JP6635189B2 - 鉛蓄電池、マイクロハイブリッド車及びアイドリングストップシステム車 - Google Patents

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Description

本開示は、鉛蓄電池、マイクロハイブリッド車及びアイドリングストップシステム車に関する。
近年、自動車産業において、大気汚染防止又は地球温暖化防止のため、様々な燃費向上対策が検討されている。燃費向上対策を施した自動車としては、例えば、エンジンの動作時間を少なくするアイドリングストップシステム車(以下、「ISS車」という)、エンジンの回転を無駄なく動力に使用する発電制御車等のマイクロハイブリッド車が検討されている。
ISS車では、エンジンの始動回数が多くなるため、鉛蓄電池の大電流放電が繰り返される。また、ISS車及び発電制御車では、オルタネータによる発電量が少なくなり、鉛蓄電池の充電が間欠的に行われるため充電が不充分となる。
上記のような使われ方をする鉛蓄電池は、PSOC(Partial State Of Charge)と呼ばれる部分充電状態で使用されることになる。鉛蓄電池は、PSOC下で使用されると、満充電状態で使用される場合よりも寿命が短くなる。
近年、欧州では、マイクロハイブリッド車の制御に則した、充放電サイクル中における鉛蓄電池の充電性が重要視されており、このような形態のDCA(Dynamic Charge Acceptance)評価が規格化されつつある。つまり、鉛蓄電池の使われ方として、上記のような部分充電状態での使用が重要視されてきている。
下記特許文献1には、PSOC下で使用される場合の電池の充電効率とサイクル性能とを向上させるために、電槽化成の条件を変更することで正極板における活物質の比表面積を5.5m/g以上に調整する技術が開示されている。
国際公開第2012/042917号
ところで、完全な充電が行われる状態で鉛蓄電池が使用される場合には、その充電末期のガス発生(ガッシング)により電解液の撹拌が行われる。これに対し、完全な充電が行われず充電が不足した状態で鉛蓄電池が使用される場合には、電池内の電極(極板等)における上部と下部との間で、電解液である希硫酸の濃淡差が生じる成層化現象が起こる。すなわち、部分充電ではガッシングが起こらないので、電解液の撹拌が不充分になり、その結果、電解液の濃度が不均一となる。この場合、電極下部の希硫酸の濃度が高くなりサルフェーションが発生する。サルフェーションは、放電生成物である硫酸鉛が充電状態に戻りにくい現象である。そのため、サルフェーションが発生すると、電極下部の反応性が低下し、電極上部のみが集中的に反応するようになる。その結果、電極上部において、活物質間の結びつきが弱くなる等の劣化が進み、集電体から活物質が剥離して、電池性能低下及び早期寿命に至る。そのため、最近の鉛蓄電池においては、PSOC下で使用された場合の電池のサイクル性能を向上させるため、充電受入性能を向上させることが極めて重要な課題となっている。なお、PSOC状態で主に使用される鉛蓄電池の性能の指標として、「ISSサイクル性能」が挙げられ、これはISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験によって評価することができる。
また、比較的深い充放電が繰り返された場合、鉛蓄電池の高率放電性能が不十分であると、アイドリングストップ後のエンジン再始動時にバッテリ電圧が低下し、再始動できなくなる。特に、氷点下で使用されるような低温地域においても対応できるように、低温高率放電性能を向上させることが重要になってくる。
本開示は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、優れた充電受入性能及び低温高率放電性能の両方を十分高水準に達成可能な鉛蓄電池を提供することを目的とする。本開示は、この鉛蓄電池を備えるマイクロハイブリッド車及びISS車を提供することを目的とする。
本発明者らは、特定の正極材と、特定の構成成分を含有する負極材を用いることにより、前記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本開示に係る鉛蓄電池は、β−PbO及びα−PbOを含有する正極材を有する正極と、スルホン基及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する有機化合物を含有する負極材を有する負極とを備え、正極材の比表面積が10m/g以上であり、正極材におけるβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)が0.4以下である。
本開示に係る鉛蓄電池によれば、優れた充電受入性能及び低温高率放電性能の両方を十分高水準に達成することができる。本開示に係る鉛蓄電池によれば、特に、初期の状態からある程度の充放電が繰り返されて活物質が充分に活性化した後において、ISS車、マイクロハイブリッド車等では低くなりがちなSOCを適正なレベルに維持することができる。本開示は上記鉛蓄電池を備えるマイクロハイブリッド車及びISS車を提供する。
負極材における上記有機化合物の含有量は、負極材の全質量を100質量%とすると、充電受入性能の更なる向上の観点から、0.3質量%以下であることが好ましく、他方、放電特性の更なる向上の観点から、0.1質量%以上であることが好ましい。なお、当該有機化合物は、ビスフェノール系樹脂であってよい。ビスフェノール系樹脂は、ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物であってよい。
低温高率放電性能の更なる向上の観点から、化成後において、正極材の質量と負極材の質量の質量比(正極材/負極材)は1.3以下であることが好ましい。電池特性の更なる向上の観点から、正極材は正極活物質を含み、正極材の質量を基準とする正極活物質の含有量は95質量%以上であることが好ましく、負極材は負極活物質を含み、負極材の質量を基準とする負極活物質の含有量は93質量%以上であることが好ましい。
ところで、上記特許文献1では、電槽化成の条件を変更することで、正極板における活物質の比表面積を5.5m/g以上に調整することが記載されている。しかしながら、電槽化成の条件を変更するだけでは正極板における活物質の比表面積を大きくすることに限界があることが判明した。また、正極活物質が軟化して脱落する現象である泥状化に関して、上記特許文献1では、正極活物質の泥状化が原因で放電不能となり寿命に至る充放電サイクル試験(正極活物質の泥状化に起因する寿命モードのサイクル試験)を実施しており、正極板における活物質の比表面積が9.4m/g以上になるとサイクル性能が低下することが記載されている。一方、本開示に係る鉛蓄電池によれば、正極活物質の泥状化に起因する寿命モードのサイクル試験においても優れたサイクル性能を得ることができる。特に、本開示に係る鉛蓄電池によれば、正極材の比表面積が10m/g以上であっても、優れたサイクル性能を得ることができる。
なお、鉛蓄電池を過充電した場合、電解液中の水が酸素ガスと水素ガスに分解される、電気分解が生じることが知られている。電気分解が生じると、電気分解によって発生したガス(酸素ガス及び水素ガス)が系外に排出されるため、電解液中の水分が減少する。その結果、電解液中の硫酸濃度が上昇し、正極板の腐食劣化などにより容量低下が進行する。また、電解液面の低下に伴って極板が電解液から露出すると、放電容量が急激に低下したり、負極板とストラップとの接続部又はストラップ自体が腐食したりする問題が発生する。電解液が減少したとしても、電槽に水を補給するメンテナンスを行えば問題は発生しない。しかし、メンテナンスの頻度を低くする観点から電解液中の水の減少を抑制することが求められている。また、本発明者らの知見により、PSOC下で使用される鉛蓄電池においても、電解液の電気分解が生じ、電解液中の水分が減少することが明らかとなった。この原因は必ずしも明らかではないが、これに関して本発明者らは、PSOC下であっても電極中において活物質が満充電状態となっている箇所が局所的に存在し、当該箇所において電解液の電気分解が生じることが主因であると推察している。
本開示に係る鉛蓄電池によれば、優れた充電受入性能及び低温高率放電性能の両方を十分高水準に達成可能である。また、本開示に係る鉛蓄電池によれば、特に、初期の状態からある程度の充放電が繰り返されて活物質が充分に活性化した後において、ISS車、マイクロハイブリッド車等では低くなりがちなSOCを適正なレベルに維持することができる。
本開示によれば、マイクロハイブリッド車への鉛蓄電池の応用を提供できる。本開示によれば、ISS車への鉛蓄電池の応用を提供できる。
図1は本開示に係る鉛蓄電池の一実施形態を示す斜視図である。 図2は図1に示す鉛蓄電池の内部構造を示す図である。 図3は極板群の一例を示す斜視図である。 図4は正極材のX線回折パターンの一例を示す図である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、比重は、温度によって変化するため、本明細書においては20℃で換算した比重と定義する。
<鉛蓄電池、マイクロハイブリッド車及びISS車>
