撥油性が低下する場合があり、13以上では溶媒への溶解性が低下するため、塗膜の品位が低下する場合がある。
 なお、フッ素化合物Aは1分子あたり複数のフルオロポリエーテル部位を有していてもよい。
上記フッ素化合物Aの市販されている例としては、RS-75(DIC株式会社)、オプツールDSX,オプツールDAC(ダイキン工業株式会社)、C10GACRY、C8HGOL(油脂製品株式会社)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
 [バインダー成分、バインダー原料]
 「バインダー原料」とは、前記塗料組成物中に含まれる化合物であり、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理により形成される前記表面層に存在するバインダー成分の原料である。つまり、本発明の成型材料に適した塗料組成物中に含まれるバインダー原料は、溶媒成分の除去、もしくは熱や電離放射線などにより硬化する。そして、表面層に含まれた硬化後のバインダー原料を、「バインダー成分」という。なお、一部のバインダー原料については、表面層中でも塗料組成物中と同様の状態で存在する場合もあり(未反応や未硬化の状態で存在する場合もあり)、その場合でも表面層に含まれるバインダー原料は、バインダー成分という。
 成型材料に前述の特性を付与するためには、バインダー原料は以下の2つの原料を含むことが好ましい。
・ バインダー原料B
・ バインダー原料C。
 さらに、より好ましくは、バインダー原料は以下の3つの原料を含むことが好ましい。
・ バインダー原料B
・ バインダー原料B(II)
・ バインダー原料C。
 まず、バインダー原料B、B(II)について述べる。
 前記塗料組成物中のバインダー原料B、B(II)は特に限定するものではないが、製造上の観点より、熱および/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー原料であることが好ましい。塗料組成物中のバインダー原料は、一種類であってもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
 また、本発明においてフッ素化合物Aを表面層中に保持する観点より、分子中にアルコキシ基、シラノール基、反応性二重結合、および開環反応可能な官能基を有しているモノマー、オリゴマーがバインダー原料であることが好ましい。さらにUV線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、嫌気性雰囲気下で硬化する方がより好ましい。酸素濃度を下げることにより最表面の硬化状態が向上し、耐薬品耐性が良化する場合がある。
 バインダー原料Bは成型材料の硬度を確保する成分であり、その分子量および反応性部位は十分に大きいことが好ましいが、一方で分子量が多すぎる場合には、溶解性が悪化し、フッ素化合物Aや粒子Dなどの構成成分を分散させることができず、成型材料表面の透明性や平滑性が損なわれる場合がある。従ってバインダー原料Bには好ましい条件範囲が存在し、具体的には分子中に10以上の反応性部位を持ち、分子量1,500以上3,000以下である化合物がより好ましい。
 バインダー原料B(II)には前記表面層に前記フッ素化合物Aを分散させる効果があり、分子中に2以上6以下の反応性部位を持ち、分子量500以上1,500以下であることが好ましい。前期フッ素化合物と近い反応性部位数を有し、分子量はより少ないことが好ましいが、成型材料の硬度を維持できる分子量および架橋数から一分子中に2つ以上の反応性部位有し、かつ分子量が500以上であることが好ましい。一方、分子量が1,500より大きい、あるいは反応部位数が7より多い場合には、流動性が損なわれ、フッ素化合物Aを前記表面層に分散させることができず、表面エネルギーを低下させる効果が十分に得られない場合がある。
 このような塗料組成物中のバインダー原料BおよびB(II)は、具体的には多官能アクリレートモノマー、オリゴマー、アルコキシシラン、アルコキシシラン加水分解物、アルコキシシランオリゴマー等が好ましく、多官能アクリレートモノマー、オリゴマーがより好ましい。
 多官能アクリレートモノマーの例としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートおよびその変性ポリマー、具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサンメチレンジイソシアネートウレタンポリマーなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用することができる。
 なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタアクリレートを「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基を総称して、表すものとする。(上記以外に化合物中に「(メタ)アクリ・・・」が含まれる場合も同様である)
 一方、多官能アクリレートオリゴマーの例としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどが挙げられるが、本発明の成型材料の表面形状を得るためにはウレタンアクリレートが好ましい。さらに粒子の分散の観点から、ウレタンアクリレートのうちポリオール骨格に脂環式炭化水素(シクロヘキシル、トリシクロデカニル、イソボニル骨格)を有し、かつ1分子中に9(より好ましくは12)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単位構造からなるものが特に好ましい。
 また、市販されている多官能アクリル系組成物としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”(登録商標)シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”(登録商標)シリーズなど)、新中村化学株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、DIC株式会社;(商品名“UNIDIC”(登録商標)など)、東亞合成株式会社;(“アロニックス”(登録商標)シリーズなど)、日油株式会社;(“ブレンマー”(登録商標)シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”(登録商標)シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズなど)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
 次に、バインダー原料Cについて述べる。
バインダー原料Cは、アクリルポリマーであることが好ましく、不飽和基を含有せず、重量平均分子量が5,000~200,000であり、ガラス転移温度が20~200℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が20℃未満では硬度が低下する場合があり、200℃を超えるとの伸度が十分でない場合がある。より好ましいガラス転移温度の範囲は50~150℃である。
 また、前記アクリルポリマーは親水性官能基を有することで、耐擦過性を付与することができる。具体的には、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、間レイン酸等、あるいは水酸基を有する2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の親水性官能基を有する不飽和単量体を前記不飽和単量体と共重合することにより、アクリルポリマーに親水性官能基を導入することができる。
 アクリルポリマーの重量平均分子量は5,000~200,000であることが好ましい。重量平均分子量が5,000未満である場合、耐擦過性が不十分となる場合があり、重量平均分子量が200,000を超える場合、塗工性を含めた成型性や強靱性が不十分となる場合がある。また、重量平均分子量は重合触媒、連鎖移動剤の配合量および使用する溶媒の種別により調整できる。
 前記アクリルポリマー含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料Bとバインダー原料(II)の合計100質量部に対して10質量部から600質量部が好ましく、より好ましくは20質量部から400質量部であり更に好ましくは30質量部から200質量部である。10質量部以上とすることで伸度が顕著に向上し、600質量部以下にすることで硬度を維持できる。
 [粒子]
 本発明の成型材料が有する表面層は粒子を含むことが好ましく、本発明の成型材料に適した塗料組成物は粒子を含むことが好ましい。ここで、粒子とは無機粒子、有機粒子のいずれでもよいが、耐久性の観点から無機粒子が好ましい。
 無機粒子の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましい。無機粒子の種類数は1種類以上10種類以下がさらに好ましく、2種類以上4種類以下が特に好ましい。ここで、「無機粒子」とは表面処理を施したものも含む。この表面処理とは、粒子表面に化合物を化学結合(共有結合、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、疎水結合等を含む)や吸着(物理吸着、化学吸着を含む)によって導入することを指す。
 ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まり、何らかの表面処理を行う場合には、表面処理される前の粒子を構成する元素の種類によって決まる。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2-x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の無機粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる粒子(ZnO)であれば、その数平均粒子径が異なる粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の粒子である。
 また、本発明の成形材料を形成するのに適した塗料組成物中に含まれる粒子は、塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理において、熱や電離放射線などによりその表面状態を変化させた形で、前記表面層に含まれる。ここで本発明にて用いられる塗料組成物中に存在する粒子を粒子D、前記塗料組成物を塗工、乾燥、硬化処理もしくは蒸着等の処理により形成された前記表面層に存在する粒子を粒子Eという。なお、一部の粒子については、表面層中でも塗料組成物中と同様の状態で存在する場合もあり(つまり、表面状態が変化しない場合もあり)、その場合、表面層に含まれる粒子は粒子dと表記する。
 無機粒子は特に限定されないが、金属や半金属の酸化物、窒化物、ホウ素化物、塩化物、炭酸塩、硫酸塩であることが好ましく、2種類の金属、半金属を含む複合酸化物や、格子間に異元素が導入されたり、格子点が異種元素で置換されたり、格子欠陥が導入されていてもよい。
 無機粒子はSi、Al、Ca、Zn、Ga、Mg、Zr、Ti、In、Sb、Sn、BaおよびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属が酸化された酸化物粒子であることがさらに好ましい。
 具体的にはシリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)およびインジウムスズ酸化物(In)からなる群より選ばれる少なくとも一つの金属酸化物や半金属酸化物である。特に好ましくはシリカ(SiO)である。
 さらに、無機粒子の形態は特に限定するものではないが、シリカが数珠状に連結(複数のシリカが連鎖状につながった形状)した長鎖の構造を有するもの、または、連結したシリカが分岐したものや屈曲したものが好ましい。以降これらを数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカと呼ぶ。
 前記数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカは、シリカの一次粒子を2価以上の金属イオンを介在させ粒子-粒子間を結合させたもので、少なくとも3個以上、好ましくは5個以上、より好ましくは7個以上連結したものをいう。前記数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカの連結、分岐、屈曲状態は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。この数珠状に連結したおよび/または分岐したシリカの市販品としては日産化学工業株式会社製の、PS-S、PS-M(水分散体)、IPA-ST(イソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略称することがある)分散体)、MEK-ST(メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略称することがある)分散体)、扶桑化学工業株式会社製のPL-1-IPA(イソプロピルアルコール分散体)、PL-1-MEK(メチルエチルケトン分散体)などを挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
 本発明の特に好ましい表面形状を得るためには、前述の連鎖状シリカがバインダー原料の良溶媒中で安定に分散するのに必要な表面修飾がなされていることが特に好ましい。例えば、バインダー原料としてアクリル系モノマー、オリゴマーを使用する場合には、表面修飾としては炭素数1~5以内のアルキル基、アルケニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基などが必要最低限、表面に導入されていることが好ましい。これを満たす市販品としては、MEK-ST-UP(MEK分散体)がある。
 さらに本発明の成型材料は2種類の粒子d(I)および粒子d(II)を含むことが好ましく、同様に塗料組成物は2種類の粒子D(I)および粒子D(II)を含むことが好ましい。粒子d(I)または粒子D(I)および粒子d(II)または粒子D(II)についてはそれぞれ特に好ましい数平均粒子径が存在する。粒子d(I)または粒子D(I)は前記耐指紋性に寄与する成分であり、指紋の付着物を表面に細かく分散させることにより、指紋を目立ちにくくする効果を与える。粒子d(I)または粒子D(I)の数平均粒子径は5nm以上20nm以下であることが好ましく、5nmより小さい場合には前述の、指紋を目立ちにくくする効果が十分に得られない場合があり、20nmより大きい場合には成型材料の透明感が損なわれる場合がある。