本実施形態に係る鉛蓄電池は、(A)正極及び(B)負極を備えている。(A)正極は、正極集電体と、当該正極集電体に保持された正極材(電極材)と、を有する。(B)負極は、負極集電体と、当該負極集電体に保持された負極材(電極材)と、を有する。本実施形態に係る鉛蓄電池において、正極材の比表面積は10m/g以上であり、正極材におけるβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.4以下である。また、負極材はスルホン基又はスルホン酸塩基を有する有機化合物を含有する。本実施形態に係るマイクロハイブリッド車及びISS車は、本実施形態に係る鉛蓄電池を備える。なお、本実施形態において電極材とは、化成後(例えば満充電状態)の電極材を意味する。未化成の段階においては、電極材に相当する材料は、化成によって電極材となる物質を含有している。
本実施形態に係る鉛蓄電池は、種々の形式の鉛蓄電池、すなわち、液式鉛蓄電池、制御弁式鉛蓄電池、密閉式鉛蓄電池等に適用できるが、これらのうち、製造コスト等の観点から液式鉛蓄電池が好ましい。図1に示す鉛蓄電池1は液式鉛蓄電池である。図2は鉛蓄電池1の内部構造を示す図である。鉛蓄電池1は、上面が開口して複数の極板群11が格納される電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3とを備えている。蓋3は、例えば、ポリプロピレン製となっており、正極端子4と、負極端子5と、蓋3に設けられた注液口を閉塞する液口栓6とを備えている。電槽2には、電解液(不図示)が収容されている。
極板群は、セパレータと、セパレータを介して交互に積層された正極板及び負極板とを有する。図2及び図3に示すように、極板群11は、例えば、正極板12と、負極板13と、袋状のセパレータ14と、正極側ストラップ15と、負極側ストラップ16と、セル間接続部17又は極柱18とを備えている。正極板12及び負極板13には耳部と呼ばれる集電部22及び集電部32が上側周縁部に設けられている。
((A)正極)
[正極集電体]
正極集電体の組成としては、例えば、鉛−カルシウム−錫系合金、鉛−アンチモン−ヒ素系合金等の鉛合金が挙げられる。用途に応じて適宜セレン、銀、ビスマス等を正極集電体に添加してもよい。これらの鉛合金を重力鋳造法、エキスパンド法、打ち抜き法等で格子状に形成することにより正極集電体を得ることができる。
[正極材]
正極材は、正極活物質を含有し、必要に応じて、後述する添加剤を更に含有することができる。化成後の正極材は、後述するように、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の正極材を得た後に化成することで得ることができる。正極活物質の原料としては、特に制限はなく、例えば鉛粉が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。化成時間を短縮できる観点から、正極活物質の原料として鉛丹(Pb)を用いてもよいが、鉛丹(Pb)を用いないことによりサイクル性能を更に向上させることができる。未化成の正極材は、主成分として三塩基性硫酸鉛を含む未化成正極活物質を含有することが好ましい。化成後の正極材は、正極活物質として、例えばα−PbO及びβ−PbOを含む。
正極活物質の含有量は、電池特性(容量、低温高率放電性能、充電受入性能、サイクル性能等)に更に優れる観点から、正極材の全質量を基準として、95質量%以上が好ましく、97質量%以上であってもよく、99質量%以上であってもよい。
本実施形態に係る鉛蓄電池の正極材の比表面積は、10m/g以上である。正極材の比表面積が10m/g未満である場合、充分な充電受入性能が得られにくい。正極材の比表面積は、充電受入性能が更に向上する観点から、10.5m/g以上が好ましく、11.5m/g以上がより好ましく、12m/g以上が更に好ましい。正極材の比表面積の上限としては、特に制限はないが、サイクル性能が更に向上する観点から、20m/g以下が好ましく、15m/g以下がより好ましく、13m/g以下が更に好ましい。このような観点から、正極材の比表面積は、10〜20m/gが好ましく、10.5〜15m/gがより好ましく、11.5〜13m/gが更に好ましく、12〜13m/gが特に好ましい。前記正極材の比表面積は、化成後の正極材における比表面積である。正極材の比表面積は、例えば、後述する正極材ペーストを作製する際の硫酸及び水の添加量を調整する方法、未化成の段階で正極活物質を微細化する方法、化成条件を変化させる方法等により調整することができる。
正極材の比表面積は、例えば、BET法で測定することができる。BET法は、一つの分子の大きさが既知の不活性ガス(例えば窒素ガス)を測定試料の表面に吸着させ、その吸着量と不活性ガスの占有面積とから表面積を求める方法であり、比表面積の一般的な測定手法である。具体的には、以下のBET式に基づいて測定する。
下記式(1)の関係式は、P/Poが0.05〜0.35の範囲でよく成立する。なお、式(1)中、各符号の詳細は下記のとおりである。
P:一定温度で吸着平衡状態であるときの吸着平衡圧
Po:吸着温度における飽和蒸気圧
V:吸着平衡圧Pにおける吸着量
Vm:単分子層吸着量(気体分子が固体表面で単分子層を形成したときの吸着量)
C:BET定数(固体表面と吸着物質との間の相互作用に関するパラメータ)
式(1)を変形する(左辺の分子分母をPで割る)ことにより下記式(2)が得られる。測定に用いる比表面積計では、吸着占有面積が既知のガス分子を試料に吸着させ、その吸着量(V)と相対圧力(P/Po)との関係を測定する。測定したVとP/Poより、式(2)の左辺とP/Poをプロットする。ここで、勾配がsであるとすると、式(2)より下記式(3)が導かれる。切片がiであるとすると、切片i及び勾配sは、それぞれ下記式(4)及び下記式(5)のとおりとなる。
式(4)及び式(5)を変形すると、それぞれ下記式(6)及び式(7)が得られ、単分子層吸着量Vmを求める下記式(8)が得られる。すなわち、ある相対圧力P/Poにおける吸着量Vを数点測定し、プロットの勾配及び切片を求めると、単分子層吸着量Vmが求まる。
試料の全表面積Stotal(m)は、下記式(9)で求められ、比表面積S(m/g)は、全表面積Stotalより下記式(10)で求められる。なお、式(9)中、Nは、アボガドロ数を示し、ACSは、吸着断面積(m)を示し、Mは、分子量を示す。また、式(10)中、wは、サンプル量(g)を示す。
本実施形態に係る鉛蓄電池の正極材におけるβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は、優れた充電受入性能を得る観点から、0.4以下である。正極材におけるβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)が0.4以下であることにより、正極の過電圧を低くできることから、優れた充電受入性能が得られると推測される。前記比率(α−PbO/β−PbO)は、更に優れた充電受入性能を得る観点から、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.06以下が更に好ましい。前記比率(α−PbO/β−PbO)は、正極材の形状保持性に優れる観点から、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましい。前記比率(α−PbO/β−PbO)は、例えば、化成時の温度等により調整することができる。例えば、化成温度が高くなるほど前記比率(α−PbO/β−PbO)を高くすることができる。
β−PbOは電気的に活性で充放電反応に関わるが、α−PbOはβ−PbOよりも不活性で、特に放電反応には関与しない。硫酸を多く入れるとβ−PbOが多く存在する状態になるが、極板全体で均一に硫酸鉛が微細析出するため、充電時に硫酸鉛が均一に反応することで反応抵抗が小さくなり充電反応に有利に働くと考えられる。
化成後の正極材の広角X線回折からは、例えば、主な化合物としてα−PbO、β−PbO、PbSOが検出される。α−PbO及びβ−PbOそれぞれの化合物として特定される波形のメインピーク強度(cps)を用いて、「α−PbOのメインピーク強度」/「β−PbOのメインピーク強度」を比率(α−PbO/β−PbO)として算出することができる。広角X線回折装置としては、例えば、X線回折装置SmartLab(株式会社リガク製)を用いることができる。広角X線回折測定は、例えば、以下のような方法で行うことができる。
[広角X線回折測定方法]
・測定装置:全自動多目的水平型X線回折装置 SmartLab(株式会社リガク製)
・X線源:Cu−Kα / 1.541862Å
・フィルター:Cu−Kβ
・出力:40kV、30mA
・スキャンモード:CONTINUOUS
・スキャン範囲:20.0000度〜60.0000度
・ステップ幅:0.0200度
・スキャン軸:2θ/θ
・スキャンスピード:10.0000度/分
・試料ホルダー:ガラス製、深さ0.2mm
・試料作製方法:測定試料は、下記の手順により作製できる。まず、化成した電池を解体して正極板を取り出し水洗をした後、50℃で24時間乾燥する。次に、前記正極板の中央部から正極材を3g採取してすり潰す。
・算出方法:作製した試料を試料ホルダーの深さと均等になるように充填し、平滑な試料面を作製する。広角X線回折を測定し、得られる回折角(2θ)と回折ピーク強度のX線回折チャートから、回折角度28.6度に位置するα−PbO、及び、回折角度25.3度に位置するβ−PbOが検出されたとする。α−PbO(110面)及びβ−PbO(111面)それぞれの化合物として特定される波形のピーク強度(cps)を用いて、「α−PbOのピーク強度」/「β−PbOのピーク強度」の比率を比率α−PbO/β−PbOとして算出する。図4は正極材のX線回折パターンの一例を示す図である。
正極材の密度は、充電受入性能及びサイクル性能が更に向上する観点から、3.8g/cm以上が好ましく、4.0g/cm以上がより好ましく、4.2g/cm以上が更に好ましい。正極材の密度は、5時間率容量及び低温高率放電性能が更に向上する観点から、5.0g/cm以下が好ましく、4.8g/cm以下がより好ましく、4.6g/cm以下が更に好ましい。このような観点から、正極材の密度は、3.8〜5.0g/cmが好ましく、4.0〜4.8g/cmがより好ましく、4.2〜4.6g/cmが更に好ましい。前記正極材の密度は、化成後の正極材における密度である。正極材の密度は、例えば、後述する正極材ペーストを作製する際の水の添加量により調整することができる。
正極材の多孔度は、正極材中の空孔部(孔)に硫酸が入り込む領域が多くなり、容量が増加しやすい観点から、50体積%以上が好ましく、55体積%以上がより好ましい。正極材の多孔度の上限としては、特に制限はないが、正極材中の空孔部への硫酸含浸量が適度であり、活物質同士の結合力を容易に良好に維持できる観点から、70体積%以下が好ましい。多孔度の上限は、実用的な観点から、60体積%以下がより好ましい。なお、正極材の多孔度は、化成後の正極材の水銀ポロシメーター測定から得られる値(体積基準の割合)である。正極材の多孔度は、正極材ペーストを作製する際に加える希硫酸量によって調整することができる。
正極活物質の平均粒径は、充電受入性能及びサイクル性能が更に向上する観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上が更に好ましい。正極活物質の平均粒径は、サイクル性能が更に向上する観点から、2.5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。前記正極活物質の平均粒径は、化成後の正極材における正極活物質の平均粒径である。正極活物質の平均粒径としては、例えば、化成後の正極中央部の正極材における縦10μm×横10μmの範囲の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)を取得した後、画像内における全ての正極活物質粒子の長辺の長さの値を算術平均化した数値を用いることができる。
正極材は、添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、炭素材料(炭素質導電材)及び補強用短繊維(アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等)が挙げられる。炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラック(登録商標)が挙げられる。
正極の製造工程では、例えば、正極活物質の原料を含む正極材ペーストを正極集電体(例えば集電体格子(鋳造格子体、エキスパンド格子体等))に充填した後に熟成及び乾燥を行うことにより、未化成の正極材を有する正極(正極板等)を得る。
正極材ペーストは、例えば、正極活物質の原料に加えてその他の所定の添加剤等を更に含んでいてもよい。正極材ペーストに含まれる添加剤は、正極材に含まれる添加剤と同様であってもよい。正極材ペーストにおいて、補強用短繊維の配合量は、正極材の原料(鉛粉等)の全質量を基準として、0.005〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.3質量%がより好ましい。
比表面積が10m/g以上であり、且つ、β−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)が0.4以下である正極材は、例えば、下記の方法により得ることができる。
鉛粉に対して、補強用短繊維等の添加剤を加えて乾式混合し、鉛粉を含む混合物を得る。次に、前記鉛粉を含む混合物に対して、水1〜11質量%及び希硫酸(比重1.34〜1.55)22〜30質量%を加えて混練して正極材ペーストを作製する。ここで、水及び希硫酸の前記配合量は、鉛粉及び添加剤の全質量を基準とした配合量である。希硫酸(比重1.34〜1.55)は、発熱を低減するために、数回に分けて徐々に添加することが好ましい。正極材ペーストの作製において、急激な発熱は、疎な構造の正極材を形成し、寿命での活物質同士の結合力を低下させるため、なるべく発熱を抑えることが好ましい。そして、前記正極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成の正極材を得た後、未化成の正極材を化成することで、比表面積が10m/g以上であり、且つ、β−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)が0.4以下である正極材を得ることができる。
熟成条件としては、温度35〜85℃、湿度50〜98RH%の雰囲気で15〜60時間が好ましい。乾燥条件は、温度45〜80℃で15〜30時間が好ましい。
((B)負極)
[負極集電体]
負極集電体としては、正極と同様の集電体を用いることができる。負極集電体と正極集電体の組成及び製造方法は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
(負極材)[(a)成分:負極活物質]
負極活物質は、負極活物質の原料を含む負極材ペーストを熟成及び乾燥することにより未化成活物質を得た後に化成することで得ることができる。化成後の負極活物質としては、海綿状鉛(Spongylead)等が挙げられる。前記海綿状鉛は、電解液中の硫酸と反応して、次第に硫酸鉛(PbSO)に変わる傾向がある。負極活物質の原料としては、鉛粉等が挙げられる。鉛粉としては、例えば、ボールミル式鉛粉製造機又はバートンポット式鉛粉製造機によって製造される鉛粉(ボールミル式鉛粉製造機においては、主成分PbOの粉体と鱗片状金属鉛の混合物)が挙げられる。未化成の負極材は、例えば、塩基性硫酸鉛及び金属鉛、並びに、低級酸化物から構成される。
負極活物質の平均粒径は、充電受入性能及びサイクル性能が更に向上する観点から、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.6μm以上が更に好ましい。負極活物質の平均粒径は、サイクル性能が更に向上する観点から、2μm以下が好ましく、1.8μm以下がより好ましく、1.5μm以下が更に好ましい。負極活物質の前記平均粒径は、化成後の負極材における負極活物質の平均粒径である。負極活物質の平均粒径は、例えば、化成後の負極中央部の負極材における縦10μm×横10μmの範囲の走査型電子顕微鏡写真(1000倍)の画像内における全ての活物質粒子の長辺長さ(最大粒径)の値を算術平均化した数値として得ることができる。
負極活物質の含有量は、電池特性(容量、低温高率放電性能、充電受入性能、サイクル性能等)に更に優れる観点から、負極材の全質量を基準として、93質量%以上が好ましく、95質量%以上であってもよく、98質量%以上であってもよい。
[(b)成分:スルホン基又はスルホン酸塩基を有する有機化合物]
本実施形態に係る鉛蓄電池の負極材は、充電受入性能、放電特性及びサイクル性能を更にバランス良く向上させることができる観点から、スルホン基(スルホン酸基、スルホ基)又はスルホン酸塩基を有する樹脂を更に含有する。
(b)成分としては、ビスフェノール系樹脂、リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、充電受入性能が更に向上する観点から、ビスフェノール系樹脂が好ましく、(b1)ビスフェノール系化合物と、(b2)アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(b3)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種との縮合物であるビスフェノール系樹脂がより好ましい。以下、(b1)〜(b3)の縮合物であるビスフェノール系樹脂について詳細に説明する。
((b1)成分:ビスフェノール系化合物)
ビスフェノール系化合物は、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。(b1)成分としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、「ビスフェノールS」という)等が挙げられる。(b1)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b1)成分としては、充電受入性能に更に優れる観点からはビスフェノールAが好ましく、放電特性に更に優れる観点からはビスフェノールSが好ましい。