 一方、粒子d(II)または粒子D(II)は前記指紋拭き取り性に寄与する成分であり、拭き取り時の表面摩擦抵抗を低減させることで、前記表面層の劣化を防ぎ、拭き取り性を向上させる効果がある。粒子d(II)または粒子D(II)の数平均粒子径は50nm以上300nm以下であることが好ましく、50nmより小さい場合には前述の摩擦低減効果が十分に得られない場合があり、300nmより大きい場合にはその構造がきっかけとなり、前述の後退接触角の値が小さくなる場合がある。
 ここで無機粒子の数平均粒子径は、JIS Z8819-2(2001年)に記載の個数基準算術平均長さ径を意味し、成型材料における粒子d、塗料組成物における粒子Dのいずれにおいても走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡等を用いて一次粒子を観察し、各一次粒子の外接円の直径を粒子径とし、その個数基準平均値から求めた値を指す。成型材料の場合には、表面、または断面を観察することにより数平均粒子径を求めることが可能であり、また、塗料組成物の場合には、溶媒で希釈した塗料組成物を滴下、乾燥することによりサンプルを調製して観察することが可能である。
 [溶媒]
 本発明の成型材料に適した塗料組成物は溶媒を含んでもよい。溶媒の種類数としては1種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは1種類以上10種類以下、さらに好ましくは1種類以上6種類以下である。ここで「溶媒」とは、塗工後の乾燥工程にてほぼ全量を蒸発させることが可能な、常温、常圧で液体である物質を指す。
 ここで、溶媒の種類とは溶媒を構成する分子構造によって決まる。すなわち、同一の元素組成で、かつ官能基の種類と数が同一であっても結合関係が異なるもの(構造異性体)、前記構造異性体ではないが、3次元空間内ではどのような配座をとらせてもぴったりとは重ならないもの(立体異性体)は、種類の異なる溶媒として取り扱う。例えば、2-プロパノールと、n-プロパノールは異なる溶媒として取り扱う。
 [その他の添加剤]
 本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、更に光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。
 光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒はバインダー原料間、さらに、バインダー原料とフッ素化合物A間の反応を促進するために用いられる。光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒としては、塗料組成物をラジカル反応等による重合および/またはシラノール縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
 光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いてもよいし、単独で用いてもよい。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用してもよい。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-(4-フェニル)-1-ブタン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタン、1-シクロヒキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-エトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、などが挙げられる。
 なお、光重合開始剤、熱重合開始剤や硬化剤や触媒の含有割合は、塗料組成物中のバインダー原料の合計100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
 本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させてもよい。
 [塗料組成物中の各原料の含有量]
 本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、フッ素化合物A、バインダー原料および粒子を含むが、塗料組成物中のそれぞれの質量関係について説明する。
 本発明の塗料組成物100質量%において、フッ素化合物Aが0.025質量%以上7質量%以下、バインダー原料が0.8質量%以上66質量%以下、粒子が0.05質量%以上60質量%以下、溶媒が20質量%以上95質量%以下、開始剤、硬化剤、触媒のその他の成分が0.025質量%以上7質量%以下が好ましく例示される。より好ましくは、フッ素化合物Aが0.05質量%以上6質量%以下、バインダー原料が3.0質量%以上56質量%以下、粒子が0.1質量%以上50質量%以下、溶媒が30質量%以上90質量%以下、光重合開始剤、熱重合開始剤、硬化剤、触媒のその他の原料が0.05質量%以上6質量%以下である。
 [支持基材]
 本発明の成型材料には、前記「表面層」を設けるため支持基材を必要とする。支持基材に特に限定はなく、ガラス板、プラスチックフィルム、プラスチックシート、プラスチックレンズ、金属板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 プラスチックフィルム、プラスチックシートを支持基材に使用する場合の例としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどが挙げられるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
 支持基材の表面には、前記表面層を形成する前に各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例としては、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が挙げられる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
 [成型材料の製造方法]
 本発明の成型材料の表面に形成される表面層は、塗工、含浸、めっき、ケン化などの液相処理、転写、貼合などの固相処理、およびこれら処理の組み合わせによって成型材料の表面に形成してもよいが、塗工による液相処理が好ましく、塗料組成物を支持基材等に塗工することにより形成する液相処理がより好ましい。
 塗工による成型材料の製造方法は特に限定されないが、前記塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗工することにより表面層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗工方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗工方法としてより好ましい。これらの塗工方法に適用する塗料組成物の製造方法については後述する。
 次いで、支持基材等の上に塗工された液膜を乾燥する。得られる成型材料中から完全に溶媒を除去する事に加え、液膜中のフッ素化合物Aの表面への移動を促進する観点からも、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
 乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、本発明の製造方法では、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