(b1)成分としては、サイクル性能、放電特性及び充電受入性能がバランス良く向上しやすい観点から、ビスフェノールAとビスフェノールSとを併用することが好ましい。この場合、ビスフェノール系樹脂を得るためのビスフェノールAの配合量は、サイクル性能、放電特性及び充電受入性能がバランス良く向上しやすい観点から、ビスフェノールA及びビスフェノールSの合計量を基準として、70mol%以上が好ましく、75mol%以上がより好ましく、80mol%以上が更に好ましい。ビスフェノールAの配合量は、サイクル性能、放電特性及び充電受入性能がバランス良く向上しやすい観点から、ビスフェノールA及びビスフェノールSの合計量を基準として、99mol%以下が好ましく、98mol%以下がより好ましく、97mol%以下が更に好ましい。
((b2)成分:アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体)
アミノアルキルスルホンとしては、アミノメタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、2−メチルアミノエタンスルホン酸等が挙げられる。
アミノアルキルスルホン酸誘導体としては、アミノアルキルスルホン酸の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、アミノアルキルスルホン酸のスルホン基(−SOH)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)で置換されたアルカリ金属塩などが挙げられる。
アミノアリールスルホン酸としては、アミノベンゼンスルホン、アミノナフタレンスルホン酸等が挙げられる。アミノアリールスルホン酸誘導体としては、アミノベンゼンスルホン酸誘導体、アミノナフタレンスルホン酸誘導体等が挙げられる。
アミノベンゼンスルホンとしては、2−アミノベンゼンスルホン酸(別名オルタニル酸)、3−アミノベンゼンスルホン酸(別名メタニル酸)、4−アミノベンゼンスルホン酸(別名スルファニル酸)等が挙げられる。
アミノベンゼンスルホン酸誘導体としては、アミノベンゼンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、アミノベンゼンスルホン酸のスルホン基(−SOH)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)で置換されたアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)などが挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基で置換された化合物としては、4−(メチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、3−メチル−4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4−メチルベンゼンスルホン酸、4−(エチルアミノ)ベンゼンスルホン酸、3−(エチルアミノ)−4−メチルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。アミノベンゼンスルホン酸のスルホン基の水素原子がアルカリ金属で置換された化合物としては、2−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−アミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−アミノベンゼンスルホン酸カリウム、3−アミノベンゼンスルホン酸カリウム、4−アミノベンゼンスルホン酸カリウム等が挙げられる。
アミノナフタレンスルホン酸としては、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(p−体)、5−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ana−体)、1−アミノ−6−ナフタレンスルホン酸(ε−体、5−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)、6−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(ε−体)、6−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(amphi−体)、7−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸、8−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸(peri−体)、1−アミノ−7−ナフタレンスルホン酸(kata−体、8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸)等のアミノナフタレンモノスルホン酸;1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、6−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸、7−アミノ−1,3−ナフタレンジスルホン酸等のアミノナフタレンジスルホン酸;7−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、8−アミノ−1,3,6−ナフタレントリスルホン酸等のアミノナフタレントリスルホン酸などが挙げられる。
アミノナフタレンスルホン酸誘導体としては、アミノナフタレンスルホン酸の一部の水素原子がアルキル基(例えば炭素数1〜5のアルキル基)等で置換された化合物、アミノナフタレンスルホン酸のスルホン基(−SOH)の水素原子がアルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)で置換されたアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)などが挙げられる。
(b2)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(b2)成分としては、サイクル性能及び充電受入性能が更に向上する観点から、4−アミノベンゼンスルホン酸が好ましい。
ビスフェノール系樹脂を得るための(b2)成分の配合量は、放電特性が更に向上する観点から、(b1)成分1molに対して、0.5mol以上が好ましく、0.6mol以上がより好ましく、0.8mol以上が更に好ましく、0.9mol以上が特に好ましい。(b2)成分の配合量は、サイクル性能及び放電特性が更に向上しやすい観点から、(b1)成分1molに対して、1.3mol以下が好ましく、1.2mol以下がより好ましく、1.1mol以下が更に好ましい。
((b3)成分:ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体)
ホルムアルデヒドとしては、ホルマリン(例えばホルムアルデヒド37質量%の水溶液)中のホルムアルデヒドを用いてもよい。ホルムアルデヒド誘導体としては、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、トリオキサン等が挙げられる。(b3)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ホルムアルデヒドとホルムアルデヒド誘導体とを併用してもよい。
(b3)成分としては、優れたサイクル性能が得られやすくなる観点から、ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、パラホルムアルデヒドがより好ましい。パラホルムアルデヒドは、例えば、下記一般式(I)で表される構造を有する。
HO(CHO)n1H …(I)
[式(I)中、n1は2〜100の整数を示す。]
ビスフェノール系樹脂を得るための(b3)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、(b2)成分の反応性が向上する観点から、(b1)成分1molに対して、2mol以上が好ましく、2.2mol以上がより好ましく、2.4mol以上が更に好ましい。(b3)成分のホルムアルデヒド換算の配合量は、得られるビスフェノール系樹脂の溶媒への溶解性に優れる観点から、(b1)成分1molに対して、3.5mol以下が好ましく、3.2mol以下がより好ましく、3mol以下が更に好ましい。
ビスフェノール系樹脂は、例えば、下記一般式(II)で表される構造単位、及び、下記一般式(III)で表される構造単位の少なくとも一方を有することが好ましい。
[式(II)中、Xは、2価の基を示し、Aは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は、アリーレン基を示し、R21、R23及びR24は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、R22は、メチロール基(−CHOH)を示し、n21は、1〜150の整数を示し、n22は、1〜3の整数を示し、n23は、0又は1を示す。また、ベンゼン環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。]
[式(III)中、Xは、2価の基を示し、Aは、炭素数1〜4のアルキレン基、又は、アリーレン基を示し、R31、R33及びR34は、それぞれ独立にアルカリ金属又は水素原子を示し、R32は、メチロール基(−CHOH)を示し、n31は、1〜150の整数を示し、n32は、1〜3の整数を示し、n33は、0又は1を示す。また、ベンゼン環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。]
式(II)で表される構造単位、及び、式(III)で表される構造単位の比率は、特に制限はなく、合成条件等によって変化し得る。ビスフェノール系樹脂としては、式(II)で表される構造単位、及び、式(III)で表される構造単位のいずれか一方のみを有する樹脂を用いてもよい。
前記X及びXとしては、例えば、アルキリデン基(メチリデン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、sec−ブチリデン基等)、シクロアルキリデン基(シクロヘキシリデン基等)、フェニルアルキリデン基(ジフェニルメチリデン基、フェニルエチリデン基等)などの有機基;スルホニル基が挙げられ、充電受入性能に更に優れる観点からはイソプロピリデン基(−C(CH−)基が好ましく、放電特性に更に優れる観点からはスルホニル基(−SO−)が好ましい。前記X及びXは、フッ素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。前記X及びXがシクロアルキリデン基である場合、炭化水素環はアルキル基等により置換されていてもよい。
及びAとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の2価のアリーレン基が挙げられる。前記アリーレン基は、アルキル基等により置換されていてもよい。
21、R23、R24、R31、R33及びR34のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。n21及びn31は、サイクル性能及び溶媒への溶解性に更に優れる観点から、1〜150が好ましく、10〜150がより好ましい。n22及びn32は、サイクル性能、放電特性及び充電受入性能がバランス良く向上しやすい観点から、1又は2が好ましく、1がより好ましい。n23及びn33は、製造条件により変化するが、サイクル性能及びビスフェノール系樹脂の保存安定性に更に優れる観点から、0が好ましい。
(b)成分であるビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、鉛蓄電池において電極からビスフェノール系樹脂が電解液に溶出することを抑制することによりサイクル性能が向上しやすくなる観点から、15000以上が好ましく、30000以上がより好ましく、40000以上が更に好ましく、50000以上が特に好ましい。ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、電極活物質に対する吸着性が低下して分散性が低下することを抑制することによりサイクル性能が向上しやすくなる観点から、70000以下が好ましく、65000以下がより好ましく、62000以下が更に好ましい。
ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量は、例えば、下記条件のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により測定することができる。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10、5.80×10、2.55×10、1.46×10、1.01×10、4.49×10、2.70×10、2.10×10;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10;キシダ化学株式会社製)
また、ビスフェノール系樹脂としては、市販の樹脂を用いることもできる。市販のビスフェノール系樹脂としては、例えば、ビスパーズP215(商品名、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
(b)成分であるリグニンスルホン酸塩は、リグニン分解物の一部がスルホン化された化合物である。リグニンスルホン酸塩は、フェノール系化合物に由来する構造単位として、リグニンに由来する構造単位を有している。また、リグニンスルホン酸塩は、スルホン酸塩基を含んでいる。リグニンスルホン酸塩は、例えば、木材チップを蒸解してセルロースを取り出した後に残った黒液から得ることができる。リグニンスルホン酸塩の構造は、下記一般式(IV)で表される構造単位を有することができる。
[式(IV)中、n2は、1以上の整数を示し、Rは、アルカリ金属を示す。]
のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Rが複数存在する場合、Rは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
リグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、鉛蓄電池において電極からリグニンスルホン酸カリウムが電解液に溶出することが抑制されて更に優れたサイクル性能が得られる観点から、3000以上が好ましく、7000以上がより好ましく、8000以上が更に好ましい。リグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、電極活物質の分散性に優れる観点から、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましく、20000以下が更に好ましい。これらの観点から、リグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、3000〜50000が好ましく、7000〜30000がより好ましく、8000〜20000が更に好ましい。リグニンスルホン酸塩の重量平均分子量は、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量と同様の方法により測定することができる。
また、リグニンスルホン酸塩としては、市販の化合物を用いることもできる。市販のリグニンスルホン酸塩としては、例えば、バニレックスN(商品名、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
(b)成分であるナフタレンスルホン酸系樹脂は、ナフタレンスルホン酸系化合物由来の構造単位を有する樹脂である。ナフタレンスルホン酸系樹脂は、例えば、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を含有するナフタレン構造を有する樹脂である。
ナフタレンスルホン酸系樹脂は、ナフタレンスルホン酸系化合物、及び、ナフタレンスルホン酸系化合物と重合可能な化合物を反応させることにより得ることが可能である。ナフタレンスルホン酸系樹脂は、例えば、ナフタレンスルホン酸系化合物と、ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種とを反応させて得ることができる。ナフタレンスルホン酸系樹脂は、下記式(V)で表される構造単位を有することが好ましい。
[式(V)中、R41は、アルカリ金属又は水素原子を示し、n41は、1〜100の整数を示し、n42は、1〜3の整数を示す。また、ベンゼン環を構成する炭素原子に直接結合している水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。]
41のアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。R41が複数存在する場合、R41は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
ナフタレンスルホン酸系樹脂の重量平均分子量は、鉛蓄電池のサイクル性能が向上しやすい観点から、1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000以上が特に好ましく、6000以上が極めて好ましく、8000以上が非常に好ましい。ナフタレンスルホン酸系樹脂の重量平均分子量は、サイクル性能が向上しやすい観点から、20000以下が好ましく、15000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。ナフタレンスルホン酸系樹脂の重量平均分子量は、例えば、ビスフェノール系樹脂の重量平均分子量と同様に測定することができる。