 乾燥過程は一般的に(A)恒率乾燥期間、(B)減率乾燥期間に分けられ、前者は、液膜表面において溶媒分子の大気中への拡散が乾燥の律速になっているため、乾燥速度は、この区間において一定で、乾燥速度は大気中の被蒸発溶媒分圧、風速、温度により支配され、膜面温度は熱風温度と大気中の被蒸発溶媒分圧により決まる値で一定になる。後者は、液膜中での溶媒の拡散が律速となっているため、乾燥速度はこの区間において一定値を示さず低下し続け、液膜中の溶媒の拡散係数により支配され、膜面温度は上昇する。ここで乾燥速度とは、単位時間、単位面積当たりの溶媒蒸発量を表わしたもので、g・m-2・s-1の次元からなる。
 前記乾燥速度には、好ましい範囲があり、10g・m-2・s-1以下であることが好ましく、5g・m-2・s-1以下であることがより好ましい。恒率乾燥区間における乾燥速度をこの範囲にすることにより、乾燥速度の不均一さに起因するムラを防ぐことができる。
 0.1g・m-2・s-1以上10g・m-2・s-1以下の範囲の乾燥速度が得られるならば、特に特定の風速、温度に限定されない。
 本発明の製造方法では、減率乾燥期間では残存溶媒の蒸発と共に、フッ素化合物Aの配向が行われる。この過程においては配向のための時間を必要とするため、減率乾燥期間における膜面温度上昇速度には好ましい範囲が存在し、5℃/秒以下であることが好ましく、1℃/秒以下であることがより好ましい。
 さらに、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、100℃以上200℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
 また、エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、硬化が不十分となり、耐擦傷性、耐久性、耐アルカリ性(耐ケン化性)が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100~3,000mW/cm、好ましくは200~2,000mW/cm、さらに好ましくは300~1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100~3,000mJ/cm、好ましく200~2,000mJ/cm、さらに好ましくは300~1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。ここで、紫外線照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
 [塗料組成物の製造方法]
 本発明の成型材料を形成するのに適した塗料組成物は、フッ素化合物A、バインダー原料、粒子に加えて溶媒や他添加物(開始剤、硬化剤、触媒等、粒子分散物)を混合して得られる。その製造方法は前記成分の処方量を質量、または体積で計量し、これらを攪拌により混合することにより得られる。この時、加えて減圧や逆浸透膜による脱溶媒処理、モレキュレーシーブによる脱水処理、イオン交換樹脂によるイオン交換処理などを行ってもよい。
 塗料組成物調合時の攪拌条件、攪拌装置は特に限定されないが、液全体が十分混合するのに必要な装置、および回転数であればよく、液中での局所的なせん断速度が1.0×10-1よりも小さく、かつレイノルズ数が1,000以上である範囲であることが好ましい。
 得られた塗料組成物は、塗工する前に適当なろ過処理を行ってもよい。この適当なろ過処理とは、溶媒、バインダー原料、添加剤の極性に合わせたフィルター材料、フィルター目開きを選択してろ過することがより好ましい。
 [用途]
 本発明の成型材料の好ましい用途は、パソコンや携帯電話などの筐体に適用される加飾成型用途、タッチパネルや反射防止板などの画面保護用途、各種家電製品や自動車内装部品の筐体用途である。その他、種々のプラスチック成型品、カメラの最表面部のレンズ、眼鏡のレンズ、建築物や車両などの窓ガラスおよび種々の印刷物のそれぞれの表面に耐指紋性を付与するために好適に使用することができる。本発明の成型材料は、射出成型、圧空成型、真空成型、熱成型、プレス成型などの成型方法を適用して、成型体とすることができる。中でも、成型時に80℃~180℃に加温される用途に特に好適に供することができる。
 次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
 [フッ素化合物A]
 [フッ素化合物A1]
 フッ素化合物A1としてフルオロポリエーテル部位を含む化合物(RS-75 DIC株式会社製、固形分濃度40質量%、メチルエチルケトン55質量%、メチルイソブチルケトン5質量%)を使用した。
 [フッ素化合物A2]
 フッ素化合物A2としてフルオロポリエーテル変性トリメトキシシラン(“DOW CORNING”2634 COATING 東レダウコーニング株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [フッ素化合物A3]
 フッ素化合物A3として含フッ素デンドリマー(FA-200 日産化学工業株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [フッ素化合物A4]
 フッ素化合物A4としてフルオロポリエーテル部位を含む化合物、CO(CO)CFCHOCOCH=CH(固形分濃度100質量%)を使用した。
 [フッ素化合物A5]
 フッ素化合物A5としてフルオロテトラエチレングリコール部位を含む2官能アクリレート化合物(FPTMG-A 油脂製品株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料]
 [バインダー原料B1]
 バインダー原料B1として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“KRM”8655 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料B2]
 バインダー原料B2として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(“KAYARAD”DPHA 日本化薬株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料B(II)1]
 バインダー原料B(II)1として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“EBECRYL”8210 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料B(II)2]
 バインダー原料B(II)2として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“EBECRYL”9260 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料B(II)3]
 バインダー原料B(II)3として、ウレタンアクリレートオリゴマー(“EBECRYL”8402 ダイセル・サイテック株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [バインダー原料C1]
 バインダー原料C1として、下記方法で合成したアクリルポリマーを使用した。
ジラウロイルパーオキサイド(パーロイルL 日油株式会社製)24質量部をメチルエチルケトン495質量部に加えて70℃で30分間加温して溶解させ、溶液Aを得た。