また、ナフタレンスルホン酸系樹脂としては、市販の樹脂を用いることもできる。市販のナフタレンスルホン酸系樹脂としては、バニオールHDL−100(商品名、日本製紙株式会社製)、デモールN、デモールRN、デモールNL、デモールRNL、デモールT、デモールT−45(以上、商品名、花王株式会社製)等が挙げられる。
(b)成分の含有量は、放電特性に更に優れる観点から、負極材の全質量を基準(100質量%)として、樹脂固形分換算で0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.08質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上であってもよい。(b)成分の含有量は、充電受入性能に更に優れる観点から、負極材の全質量を基準として、樹脂固形分換算で0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。このような観点から、(b)成分の含有量は、0.01〜0.3質量%が好ましく、0.05〜0.2質量%がより好ましく、0.08〜0.1質量%が更に好ましい。
[負極添加剤]
負極材は、添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、硫酸バリウム、炭素材料(炭素質導電材)、補強用短繊維等(アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、炭素繊維等)が挙げられる。
炭素材料としては、例えば、カーボンブラック及び黒鉛が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック及びケッチェンブラック(登録商標)が挙げられる。
[負極材の物性]
負極材の比表面積は、優れた充電受入性能と、他の優れた電池性能(放電特性、サイクル性能等)とを更に良好に両立する観点から、0.5m/g以上が好ましく、0.55m/g以上がより好ましく、0.6m/g以上が更に好ましい。負極材の比表面積は、優れた充電受入性能と、他の優れた電池性能(放電特性、サイクル性能等)とを更に良好に両立する観点から、1.2m/g以下が好ましく、1.0m/g以下がより好ましく、0.8m/g以下が更に好ましい。負極材の比表面積は、優れた充電受入性能と、他の優れた電池性能(放電特性、サイクル性能等)とを更に良好に両立する観点から、0.5〜1.2m/gであることが好ましく、0.6〜1.0m/gがより好ましく、0.6〜0.8m/gが更に好ましい。負極材の前記比表面積は、化成後の負極材の比表面積である。負極材の比表面積は、例えば、負極材ペーストを作製する際の硫酸及び水の添加量を調整する方法、未化成活物質の段階で活物質を微細化させる方法、化成条件を変化させる方法等により調整することができる。負極材の比表面積は、例えば、BET法で測定することができる。
(集電体)
集電体の製造法としては、鋳造方式、エキスパンド方式等が挙げられる。集電体の材質としては、例えば、鉛−カルシウム−錫系合金及び鉛−アンチモン系合金が挙げられる。これらにセレン、銀、ビスマス等を微量添加することができる。正極及び負極の集電体の製造法又は材質は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
<鉛蓄電池の製造方法>
本実施形態に係る鉛蓄電池の製造方法は、例えば、電極(正極及び負極。例えば電極板)を得る電極製造工程と、前記電極を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池を得る組み立て工程とを備えている。電極が未化成である場合、電極は、例えば、電極活物質(正極活物質又は負極活物質)の原料等を含む電極材(正極材又は負極材)と、当該電極材を保持する集電体(正極集電体又は負極集電体)とを有している。化成後の電極は、例えば、電極活物質等を含む電極材と、当該電極材からの電流の導電路となり且つ電極材を保持する集電体とを有している。
鉛蓄電池の製造方法では、例えば、上記のように作製した未化成の負極及び未化成の正極を、セパレータを介して積層し、同極性の極板の集電部をストラップで溶接させて極板群を得る。この極板群を電槽内に配置して未化成の電池を作製する。次に、未化成の電池に希硫酸を入れて直流電流を通電して電槽化成する。化成後の硫酸の比重を適切な電解液比重に調整して鉛蓄電池が得られる。化成条件及び硫酸の比重は電極活物質の性状に応じて調整することができる。
前記セパレータは、各々の電極を包むような袋状であることが好ましい。液式鉛蓄電池に用いるセパレータの材料としては、正極板と負極板との電気的な接続を阻止し、電解液の硫酸イオンを透過させるものであれば特に限定されない。具体的には、微多孔性ポリエチレン;ガラス繊維と合成樹脂からなるもの等が挙げられる。セパレータは、電極(極板等)を積層する工程の際に、負極(負極板等)の長さに応じて切断されることが好ましい。また、前記切断されたセパレータは、2つに折り、両サイドを圧着することで負極を包み込む形であってもよい。液式鉛蓄電池に用いるセパレータの厚みは、0.7〜1.1mmが好ましい。
なお、化成条件及び硫酸の比重は、電極のサイズに応じて調整することができる。また、化成処理は、組み立て工程後に実施されることに限られず、電極製造工程において実施されてもよい(タンク化成)。
電槽は、内部に電極(極板等)を収納可能なものである。電槽は、電極を収納しやすい観点から、上面が開放された箱体と、この箱体の上面を覆う蓋体とを有するものが好ましい。なお、箱体と蓋体との接着には、接着剤、熱溶着、レーザ溶着、超音波溶着等を適宜用いることができる。電槽の形状としては、特に限定されるものではないが、電極(板状体である極板等)の収納時に無効空間が少なくなるように方形のものが好ましい。
電槽の材料は、特に制限されるものではないが、電解液(希硫酸等)に対し耐性を有するものである必要がある。電槽の材料の具体例としては、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS樹脂等が挙げられる。電槽の材料がPPであると、耐酸性、加工性(ABS樹脂では電槽と蓋の熱溶着が困難)、コストの面で有利である。
電槽が箱体及び蓋体により構成される場合、箱体及び蓋体の材料は、互いに同一の材料であってもよく、互いに異なる材料であってもよいが、無理な応力が発生しない観点から、熱膨張係数の等しい材料が好ましい。
化成後の正極材と負極材の質量比(正極材/負極材)は、高い充電受入性能が得られやすい観点から、0.9以上が好ましく、1以上がより好ましく、1.05以上が更に好ましい。正極材と負極材の質量比(正極材/負極材)は、高い低温高率放電性能が得られやすい観点から、1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、1.15以下が更に好ましい。正極材と負極材の質量比(正極材/負極材)は、充分な電池容量が得られやすいと共に高い充電受入性能と低温高率放電性能が得られやすい観点から、0.9〜1.3が好ましく、1.0〜1.2がより好ましく、1.05〜1.15が更に好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
<実施例1>
(正極板の作製)
鉛粉に対して、補強用短繊維としてアクリル繊維0.25質量%(鉛粉の全質量基準)を加えて乾式混合した。次に、前記鉛粉を含む混合物に対して、水9質量%及び希硫酸(比重1.34)25質量%を加えて1時間混練して正極材ペーストを作製した。正極材ペーストの作製に際しては、急激な温度上昇を避けるため、希硫酸(比重1.34)の添加は段階的に行った。なお、前記水及び希硫酸の配合量は、鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準とした配合量である。
鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式格子体(正極集電体)に前記正極材ペーストを充填した。次いで、正極材ペーストが充填された正極集電体を温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後、温度50℃で16時間乾燥して、未化成の正極材を有する未化成の正極板を作製した。
(負極板の作製)
負極活物質の原料として鉛粉を用いた。ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物(商品名:ビスパーズP215、日本製紙株式会社製、配合量:樹脂固形分換算で0.2質量%、重量平均分子量:54000)、補強用短繊維(アクリル繊維、配合量:0.1質量%)、硫酸バリウム(配合量:1.0質量%)、及び、炭素質導電材(ファーネスブラック、配合量:0.2質量%)の混合物を前記鉛粉に添加した後に乾式混合した。尚、前記配合量は、負極活物質の原料の全質量を基準とした配合量である。次に、水を加えた後に混練した。続いて、希硫酸(比重1.280)を少量ずつ添加しながら混練して、負極材ペーストを作製した。鉛合金からなる圧延シートにエキスパンド加工を施すことにより作製されたエキスパンド式格子体(負極集電体)にこの負極材ペーストを充填した。次いで、負極材ペーストが充填された負極集電体を温度50℃、湿度98%の雰囲気で24時間熟成した。その後に乾燥して、未化成の負極材を有する未化成の負極板を作製した。
ビスフェノールとアミノベンゼンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物の重量平均分子量は、下記条件のGPCにより測定した。
(GPC条件)
装置:高速液体クロマトグラフ LC−2200 Plus(日本分光株式会社製)
ポンプ:PU−2080
示差屈折率計:RI−2031
検出器:紫外可視吸光光度計UV−2075(λ:254nm)
カラムオーブン:CO−2065
カラム:TSKgel SuperAW(4000)、TSKgel SuperAW(3000)、TSKgel SuperAW(2500)(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:LiBr(10mM)及びトリエチルアミン(200mM)を含有するメタノール溶液
流速:0.6mL/分
分子量標準試料:ポリエチレングリコール(分子量:1.10×10、5.80×10、2.55×10、1.46×10、1.01×10、4.49×10、2.70×10、2.10×10;東ソー株式会社製)、ジエチレングリコール(分子量:1.06×10;キシダ化学株式会社製)、ジブチルヒドロキシトルエン(分子量:2.20×10;キシダ化学株式会社製)
(電池の組み立て)
袋状に加工したポリエチレン製のセパレータに未化成の負極板を挿入した。次に、未化成の正極板5枚と、前記袋状セパレータに挿入された未化成の負極板6枚とを交互に積層した。続いて、キャストオンストラップ(COS)方式で、同極性の極板の耳部同士を溶接して極板群を作製した。前記極板群を電槽に挿入して2V単セル電池(JIS D 5301規定のK42サイズの単セルに相当)を組み立てた。その後、比重1.200の硫酸溶液をこの電池に注入した。その後、40℃で1時間静置後、10.5Aの定電流で20時間、40℃の条件で化成を行って鉛蓄電池を得た。なお、化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.28であった。そこに比重1.280の硫酸溶液をUPPERレベルに到達するまで加えた。
(比表面積の測定)
化成後の正極材及び負極材の比表面積は、以下の方法で測定した。まず、化成後の鉛蓄電池を分解して化成後の正極板及び負極板を取り出した。次いで、これらを水洗した後、50℃で24時間乾燥した。続いて、正極板及び負極板の中央部から正極材及び負極材を2gずつ採取して、130℃で30分乾燥することにより、測定試料を得た。次に、得られた試料を液体窒素で冷却しながら液体窒素温度で窒素ガス吸着量を多点法で測定し、BET法に従って比表面積を算出した。測定条件は下記の通りであった。このようにして測定した結果、正極材の比表面積は11.6m/gであった。また、負極材の比表面積は0.6m/gであった。
[比表面積測定条件]
装置:Macsorb1201(株式会社マウンテック製)
脱気時間:130℃で10分
冷却:液体窒素で5分間
吸着ガス流量:25mL/分
(X線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)の測定)
測定試料は、下記の手順により作製した。まず、化成した電池を解体して正極板を取り出し水洗をした後、50℃で24時間乾燥した。次に、前記正極板の中央部から正極材を3g採取してすり潰し、試料ホルダーの深さと均等になるように充填し、平滑な試料面を作製し、測定した。α−PbO/β−PbO比率の測定装置、測定条件、算出方法等を下記する。
・測定装置:全自動多目的水平型X線回折装置SmartLab(株式会社リガク製)
・X線源:Cu−Kα / 1.541862Å
・フィルター:Cu−Kβ
・出力:40kV、30mA
・スキャンモード:CONTINUOUS
・スキャン範囲:20.0000度〜60.0000度
・ステップ幅:0.0200度
・スキャン軸:2θ/θ
・スキャンスピード:10.0000度/分
・試料ホルダー:ガラス製、深さ0.2mm
・算出方法:作製した試料(正極の既化成正極材)3gを用いて広角X線回折を測定した結果、得られた回折角(2θ)と回折ピーク強度のX線回折チャートから、回折角度28.6度に位置するα−PbO、及び、回折角度25.3度に位置するβ−PbOが検出された。α−PbO(110面)及びβ−PbO(111面)それぞれの化合物として特定される波形のピーク強度(cps)を用いて、「α−PbOのピーク強度」/「β−PbOのピーク強度」の比率を比率α−PbO/β−PbOとして算出した。このようにして測定した結果、α−PbO/β−PbO比率は0.05であった。
(正極材/負極材の質量比の算出)
化成後の正極材/負極材の質量比は、以下のようにして算出した。まず、化成後の正極板を取り出し、1時間水洗した後、窒素雰囲気下、80℃で24時間乾燥した。正極板の質量を測定した後、正極材を取り出し、格子の質量を求めた。正極板の質量から格子の質量を除いた量から正極材の全質量を算出した。負極板も同様にして負極材の全質量を算出した。単セルあたりの正極材の全質量と負極材の全質量とから正極材/負極材の質量比を求めた。このようにして測定した結果、正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例2>
正極材ペースト作製時の水の配合量を11質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)に変更し、正極材ペースト作製時の希硫酸として23質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)の希硫酸(比重1.55)を使用し、化成時に注液する硫酸溶液の比重を1.185に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.28であった。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は12.2m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.03であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例3>
正極材ペースト作製時の水の配合量を3質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)に変更し、正極材ペースト作製時の希硫酸として30質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)の希硫酸(比重1.55)を使用し、化成時に注液する硫酸溶液の比重を1.170に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.28であった。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は12.9m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.02であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例4>
化成時、通電前の静置温度を45℃にし、通電時の温度条件を45℃に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は10.5m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例5>
負極添加剤をビスパーズP215からリグニンスルホン酸塩(商品名:バニレックスN、日本製紙株式会社製、配合量:樹脂固形分換算で0.2質量%、重量平均分子量(実施例1と同条件のGPCにより測定):17000)に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、X線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例6>
負極添加剤をビスパーズP215からナフタレンスルホン酸系樹脂(商品名:バニオールHDL−100、日本製紙株式会社製、配合量:樹脂固形分換算で0.2質量%、重量平均分子量(実施例1と同条件のGPCにより測定):8000)に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例7>
負極添加剤のビスパーズP215の配合量を0.1質量%に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例8>
負極材の質量を調整することにより正極材/負極材の質量比を1.15に変更したことを除き、実施例7と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。
<実施例9>
負極添加剤のビスパーズP215の配合量を0.15質量%に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例10>