 また、メタクリル酸50質量部、ブチルアクリレート90質量部、メチルメタクリレート100質量部および4-メチル-2,4-ジフェニルペンテン-1(ノフマーMSD 日油株式会社製)2.4質量部を混合した溶液Bを得た。
溶液Aに溶液Bを4時間かけて滴下して撹拌重合させた。
 [粒子]
 [粒子D(I)1]
 粒子D(I)1として、オルガノシリカゾル(MEK-ST-UP 日産化学工業株式会社製、固形分濃度20質量%、メチルエチルケトン79質量%、メチルアルコール1質量%、平均粒子径15nm)を使用した。
 [粒子D(I)2]
 粒子D(I)2として、オルガノシリカゾル(IPA-ST-L 日産化学工業株式会社製、固形分濃度30質量%、イソプロピルアルコール66.5質量%、メチルアルコール3.5質量%、平均粒子径50nm)を使用した。
 [粒子D(II)1]
 粒子D(II)1として、オルガノシリカゾル(MEK-ST-2040 日産化学工業株式会社製、固形分濃度40質量%、メチルエチルケトン59質量%、メチルアルコール1質量%、平均粒子径200nm)を使用した。
 [粒子D(II)2]
 粒子D(II)2として、オルガノシリカゾル(MIBK-SD-L 日産化学工業株式会社製、固形分濃度30質量%、メチルイソブチルケトン67質量%、メチルアルコール0.5質量%、n-ブタノール2.5質量%、平均粒子径50nm)を使用した。
 [粒子D(II)3]
 粒子D(II)3として、シリカ粒子(ハイプレシカSP 平均粒子径600nm 宇部日東化成株式会社製、固形分濃度100質量%)を使用した。
 [塗料組成物の作成]
 作成した塗料組成物を表1に示す。
 [塗料組成物1]
 下記材料を混合し塗料組成物1を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B1  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)1  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  31.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物2]
 下記材料を混合し塗料組成物2を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  31.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物3]
 下記材料を混合し塗料組成物3を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)3  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  31.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物4]
 下記材料を混合し塗料組成物4を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A2  1.2 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  33.3 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物5]
 下記材料を混合し塗料組成物5を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A3  1.2 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  33.3 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物6]
 下記材料を混合し塗料組成物6を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A4  1.2 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  33.3 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン  (イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物7]
 下記材料を混合し塗料組成物7を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A5  1.2 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  33.3 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン  (イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物8]
 下記材料を混合し塗料組成物8を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  9.7 質量%
          バインダー原料B(II)2   3.3 質量%
          バインダー原料C1  6.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  30.0 質量%
溶媒     :  MEK  46.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物9]
 下記材料を混合し塗料組成物9を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  9.7 質量%
          バインダー原料B(II)2  3.3 質量%
          バインダー原料C1  6.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)2  30.0 質量%
溶媒     :  MEK  46.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物10]
 下記材料を混合し塗料組成物10を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  9.7 質量%
          バインダー原料B(II)2  3.3 質量%
          バインダー原料C1  6.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  44.1 質量%
          粒子D(II)1  0.45質量%
溶媒     :  MEK  31.95質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物11]
 下記材料を混合し塗料組成物11を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  9.7 質量%
          バインダー原料B(II)2  3.3 質量%
          バインダー原料C1  6.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  44.1 質量%
          粒子D(II)2  0.6 質量%