正極材の質量を調整することにより正極材/負極材の質量比を1.15に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。
<実施例11>
負極添加剤のビスパーズP215の配合量を0.3質量%に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例12>
正極材ペースト作製時の水の配合量を12質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)に変更し、正極材ペースト作製時の希硫酸として15質量%(鉛粉及び補強用短繊維の全質量を基準)の希硫酸(比重1.28)を使用し、化成時に注液する硫酸溶液の比重を1.23に変更し、通電前の静置時間を5時間にして7.5Aの定電流で20時間、40℃の条件で化成したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.28であった。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は10.3m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.38であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<実施例13>
化成時に注液する硫酸溶液の比重を1.25に変更したことを除き、実施例12と同様にして鉛蓄電池を作製した。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.30であった。そこに水を加えて比重1.28にした後、比重1.280の硫酸溶液をUPPERレベルに到達するまで加えた。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は10.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.35であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<比較例1>
化成時、通電前の静置時間を1時間に変更したことを除き、実施例12と同様にして鉛蓄電池を作製した。化成後の電解液(硫酸溶液)の比重は1.28であった。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は8.9m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.42であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<比較例2>
化成時、通電前の静置温度を25℃にし、通電時の温度条件を25℃に変更したことを除き、比較例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は10.5m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.42であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<比較例3>
負極添加剤をビスパーズP215からアニリン(商品名:アニリン、和光純薬工業株式会社製、配合量:樹脂固形分換算で0.2質量%)に変更したことを除き、実施例1と同様にして鉛蓄電池を作製した。また、実施例1と同様の方法により、正極材及び負極材の比表面積、正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)、正極材/負極材の質量比を測定した。正極材の比表面積は11.6m/gであり、負極材の比表面積は0.6m/gであった。正極材のX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)は0.05であった。正極材/負極材の質量比は1.10であった。
<特性評価>
(充電受入性能)
以下の方法により、作製した鉛蓄電池の充電受入性能を評価した。まず、化成直後の鉛蓄電池を約12時間放置した後、25℃で5.6Aの電流値で30分間の定電流放電を行った。さらに、6時間放置した後、2.33V、制限電流100Aで60秒間の定電圧充電を行い、その開始から5秒目までの電流値を測定した。充電受入性能は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。結果を表1に示す。
(低温高率放電性能)
作製した鉛蓄電池の電池温度を−15℃に調整した後、150Aで定電流放電を行い、セル電圧が1.0Vを下回るまでの放電持続時間を測定した。低温高率放電性能は、比較例1の測定結果を100として相対評価した。結果を表1に示す。
(ISSサイクル性能)
ISSサイクル性能は次のように測定した。電池温度が25℃になるように雰囲気温度を調整した。45A−59秒間、300A−1秒間の定電流放電を行った後、100A−2.33V−60秒間の定電流・定電圧充電を1サイクルとする試験を7200サイクル行った。この試験はISS車での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験である。このサイクル試験では、放電量に対して充電量が少ないため、充電が完全に行われないと徐々に充電不足になる。その結果、放電電流を300Aとして1秒間放電した時の1秒目電圧が徐々に低下する。すなわち、定電流・定電圧充電時に負極が分極して早期に定電圧充電に切り替わると、充電電流が減衰して充電不足になる。このサイクル試験では、7200サイクル後の300A放電時の1秒目電圧が1.2V以上のときを「A」と判定し、1.2Vを下回ったときを「B」と判定した。結果を表1に示す。
(過充電による電解液の減少量の評価)
雰囲気温度(水槽の温度)60℃において、2.4Vで42日間定電圧の過充電を行った。この充電の前後において鉛蓄電池の質量を測定した。これにより、充電によって減少した電解液の量(減液量)を求めた。比較例3の減少量を100として相対評価した。この数値が小さいほど、過充電によって電解液が減少しにくい、つまり減液の抑制効果に優れる。
なお、表1中において、「α/β」はβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)を意味する。「+/−比」は正極材の質量と負極材の質量の質量比(正極材/負極材)を意味する。「正極活物質含有量」は正極材における正極活物質の含有量(正極材の質量基準)を意味し、「負極活物質含有量」は負極材における負極活物質の含有量(負極材の質量基準)を意味する。
本開示に係る鉛蓄電池によれば、優れた充電受入性能及び低温高率放電性能の両方を十分高水準に達成可能である。また、本開示に係る鉛蓄電池によれば、特に、初期の状態からある程度の充放電が繰り返されて活物質が充分に活性化した後において、ISS車、マイクロハイブリッド車等では低くなりがちなSOCを適正なレベルに維持することができる。
本開示によれば、マイクロハイブリッド車への鉛蓄電池の応用を提供できる。本開示によれば、ISS車への鉛蓄電池の応用を提供できる。
1…鉛蓄電池、12…正極板(正極)、13…負極板(負極)。

Claims (7)

  1. β−PbO及びα−PbOを含有する正極材を有する正極と、
    スルホン基及びスルホン酸塩基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する有機化合物を含有する負極材を有する負極と、
    を備え、
    前記正極材の比表面積が10m/g以上であり、
    前記正極材におけるβ−PbO及びα−PbOのX線回折パターンのピーク強度の比率(α−PbO/β−PbO)が、0.1以下、又は、0.35〜0.4であり、
    前記正極材の質量と前記負極材の質量の質量比(正極材/負極材)が0.9以上である、鉛蓄電池。
  2. 前記負極材における前記有機化合物の含有量は、前記負極材の全質量を100質量%とすると、0.3質量%以下である、請求項1に記載の鉛蓄電池。
  3. 前記負極材における前記有機化合物の含有量は、前記負極材の全質量を100質量%とすると、0.1質量%以上である、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
  4. 前記正極材の質量と前記負極材の質量の質量比(正極材/負極材)が0.9〜1.3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  5. 記負極材が負極活物質を含み、前記負極材の質量を基準とする前記負極活物質の含有量が93質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉛蓄電池。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池を備える、マイクロハイブリッド車。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉛蓄電池を備える、アイドリングストップシステム車。
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