溶媒     :  MEK  31.8 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物12]
 下記材料を混合し塗料組成物12を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  9.7 質量%
          バインダー原料B(II)2  3.3 質量%
          バインダー原料C1  6.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  44.1 質量%
          粒子D(II)3  0.18質量%
溶媒     :  MEK  32.22質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物13]
 下記材料を混合し塗料組成物13を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  19.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  31.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物14]
 下記材料を混合し塗料組成物14を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B1  19.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  31.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物15]
 下記材料を混合し塗料組成物15を得た。
バインダー原料:  バインダー原料B2  19.5 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  45.0 質量%
溶媒     :  MEK  34.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物16]
 下記材料を混合し塗料組成物16を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  35.0 質量%
溶媒     :  MEK  41.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物17]
 下記材料を混合し塗料組成物17を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  2.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  38.0 質量%
溶媒     :  MEK  39.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物18]
 下記材料を混合し塗料組成物18を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.5 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  38.0 質量%
溶媒     :  MEK  38.0 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物19]
 下記材料を混合し塗料組成物19を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  38.0 質量%
          粒子D(II)1  10.0 質量%
溶媒     :  MEK  28.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [塗料組成物20]
 下記材料を混合し塗料組成物20を得た。
フッ素化合物A:  フッ素化合物A1  3.0 質量%
バインダー原料:  バインダー原料B2  14.6 質量%
          バインダー原料B(II)2  4.9 質量%
粒子     :  粒子D(I)1  60.0 質量%
溶媒     :  MEK  16.5 質量%
光重合開始剤 :  1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(イルガキュア184 BASF社製)  1.0 質量%。
 [成型材料の作製]
 支持基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム上に易接着性塗料が塗工されている“ルミラー”U46(東レ(株)製)を用いた。前記塗料組成物1~20を搬送速度10m/分の条件で、小径グラビアコーターを有する連続塗工装置を用い、固形分塗工膜厚が2μmになるようにグラビア線数、およびグラビアロール速度比を調整して塗工した。塗工から乾燥、硬化までの間に液膜にあたる風の条件は下記の通りである。
 第1乾燥
送風温湿度 : 温度:45℃、相対湿度:10%
風速    : 塗工面側:5m/秒、反塗工面側:5m/秒
風向    : 塗工面側:基材に対して平行、反塗工面側:基材に対して垂直
滞留時間  : 1分間
 第2乾燥
送風温湿度 : 温度:100℃、相対湿度:1%
風速    : 塗工面側:5m/秒、反塗工面側:5m/秒
風向    : 塗工面側:基材に対して垂直、反塗工面側:基材に対して垂直
滞留時間  : 1分間
 硬化工程
    照射出力 600W/cm2 積算光量120mJ/cm
    酸素濃度 0.1体積%。
 なお、風速、温湿度は熱線式風速計(日本カノマックス株式会社 アネモマスター風速・風量計 MODEL6034)による測定値を使用した。
以上の方法により、成型材料を作製した。
 [成型体の作製]
 前記成型材料を10mm幅×200mm長に切り出し、長手方向の両端部をチャックで把持してインストロン型引っ張り試験機(インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848)にて引っ張り速度10mm/分で15%伸張した。この時の測定雰囲気は23℃・65RH%である。
以上の方法により、成型体を作製した。
 [成型材料の評価]
 作製した成型材について、以降に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2に示す。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1水準の任意の箇所から3つのサンプルを切り出し、3サンプルについて測定を行い、その平均値を用いた。
 [成型体の評価]
 前記成型材料を10mm幅×200mm長に切り出し、その中心に、8mm×8mmの正方形の枠を描いた後に、上述の方法にて、成型体を作製し、これを測定用の成型体とした
作製した測定用の成型体について、以降に示す性能評価を実施した。なお、成型体の測定に際しては、成型体に描かれた枠内を測定対象とした。得られた結果を表2-1、表2-2に示す。
 なお、特に断りのない場合を除き、測定は、各実施例・比較例において得られる成型材料の任意の3箇所から、測定用の成型体をそれぞれ作製し、当該3つの測定用の成型体について測定を行い、その平均値を用いた。
 [ピーク数の測定]
 成型材料および成型体について、原子間力顕微鏡(SII社製、SPI3800)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS-20A、カンチレバー=DF-3、観察視野=5×5μm、分解能1024×512pixelsにて表面形態観察を行い観察像を得た。次いで2乗平均粗さの100%をピーク閾値にするため、「Peak Thrsh(%rms)」を100%に設定して解析を行い、ピーク数を求めた。
 [粒子の数平均粒子径]
 走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察、測定した。観察試料は前記塗料組成物を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度0.5質量%に希釈し、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下、乾燥して調製した。数平均粒子径は、1視野あたり一次粒子の集合体としての個数が10個以上50個以下になる倍率にて観察を行い、得られた画像から一次粒子の外接円の直径を求めてこれを粒子径とし、観察数を増やし一次粒子100個について測定した値から数平均粒子径を求めた。
 [破壊伸度]
 成型材料を10mm幅×200mm長に切り出し、長手方向の両端部をチャックで把持してインストロン型引っ張り試験機(インストロン社製超精密材料試験機MODEL5848)にて引っ張り速度10mm/分で伸張した。この時の測定雰囲気は23℃・65RH%である。伸張する際に、伸張中のサンプルを観察しておき、サンプルのいずれかの箇所に目視でクラック(亀裂)が生じたら停止する(停止するときの伸度は5(%)の整数となるように調整する)。クラックが生じたらサンプルをインストロン型引っ張り試験機から外し、同一の水準の成型材料の別の箇所から切り出したサンプルをインストロン型引っ張り試験機にセットし、クラックが生じたサンプルの伸張停止時の伸度より、5%伸張伸度を低くし、同様に伸張しサンプルを採取した。さらに、同様にこの操作を5%単位で伸張伸度を低くして行い、順次サンプルを採取した。最終的にサンプルのいずれの箇所にも目視にてクラックが入らなくなる伸度まで行った。
 採取したサンプルのクラック部分の断面を切り出し、断面を透過型電子顕微鏡にて倍率3,000倍で観察し、表面層の厚みの50%以上の深さのクラックが発生している場合をクラック有り(表面層の破壊有り)として、クラック有りとされたサンプルの中で、最も低い伸度を有するサンプルの伸度値を破壊伸度とした。
 そして、上記の操作・測定を合計3回行い、それらの破壊伸度の平均値を成型材料の表面層の破壊伸度とした。
 なお、破壊伸度が15%以上であれば、クラックを生じることなく、成型材料を成型体とすることができ、成型性「良」とし、破壊伸度が15%未満であれば、クラックを生じることなく、成型材料を成型体とすることができないため、成型性「不良」とした。
 [60°鏡面光沢度]
 成型材料の対象とする面の鏡面光沢度は、日本電色工業製 VG7000を用いて、成型材料表面の光沢度をJIS Z8741(1997年)に準拠した方法で60°鏡面光沢度を測定し、60%以上を合格とした。
 [オレイン酸前進接触角、後退接触角]
 成型体の表面層の前進接触角、後退接触角の測定は拡張-収縮法により測定を行い、協和界面科学株式会社製接触角計Drop Master DM-501を用いて、同装置の拡張-収縮法測定マニュアルに従った。前進接触角は、具体的にはシリンジからオレイン酸(ナカライ規格一級 ナカライテスク製)を液吐出速度8.5μL/秒で最終液量50μLまで連続的に吐出し、液滴の形状を吐出開始前から吐出終了後まで0.5秒毎に30回撮影し、同画像から、同装置付属の統合解析ソフト“FAMAS”を用いてそれぞれの接触角を求めた。液滴の拡張過程での接触角は最初、拡張につれて変化し、次いでほぼ一定になる挙動を示すため、測定順に接触角データを並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になった時の平均値をその測定の前進接触角とし、この測定を同様に5回行い、その平均値を試料の前進接触角とした。なお、吐出開始前および吐出終了後も一定時間撮影はされるが、解析ソフトでは吐出開始前および吐出終了後の撮影データは接触角を算出するための5点のデータからは除外されるようになっている。
 後退接触角は、初期液滴量50μL、液吐出速度8.5μL/秒で液滴を連続的に吸引し、同液滴の縮小過程の形状を吐出開始前から吐出終了後まで撮影し、同様の方法でそれぞれの接触角を求めた。なお、吸引開始前および吸引終了後も一定時間撮影はされるが、解析ソフトでは吸引開始前および吸引終了後の撮影データは接触角を算出するための5点のデータからは除外されるようになっている。液滴の収縮過程の接触角は最初、収縮につれて変化し、次いでほぼ一定になる挙動を示すため、液滴の収縮していく方向に接触角を並べ、その順に連続した5点を選択したとき、連続した5点の標準偏差が最初に1°以下になったときの平均値をその測定の後退接触角とし、この測定を同様に5回行い、その平均値を試料の後退接触角とした。なお、サンプルによっては液滴の収縮過程の接触角が一定にならず、連続的に低下し続けるものもあるが、これについては後退接触角を0°とした。
 [模擬指紋付着方法]
 本発明の成型体の対象とする面への模擬指紋の付着は、1.模擬指紋シートの作製、2.模擬指紋のシリコーンゴムへの転写、3.模擬指紋の成型体表面への付着の3ステップで行った。
 1.模擬指紋シートの作製
 下記材料を下記比率で秤量後、30分間マグネチックスターラーにて攪拌して模擬指紋シート作成用塗料を得た。
オレイン酸              14質量部
シリカ粒子(数平均粒子径 2μm)   6質量部
イソプロピルアルコール             80質量部。
 なお、前記シリカ粒子の数平均粒子径は走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察、測定した。観察試料は前記シリカ粒子を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度5質量%にて混合、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下、乾燥して調整した。数平均粒子径は、1視野あたり一次粒子の集合体としての個数が10個以上50個以下になる倍率にて観察を行い、得られた画像から一次粒子の外接円の直径を求めてこれを粒子径とし、観察数を増やし一次粒子100個について測定した値から数平均粒子径を求めた。
 この「模擬指紋シート作成用塗料」を、支持基材としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている“ルミラー”(登録商標)U46(東レ株式会社製)上にワイヤーバー(♯7)を用いて塗布、50℃で2分間乾燥することでイソプロピルアルコールを除去して、フィルム上に模擬指紋液(オレイン酸70質量%とシリカ30質量%からなる分散物)が均一に展開された模擬指紋シートを得た。
 2.模擬指紋のシリコーンゴムへの転写
 JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムを#250の耐水ペーパーで表面を研磨し、JIS B0601(2001年)で規定するRaを3μmとした。次いで、前記耐水ペーパーで研磨したシリコーンゴムを模擬指紋シートに30kPaで押し付けた。シリコーンゴムへの模擬指紋液の付着量(g/m)は、シリコーンゴムの面積と付着前後の質量差から求めた値を指し、上記手法で行った結果、いずれも1.0g/mであった。
 3.模擬指紋の成型体表面への付着
 2.にて模擬指紋液が転写されたシリコーンゴムを、成型体表面に30kPaで押し付けて成型体表面に形成された痕跡を模擬指紋とした。
 [模擬指紋の模擬拭き取り方法]
 前記方法で対象とする面に模擬指紋を付着させた成型体を平板上に固定し、成型体上で間隔が10cmとなるようにA点とB点を決定した。そして成型体上に折り上げ寸法が12.5×12.5cmのセルロース長繊維不織布ガーゼ(“ハイゼ”ガーゼ NT-4 川本産業株式会社製)を置き、その上に錘を載せることで30kPaの圧力をかけ、この錘を載せたセルロース長繊維不織布ガーゼを5cm/秒の速度でA点、B点の間を3往復させることにより、拭き取りをおこなった。
 [模擬指紋付着前、模擬指紋拭き取り後の正反射光込み、正反射光除去の色差]
 成型体の対象とする面の反対面に黒ビニールテープを貼り付け、前述の模擬指紋の付着前と拭き取り後の反射色をコニカミノルタ株式会社製分光測色計CM-3600Aを使用して、JIS Z8722(2009年)に基づき、正反射光除去の反射色を鏡面反射光トラップを用いた(de:8°)Sb10W10条件で、正反射光込みの反射色を鏡面反射光トラップを用いない(di:8°)Sb10W10条件で、JIS Z8730(2009年)に記載のCIE1976(L)にて測定した。
さらに、この模擬指紋付着前、模擬指紋拭き取り後の反射色からJIS Z 8730(2009年)に記載の計算方法により、模擬指紋付着前、模擬指紋拭き取り後の反射色から(ΔE ab(di:8°)Sb10W10)と、(ΔE ab(de:8°)Sb10W10)を求め、前者をΔESCI-2とし、後者をΔESCE-2とした。
 [耐指紋性(指紋付着性)]
 指紋付着防止性は、成型体の評価する面を上にして黒画用紙上に置き、指紋を押し付ける指(人差し指)と親指を3回こすってから、前記表面層の表面に指(人差し指)をゆっくりと押し付け、付着した指紋の視認性を下記の評価基準で評価し、5点以上を合格とした。
10点: 指紋が視認されない、もしくは未付着部との差がわからない
 7点: 指紋がほとんど視認できない、もしくは指紋だとは認識されない
 5点: 指紋が僅かに視認されるが、ほとんど気にならない
 3点: 指紋が視認される
 1点: 指紋が明確に視認され、非常に気になる
 上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
 [耐指紋性(指紋拭き取り性)]
 前述の方法で、指紋を付着させた後、次いで、折り上げ寸法が12.5×12.5cmのセルロース長繊維不織布ガーゼ(“ハイゼ”ガーゼ NT-4 川本産業株式会社製)を用いて拭き取りを行った。指紋拭き取り性は、この拭き取り方法で拭いた後の視認性を下記の評価基準で評価し、5点以上を合格とした。
10点: 1回拭くと、ほぼ視認されなくなる
 7点: 1回拭くと、ほぼ気にならない程度になる
 5点: 1回または2回拭いただけでは汚れが残るが、3回拭くと、ほぼ視認されなくなる
 3点: 5回拭けば、ほぼ気にならない程度になる
 1点: 5回以上拭いても、汚れが残る
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
 [耐擦傷性]
 成型体の対象とする面に200g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを20往復した際に目視される傷の本数を記載し、下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 本発明に係る成型材料および成型体は、電化製品や自動車内装部品などの筐体へ指紋性を付与するために好適に使用できるだけでなく、種々のプラスチック成型品、カメラの最表面部のレンズ、眼鏡のレンズ、建築物や車両などの窓ガラスおよび種々の印刷物のそれぞれの表面に同様の機能を付与するためにも用いることができる。

Claims (5)

  1.  支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記表面層のJIS Z8741(1997年)で規定する60°鏡面光沢度が60%以上で、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であって、前記表面層の破壊伸度が15%以上であり、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張したもの(以下、成型体)の表面層の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さ(RMS)を超える高さを有するピーク数が25μmあたり500個以上1,500個以下であることを特徴とする成型材料。
  2.  支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層のオレイン酸の後退接触角θが60°以上であることを特徴とする請求項1に記載の成型材料。
  3.  支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層のオレイン酸の前進接触角θ、後退接触角θが下記の式(1)を満たす請求項1または2に記載の成型材料。
     (θa-θr)≦ 15° ・・・   式(1)
  4.  支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層に、下記の条件下で模擬指紋を付着した前後のJIS Z8730(2009年)およびJIS Z8722(2009年)で規定する正反射光込みの色差ΔE ab(di:8°)Sb10W10が0.4以下、かつ、正反射光除去の色差ΔE ab(de:8°)Sb10W10が4以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の成型材料。
     模擬指紋付着条件:オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaで付着させたもの。
  5.  支持基材の少なくとも一方の面に表面層を有する成型材料であって、前記成型材料を引っ張り試験機で15%伸張した成型体の表面層に、下記の条件下で模擬指紋付着および模擬指紋拭き取り試験を行い、JIS Z8730(2009年)およびJIS Z8722(2009年)に従って求めた模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光込みの色差ΔE ab(di:8°)Sb10W10(以降ΔESCI-2とする)および模擬指紋付着前の状態を基準とした模擬指紋拭き取り試験後の正反射光除去の色差ΔE ab(de:8°)Sb10W10(以降ΔESCE-2とする)が、下記の式(2)を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の成型材料。
     ((ΔESCI-2+(ΔESCE-21/2 ≦2.0・・・  式(2)
    (模擬指紋付着/模擬指紋拭き取り試験の条件)
     模擬指紋付着条件:オレイン酸70質量%と数平均粒子径2μmのシリカ30質量%からなる分散物を、JIS B0601(2001年)で規定するRaが3μmで、JIS K6253(1997年)で規定するゴム硬度50のシリコーンゴムに1.0g/m付着させ、これを対象とする面に30kPaで付着させたもの。
     模擬指紋拭き取り条件:前記条件で付着した模擬指紋を不織布にて30kPaの圧力、5cm/秒の速度で3回擦る。
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